【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、上層用塗料の流動停止時間t
cU、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の各塗料の収縮率、及び各塗料の収縮率差の絶対値の算出は以下の方法により行なった。
【0060】
<上層用塗料の流動停止時間t
cUの算出>
ステンレス鋼板(40mm×50mm×0.5mm)上に焼付け後の膜厚が100μmとなるように上層用塗料をバーコータを用いて塗布し、室温で10分間放置した後、試料を電場ピックアップ粘度計(京都電子工業(株)製、型番RM−01T)にセットした。針−試料表面間距離:100μm、電圧:5V、電圧オン時間:1.0秒間、電圧オフ時間:1.0秒間の測定条件で直流電圧のオンとオフを切替えながら、試料を室温から上層用塗料の標準焼付け温度(140℃)まで上層用塗料の標準昇温速度(20℃/min)で加熱した。この間の試料表面の変形を、レーザー光を照射して試料表面で反射されるレーザー光の強度を検出電圧として0.01秒間の測定ピッチで測定した。
図1は、このとき得られるオシロ波形の一例である。
【0061】
図1に示すように、得られたオシロ波形においては、m+1秒間にm個の検出電圧の振れが観察される。これらm個の検出電圧の振れの中で、振れ幅が最大(a
max)となる時間をt
maxとし、t
max以降の時間範囲において、振れ幅がa
maxの5%まで小さくなった時間を上層用塗料の流動停止時間t
cU(t
cU>t
max)とした。
【0062】
<各塗料の収縮率、収縮率差及びその和の算出>
秤量したステンレス箔(150mm×30mm×0.5mm)に、上層用塗料、中間層用塗料、又は下層用塗料をそれぞれ熱処理後の膜厚が積層塗膜での目標膜厚となるようにエアスプレー塗装し、標準焼付け温度(140℃)で塗膜の焼付けを開始した。その後、前記上層用塗料の流動停止時間t
cUまで塗膜を焼付け(焼付け時間:t
cU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量した。さらに、焼付け開始からの総焼付け時間が塗料の標準焼付け時間t
b(30分)となるように、塗料の標準焼付け温度(140℃)で塗膜を焼付け(後段の焼付け時間:t
b−t
cU)、試料(ステンレス箔+塗膜)を秤量した。
【0063】
上層用塗料、中間層用塗料及び下層用塗料の収縮率ω
U、ω
I及びω
Lは、下記式(1):
ω
i=100(Y
i−Z
i)/(Z
i−X) (1)
(式中、ω
iは硬化反応の揮発性生成物と高沸点溶媒等の残存溶媒の揮発に起因する塗料の収縮率、Xはステンレス箔の質量(g)を表し、Y
iは塗料の標準焼付け温度で前記流動停止時間t
cUまで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、Z
iは塗料の標準焼付け温度で塗料の標準焼付け時間t
bまで焼付けた後の試料(ステンレス箔+塗膜)の質量(g)を表し、iはU(上層用塗料)、I(中間層用塗料)又はL(下層用塗料)である。)
により算出した。
【0064】
また、第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と上層用塗料の収縮率ω
Uとの差の絶対値(|Δω
1|)、及び第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2と第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値(|Δω
2|)は、下記式(2−1)及び(2−2):
|Δω
1|=|ω
A1−ω
U| (2−1)
|Δω
2|=|ω
A2−
ωA1| (2−2)
により算出した。
【0065】
(合成例1)溶剤型クリア用アクリル樹脂R−1の調製
まず、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂製造用反応容器に、ソルベッソ100を235質量部仕込み、撹拌しながら130℃に昇温した。
【0066】
次に、この反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル95質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル120質量部、スチレン150質量部、メタクリル酸グリシジル135質量部、重合開始剤(日油(株)製、「パーキュアO」)40質量部の混合物を3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、130℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、パーキュアOを10質量部添加し、更に130℃で2時間撹拌を継続して反応させた後、室温まで冷却し、水酸基価94、エポキシ価107、不揮発分70質量%のアクリル樹脂R−1を得た。
【0067】
(合成例2)溶剤型クリア用アクリル樹脂R−2の調製
まず、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂製造用反応容器に、ソルベッソ100を310質量部仕込み、撹拌しながら130℃に昇温した。
【0068】
次に、この反応容器に、メタクリル酸ブチルが125質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシルが225質量部、無水マレイン酸が150質量部、ソルベッソ100が50質量部、重合開始剤(日油(株)製、「パーキュアO」)が100質量部の混合物を3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、130℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、パーキュアOを10質量部添加し、更に130℃で2時間撹拌を継続して反応させた後、60℃まで冷却した。冷却後、トリエチルアミン4.6質量部、メタノール73.5質量部を添加し、60℃で12時間撹拌を継続して反応させた。その後、室温まで冷却し、酸価172、不揮発分61質量%のアクリル樹脂R−2を得た。
【0069】
(合成例3)溶剤型クリア用アクリル樹脂R−3の調製
まず、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂製造用反応容器に、ソルベッソ100を195質量部、酢酸ブチル65質量部を仕込み、撹拌しながら130℃に昇温した。
【0070】
