(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワッシャは、中央部に前記棒状部が嵌め込まれる貫通孔と、前記貫通孔に連なるとともに前記棒状部の軸方向に対して傾斜した傾斜部とを有し、前記傾斜部は、前記制御弁から離れるにつれて内径が小さくなっている
請求項1から3のいずれか1項に記載の流路制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車1の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、自動二輪車1の骨格をなす車体フレーム11、ハンドル12、エンジン13及びシート19などを有する車両本体10と、を備えている。
【0010】
また、自動二輪車1は、前輪2と車両本体10とを連結するフロントフォーク21、及び、後輪3と車両本体10とを連結するリヤサスペンション22を有している。
また、自動二輪車1は、前輪2を挟むように配置された一対のフロントフォーク21、21を保持する2つのブラケット14と、2つのブラケット14の間に配置され、車体フレーム11に回転可能に支持されたシャフト15と、を備えている。
また、自動二輪車1は、後述する流路切替ユニット300を制御することで自動二輪車1の車高を制御する、制御装置70を備えている。
【0011】
<フロントフォーク21の構成>
図2は、本発明の実施の形態に係るフロントフォーク21の断面図である。
フロントフォーク21は、アウタ部材110を有して前輪2の車軸に取り付けられる車軸側ユニット100と、インナチューブ210を有して車両本体10に取り付けられる本体側ユニット200と、を備えている。また、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200との間に配置されて、路面の凸凹に伴い前輪2が受ける振動を吸収するスプリング500を備えている。
【0012】
アウタ部材110及びインナチューブ210は、同軸的に配置された円筒状の部材であり、この円筒の中心線の方向(軸方向)を、以下では「上下方向」と称する場合がある。かかる場合、車両本体10側が「上」側、前輪2側が「下」側である。そして、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200とが上下方向(軸方向)に相対的に移動することにより、前輪2を支持しながら路面の凸凹を吸収して振動を抑制する。以下において、「断面積」とは、特に断らない限り、上記軸方向を法線方向とする平面で切断した時の面積を言う。
【0013】
[車軸側ユニット100の構成]
車軸側ユニット100は、前輪2の車軸に取り付けられるアウタ部材110と、オイルの粘性抵抗を利用した減衰力を発生する減衰力発生ユニット130と、減衰力発生ユニット130を保持するロッド150と、ロッド150の下端部を保持するロッド保持部材160とを備えている。
また、車軸側ユニット100は、スプリング500の下端部を支持するスプリング支持部材170と、スプリング支持部材170を保持する支持部材保持部材180と、インナチューブ210の軸方向の移動を案内する案内部材190とを備えている。
【0014】
アウタ部材110は、インナチューブ210が挿入される円筒状の円筒状部111と、前輪2の車軸を取り付け可能な車軸ブラケット部112とを有している。
円筒状部111は、上端部に、オイルシール113と、スライドブッシュ114とを有している。
車軸ブラケット部112には、車軸取付孔112bが形成されている。
【0015】
減衰力発生ユニット130は、シリンダ230の内側の空間に形成された作動油室50内を区画するピストン131と、ピストン131の上端側に設けられたバルブ136と、ピストン131の下端側に設けられたバルブ137とを備えている。また、減衰力発生ユニット130は、ピストン131、バルブ136及びバルブ137などを支持するピストンボルト140と、ピストンボルト140に締め付けられてピストン131、バルブ136及びバルブ137などの位置を定めるナット145とを備えている。
【0016】
減衰力発生ユニット130は、ピストンボルト140に形成された雌ねじにロッド150の上端部に形成された雄ねじが締め付けられることでロッド150に保持される。そして、ピストン131が、シリンダ230内の空間を、ピストン131よりも上方の第1油室51と、ピストンよりも下方の第2油室52とに区画する。
【0017】
ロッド150は、円筒状の部材であり、上端部及び下端部における外周面には雄ねじが形成されている。下端部に形成された雄ねじは、ロッド保持部材160の上端側円柱状部に形成された雌ねじに締め付けられる。
ロッド保持部材160は、それぞれ径が異なる複数の円柱状の部位を有する部材である。
【0018】
スプリング支持部材170は、円筒状の部材であり、支持部材保持部材180における上端部に固定される。固定方法としては、溶接、圧入又はストッパリングを用いた固定であることを例示することができる。
【0019】
支持部材保持部材180は、円筒状の部材であり、下端部にはロッド保持部材160に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。
支持部材保持部材180には、軸方向の位置においてロッド保持部材160の径方向凹部に対応する位置に、内外を連通する連通孔が形成されている。
案内部材190は、円筒状の円筒状部191と、円筒状部191における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部192とを有している。
そして、内向部192における下端部とロッド保持部材160との間に形成された空間に、Oリング等の封止部材が嵌め込まれている。
【0020】
以上のように構成された車軸側ユニット100においては、アウタ部材110の内周面と、ロッド150や支持部材保持部材180の外周面との間に、フロントフォーク21内に密封されたオイルを貯留するリザーバ室40が形成されている。
【0021】
[本体側ユニット200の構成]
本体側ユニット200は、両端が開口した円筒状のインナチューブ210と、インナチューブ210の上端部に取り付けられたキャップ220と、を備えている。
また、本体側ユニット200は、円筒状のシリンダ230と、シリンダ230の下端部に取り付けられてシリンダ230内の空間を密封する密封部材240とを備えている。
また、本体側ユニット200は、スプリング500の上端部を支持するとともにスプリング500の長さを調整(変更)するスプリング長変更ユニット250と、シリンダ230の上端部に取り付けられて流体の一例としてのオイルの流路を切り替える流路切替ユニット300とを備えている。
【0022】
(インナチューブ210の構成)
インナチューブ210は、円筒状の部材である。
インナチューブ210は、下端部にスライドブッシュ211を備え、上端部に、雌ねじ213が形成されている。
【0023】
(キャップ220の構成)
キャップ220は略円筒状の部材である。その外周面には、雌ねじ213に締め付けられる雄ねじ221が形成され、内周面には、スプリング長変更ユニット250や流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。キャップ220は、インナチューブ210に取り付けられるとともに、スプリング長変更ユニット250や流路切替ユニット300を保持する。
また、キャップ220は、Oリング等の封止部材222を有している。
【0024】
(シリンダ230の構成)
シリンダ230は円筒状の部材である。その上端部の外周面には、流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成され、下端部の内周面には、密封部材240に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。
【0025】
(密封部材240の構成)
密封部材240は円筒状の部材である。その外周面には、シリンダ230の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじが形成されている。密封部材240は、シリンダ230に保持される。
密封部材240は、内周側にスライドブッシュ245を、外周側にOリング等の封止部材247を有している。密封部材240の上端部には、減衰力発生ユニット130との接触の際の衝撃を緩和する衝撃緩和部材248が取り付けられている。
【0026】
(スプリング長変更ユニット250の構成)
スプリング長変更ユニット250は、キャップ220に固定されたベース部材260と、スプリング500の上端部を支持するとともにベース部材260に対して軸方向に相対移動することでスプリング500の長さを変更する上端部支持部材270とを備えている。
【0027】
ベース部材260は、略円筒状の部材である。その上端部に、軸方向突出部260aを有し、軸方向突出部260aは、キャップ220に固定される。また、ベース部材260の上端部に、周方向の一部が径方向に突出した径方向突出部260bを有している。径方向突出部260bの内側と、後述する支持部材400の下端部における外周面との間に、シリンダ230内のオイルをリザーバ室40へ排出する排出流路41が形成されている。
【0028】
ベース部材260は、下端部に、スライドブッシュ261と、Oリング等の封止部材262とを有している。ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間には、環状の環状流路61が形成されている。
