(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について、板部材搬送装置を例に挙げて図を参照しつつ説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態の板部材搬送装置は、厚みの薄い板部材を搬送するためのものである。板部材搬送装置の構成について説明する前に、板部材について説明する。
【0013】
1.板部材
図1は、本実施形態で搬送される板部材WP1を示す平面図である。板部材WP1は、第1の方向J1の向きに搬送される。本実施形態の板部材WP1の質量は、例えば、5kg以上25kg以下の範囲内である。板部材WP1における搬送方向(第1の方向J1)の向きに平行な向きの長さは、例えば、300mm以上800mm以下である。板部材WP1における幅方向の長さは、例えば、500mm以上1500mm以下である。板部材WP1の厚みは、例えば、0.5mm以上4mm以下である。これらの数値範囲は、例示であり、上記以外の板部材WP1を用いてもよい。板部材WP1の材質は、例えば、鋼材またはアルミニウムである。
【0014】
このように、本実施形態の板部材WP1は、薄くて重い。そのため、例えば、150m/min以上200m/min以下の程度の搬送速度で板部材WP1を搬送すると、板部材WP1はばたつきやすい。これにより、板部材WP1を保持する部材から板部材WP1がはずれるおそれがある。板部材WP1が床に落下すると、もちろん、板部材WP1が損傷することがある。これにより、製品の歩留りや生産性が低下するおそれがある。
【0015】
2.板部材搬送装置
図2は、本実施形態の板部材搬送装置1000の概略構成を示す平面図である。
図3は、本実施形態の板部材搬送装置1000の概略構成を示す側面図である。板部材搬送装置1000は、プレス機900に板部材WP1を搬送するためのものである。
【0016】
図2に示すように、板部材搬送装置1000は、第1搬送系100と、一対の第2搬送系200と、を有する。一対の第2搬送系200は、第1搬送系100を間に挟んだ状態で並んで配置されている。第1搬送系100は、第1のベルトコンベアである。第2搬送系200は、第2のベルトコンベアである。第2搬送系200は、第1搬送系100と平行である。
【0017】
図3に示すように、第1搬送系100は、第1のベルト110と、駆動ローラー120と、フリーローラー130、140と、モーター150と、を有する。第2搬送系200は、第2のベルト210と、バキュームカップ220と、支持部材230と、フリーローラー240、250と、を有する。板部材搬送装置1000は、また、上記以外に、クランプ310と、アクチュエーター320と、を有する。
【0018】
第1のベルト110は、板部材WP1を第1の方向J1に搬送するための補助をする第1の搬送部材である。第1のベルト110は、板部材WP1のばたつきを抑制するためのものである。第1のベルト110は、駆動ローラー120と、フリーローラー130、140とに支持されつつ回転駆動される。第1のベルト110の外周面であって板部材WP1と対面する面は、板部材WP1と対面して搬送している際には第1の方向J1の向きに移動する。第1のベルト110の外周面は、板部材WP1を搬送しない際には停止する。もちろん、第1のベルト110は、停止するための減速状態をとることもある。
【0019】
駆動ローラー120は、第1のベルト110を支持するとともに回転駆動するためのものである。フリーローラー130、140は、駆動ローラー120とともに第1のベルト110を支持するとともにその回転を補助するためのものである。モーター150は、駆動ローラー120を回転させるためのものである。モーター150は、サーボモーター、ステッピングモーター、その他のモーターであってよい。
【0020】
第2のベルト210は、その外周面にバキュームカップ220と、支持部材230と、クランプ310と、を有する。第2のベルト210は、支持部材230を介して、バキュームカップ220に固定されている。第2のベルト210は、バキュームカップ220を第1の方向J1に移動させる向きに回転する正回転と、バキュームカップ220を第1の方向J1の逆向きに移動させる向きに回転する逆回転と、をできるようになっている。
【0021】
バキュームカップ220は、板部材WP1を吸着して保持する板部材保持部材である。バキュームカップ220は、吸着の他に電磁石により板部材WP1を保持してもよい。バキュームカップ220は、板部材WP1の保持と、その解除をすることができる。実際には、板部材WP1が第1の方向J1に移動している期間内には、バキュームカップ220は、板部材WP1を保持している。それ以外の期間内には、バキュームカップ220は、板部材WP1を保持していない。
【0022】
バキュームカップ220は、板部材WP1を鉛直下方から支持することができるようになっている。そのため、バキュームカップ220の吸着面(保持面)は鉛直上方を向いている。また、バキュームカップ220は、鉛直方向K1の向きに伸縮することができる。なお、バキュームカップ220が板部材WP1を保持している期間内には、板部材WP1と第1のベルト110との間の距離は、0.1mm以上10mm以下であるとよい。バキュームカップ220は、支持部材230を介して第2のベルト210の外周面に固定されている。
