(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419663
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】往復動ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 9/04 20060101AFI20181029BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20181029BHJP
F04B 53/18 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
F04B9/04 B
F04B53/16 A
F04B53/18
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-166571(P2015-166571)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-44125(P2017-44125A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴之
(72)【発明者】
【氏名】油橋 信宏
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−148359(JP,A)
【文献】
実開昭60−139091(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 9/04
F04B 53/16
F04B 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部ケース(1)内に収容された駆動軸(12)を含む駆動部(50)の駆動に従い、前記駆動軸(12)に連結された往復動部材(3)が往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ装置(100)であって、前記駆動軸(12)の一部が前記駆動部ケース(1)内で潤滑油(L)に浸される往復動ポンプ装置(100)において、
前記駆動部ケース(1)を構成する内壁(20)の上部に、直線状に延び内方を向くリブ(21)を設け、
前記リブ(21)は、前記駆動軸(12)の真上に配置されていることを特徴とする往復動ポンプ装置(100)。
【請求項2】
前記駆動部ケース(1)の内壁(20)は、前記駆動軸(12)の軸線に直交する断面形状が、楕円形状を成していることを特徴とする請求項1記載の往復動ポンプ装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動ポンプ装置として、クランクケース内にクランク軸やコンロッド等を含む駆動部を収容すると共に、当該クランクケースに連設されたマニホルド内にシリンダ部を有し、クランク軸の回転に従い往復動部材がシリンダ部内を往復動することで、シリンダ部内の先端側に形成されたポンプ室に作動液体を吸引し加圧して外部に押し出すポンプ作用を行う往復動ポンプ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような往復動ポンプ装置では、一般的に、クランクケース内の半分程度まで潤滑油(オイル)が満たされている。そして、クランクケース内の潤滑油の熱は、クランクケース表面から外気へと放熱されると共に、マニホルドを流れる作動液体によりマニホルドへと吸熱されることによって、平衡状態に達するようになっている。このクランクケース内の潤滑油は、クランク軸の回転に従い撹拌されて流動性が生じ、クランク軸やコンロッド等の摺動部(金属接触部)を巡るようになっており、当該潤滑油により摺動部の潤滑及び冷却を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−53834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、クランクケース内の潤滑油は、クランク軸の回転によって掻き上げられ、このように掻き上げられた潤滑油の一部は、遠心力によりクランクケースの内壁の上部(上壁)に到達して付着する。このように潤滑油が内壁に付着してしまうと、潤滑及び冷却に寄与する潤滑油が減少し、摺動部の潤滑及び冷却が不十分となる。その結果、クランクケース内の潤滑油の温度(以下、油温と呼ぶ)が高くなってしまい、油温を下げることが求められている。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、クランクケースを始めとした駆動部ケース内の油温を下げることができる往復動ポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による往復動ポンプ装置(100)は、駆動部ケース(1)内に収容された駆動軸(12)を含む駆動部(50)の駆動に従い、
駆動軸(12)に連結された往復動部材(3)が往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ装置(100)であって、駆動
軸(12)の一部が駆動部ケース(1)内で潤滑油(L)に浸される往復動ポンプ装置(100)において、駆動部ケース(1)を構成する内壁(20)の上部に、
直線状に延び内方を向くリブ(21)を設け
、リブ(21)は、駆動軸(12)の真上に配置されていることを特徴とする往復動ポンプ装置(100)。
