(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
古紙から再生パルプを調製するパルプ調製部と、再生パルプから湿紙を形成する抄紙部と、湿紙を乾燥させる乾燥部と、湿紙の乾燥により得られた再生紙を載置する載置部とを備える古紙再生処理装置において、載置部の空間領域における雰囲気を加湿する加湿手段を有し、加湿手段は、蒸気を発生させる蒸気発生源と、前記蒸気発生源と載置部の空間領域とが連通されてなる蒸気経路とを備え、蒸気経路には、載置部の再生紙に向けて開口する蒸気供給ダクトが設置されることを特徴とする古紙再生処理装置。
蒸気発生源は、パルプ調製部において古紙を離解するパルパー装置と、乾燥部において湿紙を乾燥させる乾燥装置の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1に記載の古紙再生処理装置。
乾燥部は、乾燥部を通過した再生紙の含水率が、載置部に載置された再生紙の含水率に比べて低くなるように湿紙を乾燥させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の古紙再生処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1,
図2は古紙再生処理装置1の構成を示す概略図であり、
図3は、古紙再生処理装置1の後部の平面図である。古紙再生処理装置1は、古紙から再生パルプを調製するパルプ調製部81と、再生パルプから帯状の湿紙を形成する抄紙部82と、帯状の湿紙を乾燥させる乾燥部83と、湿紙の乾燥により得られた帯状の再生紙を設定サイズに裁断する裁断部15と、裁断部15で裁断された枚葉の再生紙64を載置する紙受部85とを備える。
【0029】
図1に示すように、パルプ調製部81は、古紙再生処理装置1の前部に設置された第1ケーシング19に収容されている。そして、
図2に示すように、抄紙部82、乾燥部83及び裁断部15は、古紙再生処理装置1の後部に設置された第2のケーシング41に収容されている。紙受部85は、第2ケーシング41の後方に配設されている。
【0030】
パルプ調製部81は、細断された古紙である紙材2を貯留する紙材貯留部3と、紙材貯留部3に古紙4を供給する給紙装置5と、紙材貯留部3に貯留されている紙材2を搬送する紙材搬送部86と、紙材搬送部86により搬送された紙材2を計量する計量部6と、計量部6において計量された紙材2を離解してパルプ懸濁液8を製造するパルパー装置9と、パルパー装置9で得られたパルプ懸濁液8を貯留する貯留槽10と、貯留槽10において貯留されたパルプ懸濁液8を脱墨する脱墨装置11を備える。
【0031】
紙材貯留部3は、給紙装置5から供給される枚葉の古紙4を細断する細断機21と、細断された古紙4からなる紙材2を貯留する貯留容器22とを備える。給紙装置5は第1のケーシングの前部に設けられる。
【0032】
紙材搬送部86は、貯留容器22内の紙材2を下方へ送り出す送出装置23と、送り出された紙材2を送気流17によって搬送し、計量部6に排出する送風搬送部87を備える。送風搬送部87は、紙材通過ダクト16に搬送用空気を供給して送出装置23から計量部6へ向かって流れる送気流17を発生させる送風装置18と、送出装置23により送出された紙材2を分散させる分散用サイクロン24と、分散用サイクロン24で分散された紙材2を通過させる紙材通過ダクト16と、紙材通過ダクト16を通過し、搬送された紙材2を排出する排出用サイクロン7とを有している。
【0033】
紙材通過ダクト16の一端は、分散用サイクロン24に形成された排出口26に接続され、紙材通過ダクト16の他端は排出用サイクロン7に形成された流入口27に接続されている。送風装置18は、吐出口28と吸込口29とを有し、送気ダクト31の一端が吐出口28に接続されており、送気ダクト31の他端が分散用サイクロン24に形成された送気流入口32に接続されている。これより、送風装置18の吐出口28が送気ダクト31と分散用サイクロン24とを介して紙材通過ダクト16に連通する。
【0034】
排出用サイクロン7には、流入口27から流入した送気流17を排出する送気流排出口34が形成され、送気流排出口34に送気戻りダクト35(送気戻り経路)の一端が接続され、送気戻りダクト35の他端が送風装置18の吸込口29に接続されている。
【0035】
パルパー装置9は、パルパー槽37と、パルパー槽37内に設けられた攪拌装置38と、図示しない給水部とを有する。給水部は、パルパー槽37に水を供給する。給水部によってパルパー槽37に供給される水は、水道水及び抄紙部82で回収した白水が含まれる。
