(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の散水孔が形成される領域の幅寸法は、前記散水面の長さ方向の中間部から両端部に向かって一定の割合で減少することを特徴とする請求項1に記載のシャワー装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のシャワー装置では、散水範囲の形状に合わせて散水板の形状が決定されているため、浴室等のデザインに応じてシャワー装置や散水板の形状を任意に変更することが難しく、浴室及びシャワー装置の設計自由度が制限され、意匠性を高めることが困難になるという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、散水板の形状に関わらず所望の散水範囲を得ることができ設計自由度を高めることができるシャワー装置及び浴室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャワー装置は、散水板を備えるシャワー装置であって、前記散水板は、所定の幅及び長さを有した散水面と、該散水面を貫通して形成された複数の散水孔と、を有して構成され
、前記散水面は、幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法が大きく形成され、前記散水面における前記複数の散水孔が形成される領域は、該散水面の長さ方向の中間部から両端部に向かって幅寸法が漸減しつつ該散水面の幅方向内側に寄せて設けられ、前記複数の散水孔における各散水孔の散水方向は、前記領域における幅方向内側から外側に向かうにしたがい該幅方向の外方に向けられ
、前記複数の散水孔から散水された水が所定高さに到達する際に、略円形の散水範囲の内側に均等に分散されることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、複数の散水孔が形成される領域は、散水面の長さ方向の中間部から両端部に向かい徐々に領域の幅寸法を減じつつ幅方向中央に寄せて設けられ、すなわち、複数の散水孔が散水面の長さ方向両端部に向かって先細り形状で配列されていることで、散水面の長さ方向の中間部における散水孔の孔数を両端部よりも多くすることができる。さらに、複数の散水孔が形成される領域において、各散水孔の散水方向が幅方向内側から外側に向かうにしたがい幅方向の外方に向けられ、すなわち、散水面の幅方向外側に位置する散水孔の散水方向を内側の散水孔よりも外方に向けることで、幅方向における散水範囲を広げることができる。
【0008】
以上のように、散水面の長さ方向両端部よりも散水孔が形成される領域の幅寸法が大きい(散水孔の孔数が多い)中間部においては、幅方向外方に向かって広い範囲に散水し、領域の幅寸法が小さい長さ方向両端部側においては、幅方向にさほど広がらないように散水することで、
所定高さにて略円形の散水範囲を得ることができる。このように散水板における散水面の位置に応じて複数の散水孔の配置と各散水孔の散水方向を適宜に設定することで、散水板(散水面)の形状に関わらずに
所定高さにて略円形の散水範囲を得ることができるので、設計の自由度を高めることができ、設置場所(浴室等)のデザインに応じてシャワー装置を設計することで意匠性を向上させることができる。
【0009】
この際、本発明のシャワー装置では、前記複数の散水孔が形成される領域の幅寸法は、前記散水面の長さ方向の中間部から両端部に向かって一定の割合で減少することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、領域の幅寸法は、散水面の長さ方向の中間部から両端部に向かって一定の割合で減少する、すなわち、領域の外形としては、散水面の長さ方向両端部に向かって直線的な先細りの辺を有する菱形や六角形、八角形等とすることで、散水孔の配置(配列)が幾何学的に設計しやすいものとなり、設計自由度をさらに高めることができる。さらに、散水孔が幾何学的に配置されることで、シャワー装置の外観がスマートに見えることから意匠性を向上させることができる。
【0012】
また、散水面の幅方向の寸法(幅寸法)よりも長さ方向の寸法(長さ寸法)が大きい、すなわち、長方形や長円形、楕円形、長さ寸法が大きい多角形等、の形状を有した散水面を用いることで、前述のような領域に設けられる複数の散水孔を効率よく配置することができ、散水面における散水孔が設けられない(領域外の)部分の面積を小さくして無駄を削減することができる。なお、本発明において、散水面は、幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法が大きいものに限らず、幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法が小さくてもよいし、幅方向の寸法と長さ方向の寸法とが同一であってもよい。
