特許第6419975号(P6419975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419975
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】鋳造部品を識別する方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/00 20060101AFI20181029BHJP
   B22D 29/00 20060101ALI20181029BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   B22C9/00 Z
   B22D29/00 G
   B22D19/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-535352(P2017-535352)
(86)(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公表番号】特表2018-507112(P2018-507112A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】IB2016000076
(87)【国際公開番号】WO2016132196
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】102015102308.3
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516375089
【氏名又は名称】ネマク エス エイ ビー デ シー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】Nemak, S.A.B. de C.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ソーステン ベーア
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゴードシュティナト
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0022774(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02196272(EP,A1)
【文献】 特開平02−219729(JP,A)
【文献】 特開平04−075761(JP,A)
【文献】 特開2001−300690(JP,A)
【文献】 特公昭50−017018(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00−19/16
B22C 9/02
B22D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可読情報(IG1、IG2)が装備された鋳造部品(G1、G2)を製造する方法であって:
a)識別要素(11、20)を供給するステップであって、該識別要素(11、20)は
‐一方の側面上に、情報(I1、I2)が装備された情報面(15、22)を備え、および
‐他方の側面上に、前記鋳造部品(G1、G2)に対して割り当てられ、および同様に情報(I1、I2)が表面に存在する鋳造部品面(14、21)を備えるステップと;
b)前記識別要素(11、20)を、鋳造されるべき前記鋳造部品(G1、G2)を成形する型キャビティ(7)を画定する鋳型(1)内に配置するステップであって、前記識別要素(11、20)を、前記型キャビティ(7)に割り当てられた鋳型表面(10)上に、前記情報面(15、22)が前記型キャビティ(7)に対して覆われ、一方前記識別要素(11、20)の前記鋳造部品面(14、21)は、前記型キャビティ(7)に割り当てられ、露出されるよう配置するステップと;
c)金属溶湯(M)を前記鋳型(1)内に注ぎ、前記識別要素(11、20)の前記鋳造部品面(14、21)を前記金属溶湯(M)で濡らすステップと;
d)前記金属溶湯(M)を凝固させ、前記鋳造部品(G1、G2)を成形するステップであって、鋳造または凝固の間に、前記識別要素(11、20)の前記鋳造部品(G1、G2)に対する、接合、形状接続または圧入接続を生じさせ、および前記金属溶湯(M)の鋳造または凝固の間に、前記鋳造部品面(14、21)上に存在する前記情報(I1、I2)を、刻印により、前記鋳造部品(G1、G2)の割り当てられた表面(18)上に複製するステップと;
e)前記鋳造部品(G1、G2)を前記鋳型(1)から脱型するステップと;