【0029】
上端部支持部材270は、円筒状部271と、円筒状部271の下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部272とを有している。上端部支持部材270は、シリンダ230の外周面及びベース部材260の下端部との間の空間に、ベース部材260に対する上端部支持部材270の位置を変更するオイルを収容するジャッキ室60を形成する。
【0030】
円筒状部271には、この円筒状部271の内外を連通するように径方向に貫通した孔が形成されている。この孔を介してオイルがジャッキ室60からリザーバ室40へと排出されることにより、ベース部材260に対する上端部支持部材270の移動量が制限される。
内向部272は、内周側に、Oリング等の封止部材を有している。
ジャッキ室60へは、ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間に形成された環状流路61を介して、シリンダ230内のオイルが供給される。
【0031】
(流路切替ユニット300の構成)
図3は、流路切替ユニット300の流路を模式的に示す図である。
流路切替ユニット300は、減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230等がその概念に含まれる、後述するポンプ600にて吐出されたオイルを、リザーバ室40及びジャッキ室60の何れに供給するか、ジャッキ室60に収容されたオイルをリザーバ室40へ供給するか、を切り替える装置である。
流路切替ユニット300には、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路R1と、シリンダ230内とジャッキ室60とを連通する第2連通路R2と、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第3連通路R3及び第4連通路R4とが形成されている。
そして、流路切替ユニット300は、第1連通路R1を開閉する第1開閉弁301と、第2連通路R2を開閉する第2開閉弁302と、第3連通路R3を開閉する第3開閉弁303と、第4連通路R4を開閉する第4開閉弁304とを有している。
【0032】
<流路切替ユニット300の具体的構成>
図4は、
図2のIV部の拡大図であり、
図5は、
図4のV部の拡大図である。
図4及び
図5を参照しつつ、流路切替ユニット300について、説明する。
流路切替ユニット300は、第1開閉弁301に対して第1連通路R1を閉じる方向の力を与える第1コイルスプリング311と、第2開閉弁302に対して第2連通路R2を閉じる方向の力を与える第2コイルスプリング312と、第3開閉弁303に対して第3連通路R3を閉じる方向の力を与える第3コイルスプリング313とを備えている。
【0033】
また、流路切替ユニット300は、第1開閉弁301の開閉を制御する制御弁305と、制御弁305の下方に設けられたコイルスプリング315と、コイルスプリング315のバネ力に抗して制御弁305を下方へ移動させるソレノイド320とを備えている。
また、流路切替ユニット300は、第3コイルスプリング313のバネ力に抗して第3開閉弁303を下方へ移動させるプッシュロッド316を備えている。プッシュロッド316は、制御弁305により押されて下方へ移動する。
また、流路切替ユニット300は、ユニット本体330と、ユニット本体330に装着されるとともに第2開閉弁302を支持する支持部材370とを備えている。また、流路切替ユニット300は、第4開閉弁304を支持する支持部材380と、支持部材380の開口部に装着された部材395とを備えている。また、流路切替ユニット300は、支持部材370と支持部材380の内向部382との間に配置されて、第2コイルスプリング312の上端部を支持する支持部材388と板バネ389とを備えている。
【0034】
<第1開閉弁301関連>
第1開閉弁301は、円筒状の円筒状部301aと、外径が下方に行くに従って徐々に小さくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面301cを有する円錐状の円錐状部301bとを有する。
円筒状部301aの外周面とユニット本体330の上端部340との間には、Oリング等の封止部材306が嵌め込まれている。
円錐状部301bの中央部には、円筒状部301aの内部と、円錐状部301bの外部とを連通する軸方向の貫通孔301eが形成されている。貫通孔301eは、ユニット本体330の軸方向連通孔351と、第1開閉弁301に対して下方向の力を与えるオイルが存在する空間(以下、「背圧室B1」と称す。)とを連通する。なお、背圧室B1は、ソレノイド320のケース325の下端面、スプリング支持部材307、ユニット本体330の中央凸部347などにて囲まれた空間である。
第1コイルスプリング311は、第1開閉弁301の円筒状部301aの内側に配置され、下端部が第1開閉弁301の円錐状部301bの上端面に支持されている。
【0035】
流路切替ユニット300は、第1コイルスプリング311の上端部を支持するスプリング支持部材307と、封止部材306の上方への移動を抑制する抜け止めリング308とを有している。
スプリング支持部材307は、中央部にユニット本体330の中央凸部347の外径よりも大きな径の貫通孔が形成されたドーナツ状の薄板である。スプリング支持部材307は、第1コイルスプリング311及び抜け止めリング308よりも上方に配置されて、第1開閉弁301及び第1コイルスプリング311の上方への移動を抑制する。
【0036】
<第4開閉弁304の構成>
第4開閉弁304は、径が互いに異なる2つの円柱状の第1部391と第2部392とを有する。第1部391の径は、第2部392の径よりも小さい。
また、第4開閉弁304は、軸方向に貫通する貫通孔393を有している。貫通孔393は、円柱状で径が互いに異なる第1貫通孔393aと第2貫通孔393bとを有している。第1貫通孔393aの孔径は、第2貫通孔393bの孔径よりも大きい。貫通孔393の内部をプッシュロッド316が通ることが可能なように、第2貫通孔393bの孔径は、プッシュロッド316の第2軸部318の径よりも大きく、第1貫通孔393aの孔径は、プッシュロッド316の第3軸部319の径よりも大きい。ただし、プッシュロッド316の下方への移動を抑制するために、第2貫通孔393bの孔径は、プッシュロッド316の第3軸部319の径よりも小さい。
第2部392は、下端面から凹んだ凹部392aを有している。凹部392aにおける第2貫通孔393bの開口部には、球状である第3開閉弁303の上端面の形状に沿う凹部が形成されている。
【0037】
<制御弁305の構成>
制御弁305は、円柱状の部材であり、外周面に、全周に渡って凹んだ溝305aを有している。また、制御弁305は、上端面から軸方向に凹んだ凹部305bと、凹部305bと制御弁305の下方の部位とを連通するように軸方向に対して傾斜した孔305cとを有している。
制御弁305は、凹部305bに挿入されたソレノイド320の作動ロッド324により下方に押されることで、コイルスプリング315のバネ力に抗して下方へ移動する。他方、作動ロッド324が上方に移動した場合には、制御弁305は、コイルスプリング315により押されることで上方へ移動する。
【0038】
<プッシュロッド316の構成>
プッシュロッド316は、棒状の本体316aと、本体316aに嵌め込まれた円盤状のワッシャ700とを有している。本体316aは、
図4に示すように、上端部側に位置する第1軸部317と、下端部側に位置する第2軸部318と、第1軸部317と第2軸部318との間に位置する第3軸部319とを備えている。第3軸部319の径は、第1軸部317及び第2軸部318の径よりも大きい。なお、第3開閉弁303とプッシュロッド316とは一体であってもよい。
ワッシャ700については後で詳述する。
【0039】
<ソレノイド320の構成>
ソレノイド320は、コイル321と、コイル321の内側に配置されたコア322と、コア322に案内されるプランジャ323と、プランジャ323に連結された作動ロッド324とを備えた、比例ソレノイドである。
また、ソレノイド320は、コイル321、コア322及びプランジャ323などを収容するケース325と、ケース325の開口部を覆うカバー326とを備えている。
【0040】
以上のように構成されたソレノイド320は、キャップ220に装着されたコネクタ、リード線を介してコイル321に通電されることにより、通電電流に応じてプランジャ323に軸方向の推力が発生する。そして、プランジャ323の推力によってプランジャ323に連結された作動ロッド324が軸方向に移動する。ソレノイド320は、コイル321への通電電流が大きくなるほど作動ロッド324のケース325からの突出量が大きくなるように、プランジャ323に軸方向の推力が発生する。
なお、コイル321への通電量は制御装置70にて制御される。
【0041】
<ユニット本体330の構成>
ユニット本体330は、上端側に設けられた円柱状の上端部340と、上端部340の下方に設けられ、円筒状でそれぞれ外径が互いに異なる第1円筒状部350及び第2円筒状部360とを有している。
【0042】
上端部340の中央部には、上端面341から下側に凹んだ凹部342と、下端面343から上側に凹んだ凹部344と、凹部342と凹部344とを連通する連通孔345とが形成されている。
