(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水素化ブロック共重合体(a)中の前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量が3〜13質量%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量が74〜96質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量が3〜13質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量の合計が6〜26質量%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)の水素化率が90mol%以上である、請求項1に記載のフィルム。
前記外層が、前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)(但し、当該ブロック共重合体(b1)は、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)を含まないものとする。)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が40〜100mol%であり、前記水素化ブロック共重合体(b1)の水素化率が80mol%以上であり、
前記外層中のポリプロピレン樹脂の含有量が60〜100質量%であり、
前記外層中の前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)の含有量が0〜40質量%である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルム。
前記内層が、前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は前記水素化ブロック共重合体(b1)(但し、当該ブロック共重合体(b1)は、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)を含まないものとする。)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が40〜100mоlmol%であり、前記水素化ブロック共重合体(b1)の水素化率が80mol%以上であり、
前記内層中のポリプロピレン樹脂の含有量が50〜95質量%であり、
前記内層中の前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)の含有量が5〜50質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルム。
水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)が10万〜30万であり、前記水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw)/(Mn)が1.01〜1.30である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のフィルム。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)で測定した、−20℃以下における積分溶出量が全積分溶出量の0.1%以上40%未満であり、−20℃を超え60℃未満の範囲における積分溶出量が全積分溶出量の20%以上95%未満であり、60℃以上150℃以下の範囲における積分溶出量が全積分溶出量の5%以上70%未満である、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のフィルム。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)で測定した10℃以上60℃未満の範囲における溶出成分の分子量分布(Mw/Mn)が1.05以上1.50以下である請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0011】
〔フィルム〕
本実施形態のフィルムは、少なくとも外層、中間層、及び内層を有する。
ここで、「外層」「内層」は、前記「中間層」の両面に積層された表面層であって、「外層」は、実際に使用に供された際に、最外側に位置する層を言う。
前記外層は、ポリプロピレン樹脂を含む。
前記中間層は、ポリプロピレン樹脂及び水素化ブロック共重合体(a)を含む。
前記内層は、ポリプロピレン樹脂を含む。
上記構成を有することにより、透明性及び柔軟性に優れたフィルムが得られる。
【0012】
(水素化ブロック共重合体(a))
前記水素化ブロック共重合体(a)は、分子中に、
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)と、
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、含む。
前記水素化ブロック共重合体(a)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量が1〜30質量%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量が69〜98質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量が1〜20質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量が1〜25mol%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の水素化前のビニル結合量が60〜100mol%であり、前記水素化ブロック共重合体の水素化率が80mol%以上である。
【0013】
ここで、「主体とする」とは、対象の単量体単位を、対象の重合体ブロック中に、50質量%以上含むことをいう。
本実施形態のフィルムの、柔軟性の観点から、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)、(B)における共役ジエン化合物の含有量は、それぞれ独立して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
本実施形態のフィルムの、機械的強度、耐衝撃性の観点から、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)におけるビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
【0014】
なお、本実施形態において、ブロック共重合体を構成する各単量体単位の命名は、当該単量体単位が由来する単量体の命名に従っているものとする。
例えば、「ビニル芳香族化合物単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「共役ジエン化合物単量体単位」とは、単量体である共役ジエン化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン化合物単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
【0015】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)、(B)における「水素化前のビニル結合量」とは、水素化前の重合体に組み込まれている共役ジエン化合物に起因する1,4−結合(シス及びトランス)と1,2−結合(但し、3,4−結合で重合体に組み込まれている場合には1,2−結合と3,4−結合の合計量をいう)の合計量に対する、1,2−結合量(但し、3,4−結合で重合体に組み込まれている場合には、1,2−結合と3,4結合の合計量)(mоl%)をいう。
ビニル結合量は核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)によって測定できる。
【0016】
水素化ブロック共重合体(a)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量は、1〜30質量%である。
水素化ブロック共重合体(a)中の前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性等の観点から、好ましくは2〜20質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、さらに好ましくは3〜13質量%である。
【0017】
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量は、1〜25mоl%である。
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量は、本実施形態のフィルムの水蒸気バリア性の観点から、好ましくは3〜23mol%であり、より好ましくは5〜20mol%である。
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
また、前記ビニル結合量は、極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の使用により制御することができる。
【0018】
水素化ブロック共重合体(a)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量は69〜98質量%である。
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性の観点から、好ましくは70〜97質量%であり、より好ましくは73〜96質量%であり、さらに好ましくは74〜96質量%である。
【0019】
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の水素化前のビニル結合量は、60〜100mоl%である。
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の水素化前のビニル結合量は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性の観点から、好ましくは63〜98mol%であり、より好ましくは65〜95mol%である。
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の水素化前のビニル結合量は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
また、前記ビニル結合量は、極性化合物等、ルイス塩基、エーテル、アミン等のビニル化剤の使用により制御することができる。
【0020】
本実施形態のフィルムにおいて、水素化ブロック共重合体(a)中の重合体ブロック(C)、及び(B)に使用される共役ジエン化合物は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
ジオレフィンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及びファルネセン等が挙げられる。
特に一般的なジオレフィンとしては、1,3−ブタジエン、及びイソプレンが挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、本実施形態のフィルムにおいて、水素化ブロック共重合体(a)中の重合体ブロック(S)に使用されるビニル芳香族化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましく用いられる。特に好ましくはスチレンである。重合体ブロック(S)は、1種のビニル芳香族化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上から構成されていてもよい。
なお、上記共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物は、後述する水素化ブロック共重合体(b1)や水素化ブロック共重合体(b2)にも適用することができる。
