(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420109
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/16 20060101AFI20181029BHJP
C22B 1/20 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
C22B1/16 K
C22B1/16 N
C22B1/20 Q
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-206037(P2014-206037)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-74947(P2016-74947A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年5月25日
【審判番号】不服2017-12766(P2017-12766/J1)
【審判請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 友規
(72)【発明者】
【氏名】早坂 祥和
(72)【発明者】
【氏名】大山 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆英
【合議体】
【審判長】
板谷 一弘
【審判官】
長谷山 健
【審判官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−248988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/16-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉鉄鉱石から製造されたペレットと通常焼結配合原料とを混合して混合物を作製し、その混合物を焼結機に装入して焼結することにより、焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法において、前記ペレットは微粉鉄鉱石を造粒し焼成してなる焼成済みペレットであり、かつ、前記混合物は前記焼成済みペレットと前記通常焼結配合原料とを予混合してなる焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料であり、かつ、前記焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料中における該焼成済みペレットの配合率を6mass%以下(但し、4mass%は除く)とすることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記焼成済みペレットの配合率は0.5mass%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記焼成済みペレットとして、高炉用原料として使用可能なペレットを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の原料として使用される焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高炉は、焼結鉱やペレット、塊鉄鉱石、コークス、石灰石などの原料を、炉内の高温雰囲気中で化学反応させることにより、溶銑を製造する炉である。なお、前記焼結鉱は、粉鉄鉱石やコークス粉などの原料を、焼結機にて焼結することによって製造される。
【0003】
従来、焼結鉱を製造する際に、原料の一部として調湿ペレット(生ペレット)を使用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、焼結機内の原料充填層の通気性を良好にして、焼結鉱の生産性及び成品歩留を向上させるために、擬似粒子と生ペレットとを混合して焼結機に装入して焼結する際に、まず、ペレット中の水分含有量が4mass%以下となるように乾燥し、次いで、該ペレット中の水分含有量が4.5〜8mass%となるように加水処理したものを使用することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、装入原料層の通気性を改善して、焼結時間を短くすることによって、焼結鉱の生産性を向上させるために、微粉原料を造粒し、得られた造粒物を乾燥して水分含有量を6.5mass%以下に調湿したペレットを、他の焼結原料と混合して焼結する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174763号公報
【特許文献2】特開平6−145822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1および特許文献2に開示の技術は、調湿したペレットを使用することにより、焼結原料層の通気性を良好にして焼結鉱の生産性を高めることを目標にしている。しかしながら、これらの技術では、所定の水分量に調湿したペレットを作製する必要があった。そのため、焼結機の他に別途ペレットを製造する特別な装置を必要とするという問題があった。
【0007】
また、近年では、調湿ペレットに頼ることなく既存の焼結機を使って、焼結鉱の生産性を向上させて焼結鉱の生産能力をさらに高めたいとの要求も高くなっている。
【0008】