【0036】
この給水部により供給される水に、添加剤を添加する添加剤供給部(図示省略)が設けられている。添加剤供給部は、いずれも図示しない添加剤槽、配管及びバルブを備える。添加剤槽に貯留する添加剤は、バルブが開放されることで、所定のタイミングで配管を介して給水部により供給される水に自動で添加される。添加剤の種類としては、帯電防止剤、界面活性剤、香料、防臭剤、抗菌剤、滅菌剤、殺菌剤、除菌剤、消臭剤、安定化剤、皺防止剤等を用いることができる。
【0037】
貯留槽10は、内部に攪拌装置39を有している。脱墨装置11は、蛇行した流路を形成した脱墨槽40と、脱墨槽40の下部から多数の気泡を放出する散気装置(図示省略)とを有している。
【0038】
図2に示すように、抄紙部82は、脱墨されたパルプ懸濁液8を抄紙して湿紙12を形成する湿紙形成装置13と、湿紙12を脱水する脱水装置20を有している。
湿紙形成装置13は、複数のローラ42に掛け渡して巻回されたメッシュ状のベルトからなる抄紙ワイヤー43と、脱墨されたパルプ懸濁液8を抄紙ワイヤー43上に供給するヘッドボックス44を有している。
【0039】
脱水装置20は、複数のローラ46,46aと、これらローラ46,46aに掛け渡して巻回されたフェルトからなる吸水ベルト47を有する。湿紙形成装置13でパルプ懸濁液8から抄紙された湿紙12は、抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47に転移し、吸水ベルト47により吸水され、脱水される。
【0040】
乾燥部83は、脱水された湿紙12を乾燥する乾燥装置14からなる。
乾燥装置14は、加熱装置48(ヒーター)を内蔵した乾燥ドラム49を備える。乾燥ドラム49と複数のローラ50,50aとに掛け渡してスチール製の第1搬送ベルト51が巻回されている。また、複数のローラ52に掛け渡して網状で樹脂製の第2搬送ベルト53が巻回されており、乾燥途中の湿紙12の表面に所定の圧力で転接し、再生紙64の表面を平滑化するためのカレンダローラ54が設けられている。第1搬送ベルト51と第2搬送ベルト53とが乾燥ドラム49の外周面上で重なり、双方の間に湿紙12を挟んだ状態で乾燥ドラム49に圧接して湿紙12を乾燥させる。
【0041】
一対のローラ46a,50aがプレス用のローラとして互いに対向する位置に設けられており、吸水ベルト47と第1搬送ベルト51とを介して湿紙12を圧搾脱水するとともに、湿紙12を吸水ベルト47から第1搬送ベルト51に転移させる機能を備えている。
【0042】
裁断部15は、湿紙12を乾燥して得られる帯状の再生紙61に対して裁断工程を行い、帯状の再生紙61を枚葉の再生紙64となす。
裁断部15には、乾燥装置14で乾燥された帯状の再生紙61を所定のサイズに切断して枚葉の再生紙64とする金属製のカッター60及びスリッター65等が設けられている。裁断部15の下流側で且つ第2ケーシング41の後端部には、乾燥後、裁断部15において裁断された再生紙64を排出する排出口62が形成されている。
【0043】
紙受部85は、湿紙12の乾燥により得られた再生紙64を載置する載置部88を構成する。紙受部85は、再生紙64の載置台71と、載置部88の空間領域を覆う覆い部材とが設けられている。載置台71は、図示しない昇降手段により昇降自在に設置され、排出口62から、載置台71上にある最上位の再生紙64までの高さが所定値に維持されるよう調整される。
【0044】
覆い部材はカバー72により構成される。カバー72は、載置台71及び載置台71上に積載された再生紙64を覆うよう箱状に形成され、載置部88としての紙受部85の空間領域を外部領域から隔てている。カバー72は、内部の再生紙64を取り出せるよう装置本体に対し、開閉自在または着脱自在に設置される。また、カバー72には、窓部73が設けられ、該窓部73から内部の再生紙64を視認可能となっている。そして、該窓部73に、樹脂製で透明の窓用蓋74が取り付けられ、窓部73から蒸気が漏れないようになっている。
【0045】
そして、古紙再生処理装置1は、載置部88の空間領域における雰囲気を加湿する加湿手段89を備えている。加湿手段89は、載置部88としての紙受部85の空間領域における雰囲気を加湿する。加湿手段89は、蒸気供給装置66と蒸気供給量調整手段69とを備えている。蒸気供給装置66は、蒸気発生源90と、蒸気経路91と、送風機68とを備えている。
