特許第6420479号(P6420479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6420479熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグと積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420479
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグと積層板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20181029BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20181029BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20181029BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20181029BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20181029BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   C08L63/00
   C08L71/12
   C08L35/06
   B32B27/04
   C08J5/24
   H05K1/03
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-525585(P2017-525585)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2018-502938(P2018-502938A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】CN2014092839
(87)【国際公開番号】WO2016074288
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】201410633141.7
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
(72)【発明者】
【氏名】方克洪
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102964775(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102942684(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/107256(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/050155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 59/00− 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアネート50重量部〜150重量部、エポキシ樹脂30重量部〜100重量部、スチレン−無水マレイン酸5重量部〜70重量部、ポリフェニレンエーテル20重量部〜100重量部、ノンハロゲン難燃剤30重量部〜100重量部、硬化促進剤0.05重量部〜5重量部、及びフィラー50重量部〜200重量部を成分として含み、
前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1000〜4000であり、
前記エポキシ樹脂は下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキル基構造を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
前記シアネートは、下記化学構造式を有するものからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】


(式中、X、Xはそれぞれ独立にR、Ar、SO又はOのうちの少なくとも1種であり、Rは−C(CH−、−CH(CH)−、−CH及び置換又は未置換のジシクロペンタジエニル基からなる群より選択され、Arは置換又は未置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ノボラック、ビスフェノールA、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールF及びビスフェノールFノボラックからなる群より選択される1種であり、nは1以上の整数であり、Yは脂肪族官能基又は芳香族官能基である。)
【請求項3】
前記エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びリン含有エポキシ樹脂からなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン−無水マレイン酸の化学構造式は下記のものである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】

(式中、xは1〜4、6、又は8であり、nは1〜12であり、x、nはいずれも整数である。)