凹部342は、制御弁305を移動可能に収容する収容部342aを有している。また、凹部342は、軸方向と交差する径方向には収容部342aと連続し、且つ、軸方向には上端部340の中央凸部347の上端面から制御弁305の移動範囲の下限よりも下方まで凹んでいる側方凹部342bを有している。
【0043】
上端部340における、凹部342と外周面との間には、上端面341から下方向に凹んだ凹部346が形成されている。この凹部346は、径が互いに異なる3つの円柱状の第1凹部346a、第2凹部346b、及び第3凹部346cを有する。そして、上端部340には、軸方向と交差する方向に第2凹部346bと外部とを連通する孔である連通孔346dが形成されている。
また、上端部340の中央部における、凹部342の周囲には、上端面341から上側に突出した中央凸部347が設けられている。
また、上端部340は、上端部から半径方向外側に向かうフランジ部348を有している。フランジ部348には、周方向の一部が切り欠かれた切り欠き部348aが形成されている。
【0044】
また、上端部340には、凹部342と切り欠き部348aとを連通する径方向の貫通孔である第1連通孔349aと、凹部344と外部とを連通する径方向の貫通孔である第2連通孔349bとが形成されている。
第1連通孔349aは、周方向には、凹部342の側方凹部342bが形成されていない位置に1つ形成されている。
第2連通孔349bは、周方向に凹部346が形成されていない部位に1つ又は複数形成されている。
【0045】
第1円筒状部350には、第1円筒状部350の下方であって第2円筒状部360の外周面とシリンダ230の内周面との間に形成された空間と、凹部346とを連通する軸方向の貫通孔である軸方向連通孔351が形成されている。軸方向連通孔351は、周方向に1つ又は複数形成されている。
第1円筒状部350の外周面には、全周に渡って径方向に凹んだ凹部352及び凹部353と、シリンダ230の上端部に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ354が形成されている。
凹部352には、スプリング長変更ユニット250のベース部材260との間の隙間をシールするOリング等の封止部材355が嵌め込まれている。
凹部353には、シリンダ230との間の隙間をシールするOリング等の封止部材356が嵌め込まれている。
また、第1円筒状部350には、内部と外部とを連通する径方向の貫通孔である第3連通孔357が形成されている。第3連通孔357の軸方向の位置は、凹部352と凹部353との間である。
第2円筒状部360の内周面の下端部には、支持部材370の外周面に形成された後述する雄ねじ373aが締め付けられる雌ねじ361が形成されている。
【0046】
<支持部材370の構成>
支持部材370は、上端部側に位置する円筒状の上端部371と、下端部側に位置する円筒状の下端部373と、これらの間に位置する円柱状の中央部372と、を有している。
【0047】
中央部372には、中心線の周囲に周方向に等間隔に配置された、複数(本実施の形態においては3つ)の、軸方向に貫通する貫通孔372aが形成されている。各貫通孔372aにおける上側の開口部には、球状の第2開閉弁302の下端面の形状に沿う凹部が形成されている。中央部372の外周面には、全周に渡って溝372bが形成されており、この溝372bに、ユニット本体330との間の隙間をシールするOリング等の封止部材374が嵌め込まれている。
【0048】
下端部373の外周面には、ユニット本体330の下端部に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ373aが形成されている。下端部373の内側には、ポンプ600にて吐出されたオイルのごみを捕集する捕集部材375が設けられている。
【0049】
支持部材370は、上記雄ねじ373aがユニット本体330に形成された雌ねじ361に締め付けられることで、ユニット本体330に装着される。そして、上端部371の内側に、3つの第2開閉弁302、第2コイルスプリング312及び3つの第2開閉弁302を押さえる押さえ部材378を収容する。第2開閉弁302は、中央部372に形成された貫通孔372aにおける上側の開口部に着座することで貫通孔372aを塞ぐ。
【0050】
<押さえ部材378の構成>
押さえ部材378は、内径が同じで外径が互いに異なる2つの円筒状の第1部378a及び第2部378bを有する。押さえ部材378は、支持部材380の円柱状部383に支持されながら軸方向に移動する。
押さえ部材378は、第2コイルスプリング312から下方向の付勢力を受けて、第2部378bの下端面が3つの第2開閉弁302に接触する位置に位置決めされる。
【0051】
<支持部材380の構成>
支持部材380は、円筒状の円筒状部381と、円筒状部381における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部382と、内向部382における下端部から下方向に向かう円柱状の円柱状部383とを有している。
【0052】
支持部材380には、内向部382及び円柱状部383を軸方向に貫通する貫通孔384が形成されている。貫通孔384を介して、円筒状部381の内部と、円柱状部383よりも下方の部位とが連通している。
支持部材380には、円筒状部381の内側と外側とを連通する径方向の貫通孔である連通孔385が形成されている。連通孔385は、周方向に等間隔に複数形成されている。
内向部382には、上端面から軸方向上側に突出した凸部382aが設けられている。凸部382aにおける貫通孔384の開口部には、第3開閉弁303の下端面の形状に沿う凹部が形成されている。
【0053】
支持部材380の円筒状部381の内側には、第4開閉弁304と、第3開閉弁303と、第3コイルスプリング313と、第3コイルスプリング313の上端部を支持する支持部材386と、第3開閉弁303の径方向への移動を抑制する抑制部材387と、が収容されている。
【0054】
支持部材386は、中央部に第3開閉弁303の直径よりも小さい径の貫通孔が形成されたドーナツ状の薄板である。支持部材386は、この貫通孔の周囲が第3コイルスプリング313の上端部に接触することで、第3コイルスプリング313の上端部を支持する。第3開閉弁303は、支持部材386の中央部の貫通孔に嵌ることで下方向への移動が抑制される。支持部材386が受ける、第3開閉弁303が下方へ移動しようとする力と、第3コイルスプリング313から受ける上向きの力とが釣り合う位置で、支持部材386の位置が定まる。本実施の形態においては、第3開閉弁303がプッシュロッド316から押されていない場合には、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの下側の開口部を塞ぐように、第3コイルスプリング313のバネ力が設定されている。他方、第3開閉弁303がプッシュロッド316から強く押されている場合には、第3開閉弁303が凸部382aに載り、貫通孔384の上側の開口部を塞ぐように、第3コイルスプリング313のバネ力が設定されている。
【0055】
抑制部材387は、中央部に第3開閉弁303の直径よりも大きい径の貫通孔387aが形成されたドーナツ状の薄板である。抑制部材387の貫通孔387aの内側に第3開閉弁303が配置されることで、第3開閉弁303の径方向への移動が抑制される。そして、抑制部材387における貫通孔387aの周囲には、周方向に等間隔に複数の貫通孔387bが形成されており、これら複数の貫通孔を介してオイルが軸方向に流通する。
【0056】
<部材395の構成>
部材395は、内径が同じで外径が互いに異なる3つの円筒状の第1部396と第2部397と第3部398とを有する。
円筒状部381の上端面が第1部396の下端面に突き当たることで支持部材380の上方向への移動が抑制される。また、第1部396の外周面には、全周に渡って凹んだ溝396aが形成されている。溝396aに、ユニット本体330との間の隙間をシールするOリング等の封止部材399が嵌め込まれている。なお、部材395は、ユニット本体330と一体に形成されてもよい。
【0057】
第2部397は、円筒状部381の内側に嵌め込まれる。
第3部398と円筒状部381との間にドーナツ状の樹脂やゴムなどの弾性部材であるシール部材314が圧入されている。第4開閉弁304がシール部材314に接触することで、第4開閉弁304とシール部材314との間の流路がシールされる。
部材395の内側にプッシュロッド316の第3軸部319が配置されている。また、本実施の形態においては、部材395の内径は、ユニット本体330の上端部340に形成された凹部344の径よりも小さい。
【0058】
<支持部材388の構成>
支持部材388は、中央部に円柱状部383を配置可能な貫通孔を有する、軸方向の一方側から見た場合にプラス(+)形状をした薄板である。支持部材388は、下端面で第2コイルスプリング312の上端部を支持する。
支持部材388は、支持部材370の上端部371の上端面に突き当たることで下側への移動が抑制される。
支持部材388は、板バネ389から受ける下向きの付勢力と、第2コイルスプリング312から受ける上向きの付勢力とが釣り合う位置に位置決めされる。
【0059】
<支持部材400の構成>
支持部材400は、
図4に示すように、円筒状の円筒状部401と、円筒状部401における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部402とを有している。
円筒状部401における上端部の外周面にはキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ403が形成されている。支持部材400は、内向部402とソレノイド320との間に、ユニット本体330を保持する。
