(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様は、ティリロサイド0.01〜1.0mg/100mL及びアルギニン0.1〜10mg/100mlを含み、pHが4.5〜7である飲料である。
【0012】
(ティリロサイド)
本発明の飲料は、0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイドを含有する。ティリロサイド(Tiliroside)とは、フラボノイド配糖体に分類される有機化合物の一種であって、下式(1)の構造を有する化合物である。ティリロサイドの別名はKaempferol-3-O-glucoside-6''-E-coumaroylとも称され、そのCAS登録番号は20316−62−5である。構造名・構造式から自明な通り、ティリロサイドは、ケンフェロール、クマル酸、グルコースから構成されている。このようにティリロサイドは、他のフラボノイドや配糖体にはない特徴的な構造を持つ。飲料形態でティリロサイドを利用したときに苦味を有することは、このユニークな構造からは容易に想像できるものではない。
【0014】
本発明の飲料において、ティリロサイドの含有量は0.015mg/100mL以上が好ましく、0.02mg/100mL以上がより好ましい。一方、飲料中のティリロサイド含有量が1.0mg/100mLを超えると、ティリロサイドの苦味が強くなりすぎて本発明の効果が得られないことがある。効果及び香味の観点から、飲料中のティリロサイドの含有量は0.8mg/100mL以下が好ましく、0.5mg/100mL以下がより好ましく、0.1mg/100mL以下がさらに好ましい。飲料中のティリロサイドの含有量は、HPLCを用いて測定することができる。HPLCによる測定条件を以下に示す。
・溶離液:37.5%アセトニトリル
・流速:1 mL
・検出:UV 254 nm
・カラム:資生堂CAPCELL PAK C18 (4.6 × 250 mm)
【0015】
ティリロサイドは、市販されている既知の化合物である。本発明では、ティリロサイドは純品又は植物抽出物の形態で用いることができる。ティリロサイドの市販品としては、フナコシより販売されているもの、Merck KGaAによって販売されているもの等が挙げられる。また、ティリロサイドを含有する植物抽出物としては、森下仁丹製のローズヒップ抽出物、オリザ油化製のイチゴ種子抽出物等が挙げられる。
【0016】
(アルギニン)
本発明の飲料は、0.1〜10mg/100mLのアルギニンを含むことを特徴とする。苦味を主な呈味特性とするアルギニンを用いて、苦味を有するティリロサイドを含有する飲料の後味を改善することができることは驚くべきことである。
【0017】
一般に、苦味には、先味の苦味、中味の苦味、後味の苦味、またはそれらの組み合わせがあるが、本発明では、ティリロサイドが呈する後味の苦味を抑制又は低減するものである。本明細書においては、苦味を抑制又は低減する効果を単に「苦味抑制効果」と称することもある。ここで「苦味を抑制又は低減する」とは、対照物(例えば、ティリロサイドの濃度が0.01〜1.0mg/100mLであり、アルギニンの濃度が0.1mg/100mL未満の飲料)と比較して、苦味の強さが小さくなっていることをいう。苦味の強さは、例えば専門パネルによる官能評価により決定できる。
【0018】
本発明に用いるアルギニンは、化学名としては5−グアニジノ−2−アミノペンタン酸または5−グアニジノ−2−アミノ吉草酸で表されるアミノ酸、またはその塩をいう。L−アルギニン、D−アルギニン、ラセミ体であるDL−アルギニンのいずれを用いてもよい。中でも、L−アルギニンは好ましい。本発明には、遊離アルギニンを用いてもよいし、塩の形態のアルギニンを用いてもよい。塩の形態のアルギニンとしては、飲食用として許容される塩であれば特に限定されず、たとえば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いるアルギニンは、ゼラチン、大豆、ナッツ類等の天然のタンパク質源を酸加水分解したものから抽出したものや、アルギニン産生微生物の培養物から抽出したものを用いることができ、市販のアルギニンを用いることもできるが、後述するように、アルギニンを含む植物の抽出物の形態で用いることが好ましい。
【0020】
本発明の飲料におけるアルギニンの含有量は0.1〜10mg/100mlである。所望する効果の大きさから、飲料中のアルギニンの含有量は0.15mg/100ml以上が好ましく、0.18mg/100ml以上がより好ましい。また、香味的な観点から、飲料中のアルギニンの含有量は8mg/100ml以下が好ましく、5mg/100ml以下がより好ましい。なお、本発明において、アルギニンの量というときには、遊離アルギニンに換算した量をいう。飲料中のアルギニンの含有量は、後述の実施例に示したようにHPLCを用いて測定することができる。
