【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態のカートリッジ式空気電池システム(以下、空気電池システムと言う)1を示した斜視図である。
この空気電池システム1は、複数の空気電池10(後述する
図5、
図6など)を収容し、これら空気電池10の発電電力を不図示の電力利用機器に供給する電源として機能し、組電池や電池パックとも称する。本空気電池システム1は、各空気電池10に注液する液体である電解液を貯留する注液装置80(後述する
図11、
図12など)を別途備えており、電源を利用したいときに、その電解液を注液装置80から各空気電池10に移すことで、停電時でも電源を利用することができる。
つまり、この空気電池システム1は非常用途に好適である。但し、非常用途に限定する必要はなく、様々な用途に用いる簡易電源として広く利用可能である。
なお、本実施形態では、空気電池10にマグネシウム空気電池を使用するので、注液装置80には塩化ナトリウム水溶液などが貯留される。
【0012】
(空気電池システム)
図1に示すように、空気電池システム1は、ケース41と、ケース41に装填される複数のカートリッジ式空気電池(以下、カートリッジと言う)50とを備える。各カートリッジ50は同一形状であり、不図示の空気電池10をそれぞれ収容する。
空気電池システム1に収容される空気電池10の数は、要求される仕様に応じて適宜に変更される。
図1の例では、各カートリッジ50に2個の空気電池10をそれぞれ収容し、計5個のカートリッジ50をケース41に一列に並べて装填することによって、計10個の空気電池10を収容している。
【0013】
図2は空気電池システム1の上面図である。また、
図3(A)は空気電池システム1の正面図、
図3(B)は底面図、
図3(C)は左側面図である。
図2及び
図3(A)〜
図3(C)に示すように、前記ケース41は、下面視で略長方形の底板42と、底板42の対向する一対の長辺部から立ち上がって正面及び背面を構成する一対の幅広側板43と、底板42の対向する一対の短辺部から立ち上がって左右側面を構成する一対の幅狭側板44とを備え、上方に開口する矩形の有底箱形状に形成されている。
【0014】
図3(B)に示すように、前記底板42には、この空気電池システム1の正極端子と負極端子を構成する一対の外部端子45、46が設けられている。
この底板42には、上方に凹んで長手方向に連続する上げ底部42Aが形成されており、この上げ底部42Aの下面に長手方向に間隔を空けて上記外部端子45、46が配置される。外部端子45、46には、公知のコネクタ端子が採用され、外部から電源線を容易にコネクタ接続可能である。
この一対の外部端子45、46から空気電池システム1の発電電力が供給され、電源線を介して不図示の電力利用機器に電力を供給することができる。なお、外部端子45、46の出力を電力変換器(DC/DCコンバータやDC/ACコンバータなど)を介して外部に出力するように構成しても良い。
【0015】
一対の幅広側板43は、カートリッジ50の並び方向(図中、α方向)に延びる側板であり、正面視又は背面視で長方形の同一形状に形成されている。これら幅広側板43には、
図3(A)に示すように、左右に間隔を空けて比較的大型の貫通孔43Aが2個形成されており、ケース41内外で空気を流通可能にする。
これら貫通孔43Aは、カートリッジ50間に開口する後述する凹み部57間の隙間Sを直接外空間に開放すべく左右方向に延びる長孔に形成されており、凹み部57間の隙間Sに外気を効率良く流通させる。この凹み部57間には、後述するように空気極13が露出するため、上記貫通孔43Aにより空気極13に空気を十分に供給することができる。つまり、貫通孔43Aは空気極13に通風する空気極通風口として機能する。
【0016】
また、これら貫通孔43Aにより、空気電池システム1内のカートリッジ50周囲に外気を効率良く流すことができ、カートリッジ50の空冷効果も向上させることができる。
一対の幅広側板43の上部は内側に折り曲げられ、この内側に折り曲げられた部分に、カートリッジ50の蓋部51から張り出す一対の張り出し部51A、51B(
図1、
図2)がそれぞれ載置される。これら一対の張り出し部51A、51Bは不図示の締結部材(例えば締結ボルト)を介して幅広側板43に固定可能であり、これによってカートリッジ50をケース41に固定可能である。
【0017】
図3(C)に示すように、一対の幅狭側板44は、カートリッジ50の並び方向αに直交して両端のカートリッジ50を覆う側板であり、左右側面視で長方形の同一形状に形成されている。これら幅狭側板44にも複数の貫通孔44Aが形成されている。
ここで、
図4は空気電池システム1の側断面図(
図2のIV−IV断面図)を示している。
図4に示すように、幅狭側板44に設けられた複数の貫通孔44Aは、両端のカートリッジ50の後述する凹み部57に対向する領域に設けられており、凹み部57内に露出する空気極13に外気を流通自在にする。つまり、貫通孔44Aは、両端のカートリッジ50の各幅狭側板54に対向する凹み部57側に露出する空気極13に外気を供給する空気極通風口として機能する。また、これら貫通孔44Aにより、両端のカートリッジ50を効率良く空冷することができる。
【0018】
