特許第6420557号(P6420557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420557
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】環境に優しい車両のモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/00 20160101AFI20181029BHJP
   H02P 21/05 20060101ALI20181029BHJP
   H02P 21/18 20160101ALI20181029BHJP
   H02P 21/24 20160101ALI20181029BHJP
   H02P 25/022 20160101ALI20181029BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20181029BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   H02P21/00
   H02P21/05
   H02P21/18
   H02P21/24
   H02P25/022
   H02P27/08
   B60L9/18 J
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-64186(P2014-64186)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-77066(P2015-77066A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0120743
(32)【優先日】2013年10月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー 太 一
(72)【発明者】
【氏名】朴 韓 姫
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106069(JP,A)
【文献】 特開平11−299277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0171455(US,A1)
【文献】 米国特許第08018193(US,B1)
【文献】 国際公開第2012/133220(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0251096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00−6/34,21/00−25/03,25/04,
25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境に優しい車両でモータを制御するインバータを含むモータ制御システムであって、
前記インバータは、外部システムからトルク指令(Te*)を受信して前記トルク指令(Te*)に符合するトルク(Te)が前記モータから出力されるように前記モータを制御し、
前記インバータは、
前記インバータに受信された前記トルク指令(Te*)および前記モータの運転条件に基づいて特定の電流指令を生成する電流指令生成器と、
前記電流指令生成器から出力される電流指令、および前記モータの運転条件に基づいて前記モータに印加するための電圧指令を生成する電圧指令生成器と、
前記電圧指令生成器から出力される電圧指令、および前記モータの運転条件に基づいてPWM(pulse width modulation)指令を生成するPWM指令生成器と、
前記PWM指令生成器から出力されるPWM指令を前記モータの運転条件に基づいてPWM形態の電圧に変換して前記モータに印加するPWM電圧生成器と、
前記トルク指令(Te*)で前記モータの非線形的特性により発生する所望しないモータのトルク出力(Te_unwanted)を加減するためのトルク指令最適化器(torque command optimizer)と、を含み、
前記トルク指令最適化器は、
不要トルク出力として前記所望しないモータのトルク出力(Te_unwanted)を抽出するための不要トルク抽出器と、
前記トルク指令(Te*)に前記不要トルク出力(Te_unwanted)を加減して修正されたトルク指令(Te*_mod)を出力する加減器と、
前記モータの回転子の位置を予測して前記不要トルク抽出器に提供するモータ位置予測器と、
前記不要トルク抽出器から出力される不要トルク出力を設定値に減衰するためのトルク減殺器と、を含み、
前記トルク減殺器は、不要トルク出力(Te_unwanted)を、下記公式[数13]に基づき、時間当りモータ回転子の位相変化が速いほど、不要トルク抽出器の出力(Te*_unwanted)を減衰させることを特徴とする環境に優しい車両のモータ制御システム。
(a、b:車両の特性に応じて減衰程度を調節することができる減衰ゲイン(Attenuation gain))
【数13】
【請求項2】
前記トルク指令(Te*)に符合するトルク(Te)を得るために、前記電流指令生成器で電流指令(Idsr*、Iqsr*)を選定し、これに符合する電流(Idsr、Iqsr)が前記モータに流れるように前記電圧指令生成器で電圧指令(Vdsr*、Vqsr*)を選定し、
