(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面処理液を金属の表面に接触させる前に、当該金属の表面に、酸洗処理、粗化処理、耐熱処理、防錆処理または化成処理から選択される少なくとも1つの前処理を施すことを特徴とする請求項3記載の金属の表面処理方法。
金属が、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金またはこれらの合金であることを特徴とする請求項3ないし請求項6の何れかに記載の金属の表面処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属の表面処理液(以下、単に表面処理液または処理液と云うことがある)は、前記の化学式(I)で示されるトリアゾールシラン化合物を有効成分として含有するが、このトリアゾールシラン化合物は、化学式(Ia)〜(Id)で示されるトリアゾールシラン化合物を包含する。
【0014】
【化2】
(式中、X
1、X
2およびRは、前記と同様である。)
【0015】
なお、化学式(Ia)で示されるトリアゾールシラン化合物は、前記の化学式(I)においてnが0である場合のトリアゾールシラン化合物(以下、トリアゾールトリアルコキシシラン化合物と云うことがある)である。
同様に、化学式(Ib)で示されるトリアゾールシラン化合物は、nが1である場合のトリアゾールシラン化合物であり、化学式(Ic)で示されるトリアゾールシラン化合物は、nが2である場合のトリアゾールシラン化合物であり、化学式(Id)で示されるトリアゾールシラン化合物は、nが3である場合のトリアゾールシラン化合物である。
【0016】
化学式(Ib)〜(Id)で示されるトリアゾールシラン化合物は、表面処理液中に存在する化学式(Ia)で示されるトリアゾールトリアルコキシシラン化合物が、加水分解されて生成するもの(種)である。
【0017】
本発明の実施においては、表面処理液中の成分の原料として、化学式(Ia)で示されるトリアゾールトリアルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
【0018】
このトリアゾールトリアルコキシシラン化合物は、
1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−3−メチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジエチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジエチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−エチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−エチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジアミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジアミノ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メルカプト−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メルカプト−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メルカプト−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メルカプト−3−メチル−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メルカプト−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−メルカプト−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメルカプト−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
5−メチルチオ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−メチル−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−メチル−5−メチルチオ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メチルチオ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−メチルチオ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−メルカプト−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3−メルカプト−5−メチルチオ−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ビス(メチルチオ)−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールおよび
3,5−ビス(メチルチオ)−1−[3−(トリエトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールを表す(包含する)。
なお、本発明の実施においては、これらから選択される2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物は、化学式(II)で示されるトリアゾール化合物と、化学式(III)で示されるイソシアナトプロピルシラン化合物を、適量の反応溶媒中において適宜の反応温度および反応時間にて反応させることにより、概ね定量的に合成される(反応スキーム(A)参照)。
【0020】
【化3】
(式中、X
1、X
2およびRは、前記と同様である。)
【0021】
前記のトリアゾール化合物は、
1,2,4−トリアゾール、
3−メチル−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
3−エチル−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジエチル−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、
3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、
3−メルカプト−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、
3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール、
3−メチルチオ−1,2,4−トリアゾール、