このように、ケース41の全ての側板43、44に設けられた貫通孔43A、44Aにより、全てのカートリッジ50内の空気電池10の空気極13に対し、空気を十分に供給することができる。これにより、全ての空気電池10の電池反応の促進や安定化を図ることができる。さらに、各カートリッジ50の空冷条件がほぼ同じとなるので、各カートリッジ50の温度のばらつき、つまり、各空気電池10の温度のばらつきを抑え易くなる。従って、各空気電池10の発電電圧などのばらつきを抑え易くなり、電源としての安定化を図ることができる。
なお、各貫通孔43A、44Aの数や形状の変更は容易であるため、設置条件に応じて各貫通孔43A、44Aを調整し、温度のばらつきなどを抑え易い。
【0019】
図4に示すように、各幅狭側板44には、両端のカートリッジ50に向かって突出してカートリッジ50に当接する上下一対の当接部44H、44Lが設けられている。上側の当接部44Hは、カートリッジ50の凹み部57よりも上の領域に面接触し、下側の当接部44Lはカートリッジ50の凹み部57よりも下の領域に面接触する。これによって、カートリッジ50の凹み部57を避けて両端のカートリッジ50を押さえて位置決めでき、カートリッジ50の移動(幅狭側板44側への移動)や変形(幅狭側板44側への膨張)を抑制することができる。
また、各当接部44H、44Lがカートリッジ50に面接触するので、カートリッジ50を出し入れする際に上記当接部44H、44Lがガイドとなり、カートリッジ50を出し入れし易くなる。
【0020】
(空気電池)
図5は空気電池10の正面図(空気極13側から見た図)であり、
図6は
図5のV−V断面図を示している。
図6中、符号ULは電解液の液面を示している。
図5及び
図6に示す上下方向は、空気電池システム1設置時の上下方向と一致するが、左右及び前後方向は空気電池10単体での方向であり、空気電池システム1設置時の状況によって各方向は変わることもある。
この空気電池10は、折り曲げ自在な1枚のシート材を2つ折りして重ね、その両側縁を接合し、折り曲げ加工して形成された中空箱形状の電池ケース11を備えている。この電池ケース11の前壁部22に空気極13が装着され、この空気極13と対向するように内部中央に金属極15が収容されている。
【0021】
詳述すると、この電池ケース11は、薄型の直方体形状に形成され、電池ケース11の底面を構成する底板部21と、前面を構成する前壁部22と、後面を構成する後壁部23と、左右側面を構成する左右の側壁部(左壁部、右壁部)24と、上面を構成する上板部25とを一体に有している。前壁部22、及び後壁部23は、上下方向よりも左右方向が長い同一形状の面(横長面)であって、互いに平行に配置され、電池ケース11の中で最も大きい面を構成している。
【0022】
空気極13は、空気極13の基材となる矩形状の銅メッシュ(金属メッシュ、金網とも称する)13Aに、カーボンとテフロン(登録商標)を混合した素材を、ローラープレス機などを用い所定厚さのシート状とした後、所定時間、所定温度で乾燥、焼成させ、前記銅メッシュと略同等の大きさに裁断したシートを両面から圧迫(プレス)し狭持したものであり、通気性と非透水性(非透液性に相当)とを有している。この空気極13は、前壁部22に設けられた開口部22K(
図6)を覆うように前壁部22の外部に露出する面(外面)に熱融着や接着剤により取り付けられる。
すなわち、前記シート状とした素材は、外部の空気は電池ケース11の内部に通気可能であり、電池ケース11内部の電解液は外部に透過不能な非透水性を有するものである。なお、空気極13は、上記の構成に限らず、公知の構成を広く適用可能である。
【0023】
また、銅メッシュ13A(
図5)の一部はシート状とした素材の外に露出し、この外部に露出する部分は、空気極13の端子13Tとして用いられる。
図6に示すように、この端子13Tは空気電池10の下部に設けられ、より具体的には、開口部22Kよりも下方に設けられている。
底板部21は、
図6に示すように、側面視で下方凸のV字形状に形成される。金属極15の下端は、底板部21の傾斜に案内されて下方凸の部分21Tに嵌り、金属極15の下端が位置決めされる。
【0024】
前壁部22、及び後壁部23の上端は折り曲げられて上板部25を形成する。上板部25は、前壁部22、及び後壁部23側から金属極15の上部を挟持するように交互に金属極15の手前で或いは金属極15を超えて下方に折り曲げられた折り曲げ部25A、25B、25C、25Dを有し、これら折り曲げ部25A〜25Dによって金属極15の上部を支持する。
なお、折り曲げ部25A、25Cが前壁部22側を折り曲げた部分であり、折り曲げ部25B、25Dが後壁部23側を折り曲げた部分である。金属極15の両側には、同一幅の隙間SF、SRが設けられ、これら隙間SF、SRに対応する空間内に電解液が満たされる。
【0025】
上記電池ケース11を形成するシート材は、紙を含有したシート材であり、熱融着性樹脂(例えば、ポリエチレン(PE))により少なくとも内面がラミネート加工された紙、つまり、ラミネート紙が用いられる。このため、内面側が非透液性に形成され、電解液が外部に染み出す(漏れる)ことがなく、また、金属缶や樹脂製容器を使用する場合に比して、軽量かつ安価である。なお、シート材の表裏両面をラミネート加工した両面ラミネート紙を用いても良い。
また、熱融着性樹脂を用いるため、熱融着により接合して液密な箱形状に形成することができる。シート材中の紙の比率としては、好ましくは50%を超えるようにする。紙の比率を50%超過とすることで、例えば紙ゴミとして廃棄可能になる。