【0021】
水素化ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量は、1〜20質量%である。
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性の観点から、好ましくは2〜18質量%であり、より好ましく3〜15質量%であり、さらに好ましくは3〜13質量%である。
【0022】
水素化ブロック共重合体(a)の水素化率、すなわち、水素化ブロック共重合体(a)に含まれる全共役ジエン化合物単位の水素化率は80mol%以上である。
上記水素化率は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性、水蒸気バリア性の観点から、好ましくは85mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上である。
水素化ブロック共重合体(a)の共役ジエン単量体単位中に含まれる全不飽和基単位の水素化率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定でき、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0023】
水素化ブロック共重合体(a)の水素化率を80mol%以上とすることで、重合体ブロック(C)の結晶化が高まり、水素化ブロック共重合体(a)ポリプロピレンと混合した樹脂組成物成形体の透明性、柔軟性、水素バリア性が良好となる。
また、水素化ブロック共重合体(a)をポリプロピレン樹脂と混合した樹脂組成物をフィルムの材料とする場合には、重合体ブロック(B)とポリプロピレン系樹脂との溶解パラメータ値が近づき、水素化ブロック共重合体(a)の分散性が良好になることから、柔軟性、透明性が良好となる。
【0024】
水素化率は、例えば、水素添加時の触媒量によって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等によって制御することができる。
【0025】
また、本実施形態のフィルムは、
水素化ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族化合物単量体単位の含有量は、3〜13質量%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)の水素化率は90mol%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)中のブチレン量及び/又はプロピレン量は、共役ジエン化合物単位の合計100mol%に対して、60〜85mol%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)は、0〜60℃に結晶化のピークを有し、
前記水素化ブロック共重合体(a)の結晶化熱量は、1.0〜8.0J/gであり、
前記水素化ブロック共重合体(a)のショアA硬度は25〜55であることを満たす。
ここでブチレン量及びプロピレン量は、それぞれ、水素添加後の、ブタジエン及びイソプレンの単量体単位を意味する。
【0026】
上記ブチレン量及び/又はプロピレン量、上記結晶化のピーク温度、結晶化熱量、及びショアA硬度は、例えば、前述のとおり、水素化ブロック共重合体(a)として、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)とを含む水素化ブロック共重合体を使用することにより、制御することができる。
上記ブチレン量及び/又はプロピレン量、上記結晶化のピーク温度、結晶化熱量、及びショアA硬度は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0027】
本実施形態のフィルムは、前記外層の厚みが5〜50μm、前記中間層の厚みが100〜200μm、前記内層の厚みが5〜50μmであることが好ましい。
各々の層が上記数値範囲内であることにより、良好な柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性が得られる。
前記外層の厚みは10〜40μmであることがより好ましく、15〜35μmであることがさらに好ましい。
前記中間層の厚みは110〜190μmであることがより好ましく、120〜180μmであることがさらに好ましい。
前記内層の厚みは10〜45μmであることがより好ましく、15〜40μmであることがさらに好ましい。
なお、一般的に、厚みが0.005mm以上0.25mm未満であるシート状成形体をフィルムといい、厚みが0.25mm以上50mm以下であるシート状成形体をシートというが、本明細書において「フィルム」は、上記フィルム、及びシートを包含する。
【0028】
本実施形態のフィルムは、クロス分別クロマトグラフィー(以下、「CFC」という。)で測定した−20℃以下の積分溶出量が全積分溶出量の0.1%以上40%未満であり、−20℃を超え60℃未満の範囲の積分溶出量が全積分溶出量の20%以上95%未満であり、60℃以上150℃以下の範囲の積分溶出量が全積分溶出量の5%以上70%未満であることが好ましい。
上記構成を有することにより、透明性、柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性及びこれらの特性バランスに優れたフィルムが得られる。
【0029】
同様に透明性、柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性及びこれらの特性バランスの観点から、−20℃以下の積分溶出量は、全積分溶出量の2%以上30%未満であることがより好ましく、3%以上20%未満であることがさらに好ましい。−20℃を超え60℃未満の範囲の積分溶出量は、全積分溶出量の10%以上50%未満であることがより好ましく、20%以上45%未満であることがさらに好ましい。60℃以上150℃以下の範囲の積分溶出量は、全積分溶出量の50%以上90%未満であることがより好ましく、55%以上80%未満であることがさらに好ましい。
【0030】
上記CFC溶出量は、前記重合体ブロック(C)、(B)の比率及び、水素化ブロック共重合体(a1)の配合比と、ポリプロピレン樹脂の種類を調整することにより制御することができる。上記CFC溶出量は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
さらに、−20℃以下の範囲、−20℃を超え60℃未満の範囲、60℃以上150℃以下の範囲、それぞれについて分取することが可能であり、それぞれの成分について、後述する方法を用いて、ビニル芳香族単位の含有量、水素化率、ブチレン量及び/又はプロピレン量、結晶化ピーク温度及び結晶化熱量、ショアA硬度を測定することができる。特に、水素化ブロック共重合体(a)は、−20℃を超え60℃未満の範囲に含まれる。
【0031】
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)で測定した10℃以上60℃未満の範囲における溶出成分の分子量分布(Mw/Mn)は、1.05以上1.50以下であることが好ましい。
上記分子量分布(Mw/Mn)は、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0032】
水素化ブロック共重合体(a)としては、例えば、下記一般式により表されるような構造を有するものが挙げられる。
(C−B)
n−S
(C−B−S)
n
(C−B−S)
n−(B−1)
(C−B−S−(B−1))
n
(C−B−S)
m−X
(C−B−S−(B−1))
m−X
上記一般式において、C、B、Sはそれぞれ、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)を表す。
上記一般式において(B−1)は後述する「共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)のうち、水素化ブロック共重合体(a)の末端に存在する重合体ブロック(B−1)」を表す。
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜6である。
mは2以上の整数であり、好ましくは2〜6である。
Xは2官能カップリング剤残基又は多官能開始剤残基を表す。
水素化ブロック共重合体(a)は、C−B−S、C−B−S−(B−1)の構造式で表される重合体であることが好ましい。
【0033】
2官能基カップリング剤としては、以下限定されるものではないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R
1(4−n)SiX
n(ここで、R
1は炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
【0034】
上記一般式において、重合体ブロック(C)及び重合体ブロック(B)、重合体ブロック(S)中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。また、重合体ブロック(C)及び重合体ブロック(B)、重合体ブロック(S)がビニル芳香族化合物単量体単位と共役ジエン化合物単量体単位の共重合体ブロックである場合には、該共重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、上記共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族化合物単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0035】
水素化ブロック共重合体(a)、後述する水素化ブロック共重合体(b1)、水素化ブロック共重合体(b2)の構造は、特に限定されず、例えば、線状、分岐状、放射状、櫛形状などいかなる形態をとっても構わないが、所望する物性等に応じて好適な構造とすることができる。
本実施形態のフィルムに付与する性能、すなわち、透明性、柔軟性、及びこれらの良好な特性バランスの観点から、水素化ブロック共重合体(a)は、分子中に、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)を二つ以上含み、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)のうち、水素化ブロック共重合体(a)の末端に存在する重合体ブロック(B−1)の含有量が、前記水素化ブロック共重合体(a)中の1〜10質量%であることが好ましい。
前記水素化ブロック共重合体(a)の末端に存在する重合体ブロック(B−1)の含有量は、共役ジエン化合物の添加量により制御することができる。
前記水素化ブロック共重合体(a)の末端に存在する重合体ブロック(B−1)の含有量は、水素化ブロック共重合体(a)中の2〜8質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)(以下、「Mw」ともいう。)は、10万〜30万であることが好ましい。
水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性、及びこれらの物性バランスの観点から、より好ましくは11万〜29万であり、さらに好ましくは12万〜28万である。
前記水素化ブロック共重合体(a)のMwは、重合開始剤量により制御することができる。
水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、GPCによる測定で得られるクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)に基づいて求めた重量平均分子量(Mw)である。
前記水素化ブロック共重合体(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw)/(Mn)は1.01〜1.30であることが好ましい。
具体的には、重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0037】
(水素化ブロック共重合体(a)の製造方法)
