【実施例】
【0028】
(第1実施例)
図1及び
図2を参照し、回路モジュール10について説明する。
図2は、
図1の部分拡大図であり、電極4と絶縁層8が積層されている部分を示している。回路モジュール10は、回路基板6と、絶縁層8と、配線12を備えている。電極4は、回路基板6の表面に配置されている。回路基板6は、シリコン基板内に回路(図示省略)を作りこんだものである。電極4は、第1金属層20と第2金属層22を含む積層電極である。第1金属層20の材料はアルミニウムである。第1金属層20は、回路基板6に形成されている回路に接続している。第1金属層20の厚みT20は1μmである。アルミニウムは、特許請求の範囲に記載の難還元性金属の一例である。第2金属層22の材料はニッケルである。第2金属層22の厚みT22は60nmである。
【0029】
回路基板6の表面に、絶縁層8が配置されている。絶縁層8の材料はポリイミドである。絶縁層8の厚みT8は10μmである。絶縁層8には貫通孔14が設けられている。貫通孔14は、絶縁層8の表面から裏面に向けて伸びている。絶縁層8の表面に、配線12が設けられている。配線12は、銅粒子を焼結させたものであり、厚みは15μm(平均的な厚み)である。詳細は後述するが、配線12は、銅ペーストを絶縁層8上に印刷し、加熱処理を行って硬化させたものである。配線12と電極4(第2金属層22)は、導電体12aによって接続されている。導電体12aは、配線12を形成するときに、銅ペーストの一部が貫通孔内に充填されたものである。そのため、導電体12aの材料は配線12と同一であり、導電体12aは配線12の一部と捉えることができる。
【0030】
次に、
図5を参照し、回路モジュール10の製造方法について説明する。まず、電極作製工程(ステップS2)について説明する。回路が作りこまれたシリコン基板上にシリコン酸化膜を300nm形成する。なお、
図1は、シリコン酸化膜の図示を省略している。その後、スパッタ法を用いて、シリコン基板上に第1電極層(アルミニウム),第2電極層(ニッケル)を連続して形成する。その後、フォトリソグラフィー法を用いてレジストパターニングを行い、ウェットエッチング法を用いて不要な電極の除去を行う。これにより、所望の電極パターンが得られる。その後、レジストを剥離,除去することにより、パターニングされたニッケル/アルミニウム積層電極が得られる。
【0031】
次に、絶縁層作製工程(ステップS4)について説明する。電極が形成された回路基板上に、スクリーン印刷法を用いて、絶縁ペースト層を印刷する。絶縁ペーストとして、高耐熱コーティング剤HIMAL HP−300ペースト(日立化成株式会社製)を用いた。このときに、所望の位置(電極が形成されている位置)に貫通孔が形成されるように印刷を行う。その後、N2ガス中で300℃,1時間の熱処理を行うことにより、貫通孔を備えた絶縁層が得られる。貫通孔には、電極(第2電極層)の一部が露出している。
【0032】
次に、配線作製工程(ステップS6,8,10)について説明する。絶縁層が形成された回路基板上に、スクリーン印刷法を用いて、銅ペースト層を印刷する(ステップS6)。銅ペーストとして、平均粒径100nmの銅ナノ粒子を含む銅ナノ粒子ペーストNCU−09(大研化学工業株式会社製)に、平均粒径1.8μmの超高圧水アトマイズ球状銅微粉PF−1F(エプソンアトミックス株式会社製)を加えたものを用いた。なお、PF−1F(銅粉粒子)は、銅ナノ粒子と銅粉粒子の合計に対する銅粉粒子の重量比が0.5となるように調整した。また、スクリーン印刷は、貫通孔に露出するニッケル層(電極)と銅ナノ粒子が接触するように実施した。その後、N2/5%O2混合ガス中(酸化雰囲気)で300℃,30分の熱処理を行った(ステップS8)。その後、N2/3%H2混合ガス中(酸化雰囲気)で300℃,30分の熱処理を行った(ステップS10)。
【0033】
以下、第2実施例の回路モジュール10a(
図3)、第3実施例の回路モジュール10b(
図4)について説明する。なお、
図3及び
図4では、回路モジュールの一部のみ示している。具体的には、
図3及び
図4は、電極と絶縁層の積層部分を示しており、回路モジュール10の
図2に示す部分に相当する。回路モジュール10a,10bについて、回路モジュール10と同一の構造については同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。
【0034】
(第2実施例)
図3に示すように、回路モジュール10aでは、第1金属層20と第2金属層22の間に、第3金属層24が設けられている。第3金属層24の材料はタンタルである。また、第3金属層24の厚みは100nmである。回路モジュール10aでは、第1金属層20,第2金属層22及び第3金属層24によって、電極42が形成されている。第3金属層24を設けることにより、配線12(
図1を参照)に含まれる銅が第1金属層(アルミニウム層)20に拡散することを抑制することができる。なお、第3金属層24の材料として、窒化タンタルを用いることもできる。窒化タンタルを用いる場合、第3金属層24の厚みを変更してもよい(例えば30nm)。窒化タンタルを用いることにより、第1金属層20と第2金属層22の密着性が向上するとともに、配線12に含まれる銅が第1金属層20に拡散することを抑制することができる。