【0026】
金属極15は、前壁部22と後壁部23との間であって、各壁部22、23から離間した位置にて空気極13と平行に配置され、電池使用状態では各極板は鉛直方向に配置される。
この金属極15には、マグネシウム合金が用いられ、電解液には、水系の電解液、例えば、塩化ナトリウム水溶液が使用される。なお、金属極15に、亜鉛、鉄、アルミニウムなどの金属またはその合金を用いることが可能である。金属極15に亜鉛を用いた場合は、電解液に水酸化カリウム水溶液を用いるようにすれば良く、金属極15に鉄を用いた場合は、電解液にアルカリ系水溶液を用いるようにすれば良い。また、金属極15にアルミニウムを用いた場合は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む電解液を用いるようにすれば良い。
なお、上板部25には電解液を注液するための孔部と電池反応により発生する反応ガス(水素ガス)を排気する為の孔部が少なくとも1個ずつ形成されている。また、予め空気電池10内に食塩(塩化ナトリウム)などを入れておくことで、電解液として塩化ナトリウムなどを使用することなく、水を使用することが可能であり、非常用途に好適である。
【0027】
(カートリッジ)
図7及び
図8はカートリッジ50を異なる方向から見た斜視図である。また、
図9はカートリッジ50の正面図、
図10は側断面図(
図9のVI−VI断面図)である。なお、
図7〜
図10の上下方向は、空気電池システム1設置時の上下方向と一致するが、左右前後方向は空気電池システム1設置時の状況によって各方向は変わることもある。また、カートリッジ50は正面と背面の中心LC(
図10)を基準にして対称形状に形成されている。
【0028】
カートリッジ50は、2個の空気電池10を前後方向に沿う並び方向αに並べて収容するカートリッジケース53を備えている。カートリッジケース53は、樹脂又は金属で形成されて空気電池10よりも高剛性に形成された部材であり、中心LCを基準にして分割された一対の分割片54F、54Rと、分割片54F、54Rの上方開口を覆う蓋部51とを備えている。
一対の分割片54F、54Rは、短側面中央部の一方に切欠き(貫通孔)、他方に前記切欠きに勘合する勘合用突起が形成された係止構造54A(
図7、
図8)で互いに連結され、上方が開口する略薄型の有底箱形状を形成する。カートリッジ50に収容される2個の空気電池10は、互いの空気極13を各分割片54F、54Rの側壁部55に向けて収容され、空気極13を、側壁部55に設けられた矩形の開口部55Aを介して外部に露出させる。
【0029】
図10に示すように、各分割片54F、54Rには、カートリッジ50に収容された空気電池10の前壁部22に当接する上下の当接部55H、55L、空気電池10が載置される底部55B、及び、2個の空気電池10間(後壁部23間)に介在して空気電池10間の隙間を規定する隙間規定部材55Cが設けられる。これによって、空気電池10がカートリッジ50に位置決めされる。
【0030】
蓋部51には、左右に間隔を空けて円形に凹む一対の凹部51E、51Fが設けられる。各凹部51E、51Fには、各空気電池10の上板部25に設けられた孔部にそれぞれ挿通される一対の挿通部51P、51Qがそれぞれ形成されており、一方の挿通部51Pは、凹部51E、51Fを上下に貫通する貫通管に形成され、他方の挿通部51Qは、各凹部51E、51Fの底部裏面に形成された円筒状のもので、その円筒側壁に穴が形成されて蓋部51と空気電池10との間の空間内に開口し、凹部51E、51Fを上方には貫通しない非貫通管に形成されている。
【0031】
これら凹部51E、51Fには、注液装置80からの電解液が供給され、貫通管に形成された挿通部51Pを通って電解液が空気電池10内に供給される。この電解液の流入に伴い、空気電池10内の空気は、非貫通管に形成された挿通部51Qを通って蓋部51と空気電池10との間の空間内に排気され、電解液の流入を円滑に行うことができる。
【0032】
また、空気電池10から電池反応によるガス(以下、反応ガスと言う)が排出された際に、この反応ガスを、両挿通部51P、51Qを介して空気電池10外に排出することができる。ここで、非貫通管の挿通部51Qを通った内部ガスや空気は、蓋部51と空気電池10との間の空間内に排出され、蓋部51の凹部51E、51F以外の領域に設けられた孔部51K(
図7、
図8)を通って上方に排出される。このように空気電池10からの内部ガス(本実施形態では水素)を上方に排出できるので、空気より軽い内部ガスを効率良く排出し、カートリッジ50内に残留する事態を抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、
図4に示すように、空気電池システム1のケース41にカートリッジ50を装填した場合に、各カートリッジ50の側壁部55が、隣接するカートリッジ50の側壁部55に対向する。このカートリッジ50同士で対向する側壁部55の外表面は、
図4、
図10などに示すように、カートリッジ50内側に向けて凹む凹み部57を有しており、この凹み部57に、空気極13を露出する開口部55Aが形成されている。
換言すると、空気極13を外部に露出させる開口部55Aを含む領域が、カートリッジ50内側に向けて凹む凹み部57に形成されており、これら凹み部57により、カートリッジ50同士で対向する側壁部55が接触、或いは近接しても、空気極13に空気を供給する隙間S(