水素化ブロック共重合体(a)は、一般的には、有機溶媒中で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物単量体、ビニル芳香族化合物単量体の重合を行い、その後水素化反応を行うことにより製造することができる。
重合の態様としては、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。
分子量分布が狭く、高い強度を有するブロック共重合体を得る観点からは、バッチ重合方法が好ましい。
【0038】
重合温度は一般的に0〜150℃であり、20〜120℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。
重合時間は目的とする重合体によって異なるが、通常は24時間以内であり、0.1〜10時間であることが好ましい。分子量分布が狭く、高い強度を有するブロック共重合体を得る観点からは、0.5〜3時間であることがより好ましい。
重合系の雰囲気は、窒素及び溶媒を液相に維持するのに十分な圧力の範囲であればよく、特に限定されるものではない。
重合系内に、重合開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが存在しないことが好ましい。
【0039】
有機溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロへプタン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0040】
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等が用いられる。
有機リチウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルリチウム、及びイソプロペニルジリチウム等が挙げられる。これらの中でも、重合活性の観点からn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0041】
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量によるが、一般的には0.01〜0.5phm(単量体100質量部当たりに対する質量部)の範囲であることが好ましく、0.03〜0.3phmの範囲であることがより好ましく、0.05〜0.15phmの範囲であることがさらに好ましい。
【0042】
水素化ブロック共重合体(a)に含まれている重合体ブロック(B)及び重合体ブロック(C)のビニル結合量は、ルイス塩基、例えばエーテル、アミンなどの化合物をビニル化剤として使用することで調節できる。ビニル化剤の使用量は、目的とするビニル結合量によって調整することができる。
また、ビニル化剤及び後述する金属アルコキシドを2以上の条件に分けて添加することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中に、ビニル結合量の異なる重合体ブロックを製造することができる。
【0043】
ビニル化剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エーテル化合物、酸素原子を2個以上有するエーテル系化合物、及び第3級アミン系化合物等が挙げられる。
【0044】
第3級アミン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピリジン、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン、トリブチルアミン、テトラメチルプロパンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル等が挙げられる。
これらは、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
第3級アミン化合物としては、アミンを2個有する化合物が好ましい。さらに、それらの中でも、分子内で対称性を示す構造を有するものがより好ましく、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミンや、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテルや1,2−ジピペリジノエタンがさらに好ましい。
【0045】
本実施形態においては、上述したビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの共存下、水素化ブロック共重合体の共重合を行ってもよい。ここで、アルカリ金属アルコキシドとは、一般式MOR(式中、Mはアルカリ金属、Rはアルキル基である)で表される化合物である。
【0046】
アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属としては、高いビニル結合量、狭い分子量分布、高い重合速度、及び高いブロック率の観点から、ナトリウム又はカリウムであることが好ましい。
アルカリ金属アルコキシドとしては、以下に限定されるものではないが、好ましくは、炭素数2〜12のアルキル基を有するナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシドであり、より好ましくは、炭素数3〜6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドであり、さらに好ましくは、ナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ペントキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ペントキシドである。
これらの中でも、ナトリウムアルコキシドであるナトリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ペントキシドがよりさらに好ましい。
【0047】
本実施形態の水素化ブロック共重合体の重合工程において、ビニル化剤、有機リチウム化合物、及びアルカリ金属アルコキシドの共存下、重合を行う場合、ビニル化剤と有機リチウム化合物とのモル比(ビニル化剤/有機リチウム化合物)、及びアルカリ金属アルコキシドと有機リチウム化合物とのモル比(アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物)を、下記モル比とすることが好ましい。
ビニル化剤/有機リチウム化合物が0.2〜3.0
アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物が0.01〜0.3
【0048】
ビニル化剤/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度の観点から0.2以上とし、狭い分子量分布、かつ高い水素化活性を得る観点から3.0未満とすることが好ましい。
また、アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度、及び高いブロック率の観点から0.01以上とし、狭い分子量分布、かつ高い水素化活性を得る観点から0.3以下とすることが好ましい。
これらにより、重合速度の向上が図られ、目的とする水素化ブロック共重合体のビニル結合量を高くできるとともに分子量分布を狭くでき、さらにはブロック率が向上する傾向にある。その結果、水素化ブロック共重合体(a)とポリプロピレン樹脂とを組み合わせたポリプロピレン系樹脂組成物に付与する性能、すなわち、柔軟性、透明性がより良好となる傾向にある。
【0049】
重合工程における、ビニル化剤/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量及び高い重合速度の観点から、0.8以上がより好ましく、狭い分子量分布及び高い水素化活性の観点から、2.5以下がより好ましく、1.0以上2.0以下の範囲がさらに好ましい。
【0050】
また、アルカリ金属アルコキシド/有機リチウム化合物のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度及び高いブロック率の観点から0.02以上がより好ましく、狭い分子量分布や高い水素化活性の観点から0.2以下がより好ましく、0.03以上0.1以下がさらに好ましく、0.03以上0.08以下がさらにより好ましい。
【0051】
さらに、アルカリ金属アルコキシド/ビニル化剤のモル比は、高いビニル結合量、高い重合速度及び高いブロック率の観点から、0.010以上であることが好ましく、狭い分子量分布を実現し、かつ高い水素化活性を得る観点から0.100以下が好ましく、0.012以上0.080以下がより好ましく、0.015以上0.06以下がさらに好ましく、0.015以上0.05以下がさらにより好ましい。
【0052】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック中に、ビニル結合量の異なる重合体ブロックを製造する方法としては、ビニル化剤に対する失活剤を用いる方法も挙げられる。
失活剤としては、アルキル金属化合物が挙げられ、一つのアルキル置換基あたり1〜20個の炭素原子をもつアルキルアルミニウム、亜鉛及びマグネシウム、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0053】
水素化ブロック共重合体(a)を製造する際の水素化の方法は特に限定されないが、例えば、上記で得られたブロック共重合体に対し、水素化触媒の存在下に、水素を供給し、水素添加することにより、共役ジエン化合物単位の二重結合残基が水素添加された水素化ブロック共重合体得ることができる。
水素化率は、例えば、水素添加時の触媒量によって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等によって制御することができる。
【0054】
水素化ブロック共重合体(a)をペレット化することにより、水素化ブロック共重合体(a)のペレットを製造することができる。
ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から水素化ブロック共重合体をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から水素化ブロック共重合体をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法;オープンロール、バンバリーミキサーにより溶融混合した後、ロールによりシート状に成型し、更に該シートを短冊状にカットした後に、ペレタイザーにより立方状ペレットに切断する方法等が挙げられる。
なお、水素化ブロック共重合体(a)のペレット成形体の大きさ、形状は特に限定されない。
【0055】
水素化ブロック共重合体のペレットには、必要に応じてペレットブロッキングの防止を目的としてペレットブロッキング防止剤を配合することができる。
ペレットブロッキング防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビスステアリルアミド、タルク、アモルファスシリカ等が挙げられる。
本実施形態のフィルムの透明性の観点から、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましい。
ペレットブロッキング防止剤の好ましい量としては、水素化ブロック共重合体(a)に対して200〜8000ppmである。より好ましい量としては、水素化ブロック共重合体(a)に対して300〜7000ppmである。
ペレットブロッキング防止剤は、ペレット表面に付着した状態で配合されていることが好ましいが、ペレット内部にある程度含むこともできる。
【0056】
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂としては、ランダムポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂は、ランダムポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
【0057】
ここで、ランダムポリプロピレンにおける「ランダム」とは、プロピレンとプロピレン以外のモノマーを共重合したもので、プロピレン以外のモノマーがプロピレン連鎖中にランダムに取り込まれ、実質的にプロピレン以外のモノマーが連鎖しないものをいう。
