特許第6420112号(P6420112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420112
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】チャイルドシート支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   B60N2/28
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-209909(P2014-209909)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-78543(P2016-78543A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 俊一
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4898037(JP,B2)
【文献】 特開2012−76717(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0203605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートのシートクッションに載置された状態で当該車両シートに固定されるチャイルドシートのシート支持装置であって、
前記チャイルドシートに固定された固定部と、
前記固定部を介して支持されて、車両フロアへ向けて延設される可動部と、を備え、
前記可動部は、前記車両フロアの高さに応じて、前記固定部からの長さを変化させてその下端部を前記車両フロアに当接させる自動アジャスト機構と、
車両の加速度変化に伴い、前記自動アジャスト機構の作動を停止させるロック機構を有することを特徴とするチャイルドシート支持装置。
【請求項2】
前記自動アジャスト機構は、前記可動部を前記車両フロア側へ押し出す付勢手段により構成することを特徴とする請求項1に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記車両フロア側へ押し付けられている前記可動部が傾くことにより作動することを特徴とする請求項1または2に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項4】
前記可動部の側面には穴が設けられ、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパが前記穴に挿入されることで作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項5】
前記可動部の側面には波状面が形成されており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパが、前記波状面に嵌合することで作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項6】
前記可動部の側面には凸状の歯部が設けられており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパに、前記歯部が挿入されることで作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項7】
前記可動部の側面には摩擦面が設けられており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパと、前記摩擦面が当接することで作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項8】
前記可動部は、その一部を固定部内に収容されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチャイルドシート支持装置。
【請求項9】
前記固定部の側面には貫通孔が設けられ、前記ロック機構は、前記可動部に設けられたストッパが、前記貫通孔に挿入されることで作動することを特徴とする請求項8に記載のチャイルドシート支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シートに載置されたチャイルドシートが、急制動時や衝突時などに前方へ倒れ込むことを防止するチャイルドシート支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両シートに載置されるチャイルドシートは、シート本体を車両シートベルトにより固定して使用される。車両シートに固定されたチャイルドシートは、制動時に生ずる慣性力の影響で、シートベースの後端付近を基点として前方へ倒れ込むように動くこととなる。このため、チャイルドシートには、シートベースの前方側の沈み込みを抑制する支持装置が配置されている。
【0003】
チャイルドシート支持装置としては、例えば、特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されているチャイルドシート支持装置は、シートベースの前方へ突出している水平部材と、この水平部材を基点としてシートベース側への傾倒を可能とする垂直部材とを基本として構成されている。このような基本構成を有するチャイルドシート支持装置では、垂直部材の角度や長さを調整し、先端を車両フロアに当接させることで、チャイルドシートの倒れ込みを防止する効果を発揮することができる。
【0004】