【0060】
以上のように構成された流路切替ユニット300においては、コイル321への通電が停止しているか又は予め定められた第1基準電流未満の電流が供給されている場合には、ケース325からの作動ロッド324の突出量が、予め定められた第1基準量未満となる。本実施の形態において、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満である場合、制御弁305は、溝305aと第1連通孔349aとが連通する位置に配置される。
【0061】
コイル321へ第1基準電流以上の電流が供給されている場合には、ケース325からの作動ロッド324の突出量が、第1基準量以上となる。突出量が第1基準量以上である場合には、溝305aの軸方向の位置が、第1連通孔349aよりも下側となるように、作動ロッド324により制御弁305が押し下げられる。溝305aが第1連通孔349aよりも下方に位置する場合には、溝305aと第1連通孔349aとが連通しない。
【0062】
コイル321へ、第1基準電流よりも大きい値に予め定められた第2基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド324がさらに下方に移動し、ケース325からの作動ロッド324の突出量が、第1基準量よりも大きい値に予め定められた第2基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第2基準量以上である場合、プッシュロッド316は、制御弁305及び第3開閉弁303と接触する。
【0063】
コイル321へ第2基準電流よりも大きい値に予め定められた第3基準電流以上の電流が供給されている場合には、ケース325からの作動ロッド324の突出量が、第2基準量よりも大きい値に予め定められた第3基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第2基準量よりも大きくなると、制御弁305を介してプッシュロッド316が下方へと押される。このようにして下方へ移動したプッシュロッド316が、第2貫通孔393bの開口部から離す方向へと第3開閉弁303を押すことにより、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部から離れる。第3基準量については、後で説明する。
【0064】
コイル321へ第3基準電流よりも大きい値に予め定められた第4基準電流以上の電流が供給されている場合には、ケース325からの作動ロッド324の突出量が、第3基準量よりも大きい値に予め定められた第4基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第4基準量以上である場合には、プッシュロッド316により、凸部382a側へと押された第3開閉弁303が、凸部382aと接触し、貫通孔384の上側の開口部が第3開閉弁303によって塞がれる。
【0065】
以下では、コイル321への通電が停止しているか又は第1基準電流未満の電流が供給されることにより、溝305aと第1連通孔349aとが連通し、背圧室B1とリザーバ室40とが溝305aを介して連通する状態を、第1切替状態と称す。
【0066】
また、コイル321へ第1基準電流以上第2基準電流以下の電流が供給され、溝305aと第1連通孔349aとが連通しない位置まで制御弁305を押し下げることにより、背圧室B1とリザーバ室40とが溝305aを介して連通せず、且つ、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部を塞いでいる状態を、第2切替状態と称す。
【0067】
また、コイル321へ第2基準電流よりも大きな電流が供給され、背圧室B1とリザーバ室40とが溝305aを介して連通せず、且つ、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部と貫通孔384の開口部との両方を塞がない状態を、第3切替状態と称す。
【0068】
また、コイル321へ第4基準電流以上の電流が供給され、背圧室B1とリザーバ室40とが溝305aを介して連通せず、且つ、第3開閉弁303が貫通孔384の開口部を塞いでいる状態を、第4切替状態と称す。この第4切替状態においては、後述するように、第4開閉弁304がシール部材314から離れている。
【0069】
<フロントフォーク21の作用>
以上のように構成されたフロントフォーク21は、スプリング500が自動二輪車1の車重を支えて衝撃を吸収し、減衰力発生ユニット130がスプリング500の振動を減衰する。
フロントフォーク21の圧縮行程においては、ピストン131が、シリンダ230に対して上方へ移動する。これにより、第1油室51のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、バルブ137が開き、オイルは第1油室51から第2油室52に流入する。このオイルの流れは、バルブ137で絞られ、圧縮行程時における減衰力を得る。
減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230などは、シリンダ230内のオイルをジャッキ室60又はリザーバ室40へ供給するポンプとして機能する。以下において、ポンプとして機能するこれらの部材をまとめて、「ポンプ600」と称する。
【0070】
フロントフォーク21の伸張行程においては、ピストン131が、シリンダ230に対して下方へ移動する。これにより、第2油室52のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、バルブ136が開き、オイルは第2油室52から第1油室51に流入する。このオイルの流れは、バルブ136で絞られ、伸張行程時における減衰力を得る。
また、伸張行程時にシリンダ230内部からロッド150が退出したことに起因して、ロッド退出体積分のオイルが、リザーバ室40から第1油室51へ供給される。
【0071】
<流路切替ユニット300の切替状態に応じたオイルの流通状態>
図6は、流路切替ユニット300が第1切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、ポンプ600から吐出されたオイルは、
図6に矢印P1で示すように流れて、ユニット本体330の外部に排出される。このようにして、ユニット本体330の外部に排出されたオイルは、矢印P1で示すように、径方向突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0072】
また、第1切替状態である場合、背圧室B1の圧力は低い。そのため、軸方向連通孔351を通って上側へ向かったオイルは、第1開閉弁301を上方へ移動させ、傾斜面301cを第3凹部346cの開口部から離間させる。そして、傾斜面301cとユニット本体330との間の隙間を通ったオイルは、連通孔346dを通り、排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0073】
このように、軸方向連通孔351、連通孔346d、及び排出流路41は、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路R1(
図3参照)として機能する。
また、軸方向連通孔351、貫通孔301e、側方凹部342b、溝305a、第1連通孔349a、及び排出流路41は、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する迂回路として機能する。制御弁305は、この迂回路を開閉することで第1開閉弁301の開閉を制御する弁として機能する。
また、ユニット本体330に形成された、側方凹部342b、収容部342a、及び第1連通孔349aは、オイルが背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路として機能する。制御弁305は、排出流路を開閉することで第1開閉弁301の開閉を制御する弁として機能する。
【0074】
図7は、流路切替ユニット300が第2切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、背圧室B1とリザーバ室40とは溝305aを介して連通しない。そのため、背圧室B1のオイルは、溝305aを通ってリザーバ室40に向かわない。一方、軸方向連通孔351と背圧室B1とは、貫通孔301eを介して連通している。
第2切替状態である場合、第1開閉弁301が第1連通路R1を閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、
図7に矢印P2で示したように流れ、支持部材380の外周面と、ユニット本体330の内周面との間の隙間を通って上方へ向かう。その後、オイルは、第3連通孔357を通ってユニット本体330の外側に向かい、続いて、シリンダ230の外周面とベース部材260の内周面との間に形成された環状流路61を通って、ジャッキ室60に向かう。
【0075】
このように、支持部材370の貫通孔372a、支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、第3連通孔357、及び環状流路61は、シリンダ230内とジャッキ室60とを連通する第2連通路R2(
図3参照)として機能する。第2開閉弁302は、シリンダ230内からジャッキ室60へのオイルの流れを許容するとともにジャッキ室60からシリンダ230内へのオイルの流れを妨げるチェック弁でもある。