【0013】
また、本発明の浴室は、天井面又は壁面に前記いずれかのシャワー装置が設けられたことを特徴とする。
【0014】
このような本発明の浴室によれば、前述と同様に散水板(散水面)の形状に関わらずに所望の形状の散水範囲を得ることができるので、浴室等のデザインに応じた形態のシャワー装置を設置することができ、浴室全体の意匠性を向上させることができる。また、浴室の天井面や壁面に設けられるシャワー装置(例えば、オーバーヘッドシャワー)において、散水範囲を円形や楕円形にすることで、利用者が移動したり体を傾けたりしなくても体の各部に散水を浴びることができ、利便性と快適性を向上させることができる。ここで、シャワー装置がハンドシャワーであれば、利用者がシャワーヘッドを操作することによって体の各部に散水を浴びることができるものの、天井面や壁面に設けられたオーバーヘッドシャワーでは、そのような利用方法は想定されておらず、利用者の体を覆うような散水範囲に散水できることで利便性を高めることができる。
【0015】
さらに、シャワー装置がオーバーヘッドシャワーであり、その下方にベンチカウンターが設けられていることが好ましい。このようにすることで、ベンチカウンターに座ったままの楽な姿勢でシャワーを浴びることができ、快適性を向上させることができる。さらに、前述のように、シャワー装置の散水範囲が散水孔の配置と散水方向を適宜に設定することにより決定されるので、下方のベンチカウンターの位置に応じて最適な浴室レイアウトを実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明のシャワー装置及び浴室によれば、散水面の長さ方向中間部よりも両端部において散水孔が形成される領域の幅寸法を小さくするとともに、幅方向の内側よりも外側において各散水孔の散水方向を外方に向けることで、散水板の形状に関わらずに所望の形状の散水範囲を得ることができ、散水板やシャワー装置自体の形状が制約を受けにくくなることから設計の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の浴室ユニット(浴室)1は、
図1、2に示すように、それぞれ複数の壁パネル2及び天井パネル3と、洗い場床(防水パン)4、浴槽用防水パンに支持される浴槽5と、図示しない浴室出入口や窓等と、を備え、これらによって区画された浴室空間1Aを構成するものである。壁パネル2及び天井パネル3は、それぞれ浴室空間1A内部側に適宜な化粧面を有する鋼板と、この鋼板の裏面に貼付される石膏ボードと、を有した鋼板パネルで構成され、図示しない下地材(骨組)に固定されている。浴室ユニット1の内部には、シャワー装置10と、ベンチカウンター6と、が設けられている。
【0019】
シャワー装置10は、浴槽5から洗い場を挟んで反対側の浴室内壁面2Aに設けられる装置本体11と、この装置本体11の下端部に設けられるカラン部12と、装置本体11の側面に接続されるハンドシャワー部13と、装置本体11の上部に接続されて洗い場上方の浴室天井面3Aに設けられるオーバーヘッドシャワー部14と、オーバーヘッドシャワー部14に隣り合って天井パネル3に設けられる打たせ湯部15と、を備えて構成されている。
【0020】
装置本体11は、壁パネル2の浴室内壁面2Aに取り付けられる壁面筐体21と、この壁面筐体21の内部に設けられる給湯配管やバルブ等(不図示)と、を備えて構成されている。給湯配管は、浴室空間1Aの外部(屋外)に設けられた給湯器などに接続されるとともに、適宜な混合バルブに接続されてから分岐管によって分岐され、切替バルブを介してカラン部12、ハンドシャワー部13、オーバーヘッドシャワー部14及び打たせ湯部15にそれぞれ接続されている。
【0021】
壁面筐体21は、上下方向に細長い中空箱型に形成されるとともに、浴室内壁面2Aに設けられる図示しない複数のブラケットに固定されている。この壁面筐体21の下部側は、浴室内壁面2Aからの出寸法が大きく形成され、その前面に複数(本実施形態では、4つ)の操作部24が設けられている。壁面筐体21の上部側は、浴室内壁面2Aからの出寸法が小さく形成され、その内部にオーバーヘッドシャワー部14及び打たせ湯部15に接続される給水管22,23(
図3参照)が通されている。
【0022】
