(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420223
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】ガス気化器
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20181029BHJP
【FI】
F17C9/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-202720(P2015-202720)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-75633(P2017-75633A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】澄田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍生
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−053932(JP,A)
【文献】
実開昭63−045297(JP,U)
【文献】
特開平11−281266(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0202126(US,A1)
【文献】
実開昭61−069600(JP,U)
【文献】
特開2012−189125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、
それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、
前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、
各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、
各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、
前記熱源媒体供給部から各トラフおよび各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、
各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、
前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器。
【請求項2】
熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、
それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、
前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、
各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、
各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、
前記熱源媒体供給部から各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、
各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、
前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有し、
前記熱源媒体供給部は、
各トラフに前記熱源媒体を分配する複数の分配ヘッダーと、
各分配ヘッダーに前記熱源媒体を供給する熱源媒体マニホールドと、を有し、
前記バイパス流路は、前記熱源媒体マニホールドから前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器。
【請求項3】
請求項2に記載のガス気化器において、
前記バイパス流路は、前記熱源媒体マニホールドの下部から前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器。
【請求項4】
熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、
それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、
前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、
各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、
各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、
前記熱源媒体供給部から各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、
各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、
前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有し、
前記熱源媒体供給部は、
各トラフに前記熱源媒体を分配する複数の分配ヘッダーと、
各分配ヘッダーに前記熱源媒体を供給する熱源媒体マニホールドと、を有し、
前記バイパス流路は、前記分配ヘッダーの下流側の端部から前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器。
【請求項5】
請求項4に記載のガス気化器において、
前記バイパス流路は、前記分配ヘッダーの下流側の端部の下部から前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス気化器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(LNG)等の低温液化ガスを海水等の熱源媒体を用いて気化させるガス気化器(ORV)が知られている。例えば、特許文献1には、複数のパネルと、各パネルに液化天然ガス(LNG)を供給するLNGマニホールドと、複数のトラフと、熱源媒体として海水を供給する海水マニホールドと、海水マニホールドと各トラフとを接続する複数の分岐供給管と、を備えるガス気化器が開示されている。
