特許第6419661号(P6419661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6419661皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419661
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20181029BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20181029BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20181029BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20181029BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20181029BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/42
   A61K8/55
   A61Q1/00
   A61Q5/00
   A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-164297(P2015-164297)
(22)【出願日】2015年8月22日
(65)【公開番号】特開2017-39681(P2017-39681A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2016年1月22日
【審判番号】不服2017-10003(P2017-10003/J1)
【審判請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104995
【氏名又は名称】クローダジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390041036
【氏名又は名称】株式会社日本色材工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100136560
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】前田 茂
(72)【発明者】
【氏名】日比 博久
【合議体】
【審判長】 阪野 誠司
【審判官】 大久保 元浩
【審判官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−333378(JP,A)
【文献】 特開2010−1234(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/112193(WO,A1)
【文献】 特開2002−145758(JP,A)
【文献】 特開平4−253903(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038814(WO,A1)
【文献】 特開2009−114161(JP,A)
【文献】 特開2016−17075(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143751(WO,A1)
【文献】 特開平11−335260(JP,A)
【文献】 特開2012−240989(JP,A)
【文献】 特開2008−156342(JP,A)
【文献】 特開2002−338459(JP,A)
【文献】 特開2004−131420(JP,A)
【文献】 特開2007−1950(JP,A)
【文献】 特開2000−119178(JP,A)
【文献】 特開2004−161655(JP,A)
【文献】 「Dr.Ci:Labo,Dr.Ci:Labo Enrich−Lift Lip Essence」 Mintel GNPD,掲載時期:2012年12月,ID:1981295
【文献】 「RYOTO Sugar Ester(Food grade)」の製品紹介のホームページ,2002年,URL,http://www.mfc.co.jp/english/seihin.htm
【文献】 第一工業製薬株式会社,香粧品用製品総合カタログのホームページ,p.4,URL,http://www.dks−web.co.jp/download/img/catadata/koushouhinsougou.pdf
【文献】 クローダジャパン社 CRODESTA 6−ISカタログ(2011.Aug.10)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/60
A61K 8/42
A61K 8/55
A61Q 19/00
A61Q 1/00
A61Q 5/00
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシドおよび糖セラミドよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有し、
前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、イソステアリン酸であり、
前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステル中の、前記(B)スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシドおよび糖セラミドよりなる群から選ばれる1種以上の成分の総含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の皮膚外用剤組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤であって、
当該皮膚外用剤中の(A)中の(B)の含有量が、前記皮膚外用剤組成物における含有量に維持されている、皮膚外用剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤に関し、特に、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好な皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン類の一種であるセラミドは、角質層の細胞間脂質であり、肌の外からの異物に対するバリヤ機能や水分を保持する保湿機能などを有し、肌にとって有用な成分であることが知られている。そのため、従来から、スキンケアだけでなく、メイクアップ化粧料等、医薬品を含む皮膚外用剤に肌広く使用されていた。
【0003】
しかしながら、セラミドは、油などに溶解するものの、溶けているものはほんの一部で、溶解性が極めて悪いものであった。特に、一時的に溶解しているように見えても、経時的に結晶などが析出するなど、安定的に溶解するのが難しいものであった。
【0004】
そのため、セラミドの安定性を改良するために、様々な手法が採られている。例えば、特許文献1には、(A)セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、スフィンゴシン及びフィトスフィンゴシンより選ばれるセラミド類、(B)アルキロイル乳酸および/またはその塩、(C)グリセリンおよび/または重合度2以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するセラミド配合化粧品添加物が開示され、特許文献2には、(1)セラミド類を含有し、油相成分として水相中に分散されると共に1nm以上100nm以下の体積平均粒径を有するセラミド含有粒子と、(2)融点が30℃以下の脂肪酸と、脂肪酸塩との少なくとも一方の脂肪酸成分であって、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、γリノレン酸、αリノレン酸、リノール酸、及びこれらの塩からなる群より選択された少なくとも1種である脂肪酸成分と、を含むと共に、非イオン性界面活性剤が前記セラミド類の全質量に対して0又は0.1倍量以下であり、前記脂肪酸成分以外のイオン性界面活性剤が前記セラミド類の全質量に対して0又は0.05倍量未満であり、pHが6以上8以下のセラミド分散物が、開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、(A)セラミド、(B)レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ジ長鎖アルキル第4級アンモニウム塩型カチオンから選ばれる1種の界面活性剤、が有機溶媒中に均一に溶解している有機溶媒液から噴霧乾燥もしくは凍結乾燥によって有機溶媒を除去して、(A)と(B)を同時に析出せしめて得られるセラミド−界面活性剤複合体であり、かつ(A)と(B)の配合比率が0.01〜99:1〜99.99重量%である複合体が開示され、特許文献4には、少なくとも、次の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分および(E)成分、(A)ショ糖脂肪酸エステル 0.1〜20質量%、(B)スフィンゴシンおよび/またはその誘導体 0.01〜5質量%、(C)多価アルコールを含有する水性成分 83〜97質量%、(D)融点が80℃以下の脂肪酸および/または融点が80℃以下の高級アルコール 0.1〜2質量%、(E)(A)成分の含有量に対し、質量比で0.001倍〜0.4倍のステロール類 0.01〜1質量%を構成成分とすることを特徴とするベシクル分散物が、開示されている。
【0006】
一方、ショ糖脂肪酸エステルは、その安全性の高さから化粧料等の皮膚外用剤に使用され、例えば、特許文献5には、(A)水添ポリイソブテンと(B)分岐脂肪酸エステルと(C)ショ糖イソステアリン酸エステルを含有する口唇用化粧料組成物であって、成分(B)の分岐脂肪酸エステルがイソステアリン酸イソステアリルであり、成分(A)が20〜60重量%、成分(B)が0.1〜60重量%、成分(C)が1〜40重量%であり、その合計が90重量%以上である口唇用化粧料組成物が、開示され、特許文献6には、唇のあれを防止或いは改善するための局所投与形態の組成物であって、1)1気圧、25℃の条件で、粘ちょうな流体の形態を取り、2)リンゴ酸ジイソステアリルと、テトライソステアリン酸スクロースとを含有する組成物が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−199872号公報
【特許文献2】特許第5507461号公報
【特許文献3】特許第3817354号公報
【特許文献4】特許第4527530号公報
【特許文献5】特許第5719234号公報
【特許文献6】特許第4122272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、セラミドをポリグリセリン脂肪酸エステルに溶解するものであるが、溶けているものはほんの一部で、溶解性が極めて悪いものであった。また、特許文献2に記載されている技術は、必須配合成分が多いため、複雑で処方上の制限も多く、さらに、溶解性と安定性を十分に改良できるものではなかった。
【0009】
また、特許文献3に記載されている技術は、噴霧乾燥などの複雑な工程を有するため簡単に溶解等ができず、さらに溶解性と安定性を十分に改良できるものではなかった。さらにまた、特許文献4に記載されている技術は、ベシクルを作製すために多くの成分を必要とするため、複雑で処方上の制限も多く、さらに溶解性と安定性を十分に改良できるものではなかった。
【0010】
特許文献5および6に記載されている技術は、ショ糖脂肪酸エステルを化粧料等の皮膚外用剤に使用した技術ではあるが、セラミド等のスフィンゴシン等の溶解性について検討されているものではなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好な皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の性質を有するショ糖脂肪酸エステルとセラミド等のスフィンゴシン等を含有することによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の皮膚外用剤組成物は、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上と、を含有し、
