(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419937
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】安全装置を有する電気アーク炉及び電気アーク炉の周辺装置の保護方法
(51)【国際特許分類】
F27B 3/28 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
F27B3/28
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-501682(P2017-501682)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公表番号】特表2017-526885(P2017-526885A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015066014
(87)【国際公開番号】WO2016008864
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】102014213744.6
(32)【優先日】2014年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516128728
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ハルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィコ・ハーファーカンプ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ヘルクト
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マチュラット
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−331278(JP,A)
【文献】
特開2014−231952(JP,A)
【文献】
特開昭56−046621(JP,A)
【文献】
特開昭52−099935(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公告第01275228(DE,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00
H05B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全装置(3)及びアースされた周辺装置を有する電気アーク炉において、
アーク炉(2)の前記周辺装置へのアース線(4)と、前記アース線(4)における電流の測定のための電流計(6)とが設けられていること、及び、作動時間が100msより短い安全スイッチ(8)が、前記アース線(4)に設けられていること、を特徴とする電気アーク炉。
【請求項2】
前記電流計(6)が、前記安全スイッチ(8)に組み込まれていることを特徴とする、請求項1に記載の電気アーク炉。
【請求項3】
前記アーク炉(2)の前記周辺装置が、ランス(12)、バーナー(10)、又は、インジェクタであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気アーク炉。
【請求項4】
前記アーク炉(2)の前記周辺装置が、電動のプラズマバーナー(10)又はプラズマインジェクタであり、前記電動のプラズマバーナー(10)又はプラズマインジェクタは、外側層として、他のバーナー部材に対して電気的に絶縁された金属カバーを有しており、専ら絶縁された前記金属カバーが、前記安全装置と電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気アーク炉。
【請求項5】
電気アーク炉(2)の周辺装置を保護する方法において、
アース線(4)が、前記周辺装置に設けられており、前記アース線(4)を通る電流フローが測定され、危機的な電流の強さが生じた場合には、前記アース線(4)が、安全スイッチによって、100ms以内の時間だけ遮断されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の安全装置を有する電気アーク炉と、請求項4に記載の電気アーク炉の周辺装置の保護方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電気アーク炉は、鋼及びその他の金属を製造する際に、スクラップ及びその他の鉄含有材料又はニッケル、又は、クロムも溶融するために用いられる。しばしば、溶融プロセスにおいて、必要な熱エネルギーの一部が、ガスバーナーを通じて導入され、それによって、アーク炉の電気的接続負荷を増大させずとも、溶融プロセスが加速する。その他の物質、例えば粉塵又は溶融物を酸化するための酸素、を導入するために、同様に、いわゆるランス又はインジェクタ等のガス供給管が必要とされる。いくつかの場合では、必要なプロセス加熱を炉内に導入するために、付加的に、電気バーナー、いわゆるプラズマバーナーも用いられる。電気設備の安全性の理由から、これら全ての周辺装置、及び、必要に応じて、アーク炉の外側領域におけるさらなる周辺装置は、個別にアースしなければならない。それによって、動作中に、これらの部材及び付属の導管、又は、固定構造において、危険な接触電圧が生じることが防止される。従って、一般的に、これらの周辺装置は、その導管及び固定構造と共に、炉壁及び特に溶融材料とは異なる電位を有している。それによって、アーク炉の動作中に、時折、溶融物若しくは溶融されるべき材料、又は、アーク電極の内1つからの部分アークが、これらの設備部分又は周辺装置において点火し、数キロアンペアという高い電流が、アースを通じて流出し得る。特にこれは、積み上げられた溶融されるべきスクラップが崩れる、又は、わきへ押しやられることで、バーナー又はランスの近くに到達し、故障アークが点火し得ることによって引き起こされ得る。これは、いわゆる周辺装置における重大な損傷につながり得る。さらに、アーク炉によって、バーナー又はパネルの冷却水供給が破損し、冷却水がアーク炉内に到達する場合、例えばアーク炉における蒸気爆発等による著しい潜在的危険が生じる。
【0003】
