(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の基材処理装置では、可撓性を有する基材に対して精度良く複数の処理を行うことができないおそれがあった。具体的には、搬送によるテンションの差、環境温度、湿度による伸縮などにより基材が歪み、複数の処理部の間で基材の状態が異なるため、複数の処理部間の相対位置精度が確保できないという問題があった。
【0008】
ここで、仮に各処理部に基材の歪みを反映させて処理を行う機構が設けられていても、複数の処理部間の相対位置精度を確保することは困難であった。
図9の例では、処理領域Sの周囲に設けられたアライメントマークAM1〜AM4の位置を確認して処理領域Sの歪みを認識し、その歪みを反映させて処理を行う処理位置補正部を露光部93および塗布部94に設け、たとえばに露光部93においてアライメントマークAM1〜AM4の位置が
図10(a)に示すような状態であった場合に、
図10(b)に破線で示すように露光パターンP1の形状に処理領域Sの歪みが反映されるように露光位置を制御することは可能である。
【0009】
しかし、アライメントマークAM1〜AM4の配置が類似していても処理領域S内の歪み具合が異なる場合もあり、その場合、露光部93および塗布部94のそれぞれで基材Wの歪みを把握して処理を行ったとしても、
図10(c)示すように露光パターンP1と電極パターンP2の位置が異なることとなる。その結果、電極パターンP2は十分に濡れ広がることができずに、断線が生じるといった問題があった。
【0010】
特に、先の処理が露光に代表されるような、処理を行ったか否かが外観では認識が不可な工程であった場合、先の処理が行われた痕跡をなぞって後の処理を行うということができず、先の処理と後の処理の位置精度を確保することをさらに困難にさせていた。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、可撓性を有する基材に対して精度良く複数の処理を行うことが可能な基材処理方法および基材処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の基材処理方法は、可撓性を有する基材を保持する基材保持工程と、前記基材保持工程により保持された基材の歪みを認識する歪み認識工程と、前記歪み認識工程により認識した歪みに基づいて、保持された基材上へ処理を行う位置の情報を補正する処理位置補正工程と、前記処理位置補正工程により補正を行った処理位置の情報に基づいて、保持された基材上に第1の処理を行う第1の処理工程と、前記処理位置補正工程により補正を行った処理位置の情報に基づいて、保持された基材上に第2の処理を行う第2の処理工程と、を有
し、前記処理位置補正工程後、基材を動かすことなく前記第1の処理工程および前記第2の処理工程を続けて行うことを特徴としている。
【0013】
上記基材処理方法によれば、可撓性を有する基材に対して精度良く第1の処理と第2の処理を行うことができる。具体的には、第1の処理工程と第2の処理工程との間で基材を動かすことなく同じ処理位置補正工程が反映された第1の処理工程と第2の処理工程を行うことにより、確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明の基材処理方法は、可撓性を有する基材を保持する基材保持工程と、前記基材保持工程により保持された基材の歪みを認識する歪み認識工程と、前記歪み認識工程により認識した歪みに基づいて、保持された基材を変形させて矯正する基材矯正工程と、前記基材矯正工程により矯正された基材上に第1の処理を行う第1の処理工程と、前記基材矯正工程により矯正された基材上に第2の処理を行う第2の処理工程と、を有
し、前記基材矯正工程後、基材を動かすことなく前記第1の処理工程および前記第2の処理工程を続けて行うことを特徴としている。
【0015】
上記基材処理方法によれば、可撓性を有する基材に対して精度良く第1の処理と第2の処理を行うことができる。具体的には、基材矯正工程により基材が矯正された状態で第1の処理工程と第2の処理工程との間で基材を動かすことなく第1の処理工程と第2の処理工程を行うことにより、確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【0016】