3−メチルチオ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
5−エチル−3−メチルチオ−1,2,4−トリアゾール、
5−アミノ−3−メチルチオ−1,2,4−トリアゾール、
5−メルカプト−3−メチルチオ−1,2,4−トリアゾールおよび
3,5−ビス(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾールを表す(包含する)。
【0022】
前記のイソシアナトプロピルシラン化合物は、
3−イソシアナトプロピルトリメトキシシランおよび
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを表す(包含する)。
【0023】
本発明の表面処理液は、前記の化学式(Ia)で示されるトリアゾールトリアルコキシシラン化合物と水を混合することにより調製されるが、水と共に有機溶剤を併用してもよい。
なお、表面処理液の調製方法については、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物と水を混合した後に有機溶剤を加えてもよいし、該化合物と水および有機溶剤の混合液を混合してもよいし、該化合物と有機溶剤を混合した後に水を加えてもよい。
また、表面処理液の調製に使用される水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましい。
【0024】
前記の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンの他、アセトニトリル、2−ピロリドン、ホルムアミド、スルホラン、炭酸ジメチル、エチレンカーボネート、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、レブリン酸、フェノール、安息香酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の水と自由に混和するものが好ましい。
なお、本発明の実施においては、これらから選択される2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明の表面処理液を適応し得る被処理材の金属としては、銅または銅合金が好ましいが、アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀、金またはこれらの合金に対しても、本発明の表面処理液を適応し得ることが期待される。
【0026】
銅合金としては、銅を含む合金であれば特に限定されず、例えば、Cu−Ag系、Cu−Te系、Cu−Mg系、Cu−Sn系、Cu−Si系、Cu−Mn系、Cu−Be−Co系、Cu−Ti系、Cu−Ni−Si系、Cu−Cr系、Cu−Zr系、Cu−Fe系、Cu−Al系、Cu−Zn系、Cu−Co系等の合金を挙げることができる。
アルミニウム、チタン、ニッケル、スズ、鉄、銀または金の合金としては、例えば、アルミニウム合金(Al−Si系)、ニッケル合金(Ni−Cr系)、鉄合金(Fe−Ni系、ステンレス)等を挙げることができる。
【0027】
以下、本願の明細書において、「銅」とは、所謂金属銅と銅合金の双方を指すものとし、電子基板、リードフレーム等の電子部品、装飾品、建材等に使用される箔(電解銅箔、圧延銅箔)、メッキ膜(無電解銅メッキ膜、電解銅メッキ膜)、線、棒、管、板等の用途・形態において使用されるものである。なお、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線の場合には、銅の表面は平均粗さが0.1μm以下の平滑面であることが好ましい。
【0028】
化学式(Ia)で示されるトリアゾールトリアルコキシシラン化合物は、前述のとおり、水と接触すると加水分解されるが、この加水分解の態様をスキーム(B)に示した。
このスキームにおいては、前記の化学式(Ia)〜(Ic)で示されるトリアゾールシラン化合物の有するシリル基が加水分解される態様、即ち、トリアルコキシシリル基が、漸次、ジアルコキシヒドロキシシリル基、ジヒドロキシアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基に変化する様子が簡略的に示される。
【0030】
一般に、分子中にアルコキシシリル基を有する物質は、シランカップリング剤として作用することが知られている。
本発明の実施において使用するトリアゾールトリアルコキシシラン化合物は、分子中にトリアゾール環とアルコキシシリル基(-Si-OR)を有しており、トリアゾール環は、樹脂および銅と相互作用し、化学結合を形成すると推定される。
また、アルコキシシリル基は加水分解を受けて、ヒドロキシシリル基(-Si-OH)に変換され、このヒドロキシシリル基は銅表面に点在する酸化銅と化学結合すると推定される。
従って、銅と表面処理液を接触させることにより、銅の表面にはトリアゾール環やヒドロキシシリル基との結合により、化学式(I)で示されるトリアゾールシラン化合物に由来する化成皮膜が形成されて、この化成皮膜の表面に樹脂層を形成させた場合には、銅の表面に直に樹脂層を形成させる場合に比べて、銅と樹脂との接着性を高めることができる。
【0031】
本発明の実施においては、表面処理液中における化学式(I)で示されるトリアゾールシラン化合物の濃度が、トリアゾールトリアルコキシシラン化合物の濃度に換算して、0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることがより好ましい。
この濃度が0.001重量%未満である場合には、接着性の向上効果が十分ではなく、この濃度が10重量%を超える場合には、接着性の向上効果がほぼ頭打ちとなり、トリアゾールトリアルコキシシラン化合物の使用量が増えるばかりで経済的ではない。
【0032】
ところで、表面処理液中に生成したヒドロキシシリル基を有するトリアゾールシラン化合物(前記の化学式(Ib)〜(Id)参照)は、徐々に、互いに反応して脱水縮合し、ヒドロキシシリル基がシロキサン結合(Si-O-Si)を形成し(スキーム(B)参照)、水に溶け難いシランオリゴマー(スキーム(B)中の化学式(e)で示される基を有するトリアゾールシラン化合物、式中のxは重合度を表す)に変換される。
【0033】
表面処理液中におけるシランオリゴマーの生成量が多くなると、不溶解分が析出して(処理液が白濁し)、処理槽や処理槽に接続された配管、処理液中に浸漬された処理液の温度や液面を検出するためのセンサー類に付着し、円滑な表面処理が阻害される惧れがある。
これを避けるために、水に難溶性であるシランオリゴマーの溶解剤として、前述の有機溶剤を表面処理液中に含有させることが好ましい。
有機溶剤の含有量については、水100重量部に対して0.1〜90重量部の割合とすることが好ましく、1〜50重量部の割合とすることがより好ましい。
【0034】
本発明の表面処理液の調製においては、トリアゾールトリアルコキシシラン化合物の加水分解を促進させる為に、酢酸や塩酸等の酸、あるいは、水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリを使用(添加)してもよい。
