特許第6420167号(P6420167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6420167車両用シート及びそのパッド、並びにパッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420167
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】車両用シート及びそのパッド、並びにパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/20 20060101AFI20181029BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20181029BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20181029BHJP
   A47C 27/20 20060101ALI20181029BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   A47C7/20
   B60N2/58
   B68G7/06 A
   A47C27/20
   A47C27/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-23966(P2015-23966)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-146865(P2016-146865A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 康徳
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091544(JP,A)
【文献】 実開平03−064099(JP,U)
【文献】 特開平10−179338(JP,A)
【文献】 特開昭56−102208(JP,A)
【文献】 特開平05−004946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/20,27/14−27/20
B68G 7/00−7/12
B60N 2/00−2/90
B29C 39/00−39/24,39/38−39/44,
43/00−43/34,43/44−43/48,
43/52−43/58,45/00−45/24,
45/46−45/63,45/70−45/72,
45/74−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮と、
前記表皮と密着一体化された軟質の発泡樹脂からなるクッション材と、
前記クッション材に埋め込まれた弾性体からなる保形芯材と、
を備え、前記保形芯材の弾性復原力によって前記クッション材及び前記表皮が外方へ向かって押されていることを特徴とする車両用シートのパッド。
【請求項2】
表皮に発泡樹脂からなるクッション材が密着一体化されたパッドと、
前記パッドの裏側に被さる硬質樹脂からなるカバー部材と、
を備え、前記クッション材には弾性体からなる保形芯材が埋め込まれ、
前記保形芯材の弾性復原力によって、前記カバー部材と前記保形芯材との間のクッション材が圧縮されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
表皮の内面上にクッション材を発泡成形するとともに前記クッション材内に保形芯材をインサート成形する車両用シートのパッドの製造方法において、
前記保形芯材が弾性体からなり、
かつ前記インサート成形時には、前記保形芯材を収縮するように弾性変形させておき、
その後、前記保形芯材への収縮力を解除することを特徴とする車両用シートのパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びそのパッド、並びにパッドの製造方法に関し、特に、表皮一体発泡シートに好適なパッド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、表皮一体発泡シートのパッドは、表皮の内面にクッション材が発泡成形されることによって、表皮とクッション材が互いに一体化されている。この種のパッドの裏側には表皮が無い。また、通常、表皮は、クッション材の表側面及び周端面よりも面積が大きいから、表皮の周縁部が余る。そのため、成形後、表皮の余った部分を切り取るか、裏側に巻き込んでいる。よって、外観上、パッドの裏側及び周端部をカバー部材によって覆っている。カバー部材は、インジェクション成形による硬質樹脂にて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−065356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車両用シートにおいては、生産時にパッドとカバー部材との間に隙間が生じることが多い。また、生産時に隙間を無くすよう修正しても、その後、パッドの収縮により隙間が生じることもある。このような隙間があると見栄えが悪い。また、稀に、パッドの発泡ウレタン製のクッション材が、隙間から侵入した水分によって加水分解等を起こして劣化し、パッドの機能を果たさなくなることもある。
【0005】
従来の対策としては、生産時に隙間が生じた場合は、その都度、カバー部材に合わせて、パッドの金型を修正することで、パッドの寸法を大きくしているが、金型の修正は煩雑で費用を要する。
本発明は、上記事情に鑑み車両用の表皮一体発泡シートにおいて、パッドとカバー部材との間に隙間が出来るのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明に係る車両用シートのパッドは、
表皮と、
前記表皮と密着一体化された発泡樹脂からなるクッション材と、
前記クッション材に埋め込まれた弾性体からなる保形芯材と、
を備え、前記保形芯材の弾性復原力によって前記クッション材が外方へ向かって押されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る車両用シートは、
表皮に発泡樹脂からなるクッション材が密着一体化されたパッドと、
前記パッドの裏側に被さる硬質樹脂からなるカバー部材と、
を備え、前記クッション材には弾性体からなる保形芯材が埋め込まれ、
前記保形芯材の弾性復原力によって、前記カバー部材と前記保形芯材との間のクッション材が圧縮されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る製造方法は、
表皮の内面上にクッション材を発泡成形するとともに前記クッション材内に保形芯材をインサート成形する車両用シートのパッドの製造方法において、
