特許第6420201号(P6420201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420201
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
   F25J3/04 101
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-95114(P2015-95114)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2016-211777(P2016-211777A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】井上 憲一
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−007512(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008016647(DE,A1)
【文献】 特表2013−519060(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02642229(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0240451(US,A1)
【文献】 米国特許第03394555(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の原料空気を深冷分離して気体状態の窒素を生成する精留塔と、
前記精留塔から取り出された気体状態の窒素のうち、一部の窒素が供給され、供給された窒素を気体状態から液体状態に変化させて前記精留塔に戻す凝縮回路と、
冷却回路と、を備え、
前記凝縮回路は、
液体窒素の沸点より高い臨界温度を有する超電導材料で構成された超電導磁石を含む超電導モータと、
前記超電導モータによって駆動され、前記凝縮回路を流れる気体状態の窒素を圧縮する圧縮部と、を備え、
前記冷却回路は、前記凝縮回路を流れる液体状態の窒素を用いて、前記超電導磁石を前記臨界温度以下に冷却し
前記凝縮回路は、
前記圧縮部によって圧縮された気体状態の窒素を膨張させることにより、窒素を気体状態から液体状態に変化させる膨張部と、
前記膨張部と前記精留塔とを接続し、液体状態の窒素を前記精留塔に導く第4の流路と、をさらに備え、
前記冷却回路は、
前記第4の流路に接続され、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の一部を前記超電導磁石に供給する第5の流路と、
前記精留塔に接続され、前記第5の流路によって前記超電導磁石に供給された液体状態の窒素を前記精留塔に導く第7の流路と、を備える、空気分離装置。
【請求項2】
前記冷却回路は、
前記第5の流路又は前記第7の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第1の弁部と、
前記超電導磁石の温度を測定する第1の測定部と、
前記第1の測定部で測定された温度が、前記臨界温度以下の予め定められた値より小さいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値のとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、前記第1の弁部の開閉量を制御する第1の制御部と、をさらに備える請求項に記載の空気分離装置。
【請求項3】
前記冷却回路は、
前記第5の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第2の弁部と、
前記第7の流路を流れる液体状態の窒素の温度を測定する第2の測定部と、
前記第2の測定部で測定された温度が、前記臨界温度以下の予め定められた値より小さいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値のとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、前記第2の弁部の開閉量を制御する第2の制御部と、をさらに備える請求項に記載の空気分離装置。
【請求項4】
前記冷却回路は、前記第4の流路と前記第5の流路との接続部より下流に設けられ、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第3の弁部をさらに備え、
前記第1の制御部は、前記第3の弁部を開けた状態で、前記第1の弁部の前記開閉量を制御しており、前記第1の弁部が全開の状態で、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記第3の弁部を所定量閉じる制御をする請求項に記載の空気分離装置。
【請求項5】
前記冷却回路は、前記第4の流路と前記第5の流路との接続部より下流に設けられ、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第3の弁部をさらに備え、
前記第2の制御部は、前記第3の弁部を開けた状態で、前記第2の弁部の前記開閉量を制御しており、前記第2の弁部が全開の状態で、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記第3の弁部を所定量閉じる制御をする請求項に記載の空気分離装置。
【請求項6】
前記精留塔は、液体状態の原料空気を深冷分離して液体状態の酸素を生成し、
前記凝縮回路は、前記精留塔から取り出された液体状態の酸素と、前記圧縮部によって圧縮された気体状態の窒素とで熱交換させることによって、気体状態の窒素を冷却し、かつ、液体状態の酸素を気体状態にする熱交換部をさらに備える請求項1〜のいずれか一項に記載の空気分離装置。
【請求項7】
前記超電導モータ及び前記圧縮部を収容する断熱密閉容器をさらに備える請求項1〜のいずれか一項に記載の空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気を分離して酸素と窒素とを大規模に製造する場合、現在、深冷分離法が広く用いられている。深冷分離法では、空気を液化し、酸素と窒素との沸点差を利用して蒸留(精留)することにより、空気を酸素と窒素とに分離する。深冷分離と言われるのは、空気の液化温度が−170〜−190℃付近であり、深冷分離法が断熱された極低温の系で実施されるからである。
