(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、1,2,2,3−テトラクロロプロパンと未反応の1,2,3−トリクロロプロパンを含む前記第1の生成物流を第1塩素化工程に再循環させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記第1及び第2塩素化工程が、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)又はこれらの組み合わせを含むフリーラジカル開始剤の存在下で行われ、及び/又は、前記少なくとも1つの脱塩化水素化工程が、鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム又はこれらの組み合わせを含む脱塩化水素化触媒の存在下で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書は、本発明をよりよく規定し、本発明の実施において当業者を導くための特定の定義及び方法を提供する。特定の用語又は語句についての定義の有無は、いかなる特定の重要性の有無を示すことを意味するものではない。むしろ、そして、特に断らない限り、用語は、当業者による従来の用法に従って理解されるべきである。
【0016】
本明細書で使用する「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、数量又は重要度を意味するものでなく、むしろ1つの要素を別の要素と区別するために使用される。また、単数形は数量の限定を意味するものではなく、むしろ記載事項の少なくとも1つの存在を意味し、用語「前(front)」、「後ろ(back)」、「底部(bottom)」及び/又は「頂部(top)」は、特に断らない限り、単に説明の便宜上使用され、いずれか1つの位置又は空間的配向に限定されない。
【0017】
範囲が開示されている場合、同じ成分又は特性に関するすべての範囲の端点が包含され、また、独立に組み合わせ可能である(例えば、「最大25質量%、又はより具体的には5質量%〜20質量%」という範囲は、各端点と5質量%〜25質量%の範囲の全ての中間値を包含する)。本明細書において、転化率(%)は、流入する流れに対する比で反応器内の反応物のモル又は質量流量の変化を意味し、選択率(%)は、反応物のモル流量の変化に対する比で反応器内の生成物のモル流量の変化を意味する。
【0018】
明細書中に記載の「一実施形態」又は「実施形態」は、実施形態について記載された特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。従って、明細書を通じて様々な箇所に出現する用語「一実施形態において」又は「実施形態において」は、必ずしも同じ実施形態を指さない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は2以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0019】
いくつかの例において、「TCP」を1,2,3−トリクロロプロパンの略語として使用することがあり、「ACL」を塩化アリル又は3−クロロプロペンの略語として使用することがあり、さらに「TCPE」を1,1,2,3−テトラクロロプロペンの略語として使用することがある。用語「クラッキング(cracking)」及び「脱塩化水素化」は、同じタイプの反応、すなわち、典型的には塩素化炭化水素試薬中の隣接する炭素原子からの水素及び塩素原子の除去による二重結合の生成をもたらす反応を表すために、互換的に使用される。
【0020】
本発明は、塩素化プロペンの製造のための効率的な方法を提供する。本方法は、TCPを単独で含む又は幾つかの実施形態において1又は2種以上の他の塩素化アルカン又はアルケンとの組み合わせで含む供給流に対して、少なくとも1つの塩素化工程及び少なくとも1つの脱塩化水素化工程を実施することを含む。当該方法により生成した1,2,2,3−テトラクロロプロパンの少なくとも一部を、当該方法で、再使用、すなわち供給流に再循環させるか、又はさらに反応させる。従来の方法は、典型的には、1,2,2,3−テトラクロロプロパンが生成した場合にかかる方法から1,2,2,3−テトラクロロプロパンを除去することを必要とし、おそらく、この異性体の存在がさらなる望ましくない副生成物及び/又は異性体の生成をもたらすであろうという仮定のもとで実施される。本発明者らは、そのようなことはないと認識し、その代わりに、生成した1,2,2,3−テトラクロロプロパンを使用することができ、それにより当該方法の収率及び効率が高めることを認識した。従って、本発明の方法は、異性体を除去する必要がある従来の方法よりも経済的に魅力的である。
【0021】
本発明の方法の塩素化工程に触媒は必要とされないが、反応速度を増加させるために、必要に応じて使用できる。例えば、本方法を促進するために、フリーラジカル触媒又は開始剤を使用できる。かかる触媒は、典型的には、1又は2以上の塩素、過酸化物又はアゾ−(R−N=N−R’)基を含むことができ、及び/又は反応器の相移動度/活性度を示すことができる。本明細書において、語句「反応器の相移動度/活性度」は、相当量の触媒又は開始剤が、反応器の設計上の制限の範囲内で、生成物、塩素化及び/又はフッ素化プロペンの有効なターンオーバーを開始し伝播することのできる十分なエネルギーのフリーラジカルを生成するために利用可能であることを意味する。
【0022】