【0021】
(アミノ態窒素)
本発明の飲料において、アルギニンを他のアミノ酸と組み合わせて用い、飲料中のアミノ態窒素の濃度(含有量)が18〜60mg/100mLとなるように配合することで、飲料中のティリロサイドに由来する苦味をより一層抑制又は低減し、飲料の後味におけるその苦味を軽減することができる。
【0022】
本発明の飲料中のアミノ態窒素の濃度は、18〜60mg/100mLであり、18〜30mg/100mLが好ましく、18〜27mg/100mLがより好ましい。飲料中のアミノ態窒素の濃度が60mg/100mLを超えると、飲料の風味が影響を受けることがある。飲料中のアミノ態窒素の濃度は、TNBS法(trinitro benzen sulfonic acid法)により求めることができる。具体的には、試料を適度に希釈したのち、リン酸緩衝液とTNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)溶液とを加え、所定時間、所定濃度で保持した後、反応停止液を加え、吸光度を測定し(分光光度計波長340nm)、この吸光度を既知濃度のグリシン標準水溶液から求められた検量線に照らし合わせることにより、飲料中のアミノ態窒素の濃度を算出することができる。
【0023】
アルギニン以外の他のアミノ酸としては、分子内にアミノ基とカルボキシ基とを有する化合物であれば特に限定されない。例えば、テアニン、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、システィン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、プロリンなどが挙げられる。本発明においてアルギニン以外のアミノ酸は1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。所望する効果の大きさから、特にテアニンが含まれることが好ましい。
【0024】
アミノ酸は、アミノ酸を含有する天然物、特に植物から抽出したもの又はその精製品を用いてもよいし、化学合成等により工業的に製造したものを用いてもよい。本発明の好ましい実施形態としては、アミノ酸は植物抽出物由来のものである。植物抽出物は、植物の一部又は全体を、そのまま、或いは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することによって得ることができる。抽出手段は特に限定されず、エタノール等の有機溶媒、水又はそれらの混合物を用いた攪拌・振盪・浸漬抽出法や、減圧水蒸気蒸留抽出法、二酸化炭素等の超臨界流体を用いた超臨界ガス抽出法等、公知の抽出方法で行えばよい。
【0025】
アミノ酸を植物抽出物として配合する場合、飲料中のアミノ態窒素濃度が上述の範囲となるように、適宜配合量を設定する。特に限定されないが、飲料の香味や色味の観点から、植物抽出物は、例えば本発明の飲料中に固形分濃度で0.001〜0.5重量%(w/v)となるように含有させることができ、好ましくは0.01〜0.2重量%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.2重量%(w/v)となるように含有させることができる。
【0026】
本発明ではアミノ酸を含有する植物抽出物が好適に用いられるが、かかる植物抽出物を用いた場合は、単にアミノ酸を使用した場合と比較して、ティリロサイドの苦味を低減する作用効果が顕著に発現する。これは、植物抽出物中に含まれる植物性フェノール類等とアミノ酸との相加的又は相乗的な効果と推測できる。
【0027】
アミノ酸を含有する植物抽出物の植物原料としては、特に限定されないが、本発明の効果の大きさから、茶葉、コーヒー、ココア等を用いることが好ましい。すなわち、本発明において好ましい植物抽出物は、茶抽出物、コーヒー抽出物、又はココア抽出物であり、これらのうち茶抽出物が特に好ましい。
【0028】