【0035】
(第3実施例)
図4に示す回路モジュール10bは、回路モジュール10aの変形例である。回路モジュール10bは、第1金属層20と第2金属層22と第3金属層26によって、電極44が形成されている。第3金属層26は、第1層26aと第2層26bを有している。すなわち、回路モジュール10bは、第3金属層26の構造が回路モジュール10aの第3金属層24と異なる。第1層26aの材料はタンタルであり、第2層の材料は窒化タンタルである。回路モジュール10bは、第1金属層20と第2金属層22の密着性が向上するとともに、配線12に含まれる銅が第1金属層20に拡散することを抑制することができる。
【0036】
(実験例)
回路モジュールについて、電極の構造が異なる試料を作製し、配線と電極の接触抵抗の測定を行った。なお、接触抵抗は、クロスブリッジケルビン抵抗法を用いて測定した。以下、測定した試料の特徴を記す。
試料1:回路モジュール10と同一(第2金属層の厚み60nm)。
試料2:試料1の第2金属層の厚みを10nmに変更した。
試料3:試料1の第2金属層の厚みを40nmに変更した。
試料4:試料1の第2金属層の厚みを300nmに変更した。
試料5:試料1の第2金属層の厚みを500nmに変更した。
試料6:試料1の第2金属層の厚みを1000nmに変更した。
試料7:回路モジュール10aと同一(第3金属層が厚み100nmのタンタル)。
試料8:試料7の第3金属層の材料を窒化タンタル、厚みを30nmに変更した。
試料9:試料1に対して、第2金属層を省略し、第1金属層と配線を直接接触させた。
試料10:試料7に対して、第2金属層を省略し、第3金属層と配線を直接接触させた。
試料11:試料8に対して、第2金属層を省略し、第3金属層と配線を直接接触させた。
試料12:試料1の第2金属層の材料をチタンに変更した。
試料13:試料1の第2金属層の材料を窒化チタンに変更した。
【0037】
図6は、試料1から13について、各試料の電極構造と接触抵抗を示している。なお、
図6は、各試料が上記式(1)〜(3)を満足するか否かも併せて記している。各式(1)〜(3)を満足する試料に○を付し、満足しない試料に×を付している。
【0038】
試料1〜9を比較すると、第2金属層を設けた試料(試料1〜8)は、いずれも、試料9に対して良好な結果(接触抵抗が小さい)を示している。そのなかでも、試料1,3〜5,7及び8は接触抵抗の値が500Ωμm2以下を示しており、低抵抗であることが確認された。特に、試料1,3,4,7及び8は、接触抵抗の値が300Ωμm2以下を示しており、特に低抵抗であることが確認された。なお、試料2は、第2金属層の厚みが10nmと薄いため、第1金属層の酸化を防止する効果が十分に得られなかったと推測される。また、試料2は、第2金属層の厚みが薄いので、第1金属層と第2金属層の界面において剥離が生じることが起こり得る。第1金属層と第2金属層の界面で剥離が生じると、結果として接触抵抗が増大する。すなわち、第2金属層の厚みが薄すぎると、配線と電極の接触抵抗が増大することが起こり得る。その結果、回路モジュールの製造歩留まりが低下する。第1金属層と第2金属層の界面剥離を防止するためには、第2金属層の厚みを40nmとすればよい。電極と配線の接触抵抗を小さく維持し、回路モジュールの製造歩留まりを良好に維持するという観点より、第2金属層の厚みT1は、40nm以上であることが好ましい。すなわち、T1≧40nm(式1)を満足することが好ましい。
【0039】
また、試料6は、第2金属層の厚みが1000nmと厚いため、第2金属層自体の抵抗により、接触抵抗が増大したと推測される。また、試料6は、絶縁層の厚み(10μm)に対して、第2金属層の厚み(1000nm)が厚い。第2金属層の厚みが厚くなるほど、第2金属層の表面粗さが増大する。その結果、絶縁層に局所的に所望の厚みより薄い部分が形成されることがある。絶縁層が薄くなると、回路基板の耐圧が低下する。試料1と試料6について電気的に絶縁された絶縁層上下の電極配線間の平均耐圧を測定した結果、試料6は試料1に対して80%以下の耐圧しか得られなかった。電極と配線の接触抵抗を小さく維持し、回路基板の耐圧が低下することを防止するという観点より、絶縁層の厚みT2に対する第2金属層の厚みT1は、0.05以下であることが好ましい。すなわち、T1/T2≦0.05(式3)を満足することが好ましい。
【0040】
なお、試料7,8に示すように、第1金属層と第2金属層の間に第3金属層を設けても、良好な接触抵抗が得られることが確認された。なお、試料9〜11から明らかなように、第2金属層を省略し、第1金属層と配線を直接接触させた試料は、接触抵抗が極めて高い。これは、配線作製工程において銅ペーストを酸化雰囲気で加熱処理する際に、第1金属層(アルミニウム)の表面が酸化され、その後の還元雰囲気の加熱処理においても還元されず、第1金属層の表面に高抵抗の酸化膜が残存していることを示している。なお、試料9〜11は、第2金属層を省略しているので、式1及び3を満足していない。また、第2金属層の材料として、チタン、酸化チタンを用いても、接触抵抗は極めて高い結果となった。すなわち、第2金属層は、酸化されにくいニッケルを含むことが必要であることが確認された。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。