さらに、触媒/開始剤は、理論的に最大量のフリーラジカルが本方法の温度/滞留時間で所定の開始剤から生成されるように十分な等方的解離エネルギーを有するべきである。低い濃度又は反応性のために初期ラジカルのフリーラジカル塩素化が妨げられる濃度でフリーラジカル開始剤を使用することは特に有用である。驚くべきことに、フリーラジカル開始剤の使用は、当該方法による不純物の生成を増加させないが、少なくとも50%、もしくは60%以下、70%以下、いくつかの実施形態において、80%以下又はそれより高い塩素化プロペンへの選択率をもたらす。
【0023】
かかるフリーラジカル開始剤は当業者によく知られており、例えば、“Aspects of some initiation and propagation processes,” Bamford, Clement H. Univ. Liverpool, Liverpool, UK., Pure and Applied Chemistry, (1967), 15(3-4), 333-48及びSheppard, C. S.; Mageli, O. L. “Peroxides and peroxy compounds, organic,” Kirk-Othmer Encycl. Chem. Technol., 3rd Ed. (1982), 17, 27-90に概説されている。
【0024】
上記事項を考慮し、塩素を含む好適な触媒/開始剤の例としては、四塩化炭素、ヘキサクロロアセトン、クロロホルム、ヘキサクロロエタン、ホスゲン、塩化チオニル、塩化スルフリル、トリクロロメチルベンゼン、過塩素化アルキルアリール官能基、あるいは、有機及び無機の次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸、次亜塩素酸t−ブチル、次亜塩素酸メチルなど、塩素化アミン(クロラミン)及び塩素化アミド又はスルホンアミド、例えばクロロアミン−T(商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。1又は2以上の過酸化物基を含む好適な触媒/開始剤の例としては、過酸化水素、次亜塩素酸、脂肪族及び芳香族過酸化物又はヒドロペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化クミルなどが挙げられる。ジペルオキシドは、競合的プロセス(例えば、TCP(及びその異性体)及びテトラクロロプロパンへのPDCのフリーラジカル塩素化)を伝播することができないという利点をもたらす。さらに、アゾ基を含む化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)は、本発明の条件下で、トリクロロプロパン及びテトラクロロプロパンへのPDCの効果的な塩素化を実施する際に有用であり得る。また、これらの任意の組み合わせも有用であり得る。
【0025】
本方法又は反応器ゾーンは、Breslow, R.によりOrganic Reaction Mechanisms W.A. Benjamin Pub, New York, p 223-224に教示されているように、フリーラジカル触媒/開始剤の光分解を誘導するのに好適な波長でパルスレーザー又は連続UV/可視光源に曝されてもよい。光源の300〜700nmの波長は、市販のラジカル開始剤を解離するのに十分である。かかる光源としては、例えば、反応器チャンバを照射するように構成された適切な波長又はエネルギーのハノビア(Hanovia)UV放電灯、太陽灯又はパルスレーザービームが挙げられる。代わりに、BailleuxらによりJournal of Molecular Spectroscopy, 2005, vol. 229, pp. 140-144に教示されているように、反応器に導入されたブロモクロロメタン供給原料へのマイクロ波放電からクロロプロピルラジカルを生成させることができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、イオン性塩素化触媒を1又は2以上の塩素化工程において使用できる。本方法におけるイオン性塩素化触媒の使用は、アルカンを脱塩化水素化するとともに塩素化するため、特に有利である。すなわち、イオン性塩素化触媒は、隣接する炭素原子から塩素及び水素を除去し、当該隣接する炭素原子は二重結合を形成し、HClが放出される。塩素分子は、次に、再付加し、二重結合を置換し、より高級の塩素化アルカンをもたらす。
【0027】
イオン性塩素化触媒は、当技術分野においてよく知られており、そのいずれかを本発明の方法において使用できる。イオン性塩素化触媒の例としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄(FeCl
3)及び他の鉄含有化合物、ヨウ素、硫黄、五塩化アンチモン(SbCl
5)、三塩化ホウ素(BCl
3)、ハロゲン化ランタン、金属トリフラート、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の1又は2以上の塩素化工程において触媒が使用される場合、例えばAlCl
3及びI
2などのイオン性塩素化触媒の使用が好ましいことがある。
【0028】
本方法の脱塩化水素化工程は、液体苛性アルカリの存在下で触媒なしで同様に実施することができる。気相脱塩化水素化は、有利なことに、液相脱塩化水素化よりも高い価値の副生成物の形成をもたらすが、液相脱塩化水素化反応は、反応物の蒸発を必要としないため、コスト削減をもたらすことができる。また、液相反応において使用されるより低い反応温度は、気相反応において使用されるより高い反応温度よりも低いファウリング速度をもたらすことができ、そのため、反応器の寿命も、少なくとも1つの液相脱塩化水素化が使用された場合に最適化することができる。