本発明の目的は、焼結機の他に別途特別な装置を必要とせず、既存の焼結機を用いて焼結鉱の生産能力をさらに高めることができる焼結鉱の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、従来技術が抱えている前述の課題を克服できると共に、前記目的の実現に有効な方法につき鋭意検討した結果、下記の要旨構成に係る本発明を開発するに到った。即ち、本発明は、微粉鉄鉱石から製造されたペレットと
通常焼結配合原料とを混合して混合物を作製し、その混合物を焼結機に装入して焼結することにより、焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法において、
前記ペレットは微粉鉄鉱石を造粒し焼成してなる焼成済みペレットであり、かつ、前記混合物は前記焼成済みペレットと前記通常焼結配合原料とを予混合してなる焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料であり、かつ、前記焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料中における該焼成済みペレットの配合率を6mass%以下
(但し、4mass%は除く)とすることを特徴とする焼結鉱の製造方法である。
【0010】
また、上記の構成の本発明に係る製造方法においては、さらに、
(1)前記焼成済みペレットの配合率は0.5mass%以上とすること、
(2)前記焼成済みペレットとして、高炉用原料として使用可能なペレットを用いること、
がより好ましい解決手段になるものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配合率が6mass%以下の焼成済みペレットを焼結混合原料中に混合することで、配合したペレットの割合以上の焼結鉱を製造することができ、焼結鉱の生産能力を向上させることができる。また、焼成済みペレットとして市販の高炉原料用のペレットを利用できるため、特別な装置を別途必要とせず、既存設備の大掛かりな改造も必要とせず、既存設備(ヤード→ブレンド粉→焼結配合槽→焼結機)をそのまま利用することで、焼結鉱の増産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の焼結鉱の製造方法における製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図2】本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼成時間短縮割合との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と塊歩留まり向上割合との関係を示すグラフである。
【
図4】本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を示すグラフである。
【
図5】従来例の焼結鉱についての湿ペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の焼結鉱の製造方法における製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。この図に示すように、本発明に係る焼結鉱の製造方法における製造工程は、従来の焼結鉱の製造工程とほぼ同じである。即ち、本発明に係る焼結鉱の製造方法では、従来の製造方法と同様の製造工程に従って、まず、ペレットフィードと呼ばれる微粉鉄鉱石を造粒して得られた生ペレットを焼成してなる焼成済みペレットと、シンターフィードと呼ばれている粉鉄鉱石その他の焼結原料(副原料やコークス粉など)の擬似粒子、粉鉄鉱石単味などからなる通常焼結配合原料とを準備し、これら、即ち上記焼成済みペレットおよび上記通常焼結配合原料を混合して得た焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料を得る。その後、焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料を焼結機に装入して焼結することで、高炉用原料となる焼結鉱を製造する。
【0014】
図1に示す本発明に係る製造方法において、従来の製造方法と異なる点は、原料となるペレットとして焼成済みペレットを使用する点にある。その上で、本発明では、焼成済みペレットと通常焼結配合原料との配合割合(配合率)を6mass%以下(従って、通常の焼結配合原料の配合率は94mass%を超えた量となる)としている。
【0015】
本発明において特徴的なことは、焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料における焼成済みペレットの配合率を6mass%以下とすることにより、後で述べる実施例から明らかなように、該焼成済みペレットを配合しない時にくらべ、該焼成済みペレットと通常の焼結配合原料とを予め混合することで、該焼成済みペレットを配合した割合(6mass%以下)以上の焼結鉱増産効果を得ることができることにある。その理由は、通気性改善によるものと考えられ、焼結鉱増産効果は以下の実験例から明らかになる。以降、焼結機で生産された焼結鉱の生産量を、ペレットに由来する焼結鉱と通常焼結
配合原料に由来する焼結鉱に分け、焼結鉱の生産量からペレットに由来する焼結鉱の生産量を差し引いたものを焼結塊の生産量とする。ペレットを
配合しない場合の焼結鉱の時間当たりの生産量を基準とした前記焼結塊の時間当たりの生産量の増減率を
増産割合とする。また、通常焼結
