【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従いこの課題は、鋳造部品が、鋳造される際に、少なくとも請求項1に記載された製造ステップを受けることにより達成される。
【0013】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載され、および本発明に関する一般的な概念に従い、以下に詳述される。
【0014】
従って、本発明に従う可読情報が装備された鋳造体を製造する方法は、
a)識別要素を供給するステップであって、識別要素は
‐一方の側面上に、情報が装備された情報面を備え、および
‐他方の側面上に、鋳造部品に対して割り当てられ、および同様に情報が表面に存在する鋳造部品面を備えるステップと;
b)識別要素を、鋳造されるべき鋳造部品を成形する型キャビティを画定する鋳型内に配置するステップであって、識別要素を、型キャビティに割り当てられた鋳型表面上に、情報面が型キャビティに対して覆われ、一方識別要素の鋳造部品面は、型キャビティに割り当てられ、露出されるよう配置するステップと;
c)金属溶湯を鋳型内に注ぎ、識別要素の鋳造部品面を金属溶湯で濡らすステップと;
d)金属溶湯を凝固させ、鋳造部品を成形するステップであって、鋳造または凝固の間に、識別要素の鋳造部品に対する、堅固な接合、形状接続または圧入接続を生じさせ、および金属溶湯の鋳造または凝固の間に、鋳造部品面上に存在する情報を、刻印により、鋳造部品の割り当てられた表面に複製するステップと;
e)鋳造部品を鋳型から脱型するステップと;
f)鋳造部品を鋳肌掃除するステップと、を含む。
【0015】
本発明にとり重要なことは、2つの異なる表面上に情報を保持する識別要素が使用されることである。つまり一方では、金属溶湯が鋳型内に注がれる際に、溶湯と接触する鋳造部品面上に情報が保持されるため、鋳造部品面上に存在する情報が、鋳造部品の溶湯と接触し、鋳造部品の割り当てられた表面上に、刻印により転写され、および鋳造部品が完全に凝固された際に、その表面に情報が存在する、ということである。
【0016】
同時に、識別要素の、完全に凝固された鋳造部品に対する形状接続、堅固な接合または圧入接続が生じる。
【0017】
こうした接続は、例えば、鋳造の間に型キャビティ内に流入する金属溶湯が鋳造部品面自体に接触することにより、その上に鋳造部品面が構成された識別要素の部分の周囲、または識別要素の部分に対して金属溶湯が流れることにより、または識別要素に追加的に装備され、同様に金属溶湯が流入、充填し、または金属溶湯に包囲される成形部材等により発生する。
【0018】
このようにして、凝固する金属溶湯が識別要素を、少なくとも識別要素の周囲において包含するため、形状接続、および場合により圧入接続が生じる。識別要素を構成する材料の種類に応じて、追加的または代替的に、識別要素において金属溶湯で濡れた部分が溶解する可能性があり、金属溶湯から成形された鋳造部品と識別要素の間が堅固に接合される。
【0019】
識別要素の鋳造部品に対する接続を補助するために備えられる成形部材は、識別要素内に成形された刻み目、開口および通路とすることが可能である。鋳造の間に、型キャビティが溶湯で充填されると、金属溶湯はこれらに浸透する。また成形部材は、突起部、レッジ部等とすることも可能である。これらは、識別要素が鋳型内に配置される場合、型キャビティ内へ突出し、および鋳造の間に、型キャビティに流入する溶湯に封入される。
【0020】
識別要素は一方、鋳造部品面から反対の別の表面、つまり情報面上にも情報を保持する。情報面は、鋳造部品面から離れて配置されている。および識別要素が鋳型内に配置されると、情報面は、型キャビティに対して封止され、および型キャビティが充填されると、対応して金属溶湯とは接触しない、また接触したとしても、情報面に保持された情報の可読性を損なわない僅かの範囲で接触する。
【0021】
本発明に従うアプローチの場合、凝固され、および鋳型から脱型された後に得られる鋳造ブランク材は、鋳造ブランク材に堅固に接続された識別要素を保持する。およびこの識別要素は、今は露出されている情報面上に存在する情報により、対応する鋳造部品を、詳細かつ一意的に、信頼性を有して識別可能である。
【0022】