【0058】
ランダムポリプロピレンとしては、プロピレン単位の含有量が99.5質量%未満であれば特に限定されない。ランダムポリプロピレンの好適な例としては、プロピレンとエチレンのランダム共重合体、又はプロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンのランダム共重合体等が挙げられる。
ランダムポリプロピレンとしてプロピレンとエチレンのランダム共重合体、又はプロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンのランダム共重合体を用いる場合、柔軟性、透明性、耐衝撃性がより良好となる傾向にある。
【0059】
α−オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。好ましくは、炭素数2〜8のα−オレフィンであり、具体的には、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
これらのα−オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダムポリプロピレンも1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
ランダムポリプロピレンの中でも、本実施形態のフィルムの柔軟性、透明性、機械的強度の観点から、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、及びプロピレン−エチレン−1−ブテン三元ランダム共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0061】
柔軟性、透明性、及びこれらの特性バランスの観点から、ランダムポリプロピレンがプロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンのランダム共重合体であり、ランダムポリプロピレン中の、エチレン又はα−オレフィン単位の含有量が0.5質量%超40質量%未満であることが好ましく、プロピレン単位の含有量が60質量%以上99.5質量%未満であることが好ましい。
上記同様の観点から、エチレン又はα−オレフィン単位の含有量は1質量%超30質量%未満がより好ましく、1.5質量%以上25質量%未満がさらに好ましく、2質量%以上20質量%未満がさらにより好ましい。
また、プロピレン単位の含有量は70質量%以上99質量%未満がより好ましく、75質量%以上98.5質量%未満がさらに好ましく、80質量%以上98質量%未満がさらにより好ましい。
【0062】
ランダムポリプロピレン中のプロピレン単位の含有量、エチレン単位の含有量、α−オレフィン単位の含有量は、カーボン核磁気共鳴(13C−NMR)法より測定できる。
【0063】
ランダムポリプロピレンのメルトフローレート(MFR;230℃、ISO 1133に準拠)は、得られるポリプロピレン樹脂組成物の加工性と低べたつき性の観点から、1〜30g/10分が好ましく、1〜25g/10分がより好ましく、2〜20g/10分がさらに好ましく、3〜15g/10分がさらにより好ましい。
【0064】
ランダムポリプロピレンを製造するに際して使用される触媒については特に限定されないが、例えば、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。
立体規則性触媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒等が挙げられる。これらの触媒の中でも、本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性、機械的強度の観点から、メタロセン触媒が好ましい。
【0065】
本実施形態のフィルムの透明性、柔軟性、機械的強度の観点から、ランダムポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は3.5以下であることが好ましい。
Mw/Mnは3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることがさらに好ましい。
Mw/Mnの下限値は特に限定されないが1.5以上が好ましい。とりわけ、ランダムポリプロピレンが、メタロセン系触媒により重合されたものであり、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上3.5以下であることが好ましい。なお、ランダムポリプロピレンの分子量分布は、GPCによる測定で得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率から求められる。
【0066】
本実施形態のフィルムの内層、中間層、及び外層には、要求性能に応じて、その他の添加剤を併用してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、難燃剤、安定剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、流れ増強剤、ステアリン酸金属塩といった離型剤、シリコーンオイル、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤、銅害防止剤、架橋剤、核剤等が挙げられる。
【0067】
(フィルムの構成)
本実施形態のフィルムは、上述したように、少なくとも外層、中間層、内層を有する。
外層がポリプロピレン樹脂を含み、中間層がポリプロピレン樹脂及び水素化ブロック共重合体(a)を含み、内層がポリプロピレン樹脂を含む。
前記外層中のポリプロピレン樹脂の含有量は60〜100質量%が好ましく、65〜100質量%がより好ましく、70〜100質量%がさらに好ましい。
前記外層中には、水素化ブロック共重合体(a)が含まれていてもよく、この場合、外層中の水素化ブロック共重合体(a)の含有量は0〜40質量%が好ましく、0〜35質量%がより好ましく、0〜30質量%がさらに好ましい。
前記中間層中のポリプロピレン樹脂の含有量は30〜90質量%が好ましく、35〜85質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましい。
前記中間層中の水素化ブロック共重合体(a)の含有量は10〜70質量%が好ましく、15〜65質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。
前記内層中のポリプロピレン樹脂の含有量は50〜95質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、60〜85質量%がさらに好ましい。
前記内層中には、水素化ブロック共重合体(a)が含まれていてもよく、この場合、内層中の水素化ブロック共重合体(a)の含有量は5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
上記組成とすることにより、透明性、柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性及びこれらの特性バランスが良好なフィルムが得られる。
【0068】
(内層及び外層の好適な具体的構成)
本実施形態のフィルムは、少なくとも外層、中間層、内層を有し、
前記外層がポリプロピレン樹脂を含み、
前記中間層がポリプロピレン樹脂及び水素化ブロック共重合体(a)を含み、
前記内層がポリプロピレン樹脂を含み、
前記水素化ブロック共重合体(a)は、分子中に、
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)と、
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)と、
を、含み、
前記水素化ブロック共重合体(a)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量が1〜30質量%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量が69〜98質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量が1〜20質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の水素化前のビニル結合量が1〜25mol%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の水素化前のビニル結合量が60〜100mol%であり、前記水素化ブロック共重合体(a)の水素化率が80mol%以上である。特に、後述する構成が好ましいものとして挙げられる。
【0069】
好ましい本実施形態として、前記水素化ブロック共重合体(a)中の前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)の含有量が3〜13質量%であり、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B)の含有量が74〜96質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量が3〜13質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S)の含有量の合計が6〜26質量%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)の水素化率が90mol%以上である、フィルムを挙げることができる。
【0070】
また、本実施形態のフィルムとして、
少なくとも外層、中間層、内層を有するフィルムであって、
前記外層がポリプロピレン樹脂を含み、
前記中間層がポリプロピレン樹脂及び水素化ブロック共重合体(a)を含み、
前記内層がポリプロピレン樹脂を含み、
前記水素化ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族化合物単量体単位の含有量が3〜13質量%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)の水素化率が90mol%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)中のブチレン量及び/又はプロピレン量が、共役ジエン化合物単位の合計100mol%に対して、60〜85mol%であり、
前記水素化ブロック共重合体(a)は、0〜60℃に結晶化のピークを有し、
前記水素化ブロック共重合体(a)の結晶化熱量が1.0〜8.0J/gであり、
前記水素化ブロック共重合体(a)のショアA硬度が25〜55である、
フィルムを挙げることができる。
【0071】
本実施形態のフィルムは、外層、中間層、内層を同一にし、前記中間層が三層積層されたフィルムであってもよい。
【0072】
<第1の構成>
本実施形態のフィルムは、前記外層が、前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)(但し、当該ブロック共重合体(b1)は、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)を含まないものとする。)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が40〜100mоl%であり、前記水素化ブロック共重合体(b1)の水素化率が80mol%以上であり、
前記外層中のポリプロピレン樹脂の含有量が60〜100質量%であり、
前記外層中の前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)の含有量が0〜40質量%であることが好ましい。
上記構成を有することにより、透明性、柔軟性、及びこれらの特性バランスに優れたフィルムが得られる。
なお、水素化ブロック共重合体(b1)において、「主体とする」の定義や、共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物の各材料、ビニル結合量、水素化率については、上述した水素化ブロック共重合体(a)と同様に定義でき、かつ制御することができるものとする。
