(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
なお、本発明は、集積回路、RFタグ、半導体表示装置など、パワーゲーティングを行うことができる半導体装置を、その範疇に含む。なお、集積回路には、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコントローラを含むLSI(Large Scale Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)やCPLD(Complex PLD)などのプログラマブル論理回路(PLD:Programmable Logic Device)が、その範疇に含まれる。また、半導体表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、電子ペーパー、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、その他の半導体表示装置が、その範疇に含まれる。
【0015】
なお、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、少なくとも動作時には、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している回路構成とは、直接接続している回路構成を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能であるように、配線、抵抗、ダイオード、トランジスタなどの素子を介して電気的に接続している回路構成も、その範疇に含む。
【0016】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0017】
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現することが出来る。
【0018】
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。または、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0019】
また、トランジスタのソースとは、活性層として機能する半導体膜の一部であるソース領域、或いは上記半導体膜に電気的に接続されたソース電極を意味する。同様に、トランジスタのドレインとは、活性層として機能する半導体膜の一部であるドレイン領域、或いは上記半導体膜に電気的に接続されたドレイン電極を意味する。また、ゲートはゲート電極を意味する。
【0020】
トランジスタが有するソースとドレインは、トランジスタのチャネル型及び各端子に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がソースと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がソースと呼ばれる。本明細書では、便宜上、ソースとドレインとが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソースとドレインの呼び方が入れ替わる。
【0021】
〈記憶装置の構成例〉
本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を、
図1に示す。
図1に示す記憶装置10は、第1記憶回路11と、第2記憶回路12とを有する。
【0022】
記憶装置10には、電位V1と電位V2の電位差が、電源電圧として供給される。電位V1と電位V2は一方がハイレベルであり、他方がローレベルである。以下、電位V1がローレベル、電位V2がハイレベルの場合を例に挙げて、本発明の一態様に係る記憶装置10の構成例について説明するものとする。
【0023】
第1記憶回路11は、記憶装置10に電源電圧が供給されている期間において、データを含む信号Dが入力されると、当該データを保持する機能を有する。そして、第1記憶回路11からは、保持されているデータを含む信号Qが出力される。
【0024】
第2記憶回路12は、第1記憶回路11に保持されているデータを読み込むことで、当該データを退避させる機能を有する。具体的に、第2記憶回路12は、選択回路13と、トランジスタ14と、容量素子15と、トランジスタ16とを有する。
【0025】
選択回路13は、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した電位と、配線17によって供給される電位のいずれか一方を選択する機能を有する。配線17によって供給される電位は、電位V1と同じ高さであっても良いし、電位V2と同じ高さであっても良い。
【0026】
トランジスタ14は、選択回路13によって選択された電位の、容量素子15への供給を制御する機能を有する。具体的には、トランジスタ14がオンになると、選択された電位に見合った量の電荷が容量素子15において蓄積されることで、上記電位が容量素子15に供給される。また、トランジスタ14がオフになると、容量素子15に蓄積された上記電荷が保持されることで、上記電位が容量素子15において保持される。
【0027】
選択回路13によって、配線17によって供給される電位が選択された場合、容量素子15に蓄積されている電荷量が所定の値になるため、容量素子15に保持されている電位を初期化することができる。また、選択回路13によって、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した上記電位が選択された場合、容量素子15において上記電位が保持されることで、第1記憶回路11に保持されているデータは第2記憶回路12に退避される。
【0028】
そして、第2記憶回路12では、記憶装置10への電源電圧の供給が停止された後でも、容量素子15においてデータに対応した電位が保持されている限りにおいて、当該データを保持することができる。第2記憶回路12においてデータが保持される期間は、第2記憶回路12が有するトランジスタ14のオフ電流と、容量素子15が有する容量値と、トランジスタ16のゲート絶縁膜を介したリーク電流等によって定まる。
【0029】
なお、特に断りがない限り、本明細書でオフ電流とは、遮断領域においてトランジスタのソースとドレイン間に流れる電流を意味する。
【0030】
遮断状態(非導通状態、オフ状態、ともいう)とは、nチャネル型トランジスタの場合、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタの場合、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがトランジスタのしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流をいう。
【0031】
ドレイン電流は、オフ状態において一定の値を取るわけではなく、Vgsに依存する。例えば、nチャネル型のトランジスタでは、VgsをVthより低くしてゆくと、S値(サブスレッショルドスイング値)等の特性に従ってドレイン電流は小さくなる。従って、トランジスタのオフ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを指す場合がある。トランジスタのオフ電流という場合、所定のVgsにおけるオフ状態、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られるVgsにおけるオフ状態、S値等の特性を考慮したうえでしきい値電圧Vthよりも十分低いVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0032】
データが保持される期間を長く確保するためには、トランジスタ14は、オフ電流が小さいことが望ましい。シリコンよりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度がシリコンよりも低い半導体膜に、チャネル形成領域が形成されるトランジスタは、オフ電流が著しく小さいので、トランジスタ14に用いるのに好適である。このような半導体としては、例えば、シリコンの2倍以上の大きなバンドギャップを有する、酸化物半導体、窒化ガリウムなどが挙げられる。上記半導体を有するトランジスタは、通常のシリコンやゲルマニウムなどの半導体で形成されたトランジスタに比べて、オフ電流を極めて小さくすることができる。よって、上記構成を有するトランジスタをトランジスタ14に用いることで、記憶装置10に電源電圧が供給されてない期間でも、第2記憶回路12において、容量素子15に保持されている電荷がリークするのを防ぎ、データが保持される期間を長く確保することができる。
【0033】
また、トランジスタ16は、容量素子15において保持されている、データに対応した電位に従って、配線18と第1記憶回路11との間の導通状態を制御する機能を有する。具体的に、トランジスタ16は、データに対応した電位がトランジスタ16のゲート(ノードNDで示す)に与えられることで、オンまたはオフの導通状態が定められる。そして、トランジスタ16がオンのとき、配線18の電位は第1記憶回路11に与えられる。逆に、トランジスタ16がオフのとき、配線18の電位は第1記憶回路11に与えられず、配線18と第1記憶回路11とは電気的に分離される。すなわち、データに対応した電位によって、トランジスタ16の導通状態が定められ、当該導通状態に従って、第1記憶回路11に配線18の電位が与えられるか否かが定められる。上記動作により、第2記憶回路12のデータが、第1記憶回路11に書き戻される。
【0034】
そして、本発明の一態様では、上述したように、選択回路13によって、配線17によって供給される電位と、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した電位のいずれか一方を選択し、選択された電位を容量素子15に供給することができる。よって、本発明の一態様にかかる記憶装置10では、第1記憶回路11に保持されているデータを第2記憶回路12に退避させる前に、配線17によって供給される電位を選択し、当該電位を容量素子15に供給することで、ノードNDの電位を初期化することができる。そして、ノードNDの電位を初期化した後に、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した電位を選択し、当該電位を容量素子15に供給することができる。
【0035】
本発明の一態様にかかる記憶装置では、上述したように、第2記憶回路12にデータを退避させる前に、ノードNDの電位を初期化することで、第2記憶回路12へのデータの書き込みを高速に行うことができる。
【0036】
まず、電源電圧が大きい場合、すなわち、電位V1と電位V2の電位差が大きい場合において、ノードNDの電位を初期化するとデータの書き込みを高速に行うことができる理由について説明する。トランジスタ16のソースに対するゲートの電圧であるゲート電圧が、閾値電圧に等しくなるときのノードNDの電位を電位V0とすると、電位V0は、電位V1と電位V2の間に存在し、トランジスタ16の導通状態は、ノードNDが電位V0になったときを境に切り替わる。電位V0は、電位V2と電位V1の間にあるが、電位V2と電位V0の電位差と、電位V0と電位V1の電位差は、必ずしも同じであるとは限らない。よって、例えば、電位V2と電位V0の電位差の方が、電位V0と電位V1の電位差よりも大きい場合、電位V2が保持されているノードNDに電位V1を与える方が、電位V1が保持されているノードNDに電位V2を与えるよりも、ノードNDが電位V0に達するまでの時間を長く要するため、トランジスタ16の導通状態の切り替わりが遅くなってしまう。特に、電源電圧が小さく、電位V1と電位V2の電位差が小さい場合は、電位V2と電位V0の電位差と、電位V0と電位V1の電位差の間には、大きな差が生じにくいので、トランジスタ16の導通状態の切り替わりの速度(または、切り替わりに要する時間)にさほど大きな違いがみられにくい。しかし、電源電圧が大きい場合は、上記速度に大きな違いが見られやすい。然るに、本発明の一態様にかかる記憶装置10では、第2記憶回路12において、データが反映された電位V2または電位V1をノードNDに供給するまえに、配線17から、例えば電位V1をノードNDに与えることで、ノードNDの電位を初期化することができる。上記構成により、電位V2と電位V0の電位差の方が、電位V0と電位V1の電位差よりも大きい場合でも、電位V1を事前にノードNDに与えておくことで、ノードNDに電位V1を与えるのに要する時間を短く抑えることができる。よって、第2記憶回路12へのデータの書き込みを高速に行うことができる。または、データの書き込みを短時間で行うことができる。
【0037】
電源電圧が小さい場合は、上述した通り、電位V0と、電位V1及び電位V2との関係に第2記憶回路12へのデータの書き込み速度(または、データの書き込み時間)が左右されにくい代わりに、トランジスタ14のゲート電圧の変化によるオン電流の変化が、上記速度に与える影響の方が大きくなる。電源電圧が小さい場合、すなわち、電位V1と電位V2の電位差が小さい場合において、ノードNDの電位を初期化するとデータの書き込みを高速に行うことができる理由について説明する。
【0038】