【0023】
支持部材230は、バキュームカップ220を支持し、バキュームカップ220を第2のベルト210に固定するためのものである。フリーローラー240、250は、第2のベルト210を支持するとともに第2のベルト210の回転を補助するためのものである。
【0024】
クランプ310は、第1のベルト110と第2のベルト210とを連結するための連結部である。クランプ310は、第2のベルト210に固定された固定部材である。クランプ310は、第1のベルト110を把持することができる。クランプ310は、第1のベルト110の把持とその解除とを行う。
【0025】
アクチュエーター320は、第2のベルト210のバキュームカップ220の位置を移動させる板部材保持部移動部である。アクチュエーター320は、ピストン321を有する。アクチュエーター320のピストン321は、初期状態と、初期状態から突出した状態と、をとる。ピストン321は、もちろん、初期状態から突出している途中の状態をとることもある。アクチュエーター320は、第2のベルト210の固定部材であるクランプ310を押す。これにより、クランプ310が設けられている第2のベルト210を逆回転させることができる。
【0026】
3.板部材と第1搬送系との間の関係
バキュームカップ220に吸着されている状態の板部材WP1の下端と第1のベルト110との間には、0.1mm以上10mm以下の隙間がある。つまり、板部材WP1を搬送している間における第1のベルト110と板部材WP1との間の距離は、0.1mm以上10mm以下である。この場合、板部材WP1と第1のベルト110とは非接触状態にある。ただし、板部材WP1が撓んだりわずかに揺れる場合には、板部材WP1が一時的に第1のベルト110に接触する場合がある。
【0027】
第1のベルト110は、板部材WP1を直接に搬送するものではなく、板部材WP1の搬送を補助するためのものである。第1のベルト110があるため、板部材WP1のばたつき等が抑制される。また、板部材WP1がバキュームカップ220から外れることを抑制できる。
【0028】
3.連結部と第2搬送系との間の関係
そして、クランプ310が第1のベルト110を把持ししている期間内には、第2のベルト210は、第1のベルト110と同期して回転する。クランプ310が第1のベルト110を把持していない期間内には、第2のベルト210は、他から回転駆動を得ない限り回転することが出来ない。
【0029】
前述のように、第2のベルト210は、回転駆動するための駆動ローラーを有さない。そのため、このままでは第2のベルト210は、回転しない。クランプ310が、第2のベルト210を第1のベルト110に連結する。これにより、第2のベルト210は正回転する。また、アクチュエーター320のピストン321が、クランプ310を押す。これにより、クランプ310を取り付けられている第2のベルト210は、逆回転する。
【0030】
3−1.第1の期間
第1の期間は、バキュームカップ220が板部材WP1を保持している期間である。クランプ310は、第1の期間内にわたって第1のベルト110を把持するとともに搬送する。つまり、クランプ310は、第1の期間内に、第1のベルト110と第2のベルト210とを連結する。そのため、第2のベルト210は、第1の期間内には正回転する。第2のベルト210は、第1の期間内に、板部材WP1を保持しているバキュームカップ220を第1の方向J1の向きに移動させる。このとき、第2のベルト210と第1のベルト110とは、同期して回転している。
【0031】
3−2.第2の期間
第2の期間は、第1の期間ではない期間である。第2の期間内には、バキュームカップ220は板部材WP1を保持していない。また、第2の期間内には、クランプ310は、第1のベルト110を把持していない。つまり、クランプ310は、第2の期間内に、第1のベルト110と第2のベルト210とを連結しない。
【0032】
アクチュエーター320のピストン321は、第2の期間内にクランプ310を押す。クランプ310は、第2のベルト210に固定された固定部材である。そのため、第2のベルト210は、第2の期間内には逆回転する。このようにして、アクチュエーター320は、第2のベルト210の位置を戻す。つまり、アクチュエーター320のピストン321は、第2の期間内に、バキュームカップ220が板部材WP1の保持を開始する開始位置にバキュームカップ220を戻す。
【0033】
3−3.第1の期間および第2の期間
このように、バキュームカップ220が板部材WP1を保持している期間(第1の期間)には、クランプ310は第1のベルト110を把持する。バキュームカップ220が板部材WP1を保持しない期間(第2の期間)には、クランプ310は第1のベルト110を把持しない。
【0034】
3−4.停止期間
第1の期間と第2の期間との間に停止期間があってもよい。
【0035】
4.板部材搬送装置の動作
図4から
図7は、本実施形態の板部材搬送装置1000の動作を説明するための図である。
【0036】
4−1.板部材の保持