操作部24のうち、最下段の操作部24は混合バルブに接続された湯温調整用の操作部であり、下から二番目の操作部24はカラン部12及びハンドシャワー部13の切替バルブに接続されている。また、上から二番目の操作部24はオーバーヘッドシャワー部14の切替バルブに接続され、最上段の操作部24は打たせ湯部15の切替バルブに接続されている。
【0023】
カラン部12は、壁面筐体21の底面部に設けられて下方に吐水可能に設けられ、下から二番目の操作部24によって吐水操作されるものである。ハンドシャワー部13は、壁面筐体21の側面から突出する継手に接続されたシャワーホース13Aと、このシャワーホース13Aの先端に設けられたシャワーヘッド13Bと、壁面筐体21の側面上部に設けられたシャワーフック13Cと、を有し、下から二番目の操作部24によって吐水操作できるように構成されている。
【0024】
オーバーヘッドシャワー部14は、
図3〜9にも示すように、給水管22に接続されて複数の吐水口を有する吐水部としての吐水部材31と、天井パネル3の浴室天井面3Aに固定された支持部としてのスライドブラケット32と、吐水部材31を覆うとともにスライドブラケット32を介して天井パネル3の浴室天井面3A側に取り付けられるカバー部としての天井筐体33と、を備えて構成されている。このオーバーヘッドシャワー部14は、上から二番目の操作部24によって吐水操作され、吐水部材31に設けられた後述する複数の散水孔63から湯水を散水するように構成されている。
【0025】
打たせ湯部15は、
図3にも示すように、天井パネル3に設けられて浴室1A内に開口する吐水口15Aを有する吐水部材15Bと、天井パネル3の天井裏面に沿って延び吐水部材15Bに一端部が接続される天井裏給水管15C(
図9参照)と、天井パネル3を貫通して天井裏給水管の他端に接続される給水管接続部15Dと、を備えて構成されている。給水管接続部15Dは、継手を介して給水管23に接続されている。この打たせ湯部15は、最上段の操作部24によって吐水操作され、吐水口15Aから間欠的に湯水を落下させるように構成されている。
【0026】
以下、オーバーヘッドシャワー部14の構造を
図3〜9を参照して詳しく説明する。吐水部材31は、
図4〜6に示すように、上側に位置する吐水部材本体31Aと、下側に位置して吐水部材本体31Aに固定される保持部材31Bと、保持部材31Bの内側に保持されるとともに吐水部材本体31Aとの間に通水空間を形成する散水板31Cと、通水空間に設けられて散水板31Cを上側から押える散水板押え部材31Dと、通水空間にて散水板押え部材31Dの上側に設けられる吸気部材31Eと、を備えて構成されている。吐水部材本体31Aは、浴室内壁面2Aから離れる方向に長い全体矩形板状に形成されるとともに、その長手方向の一端部(浴室内壁面2A側の端部)に配管部31Fを有して構成されている。
【0027】
吐水部材本体31Aは、それぞれ合成樹脂成型部品で構成される上本体41及び下本体42を有して構成され、これらの上本体41と下本体42との間に封止材が介装されることで、内部に給水空間S1が形成されている。上本体41には、配管部31Fから吐水部材本体31Aの略中央部まで延びるトンネル部43が形成され、このトンネル部43の内面と下本体42との間に給水空間S1が形成されている。また、下本体42には、その下面略中央部に連通孔46が形成されるとともに、その一端部に配管部31Fの第一配管81が一体に形成され、給水空間S1と第一配管81とが連通されている。吐水部材本体31Aの長手方向の二辺には、複数のビス挿通孔44が並設され、これらのビス挿通孔44に挿通させたビス45を保持部材31Bに螺合させることで、吐水部材本体31Aと保持部材31Bとが固定されるようになっている。
【0028】
保持部材31Bは、合成樹脂製の一体成形部品であって、吐水部材本体31Aの下方に対向する底面部51と、底面部51の四辺を囲んで立ち上がる枠部52と、底面部51の略中央に設けられる円筒状の吸気部53と、を有して形成されている。底面部51の内面(上面)は、枠部52に沿った四周の平坦部54と、この平坦部54の内側で下方に向かって凹状に湾曲した湾曲部55と、を有して形成され、この湾曲部55には、散水板31Cの散水突部62を挿通させるとともに保持する複数の保持孔56が設けられている。複数の保持孔56は、それぞれアーチ状の湾曲部55の法線方向に沿って形成されている。枠部52のうち長手方向の二辺には、複数のビス螺合部57が形成され、それらのビス螺合部57にビス45が螺合されるようになっている。
【0029】
