(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0016】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0017】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0018】
また、以下の実施の形態において、構成要素等について、「Aから成る」、「Aより成る」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0020】
(実施の形態)
図1は実施の形態の半導体装置の構造の一例を示す平面図、
図2は
図1に示す半導体装置の内部構造の一例を封止体を透過して示す平面図、
図3は
図2のA−A線に沿って切断した構造の一例を示す断面図、
図4は
図1に示す半導体装置に搭載される半導体チップの主要部の構造の一例を示す断面図である。
【0021】
<半導体装置の構造>
図1〜
図3に示す本実施の形態の半導体装置は、半導体チップ(ペレットとも言う)2を封止し、かつ絶縁性の樹脂からなる封止体3を備え、さらに封止体3の内部と外部とに位置する複数のリード部1を有する半導体パッケージである。なお、複数のリード部1のそれぞれは、封止体3で覆われたインナーリード部1aと、封止体3から外部に露出(突出)するアウターリード部1bとを有しており、複数(ここでは2本)のアウターリード部1bのそれぞれは、半導体装置の外部接続用端子(外部端子)である。
【0022】
そして、本実施の形態の半導体装置は、
図2および
図3に示すように、封止体3の所望の1つの側面3aから複数のアウターリード部1bが突出している。さらに、
図3に示すように、半導体チップ2を上面(チップ搭載面)1caで支持する板状のチップ搭載部(アイランド、ダイパッド、ヘッダもしくはタブとも言う)1cの下面1cbが、封止体3の下面3bから露出している。
【0023】
また、複数のリード部1のアウターリード部1bのそれぞれは、ガルウィング状に折り曲げられている。
【0024】
本実施の形態では、上述の構造を備えた半導体装置の一例として、パワーデバイス5を取り上げて説明する。例えば、半導体チップ2には、パワートランジスタとしてトレンチゲート型構造を有する縦型のパワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。パワーMISFETのデバイス構造は、
図4に記載されているように、表面に溝を形成しその中にゲートを埋め込んだものであり、半導体チップ2の裏面2bに形成されたドレイン(D)電極、主面2aに形成されたソース(S)電極、および主面2aに形成されたゲート(G)電極を有し、半導体チップ2の裏面2bには、大きな電流が印加される。また、図には記載していないが、パワートランジスタがバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)でも良い。
【0025】
図1〜
図3を用いてパワーデバイス5の詳細構造について説明すると、上面(チップ搭載面)1ca、および上面1caとは反対側の下面1cbを有するチップ搭載部1cと、接合材として用いられる半田材6を介してチップ搭載部1cの上面1caに搭載された半導体チップ2と、を有している。この半導体チップ2は、主面2a、主面2aとは反対側に位置する裏面2b、主面2aに形成された複数の電極パッド(第1電極、ボンディング電極、ボンディングパッド)2c,2dを有しており、裏面2bがチップ搭載部1cの上面1caと対向するようにチップ搭載部1c上に搭載されている。
【0026】
なお、半導体チップ2の裏面2bは、裏面電極2eとなっており、本実施の形態のパワーデバイス5では、ドレイン(D)電極となっている。したがって、半導体チップ2の裏面2b(裏面電極2e)とチップ搭載部1cとは、導電性の接合材によって電気的に、かつ機械的に接続される必要がある。そこで、パワーデバイス5では、導電性の接合材として半田材6が用いられている。
【0027】