データに対応した電位がトランジスタ14を介してノードNDに与えられる際、トランジスタ14のソース及びドレインの一方には、データに対応した電位が与えられる。また、トランジスタ14のソース及びドレインの他方はノードNDに接続されている。よって、トランジスタ14がnチャネル型である場合、ノードNDの電位がデータに対応した電位よりも低いと、トランジスタ14のゲート電圧は、ゲートの電位とノードNDの電位とにより定められる。そのため、時間の経過に伴ってノードNDの電位が上昇してくると、トランジスタ14のゲート電圧が小さくなるため、オン電流が低下する。したがって、ノードNDの電位の上昇速度が、時間の経過に伴って低下してしまう。つまり、第2記憶回路12へのデータの書き込み時間は長くなる。一方、ノードNDの電位がデータに対応した電位よりも高いと、トランジスタ14のゲート電圧は、ゲートの電位とデータに対応した電位とにより定められる。よって、上記2つの電位が変化しない限り、トランジスタ14のゲート電圧が変化することがないので、ノードNDの電位の上昇速度が時間の経過に伴い減速することがない。したがって、トランジスタ14がnチャネル型である場合は、ノードNDの電位がデータに対応した電位よりも高くなるように、ノードNDの電位を初期化することで、第2記憶回路12へのデータの書き込み速度を高めることができる。逆に、トランジスタ14がpチャネル型である場合は、ノードNDの電位がデータに対応した電位よりも低くなるように、ノードNDの電位を初期化することで、第2記憶回路12へのデータの書き込み速度を高めることができる。
【0039】
本発明の一態様に係る記憶装置を用いた半導体装置では、第2記憶回路12へのデータの書き込み速度を高めることで、時間的に粒度の細かいパワーゲーティングを行うことができる。
【0040】
なお、第2記憶回路12にデータを退避させる前に行うノードNDの電位の初期化は、電位V1をノードNDに与えることで行っても良いし、電位V2をノードNDに与えることで行っても良い。第2記憶回路12へのデータの書き込みを高速に行うことができる電位を適宜選択し、当該電位を用いてノードNDの電位を初期化することが望ましい。
【0041】
また、オフ電流の著しく小さいトランジスタ14により容量素子15の電荷が保持される第2記憶回路12では、データの書き込みに要する電力は容量素子15の電荷量によって定まる。よって、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などを用いた場合に比べて、データの退避により消費されるオーバーヘッド電力を小さく抑えることができる。そのため、記憶装置10では、MRAMを用いる場合よりBET(Break Even Time)を短くすることができ、半導体装置の消費電力を抑えることができる。
【0042】
つまり、第2記憶回路12において、データの書き込みに要するエネルギーは、容量素子15への電荷の充放電に伴うエネルギーに相当する。一方、MRAMなどの2端子の記憶素子を用いた記憶回路では、データの書き込みに要するエネルギーは、当該記憶素子に電流が流れる際に消費されるエネルギーに相当する。よって、データの書き込み期間中に電流が流れ続けるMRAMなどを用いた場合に比べて、第2記憶回路12は、データの退避により消費されるエネルギーを小さくすることができる。そのため、記憶装置10では、MRAMなどを用いる場合と比較して、BETを短くすることができる。その結果、消費されるエネルギーを低減できるパワーゲーティングを行う機会が増加し、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0043】
したがって、本発明の一態様に係る記憶装置を用いた半導体装置では、時間的に粒度の細かいパワーゲーティングにより得られる低消費電力化の効果も大きくなる。
【0044】
なお、容量素子15は、トランジスタ16のゲート容量を利用することなどにより、省略することも可能である。その場合の例を、
図22に示す。なお、容量素子15の一方の端子は、トランジスタ16のゲートに接続されているが、容量素子15の他方の端子は、様々な配線に接続することが可能である。例えば、
図23に示すように、配線18と接続することも可能である。
【0045】
〈記憶装置の具体的な構成例1〉
次いで、
図1に示した記憶装置10の、より具体的な構成の一例を
図2に示す。
図2では、記憶装置10において、選択回路13が、pチャネル型のトランジスタ19と、nチャネル型のトランジスタ20とを有する場合を例示している。
【0046】
トランジスタ19は、トランジスタ14がオンであるときに、容量素子15への、配線17の電位の供給を制御する機能を有する。トランジスタ20は、トランジスタ14がオンであるときに、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した電位の、容量素子15への供給を制御する機能を有する。
【0047】
具体的に、
図2では、トランジスタ19のゲートとトランジスタ20のゲートが接続されている。そして、トランジスタ19のゲート及びトランジスタ20のゲートに与えられる信号OSCの電位に従って、トランジスタ19の導通状態と、トランジスタ20の導通状態が定められる。トランジスタ19は、ソース及びドレインの一方が配線17に接続されており、ソース及びドレインの他方が、トランジスタ14のソース及びドレインの一方に接続されている。トランジスタ20は、ソース及びドレインの一方が第1記憶回路11に接続されており、ソース及びドレインの他方が、トランジスタ14のソース及びドレインの一方に接続されている。
【0048】
また、トランジスタ14のゲートには信号OSGが与えられており、トランジスタ14の導通状態は、信号OSGの電位に従って定められる。
【0049】
トランジスタ19及びトランジスタ20は、一方がオンであるとき、他方はオフとなる。よって、信号OSGの電位に従ってトランジスタ14がオンになっているとき、選択回路13は、トランジスタ19を介して配線17の電位を容量素子15に供給するか、或いは、トランジスタ20を介して、第1記憶回路11に保持されているデータに対応した電位を容量素子15に供給することができる。
【0050】
なお、
図2では、トランジスタ19のゲートとトランジスタ20のゲートが接続されている場合の例を示したが、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。
図21に示すように、信号OSC1、信号OSC2を用いることによって、別々に制御してもよい。その場合、トランジスタ19とトランジスタ20とは、同じ極性でもよいし、異なる極性でもよい。
【0051】
〈記憶装置の具体的な構成例2〉
次いで、
図1に示した記憶装置10の、より具体的な構成の一例を
図3に示す。ただし、
図1では、トランジスタ16がnチャネル型である場合を例示しているが、
図3では、トランジスタ16がpチャネル型である場合を例示している。
【0052】
また、
図3では、
図2に示す記憶装置10と同様に、選択回路13が、pチャネル型のトランジスタ19と、nチャネル型のトランジスタ20とを有する場合を例示している。
【0053】
そして、
図3では、第2記憶回路12が、第1記憶回路11と、トランジスタ16との間に、スイッチとしての機能を有する、pチャネル型のトランジスタ21を有する場合を例示している。トランジスタ21のゲートには、インバータ22を介して信号OSRが入力されており、トランジスタ21は信号OSRの電位に従って導通状態が定められる。
【0054】
また、
図3では、第1記憶回路11が順序回路で構成されている。具体的に、第1記憶回路11は、インバータ23乃至インバータ26と、トランスミッションゲート27乃至トランスミッションゲート31と、NAND32及びNAND33とを有する。
【0055】
トランスミッションゲート27及びトランスミッションゲート30には信号CLKが供給されている。そして、トランスミッションゲート27及びトランスミッションゲート30は、信号CLKの電位がローレベルのときに、論理値を変更させることなく、入力された信号を出力し、信号CLKの電位がハイレベルのときに、出力がハイインピーダンスとなる。また、トランスミッションゲート28及びトランスミッションゲート29には信号CLKが供給されている。そして、トランスミッションゲート28及びトランスミッションゲート29は、信号CLKの電位がハイレベルのときに、論理値を変更させることなく、入力された信号を出力し、信号CLKの電位がローレベルのときに、出力がハイインピーダンスとなる。トランスミッションゲート31には信号OSRが供給されている。そして、トランスミッションゲート31は、信号OSRの電位がローレベルのときに、論理値を変更させることなく、入力された信号を出力し、信号OSRの電位がハイレベルのときに、出力がハイインピーダンスとなる。
【0056】
第1記憶回路11に供給された信号Dは、インバータ23を介してトランスミッションゲート27に供給される。トランスミッションゲート27から出力された信号は、インバータ24を介してトランスミッションゲート28、及びトランスミッションゲート31に供給される。トランスミッションゲート31から出力された信号は、NAND32の第1端子(ノードND2で示す)に入力される。NAND32の第2端子には、信号Resetが入力される。NAND32から出力された信号は、トランスミッションゲート29に入力される。トランスミッションゲート29から出力された信号は、インバータ24を介してトランスミッションゲート28、及びトランスミッションゲート31に供給される。
【0057】
トランスミッションゲート28から出力された信号は、NAND33の第2端子に入力される。NAND33の第1端子には、信号Resetが入力される。NAND33から出力された信号は、インバータ26を介して、信号Qとして第1記憶回路11から出力される。また、NAND33から出力された信号は、インバータ25を介してトランスミッションゲート30に入力される。トランスミッションゲート30から出力された信号は、NAND33の第2端子に入力される。
【0058】
なお、NAND33から出力された信号は、第1記憶回路11において保持されているデータに対応した電位を有する。当該信号の電位は、第2記憶回路12に供給される。第2記憶回路12では、トランジスタ14及びトランジスタ20がオンであるとき、トランジスタ14及びトランジスタ20を介して上記信号の電位が容量素子15に供給されることで、上記データが保持される。トランジスタ16は、そのゲート(ノードND1として示す)に与えられた上記信号の電位に従って、導通状態が定められる。そして、トランジスタ16及びトランジスタ21がオンであるとき、トランジスタ16及びトランジスタ21を介して、配線18の電位が第1記憶回路11に供給される。第1記憶回路11では、配線18の電位が、ノードND2に与えられることで、上記データが書き戻される。
【0059】
ノードND1に上記信号の電位が与えられる、という場合、ノードND1の電位は必ずしも上記信号の電位と一致する必要はない。ノードND1の電位は、ノードND1に上記信号の電位が与えられた場合と、同じデータが保持されている限り、どうのような値でもよい。例えば、書き戻しを行う際に、ノードND1の電位に従って定められるトランジスタ16の導通状態(オンまたはオフ)が、ゲート信号に上記信号の電位が与えられた場合に定められるトランジスタ16の導通状態(オンまたはオフ)と同じであれば良い。ノードND1に電位V1が与えられる、ノードND1に電位V2が保持される、などという場合も、同様である。
【0060】
トランジスタ21のゲートには、インバータ22を介して信号OSRが入力される構成を示したが、信号OSRの値を反転させることで、インバータ22を設けない構成としても良い。
【0061】
〈記憶装置の動作例〉
次いで、
図4に、
図3に示す記憶装置10の動作の一例を示すタイミングチャートを例示する。なお、
図4では、配線17及び配線18に電位V2が与えられる場合のタイミングチャートを例示している。
【0062】
期間t1では、記憶装置10に、電位V1と電位V2の電位差に相当する電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、周期的に繰り返されるハイレベルの電位とローレベルの電位とを有する。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はハイレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t1では、第1記憶回路11が順序回路として通常の動作を行う。そして、ノードND1には、トランジスタ19及びトランジスタ14を介して、配線17から電位V2が与えられる。また、ノードND2には、信号Dに含まれるデータに対応した電位V1または電位V2が与えられる。
【0063】
期間t2乃至期間t5では、第1記憶回路11から第2記憶回路12へのデータの退避が行われる。
【0064】
具体的に、期間t2では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はハイレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t2では、第1記憶回路11において、ノードND2が電位V1または電位V2のいずれかに固定される。そして、ノードND1には、トランジスタ19及びトランジスタ14を介して、配線17から電位V2が与えられる。