散水板31Cは、弾性部材としてのゴム製の成形部品であって、長尺板状の散水板本体61と、この散水板本体61の下面(保持部材31B側の面)から突出した複数かつ円柱状の散水突部62と、各々の散水突部62を貫通して散水板本体61の上下面を連通させる散水孔63と、散水板本体61の略中央部に設けられて保持部材31Bの吸気部53が挿通される挿通部64と、を有して形成されている。この散水板31Cは、複数の散水突部62がそれぞれ保持部材31Bの保持孔56に挿通されて保持されることで、散水板本体61が保持部材31Bの湾曲部55に沿ってアーチ状に湾曲した状態で保持される。また、散水板本体61の外周部が吐水部材本体31Aの下本体42と保持部材31Bの平坦部54とに挟持され、これにより吐水部材本体31Aと保持部材31B及び散水板31Cとが水密に連結されることで、吐水部材本体31Aの下本体42と散水板31Cの上面との間に通水空間S2が形成されるようになっている。
【0030】
散水板押え部材31Dは、合成樹脂製の一体成形部品であって、吐水部材本体31Aの下本体42と散水板31Cの上面との間に形成された通水空間S2に設けられる。この散水板押え部材31Dは、散水板31Cの外形よりも一回り小さく形成された枠部71と、略中央部に形成されて保持部材31Bの吸気部53が挿通される挿通部72と、枠部71と挿通部72とを連結して設けられて散水板31Cを上方から保持部材31Bに向かって押える押え部73と、を有して形成されている。押え部73は、挿通部72から吐水部材本体31Aの長手方向左右に延びて設けられるとともに、複数個所で枠部71に連結されている。この押え部73の下面には、散水板本体61の上面に当接可能な複数の突部74が形成されている。このような散水板押え部材31Dは、挿通部72がOリングを介して保持部材31Bの吸気部53に支持されるとともに、枠部71及び押え部73が通水空間S2の内部で上下に移動可能に取り付けられるようになっている。
【0031】
吸気部材31Eは、保持部材31Bの吸気部53に挿通されて取り付けられるとともに、吐水部材本体31Aの給水空間S1と、吐水部材本体31Aと散水板31Cとの間の通水空間S2と、を連通させる連通孔46を塞ぐようにして設けられている。この吸気部材31Eは、給水空間S1から通水空間S2へ供給される湯水に対し、吸気部53から取り入れた外気を気泡として混合させ、気泡が入った湯水を通水空間S2へ送る機能を有したものである。
【0032】
配管部31Fは、吐水部材本体31Aの下本体42に一体に形成された筒状の第一配管81と、この第一配管81に挿入されて装置本体11の給水管22に接続される第二配管82と、第一配管81に挿入した第二配管82を抜け止めするためのクリップリング83と、を有して構成されている。第一配管81は、その先端部に大径のフランジ部84を有し、このフランジ部84にクリップリング83を挿入するためのスリット85が形成されている。第二配管82は、給水管22に接続される係合部86と、第一配管81の内周面に密接するOリング87と、を有して構成されている。このような配管部31Fは、第一配管81に対して第二配管82が管軸方向に沿って進退自在に支持され、すなわち、吐水部材本体31Aの長手方向に沿って第二配管82がスライドすることで、配管部31Fが伸縮可能に構成されている。
【0033】
スライドブラケット32は、
図7に示すように、浴室内壁面2Aから離れる方向に長尺状に形成されたブラケット本体32Aと、このブラケット本体32Aに固定される芯出しブラケット32Bと、を有して構成されている。ブラケット本体32Aは、金属板材を折り曲げ加工して形成され、天井パネル3の浴室天井面3Aに密接して固定される固定面部321と、この固定面部321の左右側端縁から立ち下がって外方に折れ曲がった左右各3つずつのレール部322と、を有して形成されている。芯出しブラケット32Bは、浴室内壁面2Aに当接するとともに、装置本体11の壁面筐体21との位置決めを行うものであって、壁面筐体21に対して位置決めした状態で壁パネル2に固定される。
【0034】
ブラケット本体32Aの固定面部321には、6つのビス孔が形成されており、このビス孔に螺合するビスによって天井パネル3に固定される。また、ブラケット本体32Aの先端側には、固定面部321の下面から突出したガイドピン323が固定されており、このガイドピン323が後述する天井筐体33のガイド溝338に挿通されるとともに、位置決め部材339によって係止されるようになっている。左右各3つずつのレール部322は、それぞれブラケット本体32Aの長手方向に沿った所定長さを有するとともに、断面L字形に形成されている。これらのレール部322は、後述する天井筐体33の被案内片337を上下方向に係止するとともに水平方向にスライド案内することで、天井筐体33を浴室内壁面2Aに向かってスライド支持できるようになっている。