また、半導体チップ2の裏面2bには、ドレイン電極(裏面電極2e)が形成されているため、半導体チップ2からの発熱量も多い。したがって、接合材(ダイボンド材)として半田材6を用いることで、半導体チップ2の裏面2b側が放熱経路となっている。つまり、半導体チップ2の裏面2b側から半田材6を介してチップ搭載部1cに放熱が行えるようになっており、したがって、封止体3の下面3bにチップ搭載部1cの下面1cbが露出する構造となっている。
【0028】
また、
図2に示すようにチップ搭載部1cの平面視において、その1つの辺に沿ってチップ搭載部1cの横に配置された複数(ここでは2本)のリード1のインナーリード部1aと、半導体チップ2の電極パッド2c,2dとは、それぞれ導電性のワイヤによって電気的に接続されている。なお、インナーリード部1aのそれぞれの半導体チップ2側の端部には、リード幅が広くなった幅広部1aaが形成されており、この幅広部1aaにAlワイヤ4が接続されている。
【0029】
また、本実施の形態のパワーデバイス5における半導体チップ2の複数の接続用電極は、電極パッド(ソース電極)2cと、電極パッド2cより平面視の大きさが小さい電極パッド(ゲート電極)2dと、を含んでいる。
【0030】
また、
図1〜3に示す封止体3は、4つの側面3aを有しており、そのうちの1つの側面3aから2本のアウターリード部1bが突出している。さらに、封止体3は、
図3に示すように、チップ搭載部1cの下面1cbが封止体3の下面3bに露出するように、チップ搭載部1cの一部(上面1ca側)、かつ半導体チップ2および複数のAlワイヤ4を封止している。
【0031】
本実施の形態の半導体装置は、パワーデバイス5であるため、
図2に示すように、封止体3の側面3aから突出する複数のリード部1(アウターリード部1b)は、ソースリード(S)1dとゲートリード(G)1eである。また、
図3に示すように半導体チップ2の裏面2bは、上述のようにドレイン(D)電極(裏面電極2e)となっており、したがって、封止体3の下面3bに露出するチップ搭載部1cの下面1cbは、ドレイン(D)電極である。
【0032】
なお、複数のアウターリード部1bのそれぞれは、インナーリード部1aと一体で形成されている。
図2に示すようにアウターリード部1bのソースリード1dは、インナーリード部1aのソースリード1dと一体で繋がっており、また、アウターリード部1bのゲートリード1eは、インナーリード部1aのゲートリード1eと一体で繋がっている。
【0033】
そして、ソースリード1dの幅広部1aaには、Alワイヤ4b(ゲートワイヤ)に比べて直径が大きなAlワイヤ4aが電気的に接続され、さらに、このAlワイヤ4aは、半導体チップ2の電極(ボンディング電極)のうちの電極パッド(ソース電極)2cに電気的に接続されている。
【0034】
すなわち、複数のリード部1のうちのソースリード1dには、ゲート電流に比べて大きな電流が印加されるため、ソースリード1dと、半導体チップ2の電極パッド(ソース電極)2cとが直径が大きなAlワイヤ4aを介して電気的に接続されている。
【0035】
一方、インナーリード部1aのゲートリード1eの幅広部1aaには、Alワイヤ4aより直径が小さなAlワイヤ4bが電気的に接続され、さらに、このAlワイヤ4bは、半導体チップ2の電極(ボンディング電極)のうちの電極パッド(ゲート電極)2dに電気的に接続されている。
【0036】
また、
図2に示すように、封止体3の側面3aには、チップ搭載部1cと繋がる吊りリード1fが突出している。
【0037】
なお、チップ搭載部1cやこのチップ搭載部1cと繋がる吊りリード1f、およびインナーリード部1aとアウターリード部1bとを含む複数のリード部1は、例えばCu(銅)を主成分とするCu合金から成る。また、本実施の形態では、半導体チップ2を接続する接合材は、例えば半田材6である。そして、ワイヤは、例えばAl(アルミニウム)等から成る。このとき、Alワイヤ4aの直径は、例えば300〜500μmであり、Alワイヤ4bの直径は、例えば125μm程度である。また、封止体3は、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂から成る。ただし、上述の寸法や各部材の材料は、上述のものに限定されるものではない。
【0038】
<半導体装置の製造方法>
図5は
図1に示す半導体装置の組立てに用いられるリードフレームの要部構造の一例を示す部分平面図、
図6は