【0065】
期間t3では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はハイレベル、信号OSCの電位はハイレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t3では、NAND33から出力される信号の電位V1または電位V2が、トランジスタ20及びトランジスタ14を介してノードND1に与えられる。
【0066】
期間t4では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はハイレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t4では、トランジスタ14がオフになることで、期間t3においてノードND1に与えられた電位V1または電位V2が、保持される。
【0067】
期間t5では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ローレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はハイレベルからローレベルに変化し、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t5では、期間t4と同様に、ノードND1において電位V1または電位V2が保持される。
【0068】
本明細書において、データの退避(バックアップ、または、ストアとも呼ぶ)とは、第1記憶回路11のデータを第2記憶回路12に書き込む動作を表す。また、単に退避と言った場合には、データの退避を表す場合と、データの退避を行い、電源を遮断する直前の状態となるまでの一連の動作を表す場合がある。なお、いずれの退避であるかは、文脈から読み取ることができる場合がある。単に、退避と記載されている場合は、電源を遮断する直前の状態となるまでの一連の動作を表す場合がある。期間t2は、信号CLKを固定することで記憶装置10の動作を止めている期間で、退避の前の準備期間である。従って、期間t2は、退避に含めない場合がある。
【0069】
期間t6では、記憶装置10への電源電圧の供給が停止される。具体的には、期間t1乃至期間t5において電位V2が与えられていた端子または配線に、電位V1が与えられる。そして、信号CLKは、ローレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はローレベル、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。期間t6では、期間t4及びt5と同様に、ノードND1において電位V1または電位V2が保持される。
【0070】
期間t7乃至期間t10では、電源電圧の供給と、第2記憶回路12から第1記憶回路11へのデータの復帰が行われる。
【0071】
具体的に、期間t7では、記憶装置10への電源電圧の供給が再開される。そして、信号CLKは、ローレベルの電位に固定されたままである。また、信号Resetの電位はローレベル、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。
【0072】
期間t8では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はローレベル、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、ノードND2に電位V1が与えられる。
【0073】
期間t9では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はローレベルからハイレベルに変化し、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。
【0074】
期間t10では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、ハイレベルの電位に固定される。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はローレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はハイレベルである。よって、ノードND1に保持されている電位から配線18の電位を差し引いた値がトランジスタ16の閾値電圧よりも低くなるような場合、トランジスタ16はオンであるため、トランジスタ21を介して配線18の電位V2が、第1記憶回路11のノードND2に与えられる。また、ノードND1に保持されている電位から配線18の電位を差し引いた値がトランジスタ16の閾値電圧よりも高くなるような場合、トランジスタ16はオフであるため、第1記憶回路11のノードND2は、電位V1を保持する。上記動作により、ノードND2にデータに対応した電位が書き戻されることとなる。
【0075】
本明細書において、復帰(リカバリー、または、リストアとも呼ぶ)とは、電源遮断状態からの復帰を表す場合と、データの復帰を表す場合がある。電源遮断状態からの復帰は、電源電圧の供給とデータの復帰を含み、電源遮断状態から、通常の動作に入る直前までの一連の動作を表す場合がある。なお、いずれの復帰であるかは、文脈から読み取ることができる場合がある。単に、復帰と記載されている場合は、電源遮断状態からの復帰を表す場合がある。
【0076】
期間t11では、記憶装置10に電源電圧が供給されている。そして、信号CLKは、周期的に繰り返されるハイレベルの電位とローレベルの電位とを有する。また、信号Resetの電位はハイレベル、信号OSGの電位はハイレベル、信号OSCの電位はローレベル、信号OSRの電位はローレベルである。よって、期間t11では、第1記憶回路11が順序回路として通常の動作を行う。そして、ノードND1には、トランジスタ19及びトランジスタ14を介して、配線17から電位V2が与えられる。また、ノードND2には、信号Dに含まれるデータに対応した電位V1または電位V2が与えられる。
【0077】
〈記憶装置への電源電圧の供給について〉
次いで、
図5(A)に、複数の記憶装置10を有する記憶装置40の構成を、一例として示す。
図5(A)に示す記憶装置40は、スイッチ41と、記憶装置10を複数有する。スイッチ41を介して配線42に与えられた電位V2が、各記憶装置10に供給される。また、各記憶装置10には、配線43を介して電位V1が与えられる。
【0078】
図5(A)では、スイッチ41として一のトランジスタを用いている場合を例示している。そして、スイッチ41は信号SigAによりオンとオフの選択、すなわちスイッチングが制御される。スイッチ41により、各記憶装置10への、電位V2の供給を制御することができる。
【0079】
図5(B)に示す記憶装置は、スイッチ44と、記憶装置10を複数有する。スイッチ44を介して配線43に与えられた電位V1が、各記憶装置10に供給される。また、各記憶装置10には、配線42を介して電位V2が与えられる。
【0080】
図5(B)では、スイッチ44として一のトランジスタを用いている場合を例示している。そして、スイッチ44は信号SigAによりスイッチングが制御される。スイッチ44により、各記憶装置10への、電位V1の供給を制御することができる。
【0081】
〈半導体装置の構成例〉
次いで、本発明の一態様に係る記憶装置を用いた、半導体装置の構成を一例として
図6に示す。
図6に示す半導体装置300は、CPUコア301、パワーコントローラ302、パワースイッチ303、キャッシュ304、バスインターフェース305、及びデバッグインターフェース306を有する。さらに、CPUコア301は、制御装置307、PC(プログラムカウンタ)308、パイプラインレジスタ309、パイプラインレジスタ310、ALU(Arithmetic logic unit)311、及びレジスタファイル312を有する。本発明の一態様にかかる記憶装置は、パイプラインレジスタ309、パイプラインレジスタ310、レジスタファイル312や、その他の回路に含まれるレジスタ、フリップフロップ等に用いることができる。
【0082】
制御装置307は、PC308、パイプラインレジスタ309、パイプラインレジスタ310、ALU311、レジスタファイル312、キャッシュ304、バスインターフェース305、デバッグインターフェース306、及びパワーコントローラ302の動作を統括的に制御する。制御装置307は、入力されたアプリケーションなどのプログラムに含まれる命令をデコードする機能を有する。
【0083】
ALU311は、四則演算、論理演算などの各種演算処理を行う機能を有する。
【0084】
キャッシュ304は、使用頻度の高いデータを一時的に記憶しておく機能を有する。PC308は、次に実行する命令のアドレスを記憶する機能を有するレジスタである。パイプラインレジスタ309は、命令を一時的に記憶する機能を有するレジスタである。なお、
図6では図示していないが、半導体装置300には、キャッシュ304の動作を制御するキャッシュコントローラが設けられている。
【0085】
レジスタファイル312は、汎用レジスタを含む複数のレジスタを有しており、キャッシュ304から読み出されたデータ、或いはALU311の演算処理の結果得られたデータ、などを記憶することができる。
【0086】
パイプラインレジスタ310は、ALU311の演算処理に利用するデータ、或いはALU311の演算処理の結果得られたデータなどを一時的に記憶する機能を有するレジスタである。
【0087】
バスインターフェース305は、半導体装置300と半導体装置の外部にある各種装置との間におけるデータの経路としての機能を有する。デバッグインターフェース306は、デバッグの制御を行うための命令を半導体装置300に入力するための信号の経路としての機能を有する。バスインターフェース305とデバッグインターフェース306には、それぞれにレジスタが付設されている。
【0088】
パワースイッチ303は、半導体装置300が有する、パワーコントローラ302以外の各種回路への、電源電圧の供給を制御する機能を有する。上記各種回路は、幾つかのパワードメインにそれぞれ属しており、同一のパワードメインに属する各種回路は、パワースイッチ303によって電源電圧の供給の有無が一律に制御される。また、パワーコントローラ302はパワースイッチ303の動作を制御する機能を有する。
【0089】
上記構成を有する半導体装置300における、パワーゲーティングの動作の流れについて、一例を挙げて説明する。
【0090】
まず、CPUコア301が、電源電圧の供給を停止するタイミングを、パワーコントローラ302のレジスタに設定する。次いで、CPUコア301からパワーコントローラ302へ、パワーゲーティングを開始する旨の信号を送る。次いで、半導体装置300内に含まれる各種レジスタとキャッシュ304が、データの退避を開始する。次いで、半導体装置300が有するパワーコントローラ302以外の各種回路への電源電圧の供給が、パワースイッチ303により停止される。次いで、割込み信号がパワーコントローラ302に入力されることで、半導体装置300が有する各種回路への電源電圧の供給が開始される。なお、パワーコントローラ302にカウンタを設けておき、電源電圧の供給が開始されるタイミングを、割込み信号の入力に依らずに、当該カウンタを用いて決めるようにしても良い。次いで、各種レジスタとキャッシュ304が、データの復帰を開始する。次いで、CPUコア301における命令の実行が再開される。
【0091】
〈記憶装置の断面構造の例〉
図7に、記憶装置の断面構造の一例を示す。
図7では、
図3に示したトランジスタ14、容量素子15、トランジスタ16及びトランジスタ21の断面構造を、一例として示す。
【0092】
なお、
図7では、酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタ14と、容量素子15とが、単結晶のシリコン基板にチャネル形成領域を有する、pチャネル型のトランジスタ21、及びpチャネル型のトランジスタ16上に形成されている場合を例示している。
【0093】
トランジスタ16及びトランジスタ21は、非晶質、微結晶、多結晶または単結晶である、シリコン又はゲルマニウムなどの半導体膜または半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。或いは、トランジスタ16及びトランジスタ21は、酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有していても良い。全てのトランジスタが酸化物半導体膜または酸化物半導体基板に、チャネル形成領域を有している場合、トランジスタ14はトランジスタ16及びトランジスタ21上に積層されていなくとも良く、全てのトランジスタは、同一の層に形成されていても良い。
【0094】
シリコンの薄膜を用いてトランジスタ16及びトランジスタ21を形成する場合、当該薄膜には、プラズマCVD法などの気相成長法若しくはスパッタリング法で作製された非晶質シリコン、非晶質シリコンをレーザーアニールなどの処理により結晶化させた多結晶シリコン、単結晶シリコンウェハに水素イオン等を注入して表層部を剥離した単結晶シリコンなどを用いることができる。