f)前記鋳造部品(G1、G2)を鋳肌掃除するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記識別要素(11、20)を、前記鋳造部品(G1、G2)の続く処理の間に除去することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鋳造部品(G1、G2)に熱処理を施すこと特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
鋳造部品(G1、G2)に、続く機械的処理を施し、該機械的処理において、前記鋳造部品(G1、G2)が機械的作用を受けること特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
識別要素(20)は、金属板帯であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記識別要素(20)において、情報面(22)上の情報(I1)は、鋳造部品面(21)上の情報(I2)と反対に配置することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記識別要素(20)において、前記情報面(22)および前記鋳造部品面(21)上の情報(I1、I2)の項目は、互いにオフセットするよう配置することを特徴とすることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
識別要素(11)は、金属板アングル材であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記識別要素(11)は、一方の脚部(12)上に鋳造部品面(14)を備え、および他方の脚部(13)上に情報面(15)を備えることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
識別要素(11、20)上に装備された情報(I1、I2)の項目のうち、少なくとも1つの項目は、機械可読であることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
機械可読である前記情報(I1、I2)はデータから構成され、該データにより、鋳造部品(G1、G2)が製造された日時、または該鋳造部品(G1、G2)の鋳造パラメータが決定可能であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
データベースに記憶されたデータが、前記鋳造部品(G1、G2)上に複製された機械可読情報(IG1、IG2)に割り当てられていることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳造部品(G1、G2)が受ける各工程ステップにより、更なる可読データが、データベースに割り当てられたデータにおいて、前記鋳造部品(G1、G2)上に複製された機械可読情報(IG1、IG2)の項目に割り当てられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
鋳型(1)は、少なくとも部分的に、成形材料からなる心型(2乃至6、8)から構成することを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
識別要素(11、20)を、隣接する領域と共に、前記心型(2乃至6、8)のうちの1つの心型の表面(10)内へ、埋め込み式で挿入することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可読情報が装備された鋳造部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで、本発明に従って製造された鋳造部品は、鋳造により一般的に製造され、完全に凝固され、および鋳型から脱型された部品を含むものとする。そのため、本発明に従って製造された種類の鋳造部品には、押湯部、ゲート部、注入口、継目のような、鋳造部品を鋳造するために必要な成形部材は無い。これらは通常、凝固の後、技術用語では「鋳肌掃除(フェトリング)」とも呼ばれる続くステップにより除去される。
【0003】
本発明に従って製造された鋳造部品は、特に内燃機関を製造するための部品である。従って、本発明に従って製造された鋳造部品には、特に内燃機関用に設計されたシリンダヘッドおよびクランクケースが含まれている。
【0004】