【請求項5】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリ燐酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド及びDOPO含有フェノール樹脂からなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化促進剤はイミダゾール、金属塩、第三級アミン及びピペリジン系化合物からなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記フィラーは無機フィラー又は有機フィラーである請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化促進剤は2−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル置換イミダゾール、ベンジルジメチルアミン、コバルトアセチルアセトネート、銅アセチルアセトナート及びイソオクタン酸亜鉛からなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記無機フィラーは水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、か焼タルク、タルカム粉末、窒化ケイ素及びか焼カオリンからなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記有機フィラーはポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルスルホン粉末からなる群より選択される1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記フィラーの粒径は0.01μm〜50μmである、請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されたプリプレグであって、前記プリプレグは基材、及び浸漬乾燥後に前記基材に付着した熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグ。
【請求項9】
前記基材はガラス繊維不織布又はガラス繊維織布である、請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のプリプレグを含む積層板。
【請求項11】
請求項10に記載の積層板を含むプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層板の技術分野に関し、具体的には、樹脂組成物に関し、特に熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工業の急速な発展に伴って、電子製品は軽薄短小化、高密度化、安全化、高機能化の方向に発展しており、電子部品に対してより高い信号伝送速度及び伝送効率が求められており、このようにして、担体としてのプリント回路基板に対する要求が高くなり、電子製品の情報処理の高速化及び多機能化に伴い、使用周波数が増加しており、3GHz以上の周波数が徐々に主流となる傾向があり、積層板材料の耐熱性に対してより高い要求を保持するほかに、その要求される誘電率と誘電正接がますます低くなっている。
【0003】
従来の伝統的なFR−4は電子製品に対する高周波化及び高速化発展による要求を満たすことが困難であり、また、基板材料は、従来のように機械的支持作用を果たすものでなく、電子ユニットと共にPCBとなるものであり、端末メーカーのデザイナーにとって製品の性能を向上させるための重要な手段となるものである。高いDkは信号伝送速度を遅くさせて、高いDfは信号の一部を熱エネルギーに変換させて基板材料で損失するため、低誘電率、低誘電正接を有する高周波伝送として、特にノンハロゲン高周波板材の開発は、銅張積層板業界の重点となっている。
【0004】
従来、ハロゲン含有難燃剤(特に臭素系難燃剤)は高分子難燃材料として幅広く使用されており、且つ優れた難燃作用を果たす。しかしながら、火災現場を深く研究した結果、ハロゲン含有難燃剤は難燃効果に優れ、且つ添加量が少ないが、ハロゲン含有難燃剤を使用した高分子材料が燃焼過程で大量の有毒な腐食性気体や煙を生じて、窒息死を引き起こし、その危害性が火災自体よりも深刻である。従って、欧州連合の『廃電気電子機器についての指令』及び『電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限についての指令』が2006年7月1日に正式実施されているにつれ、ノンハロゲン難燃性プリント回路基板の開発は産業開発作業の重点となり、各銅張積層板の生産者は次々とノンハロゲン難燃性銅張積層板を開発している。
【0005】
上記問題を解決するために、CN101796132Bには、エポキシ樹脂、低分子化フェノール変性ポリフェニレンエーテル及びシアネート組成物を使用することが提案されており、該エポキシ樹脂組成物は優れた誘電特性を有し、且つ難燃性を維持するとともに高耐熱性を備える。しかしながら、該エポキシ組成物は臭素系難燃剤により難燃性を付与することで、優れた総合的性質を有する反面、これら臭素成分を含む難燃剤は製品の製造、使用時、回収や廃棄時にさえ環境汚染を引き起こしやすいため、環境保全要求を満たすことが困難である。
【0006】
CN103013110Aには、シアネート、スチレン−無水マレイン酸、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミドの硬化物を使用し、且つリン窒素系化合物を難燃剤として使用することによって、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性及び高耐燃性を実現できることが提案されているが、ビスマレイミドは硬化温度が高く、且つその硬化物が脆く、加工や使用過程に複数の欠点がある。
【0007】
従って、如何に低誘電率、低誘電正接を有するとともに、耐薬品性に優れたプリプレグ及び積層板を生産するかは現在解決すべき問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は樹脂組成物、特に熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