なお、垂直部材は、外管と内管とにより構成されており、内管が外管内に出入りすることで、その長さの調整を可能としている。内管には、複数の位置決め孔が形成されており、外管に設けられた位置決めピンを何れかの位置決め孔に挿入することで、垂直部材の長さを定めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4898037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているようなチャイルドシート支持装置を用いるようにすることで、急制動時等に生じるチャイルドシートの傾倒を防ぐことができる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されているチャイルドシート支持装置をはじめとして、従来のチャイルドシート支持装置は、チャイルドシートを車両シートに備え付ける際、取付者が手動で、垂直部材の長さを調整する必要がある。このため、チャイルドシートを車両シートに取付ける際、取付者がチャイルドシート支持装置の調整を適切に行わなかった場合には、その機能を発揮することができず、危険を伴うこととなる。
【0008】
そこで本発明では、取付者による調整を不要とし、安全性の向上を図ることのできるチャイルドシート支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るチャイルドシート支持装置は、車両シートのシートクッションに載置された状態で当該車両シートに固定されるチャイルドシートのシート支持装置であって、前記チャイルドシートに固定された固定部と、前記固定部を介して支持されて、車両フロアへ向けて延設される可動部と、を備え、前記可動部は、前記車両フロアの高さに応じて、前記固定部からの長さを変化させてその下端部を前記車両フロアに当接させる自動アジャスト機構と、車両の加速度変化に伴い、前記自動アジャスト機構の作動を停止させるロック機構を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置において前記自動アジャスト機構は、前記可動部を前記車両フロア側へ押し出す付勢手段により構成することができる。このような特徴を持たせることにより、可動部の自重のみとした場合よりも、確実に、可動部の先端を車両フロアへ当接させることができる。すなわち、自動アジャスト機構の車両フロア高さへの接地追従性が向上する。
【0011】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置において、前記ロック機構は、前記車両フロア側へ押し付けられている前記可動部が傾くことにより作動するようにしても良い。このような特徴を備えた場合、可動部が、急制動時や衝突時に生じる加速度変化に伴い傾斜するように構成しておくことで、ロック機構を作動させるためのスイッチを持たせる必要が無くなり、シンプルな構成とすることができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記可動部の側面には穴が設けられ、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパが前記穴に挿入されることで作動するようにすることができる。このような特徴を持たせた場合には、ロック機構が確実に働くこととなる。
【0013】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記可動部の側面には波状面が形成されており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパが、前記波状面に嵌合することで作動するようにすることができる。このような機構を持たせた場合には、穴に対するストッパの挿入よりも、嵌合間隔を狭めることができる。このため、ロック機構が作用するまでの時間を短くすることができる。
【0014】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記可動部の側面には凸状の歯部が設けられており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパに、前記歯部が挿入されることで作動するようにすることができる。このような特徴を持たせる場合であっても、ストッパとの間において、確実にロック機構を働かせることができる。
【0015】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記可動部の側面には摩擦面が設けられており、前記ロック機構は、前記固定部を介して固定されるストッパと、前記摩擦面が当接することで作動するようにすることができる。このような特徴を持たせた場合には、摩擦面がストッパに当接した時点でロック機構が働くこととなる。このため、急制動や衝突が生じてからロック機構が働くまでのタイムラグを極めて短くすることができる。
【0016】
また、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記可動部は、その一部を固定部内に収容されるようにすることもできる。このような構成とした場合、安全性確保を実現させた上で、支持装置をスリム化し、軽量化することができる。
【0017】
さらに、上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置における前記固定部の側面には貫通孔が設けられ、前記ロック機構は、前記可動部に設けられたストッパが、前記貫通孔に挿入されることで作動するようにしても良い。このような特徴を有する場合も、確実にロック機構を作用させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のような特徴を有するチャイルドシート支持装置によれば、チャイルドシートを車両シートに設置する取付者による支持装置長さの調整を不要とし、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係るチャイルドシート支持装置の構成を示す部分断面斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るチャイルドシート支持装置の構成を示す分解斜視図である。
