特許第6420587号(P6420587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420587
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】体脂肪減少促進剤、及びこれを含む食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/47 20060101AFI20181029BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20181029BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20181029BHJP
【FI】
   A61K36/47
   A61P3/04
   A23L33/105
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-159607(P2014-159607)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37449(P2016-37449A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】樫村 修生
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 祐二
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101999652(CN,A)
【文献】 特開2007−055951(JP,A)
【文献】 学苑,2008年12月 1日,818,19-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/47
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動時体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進のための体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進剤であって、
サチャインチオイルを有効成分とし、
前記運動の強度がメッツ〜8メッツである体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進剤を含有することを特徴とする運動時体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進用食品であって、
前記運動の強度が6メッツ〜8メッツである運動時体脂肪(但し、血中脂質を除く)減少促進用食品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体脂肪減少促進剤、及びこれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境及び食生活の変化、並びに運動不足により、日本でも肥満に伴う糖尿病、高血圧、動脈硬化症などの生活習慣病患者が増加し、社会的にも問題となっている。これまでにも、メタボリックシンドロームの状態に対して、運動と併用することによって、メタボリックシンドロームの状態の十分な改善又は予防が比較的短期間に得られるタウリンを有効成分として含有する内臓脂肪蓄積改善剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、体重増加抑制作用、内臓脂肪蓄積抑制作用、肝臓脂質蓄積抑制作用を有し、肥満予防又は改善に有用なアルギン酸カリウムを有効成分とする肥満予防・改善剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの提案では、未だユーザーは満足していないのが現状であり、もっと手軽で効果の高い体脂肪減少促進剤の更なる改良、開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−190243号公報
【特許文献2】特開2011−21012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、手軽で効果的に体脂肪を減少させることができる体脂肪減少促進剤、及びこれを含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、サチャインチオイルを摂取することにより、運動により手軽で効果的に体脂肪を減少させることができるという知見を得た。また、肥満になると脂質代謝に関連するβ−酸化代謝経路に異常が発生し、β−酸化系脂質代謝酵素活性が低下し、これに伴い、前記β−酸化系脂質代謝酵素の1種である3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性も低下することが知られている。したがって、前記3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素を活性化させることにより、脂質代謝を促し、体脂肪の減少を促進することもできると考えられる。