【0003】
深冷分離法を用いる空気分離装置は、精留塔を備えており、精留塔は、原料空気の組成である窒素、酸素の液化温度まで原料空気を冷却することで、気液分離によって純度の高い窒素および酸素を生成する。
【0004】
深冷分離法を用いる空気分離装置として、窒素を還流する凝縮回路を備える空気分離装置がある(例えば、特許文献1,2参照)。凝縮回路は、精留塔から取り出された気体状態の窒素(製品窒素)のうち、一部の窒素を液化して精留塔に戻す。この空気分離装置よれば、窒素の凝縮回路を備え、これにより、窒素の凝縮熱を酸素の蒸発熱として与えることで、熱循環量が増えるので、凝縮回路を備えない空気分離装置と比べて、空気分離装置のエネルギー消費を20〜30%削減できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5415192号明細書
【特許文献2】特許第5684058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、地球温暖化の抑制、及び、エネルギー価格の高騰により、省エネルギーが強く要請されており、空気分離装置も例外ではない。
【0007】
本発明の目的は、精留塔から取り出された気体状態の窒素のうち、一部の窒素を液化して精留塔に戻す凝縮回路を備える空気分離装置に関して、省エネルギー化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気分離装置は、液体状態の原料空気を深冷分離して気体状態の窒素を生成する精留塔と、前記精留塔から取り出された気体状態の窒素のうち、一部の窒素が供給され、供給された窒素を気体状態から液体状態に変化させて前記精留塔に戻す凝縮回路と、冷却回路と、を備え、前記凝縮回路は、液体窒素の沸点より高い臨界温度を有する超電導材料で構成された超電導磁石を含む超電導モータと、前記超電導モータによって駆動され、前記凝縮回路を流れる気体状態の窒素を圧縮する圧縮部と、を備え、前記冷却回路は、前記凝縮回路を流れる液体状態の窒素、又は、前記凝縮回路を流れ、前記圧縮部に導かれる前の気体状態の窒素を用いて、前記超電導磁石を前記臨界温度以下に冷却する。
【0009】
超電導モータは、超電導磁石を構成する超電導材料の臨界温度以下に、超電導磁石が冷却された状態で使用される。超電導磁石の冷却には、臨界温度以下の温度を有する冷媒が用いられる。冷媒の温度を臨界温度以下にするには、冷凍機が必要となるが、これより、空気分離装置のエネルギー消費が増加する。
【0010】
本発明に係る空気分離装置では、超電導磁石を臨界温度以下に冷却する冷媒として、窒素を還流する凝縮回路を流れる液体状態又は気体状態の窒素を用いる。従って、本発明に係る空気分離装置によれば、冷凍機が不要なので、空気分離装置の省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
気体状態の窒素を冷媒に用いる場合、圧縮部に導かれる前の気体状態の窒素としたのは、この窒素は、ボイルオフガスであり、温度が77K(液化窒素の沸点)だからである。
【0012】
上記構成において、前記凝縮回路は、前記精留塔と前記圧縮部とを接続し、前記精留塔から供給された気体状態の窒素を前記圧縮部に導く第1の流路をさらに備え、前記冷却回路は、前記第1の流路と接続され、前記第1の流路を流れる気体状態の窒素の一部を前記超電導磁石に供給する第2の流路と、前記第1の流路と接続され、前記第2の流路によって前記超電導磁石に供給された気体状態の窒素を前記第1の流路に戻す第3の流路と、を備える。
【0013】
この構成は、凝縮回路を流れ、圧縮部に導かれる前の気体状態の窒素を用いて、超電導磁石を臨界温度以下に冷却する。
【0014】
上記構成において、前記凝縮回路は、前記圧縮部によって圧縮された気体状態の窒素を膨張させることにより、窒素を気体状態から液体状態に変化させる膨張部と、前記膨張部と前記精留塔とを接続し、液体状態の窒素を前記精留塔に導く第4の流路と、をさらに備え、前記冷却回路は、前記第4の流路に接続され、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の一部を前記超電導磁石に供給する第5の流路と、前記第4の流路に接続され、前記第5の流路によって前記超電導磁石に供給された液体状態の窒素を前記第4の流路に戻す第6の流路と、を備える。
【0015】
超電導モータの運転中に、急激な負荷変動等が発生したとき、超電導モータには渦電流による発熱が生じる。この発熱で超電導磁石の微小部分で超電導状態が破れると、そこから局所的に発熱し、これが原因で超電導モータが破損することがある。
【0016】
従って、上記渦電流による発熱が生じたとき、この発熱を速やかに冷却する必要がある。液体は気体に比べて熱伝達係数が大きい。この構成によれば、液体状態の窒素(すなわち、液化窒素)を用いて、超電導磁石を冷却するので、上記渦電流による発熱が生じても、その発熱を速やかに冷却することができる。
【0017】
上記構成において、前記冷却回路は、前記第6の流路の替わりに、前記精留塔に接続され、前記第5の流路によって前記超電導磁石に供給された液体状態の窒素を前記精留塔に導く第7の流路を備える。
【0018】
精留塔内は、第4の流路内より圧力が低いので、第5の流路によって超電導コイルに供給された液体状態の窒素を、第4の流路に戻すよりも、精留塔に戻す方が、液体状態の窒素を速やかに精留塔に戻すことができる。従って、この構成によれば、超電導磁石の冷却効率を高めることができる。
【0019】
上記構成において、前記冷却回路は、前記第5の流路又は前記第7の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第1の弁部と、前記超電導磁石の温度を測定する第1の測定部と、前記第1の測定部で測定された温度が、前記臨界温度以下の予め定められた値より小さいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値のとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、前記第1の弁部の開閉量を制御する第1の制御部と、をさらに備える。
【0020】
この構成によれば、超電導磁石に供給する液体状態の窒素の量を必要最小限度にしつつ、超電導コイルの温度を予め定められた値に自動的に制御することができる。
【0021】