ここで好適な態様の一つである茶抽出物について詳述する。本発明において茶抽出物とは、茶葉から得られる抽出物を意味する。抽出に使用する茶葉としては、例えば、Camellia属(例えば、C. sinensis var. sinensis(やぶきた種を含む)、C. sinensis var. assamica等のCamellia sinensis等)及びそれらの雑種から選択される茶葉が挙げられる。本発明で使用される茶葉は、加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分類することができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が挙げられる。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が挙げられる。さらに、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が挙げられる。茶葉は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、アミノ酸含有量の調整のしやすさから、本発明では緑茶を用いることが好ましい。
【0029】
茶葉の抽出方法としては、ニーダー抽出、バッチ抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。茶抽出物は、茶抽出液又は茶濃縮物を1種又は2種以上を組み合わせて使用することが可能である。ここで、本明細書において「茶抽出液」とは、茶葉から抽出溶媒を用いて抽出されたものであって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。また、「茶濃縮物」とは茶抽出液のうち溶媒の一部を除去するなどして可溶性固形分濃度を高めたものであり、例えば、濃縮方法として、常圧濃縮、減圧濃縮、膜濃縮等を挙げることができる。茶濃縮物としては市販品を使用してもよい。
【0030】
(飲料)
本発明の飲料は、特定量のティリロサイド及びアルギニンを含有する飲料であり、後味として残りやすいティリロサイドの苦味を所定量のアルギニンを用いることで低減し、飲料の嗜好性を向上させるものである。本発明者らの検討によると、後味におけるティリロサイドの苦味は、特に飲料が中性である場合に強くなる傾向にある。飲料が酸性(pH4.0以下)であると、酸味成分によりティリロサイドの苦味が好適に抑制され、後味として残りにくくなると推測される。したがって、本発明の飲料は、pHが4.5以上であるティリロサイド含有飲料を対象とする。具体的には、本発明の飲料は、pH4.5〜7であり、好ましくはpH5〜7であり、より好ましくはpH5.5〜7である。
【0031】
本発明の飲料には、pHを上記範囲内に調整するために、pH調整剤を含有させることができる。pH調整剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を使用することができるが、特にこれらに限定されない。
【0032】
また、本発明者らの検討によると、甘味度が一定以下に抑えられている低甘味度の飲料では、それよりも甘味度が高い飲料と比較して、ティリロサイドの苦味が目立ちやすい傾向にある。したがって、本発明の効果を顕著に発揮できるという観点から、低甘味度の飲料は本発明の飲料の好適な態様である。ここで「低甘味度」の飲料とは、具体的には甘味度が2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下の飲料をいう。なお、本発明の飲料の甘味度は0以上であり、好ましくは0.01以上である。甘味度とは、甘味の強さを示す尺度であり、ショ糖1重量%(20℃)の甘味を1とした場合の相対比である。飲料の甘味度は、当該飲料に含まれる各甘味成分の量(重量濃度)を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量を総計することによって求めることができる。なお、ショ糖の甘味1に対する各種甘味成分の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味換算表(マクマリー有機化学(第7版)988頁)から求めることができる。
【0033】
このような条件を満たす本発明の飲料の好適な態様の一つとして、茶飲料が挙げられる。ここで「茶飲料」とは、茶葉の抽出液や穀類の抽出液を主成分として含有する飲料であり、具体的には、緑茶、ほうじ茶、ブレンド茶、麦茶、マテ茶、ジャスミン茶、紅茶、ウーロン茶、杜仲茶などが挙げられる。本発明において特に好ましい茶飲料は、緑茶飲料である。
【0034】
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、飲料の種類に応じて、各種添加剤等が配合されていてもよい。各種添加剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、品質安定剤等が挙げられる。
【0035】