第一方案によれば、本発明は、シアネート50〜150重量部、エポキシ樹脂30〜100重量部、スチレン−無水マレイン酸5〜70重量部、ポリフェニレンエーテル20〜100重量部、ノンハロゲン難燃剤30〜100重量部、硬化促進剤0.05〜5重量部、フィラー50〜200重量部を成分として含む熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明に使用されるエポキシ樹脂は、下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキル基構造を有するエポキシ樹脂を少なくとも1種含有する。
【化1】
【0011】
上記構造のエポキシ樹脂以外、本発明のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0012】
本発明では、前記エポキシ樹脂の含有量は30〜100重量部であり、たとえば30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部であってもよい。
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を混入しているため、加工性を大幅に改善し、該エポキシ樹脂組成物には、ジシクロペンタジエニルアルキル基構造を有するエポキシ樹脂が含まれ、該エポキシ樹脂のジシクロペンタジエン構造の高い対称性及び嵩高い構造は基材の誘電特性の低下に役立ち、また、アルキル基構造の非極性及び疎水性は誘電特性をより最適化できるだけでなく、基材の吸水率を大幅に低下させる。
【0014】
本発明に使用されるシアネートは、下記化学構造式を有するものから選ばれる少なくとも1種である。
【化2】

(式中、X、Xはそれぞれ独立にR、Ar、SO又はOのうちの少なくとも1種であり、Rは−C(CH−、−CH(CH)−、−CH−又は置換又は未置換のジシクロペンタジエニル基から選ばれ、Arは置換又は未置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ノボラック、ビスフェノールA、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールF又はビスフェノールFノボラックから選ばれる任意の1種であり、nは1以上の整数、Yは脂肪族官能基又は芳香族官能基である。)
【0015】
本発明では、前記シアネートの含有量は50〜150重量部であり、たとえば50重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部、135重量部、140重量部、145重量部、150重量部であってもよい。
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物にシアネートを添加することによって、系の耐熱性及び誘電特性を著しく向上できる。
【0017】
本発明に使用されるスチレン−無水マレイン酸の化学構造式は以下のとおりである。
【化3】

(式中、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはいずれも整数である。)
【0018】
本発明では、前記スチレン−無水マレイン酸の含有量は5〜70重量部であり、たとえば5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部であってもよい。
【0019】
本発明に使用されるポリフェニレンエーテルは低分子量ポリフェニレンエーテルで、数平均分子量が1000〜4000である。
【0020】
本発明では、前記ポリフェニレンエーテルの含有量は20〜100重量部であり、たとえば20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部であってもよい。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルを添加することで板材の誘電率及び誘電正接を大幅に低下させ、さらにポリフェニレンエーテルの使用により板材の靭性を改善して、板材の高周波多層回路基板への使用に役立つ。
【0022】
本発明に使用されるノンハロゲン難燃剤はホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリ燐酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド又はDOPO含有フェノール樹脂から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0023】
本発明では、前記ノンハロゲン難燃剤の含有量は30〜100重量部であり、たとえば30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、60重量部、70重量部、80重量部、90重量部、100重量部であってもよい。
【0024】
本発明に使用される硬化促進剤はイミダゾール、金属塩、第三級アミン又はピペリジン系化合物から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0025】
好ましくは、前記硬化促進剤は2−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル置換イミダゾール、ベンジルジメチルアミン、コバルトアセチルアセトネート、銅アセチルアセトナート又はイソオクタン酸亜鉛から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0026】
本発明では、前記硬化促進剤の含有量は0.05〜5重量部であり、たとえば0.05重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部であってもよい。
【0027】
本発明に使用されるフィラーは無機又は有機フィラーである。
【0028】
好ましくは、前記フィラーは無機フィラーであり、前記無機フィラーは水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、か焼タルク、タルカム粉末、窒化ケイ素又はか焼カオリンから選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0029】