また、前記第1の処理工程は、処理を行ったか否かが外観では認識が不可な工程であっても良い。
【0017】
このような場合であっても確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【0018】
また、前記第1の処理工程は、露光工程であっても良い。
【0019】
このような場合であっても確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために本発明の基材処理装置は、可撓性を有する基材を保持する基材保持部と、前記基材保持部により保持された基材の歪みを認識する歪み認識部と、前記歪み認識部により認識した歪みに基づいて、保持された基材上へ処理を行う位置の情報を補正する処理位置補正部と、前記基材保持部上の基材に第1の処理を行う第1の処理部と、前記基材保持部上の基材に第2の処理を行う第2の処理部と、を有
し、前記処理位置補正部による情報の補正を行った後、基材を動かすことなく前記第1の処理部および前記第2の処理部が前記第1の処理および前記第2の処理を続けて行うことを特徴としている。
【0021】
上記基材処理装置によれば、可撓性を有する基材に対して精度良く第1の処理と第2の処理を行うことができる。具体的には、第1の処理部と第2の処理部との間で基材を動かすことなく処理位置補正部により同じ補正が反映された第1の処理と第2の処理を行うことにより、確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【0022】
また、上記課題を解決するために本発明の基材処理装置は、可撓性を有する基材を保持する基材保持部と、前記基材保持部により保持された基材の歪みを認識する歪み認識部と、前記歪み認識部により認識した歪みに基づいて、前記基材保持部上の基材を変形させて矯正する基材矯正部と、前記基材保持部上の基材に第1の処理を行う第1の処理部と、前記基材保持部上の基材に第2の処理を行う第2の処理部と、を有
し、前記基材矯正部による基材の矯正を行った後、基材を動かすことなく前記第1の処理部および前記第2の処理部が前記第1の処理および前記第2の処理を続けて行うことを特徴としている。
【0023】
上記基材処理装置によれば、可撓性を有する基材に対して精度良く第1の処理と第2の処理を行うことができる。具体的には、基材矯正部により矯正された状態で基材を動かすことなく第1の処理と第2の処理を行うことができるため、確実に第1の処理と第2の処理の相対位置精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の基材処理方法および基材処理装置によれば、可撓性を有する基材に対して精度良く複数の処理を行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0027】
本発明の一実施形態における基材処理装置を
図1に示す。
図1(a)は、基材処理装置1の上面図、
図1(b)は、基材処理装置1の正面図である。
【0028】
本実施形態の基材処理装置1は、送り出し装置2、巻き取り装置3、歪み認識部4、露光部5、塗布部6、および基材保持部7を有しており、送り出し装置2から送り出され巻き取り装置3によって巻き取られる帯状の基材Wに対し、基材保持部7において固定された基材Wの一部を露光部5が露光することにより露光パターンP1を形成し、この露光パターンP1に基づいて塗布部6が基材W上に電極材料を塗布することにより電極パターンP2を形成するものである。また、基材保持部7に保持されている基材Wの歪みが露光部5、塗布部6による処理の前に歪み認識部4によって認識され、その認識結果に基づいて、露光部5、塗布部6が処理を行うべき基材W上の位置の補正が行われたのち、露光部5、塗布部6による処理が行われる。
【0029】
また、基材処理装置1は、コンピュータプログラムを記憶する記憶装置等を有するコンピュータからなる制御部8を備え、この制御部8により、各種計算、基材処理装置1が有する駆動機構の動作の制御などが行われる。
【0030】