次に、この反応容器に、メタクリル酸ブチル162.5質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル149.5質量部、スチレン78質量部、アクリル酸イソボルニル260質量部、重合開始剤(日油社製、「パーキュアO」)52質量部の混合物を3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、130℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、パーキュアOを13質量部を添加し、更に130℃で2時間撹拌を継続して反応させた後、酢酸ブチル75質量部を添加し、室温まで冷却し、水酸基価90、不揮発分65質量%のアクリル樹脂R−3を得た。
【0071】
(合成例4)水性中塗り用アクリルエマルションR−4の調製
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル31.5質量部、メタクリル酸ブチル78.8質量部、スチレン52.9質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル72.5質量部、アクリル酸16.4質量部、メタクリル酸メチル63.0質量部、n−ドデシルメルカプタン3.2質量部、イオン交換水119質量部及びラテムル(PD−104)17.5質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
【0072】
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用反応容器に、イオン交換水280質量部、ラテムルPD−104(花王ケミカル製)3.5質量部及びAPS水溶液(重合開始剤:過硫酸アンモニウム、APS(Aldrich製)0.7質量部と水7質量部を撹拌混合したもの)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、更に80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水322質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液40.5質量部を添加し、10分撹拌して、水酸基価86、不揮発分29質量%のアクリルエマルションR−4を得た。
【0073】
(合成例5)水性ベース用アクリルエマルションR−5の調製
まず、アクリル酸2−エチルヘキシル31.5質量部、メタクリル酸ブチル78.8質量部、アクリル酸ブチル37.8質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル63.0質量部、アクリル酸16.4質量部、スチレン87.6質量部、n−ドデシルメルカプタン3.2質量部、イオン交換水119質量部及びラテムル(PD−104)17.5質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
【0074】
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用反応容器に、イオン交換水280質量部、ラテムルPD−104(花王ケミカル製)3.5質量部及びAPS水溶液(重合開始剤:過硫酸アンモニウム、APS(Aldrich製)0.7質量部と水7質量部を撹拌混合したもの)を仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて撹拌しながら滴下した。滴下終了後、更に80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水322質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液40.5質量部を添加し、10分撹拌して、水酸基価86、不揮発分29質量%のアクリルエマルションR−5を得た。
【0075】
(調製例1)溶剤型クリア塗料C−1の調製
容器に、合成例1で得た溶剤型クリア用アクリル樹脂R−1を443.3質量部、合成例2で得た溶剤型クリア用アクリル樹脂R−2を300.3質量部、n−ブタノールを123.8質量部、ソルベッソ100を24.8質量部、キシレン14.9質量部、2−メトキシ−1−プロパノール39.6質量部、チヌビン123(BASF社製)9.9質量部、チヌビン384−2(BASF社製)9.9質量部、トリブチルアンモニウムブロミド溶液(トリブチルアンモニウムブロミド0.9質量部とn−ブタノール9質量部を混合したもの)9.9質量部を仕込み、これに、撹拌しながらBYK−370(BYK−Chmie製)2.8質量部、BYK−306(BYK−Chmie製)5.2質量部、BYK−392(BYK−Chmie製)9.5質量部、ディスパロンNSH8430(楠本化成製)5.0質量部、ディスパロンOX883(楠本化成製)1.2質量部を添加し、更に10分攪拌して、不揮発分52%の酸エポキシ硬化型の溶剤型クリア塗料C−1を得た。この溶剤型クリア塗料C−1の流動停止時間t
cUは400秒であり、流動停止時間t
cU後から標準焼付け時間t
bU終了時までの間の収縮率ω
Uは7.7%であった。
【0076】
(調製例2)溶剤型クリア塗料C−2の調製
容器に、合成例3で得た溶剤型クリア用アクリル樹脂R−3を759.3質量部、酢酸ブチル197.4質量部、チヌビン123(BASF社製)9.9質量部、チヌビン384−2(BASF社製)9.9質量部を仕込み、これに、撹拌しながらBYK−370(BYK−Chmie製)2.8質量部、BYK−306(BYK−Chmie製)5.1質量部、BYK−392(BYK−Chmie製)9.5質量部、ディスパロンNSH8430(楠本化成)4.9質量部、ディスパロンOX883(楠本化成製)1.2質量部、ポリイソシアネート(旭化成ケミカル社製、「デュラネートTPA−100」)175質量部を添加し、更に10分攪拌して、不揮発分59%のイソシアネート硬化型の溶剤型クリア塗料C−2を得た。この溶剤型クリア塗料C−2の流動停止時間t
cUは320秒であり、流動停止時間t
cU後から標準焼付け時間t
bU終了時までの間の収縮率ω
Uは1.4%であった。
【0077】
(調製例3)溶剤型クリア塗料C−3の調製
容器に、合成例3で得た溶剤型クリア用アクリル樹脂R−3を759.3質量部、酢酸ブチル197.4質量部、チヌビン123(BASF社製)9.9質量部、チヌビン384−2(BASF社製)9.9質量部を仕込み、これに、撹拌しながらBYK−370(BYK−Chmie製)2.8質量部、BYK−306(BYK−Chmie製)5.1質量部、BYK−392(BYK−Chmie製)9.5質量部、ディスパロンNSH8430(楠本化成)4.9質量部、ディスパロンOX883(楠本化成製)1.2質量部、ブロックイソシアネート(ポリイソシアネート(旭化成ケミカル社製、「デュラネートTPA−100」)のイソシアネート基の半分を3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたもの)175質量部を添加し、更に10分攪拌して、イソシアネート硬化型の溶剤型クリア塗料C−3を得た。この溶剤型クリア塗料C−3の流動停止時間t
cUは370秒であり、流動停止時間t
cU後から標準焼付け時間t