【0003】
各パネルは、特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有している。各伝熱管は、当該伝熱管内を流れるLNGと当該伝熱管の外面に沿って流れる海水とを熱交換させることによってLNGを加熱する。複数のパネルは、前記特定方向と直交する並び方向に沿って間欠的に並ぶように配置されている。各トラフは、各パネルを前記並び方向の両側から挟む位置に配置されている。海水マニホールドは、各分岐供給管に海水(熱源媒体)を供給する。各分岐供給管は、海水マニホールドから供給された海水をトラフに供給する。トラフから溢れた海水は、パネルの各伝熱管の外面に沿って流下した後、各パネルの下方に設けられた受け部で受けられ、海水ポンドを形成する。
【0004】
このようなガス気化器では、海水マニホールドに供給される海水の温度と受け部から排出される海水の温度との温度差を規定値以下とすることが求められる場合がある。このため、特許文献1では、複数のトラフのうち前記並び方向の最も外側に設けられた最外トラフの外側に、最外トラフから溢れた海水を一時的に滞留させる一時滞留手段(従管)が設けられている。この一時滞留手段から溢れた海水は、伝熱管を経由することなく直接受け部に至る。つまり、特許文献1では、最外トラフの外側に一時滞留手段が設けられることにより、前記温度差が前記規定値以上になることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるガス気化器では、複数のパネルのうち前記並び方向の最も外側に設けられた最外トラフのさらに外側に一時滞留手段が設けられているので、当該気化器の前記並び方向への大型化が避けられない。なお、この課題は、熱源媒体として、海水以外の媒体(温水等)が用いられる場合にも同様に生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、複数のパネルの並び方向の寸法の大型化を回避しつつ、熱源媒体の温度差を規定値以下に収めることが可能なガス気化器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する手段として、
本願請求項1に係る発明は、熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、前記熱源媒体供給部から
各トラフおよび各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有する、ガス気化器を提供する。
【0009】
本ガス気化器では、熱源媒体供給部に供給された熱源媒体の一部が、バイパス流路を通じて
各トラフおよび各伝熱管を経由することなく受け部に導かれるので、従来のような一時滞留手段(最外トラフのさらに外側に配置されており熱源媒体を一時的に溜めておく手段)の省略が可能となる。よって、複数のパネルの並び方向の寸法の大型化を回避しながら、熱源媒体の温度差を規定値以下に収めることが可能となる。なお、「各伝熱管から離間した位置」とは、伝熱管内を流れる低温液化ガスとバイパス流路内を流れる熱源媒体との熱交換が行われない程度にバイパス流路が伝熱管から離間した位置を意味する。
【0010】
また、本願請求項2に係る発明は、熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、前記熱源媒体供給部から各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有し、前記
熱源媒体供給部は、各トラフに前記熱源媒体を分配する複数の分配ヘッダーと、各分配ヘッダーに前記熱源媒体を供給する熱源媒体マニホールドと、を有し、前記バイパス流路は、前記熱源媒体マニホールドから前記受け部に向かって延びる形状を有
する、ガス気化器を提供する。
【0011】
この態様では、各分配ヘッダーの上流側に位置する海水マニホールドから熱源媒体の一部が受け部に向けて流れるので、熱源媒体マニホールドの下流側に位置する各分配ヘッダーについては、熱源媒体マニホールドに供給された熱源媒体の全量のうち各トラフに必要な量(各パネルでの熱交換に必要な量)の熱源媒体を当該トラフに供給可能な径に設定することができる。よって、各分配ヘッダーの大径化が抑制される。
【0012】
この場合において、前記バイパス流路は、前記熱源媒体マニホールドの下部から前記受け部に向かって延びる形状を有することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、熱源媒体マニホールド内への泥等の堆積が抑制されるので、当該熱源媒体マニホールドのメンテナンス作業の負荷が低減される。
【0014】
さらに、本願請求項4に係る発明は、熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させるガス気化器であって、それぞれが特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管を有しかつ前記特定方向と交差する方向に沿って間欠的に並ぶ複数のパネルと、前記複数のパネルが並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されており、各パネルの伝熱管に前記熱源媒体を供給する複数のトラフと、各トラフに前記熱源媒体を供給する熱源媒体供給部と、各パネルの下方で前記熱源媒体を受ける受け部と、
前記熱源媒体供給部から各伝熱管を経由することなく前記受け部へ前記熱源媒体の一部を導くバイパス流路と、を備え、各伝熱管は、当該伝熱管内を流れる低温液化ガスと当該伝熱管の外面に沿って流れる熱源媒体とを熱交換させることによって前記低温液化ガスを加熱し、前記バイパス流路は、各伝熱管から離間した位置を通りながら前記熱源媒体供給部から前記受け部に向かって延びる形状を有し、前記
