(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6420020
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】毛髪スタイリング装置
(51)【国際特許分類】
A45D 1/00 20060101AFI20181029BHJP
A45D 1/28 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
A45D1/00 501D
A45D1/28 C
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-524331(P2018-524331)
(86)(22)【出願日】2016年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2016077514
(87)【国際公開番号】WO2017089152
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】15196218.0
(32)【優先日】2015年11月25日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ジローチャ ニコライ ヴァシルイェヴィッチ
【審査官】
長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−190901(JP,U)
【文献】
特表2014−516742(JP,A)
【文献】
特開2009−112371(JP,A)
【文献】
特開2009−136694(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3153008(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪に熱を加えるための加熱接触面と、
毛髪の温度を感知するための温度センサと、
前記加熱接触面の加熱を制御するための制御回路と、
を有する毛髪スタイリング装置において、前記制御回路は、毛髪が湿っているときに適用される第1の温度設定が、閾値温度を超えないよう、前記加熱接触面の加熱を制御し、前記閾値温度は、120℃以下であり、毛髪が湿っていないときには、少なくとも140℃である第2の温度設定が適用されることを特徴とする、毛髪スタイリング装置。
【請求項2】
前記温度センサが、前記第1の温度設定よりも低い毛髪の温度を測定した場合、前記第1の温度設定が適用され、前記毛髪の温度が前記第1の温度設定に到達した場合、前記第2の温度設定が適用される、請求項1に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項3】
前記閾値温度は110℃である、請求項1又は2に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記毛髪の温度が前記第2の温度設定に到達した場合、前記加熱の処理を停止する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【請求項5】
前記加熱接触面は、前記温度センサとシリコーンのストリップとを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の毛髪スタイリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪スタイリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開US2012/0291797は、毛髪に熱を加えるための毛髪加熱装置を含む、毛髪スタイリング装置を開示している。該毛髪加熱装置は、乾燥時温度設定と、対応する低温設定よりも高い湿潤時温度設定と、を持つ。以下のルックアップテーブルの例が開示されている。
【表1】
【0003】
米国特許出願公開US2012/0312320は、毛髪をスタイリングするための毛髪ツールであって、少なくとも1つの加熱可能な要素と、該加熱可能な要素の温度を制御するため該加熱可能な要素と関連した温度調整器と、を持つ毛髪ツールを開示している。該毛髪ツールが毛髪に当てられ、温度が低下すると、該毛髪ツールは、毛髪が濡れており、より高い温度が必要であることを決定するようプログラムされることができる。この時点で、該毛髪ツールは、加熱プレートを、例えば華氏約275度(約135℃)の温度に到達するよう設定する。
【0004】
米国特許US8707969は、開始温度にまで加熱される加熱要素を持ち、該温度は温度制御により調整される、毛髪処置装置を開示している。該毛髪処置装置は、データを測定するセンサを持ち、該データから毛髪の状態が生成されることができ、該パラメータは温度制御に影響を与える。当該開始温度のレベルについては言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に、改善された毛髪スタイリング装置を提供することにある。本発明は、独立請求項により定義される。有利な実施例は、従属請求項において定義される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、毛髪スタイリング装置は、髪に熱を加えるための加熱接触面と、毛髪の温度を感知するための温度センサと、前記加熱接触面の加熱を制御するための制御回路と、を有し、前記制御回路は、毛髪が湿っているときに適用される第1の温度設定が、閾値温度を超えないよう、前記加熱接触面の加熱を制御し、前記閾値温度は、120℃以下であり、毛髪が湿っていないときには、少なくとも140℃である第2の温度設定が適用される。
【0007】
本発明の実施例は、毛髪の乾燥及びスタイリングの両方に適した、湿った毛髪にも乾いた毛髪にも用いられることができる、毛髪スタイリング装置を提供する。従来のストレーテナー(straightener)は通常、130℃乃至220℃の温度範囲で動作する。本発明は、湿った毛髪に対して斯かる高い温度が該ストレーテナーにより用いられると、水の転移フェーズの間の微小破裂により、毛髪の繊維表面に不可逆な損傷が引き起こされるという洞察に基づく。
【0008】
これに鑑み、本発明の態様は、湿った毛髪がストレーテナーにより対処されると毛髪が損傷を受けるという問題を軽減する、湿った毛髪にも乾いた毛髪にも用いられることができるストレーテナーを提供することを目的とする。実施例は、湿った毛髪は、該毛髪に対する熱的損傷を引き起こすことなく、110℃まで加熱されることができるという洞察に基づく。低い毛髪の温度では毛髪の乾燥に長い時間がかかり過ぎ、それ故毛髪を乾燥させるためにより多くのスタイリングのストロークが必要とされるため、このことは、ストレーテナーを用いた毛髪の乾燥のためには、毛髪及び加熱プレートの双方の温度が、約105±5℃である同等な温度を持つ必要があることを意味する。