【0073】
<第2の構成>
本実施形態のフィルムは、前記内層が、前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)(但し、当該ブロック共重合体(b1)は、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)を含まないものとする。)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b1)中の、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S1)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B1)の水素化前のビニル結合量が40〜100mоl%であり、前記水素化ブロック共重合体(b1)の水素化率が80mol%以上であり、
前記内層中のポリプロピレン樹脂の含有量が50〜96質量%であり、
前記内層中の前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)の含有量が5〜50質量%であることが好ましい。
上記構成を有することにより、透明性、柔軟性、及びこれらの特性バランスに優れたフィルムが得られる。
なお、水素化ブロック共重合体(b1)において、「主体とする」の定義や、共役ジエン化合物、ビニル芳香族化合物の各材料、ビニル結合量、水素化率については、上述した水素化ブロック共重合体(a)と同様に定義でき、かつ制御することができるものとする。
【0074】
<第3の構成>
本実施形態のフィルムは、前記外層が、さらに水素化ブロック共重合体(b2)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b2)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S2)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b2)中、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S2)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)の水素化前のビニル結合量が62〜100mol%であり、前記水素化ブロック共重合体(b2)の水素化率が80mol%以上であり、
前記水素化ブロック共重合体(b2)は、
分子中に、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)を二つ以上含み、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)のうち、水素化ブロック共重合体(b2)の末端に存在する重合体ブロック(B−2)の含有量が、前記水素化ブロック共重合体中の1〜10質量%であることが好ましい。
【0075】
<第4の構成>
本実施形態のフィルムは、前記内層が、さらに水素化ブロック共重合体(b2)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b2)が、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)と、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S2)を含み、
前記水素化ブロック共重合体(b2)中、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)の含有量が75〜92質量%であり、前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(S2)の含有量が8〜25質量%であり、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)の水素化前のビニル結合量が62〜100mol%であり、前記水素化ブロック共重合体(b2)の水素化率が80mol%以上であり、
前記水素化ブロック共重合体(b2)は、
分子中に、前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)を二つ以上含み、
前記共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)のうち、水素化ブロック共重合体(b2)の末端に存在する重合体ブロック(B−2)の含有量が、前記水素化ブロック共重合体中の1〜10質量%であることが好ましい。
【0076】
前記<第3の構成>において、前記外層中のポリプロピレン樹脂の含有量が60〜100質量%であり、前記外層中の水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)及び/又は水素化ブロック共重合体(b2)の含有量が0〜40質量%であることが好ましい。
また、前記<第4の構成>において、前記内層中のポリプロピレン樹脂の含有量が50〜95質量%であり、前記内層中の前記水素化ブロック共重合体(a)及び/又は水素化ブロック共重合体(b1)及び/又は水素化ブロック共重合体(b2)の含有量が5〜50質量%であることが好ましい。
上記構成を有することにより、透明性、柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性及びこれらの特性バランスに優れたフィルムが得られる。
【0077】
前記水素化ブロック共重合体(b2)の末端に存在する重合体ブロック(B−2)の含有量は、共役ジエン化合物の添加量により制御することができる。
前記水素化ブロック共重合体(b2)の末端に存在する重合体ブロック(B−2)の含有量は、水素化ブロック共重合体(b2)中の2〜8質量%であることがより好ましく、2〜6質量%であることがさらに好ましい。
【0078】
(水素化ブロック共重合体(b1)及び水素化ブロック共重合体(b2)の製造方法)
水素化ブロック共重合体(b1)及び水素化ブロック共重合体(b2)は、上述した水素化ブロック共重合体(a)と同様の方法により製造することができる。
【0079】
(水素化ブロック共重合体(b1)の構造例)
上述した水素化ブロック共重合体(b1)としては、例えば、下記一般式により表されるような構造を有するものが挙げられる。
(S1−B1)
n、
S1−(B1−S1)
n、
B1−(S1−B1)
n、
[(B1−S1)
n]
m−Z、
[(S1−B1)
n]
m−Z、
[(B1−S1)
n−B1]
m−Z、
[(S1−B1)
n−S1]
m−Z
【0080】
上記一般式において、S1はビニル芳香族化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(S1)であり、B1は共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(B1)である。
重合体ブロック(S1)と重合体ブロック(B1)との境界線は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
また、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。
mは2以上の整数、好ましくは2〜11、より好ましくは2〜8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。ここで、カップリング残基とは、共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位との共重合体の複数を、重合体ブロック(S1)−重合体ブロック(S1)間、重合体ブロック(B1)−重合体ブロック(B1)間、又は重合体ブロック(S1)−重合体ブロック(B1)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
カップリング剤としては、2官能カップリング剤や多官能カップリング剤が挙げられる。2官能基カップリング剤として、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R
1(4−n)SiX
n(ここで、R
1は炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
上記一般式において、重合体ブロック(S1)及び重合体ブロック(B1)中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。また、重合体ブロック(S1)及び重合体ブロック(B1)がビニル芳香族化合物単量体単位と共役ジエン化合物単量体単位の共重合体ブロックである場合には、該共重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、上記共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族化合物単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0081】
(水素化ブロック共重合体(b2)の構造例)
上述した水素化ブロック共重合体(b2)としては、例えば、下記一般式により表されるような構造を有するものが挙げられる。
(S2−B2)
n、
B2−(S2−B2)
n、
[(B2−S2)
n]
m−Z、
[(B2−S2)
n−B2]
m−Z、
【0082】
上記一般式において、S2はビニル芳香族化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(S2)であり、B2は共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(B2)である。
重合体ブロック(S2)と重合体ブロック(B2)との境界線は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
また、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。
mは2以上の整数、好ましくは2〜11、より好ましくは2〜8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。
ここで、カップリング残基とは、共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位との共重合体の複数を、重合体ブロック(S2)−重合体ブロック(S2)間、重合体ブロック(B2)−重合体ブロック(B2)間、又は重合体ブロック(S2)−重合体ブロック(B2)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
カップリング剤としては、2官能カップリング剤や多官能カップリング剤が挙げられる。
2官能基カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R
1(4-n)SiX
n(ここで、R
1は炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
上記一般式において、重合体ブロック(S2)及び重合体ブロック(B2)中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。また、重合体ブロック(S2)及び重合体ブロック(B2)がビニル芳香族化合物単量体単位と共役ジエン化合物単量体単位の共重合体ブロックである場合には、該共重合体ブロック中のビニル芳香族化合物単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、上記共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族化合物単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0083】
水素化ブロック共重合体(b2)としては、下記一般式で表される構造が特に好ましい。
すなわち、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(B2)のうち、水素化ブロック共重合体(b2)の末端に重合体ブロック(B−2)が存在する構造である。