【0029】
多くの化学塩基が液体苛性クラッキングに有用であることが知られており、それらのいずれも使用できる。例えば、好適なクラッキング塩基としては、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなど;アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムなど;リチウム、ルビジウム及びセシウム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。相間移動触媒、例えば第四級アンモニウム及び第四級ホスホニウム塩(例えば、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム又は臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムなど)などを、これらの化学塩基により脱塩化水素化反応速度を改善するために添加してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の方法の脱塩化水素化工程の1つ又は2つ以上は、触媒の存在下で実施することができるため、当該方法から液体苛性アルカリの使用が削減されるか、又は除かれる。かかる実施形態において、好適な脱塩化水素化触媒としては、塩化第二鉄(FeCl
3)が挙げられるが、これに限定されない。当業者に知られている気相脱塩化水素化触媒の他の好適な例は、国際特許出願第2009/015304 A1号に開示されている。
【0031】
塩素化及び/又は脱塩化水素化触媒のいずれか又は全てを、バルク、又は基材、例えば活性炭、グラファイト、シリカ、アルミナ、ゼオライト、フッ素化グラファイト及びフッ素化アルミナなどに結合させて提供することができる。所望の触媒(もしあれば)又はその構成がどのようなものであっても、当業者は、それらの適切な濃度及び導入方法を決定する方法をよく知っている。例えば、多くの触媒は、典型的には、別の供給物として又は他の反応物、例えばTCPとの溶液として、反応ゾーンに導入される。
【0032】
使用される任意の塩素化及び/又は脱塩化水素化触媒の量は、選択された触媒及び他の反応条件に依存する。一般的に、触媒の使用が望ましい本発明の実施形態において、反応プロセス条件(例えば、必要とされる温度の低下など)又は実現される製品にいくらかの改善をもたらすために十分な触媒が用いられるべきであるが、もし経済的実用性のためだけの場合には、さらなる利益はもたらされない。
【0033】
例示のためだけに示すが、イオン性塩素化触媒又はフリーラジカル開始剤の有用な濃度は、0.001質量%〜20質量%、0.01質量%〜10質量%、又は0.1質量%〜5質量%であり、それらの間のすべての部分範囲を含むと考えられる。脱塩化水素化触媒が1又は2以上の脱塩化水素化工程に使用される場合、有用な濃度は、70℃〜200℃の温度において、0.01質量%〜5質量%、又は0.05質量%〜2質量%であることができる。化学塩基が1又は2以上の脱塩化水素化に使用される場合、これらの有用な濃度は、0.01〜20グラムモル/L、0.1グラムモル/L〜15グラムモル/L、又は1グラムモル/L〜10グラムモル/Lであり、それらの間のすべての部分範囲を含む。各触媒/塩基の濃度は、供給材料、例えば1,2,3−トリクロロプロパンに対して与えられる。
【0034】
本発明の方法は、所望の塩素化プロペンを生成させるために1,2,3−トリクロロプロパンを含む供給原料を利用することができる。当該方法の供給原料は、再循環された1,2,2,3−テトラクロロプロパン、又は必要に応じて他の塩素化アルカンを含む再循環されたアルカンも含むことができる。必要に応じて、当業者に知られている任意の方法によって、当該プロセス内で又は当該プロセスの上流側で1,2,3−トリクロロプロパンを生成させてもよい。
【0035】
本方法の塩素化工程は、任意の塩素化剤を使用して実施することができ、これらのいくつかは当技術分野において知られている。例えば、好適な塩素化剤としては、塩素及び/又は塩化スルフリル(SO
2Cl
2)が挙げられるが、これらに限定されない。塩素化剤の組み合わせも使用できる。上記イオン性塩素化触媒の使用によって促進される場合は、Cl
2及び塩化スルフリルの一方又は両方が特に有効である。
【0036】
任意の塩素化プロペンは、本発明の方法を使用して製造できるが、3〜5個の塩素原子を有するものが特に商業的に魅力的であり、そのためいくつかの実施形態において好ましいことがある。いくつかの実施形態において、当該方法は、冷媒、ポリマー、殺生物剤などを得るための好ましい供給原料であり得る1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造に使用できる。
【0037】
さらなる実施形態において、本方法の1又は2以上の反応条件は、さらなる利点、すなわち、反応副生成物の選択率、転化率又は生成の改善をもたらすために最適化することができる。特定の実施形態において、複数の反応条件が最適化され、反応副生成物の選択率、転化率及び生成における更なる改善が見られる。
【0038】
最適化することのできる本方法の反応条件としては、例えば製造フットプリントにおいて既存の装置及び/又は材料の使用により調節することのできる又は低リソースコストで得られるなど、都合良く調節される任意の反応条件が挙げられる。かかる条件の例としては、温度、圧力、流量、反応物のモル比などの調節を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書に記載の各工程で使用される特定の条件は重要ではなく、当業者によって容易に決定される。重要なことは、当該方法により生成した1,2,
