特許第6420208号(P6420208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ホームテクノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6420208-炊飯器 図000002
  • 特許6420208-炊飯器 図000003
  • 特許6420208-炊飯器 図000004
  • 特許6420208-炊飯器 図000005
  • 特許6420208-炊飯器 図000006
  • 特許6420208-炊飯器 図000007
  • 特許6420208-炊飯器 図000008
  • 特許6420208-炊飯器 図000009
  • 特許6420208-炊飯器 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420208
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20181029BHJP
   A47J 27/04 20060101ALI20181029BHJP
   A47J 36/16 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   A47J27/00 103Z
   A47J27/04 F
   A47J36/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-113923(P2015-113923)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-178(P2017-178A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮
(72)【発明者】
【氏名】萱森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀子
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5397459(JP,B2)
【文献】 実開昭51−075461(JP,U)
【文献】 実開昭49−140361(JP,U)
【文献】 特開2006−103733(JP,A)
【文献】 実開昭62−083320(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 27/04
A47J 36/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋に調理具を収容して、内鍋内の被炊飯物と調理具内の食材を同時に調理する炊飯器において、
前記調理具は、前記食材を収容する上部を開口した収容体と、
前記調理具を上から見て、前記収容体の一側端部と他側端部にそれぞれ設けられる一対の支持部と、
前記一対の支持部に各々取付けられる一対の取手と、
前記収容体の上方外周に設けられ、前記内鍋の上方部に懸架される懸架部と、
前記懸架部を部分的に切り欠いて形成される把手部と、
前記支持部と共に前記収容体の側壁に設けられる注ぎ口と、を備え
前記注ぎ口と前記支持部は、前記内鍋に当接可能な位置決め部として設けられ、
前記調理具を上から見て、前記支持部を設けた前記懸架部の外方に前記把手部が形成され、前記支持部および前記把手部に直交する径方向に、前記注ぎ口を設けたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記取手は前記支持部に着脱可能に設けられ、前記支持部に当接する止め部を前記取手に設けたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記調理具は、前記収容体の外周部に設けられ、前記内鍋内で発生した蒸気を前記収容体の内部に導く蒸気穴をさらに備え、
記蒸気穴よりも下方に前記取手が位置することを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項4】
記調理具は、前記内鍋内で発生した蒸気を前記収容体の内部に導く蒸気穴をさらに備え
前記懸架部は、前記収容体の上端周囲より外方に延設するフランジ部として設けられ、
前記フランジ部に前記蒸気穴を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内鍋内に収容可能な調理具を備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補助用の調理具を炊飯器の内鍋に収容して、内鍋内の被炊飯物を炊き上げると同時に、調理具に投入した食材を蒸し調理するものが、特許文献1〜特許文献6などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5397459号明細書