また、この構成によれば、超電導磁石の温度を直接測定するので、超電導磁石の温度を正確に制御できる。
【0022】
上記構成において、前記冷却回路は、前記第5の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第2の弁部と、前記第7の流路を流れる液体状態の窒素の温度を測定する第2の測定部と、前記第2の測定部で測定された温度が、前記臨界温度以下の予め定められた値より小さいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値のとき、前記超電導磁石に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、前記第2の弁部の開閉量を制御する第2の制御部と、をさらに備える。
【0023】
この構成によれば、超電導磁石に供給する液体状態の窒素の量を必要最小限度にしつつ、超電導磁石の温度を予め定められた値に自動的に制御することができる。
【0024】
また、この構成によれば、何らかの理由で超電導磁石の温度を直接測定できないとき、第7の流路を流れる液体状態の窒素の温度から間接的に超電導磁石の温度を推定して超電導磁石の温度を制御する。
【0025】
上記構成において、前記冷却回路は、前記第4の流路と前記第5の流路との接続部より下流に設けられ、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第3の弁部をさらに備え、前記第1の制御部は、前記第3の弁部を開けた状態で、前記第1の弁部の前記開閉量を制御しており、前記第1の弁部が全開の状態で、前記第1の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記第3の弁部を所定量閉じる制御をする。
【0026】
この構成によれば、第1の制御部は、第1の弁部が全開の状態で、第1の測定部で測定された温度が予め定められた値より大きいとき、第3の弁部を所定量閉じる制御をする。これにより、第4の流路を流れる液体状態の窒素の量が減り、第5の流路を流れる液体状態の窒素の量を増やすことができるので、超電導磁石をより冷却することができる。
【0027】
上記構成において、前記冷却回路は、前記第4の流路と前記第5の流路との接続部より下流に設けられ、前記第4の流路を流れる液体状態の窒素の流量を調節する第3の弁部をさらに備え、前記第2の制御部は、前記第3の弁部を開けた状態で、前記第2の弁部の前記開閉量を制御しており、前記第2の弁部が全開の状態で、前記第2の測定部で測定された温度が前記予め定められた値より大きいとき、前記第3の弁部を所定量閉じる制御をする。
【0028】
この構成によれば、第2の制御部は、第2の弁部が全開の状態で、第2の測定部で測定された温度が予め定められた値より大きいとき、第3の弁部を所定量閉じる制御をする。これにより、第4の流路を流れる液体状態の窒素の量が減り、第5の流路を流れる液体状態の窒素の量を増やすことができるので、超電導磁石をより冷却することができる。
【0029】
上記構成において、前記精留塔は、液体状態の原料空気を深冷分離して液体状態の酸素を生成し、前記凝縮回路は、前記精留塔から取り出された液体状態の酸素と、前記圧縮部によって圧縮された気体状態の窒素とで熱交換させることによって、気体状態の窒素を冷却し、かつ、液体状態の酸素を気体状態にする熱交換部をさらに備える。
【0030】
この構成によれば、精留塔に貯留されている液体状態の酸素を利用して、圧縮された気体状態の窒素を冷却するので、圧縮された気体状態の窒素を冷却する冷媒を新たに用意する必要がない。
【0031】
上記構成において、前記超電導モータ及び前記圧縮部を収容する断熱密閉容器をさらに備える。
【0032】
この構成によれば、超電導モータ及び圧縮部を断熱密閉容器に収容することにより、これらをユニット化している。従って、凝縮回路の組み立て作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、精留塔から取り出された気体状態の窒素のうち、一部の窒素を液化して精留塔に戻す凝縮回路を備える空気分離装置に関して、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図2】第2実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図3】第3実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図4】第4実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図5】第4実施形態において、第1の弁部、第1の測定部及び第1の制御部の関係を示すブロック図である。
図6】第4実施形態において、第1の弁部の制御を説明するフローチャートである。
図7】第5実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図8】第5実施形態において、第2の弁部、第2の測定部及び第2の制御部の関係を示すブロック図である。
図9】第6実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図10】第6実施形態において、第1の弁部、第3の弁部、第1の測定部及び第1の制御部の関係を示すブロック図である。
図11】第6実施形態において、第1の弁部及び第3の弁部の制御を説明するフローチャートである。
図12】第7実施形態に係る空気分離装置の構成を示す構成図である。
図13】第7実施形態において、第2の弁部、第3の弁部、第2の測定部及び第2の制御部の関係を示すブロック図である。
図14】超電導モータ及び圧縮部を収容している断熱密閉容器の模式図である。
図15】超電導モータの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0036】
図1は、第1実施形態に係る空気分離装置1aの構成を示す構成図である。空気分離装置1aは、圧縮部2、熱交換部3、膨張部4、精留塔5、凝縮回路6及び冷却回路7を備える。第1実施形態及び後で説明する第2〜7実施形態は、冷却回路7の構成が異なる。第1実施形態の冷却回路7は、例えば、温度が77Kの気体状態の窒素を用いて、超電導モータ60に備えられる超電導コイル601を冷却する。
【0037】