【0095】
トランジスタ16及びトランジスタ21が形成される半導体基板400は、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、シリコンゲルマニウム基板等を用いることができる。
図7では、単結晶シリコン基板を半導体基板400として用いる場合を例示している。
【0096】
また、トランジスタ16及びトランジスタ21は、素子分離法により電気的に分離されている。素子分離法として、選択酸化法(LOCOS法:Local Oxidation of Silicon法)、トレンチ分離法(STI法:Shallow Trench Isolation)等を用いることができる。
図7では、トレンチ分離法を用いてトランジスタ16及びトランジスタ21を電気的に分離する場合を例示している。具体的に、
図7では、半導体基板400にエッチング等によりトレンチを形成した後、酸化珪素などを含む絶縁物を当該トレンチに埋め込むことで形成される素子分離領域401により、トランジスタ16及びトランジスタ21を素子分離させる場合を例示している。
【0097】
なお、トランジスタ16において、ゲート絶縁膜を介してゲート電極からソース電極またはドレイン電極に電荷がリークしにくいほど、第2記憶回路においてデータの保持期間を長く確保することができる。例えば、トランジスタ16のゲート絶縁膜が酸化珪素膜である場合、当該酸化珪素膜の膜厚は、好ましくは5nm以上15nm以下、より好ましくは5nm以上8nm以下とする。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。
【0098】
または、トランジスタ16のゲート絶縁膜は、第1記憶回路11、第2記憶回路12、及び/又は、選択回路13が有するトランジスタのゲート絶縁膜よりも厚いことが好ましい。これにより、第1記憶回路11では、高速動作させ、一方、トランジスタ16では、リーク電流を低減することが出来る。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。
【0099】
例えば、トランジスタ16だけでなく、第2記憶回路12が有するトランジスタや、選択回路13が有するトランジスタが有するゲート絶縁膜も、第1記憶回路11が有するトランジスタのゲート絶縁膜よりも厚くてもよい。第2記憶回路12や選択回路13は、必ずしも、高速に動作させる必要がないため、トランジスタ16と同程度の厚さのゲート絶縁膜とすることにより、製造しやすくできる場合がある。
【0100】
または、例えば、
図24に示すように、容量素子15とトランジスタ16のゲートとの間に、トランジスタ14Aを配置してもよい。また、トランジスタ14Aとして、トランジスタ14と同様な種類のトランジスタを用いてもよい。これにより、容量素子15の電荷を保持する時間を長くすることが出来る。
【0101】
トランジスタ16及びトランジスタ21上には、絶縁膜411が設けられている。絶縁膜411には開口部が形成されている。そして、絶縁膜411上には、上記開口部において、トランジスタ16及びトランジスタ21のソースまたはドレインにそれぞれ接続されている複数の導電膜と、トランジスタ16のゲート428に接続されている導電膜429が設けられている。
【0102】
絶縁膜411上には絶縁膜414が設けられている。そして、絶縁膜414上には、酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を有する絶縁膜415が設けられている。絶縁膜415は、密度が高くて緻密である程、また未結合手が少なく化学的に安定である程、より高いブロッキング効果を示す。酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜415として、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いることができる。水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜415として、例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を用いることができる。
【0103】
絶縁膜415上には絶縁膜416が設けられており、絶縁膜416上にはトランジスタ14が設けられている。
【0104】
トランジスタ14は、絶縁膜416上の酸化物半導体膜420と、酸化物半導体膜420に接続され、ソースまたはドレインとしての機能を有する導電膜421及び導電膜422と、酸化物半導体膜420、導電膜421及び導電膜422上の絶縁膜423と、絶縁膜423を間に挟んで酸化物半導体膜420と重なる導電膜424と、を有する。そして、絶縁膜414乃至絶縁膜416には開口部が設けられており、導電膜422は、上記開口部において、ゲート428に接続されている、絶縁膜411上の導電膜429に接続されている。
【0105】
また、導電膜422上には絶縁膜427が設けられており、絶縁膜427上には、導電膜422と重なる導電膜425が設けられている。導電膜422と、絶縁膜427と、導電膜425とが重なり合う部分が、容量素子15として機能する。
【0106】
トランジスタ14、容量素子15上には、絶縁膜426が設けられている。
【0107】
〈記憶装置のトランジスタについて〉
本発明の一態様に係る記憶装置では、
図1に示すトランジスタ14のオフ電流が小さいと、データの保持期間を長くすることができる。そのため、トランジスタ14として、酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタを用いることが望ましい。
【0108】
図8に、酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタ14の構成を、一例として示す。
図8(A)には、トランジスタ14の上面図を示す。なお、
図8(A)では、トランジスタ14のレイアウトを明確にするために、各種の絶縁膜を省略している。また、
図8(A)に示した上面図の、破線A1−A2における断面図を
図8(B)に示し、破線A3−A4における断面図を
図8(C)に示す。
【0109】
図8に示すように、トランジスタ14は、絶縁膜81上において順に積層された酸化物半導体膜82a及び酸化物半導体膜82bと、酸化物半導体膜82bに電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極としての機能を有する導電膜83及び導電膜84と、酸化物半導体膜82b、導電膜83及び導電膜84上の酸化物半導体膜82cと、ゲート絶縁膜としての機能を有し、なおかつ酸化物半導体膜82c上に位置する絶縁膜85と、ゲート電極としての機能を有し、なおかつ絶縁膜85上において酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cと重なる導電膜86とを有する。
【0110】
また、トランジスタ14の、具体的な構成の別の一例を、
図9に示す。
図9(A)には、トランジスタ14の上面図を示す。なお、
図9(A)では、トランジスタ14のレイアウトを明確にするために、各種の絶縁膜を省略している。また、
図9(A)に示した上面図の、破線A1−A2における断面図を
図9(B)に示し、破線A3−A4における断面図を
図9(C)に示す。
【0111】
図9に示すように、トランジスタ14は、絶縁膜81上において順に積層された酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cと、酸化物半導体膜82cに電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極としての機能を有する導電膜83及び導電膜84と、ゲート絶縁膜としての機能を有し、なおかつ酸化物半導体膜82c、導電膜83及び導電膜84上に位置する絶縁膜85と、ゲート電極としての機能を有し、なおかつ絶縁膜85上において酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cと重なる導電膜86とを有する。
【0112】
なお、
図8及び
図9では、積層された酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cを用いるトランジスタ14の構成を例示している。トランジスタ14が有する酸化物半導体膜は、積層された複数の酸化物半導体膜で構成されているとは限らず、単膜の酸化物半導体膜で構成されていても良い。
【0113】
酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cが順に積層されている半導体膜をトランジスタ14が有する場合、酸化物半導体膜82a及び酸化物半導体膜82cは、酸化物半導体膜82bを構成する金属元素の少なくとも1つを、その構成要素に含み、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜82bよりも0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上または0.15eV以上、かつ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下または0.4eV以下、真空準位に近い酸化物膜である。さらに、酸化物半導体膜82bは、少なくともインジウムを含むと、キャリア移動度が高くなるため好ましい。
【0114】
上記構成の半導体膜をトランジスタ14が有する場合、ゲート電極に電圧を印加することで、半導体膜に電界が加わると、半導体膜のうち、伝導帯下端のエネルギーが小さい酸化物半導体膜82bにチャネル領域が形成される。即ち、酸化物半導体膜82bと絶縁膜85との間に酸化物半導体膜82cが設けられていることによって、絶縁膜85と離隔している酸化物半導体膜82bに、チャネル領域を形成することができる。
【0115】
また、酸化物半導体膜82cは、酸化物半導体膜82bを構成する金属元素の少なくとも1つをその構成要素に含むため、酸化物半導体膜82bと酸化物半導体膜82cの界面では、界面散乱が起こりにくい。従って、当該界面においてキャリアの動きが阻害されにくいため、トランジスタ14の電界効果移動度が高くなる。
【0116】
また、酸化物半導体膜82cとして酸化ガリウムを用いる場合、酸化物半導体膜82b中のInが絶縁膜85に拡散するのを防ぐことができるので、トランジスタ14のリーク電流を低減することができる。
【0117】
また、酸化物半導体膜82bと酸化物半導体膜82aの界面に界面準位が形成されると、界面近傍の領域にもチャネル領域が形成されるために、トランジスタ14の閾値電圧が変動してしまう。しかし、酸化物半導体膜82aは、酸化物半導体膜82bを構成する金属元素の少なくとも1つをその構成要素に含むため、酸化物半導体膜82bと酸化物半導体膜82aの界面には、界面準位が形成されにくい。よって、上記構成により、トランジスタ14の閾値電圧等の電気的特性のばらつきを、低減することができる。
【0118】
また、酸化物半導体膜間に不純物が存在することによって、各膜の界面にキャリアの流れを阻害する界面準位が形成されることがないよう、複数の酸化物半導体膜を積層させることが望ましい。積層された酸化物半導体膜の膜間に不純物が存在していると、酸化物半導体膜間における伝導帯下端のエネルギーの連続性が失われ、界面近傍において、キャリアがトラップされるか、あるいは再結合により消滅してしまうからである。膜間における不純物を低減させることで、主成分である一の金属を少なくとも共に有する複数の酸化物半導体膜を、単に積層させるよりも、連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化するU字型の井戸構造を有している状態)が形成されやすくなる。
【0119】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(5×10
−7Pa乃至1×10
−4Pa程度まで)することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0120】
高純度の真性な酸化物半導体を得るためには、各チャンバー内を高真空排気するのみならず、スパッタリングに用いるガスの高純度化も重要である。上記ガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスの露点を、−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下とし、使用するガスの高純度化を図ることで、酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。具体的に、酸化物半導体膜82bがIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜82bを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x
1:y
1:z
1とすると
、x
1/y
1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z
1/y