S2−B2−S2−(B−2)
S2−(B2−S2)
n−(B−2)
(B−2)−S2−(B2−S2)
n−(B−2)
【0084】
なお、上述した水素化ブロック共重合体(b2)は、水素化ブロック共重合体(b1)の概念に含まれ、水素化ブロック共重合体(b1)の中でも、本実施形態のフィルムの特性の観点から、好ましい構成を有しているものである。
また、本実施形態のフィルムは、外層及び/又は内層中に、水素化ブロック共重合体(b1)及び水素化ブロック共重合体(b2)のいずれもが含まれる場合があるが、かかる場合、フィルムの各層の製造工程中において、水素化ブロック共重合体(b2)の構成要件を具備するものの製造量、水素化ブロック共重合体(b2)の構成要件を具備しない水素化ブロック共重合体、すなわち水素化ブロック共重合体(b1)の製造量を、単量体の添加量や添加方法によって確認することにより、外層及び/内層中における水素化ブロック共重合体(b2)と水素化ブロック共重合体(b1)の含有量を知ることができる。
【0085】
(フィルムの各層を構成する材料の製造方法)
本実施形態のフィルムの各層を構成する樹脂材料は、例えば、水素化ブロック共重合体(a)、ポリプロピレン樹脂、水素化ブロック共重合体(b1)、水素化ブロック共重合体(b2)、及び必要に応じて加えられる他の成分を、適宜選択し、これらをドライブレンドする方法、通常の高分子物質の混合に供される装置によって調整する方法等によって製造することができる。
【0086】
混合装置としては、特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ラボプラストミル、単軸押出機、2軸押出機等の混練装置が挙げられ、押出機を用いた溶融混合法により製造することが生産性、良混練性の点から好ましい。
混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130〜300℃の範囲内であり、150〜250℃の範囲であることが好ましい。
【0087】
(フィルムの成形方法)
本実施形態のフィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂組成物を押出機に投入して押出す成型法として、Tダイ法、インフレーション法等を採用することができる。
インフレーション成型としては、通常の空冷インフレーション成型、空冷2段インフレーション成型、高速インフレーション成型、水冷インフレーション成型等を採用できる。
また、ダイレクトブロー、インジェクションブロー等のブロー成型法、プレス成型法を採用することもできる。
用いる押出機としては、単軸又は多軸の押出機を使用することができ、また複数台の押出機を使用して多層押出した多層フィルムを成形することもできる。
また、ポリプロピレン樹脂組成物を製造する際の押出機から直接フィルムとして成形することもできる。
【0088】
本実施形態のフィルムは、後述の実施例で示すとおり、透明性、柔軟性、及びこれらの特性バランスに優れている。
上記特性を活かして、本実施形態のフィルムは、各種衣料類の包装、各種食品の包装、日用雑貨包装、工業資材包装、各種ゴム製品、樹脂製品、皮革製品等のラミネート、紙おむつ等に用いられる伸縮テープ、ダイシングフィルム等の工業用品、建材や鋼板の保護に用いられるプロテクトフィルム、粘着フィルムの基材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷凍食品容器等のシート用品、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用品用途、バンパー部品、ボディーパネル、サイドシール等の自動車内外装部品用途、道路舗装材、防水、遮水シート、土木パッキン、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、ファニチャー用品、筆記用具、透明ポケット、ホルダー、ファイル背表紙等の文具、輸液バック等の医療用具等として用いることができる。
特に医療用フィルム、並びに包装材、例えば食品包装材、及び衣料包装材等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例によって本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例においては、以下に説明する方法によって水素化ブロック共重合体の調製を行い、フィルムを製造し、物性の比較を行った。
その際、水素化ブロック共重合体の特性やフィルムの物性は次のように測定した。
【0090】
〔水素化ブロック共重合体の評価方法〕
(1)全ビニル芳香族化合物単位の含有量(以下、「スチレン含有量」とも表記する。)
水素化ブロック共重合体中の全ビニル芳香族化合物単量体単位の含有量は、水素添加後の水素化ブロック共重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)法により測定した。
測定機器はJNM−LA400(JEOL製)、溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°、及び測定温度26℃で行った。
スチレン含有量は、スペクトルの6.2〜7.5ppmにおける総スチレン芳香族シグナルの積算値を用いて算出した。
【0091】
(2)水素化前のビニル結合量
水素化前のビニル結合量は、水素添加前のブロック共重合体の重合過程のステップ毎にサンプリングしたポリマーを、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)法により測定し、重合体ブロックの水素化前のビニル結合量を得た。
測定条件及び測定データの処理方法は上記(1)と同様とした。
ビニル結合量は、1,4−結合及び1,2−結合に帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の1Hあたりの積分値を算出した後、1,4−結合と1,2−結合との比率から算出した。
【0092】
(3)水素添加率
水素化ブロック共重合体の水素添加率は、水素添加後の水素化ブロック共重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)により測定した。
なお、測定条件及び測定データの処理方法は上記(1)と同様とした。
水素添加率は、4.5〜5.5ppmの残存二重結合に由来するシグナル及び水素添加された共役ジエンに由来するシグナルの積分値を算出し、その比率を算出することにより得た。
【0093】
(4)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布の測定
水素化ブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定(島津製作所製、LC−10)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm、2本)、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)の条件により、市販の標準ポリスチレンによるポリスチレン換算分子量として求めた。
また、水素化ブロック共重合体の分子量分布は、得られた数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw)/(Mn)として求めた。
【0094】
(5)共役ジエン化合物単位の合計100mol%に対する、ブチレン量及び/又はプロピレン量
水素添加後の水素化ブロック共重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(
1H−NMR)により測定した。
測定条件及び測定データの処理方法は、上記(2)及び(3)と同様とした。
ブチレン含有量は、スペクトルの0〜2.0ppmにおけるブチレン(水素化された1,2−結合)及びプロピレン(水素化された3,4−結合)に帰属されるシグナルの積分値を算出し、その比率から算出した。
【0095】
(6)DSC測定
アルミニウム製パンに水素化ブロック共重合体10mgをそれぞれ精秤し、示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、Q2000)を用いて、窒素雰囲気(流量は50mL/分)にて、初期温度−50℃、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、5分間150℃保持し、その後10℃/分で−50℃まで降温させ測定を行った。
描かれるDSC曲線の降温過程であらわれる結晶化ピークを結晶化温度(℃)とし、結晶化ピーク面積が示す熱量を結晶化熱量(J/g)とした。
【0096】
(7)水素化ブロック共重合体のショアA硬度
水素化ブロック共重合のショアA硬度(ASTM D−2240準拠)は、圧縮成型した厚み2mmのシートを4枚重ねて、デュロメータタイプAで瞬間の値を測定した。
【0097】
〔フィルムの特性評価方法〕
(1)引張弾性率
フィルムをJIS5号試験片で打ち抜き、測定用サンプルとし、当該測定用サンプルの樹脂の流れ方向(MD方向)に対し、JIS K7127に準拠して、引張速度200mm/minの条件で測定した。
0.05%と0.25%の歪みに対応するそれぞれの応力から引張弾性率を算出し、柔軟性の指標とした。得られた引張弾性率から次の基準で評価した。
◎:引張弾性率が400MPa未満
○:引張弾性率が400MPa以上500MPa未満
△:引張弾性率が500MPa以上600MPa未満
×:引張弾性率が600MPa以上
【0098】
(2)ヘイズ
フィルムに対し、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH−1001DP)を用いて、ヘイズを測定し、透明性の指標とした。得られたヘイズ値から次の基準で評価した。
○:ヘイズ値が15未満
△:ヘイズ値が15以上20未満
×:ヘイズ値が20以上
【0099】
(3)ヒートシール性
フィルムを2枚重ね合わせた後、ヒートシーラー(テスター産業製、TP−701−B)を用いて、シール温度160℃、シール時間5秒、実圧0.2MPaの条件で片面加熱しヒートシールを行い、サンプルを得た。
得られたサンプルを23℃で24時間以上静置した後、シール巾方向の直角方向に巾15mmの試験片を切り出し、10mm×15mmのシール部を有する試験片を得た。
次に、試験片のシール部を引張試験機(ミネベア、TGE−500N)により、200mm/分の速度で180°剥離して、巾15mmあたりのヒートシール強度(N/15mm)を測定し、ヒートシール性の指標とした。
得られたヒートシール強度から、下記の基準で評価した。
◎:ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度が25N/15mm以上
○:ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度が15N/15mm以上25N/15mm未満
△:ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度が10N/15mm以上15N/15mm未満
×:ヒートシール温度160℃でのヒートシール強度が10N/15mm未満
【0100】
(4)水蒸気透過度
フィルムを用い、JIS K 7129 A法(感湿センサー法)に準拠して、水蒸気透過度計(型式 L80−5000、Lyssy社製)により水蒸気透過度を測定した。
比較例4の水蒸気透過度を基準値の100として下記式により指数表示した。
各フィルムの水蒸気透過度(指数)=(実施例及び比較例の水蒸気透過度)/(比較例4の水蒸気透過度)×100
水蒸気透過度の値が小さいほど水蒸気バリア性に優れる。
【0101】
〔医療容器の評価方法〕
(5)医療容器の耐衝撃性
フィルムを、20cm×13cmの試験片に切り出し、試験片を2枚重ね合わせた後、3辺を145℃で2秒間ヒートシールし、袋を作製した。
その袋に500mLの水を入れ、さらに残りの1辺を同様の条件でヒートシールして、水入りバックを作製した。
さらに、前記水入りバックを蒸気滅菌し、その後、4℃の冷蔵室に24時間放置した後、1.8mの高さから、各々10袋を落下させたときのバックの破袋率を測定し、耐衝撃性の指標とした。
得られた破袋率から、次の基準で評価した。
