(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版は、凹凸の代わりに親油性の画像部と親水性の非画像部とを備える。そして印刷に際しては、まず、湿し水によって印刷版の非画像部が湿潤されてその表面に水膜が形成され、次いでインキ組成物が印刷版に供給される。このとき、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
【0003】
そして、オフセット印刷は、印刷版の作製が比較的簡単でありながら、高い美粧性を備えた印刷物を得たり、大量の印刷物を短時間で得たりする分野に適するという特性を備える。そこで、オフセット印刷は、パンフレット、ポスター、カレンダー等といった高い美粧性が要求される分野から、新聞、雑誌、電話帳等といった高速かつ大量に印刷されることが要求される分野まで広く利用されている。
【0004】
これらの分野のうち、高速かつ大量に印刷することが必要な分野では、オフセット輪転機を用いるのが一般的である。オフセット輪転機では、印刷用紙を巻き取りの状態で用紙供給部に装着し、この巻き取りを巻き解くことで印刷用紙を印刷部へ供給し印刷を行う。印刷された印刷用紙は、裁断部で裁断を受けたあと、折り加工等といった必要な加工を受けて製品となる。このような印刷方法によれば、数万部から数十万部程度の印刷を一度に行うことができるので効率的である。そして、その印刷速度も1時間あたり、十万部以上という高速に達することもある。このような中、インキ組成物においても、高速印刷適性を付与した製品が数多く提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、オフセット輪転機で印刷される印刷物において、特に多くの部数が印刷されるものの代表として、新聞、雑誌、電話帳等を挙げることができる。これらの印刷物は、主として情報伝達を目的とするものであるので、高度な美粧性が要求される際に用いられる高級印刷用紙ではなく、紙質のやや劣る更紙等が主として用いられる。しかしながら、こうした用紙では、その表面強度が高級印刷用紙に比べて劣るので、印刷の際に、用紙の表面に存在する紙の繊維の一部が印刷機のブランケットに毟られてしまうことがある。
【0006】
用紙の表面から毟られた紙の繊維(紙粉)は、印刷機のブランケットや印刷版に滞留し、印刷物へのオフセット印刷用インキ組成物の良好な転写を妨害する。このように、印刷機のブランケットや印刷版に紙粉が滞留し堆積する現象はパイリングと呼ばれる。パイリングが発生すると、インキ組成物がかすれたような状態で印刷用紙に付着し、印刷物の商品価値が低下する。そして、こうした現象は、印刷部数が多くなればなるほど紙粉の堆積が累積し、顕著になる。そのため、印刷部数の多い上記新聞、雑誌、電話帳等の印刷では、パイリング現象を抑制させることが特に重要である。また、たとえ少部数しか印刷されないとしても、印刷物の美粧性が要求されるポスター等の印刷においてもパイリング現象を抑制させるべき事情は同じである。すなわち、パイリング現象の抑制というのは、オフセット印刷全般における重要な課題の一つといえる。
【0007】
このような背景から、例えば特許文献2には、インキ組成物の処方における工夫でパイリングを抑制することが提案されており、例えば特許文献3には、インキ組成物とともに用いられる湿し水の処方における工夫でパイリングを抑制することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インキ組成物の処方における工夫でパイリングを抑制するための方策の一つとして、インキ組成物中に含まれる樹脂成分量を低減させることが挙げられる。インキ組成物に含まれる樹脂成分は、着色成分である顔料を分散させるとともに、印刷後の紙面上に顔料を固定させるためのバインダーとして機能するものであるが、それと同時に、インキ組成物に粘性(粘り)を与える成分でもある。このため、インキ組成物に含まれる樹脂成分の量を低減させれば、インキ組成物の粘りが小さくなり、これに伴って印刷中における印刷用紙の毟られる程度が小さくなって紙粉の堆積、すなわちパイリングが抑制されると考えられる。
【0010】
しかしながら、樹脂成分は、樹脂分子による網目構造をインキ組成物中に形成させてインキ組成物における油成分の保持性を向上させるとともに、その油成分の用紙への浸透が過剰にならないようにするための目止め作用も備えるものである。したがって、インキ組成物に含まれる樹脂成分の量を単に低減させるだけでは、印刷後において、インキ組成物に含まれる油成分が用紙へ過剰に浸透する結果につながり、この浸透した油成分によって用紙が半透明に透けてしまって裏面の画像が表側から視認できてしまう「裏抜け」現象を生じる要因にもなる。このような現象を生じると、印刷物に形成された画像や文字情報が裏面の画像や文字情報とダブってしまって判読され難くなり、印刷物の商品価値が著しく低下することになる。
【0011】
また、インキ組成物中に顔料を分散させるための樹脂成分を減少させると、インキ組成物における顔料の保持性が低下し、特に親水性の体質顔料が印刷中にインキ組成物から抜け出て湿し水中へ移動する現象であるブリードを発生させる要因にもなりかねない。湿し水中に体質顔料がブリードすると、インキ組成物の特性が変化して印刷不良の原因になったり、ブリードした体質顔料が印刷版等に堆積してパイリングの原因になったりする可能性がある。