好ましくは、前記フィラーは有機フィラーであり、前記有機フィラーはポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド又はポリエーテルスルホン粉末から選ばれる任意の1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0030】
好ましくは、前記フィラーの粒径は0.01〜50μmであり、たとえば0.01μm、0.05μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μmであってもよく、好ましくは1〜15μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0031】
前記フィラーを本発明の樹脂組成物に均一に分散させるために、さらに分散剤を添加してもよく、用いられる分散剤は、アミノシランカップリング剤又はエポキシシランカップリング剤であり、無機及びガラス織布同士の結合性を改善して、均一に分散させるという目的を達成させ、且つこのようなカップリング剤は重金属を含まないため、人体に悪影響を及ぼすことがなく、使用量が無機フィラーに対して0.5〜2%重量部であり、使用量が高すぎると、反応を速め、貯蔵時間に悪影響を与え、使用量が低すぎると、結合安定性を改善することは、顕著な効果を奏しない。
【0032】
第二方案によれば、本発明はさらに本発明の第一方案に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されたプリプレグを提供し、該プリプレグは基材、及び浸漬乾燥後に前記基材に付着した熱硬化性樹脂組成物を含む。
【0033】
本発明の基材はガラス繊維不織布又はガラス繊維織布である。
【0034】
第三方案によれば、本発明はさらに、本発明の第二方案に記載のプリプレグを含む積層板を提供する。
【0035】
第四方案によれば、本発明はさらに、本発明の第三方案に記載の積層板を含むプリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0036】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0037】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されたプリプレグ及び積層板は低誘電率と低誘電正接を有し、その誘電率が3.6以下に制御され、誘電正接が0.0041〜0.0044の間であり、また、優れた難燃性、耐熱性、耐湿性等の総合的性質を有し、その難燃性が難燃性試験UL−94中のV−0標準に達し、PCT吸水率が0.28〜0.32であり、ノンハロゲン高周波多層回路基板に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施形態によって本発明の技術案をさらに説明する。
【0039】
当業者であれば、前記実施例は本発明を理解しやすくするものであり、本発明を制限するものではないことを了承すべきである。
【0040】
調製例、ジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂の合成
【0041】
ポリテトラフルオロエチレン製撹拌器、温度計、凝縮還流器を備える四つ口フラスコ(500mL)にパラ(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノール270.0gを加えて水浴で加熱して溶融し、三フッ化ホウ素・エーテル1.83gを秤量して、500mLの四つ口フラスコに加え、滴下漏斗に50.1gのジシクロペンタジエンを加えて、滴下速度を制御しながら2hかけて全部のジシクロペンタジエンを滴下し、100℃まで昇温して、4h保温し、室温まで冷却して、さらに一定の温度まで加熱して過剰なジシクロペンタジエンとパラ(1,1,3,3−テトラメチル)ブチルフェノールを留去し、生成物としてジシクロペンタジエニルアルキルフェノール樹脂を得た。
【0042】
前のステップで得られたジシクロペンタジエニルアルキルフェノール樹脂を四つ口フラスコに投入し、エピクロロヒドリン100.0gを秤量して緩慢に添加し、溶解後、昇温して滴下漏斗に33質量%のKOH溶液1molを加え、速度を制御しながら1hかけて滴下を終了し、反応温度を100℃に制御し、滴下終了後、4h保温し、冷却後に水洗して、さらに120℃まで昇温して蒸留し、過剰なエピクロロヒドリンを蒸発除去して、下記化学構造式に示されるジシクロペンタジエニルアルキルフェノール構造を有するエポキシ樹脂を得た。
【化4】
【0043】
実施例、銅張積層板の調製方法
【0044】
シアネート、エポキシ樹脂、スチレン−無水マレイン酸、ポリフェニレンエーテル、ノンハロゲン難燃剤、硬化促進剤、フィラー及び溶剤等を容器に投入し、撹拌して均一に混合し、接着剤を得て、溶剤で溶液の固形分を60%〜70%に調整して接着液を調製し、すなわち熱硬化性樹脂組成物接着液を得て、2116電子グレードのガラス繊維布を接着剤に浸漬し、オーブンで焼成して半硬化シートを得て、6枚の2116半硬化シートを取って、両面に厚み35μmの電解銅箔を被覆し、ホットプレスで真空積層して、190℃で120min硬化させて、銅張積層板を得た。
【0045】
実施例1〜6及び比較例1〜5に使用される各成分及びその含有量(重量部)は表1に示され、各成分の番号及び対応した成分の名称は以下のとおりである。
(A)シアネート:HF−10(上海慧峰科貿社製、商品名)
(B)エポキシ樹脂
(B−1)調製例で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂
(B−2)ビフェニル型エポキシ樹脂:NC−3000−H(日本化薬社製、商品名)
(B−3)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP−7200H(大日本インキ社製、商品名)
(C)スチレン−無水マレイン酸オリゴマー:SMA−EF40(米国Sartomer社製、商品名)
