特許第6420080号(P6420080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420080
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/04 20060101AFI20181029BHJP
   B30B 15/06 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   B30B15/04 A
   B30B15/06 G
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-141968(P2014-141968)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-16440(P2016-16440A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳原 渉
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−175199(JP,U)
【文献】 特開2000−052100(JP,A)
【文献】 実開昭60−080097(JP,U)
【文献】 米国特許第04161342(US,A)
【文献】 特開昭47−040471(JP,A)
【文献】 実開平04−054599(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/04
B30B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形品を成形するプレス装置であって、
ベッドと、
該ベッドの上方に配置されたクラウンと、
前記ベッドと前記クラウンを連結する複数のアプライトと、
該アプライトに案内され昇降自在に配置されたスライドと、
該スライドを昇降駆動させる駆動源と、
該スライドに取付けられて前記アプライトに摺動自在に案内されるギブブロックと、を備えており、
前記ギブブロックは、前記アプライトを挟んで対向する二面のガイド面に案内されるガイド面を有しており、
該ギブブロックが、プレスの前後方向および左右方向に対し傾斜するように配設されたものであり、
前記ギブブロックは、前記スライドに対し印籠構造で支持されており、
前記スライドが、
金型が取付けられるスライド本体と、
該スライド本体の前後方向における側面に着脱自在に取付けられるサイドスライドとからなり、
前記ギブブロックは、前記スライド本体及び前記サイドスライドに対し前記印籠構造で支持されている
ことを特徴とするプレス装置
【請求項2】
前記サイドスライドは、
前サイドスライドと後サイドスライドの対からなり、
各サイドスライドは前記スライド本体に対して、キーで位置決めされると共にボルトで締結されている
ことを特徴とする請求項記載のプレス装置。
【請求項3】
前記ギブブロックは、その上下寸法が前記スライド本体の上下寸法よりも大きく形成されている
ことを特徴とする請求項記載のプレス装置。
【請求項4】
前記ギブブロックは、前記ギブブロックを前記スライド本体に取付けるボルト挿通部と、ガイド面を有する2カ所のガイド部とを有し、該2カ所のガイド部は前記ボルト挿通部の上下位置に分けて配置されている
ことを特徴とする請求項記載のプレス装置。
【請求項5】
前記ギブブロックは、平面視においてコ字状形態に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のプレス装置。
【請求項6】
前記ギブブロックは、前記コ字状形態が一体に形成されている
ことを特徴とする請求項記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。さらに詳しくは、大きな偏心荷重が作用する可能性があるプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置には、クラウンとヘッドの間に4本のアプライトを介在させ、4本のタイロッドで締結する構造がある。スライドの昇降はアプライトによってガイドさせるため、ギブブロックをスライドの四隅に取付け、このギブブロックのガイド面がアプライトのガイド面と摺接するようになっている。
【0003】
そして、大きな偏心荷重の発生するプレス装置では、前記ギブブロックの形をアプライトの外周全面を囲繞する形にし、ガイド能力を高めている。
しかるに、このような構造では、スライドの補修時に、4本のアプライトからクラウンを取り外し、スライドを天井クレーン等で上方に引き抜く作業が必要となり、多大な労力を必要としていた。