【0009】
ストレートニングのためには、ゆるい/弱い水素結合を除去することにより毛髪の形状/きめを変更することにより一時的なスタイルを形成することを可能とするため、より高い温度が必要され、毛髪は、約140乃至150℃(毛髪のタイプ、毛髪の量、水分量、及び潜在的な損傷レベルに依存する)の温度で準安定状態にある必要がある。従って、これら温度における最長のストレートニング時間は、約10乃至15分となる。より迅速なストレートニング結果を達成するため、代替として150℃を超える高いストレートニング温度が利用されても良いが、この場合、プレート温度に依存して、曝露時間はかなり短くされるべきである。毛髪の内側層又は皮質は約150℃で平らにされるため、ストレートニング温度は好適には140℃と150℃との間に設定される。
【0010】
好適には、毛髪の乾燥及びストレートニングのいずれに対しても両方の温度範囲が達成されることを確実にするため、非常に正確な温度測定が用いられる。好適には、毛髪の温度は、通常行われるように加熱プレートの温度を測定することによってではなく、
直接に測定される。これを実現するための方法のひとつは、直接接触測定法又はサーミスタを使用することである。このため、加熱プレートは好適には、いずれもが加熱プレートの一方に配置された、2つのサーミスタを備える。毛髪の構造に対する損傷のリスクを低減させるため、毛髪の温度は好適には、乾燥の間に110℃を超えず、センサの必要とされる精度は好適には5℃よりも高い。
【0011】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の毛髪スタイリング装置における使用のための加熱ストリップの実施例を示す。
【
図2】本発明の毛髪スタイリング装置における使用のための加熱ストリップの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の毛髪スタイリング装置(例えば毛髪ストレーテナー)における使用のための加熱接触面の第1の実施例を示す。本実施例においては、該加熱接触面は、毛髪の温度を測定するためのサーミスタのストリップにより形成された2つの温度センサTSと、摩擦係数を増大させてスタイリング速度を低下させるシリコーンのストリップSiSと、を備えた加熱プレートHPにより形成される。通常どおり、該ストレーテナーは、互いに面しており、間に毛髪がクランプされる、2つの加熱プレートHHPを持っても良い。温度は、摂氏での絶対温度として測定される。
図1の実施例においては、温度センサTSの位置は、加熱プレートHPの表面の中央であり、
図2の実施例においては、温度センサは加熱プレートHPの端の近くに配置される。好適な温度測定を確実にするため、温度センサTSは毛髪の繊維と接触することが重要である。
【0014】
該ストレーテナーは、該ストレーテナーが毛髪が湿っているか乾いているかを認識することができるように記述されたソフトウェアによりプログラムされたプロセッサによって形成された制御回路(図示されていない)を持つ。乾いている段階の間は、プレート及び毛髪の両方の温度とも、毛髪の損傷を低減するため120℃、好適には110℃を超えるべきではない。ユーザは例えば、毛髪を乾かし、毛髪から外部の水分を取り除くために、最初の10回のストロークを利用する必要がある。該装置が、毛髪の温度が110℃の温度に到達したと感知すると、ソフトウェアは自動的に、例えば180℃のような高い温度に、加熱プレートHPの温度設定を変更し、スタイリングのストロークの間、継続して毛髪の温度を測定し、毛髪の温度が140乃至150℃の平衡ストレートニング温度に達した後にのみ、プレートの温度がストロークの間にもはや上昇しない場合に、加熱工程を停止する。このことは、毛髪における水分の量を制御し、毛髪の構造に対する不可逆的な損傷が生じることを防止することを可能とする。当該150℃という温度より高い温度では、強く結合した水が取り除かれ、強化遷移(タンパク質が毛髪の繊維構造の87%に影響を与える)の高いリスクを伴う毛髪の遷移段階が生じ、毛髪が黄ばんでしまい得、それ故当該タンパク質の損傷は、ひどいパーマネント/不可逆的な損傷とみなされるため、当該毛髪の温度は重要である。ユーザは、使用後に該装置をスイッチオフするだけで良い。該ストレーテナーはまた、必要な毛髪の温度が達成されると、ストレートニング工程が完了したことをユーザに示す触覚的な又は可聴のフィードバックを提供しても良い。
【0015】
加熱プレートから毛髪への伝導的な熱の移動を改善するため、スタイリングの速度が低下させられる(必要とされるストレートニングのストロークを低減する)必要がある。
図1及び2の実施例においては、このことは、加熱プレートHPが、毛髪と加熱プレートHPとの間の摩擦係数を増大させ、それ故より低速なストロークの速度に帰着する、少なくとも1つのシリコーンのストリップSiSを備えることにより実現される。また、ここで達成されるストレートニングの効果は一時的なものであり、髪を洗うサイクルの間に用いられる水、雨、湿度等のような環境的な因子により反転され得ることを言及しておくことは重要である。
【0016】
上述の実施例は本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付する請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。毛髪スタイリング装置は代替としては、毛髪温度センサに依存する代わりに、毛髪が依然として湿っているか否かを決定するための水分センサを用いても良い。熱接触面は、加熱板の代わりに湾曲していても良い。温度設定を制御するための制御回路は、適切にプログラムされたプロセッサの代わりに、リレーのような専用の電気回路を含んでも良い。
【0017】
請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「有する(comprise)」及びその語形変化の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する「1つの(a又はan)」なる語は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。幾つかの手段を列記した装置請求項において、これら手段の幾つかは同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。
【要約】
毛髪スタイリング装置は、毛髪に熱を加えるための加熱接触面HPと、毛髪の温度を感知するための温度センサTSと、毛髪が湿っているときに適用される第1の温度設定が、閾値温度を超えないよう、加熱接触面HPの加熱を制御するための制御回路と、を有し、該閾値温度は、120℃以下であり、毛髪が湿っていないときには、少なくとも140℃である第2の温度設定が適用される。