ここで問題となっている種類のワークピースには、実用において高い負荷がかかるため、その品質に対して課される要件が益々高まっている。こうした要件とは、ワークピースの機械的特性および寸法安定性の双方に関するものである。鋳物の品質は、製造工程から極めて重要な影響を受けるため、鋳造ワークピースが製造される間に受ける異なる工程ステップを追跡し、およびそれらの工程ステップを対応する鋳造部品に割り当てることが、より一層重要となっている。ここで、製造工程において極めて重要であり、および対応する鋳造製品の品質または性能特性に影響を及ぼす可能性のある全ての決定的要素を十分に熟知すること、およびそれらを追跡可能とすることが求められている。製造データのそうした追跡可能性を各鋳物に個々に割り当てることにより、製品の欠陥が決定された場合に、それらの欠陥から学び、および製造工程に対し、対応する修正を実行可能である。このようして、工程を絶えず最適化可能である。
【0005】
この観点において、重要な製造データは、例えば製造日時、鋳込速度、鋳造温度、製造プラントの種類等である。
【0006】
各鋳造部品を一意的に個別化するために必要な要求される詳細を有する情報を鋳造部品に付加するための、従来技術から既知である1つの方法は、キャビティ、通路または鋳造部品の外輪郭等を鋳造するために鋳型内で使用される心型を与えることである。心型には、レーザにより、一意的な文字列であるネガ型画像が施されており、この一意的な文字列が、鋳造工程中に鋳造体上に複写されて、鋳造後に可視化される。
【0007】
鋳造部品上に複写された情報は、鋳造工程において、例えば日本公開特許公報第04075761号明細書に記載の自動作動装置を使用して、取込可能である。
【0008】
欧州登録特許第0363791号明細書は、鋳造部品を識別する簡易な方法を開示する。この場合、鋳造の直後に、各鋳造部品に関する情報を記載した付け札を、依然として自由に流れる状態の溶湯の表面に配置し、付け札をそこで浮遊させ、および付け札上の突起部を溶湯内に到達させる。凝固の後、付け札は、得られた鋳造部品に固く接着する。しかしながらこの手順のためには、鋳型内に注がれた溶湯において、より広範な表面部分を自由に使用可能とする必要がある。このためには、開放型の鋳型が必要とされる。しかしながらそうした鋳型は、現代の鋳造工程を用いる場合には不可能である。
【0009】
この問題を解決するために、欧州登録特許第2196272号明細書において、以下の方法が提案されている。識別要素として機能し、押湯部内、または凝固後および鋳型から脱型後に得られる鋳造ブランク材の別の成形部材内に挿入されて鋳造される少なくとも1つの部分を備えるコードキャリアを、プレハブ型に組み立てる。このようにしてコードキャリアは、分離不能な状態で鋳造ブランク材と一体化されている。コードキャリア上に含まれている情報は、容易に取込可能であり、例えばデータ処理装置において、自動的に各鋳造部品に割り当て可能である。しかしながら、コードキャリアにより可能であった、鋳造ブランク材の一意的な識別は、鋳肌掃除中に、そのうちの1つにコードキャリアが取り付けられた成形部材が、鋳造部品から除去されるのと共に、再び失われてしまう。これら成形部材は、鋳造には必要とされてはいるが、完成された鋳造部品の機能部品としては必要ではないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本公開特許公報第04075761号明細書
【特許文献2】欧州登録特許第0363791号明細書
【特許文献3】欧州登録特許第2196272号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この背景に対して、可読情報が恒久的に、特に使用可能な状態で装備された鋳造部品の製造を可能とする方法を提供するという本発明の課題が生じたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従いこの課題は、鋳造部品が、鋳造される際に、少なくとも請求項1に記載された製造ステップを受けることにより達成される。
【0013】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載され、および本発明に関する一般的な概念に従い、以下に詳述される。
【0014】
従って、本発明に従う可読情報が装備された鋳造体を製造する方法は、
a)識別要素を供給するステップであって、識別要素は
‐一方の側面上に、情報が装備された情報面を備え、および
‐他方の側面上に、鋳造部品に対して割り当てられ、および同様に情報が表面に存在する鋳造部品面を備えるステップと;
b)識別要素を、鋳造されるべき鋳造部品を成形する型キャビティを画定する鋳型内に配置するステップであって、識別要素を、型キャビティに割り当てられた鋳型表面上に、情報面が型キャビティに対して覆われ、一方識別要素の鋳造部品面は、型キャビティに割り当てられ、露出されるよう配置するステップと;