前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、イソステアリン酸であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の皮膚外用剤組成物は、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)フィトスフィンゴシン、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシドおよび糖セラミドよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有し、
前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、イソステアリン酸であることを特徴とするものである
【0015】
さらに、本発明の皮膚外用剤組成物は、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルのエステル化度が、1〜8であることが好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、前記皮膚外用剤組成物を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好な皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】「CRODESTA 6IS(商品名)、ヘキサイソステアリン酸スクロース」にSederma社製の「セラミド 2(商品名)」を溶解させた顕微鏡写真である。
図2】「ヘプタイソステアリン酸スクロース」にSederma社製の「セラミド 2(商品名)」を分散させた顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤について具体的に説明する。
本発明の皮膚外用剤組成物は、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上と、を含有し、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、イソステアリン酸であることを特徴とするものである。また、本発明の皮膚外用剤組成物は、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)フィトスフィンゴシン、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシドおよび糖セラミドよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有し、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、イソステアリン酸であることを特徴とするものである。従来、例えば、特許第4527530号公報記載の技術などでは、スフィンゴシン等の溶解等に使用されているショ糖脂肪酸エステルは、粉末状または固形状などである。そのため、スフィンゴシン等を溶解・分散等するには、多価アルコール等の他の成分が必須であり、ショ糖脂肪酸エステルの乳化力等を十分に活用できず、その結果、安定性等が良好でなかった。そこで、本発明では、ショ糖脂肪酸エステルを常温で液状のものに限定することで、ショ糖脂肪酸エステルの乳化力等を十分に活用することができ、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好なものとすることができた。なお、ここで、「常温」とは、いわゆる一般的な室内の温度(室温)であり、例えば、20〜30℃の温度範囲を示す。
【0020】
本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルとしては、常温で液状であり、皮膚外用剤等に使用できるものであれば特に限定されない。また、常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと常温で固形状のショ糖脂肪酸エステルを組合せて、常温で液状のショ糖脂肪酸エステルとしたものでもよい。
【0021】
また、本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸が、炭素数8〜30の脂肪酸であることが好ましく、炭素数8〜22の脂肪酸であることがより好ましい。脂肪酸を炭素数8〜30の脂肪酸とすることで、前記(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上の成分とのなじみを、よりよくすることができる。
【0022】
かかる炭素数8〜30の脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコ酸、ベヘン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸等の直鎖飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸、2−エチルヘキサン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−オクチルドデカン酸、2−ウンデシルテトラデカン酸、イソノナン酸、イソステアリン酸等の分岐脂肪酸等を挙げることができる。
【0023】
さらに、本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸としては、炭素数8〜30の飽和脂肪酸であることが好ましく、イソステアリン酸であることが特に好ましい。前記脂肪酸をイソステアリン酸とすることで、セラミド等のスフィンゴシン等をより簡単に溶解・分散でき、さらに安定性をより良好にできる。
【0024】
さらにまた、本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルのエステル化度が、1〜8であることが好ましく、3〜7であることがより好ましく、4〜6であることがさらにより好ましい。ショ糖脂肪酸エステルのエステル化度を調整することにより、ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸を常温で容易に液状化でき、セラミド等のスフィンゴシン等をより簡単に溶解でき、さらに安定性をより良好にできる。