【0046】
蒸気発生源90は、蒸気を発生させる。蒸気発生源90は、本実施の形態1では乾燥部83において湿紙12を乾燥させる乾燥装置14により構成される。即ち、蒸気発生源90としての乾燥装置14において発生した蒸気は、載置部88としての紙受部85の空間領域に供給されてその雰囲気の加湿に利用可能となっている。
【0047】
蒸気経路91は、一端が載置部88としての紙受部85の空間領域に、他端が蒸気発生源90に連通する蒸気供給ダクト67を備える。そして、蒸気供給ダクト67の一端部は、載置部88としての紙受部85の空間領域を形成するカバー72上部の接続開口部75に接続される。また、蒸気供給ダクト67の他端部は、乾燥装置14の乾燥ドラム49の上方となる第2ケーシング41の上面に形成された蒸気通過用開口部93に接続される。
図3に示すように、蒸気供給ダクト67は、再生紙61の搬送方向Fに直交する幅方向Wの中央部に設置される。
【0048】
載置部88としての紙受部85の空間領域は、再生紙64が載置される載置台71の周辺の空間である。この載置部88としての紙受部85の空間領域は、覆い部材としてのカバー72により覆われた空間である。蒸気経路91は、載置部88としての紙受部85に載置された再生紙64の上面に上方から蒸気を吹きつけられるよう蒸気供給ダクト67の一端部が開口して設置される。
【0049】
送風機68は、蒸気発生源90において発生した蒸気を蒸気発生源90から載置部88としての紙受部85の空間領域へ送る。送風機68は、第2のケーシング41の天井板45に複数垂設され、乾燥装置14の乾燥ドラム49の上方に対向している。複数の送風機68は、天井板45の内側で、且つ
図3に示すように、帯状の再生紙61の搬送方向Fに直交する幅方向Wに所定量ずつ離間して並設される。そして、天井板45には、各送風機68a,68b,68cの設置位置に、小径の蒸気通過用開口部93a,93b,93cが複数設けられている。
【0050】
図3において中央に示す送風機68bの上方に設けられた蒸気通過用開口部93bは、蒸気供給ダクト67の端部が接続されている。中央の送風機68bは、乾燥装置14で発生した蒸気を吸い込んで蒸気供給ダクト67内へ送り出す。
【0051】
蒸気供給量調整手段69は、蒸気供給ダクト67の途中に設けられている。蒸気供給量調整手段69は、載置部88の空間領域に供給する蒸気量を調整する。蒸気供給量調整手段69は、開放用筐体96、開放用開口部97、開閉扉98及び揺動軸99を備える。開放用筐体96は直方体状に形成され、前後側面に蒸気供給ダクト67が接続される。開放用開口部97は開放用筐体96の上面に設けられる。開閉扉98は、開放用開口部97を閉塞可能となっている。また、開閉扉98は、
図2において矢印Yで示すように、揺動軸99を軸心に下方に向けて揺動可能に構成される。この開閉扉67の揺動操作は、手動または自動のいずれかにより行われる。
【0052】
開閉扉98が開放用開口部97を閉塞する水平姿勢から、
図2において反時計回りに揺動されると、開放用開口部97が開口され、蒸気供給ダクト67内の蒸気が開放用開口部97から大気中へ放出される。開閉扉98の揺動角度は、任意に設定可能であり、この設定によって大気中へ開放される蒸気と、紙受部85へ送られる蒸気との割合が調整される。開閉扉97の水平姿勢からの揺動角度が90°のとき、開閉扉98は、
図2において二点鎖線で示す鉛直姿勢となる。この状態では、開放用筐体96の内部空間が開閉扉97により前後方向に2つに区画され、下流側への流路が閉塞される。これより、蒸気発生源90から載置部88の空間領域に至る蒸気経路91が分断されるので、紙受部85へは送られなくなり、蒸気は全て開放用開口部97から大気中へ放出される。
【0053】
蒸気供給量調整手段69は、載置部88の空間領域における雰囲気の温度若しくは湿度、乾燥部83で湿紙12を乾燥させる乾燥装置14の加熱温度、再生紙64の厚さ若しくは品質、外気温度、外気湿度、湿紙12を吸水しつつ搬送する吸水ベルト47の走行距離、古紙4の種類、湿紙12を押圧するプレスローラ46a,50aの押圧力、の少なくとも何れかを指標として、載置部88の空間領域に供給する蒸気量を調整する。ここで、吸水ベルト47の走行距離とは、湿紙12を吸水しつつ搬送した吸水ベルト47の使用開始時からの総走行距離、吸水ベルト47の洗浄処理等所定時点からの走行距離、再生紙64の総排出枚数により算出される値、吸水ベルト47の使用時間及び速度から算出される値等のうちのいずれかまたは複数を組み合わせて用いることができる。また、再生紙64の品質とは、例えば、脱墨割合の調整による白色度の高さ、複数のカレンダーローラ54を設けた場合等において必要により一部のカレンダーローラ54を機能させる等による再生紙64表面の平滑化の度合等についての品質の良否等を意味する。古紙4の種類とは、上質紙、コピー用紙、新聞紙、藁半紙等の種類、または古紙4に含まれる炭酸カルシウムの割合等がある。