【0012】
これらに示すように、印刷適性を低下させること無く、インキ組成物中に含まれる樹脂成分の量を低減させる良い方法が無いのが現状である。本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、裏抜けや体質顔料のブリード等といった印刷適性の低下を抑制しながら、樹脂成分の含有量が低減されたインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、組成物の全体に対して0.3質量%以上の金属石鹸をインキ組成物に含有させることにより、インキ組成物に含まれる樹脂成分を7質量%以下という低配合量とした場合であっても印刷物の裏抜けやインキ組成物からの体質顔料のブリードを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、このような知見によりなされたものであり、以下のようなものを提供する。
【0014】
本発明は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂及び石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂成分を含むオフセット印刷用インキ組成物であって、上記樹脂成分の含有量が組成物全体に対して
4質量%以上7質量%以下であり、かつ組成物全体に対して0.3質量%以上の金属石鹸を含
み、当該金属石鹸が、ステアリン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、モンタン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに12−ヒドロキシステアリン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物である。
【0015】
上記金属石鹸に含まれる脂肪酸アニオンRCOO
−におけるRの炭素数が7以上30以下であることが好ましい。
【0016】
上記金属石鹸が、亜鉛塩、リチウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩又はマグネシウム塩であることが好ましい。
【0017】
上記金属石鹸に含まれる脂肪酸アニオンRCOO
−におけるRの炭素数が17以上27以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、裏抜けや体質顔料のブリード等といった印刷適性の低下を抑制しながら、樹脂成分の含有量が低減されたインキ組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の一実施形態について説明する。
【0021】
<オフセット印刷用インキ組成物>
本発明のインキ組成物は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂及び石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂成分を組成物全体に対して7質量%以下含み、0.3質量%以上の金属石鹸を含むことを特徴とする。本実施形態のインキ組成物は、上記の成分を必須の成分とするほか、通常のオフセット印刷用インキ組成物と同様に、着色成分である着色顔料や油成分を含む。以下、各成分について説明する。
【0022】
[樹脂成分]
樹脂成分は、後述の着色顔料を印刷用紙の表面で固定するためのバインダーとして機能する成分であり、また、そうした着色顔料等をインキ組成物中に分散させるために用いられる成分でもある。さらに、既に述べたように、樹脂成分は、樹脂分子による網目構造をインキ組成物中に形成させてインキ組成物における油成分の保持性を向上させるとともに、その油成分の用紙への浸透が過剰にならないようにするための目止め作用も備えるものである。そのため、特に、新聞印刷用や電話帳印刷用等のような浸透乾燥タイプのインキ組成物を用いた印刷において、樹脂成分は、印刷物における裏抜けの抑制に寄与する成分であるともいえる。このように、インキ組成物における樹脂成分は様々な役割を果たしているものであり、通常のインキ組成物では、組成物全体に対して少なくとも8質量%以上の樹脂成分が含まれるのが一般的である。
【0023】
しかしながら、樹脂成分は、上記のような寄与をもたらす反面、インキ組成物に粘性(粘り)を与える成分でもあるので、印刷中に印刷用紙の表面から紙粉を印刷版に呼び込む要因にもなる。こうして印刷版に呼び込まれた紙粉は、印刷版上でパイリングを形成させ、印刷不良の要因ともなる。そのような観点から、本発明では、インキ組成物中における樹脂成分の含有量を7質量%以下とする。これによりインキ組成物の粘性が低減されてパイリングの発生も抑制されることが期待されるが、インキ組成物中における樹脂成分の含有量を7質量%以下にすると、上述の各機能が減殺され、今度は印刷物における裏抜けなどの問題を生じさせる要因にもなる。
【0024】
本発明者らは、上記のようにインキ組成物における樹脂成分の含有量を低減させた際の弊害を抑制する方法について検討を重ねた結果、後述する金属石鹸をインキ組成物の全体に対して0.3質量%以上添加することにより、インキ組成物中における樹脂成分の含有量を7質量%以下とした場合であっても上記で述べた樹脂成分の各機能を補うことができ、印刷物における裏抜けや、インキ組成物に含まれる体質顔料のブリードを抑制できることを見出した。本発明は上記の知見をもとに完成されたものであり、本発明のインキ組成物は、樹脂成分の含有量が7質量%以下であるとともに、金属石鹸を0.3質量%以上含むことを特徴とする。金属石鹸の詳細については後述する。