【0006】
前記脂質代謝は、下記反応式1〜6に示す反応により行われる。ただし、下記反応式1〜6中、Rは、飽和炭化水素基を表す。
下記反応式1に示すように、細胞質内に存在する脂肪酸は、アデノシン三リン酸(以下、「ATP」ともいう。)と反応して、カルボン酸に由来する構造単位に、アデノシン一リン酸(以下、「AMP」ともいう。)が修飾した脂肪酸アシルアデニル酸が生成される。次いで、前記脂肪酸アシルアデニル酸のカルボン酸に由来する構造単位に補酵素A(以下、「CoA」ともいう。)が求核攻撃することにより、AMPに由来する構造単位がCoAに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルCoAが生成される。前記脂肪酸アシルCoAは、ミトコンドリア内において、β−酸化を受けて、アセチルCoAを産生し、クエン酸回路を通じてATPを供給する。しかし、前記脂肪酸アシルCoAは、単独ではミトコンドリア内膜を通過することができない。そのため、前記脂肪酸アシルCoAは、カルニチンアシルトランスフェラーゼIにより、CoAに由来する構造単位がカルニチンに由来する構造単位に置換されて脂肪酸アシルカルニチンが生成され、前記脂肪酸アシルカルニチンが、ミトコンドリア内膜を横切って存在するアシルカルニチントランスロカーゼによりミトコンドリア内に輸送される。
【0007】
(反応式1)
【化1】
【0008】
下記反応式2に示すように、ミトコンドリア内に輸送された前記脂肪酸アシルカルニチンは、カルニチントランスフェラーゼIIにより、カルニチンに由来する構造単位がCoAに由来する構造単位に置換されて、再び脂肪酸アシルCoAが生成される。
(反応式2)
【化2】
【0009】
下記反応式3に示すように、反応式2により生成された前記脂肪酸アシルCoAは、アシルCoAデヒドロゲナーゼにより、トランス−Δ−エノイルCoAが生成される。
(反応式3)
【化3】
【0010】
下記反応式4に示すように、前記トランス−Δ−エノイルCoAは、エノイルCoAヒドラターゼにより、L−β−ヒドロキシアシルCoAが生成される。
(反応式4)
【化4】
【0011】
下記反応式5に示すように、前記L−β−ヒドロキシアシルCoAは、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素により、β−ケトアシルCoAが生成される。
(反応式5)
【化5】
【0012】
下記反応式6に示すように、前記β−ケトアシルCoAは、β−ケトアシルCoAチオラーゼにより、アセチルCoA及びアシルCoAが生成される。
(反応式6)
【化6】
【0013】
前記アセチルCoAは、その後、クエン酸回路に入り、ATPの産生に寄与する。一方、前記アシルCoAは、すべてがアセチルCoAに変換されるまで、前記反応式3〜6の反応を繰り返す。
【0014】
以上より、前記反応式5の反応を触媒する3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性が低下すると、それよりも下流に存在する反応式6で示される反応により十分な量のアセチルCoAが生成されず、結果として、ATPの産生が阻害されてしまう。即ち、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性の低下により、脂肪酸からATPが産生されず、脂肪酸が体脂肪として蓄積されると考えられる。したがって、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素を活性化させることにより、脂肪酸からATPの産生を促し、体脂肪の減少を促進することができることを知見した。
【0015】
前記知見に基づき本発明者が鋭意検討を重ねた結果、サチャインチオイルを含有することを特徴とする体脂肪減少促進剤が、体脂肪減少の促進に優れることを知見した。
【0016】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> サチャインチオイルを有効成分とする体脂肪減少促進剤である。
<2> 運動時体脂肪減少促進のための前記<1>に記載の体脂肪減少促進剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の体脂肪減少促進剤を含有することを特徴とする食品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、手軽で効果的に体脂肪を減少させることができる体脂肪減少促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、サチャインチオイル投与群、キャノーラオイル投与群、及び水投与群の体重推移を示すグラフである。
図2図2は、サチャインチオイル投与群、キャノーラオイル投与群、及び水投与群の摂食量を示すグラフである。
図3図3は、23℃非運動暴露グループ、23℃運動暴露グループ、35℃非運動暴露グループ、及び35℃運動暴露グループの副睾丸周囲脂肪量を示すグラフである。