前記トルク(Te)、前記電流(Idsr、Iqsr)、および前記電圧指令(Vdsr*、Vqsr*)に符合する電圧(Vdsr、Vqsr)は、下記公式[数1]乃至[数3]を満足することを特徴とする請求項1に記載の環境に優しい車両のモータ制御システム。
(dFlux:d−axis of flux linkage:d軸磁束鎖交数、qFlux:q−axis of flux linkage:q軸磁束鎖交数、Idsr:d−axis stator Reference current:d軸電流、Iqsr:q−axis stator Reference current:q軸電流、Vdsr:d−axis stator Reference voltage:d軸電圧,Vqsr:q−axis stator Reference voltage:q軸電圧,Rs:モータの固定子のコイル抵抗、Wr:モータの回転子の電気角速度)
【数1】
【数2】
【数3】
【請求項3】
前記モータに印加される電圧(Vqsr、Vdsr)は、下記公式[数4]乃至[数7]のうちの少なくとも一つで表されることを特徴とする請求項に記載の環境に優しい車両のモータ制御システム。
(θr:モータの回転子の位置、(N)s:N次sin関数の総和、(N)c:N次cos関数の総和、dFlux:[数5]の{ }内部分、qFlux:[数7]の{ }内部分
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【請求項4】
トルク出力(Te)および不要トルク出力(Te_unwanted)は、それぞれ、多項式で表されるdFlux_([数5]の{ }内部分)とqFlux_([数7]の{ }内部分)に基づいて、下記公式[数8]又は[数9]のような多項式トルク出力(Te_)および不要トルク出力((Te_unwanted)で表されることを特徴とする請求項に記載の環境に優しい車両のモータ制御システム。
【数8】
【数9】
【請求項5】
前記トルク指令最適化器は、下記公式[数10]を通じて、前記モータの回転子位置(θr)を前記PWM電圧生成器のトルク出力時点である、修正された回転子位置(θr_mod)で計算することを特徴とする請求項に記載の環境に優しい車両のモータ制御システム。
(t0:モータの回転子位置の測定時間、t1:PWM電圧生成器のPWM出力時間)
【数10】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しい車両のモータ制御システムに関し、より詳しくは、モータの非線形性モデルを用いてモータの振動特性を改善することができる環境に優しい車両のモータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、環境に優しい車両は、燃料電池自動車、電気自動車、プラグイン電気自動車、ハイブリッド自動車を包括するもので、通常、駆動力の発生のためのモータ(駆動モータ)を備える。
このような環境に優しい車両の一例であるハイブリッド自動車(hybrid vehicle)は、内燃機関エンジン(internal combustion engine)とバッテリー電源とを共に使用する。つまり、ハイブリッド自動車は、内燃機関エンジンの動力とモータの動力とを効率的に組み合わせて使用する。
【0003】
前記ハイブリッド自動車は、図9に示したように、典型的に、エンジン10と、モータ20と、エンジン10とモータ20との間で動力を断続するエンジンクラッチ30と、変速機40と、差動ギア装置50と、バッテリー60と、前記エンジン10を始動すると共に前記エンジン10の出力により発電する始動発電機70と、車輪80と、を含むことができる。
【0004】
また、前記ハイブリッド自動車は、ハイブリッド自動車の全体動作を制御するハイブリッド制御器(HCU:hybrid control unit)200と、エンジン10の動作を制御するエンジン制御器(ECU:engine control unit)110と、モータ20の動作を制御するモータ制御器(MCU:motor control unit)120と、変速機40の動作を制御する変速制御器(TCU:transmission control unit)140と、バッテリー60を制御し管理するバッテリー制御器(BCU:battery control unit)160と、を含むことができる。
【0005】
前記バッテリー制御器160は、バッテリー管理システム(BMS:battery management system)とも呼ばれる。前記始動発電機70は、ISG(integrated starter and generator)またはHSG(hybrid starter and generator)とも呼ばれる 。
【0006】
このようなハイブリッド自動車は、モータ20の動力のみを用いる純粋な電気自動車モードであるEVモード(electric vehicle mode)、エンジン10の回転力を主動力としながらモータ20の回転力を補助動力として用いるHEVモード(hybrid electric vehicle mode)、および自動車の制動あるいは慣性による走行時、制動および慣性エネルギーを前記モータ20の発電を通じて回収してバッテリー60に充電する回生制動モード(regenerative braking mode)(RBモード)などの走行モードで運行することができる。