bU終了時までの間の収縮率ω
Uは5.8%であった。
【0078】
(調製例4)着色顔料ペーストの調製
容器に、イオン交換水450質量部、湿潤分散剤(Byk−Chemie社製、「Disperbyk−180」)50質量部、ルチル型酸化チタン(石原産業社製、「CR−90」)495質量部、カーボンブラック(三菱化学社製、「MA−100」)5質量部を仕込み、10分間予備混合した後、仕込み体積量と同じ体積量のガラスビーズ(粒径1.6mm)を投入し、卓上サンドミルで1時間分散した。グラインドゲージによる分散終了時の粒度は5μm以下であった。
【0079】
(調製例5)水性中塗り塗料P−1の調製
容器に、合成例4で得た水性中塗り用アクリルエマルションR−4を185.7質量部仕込み、これに、撹拌しながらメチル化メラミン樹脂(オルネクスジャパン社製、「サイメル325」)30.0質量部、イオン交換水32質量部を加えて5分間攪拌した。更に、アルカリ増粘剤(BASF社製、「Viscalex HV30」)3.2質量部、ジメチルエタノールアミン0.8質量部、BYK−346(BYK−Chmie製)2.5質量部、着色顔料ペースト123.1質量部を加えて、不揮発分39.3質量%の水性中塗り塗料P−1を得た。この水性中塗り塗料P−1の収縮率ω
Lは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には5.8%であり、t
cUが370秒の場合には5.4%であり、t
cUが400秒の場合には5.0%であった。
【0080】
(調製例6)水性中塗り塗料P−2の調製
容器に、合成例4で得た水性中塗り用アクリルエマルションR−4を132.6質量部仕込み、これに、撹拌しながらイオン交換水16.0質量部を加えて5分間攪拌した。更に、Viscalex HV30を1.6質量部、ジメチルエタノールアミンを0.4質量部、BYK−346を1.0質量部、着色顔料ペーストを61.5質量部加えて、不揮発分39.3質量%の水性中塗り塗料P−2を得た。この水性中塗り塗料P−2の収縮率ω
Lは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には3.2%であり、t
cUが400秒の場合には2.4%であった。
【0081】
(調製例7)水性ベース塗料B−1の調製
容器に、合成例5で得たアクリルエマルションR−5を99.5質量部仕込み、これに、撹拌しながらイオン交換水54質量部を加えて5分間攪拌した。更に、アルカリ増粘剤(BASF社製、「Viscalex HV30」)2.0質量部、ジメチルエタノールアミン1.2質量部を加えて、水性樹脂液を得た。
【0082】
別の容器に、ブチルグリコール9.9質量部及びアルミペースト(Eckart社製、「Hydrolan2156」)9.9質量部を仕込み、更に1時間攪拌してアルミペースト溶液を得た。
【0083】
次に、前記水性樹脂溶液156.7質量部に、このアルミペースト溶液19.8質量部を撹拌しながら添加し、更に1時間攪拌して、水性ベース塗料B−1を得た。この水性ベース塗料B−1の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には2.8%であり、t
cUが370秒の場合には2.0%であり、t
cUが400秒の場合には0.9%であった。
【0084】
(調製例8)水性ベース塗料B−2の調製
容器に、合成例5で得たアクリルエマルションR−5を84.5質量部仕込み、これに、撹拌しながらメチル化メラミン樹脂(オルネクスジャパン社製、「サイメル325」)5.6質量部、イオン交換水54質量部を加えて5分間攪拌した。更に、Viscalex HV30を3.0質量部、ジメチルエタノールアミン1.2質量部を加えて、水性樹脂液を得た。
【0085】
別の容器に、ブチルグリコール9.9質量部及びアルミペースト(Eckart社製、「Hydrolan2156」)9.9質量部を仕込み、更に1時間攪拌してアルミペースト溶液を得た。
【0086】
次に、前記水性樹脂溶液148.3質量部に、このアルミペースト溶液19.8質量部を撹拌しながら添加し、更に1時間攪拌して、水性ベース塗料B−2を得た。この水性ベース塗料B−2の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には6.3%であり、t
cUが400秒の場合には3.2%であった。
【0087】
(調製例9)水性ベース塗料B−3の調製
合成例5で得たアクリルエマルションR−5の仕込み量を69.6質量部に、サイメル325の添加量を11.3質量部に、Viscalex HV30の添加量を4.0質量部に変更した以外は調製例8と同様にして、水性ベース塗料B−3を得た。この水性ベース塗料B−3の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には8.2%であり、t
cUが370秒の場合には7.2%であり、t
cUが400秒の場合には6.4%であった。
【0088】
(調製例10)水性ベース塗料B−4の調製
容器に、合成例5で得たアクリルエマルションR−5を69.6質量部仕込み、これに、撹拌しながらサイメル325を11.3質量部、イオン交換水を54質量部、2−エチルヘキサノールを7.5質量部、ブチルグリコールを3.8質量部加えて5分間攪拌した。更に、Viscalex HV30を3.0質量部、ジメチルエタノールアミンを1.2質量部加えて、水性樹脂液を得た。
【0089】
別の容器に、ブチルグリコール9.9質量部及びアルミペースト(Eckart社製、「Hydrolan2156」)9.9質量部を仕込み、更に1時間攪拌してアルミペースト溶液を得た。
【0090】
次に、前記水性樹脂溶液150.4質量部に、このアルミペースト溶液19.8質量部を撹拌しながら添加し、更に1時間攪拌して、水性ベース塗料B−4を得た。この水性ベース塗料B−4の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には10.3%であり、t
cUが400秒の場合には8.1%であった。
【0091】
(調製例11)水性ベース塗料B−5の調製
2−エチルヘキサノールの添加量を15.0質量部に、ブチルグリコールの添加量を7.5質量部に、Viscalex HV30の添加量を2.0質量部に変更した以外は調製例10と同様にして、水性ベース塗料B−5を得た。この水性ベース塗料B−5の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には9.9%であり、t
cUが400秒の場合には9.2%であった。
【0092】
(調製例12)水性ベース塗料B−6の調製
2−エチルヘキサノールの添加量を22.5質量部に、ブチルグリコールの添加量を11.3質量部に、Viscalex HV30の添加量を2.0質量部に変更した以外は調製例10と同様にして、水性ベース塗料B−6を得た。この水性ベース塗料B−6の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には10.4%であり、t