図4図4は、サチャインチオイル投与群、キャノーラオイル投与群、及び水投与群における23℃運動暴露グループ並びに35℃運動暴露グループにおける3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(体脂肪減少促進剤)
本発明の体脂肪減少促進剤は、サチャインチオイルを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0020】
<サチャインチオイル>
前記サチャインチオイルは、南米ペルーを原産地とするトウダイグサ科の一般名:「サチャインチ」(学名:「プルケネティア」、(Plukenetia))から抽出されるオイルであり、例えば、インカインチオイル、インカナッツオイル、インカグリーンナッツオイル、アマゾングリーンナッツオイル、グリーンナッツオイル、INCI名:「プルケネチアボルビリス種子油」などと呼ばれることもある。なお、前記INCI名は、日本化粧品工業連合会が規定する表示名称である。
【0021】
前記サチャインチとしては、例えば、プルケネティア・ボルビリス(Plukenetia volubilis L.)、プルケネティア・ワイヤバンバナ(Plukenetia huayllabambana R.W.Bussmann, C.Tellez & A.Glenn)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、プルケネティア・ボルビリス(Plukenetia volubilis L.)が好ましい。
【0022】
前記サチャインチオイルの栄養成分としては、栄養成分100g当たりの熱量、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム、コレステロール、ビタミンE、α−リノレン酸などが含まれていることが知られている。
前記熱量としては、栄養成分100g当たり、800kcal〜1,000kcalが好ましく、850kcal〜950kcalがより好ましい。
前記タンパク質の含有量としては、栄養成分100g当たり、0.01g〜0.5gが好ましく、0.05g〜0.2gがより好ましい。
前記脂質の含有量としては、栄養成分100g当たり、10g〜200gが好ましく、50g〜150gがより好ましい。
前記炭水化物の含有量としては、栄養成分100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ナトリウムの含有量としては、栄養成分100g当たり、0mg〜10mgが好ましく、0mg〜2mgがより好ましい。
前記コレステロールの含有量としては、栄養成分100g当たり、0g〜10gが好ましく、0g〜2gがより好ましい。
前記ビタミンEの含有量としては、栄養成分100g当たり、100mg〜300mgが好ましく、150mg〜250mgがより好ましい。
前記α−リノレン酸(Omega3)の含有量としては、栄養成分100g当たり、30g〜70gが好ましく、40g〜60gがより好ましい。
【0023】
前記サチャインチオイルの品質基準としては、例えば、酸価、過酸化物価、ヨウ素価などが挙げられる。
【0024】
前記酸価としては、コールドプレス等により搾油した、いわゆる生絞り油の場合は、3mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価が3mgKOH/gを超えると、サチャインチオイル中の遊離脂肪酸が多くなり、サチャインチオイルが酸化されてしまう傾向にある。なお、前記酸価の測定法としては、油脂1g中に含まれる遊離脂肪酸を水酸化カリウムで滴定して求める水酸化カリウム滴定法などが挙げられるが、例えば、酸価測定用試験紙(商品名:「油脂劣化度判定試験紙 AV−CHECK」、株式会社J−オイルミルズ製)を用いて簡便に測定することもできる。なお、酸価は、サチャインチオイル中に含まれる遊離脂肪酸の量を表す。
【0025】
前記過酸化物価としては、30meq/kg以下が好ましく、10meq/kg以下がより好ましく、5meq/kg以下が特に好ましい。前記過酸化物価が30meq/kgを超えると、食品に異臭を生じ、風味、色調等を変化させ栄養成分が分解され、味覚への影響だけでなく人体に有害な作用を及ぼすことがある。なお、前記過酸化物価の測定法としては、酸化した油脂に酸性でヨウ化カリウムを作用させ、遊離してくるヨウ素を滴定法で求めるチオ硫酸ナトリウム滴定法などが挙げられるが、例えば、過酸化物価測定用試験紙(商品名:「POV試験紙」、柴田化学株式会社製)を用いて簡便に測定することができる。なお、過酸化物価は、サチャインチオイルが空気中の酸素により酸化され、生成した過酸化脂質の量を表し、サチャインチオイルの酸化の度合いを表す。
【0026】