2,3−テトラクロロプロパンの少なくとも一部が当該方法で利用されること、すなわち、再循環され、さらに反応され、又はさらに反応され再循環されることである。また、液体苛性アルカリを使用することによるというよりもむしろ少なくとも1つの脱塩化水素化工程が触媒的に実施されることで、無水HClが生成し、塩化ナトリウムの生成が最低限に抑えられるため有利である。当業者は、各工程に好適な装置や、塩素化、脱塩化水素化、分離、乾燥及び異性化工程を行うことのできる特定の条件を容易に決定することができる。
【0040】
本方法において、1,2,3−トリクロロプロパンは、少なくとも1つの塩素化工程と少なくとも1つの脱塩化水素化工程を使用してTCPEに変換される。重要なことに、また、有利なことに、当該プロセスにより生成した1,2,2,3−テトラクロロプロパンの少なくとも一部が当該プロセス内で利用される。すなわち、TCPEの製造においてより有用な中間体を得るために、任意の1,2,2,3−テトラクロロプロパンの少なくとも一部を、供給原料に再循環させるか又はさらに反応させることができる。
【0041】
より具体的には、例示的な一実施形態において、TCPは、例えば、内部冷却コイルを備える回分式又は連続式攪拌槽反応器などの液相塩素化反応器に供給される。シェル−多管反応器と、それに続いて気液分離槽又は容器を使用してもよい。好適な反応条件としては、周囲温度(例えば、20℃)〜200℃、30℃〜150℃、40℃〜120℃又は50℃〜100℃の温度が挙げられる。周囲圧力、100kPa〜1000kPa、100kPa〜500kPa、又は100kPa〜300kPaの圧力を使用できる。かかる条件で、TCPは10%、30%、50%、又は60%を超える単流転化率(per pass conversion)で四塩素化及び五塩素化プロパンに変換され、最大80%にまで達する単流転化率を確認できる。単流転化率及び反応条件は、ヘキサクロロプロパンの形成を10%未満に最低限に抑えつつ最終塩素化工程の生成物がテトラクロロプロパンとペンタクロロプロパンの混合物からなるように選択又は最適化される。
【0042】
塩素化は、ニート、すなわち溶媒の不在下で実施してもよく、あるいは、1もしくは2種以上の溶媒を、塩素化反応器に供給してもよく、また、供給原料の成分として供給してもよく、又は、塩素化反応器からの流れを受けるように効果的に配置された1又は2個以上の分離カラムに再循環させてもよい。例えば、クロロプロパン中間体を、1つの分離カラムから塩素化反応器に再循環させることができ、トリ−及びテトラクロロプロパン中間体を、別の分離カラムから再循環させることができる。さらに、又は代わりに、塩素化反応器に、例えば四塩化炭素、塩化スルフリル、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3,3−ヘキサクロロプロパン、他のヘキサクロロプロパン異性体、又はこれらの組み合わせなどの、塩素化反応に好適な任意の溶媒を供給することができる。いくつかの実施形態において、当該プロセスにより生成した及び再利用された1,2,2,3−テトラクロロプロパンの少なくとも一部が第1塩素化反応器に再循環される。
【0043】
塩素化反応器からのオーバーヘッド蒸気は、冷却され、凝縮されて、第1分離カラム、例えばそのオーバーヘッド流から無水HClを回収するために使用できる蒸留カラムに供給される。この分離カラムは、無水HClをそのオーバーヘッドラインに供給し、塩素を底部再循環ラインに通すのに有効な条件下で運転される。
【0044】
より具体的には、HClの回収のための分離カラムの頂部温度は、典型的には0℃以下に設定することができ、より好ましくは−70℃〜−10℃の温度に設定することができる。かかるカラムの底部温度は、望ましくは10℃〜150℃、又は30℃〜100℃であり、正確な温度は底部混合組成物にある程度依存する。この分離カラムの圧力は、望ましくは200kPa超に設定され、好ましくは500kPa〜2000kPa、より好ましくは500kPa〜1000kPaに設定される。かかる条件で運転されるカラムの底部流は、過剰な塩素、未反応のTCPを含むことが期待され、一方、オーバーヘッド流は無水HClを含むことが期待される。
【0045】
第1塩素化反応器からの底部液体生成物流は、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン及びより重質の副生成物から未反応のTCP及びテトラクロロプロパン異性体を分離するのに有効な条件で運転される第2分離カラムに供給することができる。かかる分離は、例えば180℃より低いリボイラー温度及び大気圧以下の圧力で運転される分離カラムに底部液体流を供給することにより達成することができる。
【0046】
テトラクロロプロパン異性体は、次に、望ましくは少なくとも2つの流れ、すなわち、1,2,2,3−テトラクロロプロパン(163℃の沸点を有する)及び未反応のTCP(157℃の沸点を有する)を含む1つの流れと、1,1,2,3−テトラクロロプロパン(179℃の沸点を有する)を含む別の流れに分けられる。1,1,2,3−テトラクロロプロパンは、次に、当該技術分野、例えば米国特許第3,823,195号明細書に記載されているように脱塩化水素化される。
【0047】