cUが400秒の場合には10.3%であった。
【0093】
(調製例13)水性ベース塗料B−7の調製
2−エチルヘキサノールの添加量を30.0質量部に、ブチルグリコールの添加量を15.0質量部に、Viscalex HV30の添加量を2.0質量部に変更した以外は調製例10と同様にして、水性ベース塗料B−7を得た。この水性ベース塗料B−7の収縮率ω
Iは、流動停止時間t
cUが320秒の場合には12.7%であり、t
cUが400秒の場合には12.0%であった。
【0094】
(実施例1)
電着塗装を施した鋼板(日本ルートサービス(株)製)の表面に、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を、焼付け後の膜厚が20μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次に、調製例9で得た水性ベース塗料B−3(t
cU=400秒の場合、ω
I=6.4%)を、焼付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次いで、この水性ベース塗料B−3の層の上に、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を焼付け後の膜厚が35μmになるように塗装し、水性中塗り塗料P−1と水性ベース塗料B−3と溶剤型クリア塗料C−1とをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。
【0095】
この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、硬化反応をさせるために140℃で30分間の加熱処理(焼付け処理)を施して各層を硬化させ、積層塗膜を得た。
【0096】
得られた積層塗膜について、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製「Wave−Scan Dual」)を用いてウェーブスキャン値〔Wa(波長<0.3mm)、Wb(波長0.3〜1mm)、Wc(波長1〜3mm)、Wd(波長3〜10mm)、We(波長10〜30mm)〕を測定した。その結果を表1に示す。これらのウェーブスキャン値は、値が小さいほど上層表面における当該波長の凹凸が少ないことを示し、外観品質が優れることを意味する。ちなみに、duやWaが小さいほど光沢が優れ、WdやWeが小さいほど肌がよいことを意味する。
【0097】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−3により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.3%であり、水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は1.4であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は2.7%であった。
【0098】
(実施例2)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を用い、ベース塗料として、調製例11で得た水性ベース塗料B−5(t
cU=400秒の場合、ω
I=9.2%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0099】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−5により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−5(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.5%であり、水性ベース塗料B−5(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は4.2であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は5.7%であった。
【0100】
(実施例3)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を用い、ベース塗料として、調製例12で得た水性ベース塗料B−6(t
cU=400秒の場合、ω
I=10.3%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0101】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−6により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−6(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は2.6%であり、水性ベース塗料B−6(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は5.3%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は7.9%であった。
【0102】
(実施例4)
中塗り塗料として、調製例6で得た水性中塗り塗料P−2(t
cU=400秒の場合、ω
L=2.4%)を用い、ベース塗料として、調製例9で得た水性ベース塗料B−3(t
cU=400秒の場合、ω
I=6.4%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0103】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−3により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−2により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.3%であり、水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−2(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は4.0%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は5.3%であった。
【0104】
(実施例5)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=320秒の場合、ω
L=5.8%)を用い、ベース塗料として、調製例7で得た水性ベース塗料B−1(t
cU=320秒の場合、ω