前記ヨウ素価は、油脂の不飽和度の指標であるが、α−リノレン酸(Omega3)の含有量が多いサチャインチオイルの場合は、不飽和脂肪酸の含有量およびその劣化度を示す指標となる。前記ヨウ素価の測定方法としては、油脂に過剰の一塩化ヨウ素を加えて反応させた後、未反応の一塩化ヨウ素(ICl)をヨウ化カリウム(KI)で分解し、生成した遊離ヨウ素(I)を0.1Nチオ硫酸ナトリウム(Na)溶液で滴定し、吸収された一塩化ヨウ素(ICl)の量に相当するヨウ素(I)の量を換算して、油脂100gに吸収されるヨウ素の重さ(g)を算出することで求めるウィイス−シクロヘキサン法などが挙げられる。
【0027】
前記ヨウ素価としては、130mgI/100mg以上が好ましく、190mgI/100mg以上がより好ましい。逆に130mgI/100mg未満の場合は、不飽和脂肪酸含量自体が少ないか、不飽和脂肪酸が酸化されている可能性があり、前述の酸価、過酸化物価さらには脂肪酸組成測定値と合わせて品質の劣化を検証する必要がある。
【0028】
本発明において抽出原料として用いるサチャインチの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、種子部などが挙げられ、この中でも、抽出効率の観点から、胚乳部がより好ましい。
【0029】
前記サチャインチオイルの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熟した実から種子を取り出し、洗浄消毒し皮をむいた後、粉砕機にて粉砕物を得る。得られた前記粉砕物を圧搾機により圧力をかけ抽出液を搾り、前記抽出液をフィルターに通し、濾過することによりサチャインチオイルを得ることができる。
【0030】
前記圧搾機による抽出液の抽出方法としては、例えば、コールドプレス法、ホットプレス法などが挙げられる。これらの中でも、熱による劣化を防止する観点から、コールドプレス法が好ましい。コールドプレス法とは、熱を加えずに、圧力をかけてオイルを搾る方法をいう。前記コールドプレス法における温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0℃〜80℃が好ましく、5℃〜40℃がより好ましい。
【0031】
前記サチャインチオイルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:「インカグリーンナッツ・インカインチオイル」(特定非営利活動法人アルコイリス製)、商品名:「パチャママ プレミアム・サチャインチオイル」(株式会社パチャママ製)、商品名:「農大サチャインチオイル」(株式会社メルカード東京農大製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記サチャインチオイルの純度としては、80%〜100%が好ましく、90%〜100%がより好ましく、95%〜100%が特に好ましい。
【0033】
前記サチャインチオイルの含有量としては、特に既定はないが、体脂肪減少促進剤全量に対して、10質量%〜100質量%が好ましく、40質量%〜100質量%がより好ましい。10質量%未満であると、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素の活性化効果が不十分となることがある。
【0034】
−剤型−
前記体脂肪減少促進剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、坐剤、シロップ剤、注射剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤などが挙げられる。これらの中でも、使用の利便性の観点から、経口的に摂取できる剤型である、液剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、錠剤、シロップ剤、トローチ剤が好ましく、液剤、顆粒剤、錠剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤がより好ましい。
前記サチャインチオイルの含有量は、前記剤型により様々である。
前記サチャインチオイルをそのままボトル詰めにした液剤の前記サチャインチオイルの含有量としては、体脂肪減少促進剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記ハードカプセル剤又はソフトカプセル剤におけるサチャインチオイルの含有量としては、体脂肪減少促進剤全量に対して、30質量%〜95質量%が好ましい。
前記シロップ剤におけるサチャインチオイルの含有量としては、体脂肪減少促進剤全量に対して、30質量%〜100質量%が好ましい。
前記顆粒剤におけるサチャインチオイルの含有量としては、体脂肪減少促進剤全量に対して、30質量%〜70質量%が好ましい。
前記錠剤におけるサチャインチオイルの含有量としては、体脂肪減少促進剤全量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
前記剤型において、あまりにもサチャインチオイルの含有量が少ない製剤は摂取量が多くなるため適さない。
【0035】
−その他の成分−
前記体脂肪減少促進剤は、前記サチャインチオイルを有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0036】