【0007】
このようなハイブリッド自動車を含む環境に優しい車両は、通常、図1に示したようなインバータ300を通じてモータ(M)を駆動制御する(例えば特許文献1を参照)。
図1に示すように、電気角速度(Electrical angular velocity)(Wr)で回転しているモータ(M)を制御するインバータ300は、外部システムからトルク指令(Te*)を受信し、トルク指令(Te*)に符合するトルク出力(Te)を得るために一連の過程を行う。
【0008】
インバータ300に受信されたトルク指令は、電流指令生成器(Current Command Generator)311に伝達されてモータ(M)の運転条件により特定の電流指令(Current Command)を生成する。
電流指令生成器311で生成された電流指令は、電圧指令生成器(Voltage Command Generator)312に伝達される。電圧指令生成器312に伝達された前記電流指令は、モータ(M)の運転条件によりモータ(M)に印加するための電圧指令に変換される。
【0009】
電圧指令生成器312から出力された電圧指令は、PWM指令生成器(PWM Command Generator)313に伝達される。PWM指令生成器313に伝達された前記電圧指令は、モータ(M)の運転条件によりPWM指令に変換される。PWM指令生成器313から出力されるPWM指令は、PWM電圧生成器(PWM Voltage Generator)314に伝達される。
【0010】
PWM電圧生成器314に伝達されたPWM指令は、モータ(M)の運転条件によりPWM形式の電圧に変換され、変換されたPWM電圧は、モータ(M)に印加されてモータ(M)を駆動させる(例えば特許文献2を参照)。
【0011】
一方、環境に優しい車両のモータ制御システムにおいて、同期座標系で動作する電流指令制御器(Current Command Controller)(図示せず)は、前記要求トルク(Te*)に符合する電流指令としてIdsr*(d−axis stator Reference current)とIqsr*(q−axis stator Reference current)と、を選定する。
【0012】
前記選定された電流指令Idsr*とIqsr*は、要求トルク(Te*)を出力することができる電流指令の組み合わせである。
前記同期座標系電流指令制御器は、モータ(M)の運転条件により選定された電流指令Idsr*とIqsr*に符合する電流IdsrとIqsrがモータ(M)に流れるように一連の過程を経てモータ(M)から要求トルク(Te*)に符合するトルク(Te)が出力されるようにする。
【0013】
しかし、モータ(M)にIdsr*とIqsr*に符合するIdsrとIqsrが流れる場合にも、モータ(M)とインバータ300に内在された特性に応じて要求トルク(Te*)とは様相が異なるトルク(Te)が発生することがある。
特に、モータ(M)の回転子が回転することに伴ってその特性が繰り返される場合、トルク出力は振動するようになり、モータとインバータから構成されたモータシステムが車両の主要駆動力を発生させる環境に優しい車両の場合、車両の振動を誘発させることがある。
【0014】
したがって、環境に優しい車両でモータの出力を制御するインバータは、モータとインバータの特性によるトルク出力が変わらない制御技法を用いて、モータとインバータの状態およびその変化によるトルク出力が一定になるようにしなければならない。
【0015】
この背景技術の部分に記載された事項は、発明の背景に対する理解を増進させるために作成されたもので、当該技術が属する分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来の技術でない事項を含むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−187794号公報
【特許文献2】特開2009−225633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
かかる課題を解決するための本発明が解決しようとする課題は、モータの非線形性モデルを用いてモータの振動特性を改善することができる環境に優しい車両のモータ制御システムを提供することにある。
【0018】
また本発明が解決しようとする課題は、環境に優しい車両でモータの出力を制御するインバータが、モータとインバータの特性によるトルク出力が変わらない制御技法を用いることによって、モータとインバータの状態およびその変化によるトルク出力を一定にすることができる環境に優しい車両のモータ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムは、環境に優しい車両でモータを制御するインバータを含むモータ制御システムであって、前記インバータは、外部システムからトルク指令(Te*)を受信して前記トルク指令(Te*)に符合するトルク(Te)が前記モータから出力されるように前記モータを制御し、前記インバータは、前記インバータに受信された前記トルク指令(Te*)および前記モータの運転条件に基づいて特定の電流指令を生成する電流指令生成器と、前記電流指令生成器から出力される電流指令および前記モータの運転条件に基づいて前記モータに印加するための電圧指令を生成する電圧指令生成器と、前記電圧指令生成器から出力される電圧指令および前記モータの運転条件に基づいてPWM(pulse width modulation)指令を生成するPWM指令生成器と、前記PWM指令生成器から出力されるPWM指令を前記モータの運転条件に基づいてPWM形態の電圧に変換して前記モータに印加するPWM電圧生成器と、前記トルク指令(Te*)で前記モータの非線形的特性により発生する所望しないモータのトルク出力(Te_unwanted)を加減するためのトルク指令最適化器(torque command optimizer)と、を含むことができる。
