特許第6420177号(P6420177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6420177制御システム、受信装置およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420177
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】制御システム、受信装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/14 20160101AFI20181029BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20181029BHJP
【FI】
   H02P21/14
   H02P29/028
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-37087(P2015-37087)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-163364(P2016-163364A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】北条 善久
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−124858(JP,A)
【文献】 特開平07−271441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/14
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器と、
前記出力電圧指令を前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令受信処理器と、
電圧指令ベクトルを生成する指令生成器と、
前記指令生成器により生成された電圧指令ベクトルと、通信が正常か否かを判定するための確認信号とを送信する電圧指令送信器と、
前記電圧指令送信器から送信された電圧指令ベクトルと確認信号とを受信し、前記受信した確認信号に基づき前記電圧指令送信器との間の通信が正常であるか否かを判定する電圧指令受信器と、を備え、
前記電圧指令受信処理器は、
前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成する予測演算器と、
前記電圧指令受信器により前記通信が正常であると判定された場合には、前記電圧指令受信器により受信された電圧指令ベクトルを、前記電圧指令受信器により前記通信が正常でないと判定された場合には、前記予測演算器により生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令選択器と、
を有することを特徴とする制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御システムにおいて、
前記出力電圧指令は、互いに直交するa軸およびb軸それぞれの電圧成分であるa軸電圧成分v(k)とb軸電圧成分v(k)とにより表わされる出力電圧指令ベクトルv(k)であり、前記1サンプリング前の出力電圧指令は、a軸電圧成分v(k−1)と、b軸電圧成分v(k−1)とにより表わされる出力電圧指令ベクトルv(k−1)であり、前記予測電圧指令は、a軸電圧成分vax(k+1)と、b軸電圧成分vbx(k+1)とにより表わされる予測電圧指令ベクトルv(k+1)であり、
前記予測演算器は、下記の式を用いて前記予測電圧指令ベクトルv(k+1)のa軸電圧成分vax(k+1)およびb軸電圧成分vbx(k+1)を演算することを特徴とする制御システム。
【数1】
【請求項3】
電圧指令ベクトルを送信装置から受信する受信装置であって、
前記送信装置から送信されてきた、前記電圧指令ベクトルおよび通信が正常か否かを判定するための確認信号を受信し、前記受信した確認信号に基づき、前記送信装置との間の通信が正常であるか否かを判定する電圧指令受信器と、
出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器に前記出力電圧指令を出力する電圧指令受信処理器とを備え、
前記電圧指令受信処理器は、
前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成する予測演算器と、
前記電圧指令受信器により前記通信が正常であると判定された場合には、前記電圧指令受信器により受信された電圧指令ベクトルを、前記電圧指令受信器により前記通信が正常でないと判定された場合には、前記予測演算器により生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令選択器と、
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項4】
電圧指令ベクトルを送信装置から受信する受信装置の制御方法であって、
前記送信装置から送信されてきた、前記電圧指令ベクトルおよび通信が正常か否かを判定するための確認信号を受信し、前記受信した確認信号に基づき、前記送信装置との間の通信が正常であるか否かを判定するステップと、
出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器に前記出力電圧指令を出力するステップと、