図3】実施形態に係るチャイルドシート支持装置をチャイルドシートに付帯させた状態を示す斜視図である。
図4】第1の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、自動アジャスト機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図5】第1の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、ロック機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図6】車両シートに設置したチャイルドシートと、これに付帯させた支持装置が、定常状態にある場合を説明するための図である。
図7】車両シートに設置したチャイルドシートと、これに付帯させた支持装置が、異常状態にある場合を説明するための図である。
図8】第2の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、自動アジャスト機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図9】第2の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、ロック機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図10】第3の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、自動アジャスト機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図11】第3の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、ロック機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図12】第4の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、自動アジャスト機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図13】第4の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、ロック機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図14】第5の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、自動アジャスト機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図15】第6の実施形態に係るチャイルドシート支持装置において、ロック機構が働いている状態を示す部分拡大断面図である。
図16】実施形態に係るチャイルドシート支持装置における第1の応用例を示す断面図であり、自動アジャスト機構が働いている状態を示す図である。
図17】実施形態に係るチャイルドシート支持装置における第1の応用例を示す断面図であり、ロック機構が働いている状態を示す図である。
図18】実施形態に係るチャイルドシート支持装置における第2の応用例を示す部分拡大断面図であり、自動アジャスト機構が働いている状態を示す図である。
図19】実施形態に係るチャイルドシート支持装置における第2の応用例を示す部分拡大断面図であり、ロック機構が働いている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のチャイルドシート支持装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係るチャイルドシート支持装置(以下、単に支持装置10と称す)を適用するチャイルドシート50は、図3に示すように、ベース52と、シート本体54を有する。そして、実施形態に係る支持装置10は、固定部12と可動部14とを備える。
【0021】
固定部12は、チャイルドシート50のベース52に固定される部材である。本実施形態においては、ベース52からチャイルドシート50の前方(水平方向)へ延設された後、車両フロア側(下側)へ向けて延設される略L字型の構造を持つ。図3に示す例では、固定部12は、2本一対として配置され、先端側に、可動部14を支持するための支持ケース24を備えている。
【0022】
可動部14は、支持ケース24に対して車両フロア方向へのスライドを可能とする支持脚である。図1図3に示す例では、可動部14は、角柱状の外郭を持って構成されている。取付背面側には、長手方向に沿って形成されたスリット16と、スリット16の両サイド(図1においては、部分断面を示しているため片側のみ)に設けられた複数の貫通孔18が設けられている。また、可動部14の内部上端側には、梁20が設けられている。
【0023】
スリット16は、詳細を後述する支持ケース24に備えられたフック26cを、可動部14の内部に介入させた状態で、可動部14を上下動させるための要素である。複数の貫通孔18は、ロック機構が作動した際に、ストッパ36が介入するための要素である。また、梁20は、スリット16に介入されたフック26cとの間に、引張側への反発力を持つ付勢手段としてのバネ22を配置するための要素である。