圧縮部2は、室温の原料空気を断熱圧縮する圧縮機である。これにより、原料空気の温度は、室温より高くなる。圧縮部2で断熱圧縮された原料空気は、流路8aを流れて、熱交換部3に送られる。流路8a、及び、後で説明する流路8b〜流路8o、流路70a〜流路70eは、配管やラインとも称される。
【0038】
熱交換部3には、流路8a、流路8b、流路8c、流路8d、流路8e及び流路8fが接続されている。上述したように、圧縮部2で断熱圧縮された原料空気は、流路8aを流れて、熱交換部3に送られる。精留塔5から取り出された製品窒素は、流路8bを流れて、熱交換部3に送られる。精留塔5から取り出された製品酸素は、流路8cを流れて、熱交換部3に送られる。
【0039】
熱交換部3は、次の二つの熱交換をする熱交換器である。熱交換部3は、圧縮部2で断熱圧縮された、温度が例えば室温程度の原料空気と、精留塔5から送られてきた、温度が77Kの気体状態の製品窒素とで熱交換をさせ、製品窒素の温度を上昇させる。また、熱交換部3は、圧縮部2で断熱圧縮された、温度が例えば室温程度の原料空気と、精留塔5から送られてきた、温度が90Kの液体状態の製品酸素とで熱交換をさせ、製品酸素の温度を上昇させる。
【0040】
熱交換部3で熱交換された製品窒素及び製品酸素は、それぞれ、流路8d、流路8eを流れて、次の工程に送られる。圧縮部2で断熱膨張された原料空気は、熱交換部3で製品窒素及び製品酸素に熱を供給することにより温度が下げられ、流路8fを流れて膨張部4に送られる。
【0041】
膨張部4は、送られてきた原料空気を断熱膨張する膨張タービンである。膨張部4として、膨張タービンの替わりに膨張弁を用いることもできる。
【0042】
膨張部4で断熱膨張されて、液体状態にされた原料空気は、流路8gを流れて、精留塔5に送られる。
【0043】
精留塔5は、単式(1塔式)であり、液体状態の原料空気を深冷分離して、気体状態の窒素と液体状態の酸素とを生成する。窒素は、精留塔5の上部に溜められ、酸素は、精留塔5の下部に溜められる。精留塔5として、単式の替わりに、複式(2塔式)を用いることもできる。
【0044】
精留塔5の塔頂部には、流路8hが接続されている。精留塔5から取り出された、温度が77Kの気体状態の窒素(ボイルオフガス)は、流路8hを流れる。流路8hは、流路8bと流路8iとに分岐している。流路8hを流れる気体状態の窒素は、流路8bを流れて、熱交換部3に送られるか、流路8iを流れて、後で説明する凝縮回路6に送られる。
【0045】
精留塔5の塔底部には、流路8jが接続されている。流路8jは、流路8cと流路8kとに分岐している。流路8jを流れる液体状態の酸素は、流路8cを流れて、熱交換部3に送られるか、流路8kを流れて、熱交換部62に送られる。
【0046】
凝縮回路6は、精留塔5から取り出された気体状態の窒素のうち、一部の窒素が供給され、供給された窒素を気体状態から液体状態に変化させて精留塔5に戻すモジュールである。凝縮回路6は、精留塔5で液体状態から気体状態にされた窒素について、その一部を、再び、液体状態にするので、凝縮回路6を再凝縮回路と称することもできる。
【0047】
凝縮回路6は、超電導モータ60、圧縮部61、熱交換部62、膨張部63及び流路(流路8i、流路8l、流路8m、流路8o)を備える。
【0048】
超電導モータ60は、超電導磁石を利用して回転子を回転させるモータである。超電導磁石とは、例えば、超電導コイル601と、これが巻かれた磁性体芯とで構成される磁石や、超電導バルク磁石である。本実施形態では、前者の磁石を例にして説明する。
【0049】
超電導コイル601は、後で説明する冷却回路7によって、そのコイルを構成する超電導材料の臨界温度以下に冷却される。超電導コイル601を冷却する冷媒は、温度が77Kの窒素である。よって、超電導コイル601を構成する超電導材料は、臨界温度が77Kより高くなければならない。このような超電導材料として、例えば、Bi系(BiSrCaCu)又はY系(YBaCu)がある。77Kは、液体状態の窒素(すなわち、液化窒素)の沸点である。
【0050】
流路8iは、圧縮部61に接続されている。流路8iを流れる気体状態の窒素は、圧縮部61に送られる。流路8h及び流路8iにより、第1の流路が構成される。第1の流路は、精留塔5と圧縮部61とを接続し、精留塔5から供給された気体状態の窒素を圧縮部61に導く。
【0051】
圧縮部61は、超電導モータ60によって駆動され、流路8iを流れる(すなわち、凝縮回路6を流れる)気体状態の窒素を断熱圧縮する。圧縮部61は、例えば、スクリュー型の圧縮機である。超電導モータ60の回転軸603は、圧縮部61のスクリュー(不図示)と直接又は間接に連結されている。超電導モータ60の駆動力は、回転軸603を介して、スクリューに伝達されて、スクリューが回転する。
【0052】
熱交換部62には、流路8k、流路8l、流路8m及び流路8nが接続されている。圧縮部61で断熱圧縮された気体状態の窒素は、流路8lを流れて、熱交換部62に送られる。精留塔5に貯留されている液体状態の酸素は、流路8j及び流路8kを流れて、熱交換部62に送られる。
【0053】
熱交換部62は、圧縮部61で断熱圧縮された気体状態の窒素と、精留塔5から送られてきた、温度が90Kの液体状態の酸素とで熱交換をさせ、酸素を液体状態から気体状態に変える。断熱圧縮された気体状態の窒素は、温度が90Kの液体状態の酸素と熱交換するので、窒素の温度を、断熱圧縮により90Kより高くする必要がある。
【0054】
断熱圧縮により温度が上昇した窒素を用いて、酸素を液体状態から気体状態にする。このため、流路8lを流れる気体状態の窒素の温度と流路8kを流れる液体状態の酸素の温度との差が大きいとき、気体状態の窒素の温度の上昇量が大きくなければならないので、気体状態の窒素を圧縮する動力が大きくなる。逆に、それらの温度差が小さいとき、気体状態の窒素の温度の上昇量は小さくてよいので、気体状態の窒素を圧縮する動力を小さくできる。
【0055】
精留塔5に貯留されている液体状態の酸素を利用して、圧縮された気体状態の窒素を冷却するので、圧縮された気体状態の窒素を冷却する冷媒を新たに用意する必要がない。
【0056】
圧縮部61で断熱圧縮された気体状態の窒素は、熱交換部62で酸素に熱を供給することにより温度が下げられ、流路8mを流れて膨張部63に送られる。
【0057】
膨張部63は、送られてきた窒素を断熱膨張する膨張弁である。膨張部63として、膨張弁の替わりに膨張タービンを用いることもできる。
【0058】