【特許文献2】特開2014−467号公報
【特許文献3】特開2014−468号公報
【特許文献4】特開2014−14712号公報
【特許文献5】特開2013−255855号公報
【特許文献6】特開2014−161651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した調理具を備えた炊飯器では、次のような問題があった。
【0005】
調理具を単体で持ち運べるように、調理具には食材を収容する収容体に、一対の取手がそれぞれ設けられる。しかし、一方の取手を右手で掴み、他方の取手を左手で掴んで、取手を両手で持ったときに、調理具が容易に傾いてしまい、安定した状態で持ち運べない問題を有していた。
【0006】
また、内鍋に調理具を収容した状態では、内鍋の上方部全周に調理具の懸架部が当接しており、収容体よりも上方に取手を起こさなければ、内鍋から調理具だけを持ち上げて運ぶのが難しい問題があった。
【0007】
また、内鍋内で発生した蒸気を調理具内に導くために、調理具の外周部には複数の蒸気穴が開口形成される。しかし、蒸気穴よりも上方に取手が位置していると、内鍋内からの蒸気がそのまま取手に当たってしまい、調理具の収容体に投入した食材に蒸気が十分行き渡らない懸念を生じる。
【0008】
また、食材を収容する内部材と、内鍋への懸架部を有する外部材との間に蒸気穴を設けた二重構造の調理具では、被炊飯物の炊飯加熱に伴い、内鍋内から発生したおねばが、内部材と外部材の側壁が向い合って配設される部位に入り込んでしまい、清掃時におねばを除去しにくい問題があった。
【0009】
また、上述した外部材の側壁は、内鍋の所定位置に調理具を収容可能にする位置決め部としての機能を果たしている。しかし内部材の他に外部材を設けること自体、調理具の構成が複雑でコストアップを招く要因となる。
【0010】
また、内鍋を収容する炊飯器本体の内部には、調理具の内部材の側壁に対向して加熱手段となる胴ヒータを設けており、胴ヒータの動作時には、その胴ヒータからの熱を側壁に伝えて蒸し効率を向上させている。しかし、胴ヒータが内部材の側壁に近づいている分、胴ヒータからの熱が内鍋に収容した被炊飯物に届きにくく、炊き上がり性能が劣化して省エネ効果も低下する。また、内部材に収容した食材が側壁から離れた位置にあると、胴ヒータからの熱が食材にまで十分に伝わらない懸念も生じる。
【0011】
また、調理具内部における食材の調理状態を向上させるために、収容体の底面部は上方に膨出する凸部が形成される。しかし、こうした凸部は、内鍋内から発生したおねばを調理具の外面に付着させやすくする要因となる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するのになされたもので、その目的は、取手を持ったときに、調理具を安定した状態で持ち運ぶことができる炊飯器を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、取手を起こさずに、内鍋から調理具だけを簡単に持ち上げて運ぶことが可能な炊飯器を提供することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、内鍋内からの蒸気を、調理具の収容体に投入した食材に十分行き渡らせることが可能な炊飯器を提供することにある。
【0015】
本発明の第4の目的は、内鍋内から発生したおねばが調理具に付着しても、そのおねばを簡単に除去できる清掃性に優れた炊飯器を提供することにある。
【0016】
本発明の第5の目的は、調理具を内鍋の所定位置に収容可能にしつつ、調理具の外部材を廃止することが可能な炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の炊飯器は、内鍋に調理具を収容して、内鍋内の被炊飯物と調理具内の食材を同時に調理する炊飯器において、前記調理具は、前記食材を収容する上部を開口した収容体と、前記調理具を上から見て、前記収容体の一側端部と他側端部にそれぞれ設けられる一対の支持部と、前記一対の支持部に各々取付けられる一対の取手と、前記収容体の上方外周に設けられ、前記内鍋の上方部に懸架される懸架部と、前記懸架部を部分的に切り欠いて形成される把手部と、前記支持部と共に前記収容体の側壁に設けられる注ぎ口と、を備え、前記注ぎ口と前記支持部は、前記内鍋に当接可能な位置決め部として設けられ、前記調理具を上から見て、前記支持部を設けた前記懸架部の外方に前記把手部が形成され、前記支持部および前記把手部に直交する径方向に、前記注ぎ口を設けて構成される。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明では、収容体の最も離れた一側端部と他側端部に、取手を支える支持部がそれぞれ配置されるので、対をなす取手の支点間が遠くなり、取手を両手で持ったときに、調理具が容易には傾かずに安定した状態で持ち運ぶことが可能になる。また、調理具の懸架部を内鍋の上方部に懸架させた状態から、内鍋と把手部との間の隙間に指を差し入れて、把手部に指を掛けることで、わざわざ取手を起こさなくても、調理具だけを簡単に持ち上げて運ぶことが可能になる。さらに、収容体の側壁に設けられる注ぎ口や取手の支持部を利用して、調理具を内鍋の所定位置に収容することが可能になり、従来の外部材を廃止することが可能になる。