それゆえ、従来は、いわゆる周辺装置又はパネルからの冷却水の水圧、及び/又は、リターンフロー温度が監視されてきた。問題が生じた場合には、炉の電源がオフにされ、冷却水の供給が停止される。しかしながら、この方法では、しばしば、発生する部分アークに反応するために、比較的長めの反応時間が生じ、それによって、周辺装置の破損が生じ得る。さらに、アーク炉の電源がオフにされることによって、著しい生産減少がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、適切な安全装置を有する電気アーク炉と、周辺装置を先行技術よりも良好に保護する、アーク炉の保護方法と、を提供することにある。さらに、プロセス中のアーク炉の故障時間を最小化すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題の解決は、請求項1の特徴を備えた安全装置を有する電気アーク炉と、請求項4の特徴を備えた電気アーク炉の周辺装置の保護方法と、にある。
【0006】
請求項1に係る電気アーク炉は、安全装置と、少なくとも1つのアースされた周辺装置と、を有している。当該アーク炉は、周辺装置に対するアース線が設けられていること、及び、さらにアース線の電流を計測するための電流計が設けられていることを特徴としている。さらに当該装置は、安全スイッチを含んでおり、当該安全スイッチは、アース線内に配置されており、従って、100msよりも短い作動時間を有している。
【0007】
従って、アース線内の電流の連続的な監視が行われ、溶融物又は一部のスクラップと周辺装置との間に部分アークが生じた場合には、このアース線内の電流は、必然的に極めて急速に増大し、安全スイッチの作動は、100msより短い、好ましくは10msより短い時間で行われる。従って、アースが短時間、好ましくは1秒よりも短い間だけ遮断されると、周辺装置と溶融材料との間に短時間で形成された部分アークは、即座に再び消失する。それによって、周辺装置の危険はすでに最初から防止されている。なぜなら、持続的な破損に必要なエネルギー量には到達しないからである。アーク炉全体の電源をオフにせずとも良い。
【0008】
電流計がすでに安全スイッチに組み込まれていると、特に有利である。なぜなら、安全スイッチの反応時間をさらに短縮することができるからである。
【0009】
アーク炉の周辺装置は、特にランス、インジェクタ、又は、バーナーであり、アーク炉の冷却パネルも、本発明に係る装置によって保護され得る。
【0010】
本発明のさらなる実施形態は、アーク炉(2)の周辺装置が、電動のプラズマバーナー(10)であるか、又は、プラズマインジェクタであり、当該プラズマバーナー又はプラズマインジェクタは、外側層として、他のバーナー部材に対して電気的に絶縁された金属カバーを有しており、専ら絶縁された金属カバーが、安全装置と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる構成要素は、請求項4に記載の、電気アーク炉の周辺装置の保護方法である。当該方法は、周辺装置にアース線が設けられており、当該アース線を通る電流フローが測定され、危機的な電流の強さが生じた際には、当該アース線が、安全スイッチによって、100ms以内に遮断されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る方法によって、すでに請求項1に記載の装置に関して述べた利点と同じ利点が生じる。
【0013】
以下の図面を基に、本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する。その際、単純化されて図示された、一般的な本発明の実施形態は、保護範囲を限定するものではない。
【0014】
唯一の図面は、周辺装置及び安全装置を有するアーク炉を示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】周辺装置及び安全装置を有するアーク炉を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アーク炉2は、電極14を有しており、当該電極は、アーク炉2のカバー13内の絶縁体20を通って、アーク炉2の内側空間15に導入され、溶融材料16の加熱のために、電流を伝達する。さらに、様々な周辺装置が、例示的かつ概略的に図示されており、その内の1つとして、ガスバーナー10が示されており、当該ガスバーナーは、溶融材料16を付加的に加熱し、溶融材料16を溶融物18へと変えるために用いられる。さらに、酸素ランス20が概略的に示されており、当該酸素ランスは、酸素を溶融物に導入するために用いられる。バーナー10もランス12も、アーク炉2の冷却されたカバー13内の絶縁体を通って導入されている。
【0017】
ここでは具体的にバーナー10及びランス12として示されている周辺装置は、アーク炉2に対して電気的に絶縁されており、それゆえ、安全上の理由から、個別に、アース線4によってアースされている。アース線4又は4’には、安全装置3又は3’が設けられており、当該安全装置は、安全スイッチ8及び一体化された電流計6の形状で構成されている。溶融材料16とランス12との間に破線で概略的に示されている部分アーク11が生じる場合、著しい電流がアース線4を通って流れ、当該電流は、電流計6によって検出され、100msよりも短い時間、好ましくは10msよりも短い時間で、安全スイッチの開放をもたらす。従って、アース線4、4’は、数ミリ秒の内に遮断され、部分アーク11は、好ましくは完全に形成される前に崩壊する。それによって、周辺装置、当該実施例では、ランス12の破損は、アース線を迅速に遮断することによって防止される。
【0018】
その際、アース線は、好ましくは短時間のみ、すなわち数秒のみ、故障アークが消失し得るのに十分な長さの分だけ遮断されるので、その他の周辺装置には、一次損傷又は二次損傷は生じ得ない。アース線4には、好ましくはアーク炉2の近くに、対応する安全スイッチ8又は安全装置3が設けられる。故障の場合、すなわち、危険にさらされた周辺部材に対して故障アーク11が生じた場合、アースに対して安全スイッチ8を通って流出するアーク電流は、数ミリ秒の内に制限され、その後遮断され、それによって、アーク炉2のカバー13内の冷却剤供給における一次損傷も回避され、それによって、図には詳細に示されていない、当該冷却剤供給の溶融も回避される。それによって、冷却水の流出によって起こり得る蒸気爆発に関して、より高い安全性も得られる。
【0019】
さらに、安全スイッチ8又は安全装置3が全体として、アース線4において、短時間アースされていない設備部分に人間が動作中に接触し得ない程度に、炉の近くに取り付けられていることが合理的である。周辺装置へのガス供給導管は、少なくとも数センチメートルという、少なくとも短い距離に亘って、数100Vから1kVという対応する電圧の絶縁に十分であるように絶縁して供給され、当該領域の外側では、接触しても安全であるように再びアースされなければならない。
【符号の説明】
【0020】
2 アーク炉
3 安全装置
4 アース線
6 電流計
8 安全スイッチ
10 バーナー
11 部分アーク
12 酸素ランス
13 冷却されたカバー
14 電極
15 内側空間
16 スクラップ
18 溶融物
20 絶縁体