I=2.8%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0105】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.4%であり、水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は3.0%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は4.4%であった。
【0106】
(実施例6)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=320秒の場合、ω
L=5.8%)を用い、ベース塗料として、調製例8で得た水性ベース塗料B−2(t
cU=320秒の場合、ω
I=6.3%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0107】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−2により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−2(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は4.9%であり、水性ベース塗料B−2(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は0.5%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は5.4%であった。
【0108】
(実施例7)
中塗り塗料として、調製例6で得た水性中塗り塗料P−2(t
cU=320秒の場合、ω
L=3.2%)を用い、ベース塗料として、調製例7で得た水性ベース塗料B−1(t
cU=320秒の場合、ω
I=2.8%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0109】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−2により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.4%であり、水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−2(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は0.4%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は1.8%であった。
【0110】
(実施例8)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=370秒の場合、ω
L=5.4%)を用い、ベース塗料として、調製例7で得た水性ベース塗料B−1(t
cU=370秒の場合、ω
I=2.0%)を用い、クリア塗料として、調製例3で得た溶剤型クリア塗料C−3(t
cU=370秒、ω
U=5.8%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0111】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−3(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は3.8%であり、水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は3.4%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は7.2%であった。
【0112】
(比較例1)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を用い、ベース塗料として、調製例13で得た水性ベース塗料B−7(t
cU=400秒の場合、ω
I=12.0%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−7により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は4.3%であり、水性ベース塗料B−7(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は7.0%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は11.3%であった。
【0114】
(比較例2)
中塗り塗料として、調製例6で得た水性中塗り塗料P−2(t
cU=400秒の場合、ω
L=2.4%)を用い、ベース塗料として、調製例13で得た水性ベース塗料B−7(t
cU=400秒の場合、ω
I=12.0%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−7により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−2により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−7(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は4.3%であり、水性ベース塗料B−7(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−2(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は9.6%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は13.9%であった。
【0116】
(比較例3)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=320秒の場合、ω
L=5.8%)を用い、ベース塗料として、調製例9で得た水性ベース塗料B−3(t
cU=320秒の場合、ω
I=8.2%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0117】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−3により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−1により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は6.8%であり、水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−1(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は2.4%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は9.2%であった。