【0076】
なお、第2切替状態である場合、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部を塞いでいる。それゆえ、円筒状部381の内周面と、第2部392の下端面と、内向部382の上端面とにより囲まれた空間S1と、ジャッキ室60とは、貫通孔384や、隣接する複数の第2開閉弁302、302の間の隙間を介して、連通している。
また、円筒状部381の内周面と第1部391の外周面との間の空間S2と、ジャッキ室60とは、連通孔385を介して連通している。
その結果、第4開閉弁304に対して上方向の力を加える空間S1内のオイルの圧力と、第4開閉弁304に対して下方向の力を加える空間S2内のオイルの圧力とは同じである。そして、第4開閉弁304における、空間S1内のオイルの圧力を受ける第1受圧面積(第2部392の下端面の面積)の方が、空間S2内のオイルの圧力を受ける第2受圧面積(第2部392の上端面の面積)よりも大きいので、第4開閉弁304は、シール部材314に接触したままとなる。
【0077】
図8は、流路切替ユニット300が第3切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
第3切替状態である場合、
図8に矢印P3で示すように、ジャッキ室60のオイルは、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60のオイルは、環状流路61、第3連通孔357、支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間を通って下方へ向かい、上端部371の内周面と円柱状部383の外周面との間の隙間G1に進入する。そして、隙間G1のオイルは、隣接する複数の第2開閉弁302、302の間の隙間、貫通孔384、第3開閉弁303と第4開閉弁304との間の隙間、第2貫通孔393bの内周面と第2軸部318の外周面との間の隙間を通って上方へ向かう。上方へ向かったオイルは、第2連通孔349b、及び排出流路41を通り、リザーバ室40に向かう。
【0078】
このように、環状流路61、第3連通孔357、支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、貫通孔384、第3開閉弁303と第4開閉弁304との間の隙間、第2貫通孔393bの内周面と第2軸部318の外周面との間の隙間、第2連通孔349b、及び排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第3連通路R3(
図3参照)として機能する。また、第3開閉弁303が、この第3連通路R3を開閉する。
また、第3連通路R3のうち、空間S1の上流側にある、環状流路61、第3連通孔357、支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、及び貫通孔384が、ジャッキ室60から空間S1へ向かう流入流路として機能する。第3開閉弁303が、この流入流路をも開閉する。
【0079】
なお、第3切替状態である場合、第3開閉弁303と第2貫通孔393bの開口部との間の隙間G2が第3連通路R3における最小絞り部となるように、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部から離れている。第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部から離れている状態では、空間S1内のオイルの圧力は、空間S2内のオイルの圧力よりも小さいが、第1受圧面積の方が第2受圧面積よりも大きいので、第4開閉弁304は、シール部材314に接触したままとなる(空間S1内のオイルの圧力×第1受圧面積>空間S2内のオイルの圧力×第2受圧面積)。
【0080】
言い換えれば、第3切替状態である場合に第4開閉弁304がシール部材314に接触したままとなるように、以下のように設定されている。すなわち、隙間G2により形成される流路の面積を、貫通孔384の流路面積(流入流路の最小面積)や、第2軸部318の外周面と第2貫通孔393bの内周面との間の隙間G3により形成される流路の面積(隙間G2よりも下流側の流路の最小面積)よりも小さくして隙間G2が最小絞り部となるように、第3基準量が設定されている。また、空間S1内のオイルの圧力×第1受圧面積>空間S2内のオイルの圧力×第2受圧面積となるように、第1受圧面積及び第2受圧面積を考慮して、第3基準量が設定されている。
【0081】
図9は、流路切替ユニット300が第4切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
第4切替状態である場合、第3開閉弁303が貫通孔384の開口部を塞いでいるため、空間S1内にオイルの流入が少ないか又はオイルが流入しない。そのため、空間S1内のオイルの圧力が、第3切替状態である場合よりも小さくなり、第1受圧面積の方が第2受圧面積より大きくても、第4開閉弁304に加わる下向きの力が上向きの力よりも大きくなる(空間S1内のオイルの圧力×第1受圧面積<空間S2内のオイルの圧力×第2受圧面積)。その結果、第4開閉弁304は、シール部材314から離れる。そのため、
図9に矢印P4で示すように、ジャッキ室60のオイルは、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間を通って、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60のオイルは、環状流路61、第3連通孔357、連通孔385、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間、第2連通孔349b、及び排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0082】
このように、環状流路61、第3連通孔357、連通孔385、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間、第2連通孔349b、及び排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第4連通路R4(
図3参照)として機能する。また、第4開閉弁304が、この第4連通路R4を開閉する。
【0083】
<車高の昇降について>
以上述べたように作用するフロントフォーク21において、流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、圧縮行程時に、ポンプ600から吐出されたオイルがジャッキ室60に流入し、ジャッキ室60のオイル量が増す。その結果、ベース部材260に対して上端部支持部材270が下方へ移動する。これによりスプリング500のバネ長が短くなると、バネ長が短くなる前と比べてスプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が大きくなる。その結果、車体フレーム11から前輪2側へ力が作用したとしても両者の相対位置を変化させない初期セット荷重(プリロード)が大きくなる。かかる場合、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合には、フロントフォーク21の沈み込み量が小さくなる。それゆえ、上述のようにしてスプリング500のバネ長が短くなると、バネ長が短くなる前と比べて、シート19の高さが上昇する(車高が高くなる)。
【0084】
他方、流路切替ユニット300が第3切替状態や第4切替状態である場合、ジャッキ室60のオイル量が減少する。その結果、ベース部材260に対して上端部支持部材270が上方へ移動する。これによりスプリング500のバネ長が長くなると、バネ長が長くなる前と比べてスプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が小さくなる。かかる場合、初期セット荷重(プリロード)が小さくなり、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合のフロントフォーク21の沈み込み量が大きくなる。それゆえ、上述のようにしてスプリング500のバネ長が長くなると、バネ長が長くなる前と比べて、シート19の高さが下降する(車高が低くなる)。なお、流路切替ユニット300が第4切替状態である場合には、第3切替状態である場合よりもジャッキ室60のオイルの量が高速で減るので、第3切替状態である場合よりも高速で車高が低くなる。
【0085】
なお、流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、圧縮行程時にポンプ600から吐出されたオイルはリザーバ室40に流入するので、ジャッキ室60のオイル量は増減しない。それゆえ、シート19の高さが維持される(車高が維持される)。
【0086】
このように、本実施の形態に係る流路切替ユニット300は、供給される電流量に応じて、第1連通路R1、第2連通路R2、及び第3連通路R3のいずれかの連通路を開くことが可能である。つまり、流路切替ユニット300は、1つのユニットにて、車高を上昇させる上昇モード、車高を下降させる下降モード、及び車高を維持する維持モードの3つの制御モードを、電流量に応じて制御することができる。また、第3切替状態及び第4切替状態を有しているので、流路切替ユニット300は、下降モードにおいては、車高を低速で下降させることが可能な低速下降モードと、車高を高速で下降させることが可能な高速下降モードとを実現することができる。