図4に示すように、板部材WP1を第1搬送系100の第1のベルト110の上方に配置する。この際に、公知の技術を用いてよい。例えば、特許文献1の
図2の左端の装置を用いることができる。このとき、第2搬送系200のバキュームカップ220が板部材WP1に向かって伸びる。そして、バキュームカップ220が板部材WP1を保持する。
【0037】
このとき、板部材WP1を一時的に第1のベルト110の上に載置してもよい。バキュームカップ220がその載置された板部材WP1を持ち上げるとともに吸着することにより板部材WP1を保持する。もちろん、板部材WP1を第1のベルト110の上に載置する前に、バキュームカップ220が板部材WP1を保持してもよい。
【0038】
そして、バキュームカップ220が板部材WP1を保持するとともに、クランプ310が第1のベルト110を把持する。この段階で、第2のベルト210は、第1のベルト110と同期して回転できる状態になっている。なお、アクチュエーター320のピストン321は、初期の位置に配置されている。
【0039】
4−2.第1搬送系および第2搬送系の搬送
図5に示すように、モーター150が第1のベルト110を回転させる。それに伴って、第1のベルト110に同期して、第2のベルト210が回転する。そして、バキュームカップ220が保持する板部材WP1が第1の方向J1の向きに搬送される。クランプ310は第2のベルト210に固定されているため、クランプ310もそれに伴って移動する。
【0040】
4−3.板部材の保持の解除
図6に示すように、バキュームカップ220が板部材WP1を移動終了位置まで搬送する。そして、バキュームカップ220によるエアの吸引を開放する。これにより、バキュームカップ220による板部材WP1の保持が解除される。そして、板部材WP1は、プレス機900に送られる。
【0041】
次に、バキュームカップ220は板部材WP1から遠ざかるように縮む。また、この段階で、クランプ310は、第1のベルト110の把持を解除する。第2のベルト210は、第1のベルト110と同期して回転しない状態にある。
【0042】
4−4.開始位置への復帰
図7に示すように、アクチュエーター320のピストン321が伸び始める。そして、ピストン321がクランプ310を押す。クランプ310は、前述のように第2のベルト210に固定されている。そのため、ピストン321の動きに伴って、第2のベルト210は逆回転する。そして、バキュームカップ220が板部材WP1の搬送の開始位置に戻ったところで、ピストン321は、停止する。これにより、バキュームカップ220が板部材WP1の搬送の開始位置で停止する。その後、アクチュエーター320は、ピストン321を元の位置に戻す。なお、この工程においては、第2のベルト210は逆回転するが、第1のベルト110は停止状態のままである。
【0043】
5.本実施形態の効果
本実施形態の板部材搬送装置1000は、板部材WP1を搬送するための第1搬送系100と第2搬送系200とを容易に同期させることができる。制御ソフトにより、板部材搬送装置1000をロット毎に調整する必要がない。
【0044】
板部材搬送装置1000は、バキュームカップを上から吊るす装置を必要としない。そのため、板部材搬送装置1000は、従来の装置よりも小型化されている。また、部品点数も削減されるため、製造コストも減少する。
【0045】
また、本実施形態の板部材搬送装置1000は、板部材WP1の鉛直下方側から板部材WP1を支持する。そのため、長方形以外の複雑な平面形状の部品を搬送することもできる。また、磁石を用いていないため、アルミニウム等を搬送することもできる。また、本実施形態の板部材搬送装置1000のエアの消費量は、従来のバキュームカップを上方から吊り下げる装置に比べて少ない。つまり、板部材搬送装置1000は、省エネルギー効果を有する。
【0046】
6.変形例
6−1.第1のベルト
本実施形態では、第1のベルト110は、板部材WP1を移動させている第1の期間以外の期間には、減速しているか停止している。しかし、第1のベルト110は、第1の期間以外の期間に正回転してもよい。場合によっては、逆回転してもよい。
【0047】
6−2.第1のベルトの列の数
本実施形態では、第1のベルト110は、1列である。しかし、板部材搬送装置1000は、第2のベルト210に挟まれた複数列の第1のベルト110を有していてもよい。
【0048】
6−3.クランプの位置
クランプ310は、第1のベルト110に固定されていてもよい。その場合には、クランプ310は、第2のベルト210を把持すればよい。これにより、第1のベルト110と第2のベルト210とが同期して回転する。このように、連結部であるクランプ310は、第1のベルト110に固定されていてもよいし、第2のベルト210に固定されていてもよい。
【0049】
6−4.アクチュエーター
本実施形態では、アクチュエーター320のピストン321は、クランプ310を押すことにより、第2のベルト210を逆回転させる。しかし、第2のベルト210にその他の部材を設け、ピストン321はその部材を押すこととしてもよい。第2のベルト210を逆回転させることにより、バキュームカップ220の位置を戻すことが出来ればその他の機構であって構わない。その場合には、クランプ310の位置に合わせてアクチュエーター320を配置する必要がない。つまり、設計の自由度が向上する。