図1に示す半導体装置の組立てのダイボンディング後の構造の一例を示す部分平面図、
図7は
図6のA−A線に沿って切断した構造の一例を示す部分断面図である。また、
図8は
図1に示す半導体装置の組立てのワイヤボンディング後の構造の一例を示す部分平面図、
図9は
図8のA−A線に沿って切断した構造の一例を示す部分断面図である。
【0039】
1.リードフレーム準備
まず、
図5に示すようなリードフレーム7を準備する。リードフレーム7には、
図1に示す1つのパワーデバイス5を形成可能な複数のデバイス領域7aが形成されている。各デバイス領域7aには、チップ搭載部1cと、チップ搭載部1cの横(近傍、周囲)に配置された複数のリード部1とが形成されている。本実施の形態のリードフレーム7では、各デバイス領域7aに、平面視が四角形の1つのチップ搭載部1cと、四角形のチップ搭載部1cの1つの辺に対応して配置された2本のリード部1および1本の吊りリード1fと、が含まれている。
【0040】
また、各リード部1と吊りリード1fにおいて、それぞれのチップ搭載部1c側と反対側の端部は、枠部7bに繋がっており、枠部7bによって支持されている。チップ搭載部1cは、枠部7bに繋がる吊りリード1fによって支持されている。
【0041】
そして、各リード部1のそれぞれのチップ搭載部1c側の端部には、リード幅が広くなった幅広部1aaが形成されている。この幅広部1aaは、ワイヤが接続される領域である。
【0042】
2.ダイボンディング
リードフレーム準備後、
図6および
図7に示すようにダイボンディングを行う。すなわち、リードフレーム7のチップ搭載部1cの上面1caに接合材(ダイボンド材)を介して半導体チップ2を搭載する。本実施の形態では、接合材として半田材6を用いる。これにより、半導体チップ2の裏面2bが半田材6によってチップ搭載部1cの上面1caに固着される。
【0043】
なお、半導体チップ2の主面2aには、
図6に示すように複数の電極パッド2c,2dが形成されている。
【0044】
3.ワイヤボンディング
ダイボンディング後、
図8および
図9に示すようにワイヤボンディングを行う。ここでは、半導体チップ2の主面2aの電極パッド2c,2dと、それぞれの電極パッド2c,2dに対応するインナーリード部1aと、をAlワイヤ4によって電気的に接続する。
【0045】
詳細には、半導体チップ2の電極パッド2cと、一方のインナーリード部1a(
図2に示すソースリード1d)とをAlワイヤ4aで電気的に接続し、さらに半導体チップ2の電極パッド2dと、他方のインナーリード部1a(
図2に示すゲートリード1e)とをAlワイヤ4bで電気的に接続する。
【0046】
なお、本実施の形態のワイヤボンディングでは、直径が大きなAlワイヤ4aを扱うため、ボンディングツールとして、後述する
図10に示すウェッジ8を用いたウェッジボンディングを採用する。
【0047】
本ワイヤボンディング工程では、まず、
図2に示すソース電極(電極パッド2c)のワイヤボンディングを行う。つまり、ウェッジボンディングにより、半導体チップ2の電極パッド(ソース電極)2cと、
図2に示すソースリード1d(インナーリード部1a)と、を直径が大きなAlワイヤ4aによって電気的に接続する。
【0048】
その際、Alワイヤ4aのインナーリード部1a側(2nd側)の接続は、インナーリード部1aの幅広部1aaに対して行う。
【0049】
そして、ソース電極のワイヤボンディングを行った後、ゲート電極(電極パッド2d)のワイヤボンディングを行う。すなわち、ウェッジボンディングにより、半導体チップ2の電極パッド(ゲート電極)2dと、
図2に示すゲートリード1e(インナーリード部1a)と、をAlワイヤ4aに比べて直径が小さなAlワイヤ4bによって電気的に接続する。
【0050】
その際、Alワイヤ4bのインナーリード部1a側(2nd側)の接続は、ソース電極の場合と同様にインナーリード部1aの幅広部1aaに対して行う。
【0051】
次に、本実施の形態のワイヤボンディング(ウェッジボンディング)の詳細について説明する。なお、ここでは、直径が大きなAlワイヤ4aをウェッジボンディングする場合を一例として取り上げて説明するが、直径が小さなAlワイヤ4bについてもAlワイヤ4aと同様のボンディング方法である。
【0052】