前記その他の成分としては、前記体脂肪減少促進剤を製造するにあたって通常用いられる補助的原料又は添加物などが挙げられる。
【0037】
前記補助的原料又は前記添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、飽和脂肪酸;α−リノレン酸、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸;ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
−運動時体脂肪減少促進−
前記「運動時体脂肪減少促進」とは、サチャインチオイルを摂取し、合わせて運動を行うことにより体脂肪の減少促進を図ることを意味する。前記「運動」とは、身体活動をいい、計画的・意図的に実施する運動、労働、家事、通勤・通学、趣味などの日常の生活活動を含む意味である。
【0039】
前記「運動」の強さを表す単位としては、運動所要量・運動指針の策定検討会が平成18年7月に示した「健康づくりのための運動指針2006」によると、運動の強さについては「メッツ」が用いられている。前記「メッツ」とは、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通の歩行が3メッツに相当し、3メッツの強度を中強度とする。
3メッツの「運動」としては、例えば、50ワットでの自転車エルゴメータ、ボーリング、バレーボールなどが挙げられる。
4メッツの「運動」としては、例えば、速歩(ウォーキング)、水中運動、卓球などが挙げられる。
5メッツの「運動」としては、例えば、ソフトボール、野球などが挙げられる。
6メッツの「運動」としては、例えば、ウエイトトレーニング、美容体操、軽いジョギング(ジョギングと歩行の組み合わせ)、ゆっくりしたスイミング、バスケットボールなどが挙げられる。
7メッツの「運動」としては、例えば、ジョギング、サッカー、テニス、スケートなどが挙げられる。
8メッツ「運動」としては、例えば、ランニング、サイクリングなどが挙げられる。
【0040】
前記「運動」の強度としては、3メッツ〜8メッツが好ましく、6メッツ〜8メッツがより好ましい。また、運動の頻度は週に3回〜5回、時間は15分間〜60分間が好ましい。
さらに、医歯薬出版、1990年出版、「運動強度のとらえ方」による運動強度としては、40%VOmax〜90%VOmaxが好ましく、60%VOmax〜90%VOmaxがより好ましく、60%VOmax〜70%VOmaxが特に好ましい。
・参考文献1:健康づくりのための運動指針2006(厚生労働省:エクササイズガイド,p.7,2006)、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
・参考文献2:運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)、http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~sport/menu/staff/tamaki/edu/training.html
【0041】
−使用方法−
前記使用方法としては、サチャインチオイルを経口的に1g/日〜3g/日摂取することが好ましい。前記摂取は、毎日の連用でもよく、頓服でもよい。
前記体脂肪減少促進剤としては、例えば、運動前に服用することが好ましく、運動の6時間前〜運動直前に摂取することが好ましい。
【0042】
(食品)
前記食品は、前記体脂肪減少促進剤を有効成分として含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
ここで、前記食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品、などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
【0043】
前記食品としては、サチャインチオイルを、その活性を妨げないように任意の食品に配合したものであってもよいし、サチャインチオイルを主成分とする栄養補助食品であってもよい。
【0044】
前記食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、炭酸飲料、果実・果汁飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、茶飲料(緑茶、烏龍茶、紅茶など)、豆乳、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0045】
前記その他の成分としては、前記体脂肪減少促進剤におけるその他の成分と同様のものを使用することができる。
【0046】
前記食品における前記体脂肪減少促進剤の添加量は、対象となる食品の種類に応じて異なり一概には規定することができないが、食品本来の味を損なわない範囲で添加すればよく、各種対象食品に対し、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、顆粒、錠剤又はカプセル形態の食品の場合には、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0047】