【0024】
支持ケース24は、ケーシング26と、アッパープレート28、アンダープレート30、ロックプレート32、および押圧プレート34を有する。ケーシング26は、フロントカバー26aとバックカバー26bから成る外郭であり、内部に上記のような構成要素、および固定部の一部、並びに可動部の一部を収容する。なお、バックカバー26bには、バネ22を係止するためのフック26cが備えられている。
【0025】
アッパープレート28は、アンダープレート30と、二個一対で構成される支持プレートである。本実施形態では、アッパープレート28、アンダープレート30共に、2つの固定部挿通孔28a,30aと、1つの可動部挿通孔28b,30bを有する。固定部挿通孔28a,30aに関しては、アッパープレート28とアンダープレート30とにおいて、その大きさに差を設ける必要はない。一方で、可動部挿通孔28b,30bに関しては、アッパープレート28に設ける可動部挿通孔28bの方が、アンダープレート30に設ける可動部挿通孔30bよりも、ケーシング26の厚み方向に位置する開口幅が大きくなるように形成されている。これは、可動部挿通孔28b,30bに挿通させた可動部14を、アンダープレート30側を支点としてケーシング26の厚み方向へ傾斜可能な構成とするためである。
【0026】
アッパープレート28とアンダープレート30は、は、例えば金属部材のような剛性の高い部材により構成することが望ましい。このような構成とすることで、急制動時や衝突時等に、応力が負荷された際の破損を抑制することができる。
【0027】
ロックプレート32は、ロック機構を作動させる際のストッパ36を備えるプレートである。ロックプレート32には、爪状に形成されたストッパ36の他、位置決め片32aが設けられている。ストッパ36は、上述したように、可動部14の取付背面に設けられた貫通孔18に挿入され、可動部14のスライドを停止させる作用を担う。位置決め片32aは、ストッパ36のズレや傾きを防止するための要素である。ロックプレート32は、図4図5に示すように、可動部14が垂直状態(フロントカバー26aに沿った状態)にある際には、ストッパ36が貫通孔18に挿入されず、可動部14が傾いた際に、ストッパ36が貫通孔18に挿入されるように位置決めして配置されている。
【0028】
押圧プレート34は、急制動や衝突に伴う加速度変化が生じていない定常時に、可動部14がバックカバー26b側へ傾斜することを防止するための付勢部材である。本実施形態の場合、押圧プレート34は、ケーシング26のバックカバー26b側に配置され、バックカバー26bと押圧プレート34との間に圧縮側への反発力を持つバネ38が設けられている。このような構成とすることで、押圧プレート34が、フロントカバー26a側へ押圧されることとなり、定常時におけるバックカバー26b側への倒れ込みを抑制することができる。
【0029】
このような基本要素を備える支持ケース24は、図6に示すように、設置状態において、車両シートに対する固定点Oを基点とした水平線Lよりも下側に配置されることが望ましい。図7に示すように、水平線Lよりも下側では、加速度変化に伴う慣性力Fに起因した回転力Fr(固定点Oを基点とした回転力)が、進行方向と逆側へ入り込もうとすることとなる。このため、支持ケース24を水平線Lよりも下側に配置することにより、回転力Frに起因した可動部14の傾きを得ることが容易となるからである。
【0030】
なお、図6図7に示すように、チャイルドシート50は、車両シートのシートクッションへの設置状態の特性から、車両シートに適正に取付けられた場合には、固定部12に所定の傾斜角が与えられることとなる。このため、支持ケース24が水平線Lよりも上側に配置された場合であっても、回転力Frの発生に伴う可動部14の傾斜を得ることはできる。また、車両シートのシートクッションに傾斜が無い場合(シートクッションが平らな場合)であっても、固定部12が存在することにより、支持ケース24は、必ず固定点Oよりも下側に配置されることとなる。
【0031】
このような基本構成を有する支持装置10は、急制動や衝突に伴う加速度変化が生じていない定常状態では、可動部14がケーシング26のフロントカバー26aに沿った状態を維持する。可動部14は、バネ22の作用により、車両フロア側への押圧力が加えられている。このため、定常状態において可動部14は、支持ケース24を基点にスライドし、車両フロアに接地するようにその長さが自動調整される自動アジャスト機構を働かせることとなる。
【0032】
次に、車両が急制動したり、衝突するなどして異常状態が生じた場合には、チャイルドシート50に対して強い慣性力Fが働くこととなる。この際、図示しない子供が着座状態にあるチャイルドシート50は、ISO−FIXコネクター、もしくは車両シートベルト(いずれも不図示)により車両シートに固定されているため、車両シートへの固定点Oを中心として、前方へ引っ張られる力と下側へ沈み込もうとする力が加えられることとなる。このため、チャイルドシート50には、車両シートへの固定点Oを基点として前方側へ沈み込もうとする回転力Frが加えられることとなる。
【0033】
ここで、支持装置10における支持ケース24は、回転中心(固定点O)に対して車両進行方向側に位置している。このため、チャイルドシート50に回転力Frが加えられた際には、車両フロア側へ向けて沈み込むように動くこととなる。この時、可動部14には、車両フロアへの設置点P1を支点、アンダープレート30の可動部挿通孔30b(支持ケース24の下端側)を力点P2として、チャイルドシート50の固定点Oを中心とした車両フロア側への回転方向の力(慣性力Fr)が加えられる。このため、可動部挿通孔30bよりも上側(固定部12側)に位置する可動部14の部位は、押圧プレート34による押圧力よりも強い力で、ケーシング26のバックカバー26b側へ押し付けられて傾斜することとなる。