図10は本実施の形態のワイヤボンディングで用いるウェッジボンダの駆動部の構造の一例を示す概略図、
図11は
図1に示す半導体装置の組立てのワイヤボンディング工程における1stボンド後の構造の一例を示す部分平面図、
図12は
図11に示す構造をウェッジ動作と合わせて示す部分概略図である。また、
図13は
図1に示す半導体装置の組立てのワイヤボンディング工程における2ndボンド後の構造の一例を示す部分平面図、
図14は
図13に示す構造をウェッジ動作と合わせて示す部分概略図、
図15は
図1に示す半導体装置の組立てのワイヤボンディング工程におけるワイヤカット時の構造の一例を示す部分平面図である。さらに、
図16は
図15に示す構造をウェッジ動作と合わせて示す部分概略図、
図17は
図1に示す半導体装置の組立てのワイヤボンディング工程におけるワイヤカット後の構造の一例を示す部分平面図、
図18は
図17に示す構造をウェッジ動作と合わせて示す部分概略図である。
【0053】
まず、
図10を用いて本実施の形態のウェッジボンディングで用いられるウェッジボンダの駆動部の構造の一例について説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施の形態のウェッジボンダには、ウェッジ8と同一の第1アクチュエータ(駆動部)11にワイヤを切断するためのカッター(カッター部材)9が取り付けられており、さらに、カッター9の下降時の停止位置を決めるストッパー(ストッパー部材)10が設けられている。
【0055】
ストッパー10は、ウェッジ8およびカッター9と同一の第1アクチュエータ11に取り付けられている。
【0056】
つまり、
図10に示すウェッジボンダでは、ウェッジ8を上下動させる第1アクチュエータ11に、ワイヤの切断を行うカッター9と、カッター9の下降時の停止位置を決めるストッパー10とが取り付けられている。
【0057】
そして、カッター9とストッパー10は、ウェッジ8と一体となって動くように設けられ、かつウェッジ8と同一の第1アクチュエータ(駆動部)11に可動自在に設けられている。
【0058】
このようにカッター9とストッパー10が、ウェッジ8と同一の第1アクチュエータ(駆動部)11に取り付けられていることにより、装置サイズをコンパクトにすることができる。また、それぞれの動作の制御系を簡略化することができる。さらに、水平方向(X−Y系)に関しては、ウェッジ8とカッター9とストッパー10とを一体となって移動させることができる。
【0059】
また、カッター9とストッパー10は、両者が一体となって移動できるように、ウェッジ8に取り付けられた第2アクチュエータ12に設けられている。これにより、カッター9とストッパー10は、ウェッジ8と一体となって移動することができ、かつZ系(垂直方向)に関しては、ウェッジ8とは別に独立して移動することができる。
【0060】
上記構造により、第1アクチュエータ11の駆動によってウェッジ8が上下動するのに伴ってカッター9およびストッパー10も一緒に上下動する。さらにウェッジ8に取り付けられた第2アクチュエータ12の駆動により、ウェッジ8を固定させた状態でカッター9およびストッパー10を上下動させることができる。
【0061】
これにより、本実施の形態におけるウェッジボンダは、リード部1への2ndボンド終了後に、ウェッジ8をリード部1上から退避させた状態でカッター9を下降させることにより、Alワイヤ4aを切断するものであり、切断時に、カッター9の下降に応じて下降するストッパー10がリード部1に突き当たった時点でカッター9によるAlワイヤ4aの切断を終了する。
【0062】
つまり、カッター9の下降を停止させるストッパー部材として、ストッパー10が設けられており、カッター9の下降と一緒に下降するストッパー10がリード部1に突き当たるとカッター9の下降も停止し、そこでカッター9によるワイヤ切断を終了する。
【0063】
なお、ウェッジ8とカッター9とストッパー10は、それぞれが独立して移動可能なように取り付けられていてもよい。
【0064】
また、
図10に示すように、ウェッジ8が半導体チップ2から遠ざかる第1方向Pにおいて、ストッパー10は、カッター9をウェッジ8とで挟むように配置されている。別の表現をすると、第1方向Pにおいて、ウェッジ8とストッパー10との間にカッター9が配置される。さらに別の表現をすると、ストッパー10は、カッター9より第1方向Pと反対の第2方向Q側に配置されている。