なお、以下の説明では、基材保持部7上で基材Wが搬送される方向をY軸方向と呼ぶ。また、水平面上でY軸方向と直交する方向をX軸方向とし、また、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向とする。
【0031】
基材W上には、四辺形状の処理領域Sが帯状の基材Wの長尺方向に並んで複数形成されている。また、この帯状の基材Wは基材処理装置1による電極形成工程より後の工程で処理領域S毎に裁断され、たとえば有機ELディスプレイの基板となる。
【0032】
送り出し装置2は、帯状の基材Wが巻かれた筒状体が取り外し可能な機構を有し、また、巻き取り装置3は、基材Wを巻き取ってゆく筒状体が取り外し可能な機構を有する。これら筒状体を図示しない駆動機構により回転させることにより、基材Wは、送り出し装置2から巻き取り装置3へ送り出される。その間、塗布部6により基材Wへ塗布液の塗布が行われ、巻き取り装置3には、塗布液の塗布処理が完了した基材Wが巻き取られてゆく。
【0033】
歪み認識部4は、カメラガントリ12に搭載されたカメラ11と、カメラ11をX軸方向およびY軸方向に移動させる駆動装置13とを有している。
【0034】
カメラ11は、例えばCCDカメラであり、基材Wの処理領域Sの周辺に配置されたアライメントマークAM1乃至アライメントマークAM4を撮像する。駆動装置13は、カメラガントリ12をX軸方向に移動させる機能と、カメラ11をカメラガントリ12に沿ってY軸方向に移動させる機能とを有し、例えばリニアガイドおよびモータ等によって構成される。また、認識部4の下方には、後述の基材保持部7が設けられており、この基材保持部7が基材Wを保持した状態において、アライメントマークAM1乃至アライメントマークAM4の撮像が行われる。
【0035】
また、歪み認識部4は、駆動装置13およびカメラ11と関連して機能する図示しない座標取得部を備えており、この座標取得部は、カメラ11が撮像した画像を処理する機能を有するほか、駆動装置13によって移動したカメラ11のX軸方向およびY軸方向の位置(座標)を制御(管理)する。このため、カメラ11によって取得された画像に基づいて、座標取得部はアライメントマークAM1乃至アライメントマークAM4の座標を取得することができる。なお、座標取得部の機能は、制御部8のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0036】
また、歪み認識部4は、座標取得部が得たアライメントマークAM1乃至アライメントマークAM4の座標情報をもとに、処理領域Sの歪み情報(処理領域Sがどのような形状に歪んでいるのか)を算出する歪み情報算出部を備え、この歪み情報算出部が算出した歪み情報をもとに、後述の通り露光部5、塗布部6が処理を行うべき基材W上の位置情報の補正が行われる。なお、歪み情報算出部の機能は、制御部8のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0037】
露光部5は、本説明における第1の処理部にあたるものであり、第2の処理部(塗布部6)による処理に先立って基材Wへの処理を行う。
【0038】
本実施形態の露光部5は、露光ユニット21と、露光ユニット21をX軸方向およびY軸方向に移動させる駆動装置とを有しており、基材Wの処理領域S内の一部に露光を行い、露光パターンP1を形成させる。このように露光パターンP1が形成された部分は濡れ性が向上し、その上に電極材料が塗布された場合に、切れ目の無い電極パターンが形成されやすくなる。
【0039】
本実施形態の露光ユニット21は、DMD(Digital Micromirror Device)を用いて狭小のスポット単位で対象物に露光を行うことができるものであり、露光ユニット21がこの狭小スポットの露光を基材Wに対して露光位置を移動させながら連続して行うことにより、マスクを用いることなく任意の露光パターンを形成することが可能である。また、仮にマスクを用いて露光を行う場合、後述のように基材Wの歪みに応じて露光パターンP1の形状を微調整することは困難であるが、本実施形態のようにDMDを用いて露光を行う形態であれば、制御部8に記録されている基材W上へ露光処理を行う位置の情報を補正することにより容易に露光パターンP1の形状を微調整することが可能である。
【0040】