1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z
1/y
1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜82bとして後述するCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=3:1:2等がある。
【0121】
具体的に、酸化物半導体膜82a、酸化物半導体膜82cがIn−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜82a、酸化物半導体膜82cを成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x
2:y
2:z
2とすると
、x
2/y
2<x
1/y
1であって、z
2/y
2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z
2/y
2を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜82a、酸化物半導体膜82cとしてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8等がある。
【0122】
なお、酸化物半導体膜82a及び酸化物半導体膜82cの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物半導体膜82bの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上50nm以下である。
【0123】
3層構造の半導体膜において、酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cは、非晶質または結晶質の両方の形態を取りうる。ただし、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜82bが結晶質であることにより、トランジスタ14に安定した電気的特性を付与することができるため、酸化物半導体膜82bは結晶質であることが好ましい。
【0124】
なお、チャネル形成領域とは、トランジスタ14の半導体膜のうち、ゲート電極と重なり、かつソース電極とドレイン電極に挟まれる領域を意味する。また、チャネル領域とは、チャネル形成領域において、電流が主として流れる領域をいう。
【0125】
例えば、酸化物半導体膜82a及び酸化物半導体膜82cとして、スパッタリング法により形成したIn−Ga−Zn酸化物膜を用いる場合、酸化物半導体膜82a及び酸化物半導体膜82cの成膜には、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比])であるターゲットを用いることができる。成膜条件は、例えば、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力0.4Paとし、基板温度を200℃とし、DC電力0.5kWとすればよい。
【0126】
また、酸化物半導体膜82bをCAAC−OS膜とする場合、酸化物半導体膜82bの成膜には、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であり、多結晶のIn−Ga−Zn酸化物を含むターゲットを用いることが好ましい。成膜条件は、例えば、成膜ガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板の温度300℃とし、DC電力0.5kWとすることができる。
【0127】
なお、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減され、なおかつ酸素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体(purified Oxide Semiconductor)は、キャリア発生源が少ないため、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近くすることができる。そのため、高純度化された酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタは、オフ電流が著しく小さく、信頼性が高い。そして、当該酸化物半導体膜にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、閾値電圧がプラスとなる電気的特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。
【0128】
具体的に、高純度化された酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有するトランジスタのオフ電流が小さいことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×10
6μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
−13A以下という特性を得ることができる。この場合、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流入または容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電流の測定を行った。当該測定では、高純度化された酸化物半導体膜を上記トランジスタのチャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに小さいオフ電流が得られることが分かった。従って、高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく小さい。
【0129】
なお、半導体膜として酸化物半導体膜を用いる場合、酸化物半導体膜としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を含むことが好ましい。
【0130】
酸化物半導体の中でもIn−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物などは、炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異なり、スパッタリング法や湿式法により電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能であり、量産性に優れるといった利点がある。また、炭化シリコン、窒化ガリウム、または酸化ガリウムとは異なり、上記In−Ga−Zn酸化物は、ガラス基板上に、電気的特性の優れたトランジスタを作製することが可能である。また、基板の大型化にも対応が可能である。
【0131】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を含んでいてもよい。
【0132】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Al−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、In−Ga−Zn酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、Al−Ga−Zn酸化物、Sn−Al−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Ga−Zn酸化物、In−Al−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Al−Zn酸化物、In−Sn−Hf−Zn酸化物、In−Hf−Al−Zn酸化物を用いることができる。
【0133】
なお、例えば、In−Ga−Zn酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素を含んでいてもよい。In−Ga−Zn酸化物は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、移動度も高い。
【0134】
例えば、In−Sn−Zn酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0135】
また、トランジスタ14において、ソース電極及びドレイン電極に用いられる導電性材料によっては、ソース電極及びドレイン電極中の金属が、酸化物半導体膜から酸素を引き抜くことがある。この場合、酸化物半導体膜のうち、ソース電極及びドレイン電極に接する領域が、酸素欠損の形成によりn型化される。n型化された領域は、ソース領域またはドレイン領域として機能するため、酸化物半導体膜とソース電極及びドレイン電極との間におけるコンタクト抵抗を下げることができる。よって、n型化された領域が形成されることで、トランジスタ14の移動度及びオン電流を高めることができ、それにより、トランジスタ14を用いた記憶装置の高速動作を実現することができる。
【0136】
なお、ソース電極及びドレイン電極中の金属による酸素の引き抜きは、ソース電極及びドレイン電極をスパッタリング法などにより形成する際に起こりうるし、ソース電極及びドレイン電極を形成した後に行われる加熱処理によっても起こりうる。また、n型化される領域は、酸素と結合し易い導電性材料をソース電極及びドレイン電極に用いることで、より形成されやすくなる。上記導電性材料としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wなどが挙げられる。
【0137】
複数の積層された酸化物半導体膜を有する半導体膜をトランジスタ14に用いる場合、n型化される領域は、チャネル領域となる酸化物半導体膜82bにまで達していることが、トランジスタ14の移動度及びオン電流を高め、記憶装置の高速動作を実現する上で好ましい。
【0138】
絶縁膜81は、加熱により上記酸素の一部を酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cに供給する機能を有する絶縁膜であることが望ましい。また、絶縁膜81は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により得られる、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001を持つスピンの密度が1×10
18spins/cm
3以下であることが好ましい。
【0139】
絶縁膜81は、加熱により上記酸素の一部を酸化物半導体膜82a乃至酸化物半導体膜82cに供給する機能を有するため、酸化物であることが望ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。絶縁膜81は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタリング法等により、形成することができる。
【0140】
なお、本明細書中において、酸化窒化物は、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化物は、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を指す。
【0141】
なお、
図8及び
図9に示すトランジスタ14は、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜82bの端部のうち、導電膜83及び導電膜84とは重ならない端部、言い換えると、導電膜83及び導電膜84が位置する領域とは異なる領域に位置する端部と、導電膜86とが、重なる構成を有する。酸化物半導体膜82bの端部は、当該端部を形成するためのエッチングでプラズマに曝されるときに、エッチングガスから生じた塩素ラジカル、フッ素ラジカル等が、酸化物半導体を構成する金属元素と結合しやすい。よって、酸化物半導体膜の端部では、当該金属元素と結合していた酸素が脱離しやすい状態にあるため、酸素欠損が形成され、n型化しやすいと考えられる。しかし、
図8及び
図9に示すトランジスタ14では、導電膜83及び導電膜84とは重ならない酸化物半導体膜82bの端部と、導電膜86とが重なるため、導電膜86の電位を制御することにより、当該端部にかかる電界を制御することができる。よって、酸化物半導体膜82bの端部を介して導電膜83と導電膜84の間に流れる電流を、導電膜86に与える電位によって制御することができる。このようなトランジスタ14の構造を、Surrounded Channel(S−Channel)構造とよぶ。
【0142】
具体的に、S−Channel構造の場合、トランジスタ14がオフとなるような電位を導電膜86に与えたときは、当該端部を介して導電膜83と導電膜84の間に流れるオフ電流を小さく抑えることができる。そのため、トランジスタ14では、大きなオン電流を得るためにチャネル長を短くし、その結果、酸化物半導体膜82bの端部における導電膜83と導電膜84の間の長さが短くなっても、トランジスタ14のオフ電流を小さく抑えることができる。よって、トランジスタ14は、チャネル長を短くすることで、オンのときには大きいオン電流を得ることができ、オフのときにはオフ電流を小さく抑えることができる。