【0025】
本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、クローダジャパン株式会社製の「CRODESTA 4IS(商品名)、テトライソステアリン酸スクロース」、「CRODESTA 6IS(商品名)、ヘキサイソステアリン酸スクロース」、三菱化学フーズ株式会社製の「サーフホープ SE COSME C−2102(商品名)、ペンタエルカ酸スクロース」等を挙げることができる。
【0026】
本発明において、前記(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上とは、少なくとも、スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類の中から1つの成分を含んでいればよく、2種類以上の成分を含んでいてもよい。
【0027】
本発明において、前記スフィンゴシンおよび前記スフィンゴシン誘導体とは、スフィンゴシン骨格を持つ物質であり、皮膚外用剤等に使用できるものであれば限定されないが、例えば、フィトスフィンゴシン、セラミド、スフィンゴミエリン、セレブロシド、糖セラミド等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。中でも、皮膚外用剤に最もよく使用されるセラミドが好ましく、セラミドの起源としては、酵母を利用して生成したセラミド、化学合成によるセラミド、植物から得られたセラミド等があるが、いずれも好適に用いることができる。かかるセラミドとしては、セラミド1〜6が挙げられ、中でも、セラミド2、セラミド3またはセラミド6が特に好ましい。
【0028】
前記スフィンゴシンおよび前記スフィンゴシン誘導体としては、例えば、Sederma社製の「セラミド 2(商品名)、セラミド2」、「セラミド HO3(商品名)、セラミド3」、高砂香料工業株式会社製の「セラミド TIC−001(商品名)、セラミド2」、EVONIC社製の「Ceramide I(商品名)、セラミド1」、「Ceramide III商品名)、セラミド3」、「Ceramide IIIB(商品名)、セラミド3」、「Ceramide IV(商品名)、セラミド4」等を挙げることができる。
【0029】
また、本発明において、前記リン脂質とは、グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつものであり、皮膚外用剤等に使用できるものであれば限定されないが、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。具体的には、EVONIC社製の「Phytosphingosine(商品名)、フィトスフィンゴシン」等を挙げることができる。
【0030】
さらに、本発明において、前記ステロール類とは、皮膚外用剤等に使用できるものであれば限定されないが、例えば、コレステロール、フィトステロール等を挙げることができる。具体的には、クローダジャパン株式会社製の「コレステロール NF(商品名)、コレステロール」、タマ生化学株式会社製の「フィトステロール−SKP(商品名)、フィトステロール」、日本水産株式会社製の「海麗マリンコレステロール(商品名)、コレステロール」等を挙げることができる。
【0031】
本発明において、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、前記(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上の成分との含有(配合)割合は、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステル中の、前記(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上の成分の総含有量が、0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが好ましい。1%などの低い含有量の場合は、皮膚外用剤組成物が液状で、皮膚外用剤への含有が容易である。また、10%などの高い含有量の場合は、固形状となることもあり、これにより口紅などのメイク化粧料への含有が容易となる。
【0032】
また、本発明において、皮膚外用剤組成物は、均一に混合して溶解・分散できれば、その製造方法は限定されないが、例えば、前記(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、前記(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上と、を100〜120℃で十分に撹拌等して溶解し、常温に冷却することで、製造できる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤は、前記皮膚外用剤組成物を含有することを特徴とするものである。これにより、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好な皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤とすることができる。ここで、皮膚外用剤とは、人間または動物の身体等に使用できるものであり、化粧品、医薬部外品、医薬品等を含む広い概念である。さらに、化粧品等とは、基礎化粧品、メイクアップ化粧品、頭髪用化粧品、入浴剤等を含む広い概念のものである。なお、本発明の皮膚外用剤への前記皮膚外用剤組成物の含有量は、安定性を維持できる含有量であれば、特に限定されない。
【0034】
本発明において、皮膚外用剤の製造方法は、前記皮膚外用剤組成物を含有することができれば、特に限定されず、通常の皮膚外用剤の製造方法を用いることができる。例えば、化粧水や乳液等であれば、常温で前記皮膚外用剤組成物を添加することで製造できる。
【0035】