また、上記の通り露光ユニット21はX軸方向およびY軸方向の移動が可能であるように基材保持部7の上方に取り付けられており、露光ユニット21の座標を変更させながら基材Wへ露光を行うことによって基材Wに露光パターンP1が形成される。本実施形態では、露光ユニット21をカメラ11と同様にカメラガントリ12に搭載することにより、露光ユニット21のX軸方向およびY軸方向の移動を可能にしている。なお、露光ユニット21とカメラ11とは独立してY軸方向に移動する。
【0041】
また、露光部5は、基材保持部7に保持された基材Wの処理領域Sに対して、露光ユニット21が相対移動し、露光を行う各種動作の制御を行う露光動作制御部を備えている。この露光動作制御部の機能は、制御部8のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0042】
塗布部6は、本説明における第2の処理部にあたるものであり、第1の処理部(露光部5)による処理が行われた後に基材Wへの処理を行う。
【0043】
塗布部6は、基材Wの処理領域Sに形成された露光パターンP1の上にたとえば銀、銅などを含有する電極材料を塗布することにより、基材W上に電極パターンP2を形成する。
【0044】
塗布部6は、塗布ユニット31と、塗布ガントリ33と、塗布ユニット31をX軸方向およびY軸方向に移動させる駆動装置とを有している。なお、本実施形態では、塗布ユニット31を移動させる駆動装置はカメラ11および露光ユニット21を移動させる駆動装置13と同一であり、駆動装置13はカメラ11および露光ユニット21と独立して塗布ユニットを移動させる。また、塗布ガントリ33には、基材保持部7の基材載置面と直交する方向(Z軸方向)に回転軸を有する回転手段34が取付けられ、この回転手段34の回転軸に塗布ユニット31が取付けられており、塗布ユニット31はこの回転軸を中心に回動することが可能である。なお、本実施形態では、この回転手段34も、駆動装置13により駆動される。
【0045】
塗布ユニット31には、処理領域Sに対して塗布液を吐出する吐出ノズル32が一方向に等間隔で複数並んで設けられており、塗布ユニット31が回転手段34によって回動することにより、吐出ノズル32の配列方向を変化させることが可能である。このように吐出ノズル32の配列方向を変化させることにより、吐出ノズル32のY軸方向の間隔を調節することが可能である。
【0046】
塗布部6による塗布動作では、塗布ユニット31がX軸方向に走査(主走査)する際に、それぞれの吐出ノズル32が吐出目標とする処理領域上の所定位置の上方に差し掛かったときに電極材料を吐出する。この動作を塗布ユニット31のY軸方向の移動(副走査)を挟んで連続して行うことにより、処理領域S上に電極パターンP2を形成することが可能である。なお、吐出ノズル32が処理領域S上の所定位置の上方に差し掛かるタイミングは、それぞれの所定位置の座標と、それぞれの吐出ノズル32の位置とを制御部8が管理しておくことにより、算出することが可能である。
【0047】
また、塗布部6は、基材保持部7に保持された基材Wの処理領域Sに対して、塗布ユニット31の吐出ノズル32から電極材料を吐出させて塗布する各種動作の制御を行う塗布動作制御部を備えている。また、塗布動作制御部は、各吐出ノズル32のX軸方向およびY軸方向の位置(座標)を制御(管理)することができる。この塗布動作制御部の機能は、制御部8のコンピュータプログラムが実行されることで発揮される。
【0048】
基材保持部7は、平坦面である基材載置面を有し、基材載置面上で帯状の基材Wの一部を水平に保持する。このように保持された基材Wに対して、第1の処理部(露光部5)、第2の処理部(塗布部6)が処理を行う。また、基材載置面には多数の吸引孔が設けられており、この吸引孔と図示しない真空ポンプが接続され、真空ポンプが作動することにより、基材載置面上で基材Wを吸着固定することができる。
【0049】
制御部8は、CPUおよびRAMやROMを有するコンピュータであり、上記の通り座標取得部、歪み情報算出部、露光動作制御部、塗布動作制御部の機能を有して歪み認識部4、露光部5、塗布部6の動作の制御を行うほか、送り出し装置2、巻き取り装置3の回転速度を制御することにより基材Wの搬送の制御も行う。
【0050】