【0020】
前記トルク指令最適化器は、不要トルク出力として前記所望しないモータのトルク出力(Te_unwanted)を抽出するための不要トルク抽出器と、前記トルク指令(Te*)に前記不要トルク出力(Te_unwanted)を加減して修正されたトルク指令(Te*_mod)を出力する加減器と、を含むことができる。
【0021】
前記トルク指令最適化器は、前記モータの回転子の位置を予測して前記不要トルク抽出器に提供するモータ位置予測器と、前記不要トルク抽出器から出力される不要トルク出力を設定値に減衰するためのトルク減殺器と、をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
前述のように、本発明の実施形態によれば、環境に優しい車両でモータの出力を制御するインバータが、モータとインバータの特性によるトルク出力が変わらない制御技法を用いることによって、モータとインバータとの状態およびその変化によるトルク出力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一般的な環境に優しい車両のモータ制御システムを示したブロック構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムを示したブロック構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムのトルク指令最適化器を示した構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムにより制御されるモータ回転子の位置を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムのトルク指令最適化器の他の実施形態の構成図である。
図6】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムの作用を説明するためのグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムの作用を説明するためのグラフである。
図8】本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムの作用を説明するためのグラフである。
図9】環境に優しい車両の一つであるハイブリッド自動車を概略的に示したブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明を詳しく説明する。しかし、本発明は、ここで説明する実施形態に限定されず、他の実施形態に具体化することもできる。
また、明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を含むという時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。なお、同一の参照番号で表示した部分は同一の構成要素を意味する。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムを示したブロック構成図である。
本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムは、モータの非線形モデルを用いてモータを最適に制御するシステムである。
【0026】
このような本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムは、環境に優しい車両でモータ(M)を制御するインバータ400を含むモータ制御システムであって、前記インバータ400は、外部システムからトルク指令(Te*)を受信して前記トルク指令(Te*)に符合するトルク(Te)が前記モータ(M)から出力されるように前記モータ(M)を制御することができる。
【0027】
このようなインバータ400は、前記インバータ400に受信される前記トルク指令(Te*)および前記モータ(M)の運転条件に基づいて特定の電流指令を生成する電流指令生成器411と、前記電流指令生成器411から出力される電流指令および前記モータの運転条件に基づいて前記モータに印加するための電圧指令を生成する電圧指令生成器412と、前記電圧指令生成器412から出力される電圧指令および前記モータ(M)の運転条件に基づいてPWM指令を生成するPWM指令生成器413と、前記PWM指令生成器413から出力されるPWM指令を前記モータ(M)の運転条件に基づいてPWM形態の電圧に変換して前記モータ(M)に印加するPWM電圧生成器414と、前記トルク指令(Te*)で前記モータ(M)の非線形的特性により発生する所望しないモータ(M)のトルク出力(Te_unwanted)を加減するためのトルク指令最適化器410と、を含むことができる。