熱源媒体供給部は、各トラフに前記熱源媒体を分配する複数の分配ヘッダーと、各分配ヘッダーに前記熱源媒体を供給する熱源媒体マニホールドと、を有し、前記バイパス流路は、前記分配ヘッダーの下流側の端部から前記受け部に向かって延びる形状を有
する、ガス気化器を提供する。
【0015】
この態様では、分配ヘッダーの下流側の端部での熱源媒体の淀みの発生が抑制されるので、当該下流側の端部のメンテナンス作業の負荷が低減される。
【0016】
この場合において、前記バイパス流路は、前記分配ヘッダーの下流側の端部の下部から前記受け部に向かって延びる形状を有することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、分配ヘッダーの下流側の端部内への泥等の堆積が抑制されるので、当該下流側の端部のメンテナンス作業の負荷が一層低減される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、複数のパネルの並び方向の寸法の大型化を回避しつつ、熱源媒体の温度差を規定値以下に収めることが可能なガス気化器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態のガス気化器の斜視図である。
【
図2】
図1に示されるガス気化器の構成の概略図である。
【
図3】
図1に示されるガス気化器の概略の側面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のガス気化器の概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態のガス気化器について、
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0022】
本ガス気化器は、熱源媒体で低温液化ガスを加熱することにより当該低温液化ガスを気化させる。本実施形態では、低温液化ガスとして液化天然ガス(LNG)が用いられ、熱源媒体として海水が用いられている。つまり、本ガス気化器は、LNGと海水とを熱交換させることによりLNGを気化させるいわゆるオープンラック式の気化器(ORV)である。
【0023】
図1に示されるように、本ガス気化器は、複数のパネル10と、設置室30と、複数のトラフ40と、熱源媒体供給部50と、バイパス流路60と、を備えている。
【0024】
各パネル10は、LNGと海水とを熱交換させることによりLNGを気化させる。具体的に、各パネル10は、特定方向に沿って並ぶ複数の伝熱管12と、下部ヘッダー14と、上部ヘッダー16と、を有する。複数のパネル10は、前記特定方向と直交する方向に沿って間欠的に並ぶように配置されている。また、各パネル10の両側には、点検者が歩くための歩廊Cが設けられている。歩廊Cは、各パネル10から離間した位置において前記特定方向に沿って延びる形状を有する。
【0025】
各伝熱管12は、当該伝熱管12内を流れるLNGと当該伝熱管12の外面に沿って流れる海水とを熱交換させることによってLNGを加熱する。
【0026】
下部ヘッダー14は、各伝熱管12内に下方からLNGを供給することが可能となるように各伝熱管12の下端部に接続されている。各下部ヘッダー14の一端部には、当該下部ヘッダー14にLNGを供給するLNG供給マニホールド20が接続されている。LNG供給マニホールド20には、LNG供給部22を通じてLNGが供給される。
【0027】
上部ヘッダー16は、各伝熱管12の上部から流出したNGを合流させることが可能となるように各伝熱管12の上端部に接続されている。各上部ヘッダー16の一端部には、当該上部ヘッダー16から流出したNGを合流させるNG合流マニホールド24が接続されている。NG合流マニホールド24で合流したNGは、NG回収部26を通じて回収される。
【0028】
設置室30は、各パネル10を取り囲む形状を有する。具体的に、設置室30は、各パネル10の周囲を覆う側壁32と、側壁32の下部を閉塞するとともに各パネル10の下方で海水を受ける受け部34と、を有する。なお、LNG供給マニホールド20及びNG合流マニホールド24は、側壁32の外部に配置されている。
【0029】
各トラフ40は、各パネル10の伝熱管12に海水を供給する。各トラフ40は、複数のパネル10が並ぶ並び方向に沿って間欠的に配置されている。本実施形態では、各トラフ40は、各パネル10を前記並び方向の両側から挟む位置に配置されている。
図1、
図3及び
図4に示されるように、各トラフ40は、各伝熱管12の上部に隣接する位置に配置されている。各トラフ40は、上方に開放する箱状に形成されている。すなわち、各トラフ40の上部の開口から溢れた海水が各伝熱管12の外面に沿って流下する。各伝熱管12の外面に沿って流下した海水は、受け部34で受けられた後、当該受け部34に形成された排出口(図示略)を通じて排出ラインL2から排出される。
【0030】
熱源媒体供給部50は、各トラフ40に熱源媒体を供給する。具体的に、熱源媒体供給部50は、各トラフ40に海水を分配する複数の分配ヘッダー52と、各分配ヘッダー52に熱源媒体を供給する熱源媒体マニホールド54と、を有する。本実施形態では、熱源媒体として海水が用いられているため、以下、熱源媒体供給部50を海水供給部50といい、熱源媒体マニホールド54を海水マニホールド54という。
【0031】
図1及び
図3に示されるように、各分配ヘッダー52は、各トラフ40の下部に接続されている。具体的に、各分配ヘッダー52は、略水平に延びる水平部52aと、水平部52aとトラフ40の下部とを接続する接続部52bと、を有している。
図1に示されるように、各分配ヘッダー52の上流側の部位は、側壁32の外部に配置されている。各分配ヘッダー52には、開度調整が可能な開閉弁V1が設けられている。
【0032】
海水マニホールド54は、各分配ヘッダー52の上流側の端部に接続されている。海水マニホールド54は、側壁32の外部に配置されている。海水マニホールド54は、当該海水マニホールド54の中心軸が略水平となる姿勢で配置されている。海水マニホールド54には、当該海水マニホールド54に設けられた海水導入部56を通じて海水ラインL1から海水が供給される。
【0033】
バイパス流路60は、海水供給部50から
