【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。以下の記載において「部」は質量部、「%」は質量%を意味する。
【0039】
<製造例1〜9(アクリル系共重合体(A)の調製)>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、表1に示す量(%)の成分(A1)〜(A5)と、酢酸エチル、連鎖移動剤としてn−ドデカンチオール及び過酸化物系ラジカル重合開始剤としてラウリルパーオキサイド0.1部を仕込んだ。反応装置内に窒素ガスを封入し、攪拌しながら窒素ガス気流下で68℃、3時間、その後78℃、3時間で重合反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸エチルを追加した。これにより、固形分濃度30%のアクリル系共重合体(A)を得た。
【0040】
各アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び理論Tgを表1に示す。この重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、アクリル系共重合体の標準ポリスチレン換算の分子量を以下の測定装置及び条件にて測定した値である。
・装置:LC−2000シリーズ(日本分光株式会社製)
・カラム:Shodex KF−806M×2本、Shodex KF−802×1本
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:40℃
・注入量:100μL
・検出器:屈折率計(RI)
・測定サンプル:アクリル系ポリマーをTHFに溶解させ、アクリル系ポリマーの濃度が0.5質量%の溶液を作製し、フィルターによるろ過でゴミを除去したもの。
【0041】
理論Tgは、FOXの式により算出した値である。
【0042】
【表1】
【0043】
表1中の略号は以下の化合物を示す。
「MA」:メチルアクリレート
「2−EHA」:2−エチルヘキシルアクリレート
「BA」:n−ブチルアクリレート
「AA」:アクリル酸
「4−HBA」:4−ヒドロキシブチルアクリレート
「Vac」:酢酸ビニル
【0044】
<実施例1〜7>
製造例1〜7で得たアクリル系共重合体(A)の固形分100部に対して、架橋剤(B1)、シランカップリング剤(C1)、酸化防止剤(D1)、ニッケル系導電性粒子(E1)、トリアゾール系防錆剤(F1)を表2に示す量(部)加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。
【0045】
この粘着剤組成物を、シリコーン処理された離型紙上に乾燥後の厚みが10μmになるように塗布した。次いで、110℃で溶媒を除去・乾燥すると共に架橋反応させて、粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、7μm厚の導電性基材(銅箔)の両面に貼り合せた。そして、40℃で3日間養生して、導電性両面粘着テープを得た。
【0046】
<実施例8>
ニッケル系導電性粒子(E1)の代わりに銅系導電性粒子(E2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0047】
<実施例9>
ニッケル系導電性粒子(E1)の配合割合を7.0部に増やし、粘着剤層の厚さ及び基材(銅箔)の厚さを各々20μm及び35μmと厚くしたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0048】
<実施例10>
トリアゾール系防錆剤(F1)の代わりにテトラゾール系防錆剤(F2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0049】
<比較例1>
製造例1で得たアクリル系共重合体(A)の代わりに、製造例8で得たアクリル系共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0050】
<比較例2>
製造例1で得たアクリル系共重合体(A)の代わりに、製造例9で得たアクリル系共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0051】
<参考例1>
導電性基材として、銅箔の代わりに厚さ30μmの導電不織布(Solueta社製、商品名NW05CN)を用い、粘着剤層の厚さを15μmと厚くしたこと以外は、実施例1と同様にして導電性両面粘着テープを得た。
【0052】
【表2】
【0053】
表2中の略号は以下の化合物を示す。
「B1」:イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネート(登録商標)L−45E)
「C1」:シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名KBM−403)
「D1」:酸化防止剤(BASF社製、イルガノックス(登録商標)1010)
「E1」:ニッケル系導電性粒子(ヴァーレ社製、商品名ニッケルパウダータイプ123)
「E2」:銅系導電性粒子(福田金属箔社製、商品名 電解粉FCC−115)
「F1」:トリアゾール系防錆剤(共同薬品社製、商品名BTZM)
「F2」:テトラゾール系防錆剤(東洋化成社製、商品名M−5T)
【0054】
<評価試験>
実施例及び比較例で得た導電性基材両面テープを以下の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0055】
(耐反発性)
1mm×20mmに裁断した両面粘着テープ1の一方の離型紙を剥離し、厚さ75μmで20mm×60mmのポリイミドフィルム2の一方に
図1に示すように貼り付け、23℃、50%RHの雰囲気下で60分間養生した。その後、ポリイミドフィルム2を
図2に示すように折り曲げて粘着テープ1を被着体3(1.5mm厚のSUS板)に貼り合せ、85℃の雰囲気下で72時間放置し、接着部分の剥がれを目視にて確認し、以下の基準で耐反発性を評価した。
「○」:72時間後に接着部分の剥がれ無し。
「×」:72時間後に接着部分の剥がれ有り。
【0056】
(耐衝撃性)
2mm×40mmと2mm×30mmに裁断した両面粘着テープ1の一方の離型紙を剥離し、厚さ2mmで50mm×40mmのアクリル板4の四方に
図3に示すように貼り付け、23℃、50%RHの雰囲気下で60分間養生した。その後、粘着テープ付きアクリル板4のもう一方の離離紙を剥離し、被着体3(1.5mm厚のSUS板)に貼り合せ、23℃、50%RHの雰囲気下で60分間養生した。その後、
図4に示すように一定の荷重(300g)の錘5を高さを変更しながら落下させ、剥がれを目視で確認し、以下の基準で、耐衝撃性を評価した。
「○」:300mm以上の高さで接着部分の剥がれ無し。
「×」:300mm未満の高さで接着部分の剥がれ有り。
【0057】
(電磁波シールド性)
KEC(関西電子工業振興センター)法により電磁波シールド性を確認した。KEC法は、装置内に試料が存在しない状態を基準とし、装置内に試料を挿入した時の減衰量をデシベル表示で評価する方法である。この測定には市販の電界シールド効果評価装置を使用し、特に周波数1000MHzでの減衰率を基準にして、電磁波シールド性を以下のように評価した。
「○」:1000MHzでの減衰率60dB以上。
「×」:1000MHzでの減衰率60dB未満。
【0058】
(導電性)
25mm×25mmに切断した粘着テープを真ちゅう製(金めっき)の電極に挟みこみ、電極の上部から3.5Nの圧力をかけた状態で、0.1Aの電流が流れるように電圧を調整し、R(抵抗値)=V(電圧)/I(電流)の式から抵抗値(mΩ)を算出した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の結果から明らかなように、本発明の粘着剤組成物を使用した実施例1〜10では全ての特性が優れていた。
【0061】
一方、Mwが低過ぎるアクリル系共重合体(製造例8)を使用した比較例1では、耐反発性が劣っていた。また、成分(A1)を含まないアクリル系共重合体(製造例9)を使用した比較例2では、耐衝撃性が劣っていた。
【0062】
基材として導電不織布を使用した参考例1では、電磁波シールド性が劣っていた。ただし、この結果は単に不織布自体の導電性のレベルに起因するものである。すなわち、参考例1でも本発明の粘着剤組成物に起因する耐反発性及び耐衝撃性の効果は得られた。