【0034】
可動部14がバックカバー26b側へ押し付けられた状態(傾斜した状態)で、支持ケース24が車両フロア側へ沈み込もうとした場合、可動部14の取付背面に対向するストッパ36が、隣接する貫通孔18に挿入されることとなる。可動部14がバックカバー26b側へ押し付けられた状態で、貫通孔18にストッパ36が挿入されることで、可動部14に沿った支持ケース24の沈み込みが停止されるロック機構は働くこととなる。これにより、チャイルドシート50全体の回転(沈み込み)も停止されることとなる。
【0035】
チャイルドシート50に対する慣性力Frが解除されると、チャイルドシート50の回転に伴う沈み込みもなくなるため、可動部14のバックカバー26b側への押し付けが解除される。これにより、可動部14の長さの自動アジャスト機能が復活する。
【0036】
このように、本実施形態に係る支持装置10は、定常時は、可動部14のスライドが自在になっており、車両フロアへ到達する長さへの自動アジャストが可能である。一方で、急制動や衝突などにより、チャイルドシート50に慣性力Fが加わると、可動部14がロックされ、チャイルドシート50の沈み込みが抑制される。したがって、本実施形態に係る支持装置10は、チャイルドシート50の取付者による支持装置(支持脚)の長さ調整を不要とし、不適切な取付状態に起因した事故の発生を防ぐことができる。
【0037】
次に、本発明のチャイルドシート支持装置に係る第2の実施形態について、図8、および図9を参照して説明する。本実施形態に係る支持装置10Aも、その殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る支持装置10と同様である。相違点としては、可動部14の取付背面に設けていた貫通孔18に替えて、波状面18aを配置した点にある。
【0038】
波状面18aにすることにより、貫通孔18よりも狭い間隔で凹凸を連続させることが可能となる。このため、急制動時や衝突時などに生じるチャイルドシート50の沈み込みをより小さく抑えることができる。よって、安全性の向上を図ることができる。なお、本実施形態におけるストッパ36は、波状面18aの凹部に嵌合可能な先端形状を有するものとする。
その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係る支持装置10と同様である。
【0039】
次に、本発明のチャイルドシート支持装置に係る第3の実施形態について、図10、および図11を参照して説明する。本実施形態に係る支持装置10Bも、その殆どの構成は、上述した第1、第2の実施形態に係る支持装置10,10Aと同様である。相違点としては、第1、第2の実施形態に係る支持装置10,10Aでは、可動部14の取付背面に対し、孔や凹部を設ける貫通孔18、あるいは波状面18aを設ける構成としていたのに対し、本実施形態に係る支持装置10Bでは、該当箇所に凸状の歯部18bを設ける構成とした点にある。
【0040】
本実施形態では、複数の歯部18bを可動部14の長手方向に連続させて鋸刃状に構成している。そして、ストッパ36は、歯部18bが嵌合可能な貫通孔や凹部を備えた形態としている。このような構成とした場合であっても、上記第1、第2の実施形態と同様に、定常時における可動部14の自動アジャスト効果と、異常時における可動部14のロック効果を得ることができる。
その他の構成、作用、効果については、上述した第1、第2の実施形態に係る支持装置10,10Aと同様である。
【0041】
次に、本発明のチャイルドシート支持装置に係る第4の実施形態について、図12、および図13を参照して説明する。本実施形態に係る支持装置10Cも、その殆どの構成は、上述した第1〜第3の実施形態に係る支持装置10,10A,10Bと同様である。相違点は、可動部14の取付背面の構造にある。本実施形態では、取付背面に摩擦面18cを設け、ストッパ36の構造も、この摩擦面18cに当接する摩擦面を有するものとした。
【0042】
摩擦面同士を当接させる構造とすることにより、取付背面に、貫通孔18や波状面18a、および歯部18bなどを加工、設置する必要が無くなる。また、ストッパ36の摩擦面と取付背面の摩擦面18cとが接触した時点でロック機構が働くため、急制動や衝突が生じた際に、ロック機構が働くまでの作動時間が短くなり、安全性の向上を図ることができる。
その他の構成、作用、効果については、上述した第1〜第3の実施形態に係る支持装置10,10A,10Bと同様である。
【0043】
次に、本発明のチャイルドシート支持装置に係る第5の実施形態について、図14、および図15を参照して説明する。本実施形態に係る支持装置10Dは、固定部12と可動部14を有する基本構成は、上述した第1〜第4の実施形態に係る支持装置10,10A,10B,10Cと同様としつつ、次の構成を異ならせている。すなわち、第1〜第4の実施形態に係る支持装置10〜10Cが、2本一対の固定部12を備えているのに対して、支持ケース24を介して1本の可動部14を支持する構成としていたのに対し、本実施形態に係る支持装置10Dは、1本の固定部12により、1本の可動部14を支持する構成としている。
【0044】
したがって、本実施形態に係る支持装置10Dは、支持ケース24を備えていない。一方で、固定部12、可動部14は共に、その基本的な形態は、上述した第1〜第4の実施形態に係る支持装置10〜10Cと同様である。すなわち、固定部12は、車両進行方向へ延設される部分と車両フロア側へ延設される部分を備えている。そして、可動部14は、ストレート構造としている。