図1、
図3、
図4)を確保することができる。
【0034】
また、各カートリッジ50の側壁部55の外表面は、凹み部57がカートリッジ50内側に向けて凹む円弧面に形成され、凹み部57よりも上下に位置する面が、対向するカートリッジ50同士で当接する当接部58H、58Lに形成されている。上下の当接部58H、58Lは、垂直面に形成され、全体を面接触させることができる。
凹み部57を円弧面に形成することにより、電池反応による反応ガスで空気電池10を膨張させる力が生じても円弧面で分散し、凹み部57に応力集中する事態を避けることができる。従って、凹み部57の変形を回避することができる。
また、カートリッジ50同士の上下の当接部58H、58Lが互いに当接するので、各カートリッジ50を位置決めできるとともに複数のカートリッジ50をコンパクトに配置できる。これによって、各カートリッジ50の配置に必要なスペースが最小で済み、空気電池システム1の小型化に有利である。
【0035】
さらに、カートリッジ50同士で対向する側壁部55には、
図7〜
図9に示すように、カートリッジ50内の空気電池10と電気的に接続される一対のカートリッジ50の外部端子61A,61Bが設けられている。
一方のカートリッジ50の外部端子61Aは、側壁部55の下部領域である当接部58Lの領域に設けられ、カートリッジ50内の2個の空気電池10の一方の空気極13と電気的に接続される。
【0036】
また、他方の外部端子61Bは、反対側の側壁部55の下部領域である当接部58Lの領域に設けられ、カートリッジ50内の他方の空気電池10の金属極15と電気的に接続される。
そして、複数のカートリッジ50を
図1に示すようにケース41に装填すると、隣接するカートリッジ50においては、各カートリッジ50の一方の外部端子61Aは一方に隣接するカートリッジ50の外部端子61Bに接触し、他方の外部端子Bは他方に隣接するカートリッジ50の外部端子61Aと接触し、複数のカートリッジ50が互いに隣接するカートリッジ50と外部端子61A,61Bで接触することとなる。
なお、カートリッジ50内の2個の空気電池10は不図示の導通部材を介して予め直列に接続されている。これらによって、
図1に示す状態では、全ての空気電池10が直列接続される。
また、直列接続された空気電池10の正極端子(空気極13の端子13T)と負極端子は、空気電池システム1の正極端子と負極端子を構成する一対の外部端子45、46にそれぞれ接続することで、負荷などに電力を供することが可能である。
【0037】
空気電池10と一方のカートリッジ50の外部端子61Aの接続構造について具体的に説明する。
図9に示すように、一方のカートリッジ50の外部端子61Aが設けられるカートリッジ50の側壁部55の内面には、空気極13の下部に設けられた端子13Tに対応する領域に板状の導通部材(接触部)61が設けられる。
この導通部材61は、一方のカートリッジ50の外部端子61Aに電気的に接続され、空気極13の端子13Tと押圧接触する。これによって、空気極13と外部端子62とを容易に導通させることができ、空気電池10がカートリッジ50に挿入されると、空気極13とカートリッジ50の外部端子61Aとが自動的に導通する。
なお、
図9の例では、導通部材61を端子13Tよりも大型の板形状に形成した場合を示したが、これに限らず、導通を確保できる範囲で導通部材61の形状を適宜に変更しても良い。
【0038】
空気電池10と他方の外部端子61Bの接続については、空気電池10に、金属極15から延びる配線を予め設けるとともに、カートリッジ50に、他方の外部端子61Bから延びる配線を予め設けておき、両配線の端部に公知の接続端子(コネクタ、ギボシなど)を設け、容易に着脱自在にする接続構造が採られる。なお、この接続構造に限らず、公知の他の接続構造を広く適用可能である。
また、カートリッジ50内の空気電池10同士の接続、つまり、カートリッジ50の外部端子61A、61Bに接続されない空気極13と金属極15との接続については、空気極13の端子13Tに配線を設け、これと金属極15から延びる配線を接続することにより接続した。
【0039】
なお、本実施形態では、全ての空気電池10を直列に接続する場合を説明したが、並列に接続しても良い。例えば、カートリッジ50内の2個の空気電池10を並列接続する場合には、両方の空気極13を一方の外部端子61Aに接続し、両方の金属極15を他方の外部端子61Bに接続するようにすれば良い。このようにして空気電池10を直列、並列、又は直並列(直列接続と並列接続の組み合わせ)に接続することが可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の空気電池システム1においては、ケース41に複数のカートリッジ50を装填した場合に、各カートリッジ50の外部端子61A、61B同士が接触して空気電池10が直列に接続されるので、電池接続の容易化とシステム全体の小型化を図り易くなる。
しかも、カートリッジ50は、いずれかの外表面を他のカートリッジ50の外表面に接触させてケース41内に配置され、接触する外表面同士のそれぞれにカートリッジ50の外部端子61A、61Bが設けられるので、外部端子61A、61Bをカートリッジ50から大きく張り出すことなく外部端子61A、61B同士を接触させ易くなる。これによって、カートリッジ50の外部端子61A、61Bをコンパクト化できるとともに、カートリッジ50の配置に必要なスペースを最小にでき、空気電池システム1の小型化に有利となる。