前記保形芯材が弾性体からなり、
かつ前記インサート成形時には、前記保形芯材を収縮するように弾性変形させておき、
その後、前記保形芯材への収縮力を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両用シートのパッドとカバー部材との間に隙間が出来るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートの正面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿う、上記車両用シートの断面図である。
図3図3(a)は、車両用シートのパッドの保形芯材を、自然状態で示す正面図である。図3(b)は、上記保形芯材を、インサート成形時の状態を実線にて示し、前記自然状態を二点鎖線にて示す正面図である。
図4図4は、図2のIV−IV線に沿う、上記車両用シートの一部分の正面断面図であり、上記インサート成形時の保形芯材を二点鎖線にて示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、車両用シート1は、座部2と、背もたれ部3を備えている。背もたれ部3は、パッド10と、カバー部材20を有している。パッド10は、表皮11と、クッション材12を含む。
【0012】
表皮11は、 例えば樹脂層及び裏基布等を積層した積層体にて構成されている。
クッション材12は、発泡ウレタン等の発泡樹脂にて構成されている。このクッション材12が、表皮11の内面上で発泡成形されている。これによって、表皮11とクッション材12とが互いに密着一体化されている。
【0013】
表皮11の面積は、クッション材12の表側面及び周端面の面積よりも大きい。
表皮11の中央部が、クッション材12の表側面及び周端面に被さるとともに密着一体化されている。表皮11の周端部は、余り端部11eとなる。余り端部11eは、パッド10の裏側に折り込まれ、クッション材12の裏側面に被さっている。
【0014】
パッド10の裏側にカバー部材20が配置されている。カバー部材20は、インジェクション成形による硬質樹脂にて構成されている。このカバー部材20によって、表皮11の余り端部11e及びクッション材12の裏側面が覆われている。これによって、背もたれ部3の美観が確保されている。
【0015】
クッション材12の上側部の内部には、保形芯材13が埋め込まれている。保形芯材13は、弾性を有する金属等の弾性体にて構成されている。好ましくは、保形芯材13は、ばね鋼製のワイヤにて構成されている。保形芯材13は、概略左右方向(パッド10の幅方向)に向けられとともに、中央部から両端部へ向かって斜め下方へ延びるように、屈曲ないしは湾曲されている。保形芯材13によって、パッド10の形状が保持されている。
【0016】
しかも、保形芯材13には、左右外方へ展開ないしは伸長するように弾性復原力が発現している。つまり、パッド10内における保形芯材13は、図3(a)に示す自然状態よりも屈曲ないしは湾曲されて、パッド10の幅方向(左右方向)に収縮されており、これによって、元の自然状態に弾性復帰しようとしている。図4の白抜き矢印にて示すように、この保形芯材13の弾性復原力によって、保形芯材13とカバー部材20との間のクッション材12が外方へ向かって押されて圧縮されている。
【0017】
パッド10は、次のようにして作製される。
先ず、平坦なシート状の表皮11を作製する。
この表皮11を金型(図示省略)にセットし、表皮11を所定形状に真空成形する。
【0018】
別途、保形芯材13を形成する。図3(a)に示すように、保形芯材13の自然状態(無負荷時)における形状は、屈曲度ないしは湾曲度が比較的小さい。図3(b)の実線にて示すように、この保形芯材13を、屈曲度ないしは湾曲度が大きくなるように弾性変形させることでパッド10の幅方向(左右)に収縮させる。しかも、この段階では、図4の二点鎖線に示すように、保形芯材13を、完成後のパッド10内の保形芯材13(図4の実線)よりも大きく屈曲ないしは湾曲させておく。
金型には、保形芯材13の取付部が設けられている。この取付部に保形芯材13をセットする。この取付部によって保形芯材13が弾性変形状態(図3(b)の実線)に保持される。
【0019】
保形芯材13のセット後、金型を閉じる。金型の成型面には、上記真空成形した表皮11を残置しておく。
続いて、ウレタン樹脂を金型内に注入して発泡させる。これによって、表皮11の内面上にクッション材12が発泡成形され、表皮11とクッション材12とが密着一体化される。かつ、保形芯材13がクッション材12内に埋設(インサート成形)される。これによって、パッド10が作製される。
【0020】
その後、パッド10を脱型する。このとき、上記取付部を保形芯材13から外す。これによって、保形芯材13への収縮力が解除され、保形芯材13が弾性復帰可能になる。
そして、表皮11の余り端部11eをクッション材12の裏側に折り込み、かつパッド10の裏側にカバー部材20を被せる。
【0021】
このようにして作製されたパッド10においては、図4に示すように、クッション材12内の保形芯材13が、その弾性によってインサート成形時(同図の二点鎖線)よりも展開ないしは伸長し、更に自然状態(図3(a))へ向けて展開ないしは伸長しようとする。このため、保形芯材13とカバー部材20との間のクッション材12が、外方へ向かって押されて圧縮される。したがって、クッション材12に被さる表皮11がカバー部材20に押し付けられる。これによって、カバー部材20とパッド10との間に隙間が形成されるのを防止することができる。よって、上記金型を修正してパッド10の寸法を大きくする必要がなく、製造コストの増大を回避できる。
隙間を防止することで、車両用シート1の美観を確保することができる。また、クッション材12に水分が侵入するのを防止でき、ひいてはクッション材12の加水分解を起こして劣化するのを確実に防止できる。よって、クッション機能を長期間維持することができる。
【0022】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、保形芯材13の形状によっては、インサート成形時の保形芯材13を曲げ変形させるのではなく圧縮変形させてもよい。
パッド10内の保形芯材13が、ほぼ自然状態(図3(a))まで弾性復帰していてもよい。
保形芯材13が上下方向に収縮、展開するように弾性変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、例えば作業車両のシートとして適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 車両用シート
2 座部
3 背もたれ部
10 パッド
11 表皮
11e 余り部分
12 クッション材
13 保形芯材
20 カバー部材
図1
図2
図3
図4