有利には、TCP及び1,2,2,3−テトラクロロプロパンを含む流れは、次に、第1塩素化反応器に再循環されるか、又は、例えば165℃より低い底部温度及び大気圧以下の圧力で運転される分離カラムを介して分離されてTCP及び1,2,2,3−テトラクロロプロパンを含む流れをもたらす。後者の実施形態において、分離されたTCPは、次に、第1塩素化反応器に再循環され、1,2,2,3−テトラクロロプロパンは、さらに塩素化されて1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンをもたらすか又は脱塩化水素化され塩素化されて1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンをもたらす。いずれの実施形態も、この異性体の除去及び廃棄を必要とする従来法よりも有利である。
【0048】
このように分離された1,2,2,3−テトラクロロプロパンが、その一部を再循環せず、又はその一部を再循環することに加えて、望ましくはさらに塩素化される場合、かかる塩素化は、第1塩素化反応器とは別個であり第1塩素化反応器と異なる条件で運転される液相塩素化反応器内で望ましくは実施することができる。より具体的には、1,2,2,3−テトラクロロプロパンを、例えば30℃〜120℃の温度及び周囲圧力以上で、反応器流出物で1,2,2,3−テトラクロロプロパンについて10〜80%、好ましくは10%〜40%の単流転化率をもたらすのに十分な条件で運転される連続式撹拌槽反応器に供給することにより塩素化して1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンをもたらすことができる。そのように運転した場合、この塩素化反応は、80%未満の1,2,2,3−テトラクロロプロパン転化率と1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンへの0%〜95%の選択率をもたらすことが期待される。
【0049】
第2塩素化反応器からの産出物は、次に、第2塩素化反応流を、塩素とHClを含むオーバーヘッド流と、未反応の1,2,2,3−テトラクロロプロパン、所望のペンタクロロプロパン異性体及びより重質の副生成物を含む底部流とに分離するのに有効な条件で運転される分離カラムに供給することができる。オーバーヘッド流をさらに分離及び精製して塩素の流れとHClの流れをもたらすことができ、この塩素の流れを、必要に応じて第1塩素化反応器に再循環させることができ、HClの流れを、上記のように、無水HClの回収のために第1分離カラムに供給することができる。
【0050】
第2塩素化反応器からの底部流を、第2分離カラムに供給することができ、この第2分離カラムは、第1塩素化反応器からの供給物も受け取る。このカラムの底部流は、1,2,2,3−テトラクロロプロパンよりも高い沸点を有する生成物、例えば1,1,2,3−テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、及びより重質の副生成物を含む。この底部流は、次に、オーバーヘッド流れが1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含み、底部流がペンタクロロプロパン異性体及びより重質の副生成物を含むように運転される第3分離カラムに供給される。当該技術分野でよく知られているように、このオーバーヘッド流を、次に、例えば米国特許第3,823,195号明細書に記載されているように、苛性アルカリを使用して脱塩化水素化してトリクロロプロペン異性体を生成させることができる。
【0051】
底部流からのトリクロロプロペンを、次に、50℃〜80℃の温度で運転される別個の塩素化反応器においてさらに塩素化してペンタクロロプロパン異性体にすることができる。得られたペンタクロロプロパンは、次に、他のペンタクロロプロパン中間体を含む第
4分離カラムの底部流と組み合わされる。
【0052】
1,2,2,3−テトラクロロプロパンを1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンに塩素化する代法として、このテトラクロロプロパン異性体を、1,2,3−トリクロロプロペンに高収率で脱塩化水素化することができる。このトリクロロプロ
ペン中間体は、次に、当該技術分野で知られているように、液相中で容易に1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンに塩素化される。この場合、1,2,2,3−テトラクロロプロパンを、必要に応じて、上記の苛性脱塩化水素化工程の前に、1,1,2,3−テトラクロロプロパンと組み合わせることができる。
【0053】
ペンタクロロプロパン異性体を含む第
2分離カラムの底部流は、次に、あまり望ましくないペンタクロロプロパン異性体1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン及びより重質の塩素化反応生成物(これはパージされる)を含む底部流と、望ましいペンタクロロプロパン異性体1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを含むオーバーヘッド流とをもたらすのに有効な条件で運転される第
3分離カラムにさらに供給される。いくつかの実施形態において、このオーバーヘッド流を、次に、例えば鉄又は鉄含有触媒、例えばFeCl
3などを使用して、触媒的に脱塩化水素化することができ、その結果、高価値副生成物である無水HClが生成する。他の実施形態において、オーバーヘッド流を、上記のように、苛性アルカリ又は他の化学塩基を使用して所望のテトラクロロプロパン生成物に脱塩化水素化することができる。
【0054】