本発明の飲料は、ティリロサイドの苦味が低減された飲みやすい飲料である。したがって、ティリロサイドの生理作用を期待して継続摂取する飲料として、常温で長期保存でき、即時飲用可能な形態(RTD:Ready To Drink)とするのが、ユーザーの観点の簡便性から優れている。
【0036】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理を経て得られる容器詰め飲料であってもよい。この場合、容器の種類は特に限定されず、PETボトル、缶、瓶、紙パックなどを挙げることができる。特に、無色透明のPETボトルは、容器中の飲料の色味が外部から視認しやすく、且つ充填後の飲料の取り扱いも容易であるため、好ましい。
【0037】
本発明の飲料は、上述した成分を適宜配合することにより製造することができる。本発明の飲料を茶飲料とする場合は、茶葉、穀類種子又はそれらの抽出物等を配合して製造することができる。また、本発明の飲料は、必要に応じて殺菌等の工程を経て、容器詰め飲料とされる。例えば、飲料を容器に充填した後に加熱殺菌等を行う方法や、飲料を殺菌してから無菌環境下で容器に充填する方法により、殺菌された容器詰め飲料を製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0039】
本実施例中、飲料中のアルギニン及びテアニンの濃度、並びにアミノ態窒素の濃度は以下の方法により測定した。
【0040】
(アルギニン及びテアニンの濃度の測定)
アルギニン及びテアニンの濃度の測定にはHPLCを用いた。HPLCの分析条件は以下のとおりとした。
・HPLC装置:Watersアミノ酸分析装置2695
・カラム:AccQ-Tagカラム(3.9mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:AccQ-TagA(pH5.8)
・移動相B:アセトニトリル
・移動相C:水/メタノール=9/1
・検出:EX250nm EM395nm Gain100
・注入量:5μL
・グラジエントプログラム:
時間(分) 流速(ml/min) %A %B %C
0 1 100 0 0
1 1 99 1 0
16 1 97 3 0
25 1 94 6 0
35 1 86 14 0
40 1 86 14 0
50 1 82 18 0
51 1 0 60 40
54 1 100 0 0
75 1 0 60 40
110 0 0 60 40
・標準物質:アミノ酸(アルギニン、テアニン)
【0041】
(アミノ態窒素の濃度の測定)
アミノ態窒素は、TNBS法で測定した。まず、0.1、0.2、0.3、0.4、及び0.5mMのグリシン溶液を調製した(グリシン標準溶液)。そして、試料となる飲料及びグリシン標準溶液を0.5mLずつ量りとり、リン酸緩衝溶液2mL及び0.1% 2,4,6−Trinitro benzensulfonic acid−Na塩水溶液2mLをそれぞれに加えて攪拌混合し、45℃で90分間反応を行った。反応終了後、紫外可視分光光度計を用いて波長340nmで吸光度を測定した。グリシン標準溶液から検量線を作成し、試料中のアミノ態窒素の濃度(含有量)をグリシン相当量として算出した。
【0042】
実験1:ティリロサイド含有飲料の評価(1)
ティリロサイドとしてフナコシ製のもの(純度99%)を使用した。水溶液中のティリロサイド濃度が、表1に記載の濃度となるように、ティリロサイドを水(pH7のイオン交換水)に溶解した。種々の濃度のティリロサイド溶液(pH:7、甘味度:0)について、3名のパネルにより、後味におけるティリロサイドに由来する苦味の有無を評価した。評価は、ティリロサイド由来の苦味の有無について各自が実施した後、パネル全員で協議して決定した。
【0043】
結果を表1に示す。ティリロサイドを0.01mg/100ml以上の濃度で含有する溶液は、ティリロサイドの苦味が後味として残りやすく、飲料の嗜好性が低下して飲みにくくなることが判明した。
【0044】
【表1】
【0045】
実験2:ティリロサイド含有飲料の評価(2)
ティリロサイド(フナコシ、純度99%)、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを用いて、種々のpHとなるようにティリロサイド含有飲料を調製した。実験1と同様にして、苦味の有無を評価した。
【0046】
結果を表2に示す。酸性飲料(pH4.0以下の飲料)では、酸味成分によりティリロサイドの不快味がマスキングされ、ティリロサイドの苦味が後味に残らなかった。pH4.5以上ではティリロサイドの苦味が後味に残りやすく、pH5.0以上ではパネル全員が苦味が残ると評価した。
【0047】
【表2】
【0048】
実験3:ティリロサイドの苦味低減作用(1)