【0027】
請求項2の発明では、収容体から取手を取り外すことで、取手や支持部を単体で清掃することが可能になる。
【0028】
請求項の発明では、取手を支持部から着脱できる利点を生かしつつ、取手の止め部が支持部に突き当たって、取手が支持部から簡単に離脱するのを防止できる。
【0030】
請求項の発明では、収容体の外周部で蒸気穴よりも取手が下方に位置しているので、内鍋からの蒸気が蒸気穴を通過した後に取手に当たることがなく、そのまま収容体内の食材に導かれる。したがって、内鍋内からの蒸気を、調理具の収容体に投入した食材に十分行き渡らせることが可能になる。
【0031】
請求項の発明では、内鍋への懸架部となるフランジ部を、収容体の外周より外方に延ばし、そのフランジ部に蒸気穴を設けることで、調理具が収容体と懸架部が二重構造になるのを回避したので、鍋内で発生したおねばが蒸気穴の周辺に付着しても、そのおねばを簡単に除去することが可能となり、清掃性に優れた炊飯器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態における蓋体を開けて調理具を取り外した状態の炊飯器の全体斜視図である。
図2】同上、蓋体を取り外し、調理具を装着した状態の炊飯器の平面図である。
図3】同上、炊飯器を右側から見た縦断面図である。
図4】同上、炊飯器を後側から見た縦断面図である。
図5】同上、取手を収納した状態の調理具の右側面図である。
図6】同上、取手を収納していない状態の調理具の正面図である。
図7】同上、調理具の要部平面図である。
図8】同上、取手を収納していない状態の調理具の斜視図である。
図9】上記一実施形態の変形例として、蓋体を取り外し、調理具を装着した状態の炊飯器の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の炊飯器に係る好ましい一実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。
【0037】
先ず、炊飯器の全体構成を図1図4に基づいて説明すると、これらの各図において、1は有底状の本体、2は本体1の上面開口を開閉自在に覆う蓋体で、これらの本体1と蓋体2とにより、炊飯器の外郭が形成される。本体1は、上面を形成する上枠3と、側面から底面を形成する外枠4とによりその外観を構成しており、後述する鍋5を着脱可能に収容するために、上面を開口した鍋収容部6が形成される。内鍋としての鍋5は、蓋体2を開閉することにより鍋収容部6から取り出せるようになっている。また本体1には、炊飯器を手で持ち運ぶためのハンドル7が回動自在に設けられる。
【0038】
鍋5は、米や水などの被炊飯物を収容するためのもので、鍋5の載置面を形成するのに水平方向に拡がる底部9と、底部9の外周囲から上方に立ち上がる筒状の側壁10と、側壁10の上端周囲から外方に延出する円環状のフランジ部11とにより、全体が有底筒状に形成される。フランジ部11は、鍋収容部6に鍋5を収容したときに上枠3の上面に載置懸架され、鍋5と鍋収容部6との間に隙間を形成した状態で、鍋5が鍋収容部6に吊設されるようになっている。
【0039】
14は、鍋5の上面開口より当該鍋5に着脱自在に収容される調理具である。調理具14は、食材を収容する上端部を開口した有底円筒状の収容体15や、収容体15の上端周囲より外方に延出する略円環状のフランジ部16を一体的に形成した調理具本体17と、この調理具本体17に対して着脱可能に設けられる2個の取手18と、を主な構成とする。これらの調理具本体17や取手18は何れも樹脂製で、炊飯時や保温時に鍋5内の被炊飯物を加熱したときに耐え得る材料が選択される。
【0040】
収容体15は、調理具14の載置面を形成するのに水平方向に拡がる底部21と、この底部21の外周囲から上方に立ち上がる筒状の側壁22とからなる皿状の部材で、底部21や側壁22は何れも無孔に形成される。またフランジ部16は、鍋5に調理具14を収容したときに鍋5のフランジ部11の上面に載置懸架され、鍋5の底部9と収容体15の底部21との間に被炊飯物の収容空間を形成した状態で、調理具14が鍋5に吊設されるようになっている。その他、調理具本体17には、収容体15の側壁22からフランジ部16にかけて2個の嘴状の注ぎ口23を設けると共に、フランジ部16に複数個の蒸気穴24や、2個の支持部25や、2個の把手部26を設けているが、調理具14の詳細構成は後程改めて説明する。