鋳型から脱型後に得られた鋳造部品は、その後、続く処理ステップを受ける。処理ステップは、完成のために通常実行されるステップである。特に、依然として鋳造部品上に残る押し湯部、注入口、ゲート部、継目、および鋳型の接着残余物を除去するために、鋳造部品を鋳肌掃除可能である。
【0023】
鋳肌掃除の間に、鋳造部品は通常、研磨材吹付処理を受ける。研磨材吹付処理において、鋳造部品は、高い運動エネルギーで鋳造部品に当たる粒子ジェットに曝される。この処理の間、識別要素の露出された情報面もまた、目的とされた機械的衝撃に曝され、その上に表示された情報が破壊される可能性がある。しかしながら、鋳造部品に接する鋳造部品面および、鋳造部品において、鋳造部品面に覆われて鋳造部品面から転写された情報が装備された表面部分は、識別要素において鋳造部品面が存在する部分により、研磨材吹付処理に対して保護されている。
【0024】
識別要素が、鋳肌掃除工程の最後のステップにおいて、鋳造部品から分離される場合、鋳造部品は、鋳造部品面から鋳造部品に転写された情報を、従前に識別要素の鋳造部品面により覆われていた場所で、自由に可視の状態で保持する。
【0025】
そのため本発明に従うアプローチは、完成された鋳造部品上に、複雑な情報を、極めて簡易な方法を使用して複製することに成功している。この情報は、その場所に恒久的に残存し、および任意の適切な自動読取装置により、取込可能である。
【0026】
本発明に従って製造された鋳造部品は、そうした鋳造部品を製造する間に通常提供される、全ての製造ステップを受けることが可能である。従って鋳造部品は、鋳造部品の機械的特性を設定するために、熱処理を受けることが可能である。
【0027】
本発明に従う方法は、特に以下の工程に適している。つまり、鋳造部品が鋳型内で鋳造され、識別要素が鋳型の表面に配置される。鋳型は、少なくともその表面の領域において、心型から構成されている。この心型は、自体公知の方法で、型砂、および型砂を結合させる結合材と任意の添加剤を含む成形材料から製造可能であり、鋳造部品を取り外した後に破壊される。本発明に従う方法は、特に、鋳型内での鋳造部品の鋳造に適している。こうした鋳型は、自体公知の方法で、複数の上述のような心型から構成された心型パッケージとして構成されている。
【0028】
本発明に従って設計および使用される識別要素の製造には、温度耐性が十分に高い、任意の材料が適している。材料は、金属溶湯と接触する際に形状を保ち、および金属溶湯との接触に起因して反応せず、材料により、金属溶湯または金属溶湯に鋳造された鋳造部品の特性が、恒久的に損なわれることがないものとする。特に識別要素は、鋼またはアルミニウム材料から製造された金属板で構成可能である。
【0029】
識別要素は、帯状とすることが可能である。このように設計することにより、識別要素において、帯の一方の側の表面が鋳造部品面を構成し、反対側の表面が情報面を構成する。その場合、識別要素において、情報面上の情報は、鋳造部品面上の情報と反対に配置されている。帯状の識別要素は、鋳造の前に、識別要素の情報面と共に、鋳型の対応する平坦な表面上に、容易に、平坦かつ密着させて配置可能である。
【0030】
必要であれば、溝を鋳型に施すことが可能である。この溝内に、識別要素の少なくとも情報面を保持する部分を、隣接する領域と共に、形状接続的に挿入するか、または埋め込む。
【0031】
識別要素が帯状である場合に、情報を構成する可能性を最大とするために、識別要素において、有利には、情報を情報面上および鋳造部品面上に、互いにオフセットするよう配置可能である。
【0032】
これは、鋳造部品面上の情報が、鋳造部品面上にエンボス加工されているか、または鋳造部品面内に刻印されている場合に、特に有利である。
【0033】
エンボス加工または刻印されて、それぞれ鋳造部品面に装備された情報の表示は、鋳造部品面上に存在し、鋳造部品に転写されるべき情報のネガ像を描くパターンを、鋳造部品の割り当てられた表面に対してプレスすることにより、特に容易に、鋳造部品に転写可能である。情報を刻印、成形、彫り込み、または塗布により情報面に装備することには、このようにして表示された情報が、かなり長期間に亘って、過酷な鋳造作業の間に度々発生する研磨ストレスを受けた後でさえ、依然として可読である、という利点がある。