【0025】
樹脂成分は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂及び石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。これらの樹脂は、通常のインキ組成物でも用いられるものだが、上記のように、本発明においてはこれらの樹脂成分をインキ組成物の全体に対して7質量%以下という低配合量で用いる点に特徴がある。これらの樹脂成分を2種以上用いてもよく、その場合は、2種以上であるこれらの樹脂成分の総量がインキ組成物の全体に対して7質量%以下となるようにする。インキ組成物の全体に対する上記樹脂成分の含有量は、6.5質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。また、インキ組成物の全体に対する上記樹脂成分の含有量の下限は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。これら樹脂成分の重量平均分子量としては、1000〜30万程度を好ましく例示することができる。
【0026】
これらの樹脂成分のなかでも、顔料分散性、印刷品質及び長時間にわたる安定な印刷適性といった観点からは、重量平均分子量が1万〜15万であるロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0027】
樹脂成分は、後述する油成分とともに加熱されることにより溶解され、ワニスとされた状態で使用される。ワニスを調製する際、樹脂を溶解させて得られた溶解ワニス中に金属キレート化合物等のゲル化剤を投入し、ゲル化ワニスとしてもよい。樹脂からゲル化ワニスを調製し、これをインキ組成物の調製に用いることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与することができるので好ましい。
【0028】
なお、上記の樹脂成分に加えて、アルキド樹脂、ギルソナイト等といった他の樹脂をインキ組成物に添加してもよい。これら他の樹脂を添加する場合、その添加された量は、上記樹脂成分の添加量である「7質量%以下」に加算されない。アルキド樹脂は、長鎖脂肪酸とアルコールとを反応させて得られる樹脂であり、着色顔料の分散性を向上させる性質を備える。このため、上記ロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂とアルキド樹脂とがしばしば併用される。このような併用を行う場合、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂の合計100質量部に対して、アルキド樹脂を3〜80質量部程度用いるのが好ましい。
【0029】
[金属石鹸]
金属石鹸は、金属と長鎖脂肪酸との塩であり、本発明のインキ組成物において0.3質量%以上含まれる成分である。金属石鹸は、インキ組成物に含まれる油成分に対して常温では溶解され難いが、加温下では溶解又は溶融されて混合する。そして、加温下で油成分中に溶解又は溶融された金属石鹸は、それが常温まで冷却されたときに析出し、油成分の全体にわたって網目状の構造を形成させる。この網目構造の内部に油成分が保持され、樹脂成分の低減によって低下した、インキ組成物における油成分の保持性や目止め効果(すなわち裏抜けの抑制効果)が補われる。また、この網目構造の存在により、インキ組成物における顔料成分等の分散性や保持性も向上し、インキ組成物に含まれる親水性の体質顔料が印刷中に湿し水にブリードすることが抑制される。
【0030】
金属石鹸を構成する金属としては、ナトリウム及びカリウム以外の金属が挙げられ、一般には、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛、リチウム、アルミニウム、カルシウム又はマグネシウムが好ましく挙げられる。
【0031】
金属石鹸を構成する脂肪酸としては、脂肪酸アニオンRCOO
−におけるRの炭素数が7以上30以下であるものを好ましく挙げることができる。このような脂肪酸として、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アニオンRCOO
−におけるRの炭素数が11以上30以下であるものがより好ましく、17以上27以下であるものがさらに好ましい。このような脂肪酸としては、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
【0032】
上記の金属及び脂肪酸のうち、好ましいもの同士を組み合わせた、ステアリン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、モンタン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに12−ヒドロキシステアリン酸のリチウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩からなる群より選択される少なくとも1つの金属石鹸は、インキ組成物に用いられる油成分をゲル化させる効果が高いものとなり、本発明において好ましく用いられる。