前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成するステップと、
前記通信が正常であると判定された場合には、前記受信された電圧指令ベクトルを、前記通信が正常でないと判定された場合には、前記生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力するステップと、
を含むことを特徴とする受信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電動機の制御システム、受信装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三相交流電動機の動作を制御する制御システムが記載されている。図4は、このような制御システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0003】
図4に示す制御システム1aは、三相交流電力変換器11と、電流検出器12と、位相検出器13と、電流成分変換器14と、指令変換器15と、電流制御器16と、電圧指令送信器17aと、電圧指令受信器18aとを有する。電流成分変換器14、指令変換器15、電流制御器16および電圧指令送信器17aは、送信装置2aを構成し、電圧指令受信器18aは受信装置3aを構成する。
【0004】
三相交流電力変換器11は、三相交流電動機4に印加する電圧を指定する出力電圧指令V(k)*に基づき、三相交流電動機4に電圧を印加する。
【0005】
電流検出器12は、三相交流電力変換器11から三相交流電動機4への入力電流iを検出し、検出結果を電流成分変換器14に出力する。
【0006】
位相検出器13は、三相交流電動機4の回転子の位相情報θ(k)を検出し、検出結果を電流成分変換器14に出力する。
【0007】
電流成分変換器14は、電流検出器12により検出された入力電流iと位相検出器13により検出された位相情報θ(k)とに基づき、検出された電流成分を、d軸の電流成分であるd軸電流idと、d軸に直交するq軸の電流成分であるq軸電流iqとに変換して、電流制御器16に出力する。
【0008】
指令変換器15は、三相交流電動機4の動作を制御する制御指令であるトルク指令T*が入力され、三相交流電動機4の出力トルクがトルク指令T*に追従するようなd軸電流およびq軸電流を指定するd軸電流指令id*およびq軸電流指令iq*を生成し、電流制御器16に出力する。
【0009】
電流制御器16は、d軸電流idがd軸電流指令id*に追従し、q軸電流iqがq軸電流指令iq*に追従するような電圧を指定するdq電圧指令vdq*を生成し、電圧指令送信器17aに出力する。
【0010】
電圧指令送信器17aは、電流制御器16から出力されたdq電圧指令vdq*を送信電圧指令vtx*として、シリアル通信などにより、電圧指令受信器18aに送信する。
【0011】
電圧指令受信器18aは、電圧指令送信器17aから送信されてきた送信電圧指令vtx*を受信し、出力電圧指令v(k)*として三相交流電力変換器11に出力する。
【0012】
電圧指令送信器17aから電圧指令受信器18aに指令を送信することで、指令変換器15が電流制御器16の指令を生成するための構成と、三相交流電力変換器11とを離れて設けることが可能となり、配置上の制約を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−196564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図4に示す制御システム1aにおいては、電圧指令送信器17aと電圧指令受信器18aとの間の通信に異常が発生し、電圧指令受信器18aが送信電圧指令vtx*を受信できない場合、三相交流電動機4を制御することができなくなるという課題がある。
【0015】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、通信異常が発生した場合にも、三相交流電動機の制御を可能とすることができる制御システム、受信装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換装置は、出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器と、前記出力電圧指令を前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令受信処理器と、電圧指令を生成する指令生成器と、前記指令生成器により生成された電圧指令と、通信が正常か否かを判定するための確認信号とを送信する電圧指令送信器と、前記電圧指令送信器から送信された電圧指令と確認信号とを受信し、前記受信した確認信号に基づき前記電圧指令送信器との間の通信が正常であるか否かを判定する電圧指令受信器と、を備え、前記電圧指令受信処理器は、前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成する予測演算器と、前記電圧指令受信器により前記通信が正常であると判定された場合には、前記電圧指令受信器により受信された電圧指令を、前記電圧指令受信器により前記通信が正常でないと判定された場合には、前記予測演算器により生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令選択器と、を有する。