【0035】
天井筐体33は、装置本体11が取り付けられる浴室内壁面2Aから離れる方向に細長い全体直方体状かつ中空に形成され、その内部に吐水部材31を収容するとともに、
図8に示すように、浴室内に露出する筐体下部材33Aと、この筐体下部材33Aに固定される筐体上部材33Bと、この筐体上部材33Bに固定されるガイド部材33Cと、を有して構成されている。この天井筐体33は、筐体下部材33Aと筐体上部材33B及びガイド部材33Cとを組み合わせて固定することで、浴室内壁面2A側(装置本体11側)が開口した箱状に形成され、その内部に吐水部材31を収容して保持できるように構成されている。
【0036】
筐体下部材33Aは、金属板材を折り曲げ加工することにより、上側及び浴室内壁面2A側(装置本体11側)の二面が開口した溝状に形成されている。この筐体下部材33Aは、底面部331と、この底面部331における浴室内壁面2A側以外の三方の端縁から上方に折れ曲がる3つの側面部332と、を有して形成されている。底面部331には、散水板31Cの散水突部62を挿通させる複数の貫通孔333が形成されている。この筐体下部材33Aの底面部331における浴室内壁面2A側の端部には、装置本体11の壁面筐体21を受け入れるための開口部334が形成されている。また、筐体下部材33Aの内部には、筐体上部材33Bをビス止め固定するための複数のブラケット335が設けられている。
【0037】
筐体上部材33Bは、金属板材を折り曲げ加工して形成され、筐体下部材33Aの上側の開口を塞ぐ上面部336と、この上面部336の左右側端縁から立ち上がって内方に折れ曲がった左右各3つずつの被案内片337と、を有して形成されている。上面部336には、4箇所の挿通孔が形成され、これらの挿通孔に挿通させたビスをブラケット335のビス孔に螺合させることで、上面部336が筐体下部材33Aに固定されるようになっている。左右各3つずつの被案内片337は、それぞれ天井筐体33の長手方向に沿った所定長さを有するとともに、断面逆L字形に形成されており、これらの被案内片337がスライドブラケット32のレール部322に案内されることで、
図9に示すように、天井筐体33をスライドさせつつスライドブラケット32に取り付けることができるようになっている。
【0038】
ガイド部材33Cは、筐体上部材33Bの先端側(浴室内壁面2Aから離れた側)における上面部336に形成された切欠き部336Aを塞いで固定される金属板材であって、このガイド部材33Cには、スライドブラケット32のガイドピン323を挿通させるガイド溝338と、ガイドピン323を係止して天井筐体33を二位置に位置決めする位置決め部材(位置決め手段)339と、が設けられている。位置決め部材339は、ガイド部材33Cの前後二箇所に設けられており、それぞれが一対のバネ部材により構成され、一対のバネ部材でガイドピン323を係止することにより天井筐体33を位置決めするように構成されている。
【0039】
以下、
図10〜12も参照して吐水部材31の構造を詳しく説明する。
図10〜12は、それぞれ吐水部材31を組み立てた状態を示す図である。
図10は、
図4に矢視X−X線で示す断面図であり、
図11は、
図10の一部を拡大して示す断面図であり、
図12は、
図10、11に矢視XII線で示す断面図である。各図において、吐水部材31の長手方向を矢印Xで示し、吐水部材31の幅方向を矢印Yで示し、高さ方向(上下方向)を矢印Zで示す。
【0040】
組み立てられた状態の吐水部材31において、吐水部材本体31Aの給水空間S1は、上本体41と下本体42とが封止材を介して互いに密接されることで、一端部側の配管部31Fから下本体42の連通孔46まで湯水を通す給水路として機能する。下本体42の連通孔46に設けられる吸気部材31Eには、複数の通水孔311が形成されており、給水空間S1の湯水が通水孔311を通って通水空間S2に供給される。また、保持部材31Bの吸気部53に挿通される吸気部材31Eの軸部312には、図示しない通気部が形成されており、この通気部及び吸気部53を介して吐水部材31の外部と通水空間S2とが連通され、通水空間S2に供給される湯水に気泡を混合させるように構成されている。
【0041】
一方、保持部材31Bの底面部51には、その内面の湾曲部55に沿って散水板本体61が密接されるとともに、複数の保持孔56の各々に散水突部62が挿通されることで、散水板本体61の中間部が湾曲部55に沿って湾曲するとともに、散水板本体61の周縁部が平坦部54に載置された状態で、保持部材31Bに散水板31Cが保持されている。また、保持部材31Bの吸気部53を挿通部72に挿通することによって散水板押え部材31Dが散水板31Cの上側に取り付けられ、さらに軸部312を吸気部53に挿入することによって吸気部材31Eが保持部材31Bに取り付けられている。