c)金属溶湯を鋳型内に注ぎ、識別要素の鋳造部品面を金属溶湯で濡らすステップと;
d)金属溶湯を凝固させ、鋳造部品を成形するステップであって、鋳造または凝固の間に、識別要素の鋳造部品に対する、堅固な接合、形状接続または圧入接続を生じさせ、および金属溶湯の鋳造または凝固の間に、鋳造部品面上に存在する情報を、刻印により、鋳造部品の割り当てられた表面に複製するステップと;
e)鋳造部品を鋳型から脱型するステップと;
f)鋳造部品を鋳肌掃除するステップと、を含む。
【0015】
本発明にとり重要なことは、2つの異なる表面上に情報を保持する識別要素が使用されることである。つまり一方では、金属溶湯が鋳型内に注がれる際に、溶湯と接触する鋳造部品面上に情報が保持されるため、鋳造部品面上に存在する情報が、鋳造部品の溶湯と接触し、鋳造部品の割り当てられた表面上に、刻印により転写され、および鋳造部品が完全に凝固された際に、その表面に情報が存在する、ということである。
【0016】
同時に、識別要素の、完全に凝固された鋳造部品に対する形状接続、堅固な接合または圧入接続が生じる。
【0017】
こうした接続は、例えば、鋳造の間に型キャビティ内に流入する金属溶湯が鋳造部品面自体に接触することにより、その上に鋳造部品面が構成された識別要素の部分の周囲、または識別要素の部分に対して金属溶湯が流れることにより、または識別要素に追加的に装備され、同様に金属溶湯が流入、充填し、または金属溶湯に包囲される成形部材等により発生する。
【0018】
このようにして、凝固する金属溶湯が識別要素を、少なくとも識別要素の周囲において包含するため、形状接続、および場合により圧入接続が生じる。識別要素を構成する材料の種類に応じて、追加的または代替的に、識別要素において金属溶湯で濡れた部分が溶解する可能性があり、金属溶湯から成形された鋳造部品と識別要素の間が堅固に接合される。
【0019】
識別要素の鋳造部品に対する接続を補助するために備えられる成形部材は、識別要素内に成形された刻み目、開口および通路とすることが可能である。鋳造の間に、型キャビティが溶湯で充填されると、金属溶湯はこれらに浸透する。また成形部材は、突起部、レッジ部等とすることも可能である。これらは、識別要素が鋳型内に配置される場合、型キャビティ内へ突出し、および鋳造の間に、型キャビティに流入する溶湯に封入される。
【0020】
識別要素は一方、鋳造部品面から反対の別の表面、つまり情報面上にも情報を保持する。情報面は、鋳造部品面から離れて配置されている。および識別要素が鋳型内に配置されると、情報面は、型キャビティに対して封止され、および型キャビティが充填されると、対応して金属溶湯とは接触しない、また接触したとしても、情報面に保持された情報の可読性を損なわない僅かの範囲で接触する。
【0021】
本発明に従うアプローチの場合、凝固され、および鋳型から脱型された後に得られる鋳造ブランク材は、鋳造ブランク材に堅固に接続された識別要素を保持する。およびこの識別要素は、今は露出されている情報面上に存在する情報により、対応する鋳造部品を、詳細かつ一意的に、信頼性を有して識別可能である。
【0022】
鋳型から脱型後に得られた鋳造部品は、その後、続く処理ステップを受ける。処理ステップは、完成のために通常実行されるステップである。特に、依然として鋳造部品上に残る押し湯部、注入口、ゲート部、継目、および鋳型の接着残余物を除去するために、鋳造部品を鋳肌掃除可能である。
【0023】
鋳肌掃除の間に、鋳造部品は通常、研磨材吹付処理を受ける。研磨材吹付処理において、鋳造部品は、高い運動エネルギーで鋳造部品に当たる粒子ジェットに曝される。この処理の間、識別要素の露出された情報面もまた、目的とされた機械的衝撃に曝され、その上に表示された情報が破壊される可能性がある。しかしながら、鋳造部品に接する鋳造部品面および、鋳造部品において、鋳造部品面に覆われて鋳造部品面から転写された情報が装備された表面部分は、識別要素において鋳造部品面が存在する部分により、研磨材吹付処理に対して保護されている。
【0024】
識別要素が、鋳肌掃除工程の最後のステップにおいて、鋳造部品から分離される場合、鋳造部品は、鋳造部品面から鋳造部品に転写された情報を、従前に識別要素の鋳造部品面により覆われていた場所で、自由に可視の状態で保持する。
【0025】
そのため本発明に従うアプローチは、完成された鋳造部品上に、複雑な情報を、極めて簡易な方法を使用して複製することに成功している。この情報は、その場所に恒久的に残存し、および任意の適切な自動読取装置により、取込可能である。