【0008】
このような往復動ポンプ装置(100)によれば、駆動部(50)の駆動により掻き上げられて駆動部ケース(1)の内壁(20)の上部に付着した潤滑油(L)は、当該内壁(20)の上部に内方を向くように設けられ
駆動軸(12)の真上に配置されたリブ(21)を伝って
真下に位置する駆動軸(12)へと落下
する。このため、
駆動軸(12)を確実且つ十分に潤滑及び冷却でき、油温を下げることができる。また、リブ(21)により駆動部ケース(1)の伝熱面積が増やされるため、駆動部ケース(1)の放熱効率を高めることができ、油温を一層下げることができる。
【0010】
また、このように駆動部ケース(1)内の油温を下げることができるため、従来技術に比して駆動部ケース(1)内の潤滑油(L)の量を低減できる。潤滑油(L)の量を低減する構成としては、具体的には、駆動部ケース(1)の内壁(20)は、駆動軸(12)の軸線に直交する断面形状が、楕円形状を成す構成が挙げられる。このような楕円形状を採用すれば、例えば楕円形状の長軸の半径を従来技術の駆動部ケースの断面円形状の半径と同じにするという簡易な構成により、駆動部ケース(1)の潤滑油(L)の量を従来技術に比して低減できる。すなわち、駆動部ケース(1)の内壁(20)の断面形状を楕円形状とすることにより、潤滑油(L)の量を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、駆動部ケース内の油温を下げることができる往復動ポンプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る往復動ポンプ装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であり、往復動部材の軸線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る往復動ポンプ装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る往復動ポンプ装置の外観を示す斜視図、
図2は、
図1のII-II矢視図であり往復動部材の軸線に沿う断面図である。往復動ポンプ装置は、ここでは、プランジャポンプ装置であり、往復動部材を構成するプランジャが水平方向に3列並設された所謂横型3連プランジャポンプ装置である。
【0014】
図1に示すように、プランジャポンプ装置100は、クランクケース(駆動部ケース)1と、クランクケース1に連結されたマニホルド2と、により外形が構成されている。
【0015】
マニホルド2内には、
図2に示すように、往復動部材3を構成する後述のプランジャスリーブ23が往復動するシリンダ部4と、シリンダ部4の先端側にポンプ室5と、が形成される。また、マニホルド2には、ポンプ室5に作動液体を導入するための吸入口6と、ポンプ室5内で圧縮された作動液体を吐出するための吐出口7(
図1参照)と、が設けられる。吸入口6と吐出口7とは流路8により連絡されており、流路8の吸入口6側には吸入弁9が設けられ、流路8の吐出口7側には吐出弁10が設けられる。そして、流路8のうちの吸入弁9と吐出弁10との間の部分11がポンプ室5に繋がっている。
【0016】
なお、マニホルド2には、ポンプ室5の作動液体のクランクケース1側への漏洩を防止すべく、往復動部材3(プランジャスリーブ23)と液密に摺接する高圧シール30及び低圧シール31が、ポンプ室5側からこの順に配設されている。
【0017】
クランクケース1は中空に構成され、当該クランクケース1内には、クランク軸(駆動軸)12、クランク軸12に回転可能に連結されたコンロッド14、及び、往復動部材3を構成するプランジャ13とコンロッド14とを回転可能に連結するピストンピン15等が配置され、これらが往復動部材3を駆動するための駆動部50を構成する。この駆動部50を内部に収容したクランクケース1は、クランク軸12の軸線に直交する断面形状が、所定の肉厚に形成された楕円形状となっている。すなわち、内外壁が楕円形状を呈し、長軸が水平方向に位置する楕円形状となっている。
【0018】
また、プランジャ13と、当該プランジャ13よりポンプ室5側に配置されたプランジャスリーブ23とは、ボルト16により連結されて往復動部材3が構成されており、クランクケース1からマニホルド2に亘る内部において、クランクケース1側にプランジャ13が配置され、マニホルド2側のシリンダ部4内にプランジャスリーブ23が配置される。そして、クランク軸12とコンロッド14との間の回転部分や、コンロッド14とピストンピン15との間の回転部分等が、クランクケース1内の摺動部となっている。
【0019】
クランクケース1の内部には、上部の注油口17から潤滑油(オイル)Lが注油されており、必要に応じて、下部のドレインプラグ18から排出可能となっている。なお、注油口17は、注油プラグ19により塞がれている。
【0020】
潤滑油Lは、クランクケース1内においてクランク軸12の中心軸線辺り、すなわち、クランクケース1内の半分程度まで注油されており、駆動部50の略下半部程度まで(一部)が、潤滑油Lに浸され浴する構成となっている。
【0021】
なお、クランクケース1のマニホルド2側には、クランクケース1内の潤滑油Lの漏洩を防止すべく、往復動部材3(プランジャ13)と液密に摺接するオイルシール32が配設されている。
【0022】
ここで、特に、本実施形態においては、クランクケース1を構成する内壁20に、内方を向く突起状のリブ21が複数形成されている。リブ21は、クランク軸線方向に長尺に延び、ここでは、内壁20の上部の2箇所に設けられる。