【0041】
有底筒状に形成される鍋収容部6の内底部には、電熱ヒータ31を埋設したヒータプレート32が設けられる。ヒータプレート32は、鍋5を鍋収容部6に収容した状態で、鍋5の底部9に当接するように構成され、電熱ヒータ31の通電時にはヒータプレート32を介して鍋5の底部9全体を加熱し、それにより鍋5内の被炊飯物を加熱するようになっている。また、鍋5への加熱手段として、本体1の内部には電熱ヒータ31の他に、コードヒータを用いた胴ヒータ33が配設される。胴ヒータ33は、調理具14を構成する収容体15の底部21よりも下方に位置し、且つ鍋5の側壁に対向して、鍋収容部6の外周面に巻装される。なお、電熱ヒータ31に代わって、鍋5を電磁誘導加熱する加熱コイルを本体1の内部に装着してもよい。この場合の鍋5は、加熱コイルからの交番磁界によって発熱する材料が選定される。
【0042】
鍋収容部6の内底中央部には、ヒータプレート32を上下方向に貫通したセンサ収納空間35が形成される。このセンサ収納空間35には、鍋5の底部9外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての鍋温度センサ36が配設される。鍋温度センサ36は、鍋5の温度を検知するもので、電熱ヒータ31による鍋5の底部9への加熱温度を主に温度管理する構成となっている。
【0043】
本体1の前面中央部には、蓋体2に係脱可能な蓋開ボタン37が露出状態で配設される。蓋体ボタン37は、図示しない弾性手段によって、蓋2に取付けられた後述の内蓋組立体51と係合する方向に常時付勢されており、この付勢に抗して蓋開ボタン37を押動操作すると、本体1の蓋開ボタン37と内蓋組立体51を含む蓋体2との係合が解除され、本体1の上部後方に設けたヒンジバネ38により、ヒンジ軸39を回転中心として蓋体2が自動的に開く構成となっている。
【0044】
蓋開ボタン37の近傍に位置して、本体1の前面部には、本体1内部に収納される表示部や操作部を覆うようにして操作パネル40が配設される。操作パネル40の内側には、時間や選択したメニューなどを表示するLCD(液晶ディスプレイ)や、行程を表示するLED(発光ダイオード)などの表示部の他に、各種スイッチなどの操作体を基板に配置した操作表示ユニット41が配設される。また、操作表示ユニット41の後方に位置して、本体1の内部には、上述の電熱ヒータ31や蓋ヒータの駆動回路や、電源プラグ(図示せず)を介して炊飯器に供給される交流電源電圧を所望の電圧に変換する電源回路などを備えた制御ユニット42が配設される。
【0045】
蓋体2は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋44と、蓋体2の下面を形成する放熱板45と、外蓋44および放熱板45を結合させて、蓋体2の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー46とを主たる構成要素としている。また図示しないが、蓋体2の内部にあって、放熱板45の上面に、蓋加熱手段としての蓋ヒータを設けてもよい。この蓋ヒータは、コードヒータなどの電熱式ヒータや、上述した電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
【0046】
放熱板45の下側には、蓋体2の下部部材としての内蓋組立体51が着脱可能に設けられる。この内蓋組立体51は、鍋5の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属製の内蓋52と、鍋5と内蓋52との間をシールするために、当該内蓋52の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン53と、蓋パッキン53を内蓋52の外側全周に装着するための内蓋リング54と、を備えている。環状に形成された蓋パッキン53は、蓋体2を閉じた時(蓋閉時)に、鍋5のフランジ部11の上面全周に当接して、鍋5と内蓋52との間の隙間を塞ぎ、鍋5から発生する蒸気を密閉するものである。
【0047】
図示しないが、蓋体2の特に内蓋52の温度を検知する蓋温度検知手段として、サーミスタ式の蓋温度センサ(図示せず)を放熱板45の上面に設けてもよい。また、平面視で蓋体2の略中央部には、蓋体2の上面側から着脱可能な蒸気口ユニット56が設けられる。蒸気口ユニット56は上下方向に連通する蒸気通路を有し、放熱板45と内蓋52に共通して設けられた蒸気穴57に、その下端開口が臨んでいる。これにより、鍋5内の被炊飯物から発生した蒸気が、蒸気穴57から蒸気口ユニット56を通して蓋体2の外部に放出される構成となっている。なお、蒸気穴57を通過する蒸気が蓋体2の内部に充満しないように、蒸気口ユニット56の下端部と蒸気穴57の周囲には、円環状のパッキン58が密着配置される。