また、本発明において、皮膚外用剤組成物および該皮膚外用剤組成物を含有する皮膚外用剤には、本発明の効果が損なわれない範囲で、適宜他の成分等を添加することもできる。質的、量的範囲で上記以外の任意の成分を含有することができ、皮膚外用剤に通常含有される成分、例えば、油性成分、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、各種ビタミン剤、キレート剤、着色剤、紫外線吸収剤、薬効成分、無機塩類等を含有することができる。
【0036】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下、処方中の数値は質量%を示す。
【実施例】
【0037】
(実施例1〜4、比較例1,2)
下記表1〜4記載の配合量(含有量)で、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルに、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上を加えて、100〜120℃で十分に撹拌して溶解し、常温に冷却して皮膚外用剤組成物を作製し、安定性試験を行った。(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルとして、「CRODESTA 6IS(商品名)、ヘキサイソステアリン酸スクロース」、「CRODESTA 4IS(商品名)、テトライソステアリン酸スクロース」、「ヘプタイソステアリン酸スクロース」、「サーフホープ SE COSME C−2102(商品名)、ペンタエルカ酸スクロース」を使用し、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上の成分として、「セラミド 2(商品名)、セラミド2」、「セラミド HO3(商品名)、セラミド3」、「セラミド TIC−001(商品名)、セラミド2」、「Ceramide III(商品名)、セラミド3」、「Ceramide IIIB(商品名)、セラミド3」、「Ceramide IV(商品名)、セラミド4」、「コレステロール NF(商品名)、コレステロール」、「海麗マリンコレステロール(商品名)、コレステロール」、「フィトステロール−SKP(商品名)、フィトステロール」、「Phytosphingosine(商品名)、フィトスフィンゴシン」を使用した。得られた皮膚外用剤組成物の安定性の評価は、下記安定性試験に基づいて行い、下記表1〜4に併記した。
【0038】
(安定性試験)
皮膚外用剤組成物を室温で保管し、1日後、7日後、1か月後、6か月後の状態を、目視および偏光顕微鏡にて評価した。評価は、下記評価基準で行った。なお、「白濁溶解」とは、図1に示すように、顕微鏡観察で結晶が見えない状態であり、「白濁分散」とは、図2に示すように、顕微鏡観察で結晶が見える状態である。
【0039】
(評価基準)
◎ :完全に透明溶解
○ :白濁溶解
△ :白濁分散
× :不溶
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
図1は、「CRODESTA 6IS(商品名)、ヘキサイソステアリン酸スクロース」にSederma社製の「セラミド 2(商品名)」を溶解させた顕微鏡写真(偏光顕微鏡、200倍)であり、皮膚外用剤組成物の「白濁溶解」の状態を示す顕微鏡写真である。また、図2は、「ヘプタイソステアリン酸スクロース」にSederma社製の「セラミド 2(商品名)」を分散させた顕微鏡写真(偏光顕微鏡、200倍)であり、光って見えるものがセラミドの分散物で、皮膚外用剤組成物の「白濁分散」の状態を示す顕微鏡写真である。
【0045】
表1〜4に示すように、比較例1および2では、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上の成分をまったく溶解することができないが、実施例1〜4では、容易に溶解・分散できた。このことから、(A)常温で液状のショ糖脂肪酸エステルと、(B)スフィンゴシン、スフィンゴシン誘導体、リン脂質およびステロール類よりなる群から選ばれる1種以上と、を含有することにより、セラミド等のスフィンゴシン等を簡単に溶解・分散でき、さらに安定性が良好な皮膚外用剤組成物を提供できた。
【0046】
(皮膚外用剤組成物1の作製)
「CRODESTA 6IS(商品名)、ヘキサイソステアリン酸スクロース」に、「セラミド 2(商品名)、セラミド2」を1%溶解して、皮膚外用剤組成物1を作製した。
【0047】
(皮膚外用剤組成物2の作製)
「CRODESTA 4IS(商品名)、テトライソステアリン酸スクロース」に、「セラミド HO3(商品名)、セラミド3」を1%溶解して、皮膚外用剤組成物2を作製した。
【0048】
皮膚外用剤組成物1および皮膚外用剤組成物2を添加して、下記実施例5〜17の皮膚外用剤を作製した。
【0049】
(実施例5)
下記表5記載の処方に従って、化粧水を作製した。
【0050】
【表5】
【0051】
(実施例6)
下記表6記載の処方に従って、化粧水を作製した。
【0052】
【表6】
【0053】
(実施例7)
下記表7記載の処方に従って、クリームを作製した。
【0054】
【表7】
【0055】
(実施例8)
下記表8記載の処方に従って、クリームを作製した。
【0056】
【表8】
【0057】
(実施例9)
下記表9記載の処方に従って、美容液を作製した。
【0058】
【表9】
【0059】
(実施例10)
下記表10記載の処方に従って、美容液を作製した。
【0060】
【表10】
【0061】
(実施例11)
下記表11記載の処方に従って、クレンジングフォームを作製した。
【0062】
【表11】
【0063】
(実施例12)
下記表12記載の処方に従って、シャンプーを作製した。
【0064】
【表12】
【0065】
(実施例13)
下記表13記載の処方に従って、ボディソープを作製した。
【0066】
【表13】
【0067】
(実施例14)
下記表14記載の処方に従って、スティックファンデーションを作製した。
【0068】
【表14】
【0069】
(実施例15)
下記表15記載の処方に従って、スティック状口紅を作製した。
【0070】
【表15】
【0071】
(実施例16)
下記表16記載の処方に従って、チークを作製した。
【0072】
【表16】
【0073】
(実施例17)
下記表17記載の処方に従って、アイブロウを作製した。
【0074】
【表17】
図1
図2