【0023】
一方のリブ21は、クランク軸12とコンロッド14との間の回転部分(摺動部)に対応して設けられたものであり、クランク軸12のぼぼ真上に配設される。他方のリブ21は、コンロッド14とピストンピン15との間の回転部分(摺動部)に対応して設けられたものであり、一方のリブ21からマニホルド2側に周方向に沿って約45°ずれた位置に配設される。これらのリブ21は、その先端(下端)22が、クランク軸12を向くように指向される。なお、リブ21は、上下対称に設けられている。
【0024】
このような構成を有するプランジャポンプ装置100によれば、駆動部50が駆動され、クランク軸12が回転駆動されると、クランク軸12にコンロッド14を介して連結された往復動部材3が往復動し、プランジャスリーブ23がシリンダ部4内を往復動する。そして、往復動部材3がクランク軸12側に向かって移動することによりポンプ室5が減圧され、マニホルド2の吸入弁9、吐出弁10がそれぞれ開、閉となり、作動液体は、吸入口6、吸入弁9を通してポンプ室5へ吸入される。一方、往復動部材3がクランク軸12と反対側に向かって移動することによりポンプ室5が加圧され、吸入弁9、吐出弁10がそれぞれ閉、開となり、ポンプ室5の作動液体は吐出弁10を通して吐出口7へ吐出される。すなわち、プランジャポンプ装置100では、作動液体を吸入し加圧して吐出するポンプ作用が行われる。
【0025】
このようなプランジャポンプ装置100の駆動時にあっては、クランクケース1内の潤滑油Lは、クランク軸12の回転により掻き上げられ、その一部は、遠心力によってクランクケース1の内壁20の上部に到達して付着する。この内壁20の上部に付着した潤滑油Lは、リブ21を伝って下方へ落下し、駆動部50を構成する摺動部側へ戻される。
【0026】
具体的には、クランク軸12のぼぼ真上に配設された一方のリブ21にあっては、潤滑油Lは当該リブ21を伝ってその先端22から真下に落下し、専らクランク軸12とコンロッド14との間の回転部分に戻される。すなわち、潤滑油Lは、クランク軸12とコンロッド14との間の回転部分である摺動部へ効率良く供給される。
【0027】
また、一方のリブ21からマニホルド2側に周方向に沿って約45°ずれた位置の他方のリブ21にあっては、潤滑油Lは当該リブ21を伝ってその先端22から真下に落下し、専らコンロッド14とピストンピン15との間の回転部分に戻される。すなわち、潤滑油Lは、コンロッド14とピストンピン15との間の回転部分である摺動部へ効率良く供給される。
【0028】
このように、本実施形態においては、駆動部50の駆動により掻き上げられてクランクケース1の内壁20の上部に付着した潤滑油Lは、当該内壁20の上部に内方を向くように設けられたリブ21を伝って下方へ落下し、駆動部50を構成する摺動部側へ戻され、摺動部に効率良く供給されるため、摺動部を十分に潤滑及び冷却でき、その結果、油温を下げることができる。また、リブ21によりクランクケース1の伝熱面積が増やされるため、クランクケース1の放熱効率を高めることができ、その結果、油温を一層下げることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、リブ21の一部は、クランク軸12の真上に配置され、クランクケース1の内壁20の上部に付着した潤滑油Lは、リブ21を伝い、真下に位置するクランク軸12へと落下するため、摺動部を構成するクランク軸12を確実且つ十分に潤滑及び冷却でき、油温を一層下げることができる。
【0030】
また、このようにクランクケース1内の油温を下げることができるため、従来技術に比してクランクケース1内の潤滑油Lの量を少なくできる。具体的には、従来技術にあっては、クランクケースのクランク軸線方向視の内壁の断面形状は円形状であったが、本実施形態のようにクランクケース1の内壁20の断面形状を楕円形状とし、例えば楕円形状の長軸の半径を従来技術の円形状の半径と同じとすることで、クランクケース1内の潤滑油Lの量を従来技術に比して少なくできる。すなわち、本実施形態のように、クランクケース1の内壁20の断面形状を楕円形状とすることにより、潤滑油Lの量を少なくできる。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、クランクケース1の内壁20の上部のリブ21の個数を2個としているが、1個又は3個以上であっても良く、要は、潤滑油Lをリブ21から効率的に摺動部に向かって落下させ、摺動部を十分に潤滑及び冷却できれば良い。
【0032】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、プランジャポンプ装置100を多連式としているが、単式(プランジャが1個)のプランジャポンプ装置に対しても適用可能である。
【0033】
また、上記実施形態においては、プランジャポンプ装置に対する適用を述べているが、例えば強制弁式を含むピストンポンプ装置等に対しても適用でき、要は、駆動部ケース内に収容された駆動軸を含む駆動部の駆動に従い、往復動部材が往復動しポンプ作用を行う往復動ポンプ装置全てに対して適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…クランクケース(駆動部ケース)、3…往復動部材、12…クランク軸(駆動軸)、20…内壁、21…リブ、50…駆動部、100…プランジャポンプ装置(往復動ポンプ装置)、L…潤滑油。