【0054】
図3において、中央の送風機68bの側方に設置された送風機68aの上方には、古紙再生処理装置1で製造された再生紙64を載置するための保管部92が設けられている。保管部92は、
図2に示すように、乾燥ドラム49の上方に設けられる。そして、保管部92は、
図2に示す第2ケーシング41の上面に設置される。保管部92は、湿紙12の乾燥により得られた再生紙64を載置する載置部88を構成する。
【0055】
保管部92は、直方体箱状に形成された載置箱76を備える。載置箱76は、載置部88の空間領域を覆う覆い部材を構成する。載置箱76は、中空に形成され、載置箱76の下面には、下方の蒸気通過用開口部93aに連通する蒸気供給開口部77が設けられる。そして、載置箱76により外部から隔てられた保管部92の空間領域における雰囲気は、加湿手段89により加湿される。蒸気通過用開口部93a及び蒸気供給開口部77は、蒸気発生源90と載置部88の空間領域とを連通する蒸気経路91を構成する。
【0056】
載置箱76の内部には、再生紙64を載置するためのスノコ状の載置台94が設置される。そして、
図3において、中央の送風機68bのもう一方の側方に設置された送風機68cの上方に設けられた蒸気通過用開口部93cは、大気に開放されている。
【0057】
以下、本実施の形態1における作用を説明する。
図1に示す供給装置5から供給される古紙4は細断機21によって細断されて紙材2となり、紙材2は貯留容器22内に貯留される。
送風装置18を作動することにより、送風装置18の吐出口28から吐出された送気流17が、送気ダクト31を流れて送気流入口32から分散用サイクロン24内に流入する。送気流17は、分散用サイクロン24の排出口26から排出された後に、送気戻りダクト35内を流れて送風装置18の吸込口29に戻る。
【0058】
これにより、送気流17が送風装置18の吐出口28から送気ダクト31と紙材通過ダクト16と送気戻りダクト35を流れて吸込口29に戻り、再び吐出口28から流れ出る循環経路が形成される。
【0059】
この状態で、送出装置23を作動することにより、貯留容器22内の紙材2が、分散用サイクロン24へ送り出されて分散用サイクロン24内で分散され、さらに送気流17で運ばれて紙材通過ダクト16内を通り、排出用サイクロン7の紙材排出口33から計量部6へ排出される。
【0060】
計量部6において所定量の紙材2が計量されると、計量部6の紙材2はパルパー装置9のパルパー槽37に投入される。紙材2はパルパー槽37内で図示しない給水部から給水され、攪拌装置38により水とともに攪拌され、離解されてパルプ懸濁液8となる。このパルプ懸濁液8は貯留槽10に貯留され、脱墨装置11で脱墨された後に、
図2に示す湿紙形成装置13のヘッドボックス44に供給される。
【0061】
ヘッドボックス44内のパルプ懸濁液8は、抄紙ワイヤー43の上に供給されて抄紙されることで湿紙12となる。このようにして得られた湿紙12は、抄紙ワイヤー43から吸水ベルト47に転移され、吸水ベルト47において吸水され、脱水される。
【0062】
このようにして脱水された湿紙12は、吸水ベルト47から第1搬送ベルト51に転移した後、カレンダローラ54により表面が平滑化され、第1搬送ベルト51と第2搬送ベルト53とに挟まれて搬送され、乾燥ドラム49の加熱装置48の熱により乾燥されて帯状の再生紙61となる。帯状の再生紙61は、搬送経路70を搬送され、裁断部15においてカッター60及びスリッター65で所定のサイズの枚葉紙に裁断された後、排出口62から排出される。
【0063】
排出口62から排出された再生紙64は、順次載置台71の上に載置される。古紙再生処理装置1の運転により、排出口62から順次再生紙64が排出され、載置台71上に載置される再生紙64の高さが高くなると、昇降手段により載置台71が下降される。これより、排出口62から載置台71上の最上位の再生紙64までの高さが一定となるよう調整される。
【0064】