【0087】
<下降モードから維持モードへの切り替えについて>
図10Aは、プッシュロッド316の概略構成を示す図である。
図10Bは、
図10AのXB部の断面図である。
プッシュロッド316は、第3軸部319に嵌め込まれたワッシャ700を有している。ワッシャ700は、中央部に貫通孔701が形成された円盤状の金属部材である。また、ワッシャ700には、貫通孔701の周囲に、周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては8つ)のスリット702が形成されている。そして、ワッシャ700は、スリット702よりも外周側に位置する平面部703と、スリット702間の部位であって、平面部703に対して傾斜した傾斜部704と、を有している。複数の傾斜部704の先端は、略円形状の貫通孔701に面している。貫通孔701の孔径は、第3軸部319の外径よりも小さく、ワッシャ700は第3軸部319に圧入されることで第3軸部319に嵌め込まれている。傾斜部704の先端部と第3軸部319の外周面との間の摩擦力により、ワッシャ700と本体316aとは一体となって移動する。
【0088】
ワッシャ700は、傾斜部704が平面部703の上方に位置するように、本体316aに嵌め込まれている。
流路切替ユニット300においては、プッシュロッド316が第3軸部319の外周面から外側に突出したワッシャ700を有していることにより、第4切替状態から第1切替状態へ迅速に切り替わる。以下に、この事象について、プッシュロッド316がワッシャ700を有していない構成と比較しながら説明する。
【0089】
車高を低くするために流路切替ユニット300が第4切替状態にされているときに、車高を維持するために流路切替ユニット300を第1切替状態にする場合を考える。
流路切替ユニット300が第4切替状態である場合には、
図9に示すように、ジャッキ室60のオイルは、第4連通路R4(
図3参照)を介してリザーバ室40に至る。この第4切替状態であるときに第1切替状態にするべくコイル321への通電が停止されると、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満となる。すると、制御弁305が制御弁コイルスプリング315からの力を受けて上方へ移動する。また、第4切替状態である場合には、ワッシャ700の平面部703及び傾斜部704が、ジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルからの力を受ける。これにより、プッシュロッド316が上方へ移動する。プッシュロッド316が上方へ移動すると、第3コイルスプリング313から力を受けている第3開閉弁303が上方へ移動し、第3開閉弁303が凸部382aから離れる。これにより、オイルが貫通孔384を流通できるようになる。その結果、第4開閉弁304は、第3開閉弁303からの力を受けるとともに、環状流路61、第3連通孔357、支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、及び貫通孔384を通って空間S1に至ったオイルからの力を受けることで上方へ移動し、第4連通路R4を閉じる。第4連通路R4が閉じられることにより、流路切替ユニット300は第1切替状態となり、車高が維持される。
【0090】
これに対して、プッシュロッド316がワッシャ700を有していない場合には、ワッシャ700を有している場合に比べて、プッシュロッド316は、上向きに流れるオイルから受ける力が小さくなる。さらに、フロントフォーク21の圧縮行程時にポンプ600から吐出されたオイルにより、第3軸部319の上端側の部位が高圧となるため、プッシュロッド316は上方へ移動するのを妨げられる。加えて、プッシュロッド316には、重力により下向きの力が作用する。その結果、プッシュロッド316がワッシャ700を有していない場合、プッシュロッド316は上方へ移動し難い。
プッシュロッド316がワッシャ700を有することにより、流路切替ユニット300が第4切替状態であるときにコイル321への通電が停止された場合に、プッシュロッド316を迅速に上方へ移動させることができる。
【0091】
ワッシャ700の大きさは、例えば以下のように設定することができる。すなわち、フロントフォーク21の圧縮行程初期に背圧室B1に生じる圧力に起因する力(当該圧力×第3軸部319の断面積)に重力に起因する力を加えた力よりも、ワッシャ700がジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルから受ける力(当該オイルの圧力×(平面部703の断面積と傾斜部704の軸方向に直交する方向の面積との和(以下、「ワッシャ受圧面積」と称する場合がある。)))の方が大きくなるように設定すると良い。
他方、ワッシャ受圧面積を大きくするとジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルの流路が狭くなる。そのため、ワッシャ700が収容される、凹部344の断面積からワッシャ受圧面積を減算した面積(以下、「ワッシャ部流路面積」と称する場合がある。)が、その上流の流路面積よりも大きくなるように設定すると良い。例えば、ワッシャ部流路面積が、連通孔385の断面積と連通孔385の数とを乗算することにより得られる合計面積よりも大きくなるように設定すると良い。
【0092】
ワッシャ700が配置される位置は、第4連通路R4上であれば特に限定されない。例えば、支持部材380の開口部を覆う部材395の下端面よりも上側であって、且つ、第2連通孔349bよりも下側に、ワッシャ700を配置することができる。
本実施の形態においては、凹部344の径が、部材395の内径よりも大きいことから、ワッシャ700が凹部344内に収容されるように配置されている。凹部344内にワッシャ700を配置することで、ワッシャ700を部材395の内側に配置する場合に比べて、ワッシャ受圧面積を大きくすることができるので、プッシュロッド316をより迅速に上方に移動させることが可能となる。
ワッシャ700は、部材395の内側に配置しても良い。
【0093】
また、ワッシャ700は、傾斜部704が平面部703よりも上側に位置するように、本体316aに嵌め込まれている。これにより、ワッシャ700は、本体316aから脱落し難い。ワッシャ700は、平面部703がオイルから受ける上向きの力により、傾斜部704の先端が内側に移動する方向のモーメントを受ける。その結果、ワッシャ700がオイルから力を受けると、傾斜部704の先端と第3軸部319の外周面との間の摩擦力が大きくなるので、ワッシャ700が本体316aから脱落し難くなる。これに対して、傾斜部704が平面部703の下方に位置するように、ワッシャ700を本体316aに嵌め込むと、ワッシャ700は、平面部703がオイルから受ける上向きの力により、傾斜部704の先端が外側に移動する方向のモーメントを受ける。その結果、ワッシャ700がオイルから力を受けると、傾斜部704の先端と第3軸部319の外周面との間の摩擦力が小さくなるので、ワッシャ700が本体316aから脱落し易くなる。
このように、傾斜部704を平面部703よりも上側に配置することにより、ワッシャ700が本体316aから脱落し難くなるので、本体316aとワッシャ700とを確度高く一体として移動させることができる。
【0094】
また、ワッシャ700には、貫通孔701の周囲に、複数のスリット702が形成されている。これにより、プッシュロッド316が制御弁305により押されて下方へ移動する際には、スリット702を通ってオイルが上方へ移動できるので、プッシュロッド316が横方向に振れることなく真っ直ぐ下方へ移動し易くなる。それゆえ、プッシュロッド316がワッシャ700を有していても、確度高く第3開閉弁303を下方へ移動させることが可能となる。
【0095】
上述した流路切替ユニット300は、自動二輪車用の流路制御装置の一例である。流路切替ユニット300において、第1の状態は、第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部を塞いだ状態であり、第2の状態は、第3開閉弁303が支持部材380の内向部382の凸部382aに接触した状態であることを例示することができる。
また、フロントフォーク21は、自動二輪車用の車高調整装置の一例である。
【0096】
流路切替ユニット300においては、第4連通路R4を介してジャッキ室60からリザーバ室40へオイルが向かっているときに、プッシュロッド316の一方の端部が制御弁305により押圧されなくなった場合(コイル321への通電が停止された場合)に、ワッシャ700がオイルからの圧力を受けて移動する。これにより、第3開閉弁303が迅速に上記第1の状態となり、第4開閉弁304が迅速に第4連通路R4を閉じる位置に移動する。そして、第4連通路R4が閉じることでジャッキ室60からリザーバ室40へオイルが向わなくなる。その結果、コイル321への通電が停止されたにも関わらず、車高が低下してしまうことが抑制される。
【0097】
ここで、第4連通路R4の一部は、本体316aの外周面と、本体316aの外周を覆うユニット本体330や部材395の内周面との間の空間にて形成され、ワッシャ700は、この空間に配置されている。これにより、プッシュロッド316は、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かうオイルの圧力を確度高く受けることができる。