ティリロサイド(フナコシ、純度99%)及びアルギニン(味の素ヘルシーサプライ、L−アルギニン)を用いて、表3に記載の濃度となるように、ティリロサイドとアルギニンとを含有する飲料を調製した。各飲料は、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム、クエン酸)を用いてpHを7に調整した。pH調整後の飲料は500mLのPETボトル容器に充填して、容器詰め飲料とした。各種容器詰め溶液(pH:7、甘味度:0)について、3名のパネルにより官能評価を行った。各パネルは最初に試料3−1を評価し、ティリロサイドの苦味の程度を各自が認識し、そしてパネル間で苦味の感覚を共有化させた上で、残りの試料を評価した。官能評価は、飲料の後味におけるティリロサイドの苦味の有無を調べ、各パネルが評価した結果に基づいて、苦味を感じないパネルの人数をカウントした((例)3点:パネル3名が苦味を感じない、0点:パネル3名が苦味を感じる)。
【0049】
結果を表3に示す。ティリロサイドを0.02mg/100mlの濃度で含有する飲料は、ティリロサイドの苦味を後味に強く感じる飲みにくい飲料であるが、0.1mg/100ml以上のアルギニンを含有させることによって、ティリロサイドの苦味を低減(抑制)できることが分かった。
【0050】
【表3】
【0051】
なお、アルギニンを多量に配合した場合、アルギニン自体の風味(苦味、ぬめり)によって飲料本来の風味が損なわれてしまうと評価したパネルが存在したことから、アルギニンの含有量の限界は10mg/100mlであることが示唆された。
【0052】
実験4:ティリロサイドの苦味低減作用(2)
実験3と同様にして、ティリロサイドとアルギニンを含有する容器詰め飲料(pH:7、甘味度:0)を調製した(試料4−1)。また、テアニン(太陽化学、サンテアニン)を用いて、実験3と同様にしてティリロサイドとテアニンを含有する容器詰め飲料(pH:7、甘味度:0)を調製した(試料4−2)。各種容器詰め飲料について、実験3と同様の方法で3名のパネルにより官能評価を行った。なお、実験3と同様に、上記の試料3−1を用いてパネル間でティリロサイドの苦味の感覚を共有化させた上で、官能評価を実施した。
【0053】
結果を表4に示す。テアニン1.0mg/100mLを含有させることでは、ティリロサイドの苦味低減作用が十分ではないことが明らかになった。
【0054】
【表4】
【0055】
実験5:ティリロサイド含有茶飲料(1)
アルギニンを含むアミノ酸の供給源として茶抽出物を用いた。茶抽出物は以下の方法により製造した。
(i)茶抽出物の製造
まず、アミノ酸を含有する植物抽出物として茶抽出物を製造した。10gの緑茶葉に対し熱水(70〜80℃)1000mLを用いて5分間抽出処理を行った後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶抽出液を得た。この抽出液を希釈して、アミノ態窒素濃度が15mg/100mLとなる緑茶抽出液(抽出液A)を製造した。なお、抽出液A中のアルギニン濃度は、0.05mg/100mLであった。
【0056】
(ii)ティリロサイド含有茶飲料の製造
抽出液Aに0.02mg/100mLとなるようにティリロサイド(フナコシ、純度99%)を配合して、ティリロサイド含有茶飲料(甘味度:0)を調製した(試料5−1)。これに、アルギニン(味の素ヘルシーサプライ、L−アルギニン)を添加して、溶液中のアルギニン濃度が0.1mg/mLとなる茶飲料を調製した(試料5−2)。また、テアニン濃度が20mg/mLとなるように、試料5−2にテアニン(太陽化学、サンテアニン)を添加し、溶液中のアミノ態窒素濃度が18.5mg/100mLとなる茶飲料を調製した(試料5−3)。なお、各飲料は、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム、クエン酸)を用いてpHを6.5に調整した。これら飲料を135℃で30秒間加熱殺菌した後、500mLのPETボトル容器に充填し、容器に蓋をして密封して容器詰め緑茶飲料を製造した。
【0057】
得られた各容器詰め緑茶飲料について、実験3と同様に官能評価を行なった。なお、実験3と同様に、上記の試料3−1を用いてパネル間でティリロサイドの苦味の感覚を共有化させた上で、官能評価を実施した。
【0058】
結果を表5に示す。中性の茶飲料において、ティリロサイドの苦味が残ったが、所定量のアルギニンを含有させることで苦味が低減されることが示された。また、所定量のアルギニンを含有する飲料中のアミノ態窒素含有量を18mg/100mL以上とすることで、ティリロサイドの苦味をより低減することができた。パネル全員が、試料5−2よりも試料5−3の方が効果的に苦味を低減できており、後味においてティリロサイドの苦味はより感じられにくいと評価した。