【0026】
本発明に従って製造された鋳造部品は、そうした鋳造部品を製造する間に通常提供される、全ての製造ステップを受けることが可能である。従って鋳造部品は、鋳造部品の機械的特性を設定するために、熱処理を受けることが可能である。
【0027】
本発明に従う方法は、特に以下の工程に適している。つまり、鋳造部品が鋳型内で鋳造され、識別要素が鋳型の表面に配置される。鋳型は、少なくともその表面の領域において、心型から構成されている。この心型は、自体公知の方法で、型砂、および型砂を結合させる結合材と任意の添加剤を含む成形材料から製造可能であり、鋳造部品を取り外した後に破壊される。本発明に従う方法は、特に、鋳型内での鋳造部品の鋳造に適している。こうした鋳型は、自体公知の方法で、複数の上述のような心型から構成された心型パッケージとして構成されている。
【0028】
本発明に従って設計および使用される識別要素の製造には、温度耐性が十分に高い、任意の材料が適している。材料は、金属溶湯と接触する際に形状を保ち、および金属溶湯との接触に起因して反応せず、材料により、金属溶湯または金属溶湯に鋳造された鋳造部品の特性が、恒久的に損なわれることがないものとする。特に識別要素は、鋼またはアルミニウム材料から製造された金属板で構成可能である。
【0029】
識別要素は、帯状とすることが可能である。このように設計することにより、識別要素において、帯の一方の側の表面が鋳造部品面を構成し、反対側の表面が情報面を構成する。その場合、識別要素において、情報面上の情報は、鋳造部品面上の情報と反対に配置されている。帯状の識別要素は、鋳造の前に、識別要素の情報面と共に、鋳型の対応する平坦な表面上に、容易に、平坦かつ密着させて配置可能である。
【0030】
必要であれば、溝を鋳型に施すことが可能である。この溝内に、識別要素の少なくとも情報面を保持する部分を、隣接する領域と共に、形状接続的に挿入するか、または埋め込む。
【0031】
識別要素が帯状である場合に、情報を構成する可能性を最大とするために、識別要素において、有利には、情報を情報面上および鋳造部品面上に、互いにオフセットするよう配置可能である。
【0032】
これは、鋳造部品面上の情報が、鋳造部品面上にエンボス加工されているか、または鋳造部品面内に刻印されている場合に、特に有利である。
【0033】
エンボス加工または刻印されて、それぞれ鋳造部品面に装備された情報の表示は、鋳造部品面上に存在し、鋳造部品に転写されるべき情報のネガ像を描くパターンを、鋳造部品の割り当てられた表面に対してプレスすることにより、特に容易に、鋳造部品に転写可能である。情報を刻印、成形、彫り込み、または塗布により情報面に装備することには、このようにして表示された情報が、かなり長期間に亘って、過酷な鋳造作業の間に度々発生する研磨ストレスを受けた後でさえ、依然として可読である、という利点がある。
【0034】
しかしながら、情報を、適切な色等を使用して鋳造部品面または情報面に施すこともまた可能である。鋳造部品面上に施される情報の材料は、溶湯と接触する際に、鋳造部品に対して転写されるよう選択可能である。
【0035】
各場合でどのように転写されるかに関わらず、情報は、識別要素の鋳造部品面を介して、各場合で刻印状に鋳造部品上へと押印される。
【0036】
帯状設計に対して代替的に、識別要素は、特には金属板アングル材であるアングルピース状に設計可能である。鋳造部品面が、アングルピースの一方の脚部上に装備され、および情報面が、他方の脚部上に装備されている場合、溶湯による濡れに対して保護される情報面は、鋳型内に配置することが、特に容易である。従ってつまりは、情報面を保持する脚部が、鋳型の割り当てられた表面内に構成された溝内に適合可能である。
【0037】
鋳型の各表面が心型上に構成されている場合、識別要素は、すでに心型の製造の間に、心型上に配置可能である。そのため識別要素は、鋳型を組立てる際にも、識別要素の正しい位置に留まる。
【0038】
識別要素上に装備された情報は、自体公知の方法で、機械可読とすることが可能である。
【0039】
この種類の情報は、例えば、文字、および他の符号列、ドット、ダッシュ、またはハッチングの形状で識別要素に施される。これらは、光学走査系により信頼性を有して認識可能である。および例えば、これらにより、包括的な情報内容を、冗長データの形式で保存可能である。これらのデータにより、識別要素に保持された情報が部分的に可読でない場合にも、各鋳造体を一意的に識別可能である。
【0040】
識別要素上に装備された情報は、データマトリックスコード(DMC)の態様で表示可能である。安価な読取装置および書込装置が、国際標準化機構(ISO)により標準化されたこのコード用に市場で入手可能である。