また、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かうオイルの圧力を受けるように、本体316aの外周面から本体316aの径方向外側に突出した突出部は、本体316aに嵌め込まれたワッシャ700にて形成される。これにより、本体316aにワッシャ700を嵌め込むことで突出部を形成することができるので、簡易な構成でジャッキ室60からリザーバ室40へ向かうオイルの圧力を受けるようにすることができる。なお、ワッシャ700は、円盤状であることを例示しているが、矩形状等の他の形状であっても良い。
【0098】
また、ワッシャ700は、中央部に本体316aが嵌め込まれる貫通孔701が形成されているとともに、貫通孔701の周囲には本体316aの軸方向に対して傾斜した傾斜部704が形成され、傾斜部704は、オイルがジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう方向(上方)に行くに従って徐々に径が小さくなっている。これにより、ワッシャ700を、本体316aから脱落し難くすることができ、本体316aとワッシャ700とを一体として移動させることができる。
【0099】
また、プッシュロッド316のワッシャ700には、本体316aの軸方向に貫通する複数の孔の一例としてのスリット702が形成されている。これにより、プッシュロッド316が下方へ移動する際に、スリット702を通ってオイルが上方へ移動するので、プッシュロッド316が横方向に振れることなく真っ直ぐ下方へ移動させることができる。
【0100】
(プッシュロッドの第1変形例)
図11Aは、第1変形例に係るプッシュロッド416の概略構成を示す図である。
図11Bは、
図11AのXIB部の断面図である。
第1変形例に係るプッシュロッド416は、上記プッシュロッド316の本体316aに代えて、本体416aを備えている点が異なる。本体416aは、本体316aに対して、外周面から凹んだ溝416bが形成されている点が異なる。以下、本体316aと異なる点について説明する。本体416aと本体316aとで、同じ形状、機能を有する部位については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0101】
本体416aには、第3軸部319に、外周面から凹んだ溝416bが全周に亘って形成されている。そして、この溝416bに、傾斜部704の先端部が嵌め込まれている。
このように、本体416aに溝416bが形成され、傾斜部704の先端が溝416bに嵌り込んでいても良い。
【0102】
かかる構成により、平面部703がオイルから圧力を受けた場合においても、傾斜部704の先端部が溝416bに嵌まっているので、ワッシャ700は、本体416aから脱落し難い。その結果、本体416aとワッシャ700とが確度高く一体として移動する。また、本体416aに対するワッシャ700の位置が精度高く定まるので、本体416aに対してワッシャ700を組み付け易くなる。
また、傾斜部704が平面部703の下方に位置するように嵌め込まれた構成であっても、傾斜部704の先端部を溝416bに嵌め込むことで、ワッシャ700を本体416aから脱落し難くすることができる。
【0103】
(プッシュロッドの第2変形例)
図12Aは、第2変形例に係るプッシュロッド516の概略構成を示す図である。
図12Bは、
図12AのXIIB部の断面図である。
第2変形例に係るプッシュロッド516は、上記プッシュロッド316のワッシャ700に代えて、ワッシャ710を備えている点が異なる。ワッシャ710は、ワッシャ700に対して、孔711が形成されている点が異なる。以下、ワッシャ700と異なる点について説明する。ワッシャ710とワッシャ700とで、同じ形状、機能を有する部位については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0104】
ワッシャ710には、平面部713及び傾斜部714に、ワッシャ710の上方と下方とを連通する複数の孔711が形成されている。
このように、ワッシャ710には、本体316aの軸方向に貫通する複数の孔711が形成されていても良い。複数の孔711が形成されていることにより、プッシュロッド516が下方へ移動する際に、孔711を通ってオイルが上方へ移動するので、プッシュロッド516が横方向に振れることなく真っ直ぐ下方へ移動し易くなる。
【0105】
(プッシュロッドの第3変形例)
図13Aは、第3変形例に係るプッシュロッド616の概略構成を示す図である。
図13Bは、
図13AのXIIIB部の断面図である。
第3変形例に係るプッシュロッド616は、上記プッシュロッド316のワッシャ700に代えて、ワッシャ720を備えている点が異なる。ワッシャ720は、ワッシャ700に対して、外周部が湾曲している点が異なる。以下、ワッシャ700と異なる点について説明する。ワッシャ720とワッシャ700とで、同じ形状、機能を有する部位については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0106】
ワッシャ720は、スリット702間の傾斜部704と、スリット702よりも外周側に位置する湾曲した湾曲部725とを有している。湾曲部725は、オイルがジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう方向(上方)に行くに従って徐々に径が小さくなっている。ワッシャ720が湾曲部725を有していることにより、プッシュロッド616が下方へ移動する際に、湾曲部725の上面に発生する渦が小さくなる。その結果、湾曲部725の上面に発生する渦によりワッシャ720が横方向に振動することが抑制されるので、ワッシャ720の傾斜部704の先端が摩耗することが抑制される。
【0107】
(プッシュロッドの第4変形例)
図14A及び
図14Bは、第4変形例に係るプッシュロッド716の概略構成を示す図である。
第4変形例に係るプッシュロッド716は、棒状の本体716aと、本体716aの外周面から外側に突出した突出部716bとが一体的に構成されている点が、上記プッシュロッド316と異なる。以下、上記プッシュロッド316と異なる点について説明する。プッシュロッド716とプッシュロッド316とで、同じ形状、機能を有する部位については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0108】
本体716aは、本体316aと同様に、第1軸部317と、第2軸部318と、第3軸部319とを備えている。そして、
図14A及び
図14Bに示すように、突出部716bが第3軸部319に接合されることにより、本体716aと突出部716bとが一体的に設けられている。
このように、突出部716bは、本体716aと一体的に形成されていても良い。これにより、突出部716bを、本体716aから確度高く脱落し難くすることができ、本体716aと突出部716bとを確度高く一体として移動させることができる。
突出部716bを第3軸部319(本体716a)に一体的に設ける手法としては、
図14Aに示すように、円柱状の部材に対して削り加工を施すことを例示することができる。また、
図14Bに示すように、例えば、中央部に貫通孔716cが形成されたドーナツ状の薄板716dを本体716aに溶接することを例示することができる。
図14Bに示す態様の場合、薄板716dが突出部716bとして機能する。
【0109】
(プッシュロッドの第5変形例)
図15は、第5変形例に係るプッシュロッド816を備える流路切替ユニット300の概略構成を示す図である。
図16Aは、プッシュロッド816の概略構成を示す図である。
図16Bは、
図16AのXVIB部の断面図である。
プッシュロッド816においては、プッシュロッド316に対して、第4開閉弁304の内側に円盤状の内側ワッシャ730を有している点が異なる。以下、上述した実施の形態に係るプッシュロッド316と異なる点について説明する。第5変形例に係るプッシュロッド816とプッシュロッド316とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0110】
図15に示すように、プッシュロッド816は、本体316aと、ワッシャ700と、第3軸部319に嵌め込まれた内側ワッシャ730とを有している。
図16Aに示すように、内側ワッシャ730は、中央部に貫通孔731が形成された円盤状の金属部材であり、貫通孔731の周囲に、周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては8つ)のスリット732が形成されている。内側ワッシャ730は、スリット732よりも外周側に位置する平面部733と、スリット732間の部位であって、平面部733に対して傾斜した傾斜部734と、を有している。複数の傾斜部734の先端は、略円形状の貫通孔731に面している。貫通孔731の孔径は、第3軸部319の外径よりも小さく、内側ワッシャ730は第3軸部319に圧入されることで第3軸部319に嵌め込まれている。傾斜部734の先端部と第3軸部319の外周面との間の摩擦力により、内側ワッシャ730と本体316aとは一体となって移動する。
【0111】
内側ワッシャ730は、第1貫通孔393a内に位置するように、本体316aに嵌め込まれている。また、内側ワッシャ730は、傾斜部734が平面部733の上方に位置するように、本体316aに嵌め込まれている。