【0065】
また、ストッパー10の下端部(下面)10aおよびカッター9の下端部(刃先)9aは、ウェッジ8の下端部(下面)8aより高い位置に配置されている。
【0066】
さらに、カッター9の下端部(刃先)9aは、ストッパー10の下端部10aより下方に向けて僅かに突出している。
【0067】
また、ストッパー10の下端部(下面)10aの第1方向Pに沿った方向の長さは、ウェッジ8の下端部(下面)8aの第1方向Pの長さより短くなっている。
【0068】
次に、本ワイヤボンディング工程の1stボンドから2ndボンドにおけるツール動作の概略手順について説明する。
【0069】
図11および
図12に示すように、1stボンドを行う。すなわち、半導体チップ2の電極パッド2cに対してウェッジボンディングを行う。ここでは、半導体チップ2の電極パッド2cとAlワイヤ4aとをウェッジ8を用いて電気的に接続する。
【0070】
この時、
図10に示すように、ストッパー10の下端部(下面)10aおよびカッター9の下端部(刃先)9aは、ウェッジ8の下端部(下面)8aより高い位置に配置されている。これにより、ウェッジ8によってAlワイヤ4aを半導体チップ2の電極パッド2cに対して押さえ付けてワイヤボンディングを行っている最中、カッター9の下端部(刃先)9aおよびストッパー10の下端部(下面)10aが半導体チップ2の主面2aに接触することを阻止することができる。
【0071】
すなわち、カッター9の下端部(刃先)9aおよびストッパー10の下端部(下面)10aが、ウェッジ8の下端部(下面)8aより上方に引っ込んだ状態であるため、ウェッジボンディング中にカッター9の刃先が半導体チップ2の表面(主面2a)に接触することを防止できる。
【0072】
これにより、1stボンド時(半導体チップ2へのウェッジボンディング時)に、カッター9やストッパー10によって半導体チップ2に傷を付けることを防止できる。
【0073】
1stボンド終了後、
図13および
図14に示すように、2ndボンドを行う。ここでは、ウェッジ8によりリード部1にAlワイヤ4aを押し付けてAlワイヤ4aとリード部1とを電気的に接続する。具体的には、
図13に示すように、インナーリード部1aの幅広部1aaにAlワイヤ4aを接続する。
【0074】
2nd側のワイヤ接続後、
図15および
図16に示すように、カッター9によってAlワイヤ4aを切断する。ここでは、ウェッジ8をリード部1(インナーリード部1aの幅広部1aa)上から退避させた状態で、カッター9を下降させてAlワイヤ4aを切断し、カッター9と一緒に下降するストッパー10がリード部1に突き当たった時点でカッター9の下降も停止する。カッター9の下降が停止することによりAlワイヤ4aの切断も完了となる。
【0075】
ワイヤ切断後、
図17および
図18に示すように、ウェッジ8、カッター9、ストッパー10およびAlワイヤ4aを上昇させ、リード部1から退避させる。これにより、半導体チップ2の電極パッド2cとリード部1とがAlワイヤ4aで接続される。
【0076】
次に、本ワイヤボンディング工程の2ndボンドからワイヤ切断におけるツール動作の詳細について説明する。
【0077】
図19は
図1に示す半導体装置の組立てにおけるウェッジボンディング時のツール動作の一例を示す概略図、
図20は
図1に示す半導体装置の組立てにおけるウェッジボンディング時のツール動作の一例を示す概略図、
図21は
図1に示す半導体装置の組立てにおけるウェッジボンディング時のツール動作の一例を示す概略図である。また、
図22は
図21のB矢視の構造の一例を示す概略図、
図23は
図1に示す半導体装置の組立てにおけるウェッジボンディング時のツール動作の一例を示す概略図、
図24は
図23のB矢視の構造の一例を示す概略図、
図25は
図1に示す半導体装置の組立てにおけるウェッジボンディング後のワイヤ切断によって得られる効果の一例を示す概略図である。
【0078】
1stボンド終了後、ウェッジ8を移動させて、