また、制御部8は、歪み認識部4によって得られた歪みに基づいて、基材W上へ露光パターンP1および電極パターンP2を形成するための位置情報を補正計算する処理位置補正部の機能も有している。
【0051】
また、制御部8は、ハードディスクや、RAMまたはROMなどのメモリからなる、各種情報を記憶する記憶装置を有しており、基材Wに露光部5、塗布部6が露光パターンP1および電極パターンP2を形成するための位置情報がこの記憶装置に記憶される。また、この記憶装置には、上記処理位置補正部の機能により補正された各処理の位置情報も一時的に記憶され、この記憶されたデータをもとに露光部5、塗布部6を動作させることができる。
【0052】
次に、本実施形態の基材処理装置を用いて基材Wへ処理を行う様子を
図2に示す。
【0053】
図2(a)は、基材保持部7に搬送された直後の基材W上の処理領域Sである。本実施形態では処理領域Sは矩形の形状を有しており、この処理領域Sの四隅の近傍にアライメントマークAM1乃至AM4が設けられている。この処理領域SおよびアライメントマークAM1乃至AM4を含む基材Wが基材保持部7に保持された後、歪み認識部4のカメラ11がアライメントマークAM1乃至AM4の座標を確認し、処理領域Sの位置を正確に把握する。
【0054】
このように処理領域Sの位置が把握された後、基材保持部7が基材Wを動かさずに保持し続けている状態下で、制御部8に記憶されている露光処理の処理位置情報をもとに露光部5が動作し、
図2(b)に示すように処理領域S内の所定位置に露光パターンP1が形成される。なお、このように露光パターンP1が形成されたか否かが外観では認識が不可である。
【0055】
そして、次に基材保持部7が基材Wを動かさずに保持し続けている状態下で、制御部8に記憶されている塗布処理の処理位置情報をもとに、塗布部6が動作し、
図2(c)に示すように露光パターンP1に重なるように電極パターンP2が形成される。
【0056】
このように、2つの処理を行う間に基材Wを動かすことなく、2つの処理を行うことにより、1つ目の処理に対して2つ目の処理を位置精度良く行うことができる。また、たとえ1つ目の処理が外観では認識が不可な処理であったとしても、2つの処理を精度良く行うことが可能である。
【0057】
一方、本実施形態で用いる基材Wは、ロールトゥロールで搬送可能であり、可撓性を有している。そのため、搬送時のテンション、環境温度、湿度により基材Wが伸縮し、基材保持部7上で基材Wに歪みが生じている場合があるが、この場合であっても上記のように露光パターンP1に対して精度良く電極パターンP2を形成することが可能である。これについて、以下に説明する。
【0058】
図3は、基材Wが基材保持部7上で歪みを有している場合の基材Wへ処理を行う様子を示したものである。
【0059】
図3(a)は、基材保持部7に搬送されてすぐの基材W上の処理領域Sである。処理領域Sは歪みを有しており、それに応じて処理領域Sの四隅の近傍のアライメントマークAM1乃至AM4の位置も基材Wが歪んでいない場合と比べてずれが生じている。この処理領域SおよびアライメントマークAM1乃至AM4を含む基材Wが基材保持部7に保持された後、歪み認識部4のカメラ11がアライメントマークAM1乃至AM4の座標を確認し、処理領域Sの歪みが認識される。
【0060】
このように処理領域Sの歪みが認識された後、制御部8に記憶されている露光処理の処理位置情報が処理領域Sの歪み情報に基づいて補正される。そして、基材保持部7が基材Wを動かさずに保持し続けている状態下で、補正された露光処理位置情報をもとに露光部5が動作し、
図3(b)に示すように、処理領域Sの歪みに応じて変形した露光パターンP1が形成される。なお、このように露光パターンP1が形成されたか否かが外観では認識が不可である。
【0061】
次に、基材保持部7が基材Wを動かさずに保持し続けている状態下で、制御部8に記憶されている塗布処理の処理位置情報が上述の処理領域Sの歪み情報と同一の歪み情報に基づいて補正される。そして、補正された塗布処理位置情報をもとに、塗布部6が動作し、
図3(c)に示すように処理領域Sの歪みに応じて変形し、かつ露光パターンP1に重なるように電極パターンP2が形成される。
【0062】