【0048】
制御ユニット42には、マイクロコンピュータ(マイコン)などで構成される制御手段61が搭載される。制御手段61は、鍋温度センサ36の温度検知信号と、操作部からの操作信号を受けて、所定のタイミングで炊飯時および保温時に鍋5内の被炊飯物や調理具14内の食材を加熱する電熱ヒータ31や胴ヒータ33を各々制御すると共に、表示部の表示などを制御するものである。また制御手段61は、記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、操作部からの炊飯開始の指示を受けて、鍋5に投入した米の吸水を促進させるひたしと、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる加熱と、被炊飯物の沸騰状態を継続させる沸騰継続と、被炊飯物をドライアップ状態のご飯に炊き上げる炊き上げと、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらしの各行程を順に実行して、鍋5内部の被炊飯物に対する加熱を制御する炊飯制御手段と、鍋5内部のご飯を所定の保温温度に保つように制御する保温制御手段と、をそれぞれ備えている。
【0049】
次に、図5図8における調理具14単体の図面を参照しながら、調理具14の構成を詳しく説明する。これらの各図において、フランジ部16から収容体15の側壁にかけて設けられる一対の支持部25は、調理具14を上から見た平面視で、収容体15の一側端部と他側端部にそれぞれ対向して設けられる。各々の支持部25は、フランジ部16の上面よりも低い載置面63を有する段部64と、この段部64の一側と他側にそれぞれ設けられる長穴65と、により構成される。また、支持部25を設けたフランジ部16の外方で、当該フランジ部16を2か所部分的に切り欠いた把手部26が形成される。この把手部26は、調理具14を鍋5に収容したときに、鍋5のフランジ部11内周とフランジ部16との間の隙間に指を差し入れて、当該把手部26に指の先端が引っ掛かる程度の大きさに切り欠き形成される。
【0050】
支持部25に対して上下動自在に取付けられる棒状の取手18は、取手18の収納時に支持部25の載置面63に載置される水平部68と、水平部68の一端と他端からそれぞれ垂下し、支持部25の長穴65に挿通する一対の垂直部69と、各垂直部69の下端にそれぞれ形成され、調理具本体17の非収納時に支持部25の下側一端と下側他端に当接係合する鉤部70と、により構成される。特に本実施形態の取手18は、一対の垂直部69を内方に弾性変形させたときに、2つの鉤部70が対応する2つの長穴65を挿通できるように形成される。また、図5の破線で示したように、取手18の水平部68が支持部25の載置面63に載置される収納時には、フランジ部16の下面よりも下方に取手18の最上部である水平部68が位置しており、取手18はどの蒸気穴24よりも低い位置に配置される。
【0051】
注ぎ口23は、内方から外方に向かって円弧状に窪んだ形状を有し、平面視で支持部25や把手部26に直交する径方向に対向して設けられる。また特に、調理具14の中心から見た放射方向で、注ぎ口23の最外端23aと支持部25の最外端25aは、調理具14を鍋5に収容した状態で、鍋5の側壁10内面に当接可能な位置決め部として設けられる。この位置決め部は、鍋5に対する調理具14の水平方向の動きを規制するストッパーとして機能するものである。これらの注ぎ口23や支持部25を除くフランジ部16の部位に、複数の蒸気穴24が上下方向に開口して形成される。
【0052】
さらに、収容体15の底部21は、被炊飯物を収容した鍋5の内部に露出する外底面が、凹凸のない平坦状に形成される。これは、電熱ヒータ31や胴ヒータ33への通電に伴う被炊飯物への加熱で、鍋5内の被炊飯物からおねばが発生しても、収容体15の底部21の外底面におねばを付着しにくくするためである。
【0053】
次に、上記構成についてその作用を説明する。本体1に対して蓋体2を開けた状態で、被炊飯物となる米や水を入れた鍋5を鍋収容部6に装着する。このまま鍋5内の被炊飯物だけを加熱調理する場合は、単に蓋体2を閉じ、操作パネル40を介して操作部を押動操作して調理開始を指示すると、制御手段61は、炊飯制御手段によるひたしからむらしに至る一連の炊飯行程と、その後の保温制御手段による保温行程を順に実行するために、電熱ヒータ31や胴ヒータ33の通断電を各々制御し、さらには操作表示ユニット41に搭載した表示部の表示を制御する。これにより、炊飯行程において鍋5内の被炊飯物は電熱ヒータ31や胴ヒータ33からの熱で炊き上げられてご飯になり、その後でご飯は炊飯行程に続く保温行程において、主に胴ヒータ33からの熱で所定の温度に保温される。