【0042】
以上のように散水板31C、散水板押え部材31D及び吸気部材31Eを取り付けた保持部材31Bの上側に吐水部材本体31Aが重ねられ、吐水部材本体31Aのビス挿通孔44に挿通させたビス45を保持部材31Bのビス螺合部57に螺合させることで、吐水部材本体31Aと保持部材31Bとが固定され、これによって吐水部材31が組み立てられている。この際、
図12に示すように、吐水部材本体31Aの下本体42下面には、環状の突起部46が形成されており、この突起部46が散水板本体61の周縁部を保持部材31Bの平坦部54に押圧し、突起部46、散水板本体61の周縁部、及び平坦部54が互いに密接されることで、通水空間S2の水密性が確保され、通水空間S2に供給された湯水が散水板31Cの散水孔63から外部に吐水されるようになっている。
【0043】
以上のようなオーバーヘッドシャワー部14における散水板31Cの構造及び湯水の散水範囲について
図13、14も参照して詳しく説明する。散水板31Cは、
図13に示すように、ゴム等の弾性材料から成形された状態、すなわち保持部材31Bに保持される前の状態において、散水板本体61が平板状に形成され、この散水板本体61の平面と直交する方向に突出して散水突部62が形成されている。従って、散水突部62を貫通する散水孔63は、その散水方向が散水板本体61に直交して設けられている。
【0044】
図13(B)に示すように、散水板31Cにおいて、散水突部62及び散水孔63が形成される領域A(図中、一点鎖線で囲む領域)は、散水面である散水板本体61の長さ方向(図中、矢印Xで示す方向)の中間部(挿通部64が設けられた部分)から両端部(図中、左右の端部)に向かって幅寸法(図中、矢印Yで示す方向の寸法)が漸減しつつ、散水板本体61の幅方向内側に寄せて設けられている。すなわち、複数の散水孔63は、散水板本体61の長さ方向両端部に向かって先細り形状で配列され、散水板本体61の長さ方向中間部に数多く設けられ、両端部に向かうにしたがい徐々に数が減少するように設けられている。
【0045】
また、
図12に示すように、散水板31Cが保持部材31Bに保持された状態において、散水板本体61は、保持部材31Bの湾曲部55に沿ってアーチ状に湾曲し、複数の散水突部62は、それぞれ保持部材31Bの保持孔56に挿通されるとともに、複数の散水孔63における各散水孔63の散水方向は、領域Aにおける幅方向内側から外側に向かうにしたがい幅方向の外方に向けられている。すなわち、散水板本体61の幅方向外側に位置する散水孔63の散水方向が内側の散水孔63よりも外方に向くように、散水板31Cが保持部材31Bに保持されている。このような散水孔63の散水方向は、保持部材31Bの湾曲部55の表面に直交する方向に向けられ、湾曲部55の表面が円弧状に湾曲している場合には、その円弧を含む円の径方向に散水方向が向けられることとなる。
【0046】
以上のような複数の散水孔63を有した散水板31Cと、この散水板31Cを保持する保持部材31Bと、を備えたオーバーヘッドシャワー部14は、
図14に示す散水範囲に湯水を散水するように構成されている。ここで、
図14(A)は、オーバーヘッドシャワー部14を下方から見上げた概略平面図であり、
図14(B)は、オーバーヘッドシャワー部14から湯水を散水する様子を示す側面図であり、
図14(C)は、オーバーヘッドシャワー部14による所定高さHでの湯水の散水範囲A’を示す平面図である。
【0047】
所定高さHとしては、例えば、利用者の肩の高さであり、この高さ位置において、所望の散水範囲A’が得られるようになっている。すなわち、前述のように、散水板本体61の長さ方向両端部に向かって先細り形状となる領域Aに散水孔63が配列されるとともに、領域Aにおける幅方向内側から外側に向かうにしたがい散水孔63の散水方向が幅方向の外方に向けて設けられていることで、各散水孔63から散水された湯水Wが所定高さHに到達する際に、略円形の散水範囲A’の内側に均等に分散されるようになっている。
【0048】
なお、散水孔63が配列される領域Aの形状は、
図13、14に示したように、散水板本体61の長さ方向両端部に向かって段階的に散水孔63の数が減少するように設定されたものに限らず、
図15〜17に示すように設定されていてもよい。
【0049】