【0143】
また、具体的に、S−Channel構造の場合、トランジスタ14がオンとなるような電位を導電膜86に与えたときは、当該端部を介して導電膜83と導電膜84の間に流れる電流を大きくすることができる。当該電流は、トランジスタ14の電界効果移動度とオン電流の増大に寄与する。そして、酸化物半導体膜82bの端部と、導電膜86とが重なることで、酸化物半導体膜82bにおいてキャリアの流れる領域が、絶縁膜85に近い酸化物半導体膜82bの界面近傍のみでなく、酸化物半導体膜82bの広い範囲においてキャリアが流れるため、トランジスタ14におけるキャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ14のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなり、代表的には電界効果移動度が10cm
2/V・s以上、さらには20cm
2/V・s以上となる。なお、ここでの電界効果移動度は、酸化物半導体膜の物性値としての移動度の近似値ではなく、トランジスタの飽和領域における電流駆動力の指標であり、見かけ上の電界効果移動度である。
【0144】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0145】
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜と非単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜などをいう。
【0146】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の酸化物半導体膜が典型である。
【0147】
微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも原子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0148】
CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても結晶部同士の明確な境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0149】
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0150】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0151】
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0152】
断面の高分解能TEM観察および平面の高分解能TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
【0153】
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0154】
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO
4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0155】
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面の高分解能TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0156】
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0157】
また、CAAC−OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶部の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC−OS膜は、不純物が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成されることもある。
【0158】
なお、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0159】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0160】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0161】
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0162】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、処理室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素、及び窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0163】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状又はペレット状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0164】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
【0165】
ターゲットの一例として、In−Ga−Zn酸化物ターゲットについて以下に示す。
【0166】
InO
X粉末、GaO
Y粉末及びZnO
Z粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn酸化物ターゲットとする。なお、X、Y及びZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InO
X粉末、GaO
Y粉末及びZnO
Z粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、及びその混合するmol数比は、作製するターゲットによって適宜変更すればよい。
【0167】
なお、アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体膜に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNa
+となる。また、Naは、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの電気的特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×10
16/cm
3以下、好ましくは1×10
16/cm
3以下、更に好ましくは1×10
15/cm
3以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×10
15/cm
3以下、好ましくは1×10
15/cm
3以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×10
15/cm
3以下、好ましくは1×10
15/cm
3以下とするとよい。
【0168】
また、インジウムを含む金属酸化物が用いられている場合に、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも大きいシリコンや炭素が、インジウムと酸素の結合を切断し、酸素欠損を形成することがある。そのため、シリコンや炭素が酸化物半導体膜に混入していると、アルカリ金属やアルカリ土類金属の場合と同様に、トランジスタの電気的特性の劣化が起こりやすい。よって、酸化物半導体膜中におけるシリコンや炭素の濃度は低いことが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるC濃度の測定値、またはSi濃度の測定値は、1×10
18/cm
3以下とするとよい。上記構成により、トランジスタの電気的特性の劣化を防ぐことができ、記憶装置の信頼性を高めることができる。
【0169】
〈チップの構成〉
図10(A)に、リードフレーム型のインターポーザを用いたパッケージの断面構造を表す斜視図を示す。
【0170】
図10(A)に示すパッケージは、本発明の一態様にかかる半導体装置に相当するチップ751が、ワイヤボンディング法により、インターポーザ750上の端子752と接続されている。端子752は、インターポーザ750のチップ751がマウントされている面上に配置されている。そしてチップ751はモールド樹脂753によって封止されていても良いが、各端子752の一部が露出した状態で封止されるようにする。
【0171】
パッケージが回路基板に実装されている電子機器のモジュールの構成を、
図10(B)に示す。
【0172】
図10(B)に示す携帯電話のモジュールは、プリント配線基板801に、パッケージ802と、バッテリー804とが実装されている。また、表示素子が設けられたパネル800に、プリント配線基板801がFPC803によって実装されている。
【0173】
〈電子機器の例〉
本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を
図11に示す。
【0174】
図11(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5001、筐体5002、表示部5003、表示部5004、マイクロホン5005、スピーカー5006、操作キー5007、スタイラス5008等を有する。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、携帯型ゲーム機が有する各種集積回路に用いることができる。なお、
図11(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5003と表示部5004とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
【0175】
図11(B)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示部5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。第1表示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体5602に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部5605により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続部5605により変更が可能である。第1表示部5603における映像を、接続部5605における第1筐体5601と第2筐体5602との間の角度に従って、切り替える構成としても良い。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、携帯情報端末が有する各種集積回路に用いることができる。また、第1表示部5603及び第2表示部5604の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
【0176】
図11(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部5402、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、ノート型パーソナルコンピュータが有する各種集積回路に用いることができる。
【0177】
図11(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303等を有する。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、電気冷凍冷蔵庫が有する各種集積回路に用いることができる。
【0178】
図11(E)はビデオカメラであり、第1筐体5801、第2筐体5802、表示部5803、操作キー5804、レンズ5805、接続部5806等を有する。操作キー5804及びレンズ5805は第1筐体5801に設けられており、表示部5803は第2筐体5802に設けられている。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、ビデオカメラが有する各種集積回路に用いることができる。そして、第1筐体5801と第2筐体5802とは、接続部5806により接続されており、第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度は、接続部5806により変更が可能である。表示部5803における映像を、接続部5806における第1筐体5801と第2筐体5802との間の角度に従って切り替える構成としても良い。
【0179】
図11(F)は普通自動車であり、車体5101、車輪5102、ダッシュボード5103、ライト5104等を有する。本発明の一態様に係る記憶装置または半導体装置は、普通自動車が有する各種集積回路に用いることができる。
【実施例1】
【0180】
〈温度依存性について〉