熱交換部62で凝縮し液化された窒素は、流路8mを流れて膨張部63に送られ、膨張部63で断熱膨張されて温度が低下し、流路8oを流れて、精留塔5に戻される。
【0059】
このように、圧縮部61で断熱圧縮された気体状態の窒素は、熱交換部62において、精留塔5から供給された液体状態の酸素により冷却されることにより、凝縮し液化され、その後、膨張部63で断熱膨張されて温度が低下する。従って、冷熱源を新たに設けることなく、窒素を液体状態にすることができる。
【0060】
熱交換部62で気体状態にされた酸素は、流路8nを流れて、精留塔5に送られる。この気体状態の酸素は、精留塔5で再液化される。
【0061】
空気分離装置1aは、以上の処理を繰り返すことにより、原料空気から製品窒素及び製品酸素を製造する。
【0062】
冷却回路7は、超電導モータ60に含まれる超電導コイル601を、このコイルを構成する超電導材料の臨界温度以下に冷却する。冷却回路7は、流路70a(第2の流路)及び流路70b(第3の流路)を備える。
【0063】
流路70aは、流路8i(第1の流路)と接続され、流路8iを流れる、温度が77Kの気体状態の窒素の一部を、超電導モータ60の超電導コイル601に供給する。これにより、超電導コイル601を臨界温度以下に冷却する。気体状態の窒素を冷媒に用いる場合、圧縮部61に導かれる前の気体状態の窒素としたのは、この窒素は、ボイルオフガスであり、温度が77K(液化窒素の沸点)だからである。
【0064】
流路70bは、流路70aより下流で流路8iと接続され、流路70aによって超電導コイル601に供給された気体状態の窒素を流路8iに戻す。この窒素は、流路8iを流れて、圧縮部61に送られる。
【0065】
第1実施形態の主な効果を説明する。第1実施形態に係る空気分離装置1aは、以下の観点から省エネルギー化を図ることができる。
【0066】
圧縮部61のスクリューを駆動するモータを常電導モータにした場合、常電導モータのコイルの銅損が原因となる熱負荷が発生する。例えば、常電導モータの回転軸を圧縮部61のスクリューに直接連結する場合、常電導モータを凝縮回路6と同じ環境(77Kの窒素が存在する環境)下に設置しなければならず、常電導モータが原因となる熱負荷がその環境の温度を上昇させる。常電導モータを室温環境下に設置し、常電導モータの回転軸と圧縮部61のスクリューとを断熱層を介して、軸で連結した場合、この軸からの熱進入が原因となる熱負荷が、上記環境の温度を上昇させる。
【0067】
この入熱分は、原料空気の圧縮仕事で補う必要があるため、凝縮回路6を設けても、空気分離装置1aの消費エネルギーを少なくする効果が小さくなる。
【0068】
第1実施形態では、圧縮部61のスクリューを駆動するモータを超電導モータ60にしている。超電導状態の超電導コイル601は、抵抗がゼロなので発熱しない。このため、凝縮回路6で発生する損失は、圧縮部61等で生じる機械損、並びに、凝縮回路6の流路(例えば、流路8i、流路8k)を流れる流体(窒素、酸素)とこれらの流路との摩擦による流体損のみとなる。このため、空気分離装置1aが凝縮回路6を備えることによる生じる熱負荷を大幅に低下させることができる。
【0069】
超電導モータ60は、超電導コイル601を構成する超電導材料の臨界温度以下に超電導コイル601が冷却された状態で使用される。超電導コイル601の冷却には、臨界温度以下の沸点をもつ冷媒が用いられる。
【0070】
第1実施形態に係る空気分離装置1aでは、超電導コイル601を臨界温度以下に冷却する冷媒として、窒素を還流する凝縮回路6を流れる窒素を用いる。従って、第1実施形態に係る空気分離装置1aによれば、常電導モータを用いた場合に比べ入熱量が小さくなるため省エネルギー化を図ることができる。
【0071】
第2実施形態について、図1に示す第1実施形態との相違点を中心に説明する。図2は、第2実施形態に係る空気分離装置1bの構成を示す構成図である。第2実施形態の冷却回路7は、温度が77Kの液体状態の窒素を用いて、超電導コイル601を冷却する。
【0072】
流路8oは、膨張部63と精留塔5とを接続し、液体状態の窒素を精留塔5に導く第4の流路である。
【0073】
冷却回路7は、流路70c(第5の流路)及び流路70d(第6の流路)を備える。流路70cは、流路8oと接続され、流路8oを流れる、温度が77Kの液体状態の窒素の一部を超電導コイル601に供給する。これにより、超電導コイル601を臨界温度以下に冷却する。
【0074】
流路70dは、流路70cより下流で流路8oと接続され、流路70cによって超電導コイル601に供給された気体状態の窒素を流路8oに戻す。この窒素は、流路8oを流れて、精留塔5に送られる。
【0075】
第2実施形態の主な効果を説明する。精留塔5から取り出され、流路8iを流れる気体状態の窒素の温度と、流路8oを流れる液体状態の窒素の温度とは、同じ程度なので、いずれを冷媒にしても、超電導コイル601を臨界温度以下に冷却することができる。
【0076】
超電導モータ60の運転中に、急激な負荷変動等が発生したとき、超電導モータ60には渦電流による発熱を生じる。この発熱で超電導コイル601の微小部分で超電導状態が破れると、そこから局所的に発熱し、これが原因で超電導モータ60が破損することがある。
【0077】
従って、上記渦電流による発熱が生じたとき、この発熱を速やかに冷却する必要がある。液体は、気体に比べて熱伝達係数が大きい。第2実施形態では、液体状態の窒素(すなわち、液化窒素)を用いて、超電導コイル601を冷却するので、上記渦電流による発熱が生じても、その発熱を速やかに冷却することができる。
【0078】
第3実施形態について、図2に示す第2実施形態との相違点を中心に説明する。図3は、第3実施形態に係る空気分離装置1cの構成を示す構成図である。第3実施形態の冷却回路7は、図2に示す流路70d(第6の流路)の替わりに、流路70e(第7の流路)を備える。流路70eは、精留塔5に接続され、流路70c(第5の流路)によって超電導コイル601に供給された液体状態の窒素を精留塔5に導く。
【0079】
第3実施形態の主な効果を説明する。精留塔5内は、流路8o内より圧力が低いので、途中の流路形状にもよるが、流路70cによって超電導コイル601に供給された液体状態の窒素を、流路8oに戻すよりも、精留塔5に戻す方が、液体状態の窒素を速やかに精留塔5に戻すことができる。
【0080】