【0118】
(比較例4)
中塗り塗料として、調製例6で得た水性中塗り塗料P−2(t
cU=320秒の場合、ω
L=3.2%)を用い、ベース塗料として、調製例9で得た水性ベース塗料B−3(t
cU=320秒の場合、ω
I=8.2%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0119】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−3により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性中塗り塗料P−2により形成された下層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は6.8%であり、水性ベース塗料B−3(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料P−2(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は5.0%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は11.8%であった。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のように、下層、中間層及び上層の各層に熱硬化型塗料を使用し、ウェットオンウェットにより積層して未硬化積層塗膜を得、その後焼付け処理を施す塗装方法において、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の上層用塗料(溶剤型クリア塗料)の収縮率ω
Uと第一の隣接層用塗料(水性ベース塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、第一の隣接層用塗料(水性ベース塗料)の収縮率ω
A1と第二の隣接層用塗料(水性中塗り塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)が8.0%以下となるように、上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料を選択して形成した積層塗膜(実施例1〜8)のWa〜Wdはいずれも、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%を超えている従来の積層塗膜(比較例1〜4)に比べて小さく、外観品質が高度に優れたものであることが確認された。すなわち、本発明のように、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%以下となるように、上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料を選択してウェットオンウェットで積層した塗膜(実施例1〜8)のWaは25以下で要求外観品質を満たしていた。これに対して、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%を超える上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料をウェットオンウェットで積層した塗膜(比較例1〜4)のWaは25を上回り、要求外観品質を満たしていないことが確認された。
【0122】
(実施例9)
電着塗装を施した鋼板(日本ルートサービス(株)製)の表面に、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を、焼付け後の膜厚が20μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次に、調製例9で得た水性ベース塗料B−3(t
cU=400秒の場合、ω
I=6.4%)を、焼付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次に、調製例10で得た水性ベース塗料B−4(t
cU=400秒の場合、ω
I=8.1%)を、焼付け後の膜厚が15μmになるように塗装し、80℃で3分間加熱して水及び有機溶剤などを揮発させた。次いで、この水性ベース塗料B−4の層の上に、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を焼付け後の膜厚が35μmになるように塗装し、水性中塗り塗料P−1と水性ベース塗料B−3と水性ベース塗料B−4と溶剤型クリア塗料C−1とをウェットオンウェットで積層した未硬化積層塗膜を得た。
【0123】
この未硬化積層塗膜を室温で10分間静置(セッティング)した後、硬化反応をさせるために140℃で30分間の加熱処理(焼付け処理)を施して各層を硬化させ、積層塗膜を得た。
【0124】
得られた積層塗膜について、ウェーブスキャン(BYK−Gardner社製「Wave−Scan Dual」)を用いてウェーブスキャン値〔Wa(波長<0.3mm)、Wb(波長0.3〜1mm)、Wc(波長1〜3mm)、Wd(波長3〜10mm)、We(波長10〜30mm)〕を測定した。その結果を表2に示す。
【0125】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−4により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性ベース塗料B−3により形成された中間層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−4(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は0.4%であり、水性ベース塗料B−4(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料B−3(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は1.7%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は2.1%であった。
【0126】
(実施例10)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=320秒の場合、ω
L=5.8%)を用い、ベース塗料として、水性ベース塗料B−3の代わりに調製例8で得た水性ベース塗料B−2(t
cU=320秒の場合、ω
I=6.3%)を用い、水性ベース塗料B−4の代わりに調製例7で得た水性ベース塗料B−1(t
cU=320秒の場合、ω