【0059】
【表5】
【0060】
実験6:ティリロサイド含有茶飲料(2)
アルギニンを含むアミノ酸の供給源として茶抽出物及び茶濃縮物を用いた。茶抽出物は実験5で製造したものを使用し、茶濃縮物は以下の方法により製造した。
【0061】
(i)茶濃縮物の製造
特許第5624633号公報(実施例3)に記載の方法に準じて茶濃縮物を製造した。すなわち、第一工程としてカラム型抽出機に10gの緑茶葉を封入し、抽出機上部から25℃のイオン交換水を100mL加え、緑茶葉を浸漬させた。そこに25℃のイオン交換水を50mL/minの流量にて連続的に20分通液し、低温抽出液を得た(試料B1)。第二工程として、試料B1抽出後の抽出残渣に75℃のイオン交換水を100mL加えた上で、75℃のイオン交換水を50mL/minの流量にて連続的に40分通液し、高温抽出液を得た(試料B2)。第三工程として、試料B2抽出後の抽出残渣に、酵素としてプロテアーゼ及びペクチナーゼを各0.2gずつ添加し、40℃のイオン交換水を加え総重量160gに調整し、40℃に保持したまま50mL/minにて16時間循環通液を行い、酵素処理(反応)を行った。その後、得られた酵素処理液を90℃で10分加熱して酵素を失活させ、酵素抽出液を得た(試料B3)。第四工程として、上記試料B1及びB3全量を混合し、茶抽出液の混合物を得た(茶濃縮物B)。茶濃縮物Bは苦味や渋味がなく、コクや厚みのある豊かな旨みを有するものであり、アミノ態窒素濃度は91mg/100mL、アルギニン濃度は1.82mg/100mLであった。
【0062】
(ii)ティリロサイド含有茶飲料の製造
実験5で用いた抽出液Aにティリロサイド(フナコシ、純度99%)を配合してティリロサイド含有茶飲料(甘味度:0)を調製し(試料6−1)、これに茶濃縮物Bを添加して、アルギニン及びアミノ態窒素の濃度の異なる茶飲料(甘味度:0)を調製した(試料6−2〜6−8)。各飲料は、実験5と同様にしてpHを6.5に調整し、実験5と同様の方法で容器詰め緑茶飲料とした。そして、各容器詰め緑茶飲料について、実験3と同様に官能評価した。なお、実験3と同様に、上記の試料3−1を用いてパネル間でティリロサイドの苦味の感覚を共有化させた上で、官能評価を実施した。
【0063】
結果を表6に示す。ティリロサイドを含有する中性の茶飲料において、飲料中のアルギニン含有量を0.1mg/100mL以上、アミノ態窒素含有量を18mg/100mL以上とすると、ティリロサイドの苦味が効果的に低減でき、後味においてティリロサイドの苦味は感じられにくかった。
【0064】
【表6】
【0065】
なお、アミノ態窒素の含有量が75mg/100mLの場合、異味を感じると評価したパネルが存在した。これにより、飲料中のアミノ態窒素含有量が18〜60mg/100mLであると、風味良好なティリロサイドを含有する容器詰飲料が製造できることが示唆された。
【0066】
実験7:ティリロサイド含有茶飲料(3)
ティリロサイドの濃度を0.1mg/100mLに変えること以外は、実験6と同様にして容器詰め緑茶飲料を製造し、実験3と同様に官能評価した。なお、実験3と同様に、上記の試料3−1を用いてパネル間でティリロサイドの苦味の感覚を共有化させた上で、官能評価を実施した。
【0067】
結果を表7に示す。ティリロサイド濃度が0.1mg/100mLの場合も、飲料中のアルギニン含有量を0.1mg/100mL、アミノ態窒素含有量を18mg/100mL以上となるように調整することにより、ティリロサイドの苦味が効果的に低減でき、後味においてティリロサイドの苦味は感じられにくくなった。
【0068】
【表7】
【0069】
なお、アミノ態窒素の含有量が60mg/100mLを超える量で茶濃縮物Bを配合することにより、茶濃縮物B由来の呈味が飲料に影響を及ぼすと知覚するパネルが存在したことから、飲料中のアミノ態窒素含有量の上限は60mg/100mLであることが示唆された。
【0070】
実験8:ティリロサイド含有茶飲料(4)
ティリロサイドの濃度を0.5mg/100mLに変えること以外は、実験7の試料7−6と同様にして容器詰め緑茶飲料を製造し、実験3と同様に官能評価した(事前に、上記試料3−1を用いてパネル間でティリロサイドの苦味の感覚を共有化させた)。評価結果は2点であり、ティリロサイドが高濃度の場合にも、所定量のアルギニン及びアミノ態窒素を含有させることで苦味が低減できた。
【解決手段】0.01〜1.0mg/100mLのティリロサイドを含有するpHが4.5〜7である飲料に対して、アルギニンを0.1〜10mg/100mLの濃度で配合する。