第4実施形態について、図3に示す第3実施形態との相違点を中心に説明する。図4は、第4実施形態に係る空気分離装置1dの構成を示す構成図である。図5は、第4実施形態において、第1の弁部71、第1の測定部72及び第1の制御部73の関係を示すブロック図である。第4実施形態の冷却回路7は、第1の弁部71、第1の測定部72及び第1の制御部73を備える。
【0081】
図4及び図5を参照して、第1の弁部71は、流路70e(第7の流路)を流れる液体状態の窒素の流量を調節する電磁弁である。なお、第1の弁部71を、流路70c(第5の流路)に設置し、流路70cを流れる液体状態の窒素の流量を調節してもよい。
【0082】
第1の測定部72は、超電導コイル601の温度を測定する温度センサである。第1の測定部72の測定子721は、超電導コイル601に接触してもよいし、接触していなくてもよい。
【0083】
第1の制御部73は、CPU、RAM及びROMを備え、これらにより、以下の機能を実現する。超電導コイル601を構成する超電導材料の臨界温度以下の予め定められた値を基準値とする。第1の制御部73は、第1の測定部72で測定された温度が基準値(すなわち、予め定められた値)以下のとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、第1の測定部72で測定された温度が基準値より大きいとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、第1の測定部72で測定された温度が基準値のとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、第1の弁部71の開閉量を制御する。
【0084】
基準値は、ピンポイントの値(例えば、77K)でもよいし、範囲を有する値(例えば、70K〜77K)でもよい。
【0085】
図6は、第4実施形態において、第1の弁部71の制御を説明するフローチャートである。第1の測定部72は、超電導コイル601の温度を測定し、その温度を示すデータを第1の制御部に送る(ステップS1)。第1の制御部73は、ステップS1で測定された超電導コイル601の温度が、基準値と同じか否かを判断する(ステップS2)。
【0086】
第1の制御部73が、超電導コイル601の温度が基準値と同じと判断したとき(ステップS2でYes)、ステップS1に戻る。
【0087】
第1の制御部73が、超電導コイル601の温度が基準値と同じでないと判断したとき(ステップS2でNo)、第1の制御部73は、ステップS1で測定された超電導コイル601の温度が、基準値より大きいか否かを判断する(ステップS3)。
【0088】
第1の制御部73が、超電導コイル601の温度が基準値より小さいと判断したとき(ステップS3でNo)、第1の制御部73は、第1の弁部71を制御して、第1の弁部71を所定量閉じて、流路70c及び流路70eを流れる液体状態の窒素の流量を少なくする(ステップS4)。そして、ステップS1に戻る。
【0089】
第1の制御部73が、超電導コイル601の温度が基準値より大きいと判断したとき(ステップS3でYes)、第1の制御部73は、第1の弁部71が全開か否かを判断する(ステップS5)。
【0090】
第1の制御部73が、第1の弁部71が全開でないと判断したとき(ステップS5でNo)、第1の制御部73は、第1の弁部71を制御して、第1の弁部71を所定量開けて、流路70c及び流路70eを流れる液体状態の窒素の流量を多くする(ステップS6)。そして、ステップS1に戻る。
【0091】
第1の制御部73が、第1の弁部71が全開と判断したとき(ステップS5でYes)、第1の制御部73は、所定の報知部(例えば、ランプ、スピーカ)を作動させて、超電導コイル601の温度が基準値より大きいことを、空気分離装置1dの運転を管理する者に報知する(ステップS7)。
【0092】
第4実施形態によれば、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の量を必要最小限度にしつつ、超電導コイル601の温度を基準値(予め定められた値)に自動的に制御することができる。
【0093】
また、第4実施形態によれば、超電導コイル601の温度を直接測定するので、超電導コイル601の温度を正確に制御できる。
【0094】
第5実施形態について、図4及び図5に示す第4実施形態との相違点を中心に説明する。図7は、第5実施形態に係る空気分離装置1eの構成を示す構成図である。図8は、第5実施形態において、第2の弁部74、第2の測定部75及び第2の制御部76の関係を示すブロック図である。第5実施形態の冷却回路7は、第2の弁部74、第2の測定部75及び第2の制御部76を備える。
【0095】
図7及び図8を参照して、第2の弁部74は、流路70c(第5の流路)を流れる液体状態の窒素の流量を調節する電磁弁である。
【0096】
第2の測定部75は、流路70e(第7の流路)を流れる液体状態の窒素の温度を測定する温度センサである。第2の測定部75の測定子751が、流路70eを流れる液体状態の窒素に接触している。
【0097】
第2の制御部76は、CPU、RAM及びROMを備え、第1の制御部73と同様の機能を有する。すなわち、超電導コイル601を構成する超電導材料の臨界温度以下の予め定められた値を基準値とする。第2の制御部76は、第2の測定部75で測定された温度が基準値以下のとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が少なくなり、第2の測定部75で測定された温度が基準値より大きいとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が多くなり、第2の測定部75で測定された温度が基準値のとき、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の流量が変わらないように、第2の弁部74の開閉量を制御する。
【0098】
基準値(予め定められた値)は、第4実施形態で説明した基準値と同様に、ピンポイントの値(例えば、77K)でもよいし、範囲を有する値(例えば、70K〜77K)でもよい。
【0099】
第2の弁部74の制御は、図6を用いて既に説明した第4実施形態の第1の弁部71の制御と同じなので説明を省略する。
【0100】
第5実施形態によれば、何らかの理由で超電導コイル601の温度を直接測定できないとき、流路70eを流れる液体状態の窒素の温度から間接的に超電導コイル601の温度を推定して超電導コイル601の温度を制御する。