【0004】
そこで、このような労力を削減する技術として、ギブブロックを分割できる構造も提案された。
そのような従来技術の一例が特許文献1であって、プレスフレーム側またはアプライト側に4個のギブブロックを取付け、スライドの4カ所の角部をギブブロックでガイドしている。また、ギブブロックのプレスフレームまたはアプライトへの取付けはボルト等で行っている。
【0005】
同様の従来技術であるが、ギブブロック101をスライド100側に取付けたものとして、図7に示す従来技術がある。同図に示すように、ギブブロック101はスライド100の側面にボルト102で結合され、2面のガイド面103、104は各アプライト105の外周面に摺接している。
【0006】
しかるに、図7の従来技術では、プレスに発生する偏心荷重はガイド面103、104で支えられるため、ガイド面103、104には偏心荷重の反力であるギブ反力が発生する。このギブ反力やギブ反力によるモーメントはギブブロック101やギブブロック101を締結したボルト102で受けるが、偏心荷重が大きくても耐えるようにギブブロック101やボルト102に充分な強度、剛性を与えることは困難である。また、どうしても充分な強度や剛性を与えようとすると、相当大型化してしまうなど、現実的対処が困難となる。なお、このことは、特許文献1の従来技術でも同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-224632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、偏心荷重に対する剛性を充分大きく確保できるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のプレス装置は、被成形品を成形するプレス装置であって、ベッドと、該ベッドの上方に配置されたクラウンと、前記ベッドと前記クラウンを連結する複数のアプライトと、該アプライトに案内され昇降自在に配置されたスライドと、該スライドを昇降駆動させる駆動源と、該スライドに取付けられて前記アプライトに摺動自在に案内されるギブブロックと、を備えており、前記ギブブロックは、前記アプライトを挟んで対向する二面のガイド面に案内されるガイド面を有しており、該ギブブロックが、プレスの前後方向および左右方向に対し傾斜するように配設されたものであり、前記ギブブロックは前記スライドに対し印籠構造で支持されており、前記スライドが、金型が取付けられるスライド本体と、該スライド本体の前後方向における側面に着脱自在に取付けられるサイドスライドとからなり、前記ギブブロックは、前記スライド本体及び前記サイドスライドに対し前記印籠構造で支持されていることを特徴とする
第2発明のプレス装置は、第発明において、前記サイドスライドは、前サイドスライドと後サイドスライドの対からなり、各サイドスライドは前記スライド本体に対して、キーで位置決めされると共にボルトで締結されていることを特徴とする。
発明のプレス装置は、第2発明において、前記ギブブロックは、その上下寸法が前記スライド本体の上下寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする。
発明のプレス装置は、第発明において、前記ギブブロックは、前記ギブブロックを前記スライド本体に取付けるボルト挿通部と、ガイド面を有する2カ所のガイド部とを有し、該2カ所のガイド部は前記ボルト挿通部の上下位置に分けて配置されていることを特徴とする。
発明のプレス装置は、第1〜第発明のいずれかにおいて、前記ギブブロックは、平面視においてコ字状形態に形成されていることを特徴とする。
発明のプレス装置は、第発明において、前記ギブブロックは、前記コ字状形態が一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)ギブブロックのガイド面がプレスの前後方向に対しても左右方向に対しても交差する角度を有しているので、どの方向に向いた偏荷重であっても全てのガイド面で受け止めることができる。このように、ギブブロックの全てのガイド面で偏荷重を支え、一部のガイド面のみで支えなくてよいので、面荷重が低減し、偏荷重に対する剛性が高くなる。
b)ギブブロックは、印籠構造で保持されるので、ギブブロックに作用する外力は印籠が負担し、取付け用のボルトには作用しない。このため、ボルト破損等の問題は生じにくい。よって、偏心荷重に対する剛性を充分大きく確保できる。また、スライド本体にサイドスライドを取付けるとスライドの前後方向の寸法が大きくなり、前後方向の偏心荷重に対する抵抗力が大きくなる。