◎:非破袋率が100%
○:非破袋率が70%以上100%未満
△:非破袋率が50%以上70%未満
×:非破袋率が50%未満
【0102】
(6)フィルム状成形体のCFC測定
表2及び表3における実施例及び比較例で得られた成形体を試験試料として、昇温溶離分別による溶出温度−溶出量曲線を以下のように測定し、各温度での溶出量、溶出積分量及び、溶出成分の分子量分布を求めた。
まず、充填剤を含有したカラムを145℃に昇温し、水素化ブロック共重合体組成物をオルトジクロロベンゼンに溶かした試料溶液を導入して、140℃で30分間保持した。次に、カラムの温度を、降温速度1℃/分で−20℃まで降温した後、60分間保持し、試料を充填剤表面に析出させた。
その後、カラムの温度を、昇温速度40℃/分で、且つ、5℃間隔で順次昇温し、各温度で溶出した試料の濃度を検出した。そして、試料の溶出量(質量%)とその時のカラム内温度(℃)との値より、溶出温度−溶出量曲線を測定し、各温度での溶出量と分子量分布を求めた。
・装置:CFC型クロス分別クロマトグラフ(Polymer Char社製)
・検出器:IR型赤外分光光度計(Polymer Char社製)
・検出波長:3.42μm
・カラム:Shodex HT−806M×3本(昭和電工社製)
・カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
・分子量校正法:標品較正法(ポリスチレン換算)
・溶離液:オルトジクロロベンゼン
・流量:1.0mL/分
・試料濃度:120mg/30mL
・注入量:0.5mL
得られた溶出温度−溶出量曲線より、−20℃以下の全容量中の積分溶出量(%)、−20℃超60℃未満の範囲の全容量中の積分溶出量(%)、60℃以上150℃以下の範囲の全容量中の積分溶出量(%)及び、10〜60℃の溶出成分の分子量分布を求めた。
【0103】
〔水素化ブロック共重合体(a)の製造方法〕
(水素化触媒の調製)
水素化ブロック共重合体の水素化反応に用いた水素化触媒を、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1Lを入れ、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0104】
(水素化ブロック共重合体(a−1)の作製)
内容積10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用して、バッチ重合を行った。
反応器内に1Lのシクロヘキサンを入れ、その後、n−ブチルリチウム(以下「Bu−Li」ともいう。)を全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、ビニル化剤としてのN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」ともいう。)をBu−Liを1モルに対して0.05モル添加した。
第1ステップとして、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を10分間かけて投入し、その後、さらに10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、TMEDAをBu−Liを1モルに対して1.50モルと、ナトリウムt−ペントキシド(以下、NaOAmとする)をBu−Liを1モルに対して0.05モル添加し、ブタジエン85質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後、さらに10分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後、さらに10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールした。
なお、ブロック共重合体の調整過程で得られたステップ毎にポリマーをサンプリングした。得られたブロック共重合体の分析値は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量249,000、分子量分布1.12であった。
次に、得られたブロック共重合体に、上述した水素化触媒をブロック共重合体100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体に対して0.3質量部添加した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−1)の水添率は99.5%、MFRは2g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−1)の解析結果を表1に示す。
【0105】
(水素化ブロック共重合体(a−2)の作製)
Bu−Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン82質量部とし、第3ステップとして、スチレン5質量部とし、第4ステップを追加して、ブタジエン3質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後、さらに10分間重合した。なお重合中、温度は65℃にコントロールし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−2)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−2)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量251,000、分子量分布1.14、水添率99.8%、MFR4g/10分であった。得られた水素化ブロック共重合体(a−2)の解析結果を表1に示す。
【0106】
(水素化ブロック共重合体(a−3)の作製)
Bu−Liを0.060質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン15質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン78質量部とし、第3ステップとして、スチレン7質量部とし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−3)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−3)は、スチレン含有量7質量%、重量平均分子量204,000、分子量分布1.19、水添率99.6%、MFR2.9g/10分であった。
得られた水添ブロック共重合体(a−3)の解析結果を表1に示す。
【0107】
(水素化ブロック共重合体(a−4)の作製)
Bu−Liを0.053質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン3質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン85質量部とし、第3ステップとして、スチレン12質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−4)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−4)は、スチレン含有量12質量%、重量平均分子量225,000、分子量分布1.22、水添率99.3%、MFR1.9g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−4)の解析結果を表1に示す。
【0108】
(水素化ブロック共重合体(a−5)の作製)
Bu−Liを0.042質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン6質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン93質量部とし、第3ステップとして、スチレン3質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−5)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−5)は、スチレン含有量3質量%、重量平均分子量282,000、分子量分布1.29、水添率98.6%、MFR3.9g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−5)の解析結果を表1に示す。
【0109】
(水素化ブロック共重合体(a−6)の作製)
Bu−Liを0.078質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン16質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン72質量部とし、第3ステップとして、スチレン12質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−6)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−6)は、スチレン含有量12質量%、重量平均分子量161,000、分子量分布1.12、水添率99.0%、MFR1.5g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−6)の解析結果を表1に示す。
【0110】
(水素化ブロック共重合体(a−7)の作製)
Bu−Liを0.099質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン17質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン67質量部とし、第3ステップとして、スチレン16質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−7)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−7)は、スチレン含有量16質量%、重量平均分子量117,000、分子量分布1.09、水添率99.2%、MFR1.8g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−7)の解析結果を表1に示す。
【0111】
(水素化ブロック共重合体(a−8)の作製)
Bu−Liを0.050質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン20質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン80質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−8)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−8)は、スチレン含有量0質量%、重量平均分子量250,000、分子量分布1.08、水添率99.5%、MFR32g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−8)の解析結果を表1に示す。
【0112】
(水素化ブロック共重合体(a−9)の作製)
Bu−Liを0.122質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン5質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン70質量部とし、第3ステップとして、スチレン25質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−9)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−9)は、スチレン含有量25質量%、重量平均分子量88,000、分子量分布1.11、水添率99.0%、MFR3.1g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−9)の解析結果を表1に示す。
【0113】
(水素化ブロック共重合体(a−10)の作製)