次いで、本発明の一態様にかかる記憶装置の、各種動作速度の温度依存性を計算により求めた結果について述べる。
【0181】
動作速度の温度依存性の計算は、
図3に示す記憶装置10を用いて行った。具体的には、第1記憶回路11から第2記憶回路12へのデータの退避に要する時間(データ退避時間)の温度依存性と、第2記憶回路12から第1記憶回路11へのデータの復帰に要する時間(データ復帰時間)の温度依存性と、第2記憶回路12においてデータが保持される時間(保持時間)の温度依存性とを計算した。
【0182】
計算では、温度を−40℃、27℃、125℃であるもの仮定した。計算には回路シミュレーションソフト Gateway(Silvaco社製)を用いた。
【0183】
図12は、計算により求められた、温度とデータ退避時間の関係を表すグラフを示す。また、表1に、計算により求められた、温度に対するデータ退避時間を示す。
【0184】
【表1】
【0185】
また、
図13は、計算により求められた、温度とデータ復帰時間の関係を表すグラフを示す。また、表2に、計算により求められた、温度に対するデータ復帰時間を示す。
【0186】
【表2】
【0187】
また、
図14は、計算により求められた、温度と保持時間の関係を表すグラフを示す。また、表3に、計算により求められた、温度に対する保持時間を示す。
【0188】
【表3】
【0189】
図12及び表1から、温度が高いほどデータ退避時間が短くなる傾向にあることが分かった。また、
図13及び表2から、データ復帰時間には温度依存性が見られないことが分かった。また、
図14及び表3から、保持時間は温度が高いほど短くなる傾向にあるが、温度依存性は小さいことが分かった。
【0190】
〈半導体装置の消費電力について〉
次いで、設計された半導体装置の構成と、シミュレーションにより得られた当該半導体装置の消費電力について説明する。
【0191】
図15に、設計された半導体装置の構成をブロック図で示す。
図15に示す半導体装置(m0_top)は、CPUと、パワーマネージメントユニット(pmu_top)と、クロックゲーティングモジュール(gating_hclk)と、アイソレータモジュール(isolator_module)とを有していた。CPUは、各種命令を実行するためのCPUコア(CPU_CORE)を有していた。そして、CPUコア(CPU_CORE)には、
図3に示した記憶装置10を有するメモリ(OSFF)が用いられている。パワーマネージメントユニット(pmu_top)は、パワーマネージメントユニット(pmu_top)に入力された各種信号を処理するためのパワーマネージメントユニットコア(pmu_core)を有していた。
【0192】
パワースイッチ(PSW)とレベルシフタ(Level shifter)は、半導体装置(m0_top)の外部に別途設けた。
【0193】
テストベンチ(test bench)は、半導体装置(m0_top)の動作を制御する機能を有する。具体的に、テストベンチ(test bench)は、RAMと、BUS SLAVE等を有し、各種の命令を半導体装置(m0_top)に送る機能等を有する。
【0194】
テストベンチ(test bench)は、信号SETTINGをパワーマネージメントユニットコアに送る機能を有する。信号SETTINGは、例えば、パワーゲーティングの動作タイミングを設定する機能を有する。パワーマネージメントユニットコアは、信号Power_switchを出力する機能を有する。信号Power_switchは、バッファを介して、パワースイッチ(PSW)に入力される。当該バッファには電位PSW_VDD2が与えられる。信号Power_switchは、パワースイッチ(PSW)を制御する機能を有する。パワーマネージメントユニットコアは、信号OSGを出力する機能を有する。信号OSGはレベルシフタを介して、メモリ(OSFF)に入力される。当該レベルシフタには電位CORE_OSVDDと電位CORE_OSVSSとが入力される。CPUコアは、信号SLEEPINGをパワーマネージメントユニットコアに送る機能を有する。信号SLEEPINGは、CPUコアが休止状態であるかどうかを示す信号である。
【0195】
図16(A)に、半導体装置(m0_top)の設計に用いられたマスクのレイアウトを示す。また、比較例として、メモリ(OSFF)において、
図3に示す第2記憶回路12を有さない点において半導体装置(m0_top)と構成が異なる半導体装置500の、設計に用いられたマスクのレイアウトを、
図16(B)に示す。
図16(A)に示す半導体装置(m0_top)は、サイズが277.77μm×274.16μm、スタンダードセル密度が63.714%であった。また、
図16(B)に示す比較例の半導体装置500は、サイズが262.95μm×259.34μm、スタンダードセル密度が65.190%であった。
【0196】
表4に、半導体装置(m0_top)と半導体装置500の詳細な仕様を示す。なお、表4に示す仕様において、半導体装置(m0_top)に供給される電源電圧2.5Vは、メモリ(OSFF)に供給される。具体的に、電源電圧2.5Vは、
図3に示す信号OSGに用いられる。
【0197】
【表4】
【0198】
図16(A)及び
図16(B)から、半導体装置(m0_top)のマスクのレイアウト面積は、半導体装置500のマスクのレイアウト面積の111.1%に相当し、面積的なオーバーヘッドが11.1%であることが分かった。
【0199】
半導体装置(m0_top)は、第2記憶回路12を有する点において半導体装置500と異なっており、第2記憶回路12の追加により、半導体装置500より大きくなる。しかし、
図16(A)と
図16(B)から、半導体装置(m0_top)は、半導体装置500からの面積の増大は小さく抑えられていることが分かった。
【0200】
次いで、半導体装置(m0_top)と半導体装置500をパワーゲーティングすることなく通常動作させたときの、消費電流の測定結果について説明する。消費電流は、室温(27℃)下において、電源電圧が1.1V、クロック信号HCLKの周波数が50MHzで、半導体装置(m0_top)と半導体装置500とをそれぞれ動作させた状態で測定した。なお、電源電圧は、
図15において、電位CORE_VDDと電位CORE_OSVSSの電位差に相当する。
【0201】
図17(A)に、電位CORE_VDDが与えられている配線に流れる電流をシミュレーションにより求め、上記電流の値から算出された、半導体装置(m0_top)と半導体装置500の消費電流を示す。計算には回路シミュレーションソフト Nanosim(Synopsys社製)を用いた。電位CORE_VDDは、パワースイッチPSWを介してCPUに供給される電位であるため、
図17(A)に示す消費電流には、パワーマネージメントユニット(pmu_top)、クロックゲーティングモジュール(gating_hclk)、アイソレータモジュール(isolator module)における消費電流は含まれない。
【0202】
また、
図17(B)に、半導体装置(m0_top)と半導体装置500の、全てのパワードメインの消費電流を示す。
【0203】
図17(A)における半導体装置(m0_top)と半導体装置500の消費電流の比較と、
図17(B)における半導体装置(m0_top)と半導体装置500の消費電流の比較とから、通常の動作時では、半導体装置(m0_top)の方が半導体装置500よりも、消費電流が平均して6%程度高いが、その差は小さく抑えられていることが分かった。
【0204】
また、
図17(A)における半導体装置(m0_top)と
図17(B)における半導体装置(m0_top)の消費電流の比較から、パワーマネージメントユニット(pmu_top)、クロックゲーティングモジュール(gating_hclk)、アイソレータモジュール(isolator module)における消費電流は、とても小さいことが分かった。
図17(A)における半導体装置500と
図17(B)における半導体装置500の消費電流の比較からも同様に、パワーマネージメントユニット(pmu_top)、クロックゲーティングモジュール(gating_hclk)、アイソレータモジュール(isolator module)における消費電流は、とても小さいことが分かった。
【0205】
次いで、半導体装置(m0_top)において、クロックゲーティング(CG)を行った場合の消費電流と、パワーゲーティング(PG)を行った場合の消費電流を、それぞれシミュレーションにより求めた結果について説明する。計算には回路シミュレーションソフト Nanosim(Synopsys社製)を用いた。
図18に、消費電流のシミュレーション結果を示す。なお、シミュレーションは、クロック信号HCLKの周波数が50MHzであると仮定して行った。そして、電源供給時には、1.21Vの電源電圧が半導体装置(m0_top)に供給されたと仮定して計算した。また、基板温度が125℃であることを想定し、シリコンを用いたトランジスタ(SiFET)は、pチャネル型のトランジスタの閾値電圧がプラスシフトし、nチャネル型のトランジスタの閾値電圧がマイナスシフトし、共にノーマリオンであるものと仮定して消費電流を計算した。
【0206】
具体的に、消費電流の測定は、電位CORE_VDDの与えられる配線と、電位TOP_VDD2の与えられる配線と、電位PMU_VDD2の与えられる配線と、電位CORE_OSVDDの与えられる配線において、それぞれ行った。
図18に各配線における消費電流の測定値を示す。
図18から、電位TOP_VDD2の与えられる配線と、電位PMU_VDD2の与えられる配線と、電位CORE_OSVDDの与えられる配線とでは、クロックゲーティング(CG)を行った場合の消費電流とパワーゲーティング(PG)を行った場合の消費電流とで大きな差が見られなかった。しかし、電位CORE_VDDの与えられる配線では、クロックゲーティング(CG)を行った場合の消費電流よりも、パワーゲーティング(PG)を行った場合の消費電流の方が、大幅に削減できていることが分かった。すなわち、本発明の一態様では、パワーゲーティングを行うことで、リーク電流を大幅に削減できることが分かった。
【0207】
次いで、半導体装置(m0_top)において、パワーゲーティング(PG)を行った場合の、詳細な消費エネルギーの内訳を、シミュレーションにより求めた結果について説明する。計算には回路シミュレーションソフト Nanosim(Synopsys社製)を用いた。まず、パワーゲーティング(PG)における、各種電位のタイミングチャートと、各種電位を供給することができる配線の消費電流の変化とを、
図19に示す。そして、
図19に示したパワーゲーティング(PG)を行ったときの、期間t1−1、期間t1−2、期間t1−3、期間t2−1、期間t2−2、期間t2−3における、各種配線に流れる電流により消費されたエネルギー(pJ)の計算結果を
図20にグラフで示す。また、計算により得られた具体的な消費エネルギー(pJ)の値を、表5に示す。
【0208】
【表5】
【実施例2】
【0209】
本実施例では、チャネル長60nmの、In−Ga−Zn酸化物膜であるCAAC−OS膜にチャネル形成領域を有するトランジスタ(OSFET)を用いたキャッシュと、OSFETを用いた第2記憶回路12を有するフリップフロップ(OSFF)を有するCPUコアと、を搭載したチップを試作した。
【0210】
試作したチップの写真を
図25に、仕様を表6に示す。試作したチップは、ARM社製のCortex−M0(登録商標)を用いたCPUコア(CPU_CORE)と、4KBのキャッシュ(Cache)と、バスインターフェース(Bus I/F)と、パワーマネージメントユニット(PMU)を有していた。キャッシュには、OSFETを用いたデータ保持回路が、実装されていた。これにより、キャッシュは、パワーゲーティング時にデータの退避が可能になる。
【0211】
【表6】
【0212】
試作したチップの構成について、
図35を用いて、さらに詳細に説明する。
図35に試作したチップのブロックを示す。試作したチップは、ARM社製のCortex−M0(登録商標)を用いたCPUコア(CPU_CORE)と、4KBのキャッシュ(Cache)と、パワーマネージメントユニット(PMU)と、クロック制御回路(Clock controller)と、アイソレータ(Isolator for output)と、パワースイッチ(Power Switch)と、レベルシフタ(LS)と、バスインターフェース(Bus I/F)と、を有していた。キャッシュおよびCPUコアには、パワーゲーティング時にデータの退避が可能になる、OSFETを用いたデータ保持回路が、実装されていた。
【0213】
パワースイッチは、パワーマネージメントユニットから入力される制御信号(PG control signals)によって、電源電圧の供給を制御する。CPUコアへの電源電圧の供給を制御するパワースイッチと、キャッシュへの電源電圧の供給を制御するパワースイッチと、バスインターフェースへの電源電圧の供給を制御するパワースイッチと、が設けられている。レベルシフタは、OSFETを制御する信号のレベルをシフトする。SiFETで構成される論理回路部に供給される電源電圧(1.8V)よりも、OSFETに供給される電源電圧(2.5V)が高いために、レベルシフタを設けている。CPUコアに入力される制御信号の一部と、キャッシュに入力される制御信号の一部と、はレベルシフタに入力される。CPUコアは、休止状態であるかどうかを示す信号(SLEEPING)を出力する。PMUには当該信号(SLEEPING)が入力される。外部から入力されるクロック信号(Clock)は、クロック制御回路と、PMUに入力される。クロック制御回路が出力するクロック信号(Gated clock)は、CPUコア、キャッシュ、及びバスインターフェースに入力される。アイソレータは、内部のバスインターフェースと、外部出力(External)の間に設けられる。アイソレータは、例えば、パワーゲーティング時に外部出力として所定の値を出力し、不定とならないようにする。