このような一連の再生紙製造工程において、乾燥装置14で湿紙12を乾燥する際、湿紙12の水分が蒸発して蒸気が発生する。この蒸気が送風機68bにより蒸気通過用開口部93bを通過し、蒸気供給ダクト67に送り込まれ、蒸気供給ダクト67を流れて載置部88の空間領域に供給される。これにより、載置部88としての紙受部85の空間領域内の湿度が上昇する。
【0065】
このように、紙受部85の空間領域における雰囲気を加湿手段89によって加湿することで、乾燥した再生紙64が載置台71上に載置される間に吸湿し、再生紙64が適切な含水率に調整された状態で保管される。
【0066】
紙受部85の載置台71上の再生紙64が満杯となり、載置台71上に載置しきれなくなると、該載置台71から再生紙64を取り出し、第2ケーシング41の上の保管部92に移動して、保管部92の載置台94の上で保管する。保管部92では、乾燥装置14において発生した蒸気が、送風機68aの駆動により、蒸気経路91としての蒸気通過用開口部93a及び蒸気供給開口部77を通過し、載置部88としての保管部92の空間領域に供給される。これより保管部92の空間領域における雰囲気が加湿され、載置箱76内の湿度が上昇する。よって、保管部92の空間領域における雰囲気を加湿手段89で加湿することで、再生紙64が載置箱76内に載置されている間に、紙受部72で吸収した水分を失うことなく、再生紙64を適切な状態で保水しつつ保管することができる。また、載置台94の上に再生紙64が載置されることで、蒸気供給開口部77が閉塞されないようにしている。
【0067】
このため、オフィス等の限られた空間において再生紙64を製造する場合であっても載置部88としての紙受部85及び保管部92において調湿処理を行うことができ、適切な含水率に調整された再生紙64を製造できる。このように、再生紙64の含水率が調整されているので、古紙再生処理装置1で製造された再生紙64を直ちに複写機や他の印刷機で印刷することができ、印刷不良や搬送不良などの発生を抑制することができる。
【0068】
また、加湿手段89は、蒸気を発生させる蒸気発生源90と、該蒸気発生源90と載置部88の空間領域とが連通されてなる蒸気経路91を備えたので、蒸気発生源90において発生した蒸気を容易に載置部88に導き、載置部88の空間領域における雰囲気を加湿することができる。
【0069】
そして、蒸気発生源90は、乾燥部83において湿紙12を乾燥させる乾燥装置14であるので、乾燥装置14で発生した蒸気を載置部88の加湿に用いることで、エネルギーの有効活用が可能である。
【0070】
乾燥装置14で発生した蒸気には、パルパー装置9において添加された添加剤が含まれている。よって、乾燥装置14から載置部88に運ばれ、再生紙64の加湿に用いられる蒸気にこの添加剤が含まれていることなる。これより、各添加剤の有する機能、即ち、帯電防止、防臭、消臭、抗菌、滅菌、殺菌、除菌、皺防止等を再生紙64に付与することができる。
【0071】
更に、加湿手段89は、蒸気発生源90としての乾燥装置14を構成する天井板45に送風機68が垂設されるので、送風機68により多くの蒸気を載置部88に導き、載置部88の加湿に利用することができる。また、送風機68により蒸気を積極的に紙受部85及び保管部92に供給することで、紙受部85及び保管部92の空間領域を確実に加湿することができる。
【0072】
また、蒸気供給ダクト67の一方の開口が、再生紙64の表面に対向しており、送風機68により積極的に蒸気を、載置台71上の最上位の再生紙64の上面に向けて吹き付けるように供給することで、再生紙64を確実に効率よく吸湿させることができる。また、保管部92では、紙受部85から再生紙64を移動して保管することで、紙受部85において一旦適切に調湿された再生紙64の水分量を維持するよう保湿することができる。
【0073】
乾燥装置14は、載置部88において再生紙64が吸湿することを前提にして乾燥ドラム49による加熱を調整し、再生紙61の含水率を調整する。このため、載置部88において再生紙64の含水率が過剰となることを防止できる。
【0074】
蒸気供給ダクト67を通過し、紙受部85に供給される蒸気量は、蒸気供給量調整手段69によって、手動または自動で調整される。そして、開閉扉98の揺動角度を調整して蒸気供給ダクト67を流れる蒸気の一部を大気中へ放出する。この大気中への蒸気の放出量を加減することで、載置部88に供給する蒸気の供給量を調整することができる。
【0075】