【0033】
また、金属石鹸のカチオンが2価の陽イオンであれば、1つの脂肪酸アニオンとの塩であるモノ脂肪酸塩であってもよいし、2つの脂肪酸アニオンとの塩であるジ脂肪酸塩であってもよく、金属石鹸のカチオンが3価の陽イオンであれば、1つの脂肪酸アニオンとの塩であるモノ脂肪酸塩であってもよいし、2つの脂肪酸アニオンとの塩であるジ脂肪酸塩であってもよいし、3つの脂肪酸アニオンとの塩であるトリ脂肪酸塩であってもよい。つまり、ステアリン酸アルミニウムを例にとれば、アルミニウムは3価の陽イオンとなるので、その金属石鹸としては、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウムの3種類が考えられ、いずれのものも好ましく用いることが可能である。
【0034】
上記の金属石鹸の中でも、インキ組成物となったときの経時変化を抑制できるとの観点や、良好な性状のインキ組成物が得られるとの観点からは、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム等が特に好ましく選択される。
【0035】
インキ組成物全体に対する金属石鹸の添加量は、0.3質量%以上である。添加量がこの範囲であることにより、樹脂成分の添加量が上記のように低減されていたとしても、それに伴う性能低下を金属石鹸の存在によって十分に補うことができる。インキ組成物全体に対する金属石鹸の添加量の下限は、0.5質量%が好ましく、0.8質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。また、インキ組成物の全体に対する金属石鹸の添加量の上限は、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。
【0036】
インキ組成物に添加される金属石鹸は、加温により一旦溶解又は溶融されることが必要である。この点、顔料成分、及びワニスとされた樹脂成分を加温された条件下で混合する際に金属石鹸を添加すれば、それらの混合物が冷却された後に混合物の全体にわたって金属石鹸の網目構造を形成させることができ、インキ組成物となった際に上記の効果を最大限に発揮できるので好ましい。
【0037】
[着色顔料]
着色顔料は、インキ組成物に着色力を付与するための成分(すなわち着色成分)であり、顔料成分の一つである。
【0038】
着色顔料としては、従来からインキ組成物に使用される有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
【0039】
このような着色顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等が例示される。
【0040】
着色顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して8〜30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、イエロー顔料を使用してイエローインキ組成物を、マゼンタ顔料を使用してマゼンタインキ組成物を、シアン顔料を使用してシアンインキ組成物を、黒色顔料を使用してブラックインキ組成物をそれぞれ調製するに際しては、補色として、他の色の顔料を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
【0041】
[油成分]
油成分は、上記樹脂成分を溶解させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために使用される。油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、これまでインキ組成物の調製に用いられてきたものを特に制限なく使用できる。
【0042】
本発明において、植物油には、植物油の他に植物油由来の脂肪酸エステル化合物が含まれてもよい。植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油や半乾性油等が例示される。また、植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記植物油に由来する脂肪酸のモノアルキルエステル化合物等が例示される。この脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく例示され、このような飽和又は不飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が好ましく例示される。脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく例示され、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく例示される。
【0043】
これらの植物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。植物油としては、大豆油、大豆油脂肪酸エステル等が好ましく例示される。インキ組成物における植物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して20〜60質量%程度を例示することができる。
【0044】