より具体的には、触媒的脱塩化水素化反応器は、典型的には、回分式又は連続式撹拌槽反応器であることができる。混合は、例えば、供給流の機械的または噴流混合により行うことができる。当業者は、上記の脱塩化水素化を行うために脱塩化水素化反応器を運転する適切な条件を容易に決定することができる。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの触媒的脱塩化水素化によって、2,3,3,3−テトラクロロプロペン及び1,1,2,3−テトラクロロプロペンとHClがもたらされ、HClは、有利なことに、反応器から廃棄物流れを初期無水HCl回収カラムに再循環させることにより回収できる。
【0055】
触媒的脱塩化水素化反応器からの反応流は、次に、所望の塩素化プロペン、例えば1,1,2,3−TCPEを、主に1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを含むことが期待される残りの流れから分離するために、さらなる分離カラムに供給される。この1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンの流れは、次に、苛性分解され、1,1,2,3−TCPEと2,3,3,3−TCPEの混合物をもたらす。苛性脱塩化水素化反応器からの反応流を、必要に応じて、乾燥カラムに供給することができ、乾燥カラムからの乾燥流は、好適な条件下で2,3,3,3−テトラクロロプロペンを1,1,2,3−テトラクロロプロペンに異性化するためのさらなる反応器に供給される。
【0056】
例えば、異性化を促進するために触媒を用いてもよく、その場合、好適な触媒としては、(i)例えばカオリナイト、ベントナイト及びアタパルジャイトなどの、極性表面を有するシリカ質顆粒、(ii)例えばサポナイト、石英などの、シリカの他の鉱物塩、(iii)例えばシリカゲル、ヒュームドシリカ及びガラスなどのシリカ質非鉱物物質、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。また、かかる反応流に対する乾燥カラムの好適な条件も、米国特許第3,926,758号明細書に示されているように、当業者によく知られている。
【0057】
かかる方法の概略図が
図1に示されている。
図1に示されているように、プロセス100は、塩素化反応器102及び110、分離カラム104、106、108、112及び113、脱塩化水素化反応器114、118及び119、乾燥機120及び121、並びに異性化反応器122を使用する。運転の際、1,2,3−トリクロロプロパン(単独、又は、いくつかの実施形態において、1,2,2,3−テトラクロロプロパン及び/又は塩化アリルとの組み合わせで)と望ましい塩素化剤(例えば、塩素、SO
2Cl
2又はこれらの組み合わせ)が塩素化反応器102に供給される。塩素化反応器102は、塩化アリルのTCPへの塩素化及び/又はTCPの四塩素化及び五塩素化プロパンへの塩素化をもたらす実施可能で当業者に知られている任意の組の条件で運転できる。
【0058】
塩素化反応器102のオーバーヘッド流は分離カラム104に供給される。分離カラム104は望ましくは蒸留カラムであることができる。HCl分離カラムへの供給物は、好ましくは、例えば米国特許第4,010,017号明細書に記載されているような分別法を適用することにより実現される−40℃〜0℃の温度で完全に凝縮した液体である。分離カラム104は、無水HClをそのオーバーヘッドラインを介して供給し、塩素及び未反応TCPを塩素化反応器102に供給するのに有効な条件で運転される。
【0059】
反応器102の底部流は分離カラム106に供給される。分離カラム106は、TCP及び1,2,2,3−テトラクロロプロパンを含むオーバーヘッド流と、他のテトラクロロプロパン異性体、ペンタクロロプロパン及びより重質の反応副生成物を含む底部流を供給するのに有効な条件で運転される。分離カラム106からのオーバーヘッド流を第1塩素化反応器102に再循環させることができ、一方、分離カラム106からの底部流はさらなる分離カラム108に供給される。
【0060】
分離カラム108は、分離カラム106からの底部流を、1,1,2,3−テトラクロロプロパン及び望ましいペンタクロロプロパン異性体(1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)を含むオーバーヘッド流と、あまり望ましくない1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロプロパン及びより重質の副生成物を含む底部流に分離する。オーバーヘッド流は分離カラム112に供給され、一方、底部流は適切に廃棄される。
【0061】
分離カラム112は、分離カラム108からの
オーバーヘッド流を、1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含むオーバーヘッド流と、所望のペンタクロロプロパン異性体、例えば1,1,2,2,3及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む底部流とに分離する。1,1,2,3−テトラクロロプロパンは、次に、脱塩化水素化反応器114において苛性分解されトリクロロプロペン中間体をもたらす。
【0062】
脱塩化水素化反応器114からの反応液は乾燥カラム120に供給され、乾燥流は塩素化反応器110に供給される。必要に応じて、塩素化反応器110からの過剰な塩素を分離カラム104に再循環させることができる。1,1,2,2,3及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含むことが期待される塩素化反応器110からの生成物流は脱塩化水素化反応器118に供給され、そこで分離カラム112からの底部流と組み合わされる。この底部流も1,1,2,2,3−及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む。