図19に示すように、ウェッジ8をインナーリード部1aの幅広部1aa上に移動させる。なお、ウェッジ8の移動中、およびウェッジ8をインナーリード部1aの幅広部1aa上に配置した際に、カッター9の下端部(刃先)9aおよびストッパー10の下端部(下面)10aは、ウェッジ8の下端部(下面)8aより高い位置に配置されているため、Alワイヤ4aにカッター9やストッパー10が接触することを防止できる。
【0079】
その結果、Alワイヤ4aが損傷することを低減でき、パワーデバイス5の信頼性を向上させることができる。
【0080】
ウェッジ8をインナーリード部1aの幅広部1aa上に移動させた後、
図20に示すように、
図10に示す第1アクチュエータ11の駆動により、ウェッジ8を下降させ、さらにウェッジ8によりAlワイヤ4aを幅広部1aaに押し付けてAlワイヤ4aとインナーリード部1aの幅広部1aaとを接続する。なお、本実施の形態のウェッジボンディングでは、例えば、超音波と荷重を印加してボンディングを行う。
【0081】
なお、ボンディング中においても、カッター9の下端部(刃先)9aおよびストッパー10の下端部(下面)10aは、ウェッジ8の下端部(下面)8aより高い位置に配置されているため、ボンディング中にAlワイヤ4aにカッター9やストッパー10が接触することを防止でき、これにより、Alワイヤ4aが損傷することを低減でき、パワーデバイス5の信頼性を向上させることができる。
【0082】
本ウェッジボンディングにより、
図21に示すように、幅広部1aa上にAlワイヤ4aの接続部4cが形成され、この接続部4cにおいてAlワイヤ4aがインナーリード部1aの幅広部1aaに接続される。
【0083】
Alワイヤ4aをインナーリード部1aの幅広部1aaに接続した後、一端、ウェッジ8、カッター9およびストッパー10をAlワイヤ4aから離れる程度に僅かに上昇させ、さらに上記上昇を維持した状態で第1方向Pに移動させ、ウェッジ8をリード部1上から退避させる。ウェッジ8を退避させた後、
図10に示す第1アクチュエータ11の駆動により、ウェッジ8を下降させ、Alワイヤ4aに僅かに接触する位置でウェッジ8を停止させる。その後、第2アクチュエータ12により、カッター9とストッパー10とを一緒に下降させ、
図21に示すようにカッター9によってAlワイヤ4aの切断を開始する。
【0084】
このAlワイヤ4aの切断中も、ウェッジ8はAlワイヤ4aに接触している(僅かな荷重を付与してAlワイヤ4aをおさえている)。なお、
図22に示すように、ストッパー10の下端部10aを含む端部には、二股に分かれた脚部10bが設けられており、ワイヤ切断中においてもストッパー10は、Alワイヤ4aの接続部4cに接触しない形状となっている。
【0085】
この状態でストッパー10の脚部10bの下端部10aがリード部1の幅広部1aaに突き当たるまでカッター9およびストッパー10を下降させる。そして、
図23および
図24に示すように、ストッパー10がリード部1の幅広部1aaに突き当たった時点でカッター9の下降も停止し、これにより、ワイヤ切断を終了する。
【0086】
なお、
図23に示すように、カッター9の下端部(刃先)9aは、ストッパー10の下端部10aより下方に向けて僅かに突出しているため、ストッパー10の下端部10aがリード部1の幅広部1aaに突き当たるのよりも僅かに早くカッター9の下端部(刃先)9aがインナーリード部1aの幅広部1aaに突き当たっている。
【0087】
これにより、カッター9の下端部(刃先)9aが幅広部1aaに僅かに切り込み(食い込み)、幅広部1aaにカッター9の下端部(刃先)9aによる小さな傷(刃跡)が形成される。つまり、カッター9の下端部(刃先)9aが幅広部1aaに確実に切り込むまでカッター9を下降させることにより、Alワイヤ4aを確実に切断することができ、Alワイヤ4aを切り残すことを防止することができる。
【0088】
さらに、作業者は、幅広部1aaに、カッター9の下端部(刃先)9aによって小さな傷(刃跡)が形成されていることを確認することにより、Alワイヤ4aの切り残しの発生を防ぐことができる。
【0089】
また、
図24に示すように、ストッパー10の下端部10aを含む端部の形状は、Alワイヤ4aの接続部4cを跨ぐように両側に配置された脚部10bとなっている。言い換えると、ストッパー10の端部には、Alワイヤ4aの接続部4cを跨ぐように両側に配置された脚部10bが設けられており、2つの脚部10bの先端がストッパー10の下端部10aとなっている。