発明によれば、サイドスライドはキーによって位置決めされたうえでスライド本体にボルト締結されるので、スライド本体とサイドスライドとの定位置での一体化が強固となり高い剛性を発揮できる。
発明によれば、ギブブロックの上下寸法が大きいので、上下方向のガイド力が高くなる。このため、偏荷重が大きくてもこれに耐え、スライドを真直に保持できる。
発明によれば、ギブブロックの上部と下部の2カ所のガイド部でアプライトに接触するので、偏荷重によって生じようとする傾斜に対する対抗力が大きくなって、スライドを真直に保持できる。
発明によれば、平面視におけるコ字状形態はアプライトの三面を囲めるので、アプライトを挟んで対向する二面のガイド面をガイドでき、偏荷重に耐える剛性を高くすることができる。
発明によれば、ギブブロックのコ字状形態が一体物であるので、連結ボルト等の破断を生じやすい部材が無くなることから、高い剛性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るプレス装置におけるスライド10まわりの平面図である。
図2図1のプレス装置の正面図である。
図3図1のプレス装置の側面図である。
図4図1のIV−IV線矢視図である。
図5図1のV−V線断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るプレス装置におけるスライド10まわりの平面図である。
図7】従来のプレス装置の説明図であって、(A)はスライドまわりの平面図、(B)はギブブロック部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、本実施形態のプレス装置の基本構成を説明する。
【0013】
図2および図3において、1はベッド、2はクラウン、3はベッド1とクラウン2を連結するアプライトである。なお、アプライト3の中にはベッド1とクラウン2をねじ締結するタイロッド4が通されている。
【0014】
クラウン2にはメインシリンダ5が固定されていて、そのロッド5aにはスライド10が取付けられている。メインシリンダ5が伸縮するとスライド10が昇降する。このメインシリンダ5は特許請求の範囲にいうスライドを昇降させる「駆動源」である。なお、この駆動源としては、公知のモータを用いて偏心軸を回転させ、偏心軸の回転をコネクティングロッドや偏心スリーブ等により直線運動へ変換する機構などであってもよい。
【0015】
スライド10の下面には上ダイブロック6が取付けられており、上金型を固定できるようになっている。一方、ベッド1の上面には下ダイブロック7が取付けられていて、下金型を固定できるようになっている。このため、スライド10を昇降させることで、金属材料をプレス成形することができる。
【0016】
プレス成形中にスライド10の昇降をガイドする部材がギブブロック20である。ギブブロック20は4組あって、スライド10の四隅に取付けられている。
この4組のギブブロックには、リターンシリンダ8が取付けられていて、メインシリンダ5を収縮させてスライド10を上昇させるとき、ギブブロック20も上昇させるようにしている。
【0017】
図1に示すスライド10はスライド本体11と2個のサイドスライド12、12とからなるが、このような分割型である必要はなく、一体物であってもよい。なお、図示の例では、スライド10が、金型が取付けられるスライド本体11と、このスライド本体11の前後方向における側面に着脱自在に取付けられるサイドスライド12,12とからなる。
このように、スライド本体11にサイドスライド12,12を取付けるとスライド10の前後方向の寸法が大きくなり、前後方向の偏心荷重に対する抵抗力が大きくなる。
【0018】
前記サイドスライド12は、前方に配置したサイドスライドと後方に配置したサイドスライドとからなり、各サイドスライド12はスライド本体11に対して、キーで位置決めされると共にボルトで締結されている。このように、サイドスライド12はキーによって位置決めされたうえでスライド本体11にボルト締結されるので、スライド本体11とサイドスライド12との一体化が強固となり高い剛性を発揮できる。
本明細書においては、図1図3に示すように、素材を出し入れするy方向は前後方向、これに直交するx方向は左右方向として説明している。本明細書では、前後方向yおよび左右方向xとは、この意味で用いる。
【0019】
つぎに、本発明の特徴部分を説明する。