このように、2つの処理を行う間に基材Wを動かすことなく、かつ同一の歪み情報に基づいてそれぞれの処理位置情報を補正して2つの処理を行うことにより、1つ目の処理に対して2つ目の処理を位置精度良く行うことができる。また、たとえ1つ目の処理が外観では認識が不可な処理であったとしても、2つの処理を精度良く行うことが可能である。
【0063】
次に、本実施形態の基材処理方法の動作フローを
図4に示す。
【0064】
まず、送り出し装置2が可撓性を有する帯状の基材Wを送り出し、巻き取り装置3が基材Wを巻き取ることにより、基材Wを搬送する(ステップS1)。このとき、基材Wは基材の搬送方向において基材保持部7の両側で図示しないリフトアップロールにより持ち上げられており、搬送時に基材保持部7と擦れないようになっている。
【0065】
そして、基材Wの処理領域Sが基材保持部7に載置されるような位置まで基材Wが搬送された後、リフトアップロールが下り、基材保持部7が基材Wを吸着することにより、基材Wを保持する(ステップS2)。このように基材保持部7が基材Wを保持する工程を、本説明では基材保持工程と呼ぶ。
【0066】
次に、歪み認識部4のカメラ11がX軸方向およびY軸方向に移動し、アライメントマークAM1乃至AM4を撮像する。そして、歪み認識部4の座標取得部が、各アライメントマークを撮像したときのカメラ11のX座標、Y座標、および撮像した画像をもとに各アライメントマークの座標を算出し、取得する(ステップS3)。ここで、この基材処理装置1による処理よりも前の工程の処理によって処理領域Sにパターンが描画されている場合、この描画パターンをカメラ11が撮像し、座標取得部が座標を取得しても良い(ステップS4)。数多くの描画パターンの座標を取得することにより、処理領域S内の歪みの状態をより詳細に把握することができる。
【0067】
次に、座標取得部によって得られたアライメントマークAM1乃至AM4もしくは描画パターンの座標をもとに、歪み認識部4の歪み情報算出部が処理領域Sの歪み情報を算出する(ステップS5)。なお、上記ステップS3からステップS5の工程を、本説明では歪み認識工程と呼ぶ。
【0068】
次に、制御部8が記憶している露光部5(第1の処理部)が処理領域Sに露光処理(第1の処理)を行う位置の情報について、制御部8が上記歪み認識工程で得られた処理領域Sの歪み情報を反映して、露光処理位置情報の補正を行う(ステップS6)。
【0069】
次に、制御部8が記憶している塗布部6(第2の処理部)が処理領域Sに塗布処理(第2の処理)を行う位置の情報について、制御部8がステップS6で反映した歪み情報と同一の処理領域Sの歪み情報を反映して、塗布処理位置情報の補正を行う(ステップS7)。なお、これらステップS6およびステップS7のように制御部8が各処理の処理位置情報を補正する工程を、本説明では処理位置補正工程と呼ぶ。
【0070】
次に、制御部8により補正された処理位置の情報に基づいて、露光部5(第1の処理部)が処理領域Sに露光処理(第1の処理)を行う(ステップS8)。なお、第1の処理部が基材Wに第1の処理を行う工程を、本説明では第1の処理工程と呼ぶ。このように露光処理位置情報の補正を行った上で露光処理を行うことにより、処理領域Sの歪み応じて露光パターンP1をあえて歪ませて形成することができ、以降の工程で処理領域Sの歪みを除去した場合に正規の形状の露光パターンP1を得ることができる。
【0071】
次に、制御部8により補正された処理位置の情報に基づいて、塗布部6(第2の処理部)が処理領域Sに塗布処理(第2の処理)を行う(ステップS9)。なお、第2の処理部が基材Wに第2の処理を行う工程を、本説明では第2の処理工程と呼ぶ。このように塗布処理位置情報の補正を行った上で塗布処理を行うことにより、処理領域Sの歪み応じて電極パターンP2をあえて歪ませて形成することができ、以降の工程で処理領域Sの歪みを除去した場合に正規の形状の電極パターンP2を得ることができる。また、同一の歪み情報を反映して露光処理位置情報および塗布処理位置情報の補正を行っているため、露光処理に対して塗布処理を位置精度良く行うことができる。
【0072】
最後に、基材保持部7が基材Wの吸着保持を解除し(ステップS10)、基材W上の次の処理領域Sへの一連の処理に備える。
【0073】