【0090】
これにより、2つに分かれた脚部10bによって、ストッパー10がAlワイヤ4aの幅広部1aaとの接続部4cを跨ぐように、ストッパー10を幅広部1aaに突き当てることができる。
【0091】
その結果、ストッパー10の下端部10aがリード部1の幅広部1aaに突き当たった際に、ストッパー10がAlワイヤ4aの接続部4cに接触しないようにすることができ、接続部4cが損傷することを防止できる。
【0092】
また、
図23に示すように、カッター9によるワイヤ切断時、ウェッジ8は、リード部1(インナーリード部1aの幅広部1aa)から第1方向Pに向かって退避して待機しており、この時、ウェッジ8の直下には空間部13が形成されている。そして、
図21に示すように、カッター9によるワイヤ切断時には、ウェッジ8の下端部8aは、Alワイヤ4aに接触していることが好ましい。すなわち、ワイヤ切断時に、ウェッジ8はAlワイヤ4aを軽く押圧しており、ウェッジ8が小さな荷重でAlワイヤ4aを押圧した状態でカッター9によるワイヤ切断が行われることが好ましい。
【0093】
これにより、
図21のR部に示すように、Alワイヤ4aに対してウェッジ8の下端部8aの形状に沿った癖を付けることができ、
図18に示すように、次工程に向けてウェッジ8が上昇した際に、ウェッジ8にAlワイヤ4aを接触させた状態で次工程に向かうことができる。
【0094】
その結果、次工程で1stボンドを行う際に、空打ち(ウェッジ8の下端部8aから外れてAlワイヤ4aが無い状態でワイヤボンディング動作が行われること)が発生することを防止できる。
【0095】
リード部1に対してのワイヤ接続終了後、まず、カッター9とストッパー10が一緒に上昇してリード部1から離脱・退避し、遅れてウェッジ8が上昇し、
図18に示すように、リード部1から、ウェッジ8、カッター9、ストッパー10およびAlワイヤ4aが上方に退避する。
【0096】
その後、同様のウェッジボンディング方法により、所望の電極パッド2cおよび電極パッド2dに対してこれらに対応するリード部1とのワイヤボンディングを実施し、ワイヤボンディング工程を完了する。
【0097】
4.樹脂封止
図26は
図1に示す半導体装置の組立ての樹脂封止後の構造の一例を示す部分平面図、
図27は
図26のA−A線に沿って切断した構造の一例を示す部分断面図である。
【0098】
ワイヤボンディング後、
図26および
図27に示すように樹脂封止を行う。ここでは、
図27に示すように、封止用樹脂によって封止体3を形成し、半導体チップ2、半田材6、Alワイヤ4、インナーリード部1aおよびチップ搭載部1cの一部を封止体3によって封止する。この時、チップ搭載部1cの下面1cbが封止体3の下面3bに露出するように樹脂封止を行う。
【0099】
なお、封止用樹脂は、例えば、熱硬化性のエポキシ系樹脂である。
【0100】
5.めっき形成
樹脂封止後、めっき形成を行う。
【0101】
めっき形成工程では、半田めっき等のめっき膜を
図3に示す複数のアウターリード部1bの表面、およびチップ搭載部1cの下面1cbの表面に形成する。
【0102】
6.マーキング
めっき形成後、マーキングを行う。
【0103】
マーキング工程では、例えば封止体3の表面に所望のマーク(捺印)を形成する。上記マークは、例えば、製品の品種や型番等であり、レーザー照射等を行って上記マークを形成する。
【0104】
7.リード切断(個片化)
図28は
図1に示す半導体装置の組立ての切断・成形後の構造の一例を示す部分平面図、
図29は
図28のA−A線に沿って切断した構造の一例を示す部分断面図である。
【0106】
本リード切断工程では、
図5に示すリードフレーム7の枠部7bから
図2に示す各アウターリード部1bおよび吊りリード1fを切り離し、さらに
図3に示すように各アウターリード部1bを所定の形状(ここでは、例えばガルウィング状)に曲げ形成する。
【0107】
以上により、パワーデバイス5の組立てを完了する。
【0108】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、ウェッジ8によるワイヤ接続後にAlワイヤ4aを切断する際に、