【0054】
一方、鍋5内の被炊飯物と同時に調理具14に投入した食材を調理するには、前述の蓋2を開けた状態で、被炊飯物を入れた鍋5を鍋収容部6に装着した後、予め食材を投入した調理具14を、鍋5の上部開口から装着する。このときの取手18は、その水平部68が支持部25の載置面63に載置される収納状態となる。その後で蓋体2を閉じ、操作パネル40を介して操作部を押動操作して調理開始を指示すると、鍋5内の被炊飯物が炊き上げられるのに伴い、鍋5内に発生する蒸気が鍋5の側壁10と収容体15の側壁22との間の空間から、調理具14のフランジ部16に設けた蒸気穴24を通って、収容体15の内部に入り込み、電熱ヒータ31や銅ヒータ33で加熱された食材を蒸し調理する。ここで取手18は蒸気穴24よりも下方に位置した収納状態にあるため、各蒸気穴24を通過した蒸気が取手18に当たることなく、そのまま収容体15内部の食材に到達し、食材に蒸気を万遍なく行き渡らせることが可能になる。蒸気はその後で、収容体15の上部開口中央に臨んで位置する蒸気穴57から蒸気口ユニット56を通して、蓋体2ひいては炊飯器の外部に放出される。
【0055】
鍋5内の被炊飯物からは蒸気の他におねばも発生して上昇するが、皿状の収容体15は無孔であるため、おねばが食材に触れることはない。また本実施形態の調理具14は、収容体とフランジ部とを同心状に設けた二重構造ではなく、収容体15の上端外周よりフランジ部16を外方に延ばした一重構造としているため、おねばがフランジ部16にまで到達して蒸気穴24の周辺に付着しても、調理後に蒸気穴24を含むフランジ部16を掃除するだけで、そのおねばを簡単に除去することが可能になる。つまり、二重構造の調理具では、蒸気穴が収容体とフランジ部との間に設けた深い位置にあるため、スポンジやブラシでもおねばのような汚れが落ちないが、本実施形態の蒸気穴24は、蒸気穴24がフランジ部16に設けた浅い位置にあるため、スポンジやブラシで汚れを簡単に洗い落すこととができる。
【0056】
さらに、収容体15の底部21の外底面は平坦状であるため、鍋5内で発生したおねばが付着しにくく、結果的に調理具14としての清掃性を高めることができる。
【0057】
本実施形態では、胴ヒータ33が食材を入れた収容体15よりも下方に位置している。これにより、胴ヒータ33への通電に伴う熱が鍋5に直接届くようになり、被炊飯物に対する炊き上がり性能や省エネ効果を改善できる。加えて、胴ヒータ33からの熱は収容体15の側壁22よりもむしろ底部21に向けて伝わり、収容体15の側壁22から離れた位置にある食材にも、胴ヒータ33からの熱を十分伝えて調理を行なうことができる。
【0058】
また食材の調理中は、蓋体2が鍋5および調理具14の上部開口を覆っているが、図2の一点鎖線で示したように、蓋パッキン53は、鍋5のフランジ部11全周に当接して密着するものの、調理具14のフランジ部16には把手部26を設けた部位で当接していない。したがって、把手部26の外端と蓋パッキン53の内周端との間に上下方向の蒸気通路が形成され、複数の蒸気穴24だけでなく、この蒸気通路からも収容体5内の食材に向けて、収納状態の取手18に邪魔されることなく蒸気を円滑に導くことができる。
【0059】
こうして鍋5内の被炊飯物が炊き上がり、また調理具14内の食材が蒸し料理された後、蓋体2を開けた本体1から、調理具14と鍋5を取り出すことができるが、特に調理開始時や調理終了時などに、調理具14を鍋5に出し入れする場合は、調理具14の取手18や把持部26を利用することができる。
【0060】
取手18を利用する場合は、図5に示す取手18の収納状態から、支持部25に鉤部70が当接する位置まで、一方の取手18の水平部68を右手で持ち上げ、他方の取手18の水平部68を左手で持ち上げて、図6に示す取手18を起こした非収納状態に移行させた後、2個の取手18を右手と左手でそれぞれ掴んで、取手18を含む調理具14全体を持ち上げる。特に本実施例形態では、取手18の収納状態において、収容体15の側壁22の内面よりも内側に水平部68の一部が位置しているため、側壁22の内面に沿って指を上方に滑らせるだけで、水平部68の下側から指を引掛けて取手18を簡単に持ち上げることができる。こうして、2個の取手18の間に調理具本体17を懸架させた状態で、調理具14を任意の場所に持ち運ぶことができる。また、水平部68から手を離せば取手18が自重で落下し、取手18は自ずと収納状態に移行する。
【0061】