前記食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分であるサチャインチオイルの働きによって、極めて効果的に体脂肪を減少することができる。
【0048】
なお、本発明の体脂肪減少促進剤、及び食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、図3及び図4中のアスタリスク(*)は、Student’s t−検定によるサチャインチオイル投与群、キャノーラオイル投与群、及び水投与群間の比較結果を示し、一つのアスタリスク(*)は危険率が5%未満で有意な差があることを表す。
【0050】
(実施例1)
49匹の6週齢の雄性Crl/CD(SD)ラット(日本チャールス・リバー株式会社製)を用いて、各条件における副睾丸周囲脂肪量、及び3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を評価した。
【0051】
前記Crl/CD(SD)ラットの飼育には、ラット専用の実験動物飼育装置(商品名:「クリーンラックCR−1000−HD3」、株式会社日本医化器械製作所製)を用いた。飼育条件は、室温23℃、相対湿度40%となるようにエアコンにより調整した。餌は、ラット専用飼料(商品名:「MF」、固型(12mmφペレット)、オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いて、水は水道水を用いて、それぞれ自由摂取させた。飼育照明は、6:00〜18:00を明期、18:00〜翌6:00を暗期とした。なお、飼育は、1ケージに3匹ずつ収容した。
【0052】
予備飼育開始1週間後、下記サチャインチオイル投与群(19匹)、下記キャノーラオイル投与群(17匹)、及び下記水投与群(13匹)の3群に分け、その後4週間、サチャインチオイル、キャノーラオイル、又は水道水を各群にそれぞれ投与した。
・サチャインチオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のサチャインチオイルを経口投与した。
・キャノーラオイル投与群:安静状態で飼育し、2.5μL/g/日のキャノーラオイルを経口投与した。
・水投与群:安静状態で飼育し、0.5mL/日の常温の水道水を経口投与した。
【0053】
前記サチャインチオイルとしては、はPlukenetia volubilisの胚乳部(栄養成分100g当たり、熱量:900kcal、タンパク質:0.1g、脂質:100g、炭水化物:0g,ナトリウム:0mg、コレステロール:0g、ビタミンE:200mg、α−リノレン酸:45g)をコールドプレス法にて搾油しフィルターで濾過したものを用いた。前記サチャインチオイルは、酸価:1mgKOH/g、過酸化物価:0meq/kg、ヨウ素価:202mgI/100mgと品質には問題の無いものであった。なお、前記酸価は、水酸化カリウム滴定法、過酸化物価はチオ硫酸ナトリウム滴定法、ヨウ素価はウィイス−シクロヘキサン法でそれぞれ測定した。
前記キャノーラオイルとしては、市販のキャノーラオイル(商品名:「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製;栄養成分100g当たり、熱量:900kcal、タンパク質:0g、脂質:100g、炭水化物:0g、ナトリウム:0mg、コレステロール:0g、ビタミンE:31.4mg)を用いた。
【0054】
前記投与は、週6回4週間、17:00〜17:30の間に行った。なお、実験終了1週間前から、あらかじめラットに商品名:「実験動物強制運動測定器」(株式会社シナノ製作所製)で、1日10分間の運動を1週間実施し、相対運動強度50%程度の負荷に相当する20m/minの運動負荷に慣れさせた。
【0055】
投与開始から4週間経過後、下記表1に示すように、前記サチャインチオイル投与群、前記キャノーラオイル投与群、及び前記水投与群を、各群それぞれ23℃非運動暴露グループ(室温:23℃、相対湿度:40%環境下、30分間非運動曝露)、23℃運動暴露グループ(室温:23℃、相対湿度:40%環境下、30分間運動曝露)、35℃非運動暴露グループ(室温:35℃、相対湿度:40%環境下、30分間非運動曝露)、及び35℃運動暴露グループ(室温35℃、相対湿度:40%環境下、30分間運動曝露)の4つのグループに分けた。なお、「非運動暴露」とは、各温度において、通常飼育を行うことを意味し、「運動暴露」とは、各温度において、運動負荷を行うことを意味する。また、前記運動負荷は、商品名:「実験動物強制運動測定器」(株式会社シナノ製作所製)を使用し、相対運動強度50%程度の負荷に相当する20m/minで実施した。
【0056】
【表1】
【0057】
前記「運動負荷」は、ヒトにおけるランニング程度の運動であり、6メッツの運動強度に相当する。