この蒸気供給量調整手段69による蒸気の供給量の調整は、外気温度、外気湿度、再生紙64の厚さ若しくは品質、古紙の種類等に応じて、あるいは再生紙64が含む添加剤などの種類や量に応じて、さらには、紙受部85の空間領域における雰囲気の温度もしくは湿度、または湿紙12を吸水しつつ搬送する吸水ベルト47の走行距離、湿紙12を押圧するプレスローラ46a,50aの押圧力、湿紙12を乾燥させる乾燥装置14の加熱温度等を指標として行うことができる。そして、大気が乾燥気味となる冬期や、大気が多湿となる夏期等といった季節ごとの環境条件に応じて、載置部88に必書な量の蒸気を供給するよう蒸気供給量調整手段69により調整することができる。
【0076】
また、載置部88の空間領域を加湿することで、載置部88における静電気の発生を抑制し、紙受部85における再生紙64の排出不良等の発生を抑制できる。
【0077】
また、乾燥装置14において発生する蒸気を利用することで、別途、古紙再生処理装置1に蒸気発生源を設ける必要がなく、コスト低減および古紙再生処理装置1の小型化を図ることができる。
【0078】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
図4に示すように、本実施の形態2にかかる古紙再生処理装置1aは、パルパー装置9aのパルパー槽37aが蒸気発生源90aをなす。そして、パルパー装置9aにおいて発生した蒸気を、載置部88aの空間領域に供給してその雰囲気を加湿する。これより、パルパー装置9aは、加湿手段89aを構成する。
【0079】
そして、蒸気供給装置66aは、パルパー槽37aと載置部88aの空間領域とが連通された蒸気経路91aと、パルパー槽37aにおいて発生した蒸気を吸い込んで蒸気経路91a内へ送り出す送風機63とを備えている。蒸気経路91aは蒸気供給ダクト67aにより構成される。蒸気供給ダクト67aの一端部は、パルパー槽37aの上部の送風機63設置位置に接続される。そして、蒸気供給ダクト67aは、パルパー槽37aの上部から上方へ延びて第1ケーシング19aの天井板95aに設けられた開口部93dを通り、天井板95aの上方で折れ曲がって、
図5に示す載置部88aとしての紙受部85aの空間領域にまで延在し、カバー72aの上部に接続される。
【0080】
蒸気供給ダクト67aの途中には蒸気供給量調整手段69aを設けている。また、第1のケーシング19aの天井板95aの上面には、再生紙64を載置する載置部88aを構成する保管部92aが設置される。保管部92aは、載置箱76aを備え、載置箱76aの側面には、
図6に示すように、蒸気供給ダクト67aが、途中で枝分かれした枝分れ蒸気供給ダクト67cが接続されている。この枝分かれ蒸気供給ダクト67cは、蒸気経路91aを構成する。
【0081】
通常、再生紙製造工程において、パルパー槽37a内は、離解動作に伴って発生する摩擦熱により、温度が約40℃程度に上昇している。このため、パルパー槽37a内のパルプ懸濁液8の水分が蒸発して蒸気が発生する。パルパー槽37a内に発生した蒸気は、送風機63の駆動により、蒸気供給ダクト67a内に吸い込まれ、下流側へと流れて載置部88aを構成する紙受部85aに供給される。また蒸気供給ダクト67a内を流れる蒸気の一部は、蒸気供給ダクト67aから枝分かれ蒸気供給ダクト67cへと流入して保管部92aの空間領域に供給される。これにより、紙受部85a及び保管部92aの双方の空間領域内の湿度が上昇する。
【0082】
このように、パルパー槽37aを備えた加湿手段89aによって紙受部85aの空間領域における雰囲気を加湿することで、乾燥した再生紙64が排出口62から排出される際吸湿し、再生紙64を一枚ずつ適切な湿度に調整した状態で載置台71に載置できる。また、加湿手段89aによって保管部92aの空間領域における雰囲気を加湿することで、紙受部85aにおいて一旦適切な含水率に調整された再生紙64を、保管部92aにおいて湿度の高い状態に維持し、含水率が低下しないようにできる。よって、大気が乾燥しやすい時期においても再生紙64の含水率を維持することができる。
【0083】
そして、パルパー槽37a内で発生する蒸気には、上記実施形態1で記載した場合と同様に、パルパー装置9aの給水部より供給される水に、添加剤が添加されている。よって、再生紙64の加湿に用いられる蒸気に添加剤が含まれており、添加剤の種類に応じた機能を再生紙64に付与することができる。他の作用効果は先の実施の形態1と同様であり、その説明を省略する。
【0084】
(実施の形態3)
次に、第3の実施の形態について説明する。