【0101】
第5実施形態によれば、第4の実施形態と同様に、超電導コイル601に供給する液体状態の窒素の量を必要最小限度にしつつ、超電導コイル601の温度を予め定められた値に自動的に制御することができる。
【0102】
第6実施形態について、図4図6に示す第4実施形態との相違点を中心に説明する。図9は、第6実施形態に係る空気分離装置1fの構成を示す構成図である。図10は、第6実施形態において、第1の弁部71、第3の弁部77、第1の測定部72及び第1の制御部73の関係を示すブロック図である。第6実施形態の冷却回路7は、第1の弁部71、第1の測定部72及び第1の制御部73に加えて、さらに第3の弁部77を備える。第6実施形態は、第1の弁部71を全開にしても、超電導コイル601の温度が基準値より大きい場合に対処することができる。
【0103】
図9及び図10を参照して、第3の弁部77は、流路8o(第4の流路)と流路70c(第5の流路)との接続部より下流に設けられ、流路8oを流れる液体状態の窒素の流量を調節する電磁弁である。
【0104】
第1の制御部73は、第3の弁部77を開けた状態で(すなわち、液体状態の窒素が流路8oを流れて、精留塔5に戻された状態で)、第4実施形態で説明した第1の弁部71の開閉量を制御している。第1の制御部73は、第1の弁部71が全開の状態で、第1の測定部73で測定された温度が基準値(予め定められた値)より大きいとき、第3の弁部77を所定量閉じる制御をする。これにより、流路8oを流れる液体状態の窒素の量が減り、流路70cを流れる液体状態の窒素の量を増やすことができるので、超電導コイル601をより冷却することができる。
【0105】
図11は、第6実施形態において、第1の弁部71及び第3の弁部77の制御を説明するフローチャートである。図6のフローチャートと同じ処理については、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0106】
第1の制御部73が、第1の弁部71が全開と判断したとき(ステップS5でYes)、第1の制御部73は、第3の弁部77が全閉か否かを判断する(ステップS8)。
【0107】
第1の制御部73が、第3の弁部77が全閉でないと判断したとき(ステップS8でNo)、第1の制御部73は、第3の弁部77を所定量閉じる制御をする(ステップS9)。そして、ステップS1に戻る。
【0108】
第1の制御部73が、第3の弁部77が全閉と判断したとき(ステップS8でYes)、第1の制御部73は、所定の報知部(例えば、ランプ、スピーカ)を作動させて、超電導コイル601の温度が基準値より大きいことを、空気分離装置1fの運転を管理する者に報知する(ステップS7)。
【0109】
図12は、第7実施形態に係る空気分離装置1gの構成を示す構成図である。図13は、第7実施形態において、第2の弁部74、第3の弁部77、第2の測定部75及び第2の制御部76の関係を示すブロック図である。第7実施形態は、図7及び図8に示す第5実施形態に、図9及び図10に示す第6実施形態の第3の弁部77を設けたことを特徴とする。第7実施形態は、第2の弁部74を全開にしても、超電導コイル601の温度が基準値より大きい場合に対処することができる。
【0110】
第2の制御部76は、第3の弁部77を開けた状態で(すなわち、液体状態の窒素が流路8oを流れて、精留塔5に戻された状態で)、第5実施形態で説明した第2の弁部74の開閉量を制御している。第2の制御部76は、第2の弁部74が全開の状態で、第2の測定部75で測定された温度が基準値より大きいとき、第3の弁部77を所定量閉じる制御をする。これにより、流路8oを流れる液体状態の窒素の量が減り、流路70cを流れる液体状態の窒素の量を増やすことができるので、超電導コイル601をより冷却することができる。
【0111】
第1実施形態から第7実施形態について、共通に適用される技術について、図1に示す第1実施形態に係る空気分離装置1aを例にして説明する。
【0112】
図14は、超電導モータ60及び圧縮部61を収容している断熱密閉容器9の模式図である。断熱密閉容器9内には、超電導モータ60と、回転軸603に連結された圧縮部61とが配置されている。断熱密閉容器9は、例えば、精留塔5の塔頂近傍において、精留塔5の壁面に取り付ける。
【0113】
この構成によれば、超電導モータ60及び圧縮部61を断熱密閉容器9に収容することにより、これらをユニット化している。従って、凝縮回路6の組み立て作業を容易にすることができる。
【0114】
図15は、超電導モータ60の構成を示す断面図である。超電導モータ60は、回転軸603、第1の固定子33a、第2の固定子33b、第3の固定子33c、第1の回転子34a、第2の回転子34b、第3の回転子34c及び第4の回転子34dを備える。圧縮部61から回転軸603の延びる方向に沿って、間隔をあけて、第1の固定子33a、第2の固定子33b、第3の固定子33cが配置されている。
【0115】
第1の固定子33aは、W相を生成するための固定子である。第1の固定子33aは、断熱容器35、軸受36、超電導コイル601及び隔壁38を備える。
【0116】
断熱容器35の材料は、非磁性金属材である。断熱容器35は、円盤形状を有する。断熱容器35の中央部に軸受36が配置されている。軸受36は、回転軸603を回転自在に保持する。
【0117】
断熱容器35は、中空の構造を有する。断熱容器35内には、超電導コイル601が、軸受36を囲んで配置されている。超電導コイル601は、断熱容器35内に固定されている磁性体芯(不図示)に巻かれている。この磁性体芯と超電導コイル601とにより超電導磁石が構成される。断熱容器35内は、精留塔5から供給された冷媒、すなわち、気体状態の窒素(ボイルオフガス)で満たされている。第2実施形態から第7実施形態では、断熱容器35内が、凝縮回路6で生成された液体状態の窒素で満たされている。
【0118】
断熱容器35は、超電導コイル601と対向する箇所に、環状の貫通穴を有する。隔壁38によって、貫通穴が塞がれている。隔壁38は、断熱性、非磁性及び絶縁性、又は、断熱性、非磁性及び高抵抗の性質を有する。隔壁38の材料は、例えば、硬質ガラス、セラミックス、硬質プラスチックである。
【0119】