【0041】
しかしながら、本発明に従って装備された識別要素が、他の形式のコードを保持可能とすることも、考慮可能である。従って、光学的可読コードに替わって、例えば、各トランスポンダーに、十分な耐熱性があるか、または過熱しないよう鋳造工程の間に保護されていれば、適切な読取装置を用いて読取可能なトランスポンダーコードも装備可能である。従って識別要素は、例えば、電波により非接触で読取可能なRFID(Radio Frequency Identification無線周波数認識装置)を保持可能である。
【0042】
本発明に従って装備される識別要素を、別個にプレハブ型に製造することで、識別要素に、予め鋳型の外側となる機械可読コードを装備可能となる。
【0043】
機械可読コードを、別個に製造された識別要素上に配置すること、およびその後、鋳造工程の間に識別要素を鋳造体に取り付けることで、包括的な情報内容を含むコードを使用可能となる。従って、識別要素上に記憶された情報は、鋳造部品が製造された日時、または鋳造部品の製造パラメータを決定可能なデータから構成可能である。しかしながら、識別要素自体に保持されるコードに、必須な製造パラメータの追跡に要求されるデータを記憶させることは、絶対的に必要というわけではない。それにかわり、対応する手順において、一意的かつ示差的な識別という観点において、コードが鋳造体を個別化することでも十分である。こうした識別は、例えば連続する数値範囲のうちの番号とすることが可能である。
【0044】
各鋳造体を十分に一意的な方法で個別化することにより、鋳造部品を、例えばデータベース内に保存された、その鋳造部品の完全な製造ヒストリーに割り当て可能である。このために鋳造部品は、鋳型から脱型された後に、情報面上に存在する情報により識別可能である。また、鋳造部品を鋳造する間、および続く処理ステップ、特に凝固の直後に続き、かつ鋳型からの脱型に伴う熱処理の間に適用された操作パラメータの実際値が、データベース上で、鋳造部品に対して割り当て可能である。
【0045】
鋳造部品が第一の一意的識別を受けた後に、鋳造部品の特性に影響を及ぼす可能性のある更なる製造ステップを受ける場合には、もちろん、鋳造部品に関連する既にデータ処理装置に記憶されたデータを、鋳造部品が受ける各ステップにより修正し、関連するデータを補完可能である。
【0046】
本発明は、例示的な実施形態の図面を参照し、以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】鋳型の概略的な側面図である。
図2図1の鋳型の開放状態を、部分的に破断した平面図である。
図3】角度を有する第1識別要素の概略的な透視図である。
図4図3の識別要素の正面視を有する、図1の鋳型の前面側壁部心型の概略図である。正面視は、識別要素において、鋳型の型キャビティに割り当てられた側面のものである。
図5図4に従って成形された前面側壁部心型を備える、図1の鋳型により鋳造された鋳造部品の部分の、鋳肌掃除前の概略的な透視図である。
図6】鋳肌掃除後の、図5の部分の概略的な透視図である。
図7】帯状の第2識別要素の一方の表面の、正面視の概略図である。
図8図7の識別要素の他方の表面の、正面視の概略図である。
図9図7および図8の識別要素の正面視を有する、図4の鋳型の前面側壁部心型の概略図である。正面視は、識別要素において、鋳型の型キャビティに割り当てられた側面のものである。
図10図9に従って成形された前面側壁部心型を備える、図1の鋳型により鋳造された鋳造部品の部分の、鋳肌掃除前の概略的な透視図である。
図11】鋳肌掃除後の、図10の部分の概略的な透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
この場合、内燃機関のクランクケースである鋳造部品G1、G2を鋳造するための図1の鋳型1は、従来通りの方法で、底部心型2、頂部心型3、長手方向側壁部心型4a、4bおよび前面側壁部心型5、6を備えた心型パッケージとして成形されている。各心型2乃至6は、ここでは1部品として図示されているが、もちろん他方では、2個以上の単一の心型により自体公知の方法で構成可能である。
【0049】
追加的に、明確さに配慮してここでは図示されていない押湯部、注入口、ゲート部等が、鋳型1の心型2乃至6上に成形されている。これらを介して、鋳型1に包囲された型キャビティ7を、金属溶湯で充填可能である。この場合金属溶湯は、例えば従来のアルミニウム鋳造合金である。
【0050】
更に、心型8およびインサート9が型キャビティ7内に配置されている。これらは、シリンダ、油通路、水通路等を、鋳造部品G1、G2内に、自体公知の方法で成形する。