Bu−Liを0.072質量部とし、第1ステップとして、ブタジエン35質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン63質量部とし、第3ステップとして、スチレン2質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−10)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−10)は、スチレン含有量2質量%、重量平均分子量169,000、分子量分布1.12、水添率98.3%、MFR4.8g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−10)の解析結果を表1に示す。
【0114】
(水素化ブロック共重合体(a−11)の作製)
Bu−Liを0.050質量部とし、第1ステップ前のTMEDAを0.250モルとし、第1ステップとして、ブタジエン10質量部とし、第2ステップとして、ブタジエン85質量部とし、第3ステップとして、スチレン5質量部としブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−11)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−11)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量248,000、分子量分布1.16、水添率99.1%、MFR9.2g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−11)の解析結果を表1に示す。
【0115】
(水素化ブロック共重合体(a−12)の作製)
上述した水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、ブロック共重合体を重合した後、水添率をコントロールした水素化ブロック共重合体(a−13)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−13)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量253,000、分子量分布1.15、水添率70.0%、MFR15.2g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−12)の解析結果を表1に示す。
【0116】
(水素化ブロック共重合体(a−13)の作製)
Bu−Liを0.055質量部とし、第2ステップ前のTMEDAを0.65モルとし、NaOAmは添加せず、ブロック共重合体を製造したこと以外は、水素化ブロック共重合体(a−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(a−14)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(a−14)は、スチレン含有量5質量%、重量平均分子量239,000、分子量分布1.08、水添率99.4%、MFR2.9g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(a−14)の解析結果を表1に示す。
【0117】
上述のようにして得られた水素化ブロック共重合体(a−1)〜(a−13)の解析結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
〔水素化ブロック共重合体((b1):b1−1〜b1−3)の製造方法〕
(水素化ブロック共重合体(b1−1))
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに1Lのシクロヘキサンを仕込み、その後n−ブチルリチウム(以下Bu−Liとする)を全モノマー100質量部に対して0.065質量部と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとする)をBu−Liを1モルに対して0.05モルと、ナトリウムt−ペントキシド(以下、NaOAmとする)をBu−Liを1モルに対して0.05モル添加した。
第1ステップとして、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、ブタジエン85質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお重合中、温度は55℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
得られたブロック共重合体は、スチレン含有量15質量%、ブタジエンブロック部の水素添加前のビニル結合量78%、重量平均分子量178,000、分子量分布1.12であった。
次に、得られたブロック共重合体に、上記水添触媒をブロック共重合体100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。
その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体に対して0.3質量部添加した。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−1)の水添率は99.2%、MFRは4.8g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−1)の解析結果を表1に示す。
【0120】
(水素化ブロック共重合体(b1−2))
Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.095質量部とし、第1ステップとして、スチレン12質量部を10分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、ブタジエン88質量部を60分間かけて投入し、その後更に5分間重合した。なお重合中、温度は55℃にコントロールした。次にジメチルジメトキシシランをBu−Liを1モルに対して0.25モル添加しカップリング反応を行った。その後60℃で10分間撹拌し、ブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(b1−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(b1−2)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−2)は、スチレン含有量12質量%、ブタジエンブロック部のビニル結合量81%、重量平均分子量189,000、カップリング率55%、水添率98.5%、MFR2.5g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−2)の解析結果を表1に示す。
【0121】
(水素化ブロック共重合体(b1−3))
Bu−Liを全モノマー100質量部に対して0.095質量部とし、TMEDAをBu−Liを1モルに対して0.65モル添加し、NaOAmは添加せず、第1ステップ、第3ステップのスチレン量を9質量部とし、第2ステップのブタジエン量を82質量部とし、重合中の温度を67℃にコントロールし、ブロック共重合体を製造したこと以外は、上述した水素化ブロック共重合体(b1−1)と同様の操作を行い、水素化ブロック共重合体(b1−3)を製造した。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−3)は、スチレン含有量18質量%、ブタジエンブロック部のビニル結合量55%、重量平均分子量121,000、分子量分布1.05、水添率99.0%、MFR4.0g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(b1−3)の解析結果を表1に示す。
【0122】
(水素化ブロック共重合体((b2):b2−1)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。
はじめに1Lのシクロヘキサンを仕込み、その後、n−ブチルリチウム(以下Bu−Liとする)を全モノマー100質量部に対して0.065質量部と、N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとする)をBu−Liを1モルに対して1.5モルと、ナトリウムt−ペントキシド(以下、NaOAmとする)をBu−Liを1モルに対して0.05モル添加した。
第1ステップとして、スチレン6.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後、更に5分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
次に第2ステップとして、ブタジエン82質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を60分間かけて投入し、その後、更に5分間重合した。なお重合中、温度は55℃にコントロールした。
次に第3ステップとして、スチレン6.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を5分間かけて投入し、その後、更に5分間重合した。
次に第4ステップを追加し、ブタジエン5質量部を5分間かけて投入し、その後、更に5分間重合した。なお重合中、温度は60℃にコントロールした。
得られたブロック共重合体は、スチレン含有量13質量%、重合体ブロック(B2)に相当するブタジエンブロック部のビニル結合量77%、重合体ブロック(B−2)に相当するブタジエンブロック部のビニル結合量76%、重量平均分子量174,000、分子量分布1.09であった。
次に、得られたブロック共重合体に、上記水素化触媒をブロック共重合体100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。
その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体に対して0.3質量部添加した。
得られた水素化ブロック共重合体(b2−1)の水添率は99.0%、MFRは5.0g/10分であった。
得られた水素化ブロック共重合体(b2−1)の解析結果を表1に示す。
【0123】
(水素化ブロック共重合体 b3)
特開平9−327893に記載と同様の方法で、水素化ブロック共重合体(b3)として、下記の構造を有するポリマーを用いた。
スチレンブロック量:10質量%、スチレン/ブタジエンランダム共重合体ブロック量:90質量%、ランダム部分のスチレン量:5質量%、ランダム共重合部分のビニル量:79mol%、水添率:99mol%、分子量Mw:42.0万
〔ポリプロピレン〕
PP−1:エチレン・プロピレンランダム共重合体
ノバテックMF3FQ(日本ポリプロ社製、MFR:8g/10分、エチレン含有量:2.5wt%)
PP−2:エチレン・プロピレンランダム共重合体
ノバテックEG6D(日本ポリプロ社製、MFR:1.9g/10分、エチレン含有量:1.3wt%)
【0124】
〔実施例1,1−1,2〜17〕、〔比較例1〜8〕
(フィルムの製造方法)
表2〜4に示す各層を、表中に示す材料を用い、表2〜4に記載した順(外層、中間層、内層)及びで積層されるように、多層押出機((株)プラスチック工学研究所製、PLABOR)を用いて押出温度230℃、ダイ温度250℃の条件で共押出成形し、厚み0.25mmの多層フィルムを得た。
【0125】
〔実施例18〜24〕、〔比較例9〜15〕
表6に示す材料を用い、外層、中間層、内層を同一にして、多層押出機((株)プラスチック工学研究所製、PLABOR)を用いて押出温度230℃、ダイ温度250℃の条件で共押出成形し、厚み0.20mmの単層フィルムを得た。
【0126】
実施例及び比較例フィルム及び医療容器の特性を下記表2〜表6に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
本出願は、2015年9月9日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2015−177932)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。