【0063】
脱塩化水素化反応器118内で、望ましいペンタクロロプロパン異性体は、触媒的に脱塩化水素化されて2,3,3,3−テトラクロロプロペン及び1,1,2,3−テトラクロロプロペンを提供する。より具体的には、脱塩化水素化反応器に、例えば、鉄又は鉄含有触媒、例えばFeCl
3などを装入し、周囲圧力〜400kPaの圧力、40℃〜150℃の温度及び3時間未満の滞留時間で運転することができる。
【0064】
脱塩化水素化反応器118からの底部反応流は分離カラム113に供給され、一方、無水HClを含むオーバーヘッド流は、無水HClを回収し精製するために分離カラム104に供給される。テトラクロロプロペン生成物及び未反応のペンタクロロプロパンを含む脱塩化水素化反応器118からの底部流は、次に、分離カラム113に供給される。
【0065】
分離カラム113は、残りの副生成物、例えば、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンからオーバーヘッド流として、所望の塩素化プロペン、例えば1,1,2,3−TCPEを分離するのに有効な条件で運転される。分離カラム113からの底部流は、苛性脱塩化水素化反応器119に供給され、その生成物流は乾燥カラム121に供給される。乾燥カラム121からの乾燥流は、適切な条件下で2,3,3,3−テトラクロロプロペンを1,1,2,3−テトラクロロプロペンに異性化する異性化反応器122に供給される。
【0066】
当該プロセスのさらなる実施形態が
図2に示されている。このプロセスは、さらなる分離カラム205及び第3塩素化反応器203を含むことを除いて、
図1に示したともの非常に類似している。運転の際、分離カラム206からのオーバーヘッド流を塩素化反応器202に再循環させるというよりも、むしろ分離カラム206からのオーバーヘッド流は分離カラム205に供給される。分離カラム205は、未反応のTCP及び1,2,2,3−テトラを含むと期待されるオーバーヘッド流が、TCPを含むオーバーヘッド流と1,2,2,3−テトラクロロプロパンを含む底部流に分離されるように運転される。底部流は第3液相塩素化反応器203に供給される。第3液相塩素化反応器203は、HClを含むオーバーヘッド流と未反応の1,2,2,3−テトラクロロプロパン及び1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを含む底部流とを生成させるために使用される。塩素化反応器203からのオーバーヘッド流は分離カラム204に供給され、分離カラム204は、オーバーヘッドラインに無水HClを供給し、一方、底部流は未反応のテトラクロロプロパン反応物を回収するために分離カラム206に戻される。
【0067】
この例において、第3塩素化反応器203は、望ましくは、第1塩素化反応器202と異なる条件で運転される。すなわち、第3塩素化反応器203は、望ましくは、底部流中のヘキサクロロプロパンの生成が最低限に抑えられるような条件で運転される。その結果、当該プロセスの全収率が改善される。
【0068】
本方法により製造された塩素化プロペンは、典型的には、例えば1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(HFO−1234ze)などのヒドロフルオロオレフィンなどのさらなる下流生成物をもたらすように処理することができる。本発明は、塩素化プロペンの改善された製造方法を提供するため、提供される改善は、これらの下流プロセス及び/又は生成物に及ぶと考えられる。例えば2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン(HFO−1234yf)などのヒドロフルオロオレフィンの改善された製造方法も本発明で提供される。
【0069】
ヒドロフルオロオレフィンを提供するための塩素化プロペンの転化は、式C(X)
mCCl(Y)
n(C)(X)
mで表される化合物を、式CF
3CF=CHZで表される少なくとも1種の化合物(ここで、各X、Y及びZは独立にH、F、Cl、I又はBrであり、各mは独立に1、2又は3であり、nは0又は1である)にフッ素化することを含む、概して、単一の反応又は2以上の反応を含むことができる。より具体的な1つの例は、塩素化プロペンの供給原料が、例えば1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)などの化合物を形成するために、触媒気相反応でフッ素化される多段階プロセスを含み得る。1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパンは、次に、触媒気相反応により、2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンに脱塩化水素化される。
【実施例】
【0070】
50mLの123−トリクロロプロパン及び500mgのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を150psigの圧力で管状反応器に加えた。反応器を密閉し、Cl
2流を開始した(30%v/v、200sccm)。次に、反応器を70℃に加熱した。70℃で200分間後、TCPの23%の転化が観測され、生成物流は1,1,2,3−テトラクロロプロパン、1,2,2,3−テトラクロロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン(11233)をそれぞれ59.7%、37.2%、2.0%及び1.2%の選択率で含んでいた。1,1,2,3−テトラクロロプロパンを、次に、生成物混合物から分離し、反応器をパージした。