【0051】
鋳型1の底部心型2は、金属材料から製造可能であり、再使用可能である。一方、鋳型1の他の心型3乃至6、8は、こうした目的用に既知の成形材料から製造されており、鋳造部品G1、G2が鋳型から脱型される際に、破壊される。
【0052】
識別要素11は、帯状鋼板を曲げてアングルピース状に成形されたものであり、前面側壁部5の表面10上に配置されている。前面側壁部5は、型キャビティ7に割り当てられている。
【0053】
識別要素11は、互いに直角をなす2本の脚部12、13を備える。各脚部12、13は、間に挟んだ角度βから反対の側面に、平坦な外表面を備える。脚部12の当該外表面は、鋳造部品面14を構成する。鋳造部品面14は、型キャビティ7に割り当てられており、従ってその都度鋳造される鋳造部品G1、G2に割り当てられる。一方、それに対して直角をなして配置された第2脚部13の外表面は、情報面15を構成する。各情報I1、I2はデータマトリックスコード(DMC)としてコードされ、鋳造部品面14と情報面15の両面に表示されている。各情報I1、I2は、各表面に刻印された直径訳1mmの球形キャップ状の凹部V1、V2であり、データマトリックスコード(DMC)に対応して配置された凹部V1、V2により表示されている。
【0054】
鋳造部品G1を鋳造する前に、情報I1が装備された情報面15を備えた識別要素11の脚部13は、前面側壁部心型5の表面10内へ形成された溝16内へ埋め込まれる。脚部13は、溝16内に極めて完全に嵌合する。そのため、鋳造の間に金属溶湯が溝内に流入することはなく、特に情報面15において情報I1が配置された領域が、金属溶湯で濡れることがない。同時に、脚部13は溝16内へ十分に深く押し込まれるため、識別要素11の他の脚部12は、脚部12の鋳造部品面14から逸れた表面17により、前面側壁部心型5の表面10上に可及的に密に接触する。
【0055】
金属溶湯は、鋳型1の型キャビティ7中に注がれると、識別要素11の脚部12の周囲を流れる。そのため一方では、鋳造部品面14内へ情報I2として形成された凹部V1が、金属溶湯で充填され、他方では、金属溶湯が脚部12の縁部を包囲する。
【0056】
鋳型1中に充填された金属溶湯は、遅くとも、鋳造の終了時には凝固し始める。
【0057】
鋳造部品GIが完全に凝固する前に、既に鋳型1を、自体公知の方法で熱処理炉へと運搬可能である。熱処理炉において熱を供給することにより、鋳型の崩壊が促進され、同時に鋳造部品G1が熱処理される。当然ながら、鋳造部品G1は他の任意の方法で凝固可能であり、および続いて鋳型から脱型可能である。
【0058】
鋳造部品G1が凝固し、鋳型から脱型された後に、識別要素11は鋳造部品G1の表面18上に堅固に座している。表面18は、前面側壁部心型5の表面10により、鋳造部品G1上に成形されている。同時に識別要素11は、凝固された金属溶湯Mにより、少なくとも形状接続的に、確実に保持されている。金属溶湯Mは、鋳造の間に脚部12の縁部の周囲を流れ、および部分的に脚部12の背後を走り、およびこのようにして脚部12を包含している。対照的に、情報面15上に情報I1を保持する脚部13は、金属溶湯に濡れることのないままに留まる。対応して情報I1は今や、図示されていない、対応する読取装置により、容易に取込可能である。および、品質保証とエラー追跡のために要求される全ての工程データは、情報I1により、データベースにおいて、鋳造部品G1に割り当て可能である。
【0059】
その後、鋳造部品G1は、続く機械的処理(「鋳肌掃除」)を受ける。機械的処理において、自体公知の方法で、鋳造部品G1に接着している鋳型の残余物、鋳造には必要とされているが、鋳造部品の機能のためには必要ではない成形部材、および心型の接合部において避けることのできない継目等が、鋳造部品G1から除去される。鋳造部品G1は、続くサンドブラスト処理を受ける。サンドブラスト処理において、識別要素11も鋳造部品G1から分離され、および、識別要素11の下に存在し、それまで脚部12の、鋳造部品G1に接する鋳造部品面14に覆われていた、鋳造部品G1の表面部分19が露出される。
【0060】
従前から、鋳造部品面14に刻印された凹部V1により描かれていた情報I2は、今や恒久的に、ドット状の凸部E1の対応するパターンで表面部分19上に複写されている。このようにして鋳造部品G1上に成形された情報IG1は、いつでも再読み込み可能であるため、鋳造部品G1の長い使用可能寿命の後でさえ、鋳造部品G1がどのように製造されたか、およびいずれの工程パラメータが製造の間に設定されていたか、依然として詳細に決定可能である。
【0061】