【0041】
また、複数のカートリッジ50は、ケース41内にて一方向に配列され、隣接するカートリッジ50同士で対向する外表面に、カートリッジ50の外部端子61A、61Bが設けられるので、カートリッジ50をコンパクトに配置できるとともにカートリッジ50の外部端子61A、61B同士を接触させ易くなる。
さらに、カートリッジ50同士で対向する外表面は、外表面を有するカートリッジ50内側に向けて凹む凹み部57を有し、凹み部57には、空気電池10の空気極13が露出するので、カートリッジ50同士を近接配置しても凹み部57の分だけ隙間Sが空き、空気極13に空気を供給し易くなる。
【0042】
また、カートリッジ50同士で対向する外表面は、互いに当接する当接部58H、58Lと、これら当接部58H、58Lが当接した状態でカートリッジ50間に隙間Sを確保する凹み部57とを備えるので、当接部58H、58Lにより両カートリッジ50を位置決めしながら凹み部57により空気を供給する隙間Sを確保できる。
また、カートリッジ50の外部端子61A、61Bは当接部58Lに設けられるので、凹み部57に設ける場合を比べて、各カートリッジ50の外部端子61A、61B同士の接続を容易に行うことができる。
【0043】
(注液装置)
次いで、注液装置80について説明する。
図11は注液装置80を上方から見た図であり、
図12は注液装置80を空気電池システム1と共に示した図であり、
図12(A)は
図11のVII−VII断面図、
図12(B)は空気電池システム1の側面図である。注液装置80は、上方が開口する有底箱形状に形成され、空気電池システム1の上に載置される。この注液装置80は、下面視で略長方形の底板82と、底板82の周縁から上方に立ち上がって注液装置80の正面、左右の側面、及び背面を形成する複数の側板部84とを備えている。
注液装置80の上部には、短辺側の側板部間を架橋する取っ手部86が設けられ、この取っ手部86をユーザが把持することで、ユーザが注液装置80を容易に持ち運ぶことができる。この取っ手部86は、金属材などの剛性を有する材料で形成されており、注液装置80を補強する補強部材としても機能する。
【0044】
また、注液装置80には、空気電池10毎の電解液の注液量を一定にするため、
図11、及び
図12(A)に示すように隣接する空気電池10間の直上に位置する部分に、仕切り板81を設けている。仕切り板81は、カートリッジ50の並び方向αに間隔を空けて上方に立設して注液装置80内を10個の空間に仕切り、空気電池システム1が有する10個の空気電池10毎の電解液を個別に貯留可能にする。
仕切り板81の高さは、空気電池10に注液する電解液量と同等の体積となるように調整することが好ましい。なお、本実施形態では仕切り板81の高さと面一になるまで電解液を注液することで、空気電池10に必要量の電解液を注液することが可能であり、その都度、電解液の注液量を測定しなくても良い。
【0045】
図12(A)に示すように、底板82には、カートリッジ50の並び方向αに間隔を空けて上下に貫通する注液口91が形成されている。これら注液口91は、空気電池10と同じ数(10個)だけ設けられ、底板82上の空間内に貯留された電解液(塩化ナトリウム水溶液、又は水など)を下方の空気電池10に向けて排出する排出口となる。
各注液口91は、上方から挿入される栓92によってそれぞれ閉塞自在であり、栓92で閉塞することによって注液装置80に貯留された電解液を貯留した状態に保持する。注液口91と同数(10個)だけ設けられた栓92は、カートリッジ50の並び方向αに延びる棒状の連結部材93Bと栓92の開閉(上下)方向に延びる棒状の延長部材93Cに支持されている。前記連結部材93Bと延長部材93Cとは、締結部材93Aによって固定され、また延長部材93Cと栓92とは、固定部材93Dで夫々固定されている。前記取っ手部86と前記連結部材93Bとは不図示の操作部材を介して連結されており、ユーザが上記操作部材を直接操作して上方に移動することによって、全ての注液口91を同時に開口させることができる。
【0046】
なお、所望の電解液量を空気電池10に注液できる方法であれば特に限定されること無く、例えば複数個の栓92を一度に開閉する構造や、一個の栓92を個別に開閉する構造などに公知の他の構造を適用しても良い。また、前記操作部材は注液が完了するまで把持していても良いし、不図示の固定部材を用いて固定していても良い。要は、注液が完了するまで操作部材が上方で固定されるようにすれば良い。
また、前記注液装置80は取り外し可能となっており、空気電池10の使用時に空気電池システム1の上部に載置し、空気電池10に注液が終了した後、別の空気電池システム1の注液に使用することが可能である。
【0047】
各注液口91から排出された電解液は、注液口91の下端より底板82の下方にて注液装置80に装着されたカートリッジ装着部材95にチューブ94を介して供給される。カートリッジ装着部材95は、注液装置80を空気電池システム1に載置した際に、カートリッジ50の蓋部51に連結される部材である。このカートリッジ装着部材95は、注液口91からの電解液を、蓋部51に設けられた一対の凹部51E、51Fのそれぞれに供給するよう、前記カートリッジ装着部材95は前記凹部51E、51Fの外径に嵌る円柱状の凸部が形成されている。前記カートリッジ装着部材95の内周にはパッキン96が装着される。前記パッキン96と前記凹部51E、51Fの外周面とが嵌合することで、漏液を防止することが可能である。