図21に示すように、ウェッジ8をリード部1(インナーリード部1aの幅広部1aa)上から後方(第1方向P)に退避させた状態で、カッター9を下降させてAlワイヤ4aを切断する。この時、カッター9と一緒に下降するストッパー10がリード部1に突き当たった時点でカッター9の下降も停止し、そこで、カッター9によるAlワイヤ4aの切断も完了となる。
【0109】
つまり、本実施の形態では、ウェッジ8をリード部1上から退避させた状態でウェッジボンディング後のAlワイヤ4aの切断を行うため、リード部1にウェッジ8を着座させるスペースを確保する必要がなくなる。
【0110】
したがって、リード部1、特にインナーリード部1aの幅広部1aaの第1方向Pへの長さを短くすることができる。これにより、
図1に示すパワーデバイス5の外形サイズを小さくしてパワーデバイス5の小型化を図ることができる。
【0111】
本願発明者は、パワーデバイス5の小型化を検討したところ、インナーリード部1aの幅広部1aaの第1方向Pの長さを短くしようとすると、ウェッジ8でカッター9の停止位置を決定してワイヤを切断することができなくなることに気付いた。つまり、パワーデバイス5の小型化によりインナーリード部1aの幅広部1aaの第1方向Pの長さを短くしようとすると、ウェッジ8のリード部1上での着座スペースが確保できず、ワイヤ切断が行えないことに気付いた。
【0112】
ウェッジ8の押さえ長さを小さくすることも考えられるが、その場合、ワイヤとリード部1との接続部の面積が小さくなり、ON抵抗が増加することにつながる。
【0113】
そこで、本実施の形態のように、ウェッジ8とは別のツール(ストッパー10)でカッター9の下降時の停止位置を決定する技術思想に想到した。つまり、ウェッジ8をリード部1上から退避させた状態でウェッジボンディング後のAlワイヤ4aの切断を行うため、リード部1にウェッジ8を着座させるスペースを確保する必要がなくなり、その結果、リード部1の第1方向Pへの長さを短くしてパワーデバイス5の小型化を図るというものである。
【0114】
また、リード部1の第1方向Pへの長さを短くすることができるため、チップ搭載部1cやチップサイズを大きくすることが可能になり、パワーデバイス5の特性を向上させることができる。
【0115】
なお、本実施の形態では、
図24に示すように、ストッパー10は、その脚部10bがAlワイヤ4aのリード部1上での接続部4cを跨がるようにリード部1に突き当たるため、Alワイヤ4aにダメージが入らないようにすることも考慮している。
【0116】
また、
図21に示すように、ウェッジ8が
図10に示す半導体チップ2から遠ざかる第1方向Pにおいて、ストッパー10は、カッター9をウェッジ8とで挟むように配置されている。つまり、第1方向Pにおいて、ウェッジ8とストッパー10との間にカッター9が配置される。
【0117】
これにより、リード部1の第1方向Pの長さとしては、カッター9およびストッパー10のそれぞれの第1方向Pの幅の合計程度に納めることができる。さらに、ストッパー10の脚部10bがAlワイヤ4aの接続部4cを跨がるように形成されているため、接続部4cの上方にストッパー10を配置することができる。
【0118】
その結果、
図25に示すように、リード部1の第1方向Pの長さUを、ウェッジ8のツール長さFLより僅かに長い程度まで短くすることができる。
【0119】
ここで、それぞれの部材の長さの一例を示すと、例えば、ウェッジ8の第1方向Pのツール長さFLは、FL=0.5mm、カッター9の第1方向Pの幅Tは、T=0.1〜0.2mm、ストッパー10の第1方向Pの幅Sは、S=0.3〜0.4mm、リード部1の第1方向Pの長さUは、U=0.55〜0.6mmである。
【0120】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明はこれまで記載した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0121】
例えば、上記実施の形態では、ウェッジ8、カッター9およびストッパー10を上下動させる駆動部としてアクチュエータを採用した場合を説明したが、ウェッジ8、カッター9およびストッパー10等を上下動させる駆動部としてエアシリンダ等を採用してもよい。