図1に示すように、ギブブロック20は4組用いられ、スライド10の四隅に取付けられている。なお、4組のギブブロックを個別に指すときは、20A,20B,20Cおよび20Dの符号を用いる。各ギブブロック20は、いずれも平面視においてコ字状形態に形成されたブロック体24から構成されている。このコ字状形態は、左右の脚部分と、その脚部分の先端部同士を連結部で互いに結合した構造である。また、このコ字状形態は、分割ピースを締結したものでもよいが、一体物で構成するのが高い剛性を発揮できるので好ましい。
【0020】
ギブブロック20における図示のごとき平面視コ字状形態は、アプライト3の三面を囲めるので、アプライト3を挟んで対向する二面のガイド面をガイドできる。つまり、アプライト3の外側面にはガイド面31g,32gが取付けられていて、ギブブロック20の内側面にはガイド面21g,22gが取付けられている。そして、両ガイド面(31gと21g,32gと22g)は互いに対向して接触している。
【0021】
ギブブロック20は、アプライト3のガイド面31g,32gに摺接するガイド面21g,22gが、プレスの前後方向yおよび左右方向xに対し傾斜するように配設されている。図示の例では、y方向に対し45°x方向に対し45°の傾斜角を以って配置されている。なお、この傾斜角は45°に限られず、30°〜60°位の範囲で選択してもよい。このため、ギブブロック20のガイド面21g,22gがプレスの前後方向yに対しても左右方向xに対しても交差するので、どの方向に向いた偏荷重であっても全てのガイド面21g,22gが受け止める。このように、ギブブロック20A,20B,20C,20Dの全てのガイド面で荷重を支え、一部のガイド面のみで支えなくてよいので、面荷重が低減し、偏荷重に対する剛性が高くなる。
【0022】
また、ギブブロック20はスライド10(つまり、スライド本体11とサイドスライド)に対して印籠構造で保持されている。さらに、ブロック体24を貫通したボルト25がスライド本体11の側面およびサイドスライド12の側面にねじ込まれ、ギブブロック20がスライド10に対し強固に固定されている。
【0023】
印籠はスライド本体11およびサイドスライド12に設けた凹所13,14から構成されており、ギブブロック20の脚部分がぴったり納まる寸法に仕上げられている。ギブブロック20が、このような印籠を構成する凹所13,14に保持されているので、ギブブロック20に作用する外力は印籠13,14が負担し、取付け用のボルト25には作用しない。このため、ボルト破損等の問題は生じにくく、偏心荷重に対する剛性を充分大きく確保できる。
【0024】
図4に示すように、ギブブロック20は、その上下寸法Hgがスライド本体11の上下寸法hsよりも大きく形成されている。このようにギブブロック20の上下寸法Hgが大きいと、上下方向のガイド力が高くなる。このため、偏荷重が大きくても、これに耐えスライド10を真直に保持できる。
【0025】
図5に示すように、ギブブロック20は、ギブブロック20自体をスライド本体11に取付けるボルト挿通部26と、ガイド面21g,22gを有する2カ所の上ガイド部27および下ガイド部28とを有する。2カ所のガイド部27,28はボルト挿通部26の上下位置に分けて配置されている。符号21g(22g)はガイド面の位置を示しており、ガイド面21g、22gは上下の上ガイド部27および下ガイド部28のそれぞれに設けられている。このようにして、ギブブロック20の上部と下部の2カ所のガイド部27,28でアプライト3に接触するので、偏荷重によって生じようとする傾斜に対する対抗力が大きくなって、スライド10を真直に保持できる。
【0026】
つぎに、本発明の第2実施形態を説明する。
図6に示すように、本実施形態のスライド10はスライド本体11のみで構成されており、サイドスライドを有していない。この実施形態のギブブロック40はブロック体44として一方の脚部分43Lが長く、他方の脚部分43Sが短く構成したものを用意すればよい。そして、それぞれの脚部分43L、43Sを長いボルト45Lと短いボルト45Sでスライド本体11に締結している。
もちろん、ギブブロック40(40A,40B,40Cおよび40D)の脚部分43L,43Sは、印籠を構成している凹所13に嵌め込まれ強固に固定されている。
【0027】
上記第2実施形態のギブブロック40においても、ギブブロック40に作用する外力は印籠13が負担し、取付け用のボルト45L,45Sには作用しない。このため、ボルト破損等の問題は生じにくい。よって、偏心荷重に対する剛性を充分大きく確保できる。
【符号の説明】
【0028】
1 ベッド
2 クラウン
3 アプライト
4 タイロッド
5 メインシリンダ
10 スライド
11 スライド本体
12 サイドスライド
13 凹所
20 ギブブロック
25 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7