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る受信装置は、電圧指令を送信装置から受信する受信装置であって、前記送信装置から送信されてきた、前記電圧指令および通信が正常か否かを判定するための確認信号を受信し、前記受信した確認信号に基づき、前記送信装置との間の通信が正常であるか否かを判定する電圧指令受信器と、出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器に前記出力電圧指令を出力する電圧指令受信処理器とを備え、前記電圧指令受信処理器は、前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成する予測演算器と、前記電圧指令受信器により前記通信が正常であると判定された場合には、前記電圧指令受信器により受信された電圧指令を、前記電圧指令受信器により前記通信が正常でないと判定された場合には、前記予測演算器により生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力する電圧指令選択器と、を有する。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る受信装置の制御方法は、電圧指令を送信装置から受信する受信装置の制御方法であって、前記送信装置から送信されてきた、前記電圧指令および通信が正常か否かを判定するための確認信号を受信し、前記受信した確認信号に基づき、前記送信装置との間の通信が正常であるか否かを判定するステップと、出力電圧指令に基づいて三相交流電動機に電圧を印加する三相交流電力変換器に前記出力電圧指令を出力するステップと、前記三相交流電力変換器に出力された出力電圧指令と、前記出力電圧指令の1サンプリング前に出力された出力電圧指令とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令を生成するステップと、前記通信が正常であると判定された場合には、前記受信された電圧指令を、前記通信が正常でないと判定された場合には、前記生成された予測電圧指令を、前記出力電圧指令として前記三相交流電力変換器に出力するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る制御システム、受信装置およびその制御方法によれば、通信異常が発生した場合にも、出力電圧指令を予測し、三相交流電動機の制御を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図1に示す予測演算器の構成を示すブロック図である。
図3】出力電圧指令ベクトルと予測電圧指令ベクトルとの関係を示す図である。
図4】関連する制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御システム1の構成を示す図である。図1において、図4と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0023】
図1に示す制御システム1は、三相交流電力変換器11と、電流検出器12と、位相検出器13と、電流成分変換器14と、指令変換器15と、電流制御器(指令生成器)16と、電圧指令送信器17と、電圧指令受信器18と、電圧指令受信処理器100とを有する。電流成分変換器14、指令変換器15、電流制御器16および電圧指令送信器17は、送信装置2を構成し、電圧指令受信器18および電圧指令受信処理器100は、受信装置3を構成する。図4に示す制御システム1aと比較して、送信装置2aを送信装置2に変更した点と、受信装置3aを受信装置3に変更した点とが異なる。送信装置2は、送信装置2aと比較して、電圧指令送信器17aを電圧指令送信器17に変更した点が異なる。受信装置3は、受信装置3aと比較して、電圧指令受信器18aを電圧指令受信器18に変更した点と、電圧指令受信処理器100を追加した点とが異なる。
【0024】
電圧指令送信器17は、電流制御器16から出力されたトルク指令T*(制御指令)に応じたdq電圧指令ベクトルvdq*を送信電圧指令ベクトルvtx*として、電圧指令受信器18に送信する。また、電圧指令送信器17は、送信電圧指令ベクトルvtx*とともに、電圧指令送信器17と電圧指令受信器18との間の通信が正常であるか否かを判定するための通信確認信号SUMを電圧指令受信器18に送信する。
【0025】
電圧指令受信器18は、電圧指令送信器17から送信されてきた通信確認信号SUMを受信し、通信確認信号SUMに基づき、電圧指令送信器17との間の通信が正常であるか否かを判定し、判定結果を示す通信確認結果Chkを電圧指令受信処理器100に出力する。例えば、電圧指令受信器18は、チェックサム方式を用いて、電圧指令送信器17との間の通信が正常であるか否かを判定する。また、電圧指令受信器18は、電圧指令送信器17から送信されてきた送信電圧指令ベクトルvtx*を受信し、受信電圧指令ベクトルvrx*として電圧指令受信処理器100に出力する。
【0026】
電圧指令受信処理器100は、電圧指令受信器18からの通信確認結果Chkおよび受信電圧指令ベクトルvrx*の入力に応じて、出力電圧指令ベクトルv(k)*を三相交流電力変換器11に出力する。
【0027】