【0050】
6−5.固定部材
アクチュエーター320のピストン321が押す第2のベルト210の固定部材は、クランプ310である。板部材搬送装置1000は、クランプ310以外の固定部材を有していてもよい。この場合には、アクチュエーター320のピストン321は、クランプ310以外の固定部材を押せばよい。
【0051】
6−6.第2搬送系
一対の第2搬送系200は、第1搬送系100を間に挟んで配置されている。第2搬送系200は、対になっていなくともよい。第2搬送系200は、第1搬送系100の片側にのみ配置されていてもよい。バキュームカップ220の吸着力が大きければ、実現可能である。ただし、一対の第2搬送系200を用いると、板部材WP1の搬送の安定性および確実性は向上する。
【0052】
6−7.プーリー
クランプ310の代わりに、プーリーとワンウェイクラッチとを用いて、第2のベルト210と第1のベルト110とを連結してもよい。
【0053】
6−8.加工装置
板部材搬送装置1000は、板部材WP1をプレス機900に向かって搬送する。しかし、プレス機900以外の加工装置に向かって板部材WP1を搬送してもよい。また、板部材搬送装置1000は、プレス機900等により加工済みの部材を搬送することとしてもよい。
【0054】
6−9.組み合わせ
また、上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0055】
7.本実施形態のまとめ
本実施形態の板部材搬送装置1000は、第1搬送系100と第2搬送系200とを有する。第2のベルト210は、板部材WP1を保持するバキュームカップ220を有する。第2のベルト210のクランプ310が、第1のベルト110を把持することができる。そのため、クランプ310が第1のベルト110を把持している第1の期間内に、第2のベルト210は、バキュームカップ220により板部材WP1を移動させることができる。この移動の際に、第2のベルト210は、第1のベルト110に同期して回転する。
【0056】
A.付記
第1の態様における板部材搬送装置は、板部材を搬送するためのものである。板部材搬送装置は、第1の搬送部材を有する第1搬送系と、第2の搬送部材を有する第2搬送系と、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結するための連結部と、を有する。第2搬送系は、板部材を保持する板部材保持部を有する。連結部は、板部材保持部が板部材を保持している第1の期間内に、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結する。
そして、第1の搬送部材と板部材との間の距離が、第1の期間内に、0.1mm以上10mm以下である。
【0057】
第2の態様における板部材搬送装置
は、板部材を搬送するためのものである。板部材搬送装置は、第1の搬送部材を有する第1搬送系と、第2の搬送部材を有する第2搬送系と、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結するための連結部と、を有する。第2搬送系は、板部材を保持する板部材保持部を有する。連結部は、板部材保持部が板部材を保持している第1の期間内に、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結し、第1の期間ではない第2の期間内に、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結しない。
【0058】
第3の態様における板部材搬送装置においては、連結部は、第1の期間ではない第2の期間内に、第1の搬送部材と第2の搬送部材とを連結しない。
【0059】
第4の態様における板部材搬送装置は、板部材保持部の位置を移動させる板部材保持部移動部を有する。板部材保持部移動部は、第2の期間内に、板部材保持部が板部材の保持を開始する開始位置に板部材保持部を戻す。
【0060】
第5の態様における板部材搬送装置においては、第2の搬送部材は、第2の搬送部材に固定された固定部材を有する。板部材保持部移動部は、第2の期間内に、固定部材を押すことにより第2の搬送部材の板部材保持部の位置を戻す。
【0061】
第6の態様における板部材搬送装置においては、固定部材は、連結部である。
【0062】
第7の態様における板部材搬送装置は、一対の第2搬送系を有する。一対の第2搬送系は、第1搬送系を間に挟んだ状態で配置されている。
【0063】
第8の態様における板部材搬送装置においては、連結部は、クランプである。
【解決手段】 板部材搬送装置1000は、板部材WP1を搬送するためのものである。板部材搬送装置1000は、第1のベルト110を有する第1搬送系100と、第2のベルト210を有する第2搬送系200と、第1のベルト110と第2のベルト210とを連結するためのクランプ310と、を有する。第2搬送系200は、板部材WP1を保持するバキュームカップ220を有する。クランプ310は、バキュームカップ220が板部材WP1を保持している第1の期間内に、第1のベルト110と第2のベルト210とを連結する。