各トラフ40および各伝熱管12を経由することなく直接受け部34へ海水を導く流路である。バイパス流路60は、各伝熱管12から離間した位置を通りながら海水供給部50から受け部34に向かって延びる形状を有する。なお、「各伝熱管12から離間した位置」とは、伝熱管12内を流れるLNGとバイパス流路60内を流れる海水との熱交換が行われない程度にバイパス流路60が伝熱管12から離間した位置を意味する。本実施形態では、バイパス流路60は、海水マニホールド54から側壁32を貫通しつつ受け部34に向かって延びる形状を有する。バイパス流路60は、海水マニホールド54の互いに異なる部位からそれぞれ受け部34に向かって延びる第1バイパス管61及び第2バイパス管62を有する。
図4に示されるように、各バイパス管61,62の上流側の端部は、海水マニホールド54の下部に接続されている。各バイパス管61,62の下流側の端部は、受け部34の近傍に配置されている。各バイパス管61,62には、開度調整可能な開閉弁V2が設けられている。
【0034】
次に、以上に説明したガス気化器の動作について説明する。
【0035】
海水ラインL1から海水マニホールド54に海水が供給されるとともに、LNG供給マニホールド20にLNGが供給される。海水マニホールド54に供給された海水は、各分配ヘッダー52を通じて各トラフ40に流入する。そして、トラフ40から溢れた海水は、各パネル10の伝熱管12の外面に沿って流下した後、受け部34に受けられ、排出ラインL2から排出される。一方、LNG供給マニホールド20に供給されたLNGは、各下部ヘッダー14を通じて当該下部ヘッダー14に接続された複数の伝熱管12内に流入する。このLNGは、各伝熱管12の外面に沿って流れる海水に加熱されることによって気化する(NGとなる)。NGは、各上部ヘッダー16及びNG合流マニホールド24を通じて回収される。
【0036】
ここで、海水ラインL1から海水マニホールド54に供給される海水の温度と受け部34を通じて排出ラインL2に排出される海水の温度との温度差を規定値以下とすることが求められる場合がある。本実施形態では、海水マニホールド54に供給された海水の一部は、各バイパス管61,62を通じて
各トラフ40および各伝熱管12を経由することなく受け部34に導かれるので、従来のような一時滞留手段(最外トラフのさらに外側に配置されており熱源媒体を一時的に溜めておく手段)の省略が可能となる。よって、複数のパネル10の並び方向の寸法の大型化を回避しながら、海水の温度差を規定値以下に収めることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、各バイパス管61,62は、海水マニホールド54から受け部34に向かって延びる形状を有している。この態様では、各分配ヘッダー52の上流側に位置する海水マニホールド54から海水の一部が受け部34に向けて流れるので、海水マニホールド54の下流側に位置する各分配ヘッダー52については、海水マニホールドに供給された海水の全量のうち各トラフ40に必要な量(各パネル10での熱交換に必要な量)の海水を当該トラフ40に供給可能な径に設定することができる。よって、各分配ヘッダー52の大径化が抑制される。
【0038】
また、各バイパス管61,62は、海水マニホールド54の下部から受け部34に向かって延びる形状を有している。このため、海水マニホールド54内への泥等の堆積が抑制されるので、当該海水マニホールド54のメンテナンス作業の負荷が低減される。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態のガス気化器について、
図5を参照しながら説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0040】
本実施形態では、バイパス流路60は、分配ヘッダー52の下流側の端部52cに接続されている。なお、分配ヘッダー52の下流側の端部52cは、水平部52aのうち、最も下流側に位置する接続部52bよりも下流側に位置する部位を指す。バイパス流路60は、それぞれが各分配ヘッダー52の下流側の端部52cから受け部34に向かって延びる形状を有する複数のバイパス管64を有している。各バイパス管64は、分配ヘッダー52の下流側の端部52cの下部から歩廊Cから離間した位置を通りながら受け部34に向かって下向きに延びる形状を有している。なお、
図5では、歩廊Cの図示は省略されている。
【0041】
本実施形態では、海水マニホールド54から各分配ヘッダー52に流入した海水の一部は、当該分配ヘッダー52の下流側の端部52cに接続されたバイパス管64を通じて受け部34に向かって流れる。このため、前記下流側の端部52cでの海水の淀みの発生が抑制されるので、当該端部52cのメンテナンス作業の負荷が低減される。
【0042】
さらに、前記下流側の端部52c内への泥等の堆積も抑制されるので、当該端部52cのメンテナンス作業の負荷が一層低減される。
【0043】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0044】
例えば、第1実施形態において、各バイパス管61,62は、海水マニホールド54の下部以外の部位(側部や上部等)から受け部34に向かって延びる形状を有してもよい。同様に、第2実施形態において、各バイパス管64は、各分配ヘッダー52の下部以外の部位(側部や上部等)から受け部34に向かって延びる形状を有してもよい。
【0045】
また、第1実施形態において、バイパス流路60は、単一のバイパス管を有していてもよく、あるいは、3本以上のバイパス管を有していてもよい。
【0046】
また、第2実施形態において、各バイパス管64は、各分配ヘッダー52のうち側壁32の外部に位置する部位から側壁32を貫通して受け部34に向かって延びる形状を有してもよい。また、バイパス流路60は、少なくとも1本のバイパス管64を有していればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 パネル
30 設置室
34 受け部
40 トラフ
50 海水供給部(熱源媒体供給部)
52 分配ヘッダー
54 海水マニホールド(熱源媒体マニホールド)
60 バイパス流路
61 第1バイパス管
62 第2バイパス管
64 バイパス管