(D−1)低分子量ポリフェニレンエーテル:MX90(SABIC Innovative Plastics社製、商品名)、数平均分子量1000〜4000
(D−2)高分子量ポリフェニレンエーテル:Sabic640−111(SABIC Innovative Plastics社製、商品名)、数平均分子量15000〜20000
(E)ノンハロゲン難燃剤
(E−1)PX−200(日本大八化学株式会社製、商品名)
(E−2)SPB−100(大塚化学株式会社製、商品名)
(G)硬化促進剤
(H)フィラー:溶融シリカ
【0046】
実施例1〜6と比較例1〜5に使用される銅張積層板の調製方法は実施例と同じである。
【0047】
以下の方法により、実施例1〜6と比較例1〜5で製造された銅張積層板のガラス転移温度(Tg)、剥離強度(PS)、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、難燃性、PCT 2時間後のディップ半田付耐性及び吸水率をテストし、テスト結果を表2に示す。
【0048】
各特性パラメータのテスト方法は以下のとおりである。
【0049】
A ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC)により、IPC−TM−650 2.4.25に規定されたDSC方法を用いて測定する。
【0050】
B 剥離強度(PS)
IPC−TM−650 2.4.8方法における「熱応力後」の実験条件で、金属キャップの剥離強度をテストする。
【0051】
C 誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)
ストリップライン共振法を用いて、IPC−TM−650 2.5.5.5に準じて1GHzでの誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を測定する。
【0052】
D 難燃性
UL−94標準に準じてテストする。
【0053】
E PCT 2時間後のディップ半田付耐性及び吸水率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬して、表面銅箔を除去して基板を評価し、基板を圧力鍋に入れて、121℃、2atmで2h処理し、吸水率をテストした後、温度288℃の錫炉に浸漬し、基材に発泡やクラックが発生する際に対応する時間を記録する。基材を錫炉に入れてから5min超えた後にも、発泡やクラックが発生しないと、評価を終了する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2のデータから以下が分かった。
【0057】
(1)実施例1〜3から分かるように、実施例1〜3のPCT吸水率はそれぞれ0.32、0.31及び0.28であり、実施例3のPCT吸水率は最も低いので、以上から分かるように、エポキシ樹脂(対応成分の番号はB−1)含有量の増加に伴って、基材のPCT吸水率は徐々に低下し、吸水率は著しく改善する。
【0058】
(2)実施例2と比較例1から分かるように、実施例2の誘電率、誘電正接及びPCT吸水率は全て比較例1より低いので、以上から分かるように、本発明で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂を用いた実施例2は、ビフェニル型エポキシ樹脂を用いた比較例1に比べて、より低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られる。
【0059】
(3)実施例3と比較例2から分かるように、実施例3の誘電率、誘電正接及びPCT吸水率は全て比較例2より低いので、以上から分かるように、本発明で合成したジシクロペンタジエニルアルキルフェノールエポキシ樹脂を用いた実施例3は、市販されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いた比較例2に比べて、より低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られる。
【0060】
(4)実施例5、実施例6及び比較例3から分かるように、基材に優れた総合的性質を付与するために、使用される成分を一定の重量部範囲に制御しなければならず、比較例3の誘電特性は実施例5及び実施例6の誘電特性とは差異が小さいが、2時間PCTテストに合格できないので、以上から分かるように、比較例3は、エポキシ樹脂の使用量が30重量部未満であれば、基材の2時間PCTテストに悪影響を与える。
【0061】
(5)実施例2と比較例4から分かるように、実施例2の誘電率、誘電正接及びPCT吸水率は全て比較例4より低く、且つ比較例4は2時間PCTテストに合格できないので、以上から分かるように、低分子量ポリフェニレンエーテルを添加した実施例2は、未添加の比較例4に比べて、誘電特性が著しく改善し、且つ2時間PCTテストに合格できる。実施例2と比較例5を比較して明らかなように、両方の総合的性質はほぼ同じであるが、高分子量ポリフェニレンエーテルの使用によって加工性が悪くなる。
【0062】
実施例1〜6から分かるように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造された積層板は、誘電率が3.6以下に制御され、誘電正接が0.0041〜0.0044の間であり、また、優れた難燃性、耐熱性、耐湿性等の総合的性質を有し、その難燃性が難燃性試験UL−94中のV−0標準に達し、PCT吸水率が0.28〜0.32であり、ノンハロゲン高周波多層回路基板に適用できる。
【0063】
以上に述べたとおり、本発明が提供した熱硬化性樹脂組成物は、ノンハロゲン難燃を確保するとともに、低誘電率、低誘電正接、優れた耐熱性、粘着性等の総合的性質を有し、ノンハロゲン高周波多層回路基板に適用できる。
【0064】
勿論、以上の実施例は、本発明の好適な実例に過ぎず、本発明の実施範囲を制限するものではなく、本発明の保護範囲に記載の原理に基づいて行った同等変化や修飾は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。