【0034】
しかしながら、情報を、適切な色等を使用して鋳造部品面または情報面に施すこともまた可能である。鋳造部品面上に施される情報の材料は、溶湯と接触する際に、鋳造部品に対して転写されるよう選択可能である。
【0035】
各場合でどのように転写されるかに関わらず、情報は、識別要素の鋳造部品面を介して、各場合で刻印状に鋳造部品上へと押印される。
【0036】
帯状設計に対して代替的に、識別要素は、特には金属板アングル材であるアングルピース状に設計可能である。鋳造部品面が、アングルピースの一方の脚部上に装備され、および情報面が、他方の脚部上に装備されている場合、溶湯による濡れに対して保護される情報面は、鋳型内に配置することが、特に容易である。従ってつまりは、情報面を保持する脚部が、鋳型の割り当てられた表面内に構成された溝内に適合可能である。
【0037】
鋳型の各表面が心型上に構成されている場合、識別要素は、すでに心型の製造の間に、心型上に配置可能である。そのため識別要素は、鋳型を組立てる際にも、識別要素の正しい位置に留まる。
【0038】
識別要素上に装備された情報は、自体公知の方法で、機械可読とすることが可能である。
【0039】
この種類の情報は、例えば、文字、および他の符号列、ドット、ダッシュ、またはハッチングの形状で識別要素に施される。これらは、光学走査系により信頼性を有して認識可能である。および例えば、これらにより、包括的な情報内容を、冗長データの形式で保存可能である。これらのデータにより、識別要素に保持された情報が部分的に可読でない場合にも、各鋳造体を一意的に識別可能である。
【0040】
識別要素上に装備された情報は、データマトリックスコード(DMC)の態様で表示可能である。安価な読取装置および書込装置が、国際標準化機構(ISO)により標準化されたこのコード用に市場で入手可能である。
【0041】
しかしながら、本発明に従って装備された識別要素が、他の形式のコードを保持可能とすることも、考慮可能である。従って、光学的可読コードに替わって、例えば、各トランスポンダーに、十分な耐熱性があるか、または過熱しないよう鋳造工程の間に保護されていれば、適切な読取装置を用いて読取可能なトランスポンダーコードも装備可能である。従って識別要素は、例えば、電波により非接触で読取可能なRFID(Radio Frequency Identification無線周波数認識装置)を保持可能である。
【0042】
本発明に従って装備される識別要素を、別個にプレハブ型に製造することで、識別要素に、予め鋳型の外側となる機械可読コードを装備可能となる。
【0043】
機械可読コードを、別個に製造された識別要素上に配置すること、およびその後、鋳造工程の間に識別要素を鋳造体に取り付けることで、包括的な情報内容を含むコードを使用可能となる。従って、識別要素上に記憶された情報は、鋳造部品が製造された日時、または鋳造部品の製造パラメータを決定可能なデータから構成可能である。しかしながら、識別要素自体に保持されるコードに、必須な製造パラメータの追跡に要求されるデータを記憶させることは、絶対的に必要というわけではない。それにかわり、対応する手順において、一意的かつ示差的な識別という観点において、コードが鋳造体を個別化することでも十分である。こうした識別は、例えば連続する数値範囲のうちの番号とすることが可能である。
【0044】
各鋳造体を十分に一意的な方法で個別化することにより、鋳造部品を、例えばデータベース内に保存された、その鋳造部品の完全な製造ヒストリーに割り当て可能である。このために鋳造部品は、鋳型から脱型された後に、情報面上に存在する情報により識別可能である。また、鋳造部品を鋳造する間、および続く処理ステップ、特に凝固の直後に続き、かつ鋳型からの脱型に伴う熱処理の間に適用された操作パラメータの実際値が、データベース上で、鋳造部品に対して割り当て可能である。
【0045】
鋳造部品が第一の一意的識別を受けた後に、鋳造部品の特性に影響を及ぼす可能性のある更なる製造ステップを受ける場合には、もちろん、鋳造部品に関連する既にデータ処理装置に記憶されたデータを、鋳造部品が受ける各ステップにより修正し、関連するデータを補完可能である。
【0046】
本発明は、例示的な実施形態の図面を参照し、以下に詳述される。