I=2.8%)を用い、クリア塗料として、調製例2で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例9と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0127】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性ベース塗料B−2により形成された中間層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は1.4%であり、水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料B−2(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は3.5%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は4.9%であった。
【0128】
(比較例5)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=400秒の場合、ω
L=5.0%)を用い、ベース塗料として、水性ベース塗料B−3の代わりに調製例13で得た水性ベース塗料B−7(t
cU=400秒の場合、ω
I=12.0%)を用い、水性ベース塗料B−4の代わりに調製例7で得た水性ベース塗料B−1(t
cU=400秒の場合、ω
I=0.9%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−1(t
cU=400秒、ω
U=7.7%)を用いた以外は実施例9と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0129】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−1により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性ベース塗料B−7により形成された中間層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−1(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は6.8%であり、水性ベース塗料B−1(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料B−7(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は11.1%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は17.9%であった。
【0130】
(比較例6)
中塗り塗料として、調製例5で得た水性中塗り塗料P−1(t
cU=320秒の場合、ω
L=5.8%)を用い、ベース塗料として、水性ベース塗料B−3の代わりに調製例13で得た水性ベース塗料B−7(t
cU=320秒の場合、ω
I=12.7%)を用い、水性ベース塗料B−4の代わりに調製例8で得た水性ベース塗料B−2(t
cU=320秒の場合、ω
I=6.3%)を用い、クリア塗料として、調製例1で得た溶剤型クリア塗料C−2(t
cU=320秒、ω
U=1.4%)を用いた以外は実施例9と同様にして、積層塗膜を得た。得られた積層塗膜について、実施例1と同様にしてWa〜Weを測定した。その結果を表1に示す。
【0131】
また、得られた積層塗膜において、上層に隣接する第一の隣接層は前記水性ベース塗料B−2により形成された中間層であり、前記第一の隣接層に隣接する第二の隣接層は前記水性ベース塗料B−7により形成された中間層である。したがって、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の溶剤型クリア塗料C−2(上層用塗料)の収縮率ω
Uと水性ベース塗料B−2(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|は4.9%であり、水性ベース塗料B−2(第一の隣接層用塗料)の収縮率ω
A1と水性中塗り塗料B−7(第二の隣接層用塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|は6.4%であった。また、前記上層用塗料の収縮率ω
Uと前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、前記第一の隣接層用塗料の収縮率ω
A1と前記第二の隣接層用塗料の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)は11.3%であった。
【0132】
【表2】
【0133】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のように、下層、2層の中間層及び上層の各層に熱硬化型塗料を使用し、ウェットオンウェットにより積層して未硬化積層塗膜を得、その後焼付け処理を施す塗装方法において、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の上層用塗料(溶剤型クリア塗料)の収縮率ω
Uと第一の隣接層用塗料(第一の水性ベース塗料)の収縮率ω
A1との差の絶対値|Δω
1|と、第一の隣接層用塗料(第一の水性ベース塗料)の収縮率ω
A1と第二の隣接層用塗料(第二の水性ベース塗料)の収縮率ω
A2との差の絶対値|Δω
2|との和(Δω
1+Δω
2)が8.0%以下となるように、上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料を選択して形成した積層塗膜(実施例9〜10)のWa〜Wdはいずれも、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%を超えている従来の積層塗膜(比較例5〜6)に比べて小さく、外観品質が高度に優れたものであることが確認された。すなわち、本発明のように、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%以下となるように、上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料を選択してウェットオンウェットで積層した塗膜(実施例9〜10)のWaは30以下で要求外観品質を満たしていた。これに対して、前記絶対値の和(Δω
1+Δω
2)が8.0%を超える上層用塗料、第一の隣接層用塗料及び第二の隣接層用塗料をウェットオンウェットで積層した塗膜(比較例5〜6)のWaは30を上回り、要求外観品質を満たしていないことが確認された。
【0134】
以上より、3種類以上の塗料をウェットオンウェットで積層して塗膜を形成する場合において、上層用塗料の流動停止時間t
cU後から各塗料の標準焼付け時間t
b終了時までの間の上層用塗料の収縮率と第一の隣接層用塗料の収縮率との差の絶対値と、第一の隣接層用塗料の収縮率と第二の隣接層用塗料の収縮率との差の絶対値との和を8.0%以下とすることによって、外観品質が高度に優れた積層塗膜を得ることができることが確認された。