【0028】
前記インバータ400は、設定されたプログラムにより動作する一つ以上のマイクロプロセッサーおよび電気/電子素子から構成されるハードウェアであって、前記設定されたプログラムは、後述する本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムの動作プロセスを行うための一連の命令で形成され得る。
【0029】
前記トルク指令最適化器410、電流指令生成器411、電圧指令生成器412、PWM指令生成器413、およびPWM電圧生成器414は、設定されたプログラムにより動作するソフトウェアモジュールから構成されたり、電気/電子素子から構成されるハードウェアモジュールから構成されたり、または前記ソフトウェアモジュールとハードウェアモジュールが組み合わせられた組み合わせモジュールから構成され得る。
【0030】
また、前記電流指令生成器411、電圧指令生成器412、PWM指令生成器413、およびPWM電圧生成器414は、図1に示した電流指令生成器311、電圧指令生成器312、PWM指令生成器313、およびPWM電圧生成器314にすることができる。
前記トルク指令最適化器410は、図3に図示したように、不要トルク出力として前記所望しないモータ(M)のトルク出力(Te_unwanted)を抽出するための不要トルク抽出器403と、前記トルク指令(Te*)に前記不要トルク出力(Te_unwanted)を加減して修正されたトルク指令(Te*_mod)を出力する加減器407とを含むことができる。
【0031】
また、前記トルク指令最適化器410は、図5に図示したように、前記モータ(M)の回転子位置を予測して前記不要トルク抽出器403に提供するモータ位置予測器401と、前記不要トルク抽出器403から出力される不要トルク出力(Te*_unwanted)を設定値に減衰するためのトルク減殺器405と、をさらに含むことができる。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る環境に優しい車両のモータ制御システムの作用を、図面を参照して詳しく説明する。
図2に示すように、モータ(M)を制御するインバータ400は、要求トルク(Te*)に符合するトルク出力(Te)を得るために、電流指令生成器411で電流指令Idsr*、Iqsr*を選定し、これに符合する電流Idsr、Iqsrがモータ(M)に流れるように電圧指令生成器412で電圧指令Vdsr*、Vqsr*を選定する。
【0033】
前記選定された電圧指令Vdsr*、Vqsr*に符合する電圧Vdsr、Vqsrがモータ(M)に印加されると、モータ(M)にはIdsr、Iqsrが流れるようになり、モータ(M)の出力はTe*に符合するTeが出力される。
この時、TeとIdsr、Iqsr、Vdsr、Vqsrとの正常状態の関係式は次のとおりである。
【0034】
[公式1]
【数1】
【0035】
[公式2]
【数2】
【0036】
[公式3]
【数3】
【0037】
公式1[数1]は、同期モータの等価モデルを用いてd軸磁束鎖交数dFlux(d−axis of flux linkage)と、モータ(M)に印加されたq軸電圧Vqsr(q−axis stator Reference voltage)と、モータ(M)に流れるq軸電流Iqsr(q−axis stator Reference voltage)との関係を示す。公式1中、Rsはモータの固定子のコイル抵抗であり、Wrはモータの回転子の電気角速度である。
【0038】
公式2[数2]は、同期モータの等価モデルを用いてq軸磁束鎖交数qFlux(q−axis of flux linkage)と、モータに印加されたd軸電圧Vdsr(d−axis stator Reference voltage)と、モータ(M)に流れるd軸電流Idsr(d−axis stator Reference current)との関係を示す。公式2中、Rsはモータ(M)の固定子のコイル抵抗であり、Wrはモータ(M)の回転子の電気角速度である。
【0039】
公式3[数3]は、モータ(M)内に形成された2軸電流Idsr、Iqsrと、2軸磁束dFlux、qFluxとの関係によりトルク出力(Te)の関係を表す。
モータ(M)を制御するインバータ400は、モータ(M)にIdsr、Iqsr、dFlux、qFluxを形成させて要求トルク(Te*)に符合するTeを出力することができる。しかし、モータ固定子と回転子の構造的な形状、電気的な特性、インバータの制御技法の多様性によりモータ−インバータシステムに非線形的特性が発生することがある。
【0040】
このような場合、前記Idsr、Iqsr、dFlux、qFluxの関係は、一般的な公式1、2の関係と異なる様相を有することができる。
2軸電流IdsrとIqsrを流れるようにするための2軸電圧Vdsr、Vqsrは、一般的な公式1、2のように1次項以外に、n次高調波項を含む多項式の関係で表すことができる。
【0041】
モータ(M)に印加された電圧Vqsrは、公式4[数4]のようにn次多項式の関係で表すことができる。