電圧指令受信処理器100は、電圧指令記憶器101と、予測演算器102と、電圧指令選択器103とを有する。
【0028】
電圧指令記憶器101は、1サンプリング前に三相交流電力変換器11に出力された出力電圧指令ベクトルv(k)*を、1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*として記憶する。
【0029】
予測演算器102は、三相交流電力変換器11に出力された出力電圧指令ベクトルv(k)*と、電圧指令記憶器101に記憶されている1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*とに基づき、1サンプリング後の予測電圧指令ベクトルv(k+1)*を演算し、電圧指令選択器103に出力する。
【0030】
電圧指令選択器103は、通信確認結果Chkが、通信が正常である旨を示す場合には、電圧指令受信器18から出力された受信電圧指令ベクトルvrx*を出力電圧指令ベクトルv(k)*として三相交流電力変換器11に出力する。一方、電圧指令選択器103は、通信確認結果Chkが、通信が正常でない旨を示す場合には、予測演算器102から出力された予測電圧指令ベクトルv(k+1)*を出力電圧指令ベクトルv(k)*として、三相交流電力変換器11に出力する。
【0031】
次に、予測演算器102の構成について、図2に示すブロック図を参照して説明する。
【0032】
図2に示す予測演算器102は、電圧成分変換器1021と、電圧指令予測演算器1022とを有する。
【0033】
電圧成分変換器1021は、1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*をa軸の電圧成分(a軸電圧成分va(k−1)*)とa軸に直交するb軸の電圧成分(b軸電圧成分vb(k−1)*)とに変換する。また、電圧成分変換器1021は、出力電圧指令ベクトルv(k)*をa軸電圧成分va(k)*とb軸電圧成分vb(k)*とに変換する。電圧成分変換器1021は、a軸電圧成分va(k−1)*,va(k)*と、b軸電圧成分vb(k−1)*,vb(k)*とを電圧指令予測演算器1022に出力する。なお、a軸およびb軸をそれぞれ、a軸およびb軸に直交する軸を中心として位相θだけ回転させるとd軸およびq軸に一致する。
【0034】
電圧指令予測演算器1022は、電圧成分変換器1021から出力されたa軸電圧成分va(k−1)*,va(k)*およびb軸電圧成分vb(k−1)*,vb(k)*に基づき、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*を演算する。以下では、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*の演算方法について詳細に説明する。
【0035】
図3は、1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*、出力電圧指令ベクトルv(k)*および予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*の関係を示す図である。
【0036】
図3において、θ(k)は出力電圧指令ベクトルv(k)*のa軸電圧成分va(k)*を基準とした位相であり、θ(k−1)は1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*のa軸電圧成分va(k−1)*を基準とした位相である。
【0037】
出力電圧指令ベクトルv(k)*、1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*および予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*をそれぞれ、a軸電圧成分とb軸電圧成分とに分けて表わすと以下の式(1)のようになる。なお、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*の傾きは、図3に示すように、出力電圧指令ベクトルv(k)*からΔθ2分だけずれたものとする。
【数1】
【0038】
式(1)において、va(k)*は出力電圧指令ベクトルv(k)*のa軸電圧成分であり、vb(k)*は出力電圧指令ベクトルv(k)*のb軸電圧成分であり、va(k−1)*は1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*のa軸電圧成分であり、vb(k−1)*は1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*のb軸電圧成分であり、vax(k+1)*は予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*のa軸電圧成分であり、vbx(k+1)*は予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*のb軸電圧成分である。
【0039】
出力電圧指令ベクトルv(k)*と1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*との外積は以下の式(2)のように表わされる。
【数2】
【0040】