本発明において、鉱物油としては、溶剤とも呼ばれる軽質の鉱物油や、潤滑油状である重質の鉱物油等が挙げられる。
【0045】
軽質の鉱物油としては、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の0号ソルベント、同AFソルベント5号、同AFソルベント6号、同AFソルベント7号等が例示される。
【0046】
重質の鉱物油としては、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げることができる。これらの中でも、米国におけるOSHA基準やEU基準に適応させるとの観点からは、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものであることが好ましい。このような鉱物油としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のインクオイルH8、同インクオイルH35(いずれも商品名)、三共油化工業株式会社製のSNH8、同SNH46、同SNH220、同SNH540(いずれも商品名)等が例示される。
【0047】
これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。インキ組成物における鉱物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して0〜50質量%程度を例示することができる。なお、財団法人日本エコマーク事務局が認定する、インキ組成物におけるエコマーク基準(類型名:印刷インキVersion2.8、基準:インキ組成物中の石油系溶剤が30質量%以下)に適合させるとの観点からは、インキ組成物における鉱物油の含有量を30質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、印刷性能を向上させる等の観点から、必要に応じて上記の各成分の他に各種成分を添加することができる。このような各種成分としては、無色顔料、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、酸化防止剤等が例示される。
【0049】
無色顔料は、体質顔料とも呼ばれ、顔料成分の一つである。この無色顔料は、インキ組成物における流動性等といった特性を調節するために好ましく使用される。無色顔料としては、クレー、タルク、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ベントナイト、酸化チタン等が例示される。無色顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0〜33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
【0050】
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するに際しては、従来公知の方法を用いることができる。このような方法としては、上記の各成分を加温下で混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉することで着色顔料を分散させた後、必要に応じて油成分や添加剤(酸化防止剤、アルコール類、ワックス類等)等を加えてよく撹拌し、さらに粘度調整することを例示できる。
【0051】
本発明のインキ組成物は、上記のように、樹脂成分が低減されているのでパイリングを抑制する効果に優れ、また、裏抜けを十分に抑制する効果を備える。そのため、本発明のインキ組成物は、更紙等の印刷用紙に対して浸透乾燥方式で印刷されることの多い新聞印刷や電話帳印刷等において好ましく用いられる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明のインキ組成物をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
[ワニスの調製]
冷却管、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10万、荒川化学工業株式会社製)、市販のアルキド樹脂、大豆油、及び鉱物油(三共油化工業株式会社製、SNH540)を表1の処方で仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を表1の処方で仕込み、その後170℃で60分間保持して、ワニス1〜4を得た。なお、表1に記載した配合量は質量部である。
【0054】
【表1】
【0055】
[インキ組成物の調製]
表2〜5に示す処方で大豆油及び溶剤を除く各種の材料を80℃で20分間混合し、三本ロールで練肉した。その後、表2〜5に示す処方で大豆油及び溶剤を添加して混合することで実施例1〜19、参考例1及び比較例1〜3のインキ組成物を調製した。表2〜5に記載した配合量はいずれも質量部である。表2〜5において、「ワニス1」〜「ワニス4」は上記手順にて調製されたワニスであり、「顔料」はカーミン6Bのマゼンタ顔料であり、カオリンは粉末状のカオリナイトであり、「炭酸カルシウム」は白石カルシウム株式会社製の白艶華CCであり、「溶剤」はAFソルベント5号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)である。また、表2〜5に示すように、金属石鹸としては、ジオクチル酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸カルシウム、ジステアリン酸マグネシウム、ジステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ジモンタン酸アルミニウム又はジ−12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム(表3及び4では、ジ12OHステアリン酸Alと表記した。)を用いた。なお、参考例1のインキ組成物は、通常のインキ組成物と同等程度の樹脂成分が含まれており、各種評価における目標となるものである。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