ところで、取手を利用して調理具を持ち運ぶ際に、収容体の上部開口周縁で2個の支持部が並んで設けられていると、支持部に軸支される2個の取手の軸(支点)間が近くなる。そのため、一方の取手を右手で掴み、他方の取手を左手で掴んで、取手を両手で持ったときに、調理具が簡単に傾いてしまい、収容体から液体の食材がこぼれてしまう。これに対して、本実施形態の調理具14は、2個の取手18の支点間が最も遠くなるように、収容体15の一側端部と他側端部に一対の支持部25をそれぞれ配置しているので、取手18を両手で持ったときに、調理具14は容易には傾かず、収容体15から液体の食材がこぼれることもない。これにより、調理具14を安定した状態で任意の場所に持ち運ぶことができる。
【0062】
取手18は、調理具本体17の支持部25から簡単に着脱することができる。取手18を調理具本体17から取り外すには、支持部25の長穴65に挿通している一対の垂直部69を指で内方に弾性変形させて、2つの鉤部70を対応する2つの長穴65の位置に一致させ、そこから鉤部70が長穴65を通過するように取手18だけを持ち上げればよい。このように取手18を取り外して、取手18や調理具本体17を単体にすることで、取手18の細部はもとより、取手18が挿入される穴となる支持部25の長穴65も洗いやすくなり、清掃性が向上する。また、取手18を支持部25に取付けるには、同様に垂直部69を弾性変形させて、取手18を外す場合と逆の方向に取手18を動かして、鉤部70に続いて垂直部69を長穴65に挿通させるだけでよい。本実施形態では、取手18の下端に抜け止め用の鉤部70が設けられているため、取手18が支持部25に取付けられた状態で、取手18を非収納状態に持ち上げると、鉤部70が支持部25の下端に当接して、一対の垂直部69が内方に弾性変形するのを規制する。そのため、調理具14を持ち運ぶ際などに、取手18が支持部25の長穴65から抜け出して簡単に離脱するのを効果的に防止できる。
【0063】
一方、取手18に代わり把手部26を利用する場合は、調理具14の一側と他側から把手部26に向けて指を差し入れ、把手部26の下端縁に指を触れることで調理具14全体を持ち上げる。これにより、わざわざ取手18を非収納状態にしなくても、把手部26を利用して食材の入った調理具14を、鍋5に装着または鍋5から取り出すことができる。また本実施形態では、調理具14を鍋5に収容した状態で、鍋5のフランジ部11内周と把手部26の外端との間に、蒸気通路を兼用する隙間が形成されるので、ここを目安に把手部26へ向けて指を差し入れて、鍋5から調理具14を簡単に持ち上げることが可能になる。
【0064】
なお変形例として、図9に示すように、各々の把手部26に対向して、鍋5の上部開口を部分的に外方に拡げた拡径部75を形成してもよい。この拡径部75と把手部26とにより、鍋5と調理具14との間の隙間が拡がって指をさらに差し入れやすくなり、鍋5から調理具14を容易に着脱できる。その他、図示しないが、鍋5に調理具14を装着する際に、把手部26に対向して拡径部75が常に位置するような案内部を設けてもよい。
【0065】
以上のように本実施形態では、本体1内に装着される内鍋となる鍋5に、別体の調理具14を収容して、鍋5内の被炊飯物と調理具14内の食材を同時に調理する炊飯器において、前記調理具14は、食材を収容する上部を開口した収容体15と、調理具14を上から見て、収容体15の一側端部と他側端部にそれぞれ設けられる一対の支持部25と、この一対の支持部25にそれぞれ取付けられる一対の取手18と、を備えて構成される。
【0066】
この場合、収容体15の最も離れた位置にある一側端部と他側端部に、取手18を支える支持部25がそれぞれ配置されるので、対をなす取手18の支点間が遠くなる。したがって、取手18を両手で持ったときに、調理具14が容易には傾かずに安定した状態で持ち運ぶことが可能になる。
【0067】
また、本実施形態の取手18は、支持部25に対して着脱可能に設けられる。この場合、収容体15から取手18を弾性変形させて取り外すことで、取手18や支持部25を単体で清掃することが可能になる。
【0068】
また本実施形態では、支持部25に当接する止め部としての鉤部70を、取手18に設けている。ここでの止め部は、本実施形態のような鉤形以外の形状でもよく、また支持部25のどの部位に止め部が当接しても構わない。
【0069】
この場合、取手18を支持部25から着脱できる上述の利点を生かしつつ、取手18を支持部25に取付けた状態では、取手18の鉤部70が支持部25に突き当たって、取手18が支持部25から簡単に離脱するのを防止できる。
【0070】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した収容体15と、この収容体15の上方外周に設けられ、鍋5の上方部であるフランジ部11に懸架される懸架部としてのフランジ部16と、を備え、調理具14のフランジ部16を部分的に切り欠いて、使用者が指を掛けることができる程度の把手部26を形成している。