・参考文献1:運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)、http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~sport/menu/staff/tamaki/edu/training.html
・参考文献2:健康づくりのための運動指針2006(厚生労働省:エクササイズガイド,p.7,2006)、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
【0058】
<体重及び摂食量>
前記体重は、投与開始から4週間毎日、電子天秤(商品名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)により、各ラットの体重を測定した。結果を図1に示す。図1に示すように、投与期間中において各群間には有意な差はなかった。また、前記摂食量においても、図2に示すように、投与期間中において各群間には有意な差はなかった。
【0059】
(実施例1)
<副睾丸周囲脂肪量>
前記23℃運動暴露グループ及び前記35℃運動暴露グループにおける各温度での運動負荷終了直後に、前記23℃非運動暴露グループ、前記23℃運動暴露グループ、前記35℃非運動暴露グループ、及び前記35℃運動暴露グループのラットの左側の副睾丸周囲脂肪(精巣上体周囲脂肪)を摘出し、電子天秤(商品名:「DZ−2000」、株式会社島津製作所製)にて計量した。結果を図3に示す。図3に示すように、サチャインチオイル投与群は、キャノーラオイル投与群及び水投与群と比較して副睾丸周囲脂肪量が減少していることが確認された。さらに、サチャインチオイル投与群内において、23℃運動暴露グループ及び35℃運動暴露グループは、23℃非運動暴露グループ及び35℃非運動暴露グループと比較して、それぞれ有意に減少した。この結果から、サチャインチオイルを摂取し、さらに運動することにより体脂肪の減少を促進することができることが確認された。
【0060】
【表2】
なお、前記表2中、副睾丸周囲脂肪量の値は、平均±標準誤差で示した。また、サチャインチオイル投与群におけるアスタリスク(*)は、23℃運動暴露グループにおいては、23℃非運動暴露グループに対しての有意差(危険率5%未満)であり、35℃運動暴露グループにおいては、35℃非運動暴露グループに対しての有意差(危険率5%未満)である。
【0061】
(実施例2)
<3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性>
23℃運動負荷及び35℃運動負荷終了直後、ラットの右脚の下肢骨格筋(腓腹筋)を摘出し、−80℃の液体窒素で凍結保存した。
【0062】
前記凍結保存した前記下肢骨格筋(腓腹筋)の入ったチューブにSKミル用粉砕玉クラッシャー(商品名:「sk−100−DLC10」、株式会社トッケン製)を入れ、SKミルホルダー(商品名:「sk−100」、株式会社トッケン製)に装填し液体窒素で凍結させてから、振盪を20秒間で1,600回行った。粉砕した前記下肢骨格筋(腓腹筋)に、5倍量のHomogenization buffer:500mLと、Tris−HCl(メルク社製):3.94gと、EDTA・2Na(和光純薬工業株式会社製)0.181gとを加え、塩酸及び水酸化ナトリウムでpH7.4に調整し、蒸留水でメスアップしたもの)を加えてホモジネートした。その後、軽く手で振盪し、冷却遠心分離(商品名:「5415R」、エッペンドルフ株式会社製)を用いて4℃、14,000rpmで15分間遠心した後、上澄み液を得た。
【0063】
前記上澄み液を用いて、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性を「中谷昭 マウス骨格筋・心筋ミオグロビン含量及び酵素活性について 奈良教育大学紀要 40(2) 29−34、1991」に記載の方法により測定した。結果を図4に示す。図4に示すように、23℃運動暴露グループ及び35運動暴露グループにおけるサチャインオイル投与群は、キャノーラオイル投与群及び水投与群に対して、有意(危険率5%未満)に3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性が上昇していた。この結果から、サチャインチオイルの摂取がβ−酸化系脂質代謝を活性化させ、ATPの供給促進に寄与することが確認された。
【0064】
【表3】
なお、前記表3中、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性の値は、平均±標準誤差で示した。また、サチャインチオイル投与群におけるアスタリスク(*)は、キャノーラオイル投与群及び水投与群に対しての有意差(危険率5%未満)である。
【0065】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の体脂肪減少促進剤は、3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素活性化作用を有するため、体脂肪を減少させることができる体脂肪減少促進剤、及びこれを含む食品として利用可能である。
図1
図2
図3
図4