[裏抜けの評価]
各実施例、参考例及び比較例のインキ組成物についての裏抜けの評価を行った。まず、インキ組成物の試料0.1ccをRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いて更紙(王子製紙株式会社製、SL+)に展色し、その用紙を室温で1時間放置してから、用紙における展色箇所の裏抜け状態を目視で観察した。そして、その裏抜けの状態を下記の評価基準で評価した。なお、各評価基準の間となる評価結果については、4.5や3.5等のように0.5刻みの評価とした。その結果を表6及び7に示す。
5:裏抜けは観察されなかった
4:裏抜けはほとんど観察されなかった
3:僅かな裏抜けが観察されたが、実用上は全く問題無いレベルであった
2:若干の裏抜けが観察された
1:著しい裏抜けが観察された
【0061】
[ブリード評価]
各実施例、参考例及び比較例のインキ組成物には親水性の体質顔料であるカオリンが含まれている。そこで、インキ組成物が水に接触した際の親水性顔料の保持性、すなわちインキ組成物に含まれるカオリンがどの程度水中にブリードするかを各実施例及び比較例のインキ組成物について評価した。まず、試験対象であるインキ組成物50gと精製水100gとをデューク乳化試験機(DUKE乳化試験機:INK−WATER EMULSIFICATION TESTER,DUKE CUSTOM SYSTEMS INC.MODEL D−10E)に仕込み、30分間混合した。その後、容器に残った水を取り出し、その水の濁りを目視で観察することにより、カオリンのブリードを判定した。評価基準は下記の通りであり、その結果を表6及び7に示す。
○:水は透明であり、カオリンのブリードは無い
△:水がやや濁った
×:水が著しく濁った
【0062】
[経時安定性の評価]
各実施例、参考例及び比較例のインキ組成物についての経時安定性を評価した。この試験は、高温で放置したときのインキ性状(流動性)の変化を観察するものである。試験対象となるインキ組成物を60℃の恒温槽にて1週間放置し、3ccのインキ組成物を垂直ガラス板にて15分間流動させたときの流度(mm)を放置前後のインキ組成物について観察した。そして、放置前における流度に対する放置後における流度の比(%)を算出し、下記の基準で評価した。その結果を表6及び7に示す。
○:放置前後における流度の比が75〜125%の範囲である
×:放置前後における流度の比が75〜125%の範囲外である
【0063】
[配管適性の評価]
オフセット輪転印刷機を用いる場合を初めとして、近年の印刷工場では、印刷機へのインキ組成物の供給を配管により行うことが多い。このような場合、印刷終了後から例えば一晩経った後も、インキ組成物が配管の中で良好な流動性を維持していることが望ましい。しかしながら、インキ組成物には時間の経過とともに流動性を失っていくチキソトロピー性があるので、インキ組成物の処方によっては時間が経過する間にその流動性が失われてしまい、再度流動性が回復するまでにポンプ負荷の増大やインキ供給の不足等の事態を生じがちである。このため、各実施例及び比較例のインキ組成物における配管適性を評価した。
【0064】
配管適性の評価は、試験対象となるインキ組成物を室温にて1日放置し、40ccのインキ組成物を傾斜ガラス板にて1時間流動させたときの流度(mm)を放置前後のインキ組成物について観察することにより行った。そして、放置前後における流度の比(放置後/放置前;%)を算出し、下記の基準で評価した。その結果を表6及び7に示す。
◎:放置前後における流度の比が70%以上100%以下の範囲であり、良好である
○:放置前後における流度の比が50%以上70%未満の範囲であり、実用上は全く問題無いレベルであった
×:放置前後における流度の比が50%未満である
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
表6及び7に示すように、樹脂成分がインキ組成物中に7質量%以下となっても、金属石鹸をインキ組成物中に0.3質量%以上添加することにより裏抜けやブリードに関する性能を維持できることがわかる。また、金属石鹸としてモノステアリン酸アルミニウムを用いたものは、同じくトリステアリン酸アルミニウムを用いたものよりも経時安定性が優れることがわかる。なお、金属石鹸としてトリステアリン酸アルミニウムを用いた実施例7のインキ組成物であっても、その経時安定性の程度は印刷への使用に支障のないものであった。さらに、金属石鹸としてトリステアリン酸アルミニウム、ジオクチル酸アルミニウム、又はジステアリン酸アルミニウムを用いると、インキ組成物の配管適性が特に優れたものになることがわかる。