図15に示す領域Aの形状は、散水板本体61の長さ方向の中間部から両端部に向かって幅寸法が漸減しつつ、散水板本体61の幅方向内側に寄せて設けられるとともに、この領域Aの幅寸法は、散水板本体61の長さ方向の中間部から両端部に向かって一定の割合で減少して設けられている。具体的には、散水板本体61の長さ方向の中間部において、散水板本体61の幅方向に最大9個の散水孔63が配列され、この列の端部側に隣り合って8個の散水孔63が配列されるように、散水板本体61の長さ方向端部側に向かって散水孔63の数が1個ずつ減少し、領域Aの最端部において散水孔63が3個となるまで減少している。このように散水孔63が配列された領域Aの形状は、散水板本体61の長さ方向に引き伸ばされた八角形となっており、各散水孔63から散水された湯水Wは、略円形の散水範囲A’に内接する長さと幅が略等しい八角形に分散して所定高さHに到達するようになっている。
【0050】
図16に示す領域Aの形状は、散水板本体61の長さ方向の中間部から両端部に向かって幅寸法が漸減しつつ、散水板本体61の幅方向内側に寄せて設けられるとともに、この領域A内において、散水孔63が比較的ランダムに配列されている。すなわち、散水板本体61の長さ方向及び幅方向のいずれの方向にも規則的に並ばないように散水孔63が設けられている。このように配列された各散水孔63から散水された湯水Wは、略円形の散水範囲A’においてもランダムに分散して所定高さHに到達するようになっているので、利用者が方向性を意識することなく、自然な散水感が得られるようになっている。
【0051】
図17に示す領域Aの形状は、散水板本体61の長さ方向の中間部から両端部に向かって幅寸法が漸減しつつ、散水板本体61の幅方向内側に寄せて設けられるとともに、この領域A内において、散水板本体61の長さ方向及び幅方向の両方向に傾斜した方向に散水孔63が並んで設けられている。このように配列された各散水孔63から散水された湯水Wは、幅方向の間隔が広がりつつ所定高さHに到達し、略円形の散水範囲A’において配列の方向性が解消されるように分散されるので、利用者が方向性を意識することなく、自然な散水感が得られるようになっている。
【0052】
以上のように、散水孔63が配列される領域Aの形状は、散水面である散水板本体61の長さ方向の中間部から両端部に向かって幅寸法が漸減するように形成され、その幅寸法の漸減の仕方としては、
図13、14に示したように、段階的に散水孔63の数が減少するもの、
図15に示したように、一定の割合で散水孔63の数が減少するもの、
図16に示したように、不規則な割合で散水孔63の数が減少するもの、
図17に示したように、一方が一定の割合で他方が不規則な割合で散水孔63の数が減少するもの、のいずれであってもよい。すなわち、領域Aの幅寸法が漸減する形態は特に限定されないものの、
図13に示すように、漸減する部位における中間部側の幅寸法Wよりも当該部位の長さ寸法Lが大きく、長さ寸法Lに対する幅寸法Wの平均的な漸減の割合が1未満(W/L<1)であることが好ましく、さらには漸減の割合が1/2以下(W/L≦1/2)であることがより好ましい。
【0053】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。すなわち、散水板本体61の長さ方向両端部よりも散水孔63が形成される領域Aの幅寸法が大きく、散水孔63の数が多い散水板本体61の中間部側においては、幅方向外側に位置する散水孔63の散水方向を幅方向外方に向けることで、広い範囲に散水することができる。一方、領域Aの幅寸法が小さい散水板本体61の長さ方向両端部側においては、幅方向にさほど広がらないように散水することで、散水範囲A’の形状を円形に近づけることができる。
【0054】
このように散水板31Cにおいて、複数の散水孔63の配置を適宜に設定し、各散水孔63の散水方向を保持部材31Bによって設定することで、吐水部材31やオーバーヘッドシャワー部14の外形形状に関わらずに所望の形状の散水範囲A’を得ることができるので、オーバーヘッドシャワー部14の設計の自由度を高めることができ、浴室のデザインに応じてオーバーヘッドシャワー部14を設計することで意匠性を向上させることができる。すなわち、オーバーヘッドシャワー部14を細長い矩形状のスリムな外形として意匠性を高めるとともに、円形や楕円形の散水範囲A’とすることにより良好な散水感を得ることができるので、デザイン性と機能性を両立させることができる。
【0055】
また、浴室天井面3Aに設けられるオーバーヘッドシャワー部14において、散水範囲A’を円形や楕円形にすることで、利用者が移動したり体を傾けたりしなくても体の各部に散水を浴びることができ、利便性と快適性を向上させることができる。すなわち、ハンドシャワーであれば、利用者がシャワーヘッドを操作することによって体の各部に散水を浴びることができるものの、浴室天井面3Aや浴室内壁面2Aに固定されたオーバーヘッドシャワー部14では、シャワーヘッドを操作しながらシャワーを浴びることは想定されておらず、利用者の体を覆うような散水範囲A’に散水することで利便性を高めることができる。