【0035】
同様に、表面処理液の安定性や、前述のトリアゾールシラン化合物に由来する化成皮膜の均一性を向上させるために、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンや銅イオン、鉄イオン、亜鉛イオンなどの金属イオンを生成する物質を使用(添加)することもできる。
【0036】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のカップリング剤を併用(添加)してもよい。公知のカップリング剤としては、チオール基(メルカプト基)、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、クロロプロピル基等を有するシラン系カップリング剤が挙げられる。
【0037】
このようなシラン系カップリング剤の例としては、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、
ビニルトリクロルシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン化合物、
p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン化合物、
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシラン化合物、
3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン化合物、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、
N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン化合物、
3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピルシラン化合物、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン化合物、
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン化合物等を挙げることができる。
その他、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等も挙げることができる。
【0038】
本発明の表面処理液を金属の表面に接触させる方法に、特に制限はなく、浸漬、塗布、スプレー等の手段を採用することができる。
表面処理液と金属を接触させる時間(処理時間)については、1秒〜10分とすることが好ましく、5秒〜3分とすることがより好ましい。処理時間が1秒未満の場合には、金属の表面に形成される化成皮膜の膜厚が薄くなり、金属と樹脂の接着力が十分に得られず、一方10分より長くしても、化成皮膜の膜厚に大差はなく、接着性の向上も期待できない。
また、表面処理液を金属の表面に接触させる際の該処理液の温度については、5〜50℃とすることが好ましいが、前記の処理時間との関係において、適宜設定すればよい。
【0039】
本発明の表面処理液と金属を接触させた後は、金属を水洗することが好ましい。
水洗操作により、金属と化学結合することなく、単に金属に付着したトリアゾールシラン化合物を除去することができ、更に金属以外の材質の部材表面に付着したトリアゾールシラン化合物も除去することができる。
このように、単に付着したトリアゾールシラン化合物を除去することにより、後工程(例えば、メッキ処理)において使用される薬液への汚染を防止することができる。
金属を水洗した後は、室温〜150℃の温度で乾燥することが好ましい。
なお、水洗に使用する水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましいが、水洗の方法や時間に特に制限はなく、浸漬やスプレー等の手段による適宜の時間で構わない。
【0040】
表面処理液を金属の表面に接触させる前に、当該金属の表面に、酸洗処理、粗化処理、耐熱処理、防錆処理または化成処理から選択される少なくとも1つの前処理を施してもよい。
【0041】
前記の酸洗処理は、金属の表面に付着した油脂成分を除去する為と、金属の表面の酸化皮膜を除去する為に施される。この酸洗処理には、塩酸系溶液、硫酸系溶液、硝酸系溶液、硫酸−過酸化水素系溶液、有機酸系溶液、無機酸−有機溶剤系溶液や有機酸−有機溶剤系溶液等を使用することができる。
【0042】
前記の粗化処理は、アンカー効果による金属と樹脂の接着性を高める為に施される。この前処理により、金属の表面に凸凹形状が付与され、金属と樹脂材料との密着性を高めることができる。
この前処理においては、マイクロエッチング法、電気メッキ法、無電解メッキ法、酸化法(ブラックオキサイド、ブラウンオキサイド)、酸化・還元法、ブラシ研磨法、ジェットスクラブ法等の粗化手段を採用することができる。
【0043】
マイクロエッチング法においては、例えば、有機酸・第二銅イオン系、硫酸・過酸化水素系、過硫酸塩系、塩化銅系や塩化鉄系の各エッチング剤を使用することができる。
電気メッキ法においては、金属の表面に微細な金属粒子を析出させることにより、金属の表面に凸凹を形成させる。
【0044】
前記の耐熱処理においては、金属の表面に、ニッケル、ニッケル−リン、亜鉛、亜鉛−ニッケル、銅−亜鉛、銅−ニッケル、銅−ニッケル−コバルトまたはニッケル−コバルトから選択される少なくとも1種の皮膜が形成される。
この皮膜の形成は、公知の電気メッキ法を採用して行うことができるが、蒸着その他の手段を採用しても差し支えない。
【0045】
前記の防錆処理は、金属の表面の酸化腐食を防止する為に行われ、当該防錆処理の手段として、金属の表面に、亜鉛または亜鉛合金組成のメッキ皮膜や、電解クロメートのメッキ皮膜を形成させる方法を採用することができる。
【0046】
前記の化成処理においては、スズの不動態皮膜を形成する方法や、酸化銅の不動態皮膜を形成する方法を採用することができる。
【0047】
本発明の表面処理液を金属の表面に接触させる前に、銅イオンを含む水溶液を金属の表面に接触させてもよい。この銅イオンを含む水溶液は、金属の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。
銅イオン源としては、水に溶解する銅塩であれば特に限定されず、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、ギ酸銅、酢酸銅などの銅塩を挙げることができる。銅塩を水に可溶化するために、アンモニアや塩酸などを添加してもよい。
【0048】
本発明の表面処理液を金属の表面に接触させた後に、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液を金属の表面に接触させてもよい。この酸性またはアルカリ性の水溶液も、前記の銅イオンを含む水溶液と同様に、金属の表面に形成される化成皮膜の厚みを均一にさせる機能を有する。
酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、特に限定されないが、酸性水溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸などの有機酸を含む水溶液等を挙げることができる。アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、モノプロパノールアミン等のアミン類を含む水溶液を挙げることができる。
【0049】
本発明の表面処理液は、例えば、銅回路(銅配線層)とプリプレグ(絶縁樹脂層)との間の接着性(密着性)を高めることを目的とする銅の表面処理に好適である。
本発明によれば、銅配線層に接して絶縁樹脂層を有する積層体(例えば、多層配線構造を有するプリント配線板)において、銅配線層と絶縁樹脂層との間の接着性を高めることができる。
【0050】
前記の積層体は、本発明の表面処理液と銅配線の表面を接触させて、その後水洗して、銅配線表面に絶縁樹脂層を形成させることにより作製することができる。この接触の方法については、前述のとおりであり、表面処理液中への銅配線の浸漬または該処理液による銅配線へのスプレー等が簡便かつ確実であり好ましい。
また、前記水洗の方法についても特に制限はないが、洗浄水中への銅配線の浸漬または洗浄水による銅配線表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。
前記の絶縁樹脂層の形成には、公知の方法、例えば半硬化の樹脂を貼り付ける方法や溶剤を含む液状の樹脂を塗布する方法等を採用することができる。次いで、上下の配線を導通させる為に、ビアホールを形成する。このプロセスを繰り返すことにより、多層プリント配線板を作製できる。
【0051】
前記の銅配線については、無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製されたものでもよく、インナービアホール、スルーホール、接続端子等を含んだものでもよい。
【0052】
前記の絶縁樹脂層については、公知の樹脂を材質とするものであって構わない。
具体的な樹脂としては、耐熱性や絶縁性に優れた、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル(ポリフェニレンオキサイド)樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を挙げることができ、これらを混合したり、互いに変性したりして、組み合わせたものであってもよい。
【0053】
ところで、特開2009−19266号公報には、金属表面にシランカップリング剤を含む液を塗布する工程と、前記液を塗布した金属表面を、25〜150℃の温度で且つ5分以内で乾燥を行う工程と、乾燥させた金属表面を水洗する工程とを含むことを特徴とするシランカップリング剤皮膜の形成方法に関する発明が記載されている。
また、前記金属表面には、予め表面処理として浸漬メッキ液によりスズ等の接着性金属層を形成してよいとされている。
本発明の表面処理液は、前記の『シランカップリング剤を含む液』として使用し得るものである。なお、この特許公報に記載された事項は、引用により本明細書の一部を成すものとする。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した主原料は次のとおりである。
【0055】
[主原料]
・1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例1に合成例を示した)
・5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例2に合成例を示した)
・5−アミノ−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例3に合成例を示した)
・3,5−ジアミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例4に合成例を示した)
・3−メルカプト−5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールと3−アミノ−5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの混合物(参考例5に合成例を示した)
・5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例6に合成例を示した)
・3−アミノ−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール(参考例7に合成例を示した)
・イミダゾールシラン化合物(参考例8に合成方法を示した)
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、品名「KBM−903」)
・エチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業社製、試薬)
・ソルダーレジスト(アクリレート・エポキシ樹脂、太陽インキ製造社製、品名「PSR−4000AUS308」)
【0056】
[参考例1]
<1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
メタノール30gを、室温にて攪拌しながら、これに1,2,4−トリアゾール2.8g(0.04モル)を投入して溶解させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン8.2g(0.04モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、室温にて4時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-1)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物10.9g(収率99.5%)を得た。
【0057】
【化5】
【0058】
[参考例2]
<5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
テトラヒドロフラン100gを、室温にて攪拌しながら、これに3−アミノ−1,2,4−トリアゾール5.04g(0.06モル)を投入して懸濁させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン12.3g(0.06モル)を滴下し、1時間攪拌した。
トリエチルアミン0.83g(0.008モル)を投入した後、還流下にて4.5時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-2)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物17.5g(収率100.9%)を得た。
【0059】
【化6】
【0060】
[参考例3]