図7,8は、実施の形態3に係る古紙再生処理装置1bの後半工程の構成を示す概略図である。実施の形態3では、蒸気発生源90は、上記実施の形態1と同様乾燥装置14により構成される。そして、
図7,8に示す古紙再生処理装置1bは、第2ケーシング41bの天井板45bの上面に設置した載置箱76bの設置位置を、送風機68dの真上より
図7,8において右方となる帯状の再生紙61の搬送方向F下流側へずらせてある。
図8における載置箱76bの左側面に設けた接続開口部75cと、天井板45bに設けた蒸気通過用開口部93eとが蒸気供給ダクト67bによって連通されている。このように、載置箱76bの側面に蒸気供給ダクト67bが接続されることで、
図2に示す第1の実施形態に係る載置箱76のように載置台94を設置する必要がない。よって、多くの再生紙64を載置箱76bに収容することができる。
【0085】
さらに、実施の形態3に係る古紙再生処理装置1bの載置部88bとしての紙受部85bでは、
図7に示すように、カバー72bの底板99に蒸気通過用開口部93fが設けられ、この蒸気通過用開口部93fの下方に送風機80が設置されている。これより、カバー72b内の空気が大気中に開放されるとともに、送風機80によってカバー72b内の蒸気を下方へ排出するよう積極的に導くことができる。
【0086】
そして、カバー72bの天板101に設けられた接続開口部75bより載置部88bの空間領域に流入した蒸気は、再生紙64に吸湿され、再生紙64の含水率が整えられた後、蒸気通過用開口部93fから下方へ流出する。これより載置部88bの空間領域に蒸気の流路を形成することができ、蒸気発生源90で発生した蒸気を紙受部85bへ供給するよう促すことができる。よって、蒸気発生源90としての乾燥装置14における乾燥効率を向上可能である。
【0087】
また、
図7,8に示す第2ケーシング41bには、再生紙64の排出口62bの上方位置に、一対の係止部材100が幅方向に所定距離離間して設置されている。係止部材100は、縦断面がL字状に形成され、カバー72bの天板101の下面後部を係止する。蒸気供給ダクト67bの端部が挿通される天板101のほぼ中央部に設けられた接続開口部75bは、蒸気供給ダクト67bの直径よりやや大きく楕円形に形成されている。
【0088】
カバー72bを第2ケーシング41bから取り外すには、まずカバー72bを再生紙64の排出方向Gと同じ
図7において矢印Sで示す右方へ移動させる。すると、カバー72bの天板101が係止部材100の前端部から前方に抜け出て、係止されなくなる。このとき蒸気供給ダクト67bは前方へ移動しないので、カバー72bに対し相対的に後方へ移動することとなるが、接続開口部75bが楕円形に形成されているので、接続開口部75bを形成する周縁と蒸気供給ダクト67bが干渉することなくカバー72を前方へ移動させることができる。
【0089】
次に、カバー72bを所定量下方へ降下させ、蒸気供給ダクト67bの下端部を接続開口部75bから抜き出す。これより、カバー72bを第2ケーシング41bから取り外すことができる。そして、載置台71上の再生紙64を取り出すことができる。カバー72bを第2ケーシング41bに取り付けるには、これと逆の動作をすればよい。
【0090】
(実施の形態4)
次に、第4の実施の形態について説明する。
図9は、実施の形態4に係る古紙再生処理装置1cの後半工程の構成を示す概略図である。実施の形態4に係る古紙再生処理装置1cは、蒸気発生源90cとして別途加湿器79を設置している。加湿器79からの蒸気は、蒸気経路91cとしての配管78を介して載置部88cの空間領域に設置されたノズル84より放出される。これより、乾燥装置やパルパー装置の運転状況にかかわらず、載置部88cとしての紙受部85c及び保管部92cに載置された再生紙64の含水率に合わせそれぞれ最適な条件で再生紙64を加湿できる。
【0091】
尚、上記実施の形態では、載置部88,88aの空間領域は、覆い部材により覆われたが、加湿手段により載置部の空間領域における雰囲気を加湿可能であれば、必ずしも覆い部材は必要でなく、覆い部材がなくてもよい。
【0092】
また、加湿手段89,89aは、蒸気を発生させる蒸気発生源と、一端が載置部88,88a,88b,88cの空間領域に連通し、他端が蒸気発生源90,90a,90cに連通する蒸気経路91,91a,91cを備えたが、蒸気発生源を一体に設けず、他の装置からの流用としてもよい。また、載置部に別途蒸気発生源を設けることで、蒸気経路を省いてもよい。
【0093】