上述したように、蓋部51の各凹部51E、51Fに電解液を供給することによって、カートリッジ50内の2個の空気電池10にそれぞれ独立して電解液を供給することができる。
【0048】
(注液装置の栓構造)
図13及び
図14は注液口91を栓92と共に拡大して示した図であり、
図13は開状態を示し、
図14は閉状態を示している。
図13及び
図14に示すように、注液口91は、上下方向に延びる環状の筒状部品に形成される。注液口91は、底板82に設けられた開口部82Aに上端が挿入されて底板82上方の内部空間と連通する。
底板82には、開口部82A間にその周囲から間隔を空けて下方に突出する突出部82Bが設けられており、これら突出部82Bに注液口91の周囲に一体に形成された鍔部91Aが下方から当接することによって、注液口91の上端が底板82の上面と面一に位置決めされる。前記注液口91を構成する筒状部品は、開口部82Aに挿入された部分及び、突出部82Bと鍔部91Aが当接する部分を接着して固定される。
これら鍔部91Aと底板82との間には、栓92に設けられたマグネット101に引き寄せられる磁性体金属製の環状の金属カラー(磁性体部品)103が介挿される。
【0049】
栓92は、連結部材93Bと栓92の開閉(上下)方向に延びる棒状の延長部材93Cに支持される栓本体部110と、栓本体部110から下方に突出する突出部111(流量調整部材)とを備えている。栓本体部110は、上方に開口する環状のカバー112と、その下部に孔部(例えば雌ねじ)93Eを有する延長部材93Cとを備え、カバー112が延長部材93Cの孔部93Eに、防錆処理されたネジや割りピンなどの固定部材93Dを介して固定される。前記孔部93Eは固定部材93Dの形状によって適宜変更され、特に限定されるものではない。
この環状のカバー112内(カバー112と延長部材93Cとの間の空間)には、上方から環状のマグネット101が配置されるとともに、このマグネット101の中央孔に上方から挿入される雄ねじ部品113が挿入される。また、カバー112の下面(金属カラー103側の面)には、突出部111の上端部周囲を囲う環状のパッキン114が装着される。
本構成では、マグネット101の周囲に存在する各部品が、金属カラー103を除いて非磁性材料で形成されており、例えば、注液装置80の底板82、カバー112、雄ねじ部品113及び突出部111が樹脂やアルミニウム合金で形成されている。
【0050】
突出部111は、注液口91内に向かって徐々に細くなる先細形状の突起に形成されている。この突出部111には、上方から上記雄ねじ部品113が締結されることによって、突出部111が栓本体部110に固定される。マグネット101は、雄ねじ部品113と突出部111との間に挟持されることで、栓92からの脱落が防止される。
【0051】
突出部111の基端部は注液口91よりも大径に形成され、突出部111の先端部は注液口91よりも小径に形成される。このため、突出部111が
図13に示す開位置から下方に移動することによって、突出部111の先端が注液口91に入り、突出部111を注液口91に当接するまで移動することにより、
図14に示すように、注液口91の上端部を塞ぎ、注液口91に電解液が流入することを防ぐことができる。
本構成では、
図13に示す開位置から
図14に示す閉位置に移動するに従って、突出部111と注液口91との間に空く開口を狭くすることができるので、栓92と注液口91との間に空く開口量を変化させることができる。
【0052】
すなわち、突出部111は、栓92と注液口91との間に空く開口量を調整する調整部材としても機能し、栓92の移動に応じて注液口91を通る電解液の流量を可変させることができる。
突出部111の突出長さは、予め設定した栓92の移動範囲において、栓92を最も上方に移動しても、突出部111の一部(下端)が注液口91内に残る長さとされる。このため、栓92が注液口91から完全に抜けないようにし、注液口91を確実に閉塞できるようにする。また、仮に外部から衝撃や振動が作用しても、栓92が注液口91からずれ難くなる。これによって、様々な状況下でも、常に開け閉めできるようにしている。
【0053】
また、注液口91が完全に開口しないので、例え電解液として泥水などを注液し、注液装置80内に石や砂利などがあったとしても、これらが注液口91に入ってしまうことを抑制することができる。
また、突出部111の移動量、つまり、栓92の移動量を少なくすることによって、栓92と注液口91との間の隙間を小さく保持し、注液時でも石や砂利などが排出されないようにすることが可能である。
【0054】
パッキン114は、突出部111の周囲を囲うように配置され、
図14に示す閉位置の場合に、底板82に当接して底板82と栓92との間の隙間を閉塞し、パッキン114を設けない場合と比べて、注液口91からの液漏れをより確実に防ぐことができる。また、このパッキン114には、電解液などの液体を含むと膨張する発泡パッキンが使用され、これによっても液漏れを防ぐことができる。なお、発泡パッキンに限らず、公知の他のパッキンを用いても良い。