<5−アミノ−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
メタノール14gを、室温にて攪拌しながら、これに3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール2.0g(0.02モル)を投入して溶解させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(0.02モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、室温にて2時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-3)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物6.2g(収率100.2%)を得た。
【0061】
【化7】
【0062】
[参考例4]
<3,5−ジアミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
ジメチルホルムアミド41gを、40℃にて攪拌しながら、これに3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール2.0g(0.02モル)を投入して溶解させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(0.02モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、40℃にて2時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-4)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物6.3g(収率98.1%)を得た。
【0063】
【化8】
【0064】
[参考例5]
<3−メルカプト−5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールと3−アミノ−5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
ジメチルホルムアミド20gを、室温にて攪拌しながら、これに3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール2.3g(0.02モル)を投入して溶解させた。続いて、この溶液を5℃まで冷却し10℃を越えないように、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(0.02モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、5〜10℃にて2時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-5)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物と、化学式(Ia-6)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物の混合物6.6g(収率102.8%)を得た。
なお、
1H−NMRスペクトルデータより、両者の比率が4:6(モル比)であると認められた。
【0065】
【化9】
【0066】
[参考例6]
<5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
メタノール30gを、室温にて攪拌しながら、これに3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール2.0g(0.02モル)を投入して溶解させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(0.02モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、室温にて2時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-7)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物6.3g(収率103.9%)を得た。
【0067】
【化10】
【0068】
[参考例7]
<3−アミノ−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
ジメチルホルムアミド14gを、室温にて攪拌しながら、これに5−アミノ−3−メチルチオ−1,2,4−トリアゾール2.6g(0.02モル)を投入して溶解させ、続いて、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン4.1g(0.02モル)を滴下した。
反応による発熱が収まった後、室温にて2時間攪拌し、次いで、減圧下にて反応液から揮発分を留去して、アメ状の液体として、化学式(Ia-8)で示される標題のトリアゾールトリアルコキシシラン化合物6.8g(収率101.4%)を得た。
【0069】
【化11】
【0070】
[参考例8]
<イミダゾールシラン化合物の合成>
イミダゾール3.4g(0.05mol)を95℃で融解し、アルゴン雰囲気下で攪拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン11.8g(0.05mol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに95℃の温度で1時間反応させた。
反応生成物は透明な橙色の粘稠な液体として得られた(特開平5−186479号公報から引用)。
注:特開平5−186479号公報によると、反応生成物は、化学式(IV-1)〜(IV-3)で示されるイミダゾールシラン化合物の混合物とされている。
【0071】
【化12】
【0072】
また、実施例および比較例において行った金属と樹脂の接着性の評価試験(イ)〜(ハ)は、次のとおりである。
【0073】
[接着性の評価試験(イ)]
(1)試験片の基材
試験片の基材として、電解銅箔(厚み:18μm)を使用した。
(2)基材の処理
以下の工程a〜cに従って行った。
a.酸清浄/1分間(室温)、水洗
b.酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
c.銅の表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)基材と樹脂の接着
処理した基材のS面に、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレスし、基材と樹脂を接着してプリント配線板を作成した。
(4)接着性の評価
このプリント配線板から、「JIS C6481」に従って、幅10mmの試験片を作成し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、銅箔の引き剥がし強さを測定した。