【0045】
本実施形態では、可動部14を固定部12に収容する構成を採る。そのため、固定部12の断面の面積は、可動部14の断面の面積よりも大きくなるように構成されている。また、固定部12と可動部14の断面幅の差は、少なくとも、図15に示すように、固定部12の内部に収容された可動部14が、固定部12の下端を基点として傾斜可能となるだけあれば良い。
【0046】
また、本実施形態では、支持ケース24が廃されたことより、ストッパ36と貫通孔18(波状面18aや歯部18b、摩擦面18cを含む)との配置関係が逆転している。すなわち、本実施形態では、可動部14にストッパ36aが設けられ、固定部12に貫通孔18dが設けられている。貫通孔18dは、可動部14の先端が倒れ込む方向に配置されるため、固定部12を取り付けた状態において背面となる位置に設けられている。
【0047】
これに対し、ストッパ36aは、可動部14の先端側に設けられる。そして、押圧プレート34も、可動部14の先端側に設けられている。また、図14図15に示すように、固定部12の下端側にフック12aを設けると共に、可動部14の先端側に梁20を設け、このフック12aと梁20の間に付勢部材としてのバネ(不図示)を設けるようにすることで、車両フロア方向へ可動部14を付勢させることが可能となる。なお、可動部14には、取付前面側に、フック12aを挿入させた状態でスライドを可能とするためのスリット16aを設けるようにする。
【0048】
このような構成とした場合であっても、上記第1〜第4の実施形態と同様に、チャイルドシート取付者による支持装置(支持脚)の長さ調整を不要とし、安全性の向上を図ることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、いずれも、急制動や衝突により、チャイルドシート50に慣性力Fが働いた際に、支持装置10〜10Dの可動部14が傾斜することにより、ロック機構が作動する旨記載した。しかしながら、ロック機構は、次のような構成のものであっても良い。
【0050】
図16、及び図17に示す例は、支持ケース24を備えるタイプの支持装置10Eである。そして、ストッパとして、爪ではなく、振子36bを採用している。そして、可動部14は、支持ケース24に対して傾斜しないように支持されている。
【0051】
このような構成の支持装置10Eでは、定常状態では、上記実施形態と同様に、可動部14が車両フロア側へ付勢されており、その長さが自動調整されるように構成されている。一方、急制動や衝突などが生じた場合には、慣性力により、ストッパとしての振子36bが、回転中心を基点に、進行方向へ向けて回動する。回動した振子36bの先端が、可動部14の取付背面に設けられた貫通孔18に挿入されることで、ロック機構が働くこととなる。
【0052】
このような構成の支持装置10Eであっても、上記実施形態に係る支持装置10〜10Dと同様に、チャイルドシート取付者による支持装置(支持脚)の長さ調整を不要とし、安全性の向上を図ることができる。
【0053】
さらに、可動部14の取付背面に形成した貫通孔18に対してストッパを構成する要素を挿入するという構成では、図16図17に示した例のように慣性力Fを利用して作動する受動的な動作では無く、図18図19に示すように、駆動手段42を持つ能動的な動作のものとしても良い。
【0054】
すなわち、支持ケース24の内部に、センサー40と駆動手段42、およびストッパとしてのロックピン36cを備える構成とする。ここで、センサー40とは、例えば加速度センサーであれば良い。そして、加速度センサーにより検知される加速度に急激な変化が生じた場合に、駆動手段42に対して駆動信号を出力するようにする。
【0055】
駆動手段42は、例えばインフレーターなどの気圧式のものであっても良いし、電磁式のものであっても良く、駆動信号の受信により稼働し、内装されたロックピン36cを突出させることが可能な構成であれば良い。
【0056】
このような構成とした場合、センサー40により加速度の急激な変化が検知された場合、駆動手段42に対して駆動信号が出力される。駆動信号を受けた駆動手段42は稼働し、ロックピン36cを突出させる。駆動手段42から突出されたロックピン36cは、可動部14の取付背面に形成された貫通孔18に挿入され、ロック機能を働かせることとなる。
【0057】
なお、上記実施形態では、いずれも付勢手段としてのバネ22の作用により、自動アジャスト機構としての機能が生じるように記載した。しかしながら、自動アジャスト機構としての機能は、可動部14の自重により生じるものであっても良い。
【符号の説明】
【0058】
10,10A,10B,10C,10D,10E………支持装置、12………固定部、12a………フック、14………可動部、16………スリット、16a………スリット、18………貫通孔、18a………波状面、18b………歯部、18c………摩擦面、18d………貫通孔、20………梁、22………バネ、24………支持ケース、26………ケーシング、26a………フロントカバー、26b………バックカバー、26c………フック、28………アッパープレート、28a………固定部挿通孔、28b………可動部挿通孔、30………アンダープレート、30a………固定部挿通孔、30b………可動部挿通孔、32………ロックプレート、32a………位置決め片、34………押圧プレート、36………ストッパ、36a………ストッパ、36b………振子、36c………ロックピン、38………バネ、40………センサー、42………駆動手段、50………チャイルドシート、52………ベース、54………シート本体。
図1
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