【0214】
また、OSFETのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの値を測定した結果を、
図26に示す。測定に用いたOSFETは、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極が、ゲート絶縁膜を間に挟んでCAAC−OS膜上に位置するトップゲート型であり、チャネル長Lが60nm、チャネル幅Wが40nm、ゲート絶縁膜が10nmであった。測定は、ソースとドレイン間の電圧Vdを1.8Vに設定して行った。
図26に示すように、OSFETは、スイッチとして良好な特性を示しており、オフ電流は測定限界以下となった。
【0215】
図27に、
図25に示すチップの、パワーゲーティング時における動作の流れを模式的に示す。CPUコアからのSLEEPING信号に従って、PMUが起動する。そして、PMUからOSFFまたはキャッシュが有するメモリセルに、データの退避を行うよう信号が送られる。また、チップの外部から送られてくる割り込み(Interrupt)信号に従って、PMUからOSFFまたはキャッシュが有するメモリセルに、データの復帰を行うよう信号が送られる。
【0216】
次いで、
図28に試作されたチップのブロック図と、OSFF及びキャッシュが有するメモリセルにそれぞれ設けられたデータ保持回路(Data retention block)の回路図とを示す。なお、試作されたチップでは、OSFETのチャネル長を60nm、SiFETのチャネル長を180nmとした。
【0217】
データ保持回路は、OSFFとキャッシュが有するメモリセルのビット毎に実装されており、容量に書き込まれたデータをOSFETによって保持する回路とした。データ保持回路とパワースイッチ(PSW)は、PMUによってスイッチングが制御されている。OSFETをオンにするためにゲートに供給する電位は、OSFETの閾値電圧分、レベルシフトさせた電位を用いた。
【0218】
図29に、試作したチップを30MHzで動作させ、パワーゲーティングさせたときの、各種電位の波形を示す。データの退避を行い、電源を遮断する直前の状態となるまでに、キャッシュとCPUコアの両方において、OSFETをオンにしてデータを書き込む時間(100ns)が必要となる。また、
図29に示すように、電源遮断状態からの復帰には、CPUコアは、電源電圧が安定化する時間と、データを復帰させる時間(33ns、30MHzの1clkに相当)、キャッシュは、OSFETをオンにしてデータを復帰させる時間(100ns)と、電源電圧が安定化する時間を、それぞれ要した。よって、電源遮断状態からの復帰は、クロック信号(Clock)の10サイクル分の時間で実行が可能であることが分かった。
【0219】
なお、キャッシュのデータを別の不揮発メモリに退避させる場合は、例えば、退避させるデータのワード数分に対応する数の、クロック信号のサイクル分の時間を要する。よって、試作したチップでは、データを別の不揮発メモリに退避させる場合に比べて、圧倒的に短時間でパワーゲーティングが行えると言える。
【0220】
図30に、試作されたチップに要する電力を、測定した結果を示す。縦軸は消費電力(mW)を示す。また、横軸はチップの動作方法を示している。具体的に、クロックゲーティングやパワーゲーティングを行うことなく待機状態とする動作方法(Standby)と、クロックゲーティングを行う動作方法(Clock gating)と、CPUコアにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0)と、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0 and SRAM)を用いて、電流値を測定した。ただし、クロックゲーティングを行う動作方法(Clock gating)と、CPUコアにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0)と、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0 and SRAM)については、100msの動作状態(Active)と、100msの休止状態(Sleep)とを繰り返して動作させた場合(Case1)と、100msの動作状態(Active)と、60sの休止状態(Sleep)とを繰り返して動作させた場合(Case2)と、に分けて消費電力を測定した。
【0221】
図30から、センサ用途を想定したCase2の場合、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0 and SRAM)は、クロックゲーティングを行う動作方法(Clock gating)に比べて、電源線の間に流れるリーク電流を99%以上削減できており、キャッシュとCPUコアにおけるパワーゲーティングが、電力の削減に対する寄与が大きいことが分かった。また、試作したチップでは、電源電圧が供給されていない期間において24時間以上データが保持されることが確認できており、この保持時間からOSFETのオフ電流はSiFETに比べて7桁以上低いことが分かった。よって、OSFETが、データ保持回路に用いるのに適していることが、確認された。
【0222】
図32に、試作されたチップに要する電力について、上記とは異なる条件で測定した結果を示す。縦軸は消費電力(mW)を示す。また、横軸はチップの動作方法を示している。横軸は、
図30で説明したチップの動作方法を参照することができる。クロックゲーティングを行う動作方法(Clock gating)と、CPUコアにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0)と、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0 and SRAM)については、1sの期間中20msを動作状態とする動作を繰り返した場合(Case3、20ms activity rate in 1 sec duty cycle)と、3sの期間中50msを動作状態とする動作を繰り返した場合(Case4、50ms activity rate in 3 sec duty cycle)と、に分けて消費電力を測定した。Case3やCase4は、Case2よりも頻繁にデータにアクセスするセンサ用途を想定した測定条件である。
【0223】
図32から、Case3やCase4の場合、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法(Power gating with M0 and SRAM)は、クロックゲーティングを行う動作方法(Clock gating)に比べて、電源線の間に流れるリーク電流を90%以上削減できていた。数秒に一度、休止状態となるような用途においても、キャッシュとCPUコアにおけるパワーゲーティングが、電力の削減に対する寄与が大きいことが分かった。
【0224】
図33に、試作されたチップに要する電力について、
図30および
図32に示した結果とは異なる条件で測定した結果を示す。動作状態と休止状態とを繰り返して動作させた場合の消費電力を測定した。休止状態として、クロックゲーティングを行う動作方法と、パワーゲーティングを行う動作方法と、に分けて消費電力を測定した。縦軸は消費電力(mW)を示す。横軸は休止時間(Sleep time)を示す。動作時間を4msと固定し、休止時間(Sleep time)を変化させた。実線と鎖線は、それぞれ、クロックゲーティングを行う動作方法においてキャッシュで消費される電力(cache_VDD(CG))とCPUコアで消費される電力(CPU_CORE_VDD(CG))である。点線と一点鎖線は、それぞれ、パワーゲーティングを行う動作方法においてキャッシュで消費される電力(cache_VDD(PG))とCPUコアで消費される電力(CPU_CORE_VDD(PG))である。
【0225】
図33から、休止時間(Sleep time)が100ms以上の場合、CPUコア及びキャッシュにおいてパワーゲーティングを行う動作方法は、クロックゲーティングを行う動作方法に比べて、電源線の間に流れるリーク電流を70%以上削減できている。また、400ms以上の場合、90%以上削減できていた。このように休止状態となる頻度が高い場合においても、キャッシュとCPUコアにおけるパワーゲーティングが、電力の削減に対する寄与が大きいことが分かった。
【0226】
試作したチップの評価結果を、表7に示す。試作したテクノロジー(Fabrication technology)は、チャネル長が60nmのOSFETとチャネル長が180nmのSiFETとが組み合わされたものである。クロック周波数(Clock Frequency)は30MHzであった。キャッシュに用いたSRAMセルの面積オーバーヘッド(Area overhead of SRAM cell)は0%であった。退避時間(Backup time)は100nsであった。復帰時間(Recovery time)は10クロックサイクル(10 clock cycle)であった。これは、データ復帰時間の100nsを含む(including data restoration time(100ns))。データ保持時間(Data retention)は24時間以上(more than 24h)であった。リーク電流の低減(Leakage current reduction)は99%以上(more than 99%)であった。
【0227】
【表7】
【0228】
試作したチップでは、チャネル長が60nmのOSFETとチャネル長が180nmのSiFETとが組み合わされていたが、チャネル長が60nmのOSFETが、さらに微細化されたSiFETと組み合わせても、面積の増加を抑えることができる。これを示すために、チャネル長が60nmのOSFETとチャネル長が45nmのSiFETとを組み合わせたキャッシュのメモリセルのレイアウトを作成した。
図31に、上記キャッシュのメモリセルのレイアウトを示す。データ保持回路を構成する2個のOSFETと容量素子とは、SiFET上に積層できることから、45nmルールでレイアウトしたSiFETのSRAM上に、データ保持回路を設けても面積の増加は見られなかった。
【0229】
また、上記キャッシュのメモリセルの動作性能を、シミュレーションを用いて算出した結果を、表8に示す。シミュレーションは、ローパワーの45nmのSiFETをモデルとして用い、電源電圧を1.1Vとした。シミュレーションの結果、データの読み出し時間(Read time)と書き込み期間(Write time)への影響は数ps程度であった。よって、数百MHz以上での使用を想定しても動作周波数への影響はほぼ見られないと言える。したがって、チャネル長が60nmのOSFETを用いたデータ保持回路を、チャネル長が45nmのSiFETを用いたSRAMと組み合わせても、キャッシュのメモリセル面積と性能に影響がほぼ与えられないことが分かった。
【0230】
具体的には、45nmルールでレイアウトしたSiFETのSRAM上に、チャネル長が60nmのOSFETを用いたデータ保持回路を設けた場合のキャッシュのメモリセルの読み出し時間は、265psであった。データ保持回路を設けない場合のキャッシュのメモリセルの読み出し時間は、263psであった。データ保持回路を設けたことによる読み出し時間の増加は2psであり、0.8%であった。また、データ保持回路を設けた場合のキャッシュのメモリセルの書き込み時間は、73psであった。データ保持回路を設けない場合のキャッシュのメモリセルの書き込み時間は、64psであった。データ保持回路を設けたことによる書き込み時間の増加は9psであり、14%であった。
【0231】
図34には、上記キャッシュのメモリセルのシミュレーションによる動作波形を示す。
図34(A)は、読み出し波形である。データ保持回路を設けた場合と設けない場合のキャッシュのメモリセルに接続されるビット線の電位(図中、いずれもBit lineで表す)と、ワード線の電位(図中のWord line)と、を示す。両ビット線の電位は、ほぼ重なっていることがわかった。
図34(B)は、書き込み波形である。データ保持回路を設けた場合と設けない場合のSRAMを構成するインバータループの2つのノードの電位(図中、いずれもINV loop net1及びINV loop net2で表す)を示す。それぞれのノードの電位は、ほぼ重なっていることがわかった。したがって、チャネル長が60nmのOSFETを用いたデータ保持回路を、チャネル長が45nmのSiFETを用いたSRAMと組み合わせても、キャッシュ性能に影響がほぼ与えられないことが分かった。
【0232】
【表8】