また、蒸気発生源90,90a,90cは、実施の形態1,3では乾燥装置14であり、実施の形態2ではパルパー装置9aであり、実施の形態4では加湿器79としたが、乾燥装置、パルパー装置及び加湿器の全てを同時に蒸気発生源として用いてもよく、いずれか2つを組み合わせてもよい。
【0094】
また、載置部88、88a、88b,88cの空間領域の加湿に用いられる蒸気には、添加剤供給部より水に添加された添加剤が含まれたが、添加剤を添加しないこととしてもよい。添加剤供給部は、給水部よりパルパー槽37へ供給される水に添加剤を添加する構成としたが、添加剤供給部をパルパー装置以外の箇所、即ち貯留槽、脱墨槽、ヘッドボックス、湿紙形成装置、乾燥装置、裁断部等、古紙再生処理装置内の他の箇所に添加剤供給部を設け、当該添加剤供給部設置箇所で添加剤を添加してもよい。
【0095】
添加剤供給部が、湿紙形成装置、乾燥装置、裁断部等に設けられ、湿紙が乾燥された後に添加剤を添加する場合、添加剤は噴霧等再生紙に付与しやすい状態で添加される。また、加湿手段として、乾燥装置及びパルパー装置とは別に加湿器を設ける場合には、添加剤供給部を加湿器に設け、加湿器の水槽に所定量の添加剤を添加可能な構成とすることができる。
【0096】
また、添加剤供給部は、添加剤槽、配管及びバルブを備え、添加剤が自動で添加されたが、手動により添加する構成としてもよい。添加剤を手動で添加する場合、添加剤供給部は、例えば、給水部に設置された給水槽の上部開口により構成することができる。また、添加剤供給部が、貯留槽、脱墨槽、ヘッドボックス等に設けられる場合は、貯留槽、脱墨槽、ヘッドボックスの各槽の上部開口により構成することができる。更に、添加剤供給部をパルプ懸濁液の流通経路の途中位置に設けてもよい。このように流通経路の途中位置に添加剤供給部を設ける場合、添加剤を添加するための公知の機構を設置する。
【0097】
また、加湿手段89,89aは、蒸気発生源に送風機を有したが、送風機は蒸気経路中に設けてもよく、送風機を有しない構成としてもよく、蒸気発生源及び蒸気経路の双方に送風機を設けてもよい。また、乾燥部83は、該乾燥部83を通過した紙の含水率が、載置部88、88a、88b,88cに載置された再生紙64の含水率に比べて低くなるように湿紙12を乾燥させたが、乾燥部83を通過した紙の含水率が、載置部に載置された再生紙の含水率に比べて高くてもよく、両者が同程度であってもよい。
【0098】
また、加湿手段89,89aは、載置部88、88a、88b,88cの空間領域に供給する蒸気量を調整する蒸気供給量調整手段69を備えたが、蒸気供給量調整手段を設けなくてもよい。また、蒸気供給量調整手段69は、蒸気経路91を通して載置部88、88a、88b,88cに供給する蒸気の供給量と、蒸気経路91の外部へ排気する蒸気の排気量との割合を調整したが、このような調整を行わないこととしてもよい。また、蒸気供給量調整手段69は、載置部88、88a、88b,88cの空間領域における雰囲気の温度若しくは湿度、乾燥部で湿紙を乾燥させる乾燥装置の加熱温度、再生紙の厚さ若しくは品質、外気温度、外気湿度、湿紙を吸水しつつ搬送する吸水ベルトの走行距離、古紙の種類、湿紙を押圧するプレスローラの押圧力の少なくとも何れかを指標として、載置部88、88a、88b,88cの空間領域に供給する蒸気量を調整したが、他の値を指標としてもよく、蒸気量を調整しないこととしてもよい。
【0099】
また、蒸気供給量調整手段69は、開放用筐体96、開放用開口部97、開閉扉98及び揺動軸99を備えたが、他の構成、例えば開度調整可能な大気開放弁、三方弁装置等を用いてもよい。
【0100】
また、上記実施の形態2では、保管部92aの載置箱76aは、側面に枝分れ蒸気供給ダクト67cが接続され、保管部92aへ載置箱76aの側面から蒸気を供給したが、これに替えて、載置箱の底面から蒸気を供給してもよい。この場合、載置箱の底面に蒸気経路を構成する蒸気供給用開口部を形成することとなる。
図4には、載置箱76aの底面に蒸気供給用開口部77aを形成する場合を粗い破線で示している。蒸気供給用開口部77aは、第1ケーシング19aの天井板95aの対向位置に形成された蒸気通過用開口部93gを介して蒸気供給ダクト67dに接続されている。そして、この蒸気供給ダクト67dが蒸気供給ダクト67aの途中位置に接続されている。これより、第1ケーシング19aの内部で蒸気供給ダクト67aから蒸気供給ダクト67dが枝分かれしている。この蒸気供給ダクト67dは、蒸気経路91aを構成する。