【0074】
[接着性の評価試験(ロ)]
基材のS面に、「ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレス」する代わりに、「ビルドアップ配線板用樹脂(味の素ファインテクノ社製、品名「GX−13」)をラミネート」した以外は、評価試験(イ)と同様の手順で、金属と樹脂の接着性を評価した。
【0075】
[接着性の評価試験(ハ)]
(1)試験片の基材
試験片の基材として、電解銅メッキ(メッキ厚:20μm)を施した両面銅張積層板(基板:FR4,板厚:1.0mm,銅箔厚:18μm,縦120mm×横110mm)を使用した。
(2)基材の処理
以下の工程a〜dに従って行った。
a.酸清浄/1分間(室温)、水洗
b.過酸化水素・硫酸によるマイクロエッチング/1分(室温)、水洗
c.酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
d.銅の表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)基材への樹脂層の形成
処理した基材に、ソルダーレジスト(太陽インキ製造社製、品名「PSR−4000AUS308」)を塗布した後、乾燥(80℃/30分)、ポストキュア(150℃/60分)を行って、13μm厚の樹脂層(塗膜)を形成させ、プリント配線板の試験片を作成した。
(4)接着性の評価
「JIS K5400−8.5」に従って、試験片の表面に形成した塗膜を1mm×1mmの碁盤目にクロスカット(100マス)し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、テープピールテストを行い、塗膜が剥離しないマス目の数を計測した。また、塗膜の傷み具合を目視にて観察した。
なお、接着性の判定基準は、表1に示したとおりである。
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例1]
シランカップリング剤成分として、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール10gに、エチレングリコールモノブチルエーテル200gを加え、続いて水790gを加えて、室温にて2時間攪拌し、銅の表面処理液(以下、処理液Aと云う)を調製した。
この処理液Aについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0078】
[実施例2]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Bと云う)を調製した。
この処理液Bについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0079】
[実施例3]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『5−アミノ−3−メチル−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Cと云う)を調製した。
この処理液Cについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0080】
[実施例4]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『3,5−ジアミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Dと云う)を調製した。
この処理液Dについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0081】
[実施例5]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『3−メルカプト−5−アミノ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールと3−アミノ−5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾールの混合物』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Eと云う)を調製した。
この処理液Eについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0082】
[実施例6]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『5−メルカプト−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Fと云う)を調製した。
この処理液Fについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0083】
[実施例7]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『3−アミノ−5−メチルチオ−1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Gと云う)を調製した。
この処理液Gについて、当該トリアゾールトリアルコキシシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0084】
[比較例1]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『イミダゾールシラン化合物』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Hと云う)を調製した。
この処理液Hについて、イミダゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0085】
[比較例2]
シランカップリング剤成分として、『1−[3−(トリメトキシシリル)プロピルカルバモイル]−1H−1,2,4−トリアゾール』の代わりに、『3−アミノプロピルトリメトキシシラン』を使用した以外は、実施例1と同様にして銅の表面処理液(以下、処理液Iと云う)を調製した。
この処理液Iについて、3−アミノプロピルトリメトキシシランのメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認し、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0086】
[比較例3]
シランカップリング剤を使用することなく、エチレングリコールモノブチルエーテル200gと水790gを混合し、室温にて2時間攪拌して、銅の表面処理液(以下、処理液Jと云う)を調製した。
この処理液Jについて、接着性の評価試験(イ)〜(ハ)を行ったところ、得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
【0087】
【表2】