配合原料の装入量に対する前記焼結塊の生産量の割合を塊歩留まりとする。
【0016】
従って、本発明法に従って焼結鉱を製造する場合、焼結鉱の増産効果により、焼結鉱よりも高価な購入処理鉱石(ペレットや輸入焼結鉱)の使用量を削減することができる。また、通気性改善及び焼結強度の向上により発生ダスト、高Al
2O
3購入粉鉱石や微粉購入粉鉱石などの安価焼結用原料の使用割合の拡大が可能となる。また、焼結鉱を製造するにあたり、焼成済みペレットを使用することで、ベンディングヤードでの成分調整も可能となる。そのため、これまで化学成分が問題で使用できなかった、市販の安価な高炉用焼成ペレット(製品ペレット)の使用が可能となる。
【0017】
かかる焼成済みペレットとしては、高炉用原料として通常使用されている市販の焼成済みペレットを使用することができる。例えば、低強度ペレットや酸性ペレットなどを使用することもできる。そのため、焼成済みペレットを得るために、従来の生ペレットの乾燥品を利用して焼結鉱を得る技術のように、ペレットを製造するために別途特別な装置を必要としない。
【実施例】
【0018】
本発明の焼結鉱の製造方法を模擬した試験鍋にて、焼成済みペレットと通常焼結配合原料とからなる焼成済みペレット含有予混合焼結配合原料における焼成済みペレットの配合率を変化させて焼結鍋試験を行い、焼成済みペレットの配合率の影響を調べたので、以下に説明する。
【0019】
まず、焼成済みペレットとして酸性ペレットを準備した。また、通常の焼結配合原料として、粉鉄鉱石、硅石粉、石灰石粉、選鉱粉、粉コークスを準備した。本発明例および比較例として、準備した焼成済みペレットと通常焼結配合原料との配合率を代えて試験鍋に一定量充填し、同じ焼結条件で焼結させて、焼成済みペレットの配合率が異なるケースについてそれぞれの焼結鉱を得た。なお、通常焼結配合原料内の粉鉄鉱石(シンターフィード)、硅石粉、石灰石粉、選鉱粉、粉コークスの配合割合は、いずれの例においても同じとした。さらに、従来例として、配合率を変化させた湿ペレットと上述した通常の焼結配合原料とを使用し、上述した例と同様の製造工程に従って焼結鉱を得た。ここで、湿ペレットとしては、特許文献1で開示された湿ペレットを使用した。
尚、焼成済みペレットの配合率、湿ペレットの配合率は、それぞれ焼成済みペレット量と通常焼結配合原料量に対する焼成済みペレット量の比率(%)、湿ペレットの量と通常焼結配合原料量に対する湿ペレット量の比率(%)で示した。
【0020】
次に、得られた本発明例および比較例の焼結鉱について、焼成済みペレット配合率と焼成時間短縮割合との関係、焼成済みペレット配合率と塊歩留まり向上割合との関係、および、焼成済みペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を、それぞれ求めた。また、従来例の焼結鉱について、湿ペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を求めた。ここで、焼成時間短縮割合、塊歩留まり向上割合、および、焼結塊増産割合は、いずれも、焼成済みペレット配合率または湿ペレット配合率が0%の時を基本として求めた。
【0021】
図2に、本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼成時間短縮割合との関係を示し、
図3に、本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と塊歩留まり向上割合との関係を示し、
図4に、本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を示す。また、
図5に、従来例の焼結鉱についての湿ペレット配合率と焼結塊増産割合との関係を示す。
【0022】
図2〜
図5の結果から、以下のことがわかった。即ち、
図4に示す本発明例および比較例の焼結原料を利用した結果から、焼成済みペレット配合率が6mass%以下だと、焼結鉱の増産効果が認められることがわかる。一方、
図5に示す従来例の結果から、湿ペレットを使用した例では、湿ペレットの配合により焼結鉱の生産率は通気性の改善により若干良化するが塊歩留の悪化の影響が大となり、焼結鉱の増産効果を得ることができないことがわかる。
【0023】
また、
図2に示す本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼成時間短縮割合との関係、
図3に示す本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と塊歩留まり向上割合との関係、および、
図4に示す本発明例および比較例の焼結鉱についての焼成済みペレット配合率と焼結塊増産割合との関係の結果から、焼成済みペレットの配合率の下限を、好ましくは0.5mass%以上、さらに好ましくは4mass%以上、とすることが好ましいことがわかる。なお、配合率の下限を0.5mass%以上とすることが好ましいのは、ペレット配合による化学品位の低下は無いので、増産効果が見込める範囲なら問題ないためである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、焼結機の他に別途に特別な装置を必要とすることなく、既存の焼結機を用いて焼結鉱の生産能力をさらに高めることができる。そのため、例えば高炉用原料として使用される焼結鉱の生産能力の増強が望まれている製銑工程において、本発明の焼結鉱の製造方法を好適に適用することができる。