[公式4]
【数4】

公式4中、θrはモータ(M)の回転子位置である。
【0042】
モータ(M)内に一定のIqsrが流れる時、モータ(M)の電気角速度(Wr)とモータ(M)の固定子のコイル抵抗(Rs)が一定で、電流制御に影響を与えないと仮定すれば、公式4は公式5[数5]のように表すことができる。
[公式5]
【数5】
【0043】
モータに印加された電圧Vdsrは、公式6[数6]のようにn次多項式の関係で表すことができる。
[公式6]
【数6】

ここで、θrはモータの回転子位置である。
【0044】
モータ(M)内に一定のIqsrが流れる時、モータ(M)の電気角速度(Wr)とモータ(M)の固定子のコイル抵抗(Rs)とが一定で、電流制御に影響を与えないと仮定すると、公式6は公式7[数7]のように表すことができる。
[公式7]
【数7】
【0045】
公式5と公式7のように、多項式で表されたdFlux_とqFlux_を公式3のように電流との積で表されたトルク方程式は次のとおりである。
[公式8]
【数8】
【0046】
[公式9]
【数9】
【0047】
公式8[数8]は、要求トルク(Te*)に符合する同期座標系電流指令Idsr*、Iqsr*に符合する電流Idsr、及びIqsrをモータ(M)に形成させても、モータ−インバータシステムに非線形的特性が存在する場合、要求トルク(Te*)に符合するトルク(Te)以外に所望しない不要トルク(Te_unwanted)が発生することを意味する。
したがって、このような非線形的特性が存在するモータシステムでは、非線形的特性を考慮して、電流指令生成器411に入力されるトルク指令で不要トルク(Te_unwanted)だけの加減が行われなければならない。
【0048】
図3は、モータ−インバータシステムに要求されたトルク指令(Te*)に不要トルク(Te_unwanted)の加減が行われるトルク指令最適化器410に対する詳細ブロック図である。
【0049】
モータ−インバータシステムに要求されたトルク指令(Te*)を出力するに当たり、不要トルク(Te_unwanted)だけのトルク指令の修正が必要な場合、トルク指令最適化器410の不要トルク抽出器403と加減器407とによって、要求トルク(Te*)は不要トルク(Te_unwanted)だけ加減が行われ、これによって電流指令生成器411に入力されるトルク指令は不要トルク(Te_unwanted)だけ修正される。
【0050】
不要トルク最適化器410の不要トルク抽出器403は、図3に示すように、2つの入力変数(Te*、θr)を受けて不要トルク(Te_unwanted)を出力する構造からなる。
入力変数の一つは、モーターインバターシステムに要求されるトルク指令(Te*)であり、他の入力変数は、モータ(M)の回転子位置(θr)である。
【0051】
不要トルク抽出器403には、モータの回転子位置(θr)に応じてトルク指令(Te*)の修正が必要な程度である不要トルク(Te_unwanted)が記録されている。
トルク指令最適化器410の不要トルク抽出器403は、一般に多く使用されるルックアップ(Look−up)テーブルを含むことができ、また、ルックアップテーブル以外に多項式の形態で表され得るものなどを含むこともできる。
【0052】
不要トルク抽出器403から出力された不要トルク(Te_unwanted)は、加減器407を通じてモータ−インバータシステムに要求されたトルク指令(Te*)に加減して修正されたトルク指令(Te*_mod)を生成することに利用される。
不要トルク抽出器403で修正されたトルク(Te*_mod)は、電流指令生成器411に入力されて、要求トルク(Te*)に符合するトルク(Te)を出力することができるようにする制御変数として用いられるようになる。
【0053】
一方、図4に図示すように、モータ(M)が一定の速度以上で回転する場合、モータ(M)の回転子位置(θr)の測定時間と、PWM電圧生成器414のPWM出力時間と、の間に時間差が発生することがある。これは実際のPWM出力時間に必要なトルク修正値と、実際修正されたトルク値と、の間に差が発生することがあるためである。
【0054】
図4でt0に測定された回転子位置はθrである。この時、トルク指令最適化器410から出力された値はT_Add−onである。このTe_Add−onは、インバータ400の制御過程を経て実際のトルクを作り出すPWM電圧生成器414の出力まで一連の過程を経るようになる。
【0055】
図4でt1時間にPWM電圧生成器414を通じて出力されたトルクはT_appliedであり、t1時間の回転子位置(θr´)で必要な修正トルクT_preciseとはその値が異なり得る。
したがって、このような場合、トルク指令最適化器410の不要トルク抽出器403に入力される回転子位置(θr)は、実際PWM電圧生成器414を通じてトルクが発生する時点の回転子位置(θr´)が入力されなければならず、不要トルク抽出器403の出力は、回転子位置(θr´)で必要な修正トルクT_preciseを出力しなければならない。
【0056】
下記公式10[数10]は、不要トルク抽出器403に入力される回転子位置(θr)を通じてPWM電圧生成器414のトルク出力時点である修正された回転子位置(θr_mod)を計算する過程を表す。
[公式10]
【数10】