そして、プッシュロッド816を備える流路切替ユニット300においては、プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有していることにより、第3切替状態から第1切替状態へ迅速に切り替わる。以下に、この事象について、プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有していない構成と比較しながら説明する。
【0112】
車高を低くするために流路切替ユニット300が第3切替状態にされているときに、車高を維持するために流路切替ユニット300を第1切替状態にする場合を考える。
流路切替ユニット300が第3切替状態である場合には、
図8に示すように、ジャッキ室60のオイルは、第3連通路R3を介してリザーバ室40に至る。この第3切替状態であるときに第1切替状態にするべくコイル321への通電が停止されると、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満となる。すると、制御弁305が制御弁コイルスプリング315からの力を受けて上方へ移動する。また、第3切替状態である場合には、内側ワッシャ730の平面部733及び傾斜部734が、ジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルからの力を受ける。これにより、プッシュロッド816が上方へ移動する。プッシュロッド816が上方へ移動すると、第3コイルスプリング313から力を受けている第3開閉弁303が上方へ移動し、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部を塞ぐことにより、第3連通路R3を閉じる。これにより、流路切替ユニット300は第1切替状態となり、車高が維持される。
【0113】
これに対して、プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有していない場合には、内側ワッシャ730を有している場合に比べて、プッシュロッド816は、上向きに流れるオイルから受ける力が小さくなる。さらに、フロントフォーク21の圧縮行程時にポンプ600から吐出されたオイルにより、第3軸部319の上端側の部位が高圧となるため、プッシュロッド816は上方へ移動するのを妨げられる。加えて、プッシュロッド816には、重力により下向きの力が作用する。その結果、プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有していない場合、プッシュロッド816は上方へ移動し難い。
プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有することにより、流路切替ユニット300が第3切替状態であるときにコイル321への通電が停止された場合に、プッシュロッド816を迅速に上方へ移動させることができる。
【0114】
内側ワッシャ730の大きさは、例えば以下のように設定することができる。すなわち、フロントフォーク21の圧縮行程初期に背圧室B1に生じる圧力に起因する力(当該圧力×第3軸部319の断面積)に重力に起因する力を加えた力よりも、内側ワッシャ730がジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルから受ける力(当該オイルの圧力×(平面部733の断面積と傾斜部734の軸方向に直交する方向の面積との和(以下、「内側ワッシャ受圧面積」と称する場合がある。)))の方が大きくなるように設定すると良い。
他方、内側ワッシャ受圧面積を大きくするとジャッキ室60からリザーバ室40に向かうオイルの流路が狭くなる。そのため、内側ワッシャ730が収容される、第1貫通孔393aの断面積から内側ワッシャ受圧面積を減算した面積(以下、「内側ワッシャ部流路面積」と称する場合がある。)が、その上流の流路面積よりも大きくなるように設定すると良い。例えば、内側ワッシャ部流路面積が、第2貫通孔393bの内周面と第2軸部318の外周面との間の隙間の断面積よりも大きくなるように設定すると良い。
【0115】
内側ワッシャ730は、傾斜部734が平面部733の上方に位置するように、本体316aに嵌め込まれている。これにより、内側ワッシャ730が、本体316aから脱落し難くなる。
また、貫通孔731の周囲に、複数のスリット732が形成されていることにより、プッシュロッド816が制御弁305により押されて下方へ移動する際に、プッシュロッド816が横方向に振れることなく真っ直ぐ下方へ移動し易くなる。
【0116】
このように、プッシュロッド816を備える流路切替ユニット300は、迂回路の一例としての第3連通路R3が、第4開閉弁304の内側に備えられ、プッシュロッド816は内側ワッシャ730を有する。これにより、流路切替ユニット300が第3切替状態であるときにコイル321への通電が停止された場合に、プッシュロッド816が内側ワッシャ730を有していない構成よりも迅速に上方へ移動する。その結果、第3開閉弁303が迅速に第1の状態となり、第3連通路R3が閉じるので、ジャッキ室60からリザーバ室40へオイルが向わなくなる。その結果、コイル321への通電が停止されたにも関わらず、車高が低下してしまうことが抑制される。
【0117】
なお、プッシュロッド416が溝416bを有するのと同様に、プッシュロッド816も、第3軸部319に、外周面から凹んだ溝を全周に亘って形成し、当該溝に、傾斜部734の先端部を嵌め込んでも良い。この構成により、内側ワッシャ730を本体316aから脱落し難くすることができる。
【0118】
また、プッシュロッド516のワッシャ710が複数の孔711を有するのと同様に、プッシュロッド816も、内側ワッシャ730に軸方向に貫通する複数の孔を有していても良い。複数の孔を有することにより、プッシュロッド816が下方へ移動する際に、プッシュロッド816が横方向に振れることなく真っ直ぐ下方へ移動し易くなる。
【0119】
また、プッシュロッド616のワッシャ720が湾曲部725を有するのと同様に、プッシュロッド816の内側ワッシャ730も、スリット732よりも外周側に位置する湾曲した湾曲部を有していても良い。これにより、プッシュロッド816が下方へ移動する際に、湾曲部の上面に発生する渦が小さくなる。その結果、湾曲部の上面に発生する渦により内側ワッシャ730が横方向に振動することが抑制されるので、内側ワッシャ730の傾斜部734の先端が摩耗することが抑制される。
【0120】
また、プッシュロッド716が、本体716aと突出部716bとが一体的に構成されているのと同様に、プッシュロッド816も、第1貫通孔393a内に位置する部位に、本体316aと一体的に構成された内側突出部を設けても良い。これにより、内側突出部を、本体316aから確度高く脱落し難くすることができるので、本体316aと内側突出部とを確度高く一体として移動させることができる。
【0121】
なお、プッシュロッド816は、ワッシャ700に加えて、内側ワッシャ730を有しているが、かかる態様に限定されない。例えば、プッシュロッド816は、ワッシャ700に代えて内側ワッシャ730を有していても良い。内側ワッシャ730を有していることにより、第3切替状態であるときにコイル321への通電が停止された場合に、内側ワッシャ730を有していない構成よりもプッシュロッド816が迅速に上方へ移動する。
また、内側ワッシャ730は、円盤状であることを例示しているが、矩形状等の他の形状であっても良い。
【0122】
また、本発明におけるプッシュロッドは、上記第1変形例〜第5変形例の特徴点を適宜組み合わせた形態にすることも可能である。例えば、本体416aと、本体416aに嵌め込んだワッシャ710とを有するプッシュロッドであっても良い。
【0123】
上記説明では、コイル321への通電電流が大きくなるほど作動ロッド324のケース325からの突出量が大きくなるようにプランジャ323に軸方向の推力が発生するソレノイド320を例示したが、本発明におけるソレノイドは、当該形態に限定されない。例えば、コイル321への通電電流が大きくなるほどケース325からの作動ロッド324の突出量が小さくなるようにプランジャ323に軸方向の推力が発生する形態であっても良い。このように構成された流路切替ユニット300であっても、1つのユニットにて、車高を上昇させる上昇モード、車高を下降させる下降モード、及び車高を維持する維持モードの3つの制御モードを、電流量に応じて制御することができる。
【0124】
なお、上述した実施の形態においては、上昇モード、下降モード及び維持モードの3つの制御モードに切り替え可能な流路切替ユニット300を、フロントフォーク21に適用した構成を例示しているが、特に限定されない。上述した実施の形態に係る流路切替ユニット300を、リヤサスペンション22に適用してもよい。
また、上記説明では、自動二輪車用の流路制御装置及び車高調整装置について説明したが、本発明の流路制御装置及び車高調整装置は、3つの車輪を有する三輪車に適用しても良い。
流路制御装置は、オイルがジャッキ室からリザーバ室へ向かう第4連通路を開閉する第4開閉弁304と、第4連通路を閉じる位置に第4開閉弁304を移動させる第1の状態と、第4連通路を開く位置に第4開閉弁304を移動させる第2の状態とに遷移することで第4開閉弁304の開閉を制御する第3開閉弁303と、一方の端部が押圧されて他方へと移動することで他方の端部にて第3開閉弁303を第1の状態から第2の状態に遷移させるプッシュロッド本体316aと、ジャッキ室からリザーバ室へと向かうオイルの圧力を受けるように、プッシュロッド本体316aの外周面からプッシュロッド本体316aの径方向外側に突出したワッシャ700とを有するプッシュロッド316と、を備える。