次に、他の実施形態における基材処理方法について説明する。この実施形態では、
図5に示すように分割ステージ41乃至45のように基材保持部7が分割されており、移動手段46乃至49のように一部もしくは全部の分割ステージが独立して移動可能となっている。このような基材保持部7上に基材Wが吸着保持された状態で一部もしくは全部の分割ステージが移動することにより、基材Wを変形させることができる。
【0074】
このように基材Wを変形させることにより、
図6(a)に示すように処理領域Sが歪んでいた場合であっても、基材Wの変形後、
図6(b)に示すように処理領域Sを矩形に戻すように矯正することができる。このように処理領域Sの歪みを戻した状態で各処理を行うことにより、
図6(c)の露光パターンP1、電極パターンP2で示すように、正確な位置精度で各処理を行うことができる。なお、本説明ではこのように基材Wの形状を矯正する機構を基材矯正部と呼び、この実施形態では基材保持部7は基材矯正部としての機能も有している。
【0075】
この実施形態における基材処理方法の動作フローを
図7に示す。この基材処理方法では、基材Wを搬送、保持し、アライメントマークもしくは描画パターンの座標を取得して処理領域Sの歪み情報を算出する工程(ステップS1乃至ステップS5)までは、先の実施形態と同じである。そして、処理領域Sの歪み情報を算出した後、この歪み情報に基づいて、処理領域Sの形状が矩形となるように基材矯正部が基材Wの形状を矯正する(ステップS16)。このように基材矯正部が基材Wの形状を矯正する工程を、本説明では基材矯正工程と呼ぶ。
【0076】
このように基材の形状を矯正した後、制御部8が記憶している各処理の処理位置情報に基づいて露光処理(ステップS8)、塗布処理(ステップS9)を行い、最後に基材保持部7が吸着保持を解除することにより、各処理が正確な位置に位置精度良く行われる。
【0077】
以上の基材処理方法および基材処理装置により、可撓性を有する基材に対して精度良く複数の処理を行うことが可能である。
【0078】
なお、上記の説明では、ロール状の基材Wを送り出し装置2で送り出し、巻き取り装置3で巻き取りながら処理を行う、ロールトゥロールの基材処理装置を対象にしているが、可撓性を有する枚葉の基材Wを保持して処理を行う基材処理装置に適用することも可能である。
【0079】
また、上記の説明では、第1の処理部が露光部であって第2の処理部が塗布部であり、基材に液体材料の塗布を行う基材処理装置を対象にしているが、この組み合わせに限らない。たとえば第1の処理部が塗布部であり、第2の処理部が塗布部で塗布した描画パターンの一部をレーザで除去する、レーザアブレーション部であるような組み合わせでも良い。
【0080】
また、上記の説明では、基材保持部7により基材Wを保持した後、基材Wの矯正は行わずに各処理の処理位置情報を補正してから各処理を行う形態、および基材矯正部により基材Wの処理領域Sを歪みが無い場合の形状にまで矯正し、各処理の処理位置情報を補正する必要が無い状態で各処理を行う形態を示しているが、これに限らず、たとえば、
図8に示すように基材矯正部により基材Wの処理領域Sを完全に歪みが無い場合の形状にまで戻すのではなく処理位置情報の補正がしやすい状態(
図8では、処理領域Sの一組の対辺が平行になる状態)まで矯正することによって処理位置情報の補正の負荷を軽減し、その後各処理の処理位置情報を補正してから各処理を行う形態としても良い。
【0081】
また、上記の説明では、第1の処理工程を行ったパターンに重なるように第2の処理工程を行う例を対象にしているが、それに限らず、同じ歪み認識情報を用いるのであれば、たとえば第1の処理を行ったパターンを囲むように第2の処理を行うような処理についても適用することが可能である。
【0082】
また、上記の説明では、第1の処理工程を行った直後に第2の処理工程を行っているが、それに限らず、第1の処理工程と第2の処理工程とで基材の保持状態が同じであれば、第1の処理工程と第2の処理工程との間に別の工程を設けても良い。たとえば、
図1の基材処理装置1の基材保持部7の上方に乾燥装置をさらに設け、基材Wに露光処理(第1の処理)を行った後、基材Wは動かさないで基材表面を乾燥装置により乾燥し、その後に塗布処理(第2の処理)を行っても良い。