【0057】
前記修正された回転子位置(θr_mod)は、要求トルク(Te*)と共に不要トルク抽出器403に入力されて、不要トルク(Te*_unwanted)を抽出することに用いられる。
前記モータ(M)の回転子位置予測は、図5に示された一般的なモータ位置予測器401で行われ、不要トルク抽出器403から出力される不要トルクは、トルク減殺器405で設定値だけ減衰され得る。
【0058】
本発明の実施形態に係るシステムにより制御されるモータ(M)の駆動軸に連結された機械システム(図示せず)は、多様な伝達経路を通じて最終出力端に力が伝達される構造を有することができる。このような機械システムの構成品は質量を有する存在であり、物理的な接触構造を有する場合に摩擦を起こすことができる。一般的な回転機械システムで回転角速度(W)とトルク(Te)との関係は、公式11[数11]のとおりである。
【0059】
[公式11]
【数11】
【0060】
公式11中、Jは回転体の慣性モーメントで、回転体の質量に比例する。
環境に優しい車両の駆動モータの場合、回転体の質量は、車体重量に搭乗客の重量、手荷物の重量により少しずつ変わり得るが、車両重量がその大部分を占める。
粘性摩擦係数Bは、タイヤと路面の状態やギアシステムの遊隔状態などにより変わり得るが、一般にインバータのモータ制御周期である数十〜数百msec単位での変化は微小であると言える。
【0061】
外乱トルクTLは、外部環境により変わる値であり、空気抵抗、転がり抵抗、登坂抵抗などの走行抵抗とみることができる。このうち、空気抵抗は車速の二乗に比例する値で、車速が低速である場合には無視することができ、それ以上の速度では空気抵抗係数と車両前面の投影面的、そして車速の二乗の積で求めることができる。しかし、TLもインバータの制御周期である数十〜数百msec単位での変化は微小であるとみることができる。
環境に優しい車両のモータシステムにおいて、不要トルク(Te_unwanted)によるモータ回転子の位相変化の影響は、公式12[数12]のような伝達関数の関係を有する。
【0062】
[公式12]
【数12】
【0063】
公式12によれば、これは、まるでモータ(M)の駆動軸から出力された回転力が車両動力伝達系統を通じて伝達され、フィルター(Filter)を通過することのように、周波数によりその特性が変わることを意味する。このような周波数に応じた不要トルクによるモータ回転子の位相変化は、図6に示したようなボード線図(Bode Plot)で確認することができる。
【0064】
図6は、同一の不要トルクが発生する場合、モータ回転子の位相変化が速いほど、その影響性は減少し、モータ回転子の位相変化に及ぼす位相(phase)特性も変わる。
したがって、同一の不要トルク抽出器403の同一の出力であるとしても、モータ回転子の位相変化の大きさによりその加減の必要性が変わるようになる。このような特性は、図5に示したトルク減殺器405で考慮することができ、これと関連した公式は下記公式13[数13]のとおりである。
【0065】
[公式13]
【数13】
【0066】
つまり、図5で不要トルク抽出器403の出力(Te*_unwanted)は、時間当りモータ回転子の位相変化と共にトルク指令最適化器410のトルク減殺器(Attenuator)405に入力される。
トルク減殺器405は、時間当りモータ回転子の位相変化が速いほど、不要トルク抽出器403の出力(Te*_unwanted)を減衰させる役割を果たす。
【0067】
公式13中、トルク減殺器405のaとbは、環境に優しい車両の特性に応じて減衰程度を調節することができる減衰ゲイン(Attenuation gain)である。前記減衰ゲインは一般には定数を設定するが、テーブルを用いて減衰率(Attenuation ratio)を多様に構築することもできる。
【0068】
図7(A)は、一般的なモータ制御技法を用いた時、モータ−インバータシステムに要求される要求トルク711を示したものである。モーターインバターシステムに要求されるトルクは、電流指令生成器411に入力され、電流指令生成器411は、図7(B)に示したような2軸電流指令721、722を生成する。
【0069】
図8(A)は、トルク指令最適化器410を通じて不要トルク(Te_unwanted)だけの加減が行われた後、トルク指令が修正されたトルク指令(Te*_mod)に変更されたものを示す。修正されたトルク指令(Te*_mod)は、図8(A)の参照番号811で示した。
【0070】
修正されたトルク指令811が電流指令生成器411に入力されると、電流指令生成器411は、図8(B)に示したような2軸電流指令821、822を生成することができる。
したがって、本発明の実施形態によれば、モータの非線形性モデルを用いてモータの振動特性を効果的に改善することができる。
【0071】
以上で、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0072】
400 インバータ
403 不要トルク抽出器
405 トルク減殺器
410 トルク指令最適化器
411 電流指令生成器
412 電圧指令生成器
413 PWM指令生成器
414 PWM電圧生成器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9