上述した、鋳造部品G1の製造と比較すると、鋳造部品G2を製造する場合、同様に金属板材料から製造された帯状の識別要素20が使用されている。
【0062】
識別要素20の一方の表面は、鋳造部品面21として機能する。一方、識別要素20の反対側に存在する表面は、情報面22として機能する。情報面22および鋳造部品面21は、識別要素20の長手方向延在部Lに対して、2つの長手方向半部L1、L2に分割されている。情報面22は、その長手方向半部L1に割り当てられた情報I1を保持する。一方鋳造部品面21は、その長手方向半部L2に割り当てられた情報I2を保持する。従って情報面22および鋳造部品面21の情報I1、I2の項目は、長手方向延在部Lに対して、互いにオフセットするよう配置されている。識別要素20に関しては、情報I1、I2の項目は、各表面21、22内へ凹部V1、V2により描かれている。
【0063】
識別要素20も同様に、前面側壁部心型5の表面10上に配置されている。そのためこの場合、受容部23が、前面側壁部心型5の表面10内へ形成されている。受容部23の形状および寸法は、識別要素20に対して適合されている。そのため識別要素20は、受容部23の平坦な底面上に堅固に座す。および鋳造の間に識別要素20に対して流れる溶湯は、識別要素20の縁部へ容易に浸透可能である。
【0064】
鋳造部品G2を成形するために、金属溶湯が鋳造および凝固された後、凝固された鋳造金属が識別要素20の縁部を包含するため、鋳型から脱型の後、識別要素20もまた、少なくとも形状接続的に、確実かつ堅固に鋳造部品G2上に保持されている。識別要素20の鋳造部品面21上に存在し、今や鋳造部品G2上に堅固に座している情報I2は、鋳造部品G1の場合と同様に、識別要素20に覆われていた鋳造部品G2の表面部分24内に刻印されている。一方、今や覆われていない、識別要素20の情報面22上に装備された情報I1は、露出され、および読取装置により取り込み可能である。
【0065】
続く鋳造部品G2の鋳肌掃除の間、識別要素20もまた除去される。およびその結果、従前まで識別要素20に覆われていた、鋳造部品G2の表面部分24が露出され、凸部E2により表示され、表面部分24上に複写された情報IG2を備える。
【0066】
従って、本発明に従う方法を用いて、可読情報IG1、IG2が恒久的に装備された鋳造部品G1、G2を製造可能である。そのために、一方の側面上に、情報I1、I2が装備された情報面15、22を備え、および他方の側面上に、鋳造部品G1、G2に対して割り当てられ、および同様に情報I1、I2が装備された鋳造部品面14、21を備える識別要素11、20を、鋳型1の型キャビティ7に対して割り当てられた鋳型表面10上に配置する。情報面15,22が覆われ、一方識別要素11、20の鋳造部品面14、21は、型キャビティ7内で露出される。その後、金属溶湯Mを鋳型1内に注ぎ、鋳造部品面14、21を濡らし、金属溶湯Mの鋳造または凝固の間に、識別要素11、20の鋳造部品G1、G2に対する、堅固な接合、形状接続または圧入接続を生じさせ、および鋳造部品面14、21上に存在する情報I1、I2を、刻印により、鋳造部品G1、G2の割り当てられた表面18上に複製する。最後に、鋳造部品G1、G2を、鋳型1から脱型し、および従来の方法により鋳肌掃除する。
【符号の説明】
【0067】
1 鋳造部品G1、G2を鋳造する鋳型
2 鋳型1の底部心型
3 鋳型1の頂部心型
4a、4b 鋳型1の長手方向側壁部心型
5、6 鋳型1の前面側壁部心型
7 鋳型1の型キャビティ
8 鋳型1の心型
9 鋳型1のインサート
10 型キャビティ7に割り当てられた前面側壁部5の表面
11 識別要素
12、13 識別要素11の脚部
14 識別要素11の鋳造部品面
15 識別要素11の情報面
16 表面10内の溝
17 脚部12の、鋳造部品面14から逸れた表面
18 前面側壁部心型5の面10により鋳造部品G1上に成形された表面
19 脚部12の、鋳造部品G1に接する鋳造部品面14に覆われていた、鋳造部品G1の表面部分
β 脚部12、13の間の角度
E1 情報IG1を表す凸部
G1 鋳造部品
I1、I2 情報
IG1 鋳造部品G1上の情報
M 凝固された金属溶湯
V1、V2 凹部
20 識別要素
21 識別要素20の鋳造部品面
22 識別要素11の情報面
23 受容部
24 識別要素20に覆われていた、鋳造部品G2の表面部分
E2 情報IG2を表す凸部
G2 鋳造部品
IG2 鋳造部品G2上の情報
L 識別要素20の長手方向延在部
L1、L2 識別要素20の長手方向半部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11