【0071】
この場合、調理具14のフランジ部16を鍋5の上方部となるフランジ部11に懸架させた状態から、鍋5と把手部26との間の隙間に指を差し入れて、把手部26に指を掛けることで、わざわざ取手18を起こさなくても、調理具だけを簡単に持ち上げて運ぶことが可能になる。
【0072】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した収容体15と、収容体15の外周部であるフランジ部16に設けられ、鍋5内で発生した蒸気を収容体15の内部に導く蒸気穴24と、蒸気穴24よりも下方に位置する取手18と、を備えている。
【0073】
この場合、収容体15の外周部に相当するフランジ部16で、複数の蒸気穴24よりも取手18が下方に位置しているので、炊飯加熱に伴い鍋5から発生する蒸気が蒸気穴24を通過した後に取手18に当たることがなく、そのまま収容体15内の食材に導かれる。したがって、鍋5内からの蒸気を、調理具14の収容体15に投入した食材に十分行き渡らせることが可能になる。
【0074】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した収容体15と、収容体15の上端周囲より外方に延設し、鍋5の上方部に懸架されるフランジ部16と、フランジ部16に設けられ、鍋5内で発生した蒸気を収容体15の内部に導く蒸気穴24と、を備えている。
【0075】
この場合、鍋5への懸架部となるフランジ部16を、収容体15の外周より外方に延ばし、そのフランジ部16に蒸気穴24を設けることで、従来のように調理具が収容体と懸架部が二重構造になるのを回避したので、鍋5内で発生したおねばが蒸気穴24の周辺に付着しても、そのおねばを簡単に除去することが可能となり、清掃性に優れた炊飯器を提供できる。
【0076】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した収容体15と、収容体15の側壁22にそれぞれ設けられる注ぎ口23および支持部25と、支持部25に取付けられる取手18と、を備え、注ぎ口23の最外端23aと支持部25の最外端25aを、何れも鍋5を調理具14に収容したときに、鍋5に当接可能な位置決め部として設けている。
【0077】
この場合、収容体15の側壁22に設けられる注ぎ口23や、取手18を支える支持部25を利用して、調理具14を鍋5の所定位置に収容することが可能になり、従来の外部材を廃止することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した有底筒状の収容体15を備え、この収容体15よりも下方に位置し、且つ鍋5の側壁10に対向して加熱手段となる胴ヒータ33を配設している。
【0079】
この場合、食材を収容する収容体15よりも下方で、鍋5の側壁22に対向して胴ヒータ33を配置することで、その胴ヒータ33からの熱が鍋5に収容した被炊飯物に直接届くようになり、炊飯器としての炊き上がり性能や省エネ効果を改善することが可能となる。また、胴ヒータ33からの熱は収容体15の側壁22よりもむしろ、収容体15の底面部となる底部21に向けて伝わるため、食材が収容体15の側壁22から離れた位置にあっても、その食材に胴ヒータ33からの熱を十分伝えることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の調理具14は、食材を収容する上部を開口した有底筒状の収容体15を備え、この収容体15の底壁となる底部21の外底面全体を凹凸のない平坦状に形成している。
【0081】
この場合、鍋5内の被炊飯物を炊飯加熱するのに伴い、収容体15の底部21の外底面を平坦に形成することで、鍋5内からおねばが発生しても、収容体15の底部21の外底面におねばを付着しにくくすることが可能となる。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、上述した調理具14の各部の構成は、上記実施形態で示した形状や材質に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、フランジ部以外の鍋の上方部で、調理具を懸架させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
5 鍋(内鍋)
14 調理具
15 収容体
16 フランジ部(懸架部、外周部)
18 取手
23 注ぎ口
24 蒸気穴
25 支持部
26 把手部
70 鉤部(止め部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9