【0056】
さらに、オーバーヘッドシャワー部14及び散水板31Cの長さ方向(浴室内壁面2Aから離れる方向であり、矢印Xで表す方向)の寸法が、幅方向(浴室内壁面2A及び浴室天井面3Aに沿った方向であり、矢印Yで表す方向)の寸法よりも大きい、すなわち、長方形や長円形、楕円形、長さ寸法が大きい多角形等、の形状を有した散水板本体61を用いることで、領域Aに設けられる複数の散水孔63を効率よく配置することができ、散水板本体61における散水孔63が設けられない部分の面積を小さくして無駄を削減することができる。
【0057】
また、オーバーヘッドシャワー部14の下方にベンチカウンター6を設けたことで、ベンチカウンター6に座ったままの楽な姿勢でシャワーを浴びることができ、快適性を向上させることができる。この際、前述のように、オーバーヘッドシャワー部14の散水範囲A’が円形や楕円形となるように設定され、オーバーヘッドシャワー部14の幅方向に広く散水することができるので、その下方で幅方向にずれてベンチカウンター6が設けられていても、ベンチカウンター6に座ったままシャワーを浴びることができる。
【0058】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、シャワー装置10にカラン部12、ハンドシャワー部13、打たせ湯部15、オーバーヘッドシャワー部14が設けられていたが、本発明のシャワー装置は、オーバーヘッドシャワー部14(オーバーヘッドシャワー)を備えて構成されていればよく、カラン部12、ハンドシャワー部13、打たせ湯部15を省略することができる。
【0059】
また、前記実施形態では、オーバーヘッドシャワー部14は、浴室内壁面2Aに設けられる装置本体11と連続して浴室天井面3Aに設けられていたが、このような構成に限らず、オーバーヘッドシャワーが独立して浴室天井面3Aや浴室内壁面2Aに設けられていてもよい。また、本発明のシャワー装置は、浴室に設けられるものに限らず、浴槽を備えないシャワー室などに設けられていてもよい。さらに、浴室としては、浴室ユニット1によって構成されるものに限らず、在来工法によって構築されるものであってもよいし、複数のシャワー装置が設けられる公衆浴場などのようなものであってもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、シャワー装置10が洗い場に設けられる構成を例示したが、これに限らず、浴槽部分に設けられていてもよく、さらに、シャワー装置10のうちオーバーヘッドシャワー部14及び打たせ湯部15が浴槽5の上方に設けられ、カラン部12及びハンドシャワー部13が洗い場に設けられていてもよい。さらに、前記実施形態の浴室にはベンチカウンター6が設けられていたが、これに限らず、ベンチカウンター6が省略されてもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、オーバーヘッドシャワー部14及び散水板31Cの長さ方向の寸法が、幅方向の寸法よりも大きい細長い矩形状に形成されていたが、これに限らず、正方形や円形、正多角形など、長さ寸法と幅寸法が略同一の平面形状を有して形成されていてもよい。さらに、前記実施形態では、散水板31Cを幅方向にアーチ状に湾曲させ、幅方向外側の散水孔63の散水方向が外方に向くように構成したが、これに限らず、散水板31Cを長さ方向にアーチ状に湾曲させて長さ方向両端部側の散水孔63の散水方向が外方に向くように構成してもよいし、散水板31Cを長さ方向及び幅方向の二方向にドーム状に湾曲させて外周側の散水孔63の散水方向が外方に向くように構成してもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、散水板31Cがゴム等の弾性材料から成形され、保持部材31Bに保持されることでアーチ状に湾曲し、これによって散水板本体61の幅方向外側に位置する散水孔63の散水方向が内側の散水孔63よりも外方に向くように構成されていたが、このような構成に限定されない。すなわち、散水板が硬質の樹脂材料や金属から形成され、散水板自体の剛性によって散水孔の散水方向が規定されるものであってもよく、その場合には保持部材を省略することができる。
【0063】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。