【0055】
また、本構成では、マグネット101が、このマグネット101に対峙するように配置された金属カラー103を引き寄せるため、重力に依存することなく栓92を閉塞位置に保持することができる。これにより、液漏れを効果的に防ぐことができ、仮に注液装置80が傾いたとしても液漏れを効果的に防ぐことができる。
しかも、マグネット101の吸引力はパッキン114の圧縮力としても作用するので、パッキン114による止水性を効率良く向上させることができる。
【0056】
なお、マグネット101や金属カラー103などは樹脂で覆われる構成、又は、ニッケルメッキされた構成とされ、注液装置80に貯留される電解液(塩化ナトリウム水溶液、又は水など)による腐食を防ぐ構成となっている。なお、樹脂やニッケルに限らず、注液装置80に貯留される電解液(塩化ナトリウム水溶液、又は水など)に対する耐腐食性を有する材料を広く適用可能である。
【0057】
以上説明したように、本実施の注液装置80においては、注液口91を開閉する栓92が、注液口91上部を覆う栓本体部110と注液口91内を開閉自在に移動する突出部111とを備え、突出部110が注液口91内の移動に応じて注液口91を通る電解液(塩化ナトリウム水溶液、又は水など)の流量を可変させる流量調整部材として機能するので、非常用途にも好適な簡易な構成で、注液時の流量調整を容易に行うことが可能になる。
しかも、栓本体部110と注液口91周辺とには互いに対峙してそれぞれマグネット101と磁性体金属製の金属カラー(磁性体部品)103を設けて、栓92による注液口91の閉塞状態を磁力により維持するので、非常用途にも好適な簡易な構成で、電解液の重みで密閉栓が開くといった不具合(液漏れ)を防ぐことができる。
従って、非常用途にも好適な簡易な構成で、電解液の重みで密閉栓が開くといった不具合(液漏れ)を防ぎ、且つ、注液時の流量調整を容易に行うことが可能になる。
【0058】
また、突出部111は、栓92と注液口91との間に空く環状の開口を調整する部材であって、栓92が注液口91から離間するに従ってその開口の面積を徐々に大きくするので、開け始めの流量を抑え、且つ、栓92の移動に比例して排出流量を徐々に増大させることができる。
また、突出部111は、栓92から注液口91内に向かって細くなる先細形状の突起であるため、簡易な構成で流量調整を行うことができるとともに、突出部111と注液口91との間に位置ずれが生じても突出部111の噛み込みを防止し易くなる。
【0059】
(第2実施形態)
図15及び
図16は第2実施形態に係る注液装置80の栓構造を示した図であり、
図15は開状態を示し、
図16は閉状態を示している。なお、第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示し、重複説明は省略する。
第2実施形態では、栓92に設けられる突出部111が異なる。各突出部111は、非磁性材料(例えば樹脂やアルミニウム合金)で形成され、一定の内径及び外径で直線状に延びる筒状の突起(以下、筒状部と言う)111Gと、筒状部111Gの周壁に開口する開口部111Kとを有している。
【0060】
筒状部111Gの外径は、注液口91の内径と略同径に形成されている。このため、筒状部111Gを、注液口91の内面をガイドにして円滑に移動することができる。また、筒状部111Gの突出長さは、第1実施形態と同様に、栓92を最も上方に移動しても、筒状部111Gの一部(下端)が注液口91内に残る長さとされる。これによって、様々な状況下でも、常に開け閉めできるようにしている。
【0061】
開口部111Kは、栓92の移動方向(注液口91の軸方向)に沿って延びる長孔形状に形成され、栓90を最も下方に移動した位置(
図16に示す位置)では、注液口91の上端よりも下方(注液口91の奥側)に位置し、筒状部111Gと注液口91との間に隙間を形成しない。
なお、本構成では、底板82と栓92との間の隙間を閉塞するパッキン114を有するため、このパッキン114が機能する間は液漏れを防止できる。パッキン114が劣化しても、
図16に示す位置では栓92に設けられたマグネット101に引き寄せられる磁性体部品である環状の金属カラー103により筒状部111Gと注液口91との間に隙間を形成しないので、液漏れを防止できる。
【0062】
一方、
図16に示す位置から栓92を上方に移動すると、
図15に示すように、開口部111Kが注液口91の外に露出するので、筒状部111Gと注液口91との間に開口を形成することができる。このため、注液装置80内に電解液が貯留されていれば、電解液を注液口91から排出させることができる。
この開口部111Kは注液口91の軸方向に延びる長孔に形成されているため、栓92を注液口91と反対側(上方)に移動するほど、筒状部111Gと注液口91との間に空く開口を広くすることができる。
これによって、第2実施形態の突出部111についても、栓92と注液口91との間に空く開口量を調整する調整部材としても機能し、栓92の移動に応じて注液口91を通る電解液の流量を可変させることができる。
【0063】
本実施形態では、開口部111Kが、筒状部111Gの周方向に間隔を空けて複数(2個)設けられており、各開口部111Kから電解液を注液口91に供給するようにしている。この開口部111Kの数や開口形状、又は開口位置を調整することにより、栓92の移動に応じた開口の変化特性を容易に調整することができる。