【0071】
四塩化炭素(45mL)を上記反応器に加え、反応器を密閉し、Cl
2(N
2中30%)を使用して150psigに加圧した。さらにCl
2を約20分間加え、次に、反応器を70℃に加熱した。反応器を密閉し(反応器圧力約150psig)、上記のとおり用意した1,2,2,3−テトラクロロプロパン(1223)(3mL)とCCl
4(7mL)とジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(20mg)の混合物を加えた(t=0)。混合物を70℃で約90分間撹拌し、試料を定期的に採取した。以下の表1は、時間の関数として、全生成物流のモル%として表した生成物分布を示す。表1に示されるように、第1塩素化反応で生成した1,2,2,3−テトラクロロプロパンをさらなる塩素化反応に再循環させることによって、1,2,2,3転化率が例えば20%である場合、所望の中間体1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(11223)の生成がもたらされ、望ましくない1,1,2,2,3,3−ヘキサクロロプロパン(112233)への選択率は3.3%未満であった。
【0072】
【表1】
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
1,2,3−トリクロロプロパンを含む供給流からの塩素化プロペンの製造方法であって、少なくとも1つの塩素化工程及び少なくとも1つの脱塩化水素化工程を含み、当該方法により生成した1,2,2,3−テトラクロロプロパンを再循環及び/又はさらに反応させる、塩素化プロペンの製造方法。
[態様2]
前記塩素化工程によりテトラクロロプロパンとペンタクロロプロパンとを含む混合物が生成する、上記態様1に記載の方法。
[態様3]
前記混合物が分離されて1,2,2,3−テトラクロロプロパンを含む流れをもたらす、上記態様2に記載の方法。
[態様4]
前記1,2,2,3−テトラクロロプロパン流れが第1塩素化工程に再循環される、上記態様3に記載の方法。
[態様5]
前記1,2,2,3−テトラクロロプロパン流れが第2塩素化工程において塩素化されて1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンをもたらす、上記態様3に記載の方法。
[態様6]
前記分離により、さらに、未反応の1,2,3−トリクロロプロパンの流れがもたらされ、当該未反応の1,2,3−トリクロロプロパンの流れは塩素化工程に再循環される、上記態様3に記載の方法。
[態様7]
前記分離により、さらに、HClの流れと未反応のCl2を含む流れがもたらされ、HClが当該方法から無水HClとして回収され、前記Cl2は再循環される、上記態様3に記載の方法。
[態様8]
前記分離により、さらに、1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含む流れと、ペンタクロロプロパン異性体とより重質の副生成物とを含む流れがもたらされる、上記態様3に記載の方法。
[態様9]
1,1,2,3−テトラクロロプロパンを含む前記流れを脱塩化水素化してトリクロロプロペンを含む流れを生成させ、当該トリクロロプロペン流れを塩素化して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンとを含む流れを生成させる、上記態様8に記載の方法。
[態様10]
前記少なくとも1つの塩素化工程が、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)又はこれらの組み合わせを含むフリーラジカル開始剤の存在下で行われる、上記態様1に記載の方法。
[態様11]
前記少なくとも1つの脱塩化水素化工程が、鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム又はこれらの組み合わせを含む脱塩化水素化触媒の存在下で実施される、上記態様1に記載の方法。
[態様12]
前記混合物の残りを脱塩化水素化して、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、2,3,3−テトラクロロプロパン、HCl及び未反応のペンタクロロプロパンを含む流れをもたらす、上記態様3に記載の方法。
[態様13]
前記未反応のペンタクロロプロパンを脱塩化水素化して1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む混合物をもたらす、上記態様12に記載の方法。
[態様14]
前記1,2,2,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素化工程に再循環させて1,2,3−トリクロロプロペンを生成させ、当該1,2,3−トリクロロプロペンを塩素化して1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを生成させる、上記態様3に記載の方法。
[態様15]
上記態様1に記載の方法により製造した塩素化プロペンを2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンに変換することを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンの製造方法。