式(2)において、Δθ1は、出力電圧指令ベクトルv(k)*の出力時の位相情報θ(k)と1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*の出力時の位相情報θ(k−1)との位相差である。また、|v(k)*|は出力電圧指令ベクトルv(k)*の絶対値であり、|v(k−1)*|は1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*の絶対値である。
【0041】
位相差Δθ1は、図3に示すように、サンプリング間の位相差である。サンプリング期間が非常に短ければ、位相差Δθ1は非常に小さくなるため、式(2)におけるsinΔθ1はΔθ1と近似することが可能である。この場合、式(2)は以下の式(3)のように表わされる。
【数3】
【0042】
式(3)より位相差Δθ1は以下の式(4)のように表わされる。
【数4】
【0043】
さらに、位相差Δθ1が小さければ、サンプリング期間の三相交流電動機4の回転速度はほぼ一定であるとみなすことができる。一般に、回転速度と電圧指令の絶対値の大きさとは比例関係にあるため、回転速度が一定であれば、電圧指令の絶対値は等しくなる。よって、出力電圧指令ベクトルv(k)*の絶対値の大きさと1サンプリング前の出力電圧指令ベクトルv(k−1)*の絶対値の大きさとは等しくなる。この場合、式(4)は以下の式(5)のように表わされる。
【数5】
【0044】
ここで、サンプリング期間が非常に短く、回転速度もほぼ変化がない場合、出力電圧指令ベクトルv(k)*と予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*との位相差Δθ2も位相差Δθ1と等しくなり、また、出力電圧指令ベクトルv(k)*の絶対値の大きさと予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*の絶対値の大きさとも等しくなる。
【0045】
したがって、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*は以下の式(6)のように表わされる。
【数6】
【0046】
さらに、式(6)の予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*のa軸電圧成分vax(k+1)*を解くと、式(7)のように表わされる。
【数7】
【0047】
ここで、式(7)の出力電圧指令ベクトルv(k)*の絶対値とcosθ(k)との乗算値は式(1)の出力電圧指令ベクトルv(k)*のa軸電圧成分となり、出力電圧指令ベクトルv(k)*の絶対値とsinθ(k)との乗算値は式(1)の出力電圧指令ベクトルv(k)のb軸電圧成分となるので、式(7)は以下の式(8)のように表わされる。
【数8】
【0048】
同様に、式(6)の予測電圧指令ベクトルv(k+1)*のb軸電圧成分vbx(k+1)*を解くと、式(9)のように表わされる。
【数9】
【0049】
以上より、電圧指令予測演算器1022は、式(8)および式(9)を用いて、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*を演算することができる。
【0050】
このように本実施形態によれば、制御装置10は、出力電圧指令ベクトルv(k)*に基づいて三相交流電動機4に電圧を印加する三相交流電力変換器11と、出力電圧指令ベクトルv(k)*を三相交流電力変換器11に出力する電圧指令受信処理器100と、電圧指令を生成する電流制御器16と、電流制御器16により生成された電圧指令および通信確認信号SUMを送信する電圧指令送信器17と、電圧指令送信器17から送信された電圧指令および信号確認通信SUMを受信し、通信確認信号SUMに基づき電圧指令送信器17との間の通信が正常であるか否かを判定する電圧指令受信器18とを有する。
【0051】
電圧指令受信処理器100は、三相交流電力変換器11に出力した出力電圧指令ベクトルv(k)*と、出力電圧指令ベクトルv(k)*の1サンプリング前に出力した出力電圧指令ベクトルv(k−1)*とに基づき、1サンプリング後の出力電圧指令である予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*を生成する予測演算器102と、電圧指令受信器18により通信が正常であると判定された場合には、電圧指令受信器18により受信された電圧指令を出力電圧指令ベクトルv(k)*として出力し、電圧指令受信器18により通信が正常でないと判定された場合には、予測演算器102により生成された予測電圧指令ベクトルを出力電圧指令ベクトルv(k)*として出力する電圧指令選択器103とを有する。
【0052】
そのため、電圧指令送信器17と電圧指令受信器18との間の通信に異常が発生した場合にも、予測電圧指令ベクトルvx(k+1)*に基づき三相交流電動機4の制御が可能となる。
【0053】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 制御システム
2 送信装置
3 受信装置
4 三相交流電動機
11 三相交流電力変換器
12 電流検出器
13 位相検出器
14 電流成分検出器
15 指令変換器
16 電流制御器(指令生成器)
17 電圧指令送信器
18 電圧指令受信器
100 電圧指令受信処理器
101 電圧指令記憶器
102 予測演算器
103 電圧指令選択器
1021 電圧成分変換器
1022 電圧指令予測演算器
図1
図2
図3
図4