また、開口部111Kを複数にすることにより、同じ開口面積を一つの開口部で形成する場合と比較して、一個の開口部あたりの開口面積を狭くすることができる。従って、注液装置80内に石や砂利などが存在しても、これらが開口部111Kを通過する事態を抑制することができる。つまり、複数の開口部111Kを、注液装置80内の石などの通過を遮断させつつ電解液を通過させるフィルタとしても機能させることができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の注液装置80においても、注液口91を開閉する栓92が、注液口91上部を覆う栓本体部110と注液口91内を開閉自在に移動する突出部111とを備え、突出部110が注液口91内の移動に応じて注液口91を通る電解液の流量を可変させる流量調整部材として機能し、且つ、栓本体部110と注液口91周辺とには互いに対峙してそれぞれマグネット101と磁性体金属製の金属カラー103を設けて栓92による注液口91の閉塞状態を磁力により維持するので、非常用途にも好適な簡易な構成で、電解液の重みで密閉栓が開くといった不具合(液漏れ)を防ぎ、且つ、注液時の流量調整を容易に行うことが可能になる、などの第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
しかも、突出部111は、注液口91の内面に沿って摺動自在に栓92から延びる筒状部111Gと、栓92の移動に応じて注液口91に連通する開口を大きくするように筒状部111Gに設けられた開口部111Kとを有するので、簡易な構成で流量調整を行うことができるとともに、注液口91の内面をガイドにして栓92を円滑に移動することができる。また、開口部111Kの数や開口面積の調整によって、所望の流量調整を可能にしつつ、注液装置80内の石などが注液口91に入ってしまう事態を抑えることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図17は第3実施形態に係る注液装置80の栓構造を示した図であり、開状態を示している。なお、第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示している。
第3実施形態では、注液口91の外周に、栓92の移動方向に沿って延びる雄ねじ部100Nを設け、金属カラー103の内周に、雄ねじ部100Nに螺号する雌ねじ部103Nを設けている。この構成によれば、金属カラー103の位置を栓92の移動方向に調整することができる。このため、マグネット101と金属カラー103の間隔(離間距離)を調整することができる。この間隔の調整により、栓92の移動に要する操作力を容易に調整することができ、例えば、栓92を手動操作する際に好適な操作力に容易に調整することができる。
【0067】
なお、金属カラー103のずれを防止するためのずれ防止部材を設けるようにしても良い。一例を挙げると、注液口91の雄ねじ部100Nに螺号するリング部材を用意し、このリング部材を、金属カラー103に重なるように雄ねじ部100Nに螺号することにより、いわゆるダブルナットで緩み止めを行うことができる。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、空気電池システム1の各部材のレイアウトや各部の形状は適宜に変更しても良い。一例を挙げると、マグネット101を栓92側に配置し,マグネット101に引き寄せられる金属カラー103を底板82側に配置する場合を説明したが、マグネット101と金属カラー103の位置を置き換えても良い。
【0069】
また、金属カラー103をマグネット製にし、対峙するマグネット101と引き合うように磁極の向きを異ならせて配置するようにしても良い。また、空気電池システム1にカートリッジ50を一列に配列する場合を説明したが、これに限らず、多列で配置する構成にしても良い。
【0070】
また、上述の実施形態では、空気電池システム1のケース41に複数のカートリッジ50を装填した場合にカートリッジ50同士が接触し、この接触部位(当接部58H、58L)にカートリッジ50の外部端子61A、61Bを設けることによって隣接するカートリッジ50間で空気電池10を接続する場合を説明したが、要は、ケース41に複数のカートリッジ50を装填した場合に、各カートリッジ50の外部端子61A、61B同士が接触して空気電池10が接続されるようにすれば良い。
例えば、カートリッジ50同士が接触する配置でなくても、カートリッジ50同士が近接する部位にカートリッジ50の外部端子61A、61Bを設け、隣接するカートリッジ50間でカートリッジ50の外部端子61A、61Bが接触するようにすれば良い。また、カートリッジ50同士が近接しなくても、カートリッジ50同士で互いに接触するようにカートリッジ50の外部端子61A、61Bを設けるようにしても良い。
【0071】
また、本発明の注液用の栓構造は、マグネット101を用いるため、重力に依存することなく注液口91を閉じることができる。このため、注液装置80の底板82に設ける栓構造に限定されず、例えば、側板部84に設ける栓構造にしても良い。
さらに、上述の各実施形態では、空気電池システム1の栓構造に本発明を適用する場合を説明したが、空気電池システム1に限定されず、例えば、鉛電池やアルカリ電池、リチウム電池など、様々な栓構造に広く適用可能である。