隔壁38が断熱性を有するのは、冷媒で満たされた断熱容器35内と、低温大気又は真空である断熱容器35外とを断熱するためである。隔壁38が、非磁性を有するのは、超電導コイル601及びこれが巻かれている磁性体芯(不図示)と、永久磁石41,43とを磁気的に結合させるためである。隔壁38が、絶縁性又は高抵抗性を有するのは、隔壁38に渦電流が発生しないようにするためである。上記磁気的結合が原因で発生する変動磁場によって、隔壁38に渦電流が発生すれば、隔壁38が発熱するからである。
【0120】
第2の固定子33bは、V相を生成するための固定子であり、第3の固定子33cは、U相を生成するための固定子である。第2の固定子33b及び第3の固定子33cの構成は、第1の固定子33aの構成と同じなので、説明を省略する。
【0121】
第1の固定子33a、第2の固定子33b及び第3の固定子33cがそれぞれ備える超電導コイル601の構成は、例えば、特開2014−54092号公報に開示された固定子に備えられるコイルと同じ構成を採用することができる。
【0122】
圧縮部61から回転軸603の延びる方向に沿って、間隔をあけて、第1の回転子34a、第2の回転子34b、第3の回転子34c、第4の回転子34dが配置されている。第1の固定子33aは、第1の回転子34aと第2の回転子34bとによって、所定の間隔をあけて挟まれている。第2の固定子33bは、第2の回転子34bと第3の回転子34cとによって、所定の間隔をあけて挟まれている。第3の固定子33cは、第3の回転子34cと第4の回転子34dとによって、所定の間隔をあけて挟まれている。
【0123】
回転軸603は、第1の回転子34a、第2の回転子34b、第3の回転子34c、第4の回転子34dのそれぞれの中心部に固定されており、第1の回転子34a、第2の回転子34b、第3の回転子34c、第4の回転子34dが回転することにより、回転軸603が回転する。
【0124】
第1の回転子34aは、磁性材ヨーク40及び永久磁石41を備える。磁性材ヨーク40は、円盤形状を有する。第1の固定子33aと対向する、磁性材ヨーク40の面には、永久磁石41が配置されている。永久磁石41は、回転軸603を囲み、かつ、第1の固定子33aに備えられる隔壁38及び超電導コイル601と対向して配置されている。
【0125】
第2の回転子34bは、構造部材42及び永久磁石43を備える。構造部材42は、円盤形状を有する。構造部材42の周面に、永久磁石43が配置されている。永久磁石43は、回転軸603を囲み、かつ、第1の固定子33aに備えられる隔壁38及び超電導コイル601、並びに、第2の固定子33bに備えられる隔壁38及び超電導コイル601と対向して配置されている。
【0126】
第3の回転子34cは、第2の回転子34bと同じ構成を有する。第3の回転子34cの永久磁石43は、回転軸603を囲み、かつ、第2の固定子33bに備えられる隔壁38及び超電導コイル601、並びに、第3の固定子33cに備えられる隔壁38及び超電導コイル601と対向して配置されている。
【0127】
第4の回転子34dは、第1の回転子34aと同じ構成を有する。第4の回転子34dの永久磁石41は、回転軸603を囲み、かつ、第3の固定子33cに備えられる隔壁38及び超電導コイル601と対向して配置されている。
【0128】
永久磁石41,43は、例えば、希土類系永久磁石である。希土類系永久磁石は、強力な保磁力を有するので、第1実施形態〜第7実施形態では、高トルク密度の超電導モータ60を実現できる。
【0129】
近年、バルク状の酸化物超電導体のピン止め効果を利用して、その内部に磁束を閉じ込めることにより強力な永久磁石を実現する研究が進められている。該永久磁石を、超電導バルク磁石としてもよい。超電導バルク磁石は、従来の永久磁石以上の高い保磁力を有するので、これを従来の永久磁石に替えることにより高効率な超電導モータ60を実現できる。
【0130】
回転軸603の方向に沿って、第1の管部44a、第2の管部44b、第3の管部44cが配置されている。第1の管部44aは、第1の固定子33aの断熱容器35と第2の固定子33bの断熱容器35とを接続する。第1の管部44aを介して、第1の固定子33aの断熱容器35の内部と第2の固定子33bの断熱容器35の内部とが連通している。第2の管部44bは、第2の固定子33bの断熱容器35と第3の固定子33cの断熱容器35とを接続する。第2の管部44bを介して、第2の固定子33bの断熱容器35の内部と第3の固定子33cの断熱容器35の内部とが連通している。
【0131】
第3の管部44cは、一端が第3の固定子33cと接続されている。流路70aは、第3の管部44cの他端から第3の管部44cに入り、第3の固定子33cの断熱容器35の内部、第2の管部44b、第2の固定子33bの断熱容器35の内部、第1の管部44a、第1の固定子33aの断熱容器35の内部に通されている。流路70bは、第3の管部44cの他端から第3の管部44cに通されている。精留塔5から供給された気体状態の窒素(冷媒)は、流路70aを通り、第1の固定子33a、第2の固定子33b及び第3の固定子33cのそれぞれの断熱容器35に送られる。これらの断熱容器35に送られた冷媒は、流路70bを通り、図1に示す流路8iに戻される。このように、冷媒は、凝縮回路6と、第1の固定子33a、第2の固定子33b及び第3の固定子33cのそれぞれの断熱容器35との間で循環している。
【0132】
第1の管部44a、第2の管部44b及び第3の管部44cは、気密性が要求されるため、通常、金属で構成される。超電導モータ60は、常温環境で組み立てられ、臨界温度以下の環境で使用される。このため、第1の管部44a、第2の管部44b及び第3の管部44cの熱変形を吸収するために、これらの管部は、蛇腹構造を有する。
【符号の説明】
【0133】
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g 空気分離装置
5 精留塔
6 凝縮回路
7 冷却回路
8i 流路(第1の流路の具体例)
8o 流路(第4の流路の具体例)
60 超電導モータ
61 圧縮部
62 熱交換部
63 膨張部
70a 流路(第2の流路の具体例)
70b 流路(第3の流路の具体例)
70c 流路(第5の流路の具体例)
70d 流路(第6の流路の具体例)
70e 流路(第7の流路の具体例)
71 第1の弁部
72 第1の測定部
73 第1の制御部
74 第2の弁部
75 第2の測定部
76 第2の制御部
77 第3の弁部
601 超電導コイル(超電導磁石の具体例)
図1
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