(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試料中に含まれる同位体における既知の吸収スペクトルの波長及び吸収強度に基づいて、前記微分吸収スペクトルの実測値における各スペクトル線の同定を行い、オフセット電流と波長の関係を対応付ける第3の工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の同位体濃度算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である同位体濃度算出方法について、それに用いる同位体濃度測定装置とともに、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
<同位体濃度測定装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である同位体濃度算出方法に適用可能な同位体濃度測定装置1について説明する。
図1は、同位体濃度測定装置1の構成を示す系統図である。
図1に示すように、同位体濃度測定装置1は、レーザーダイオード2と、レーザーダイオードドライバ3と、光学セル4と、ガス導入経路5と、ガス排出経路6と、光検出器7と、ロックインアンプ8と、データ取得装置9と、データ処理装置10とを備えて概略構成されている。
【0017】
同位体濃度測定装置1の測定対象となる試料としては、H、D、
16O、
17O、
18O、
12C、
13C、
14N、
15N等の安定同位体を含む分子であれば特に限定されない。具体的には、例えば、水(H
2O)、二酸化炭素(CO
2)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、一酸化二窒素(N
2O)等や、メタン(CH
4)等の炭化水素類等が挙げられる。
【0018】
レーザーダイオード2は、光学セル4にレーザー光を照射するための機器である。レーザーダイオード2は、測定対象の試料によって適宜選択することができる。測定対象が水の場合は、レーザーダイオード2として、例えば、NTTエレクトロニクス社製のレーザーダイオード(型番:NLK1E5C1TA、発振波長:1.4μm)等を用いることができる。また、測定対象が二酸化炭素の場合は、レーザーダイオード2として、例えば、nanoplus Nanosystems and Technologies GmbH社製のレーザーダイオード(波長範囲:3000nm〜6000nm、発振波長:4.3μm)等を用いることができる。
【0019】
レーザーダイオードドライバ3は、レーザーダイオード2と電気的に接続されている。レーザーダイオードドライバ3により、レーザーダイオード2に所定のオフセット電流I
0、変調振幅A、及び変調周波数fを有する電流を流すことで、レーザーダイオード2から照射されるレーザー光の強度及び波長を調整可能とされている。
【0020】
光学セル4は、レーザーダイオード2から照射されるレーザー光の光軸上に設けられている。光学セル4は、ガス導入経路5とガス排出経路6とが接続されており、ガスを流通可能とされている。
光学セル4としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、単光路セル、従来型ヘリオットセル、非点収差型ヘリオットセル、ホワイトセル等の多重反射セル等が挙げられる。
【0021】
ガス導入経路5は、光学セル4に接続されている。ガス導入経路5により、気化器(図示略)等により気化した試料と不活性ガスとを混合したガス(以下、「分析対象ガス」と記載することがある)を光学セル4に導入する。
なお、不活性ガスとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0022】
ガス排出経路6は、光学セル4に接続されている。ガス排出経路6により、光学セル4中の分析対象ガスを排出する。
【0023】
光検出器7は、レーザーダイオード2から照射されるレーザー光の光軸上であって、光学セル4の二次側に設けられている。光検出器7により、光学セル4を透過したレーザー光を検出し、分析対象ガスを透過したレーザー光の強度(ガス透過強度)(以下、「光検出器出力」と記載することがある)の実測値を測定する。
【0024】
光検出器7は、ロックインアンプ8及びデータ取得装置9と信号線で接続されている。光検出器7で測定した光検出器出力は、ロックインアンプ8及びデータ取得装置9に送信可能とされている。
【0025】
ロックインアンプ8は、光検出器7と信号線で接続されている。ロックインアンプ8は、レーザーダイオードドライバ3と信号線で接続されており、レーザーダイオードドライバ3から送信される参照信号(変調信号と同期した矩形波信号)を受信する。ロックインアンプ8は、変調周波数fのn倍の周波数nfの信号を作り、光検出器出力に乗じることで、光検出器出力をn次微分したスペクトル(微分吸収スペクトル)に変換し、データ取得装置9に送信する。例えば、ロックインアンプ8が周波数2fの信号を作る場合は、光検出器出力が2次微分したスペクトル(以下、「2次微分吸収スペクトル」と記載することがある)に変換される。
【0026】
データ取得装置9は、光検出器7及びロックインアンプ8と信号線で接続されている。データ取得装置9は、光検出器7から送信される光検出器出力、及びロックインアンプ8から送信される微分吸収スペクトルを受信してデジタル信号に変換し、データ処理装置10に送信可能とされている。
データ取得装置9としては、具体的には、例えば、データ収録システム(DAQ)等が挙げられる。
【0027】
データ処理装置10は、各同位体を含む分子の吸収線データベースが内蔵されている。データ処理装置10は、分析対象ガス中の試料濃度の推定値、試料中の各同位体濃度の推定値、温度、及び圧力から、吸収線データベースを用いることで、試料のレーザー光の模擬透過率を算出可能とされている。
吸収線データベースとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、HITRAN等が挙げられる。
【0028】
また、データ処理装置10は、レーザーダイオード2から照射されたレーザー光が、分析対象ガスが存在しない状態でセルを透過した場合に、光検出器7が測定するレーザー光の強度(ブランク強度)を計算可能とされている。
【0029】
また、データ処理装置10は、算出した模擬透過率及びブランク強度から光検出器出力の模擬計算値を求めることができる。
また、データ処理装置10は、光検出器出力の模擬計算値をロックインアンプの動作原理に基づいて微分することができ、これにより模擬微分吸収スペクトルを算出することができる。
【0030】
また、データ処理装置10は、光検出器出力の実測値と模擬計算値の誤差が小さくなるように、分析対象ガス中の試料濃度の推定値等をパラメータとしてフィッティングすることにより、分析対象ガス中の試料濃度を算出可能とされている。
【0031】
また、データ処理装置10は、微分吸収スペクトルの実測値と模擬計算値の誤差が小さくなるように、試料中の各同位体濃度の推定値等をパラメータとしてフィッティングすることにより、試料中の各同位体濃度を算出可能とされている。
データ処理装置10としては、具体的には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等が挙げられる。
【0032】
<同位体濃度算出方法>
次に、上述した同位体濃度測定装置1を用いた、本実施形態の同位体濃度算出方法について詳細に説明する。なお、本実施形態の同位体濃度算出方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
図2は、本実施形態の同位体濃度算出方法における各工程及び各工程に含まれる各ステップを示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施形態の同位体濃度算出方法は、オフセット電流と波長の関係を求めるスペクトル同定工程(第3の工程)と、分析対象ガス中の試料濃度を算出する試料濃度算出工程(第1の工程)と、試料中の各同位体濃度を算出する同位体濃度算出工程(第2の工程)と、試料濃度、同位体濃度、スケール因子、変調振幅、光検出器出力の電流依存性等の各パラメータの最適化を行う最適化工程と、を含み概略構成されている。以下、各工程について詳細に説明する。
【0034】
なお、本実施形態では、一例として、2次微分吸収スペクトルの実測値及び模擬計算値を用いて同位体濃度を算出する方法について説明しているが、2次以上の微分スペクトルを用いる方法も可能であり、この例に限られるものではない。
また、本実施形態の同位体濃度算出方法で用いられる計算式は一例であり、同位体濃度測定装置に用いられるロックインアンプの動作原理等により異なることがある。
【0035】
(スペクトル同定工程)
スペクトル同定工程では、2次微分吸収スペクトルを測定し、既存の吸収線データベースの波長と吸収強度に基づいてスペクトル線の同定を行うことで、レーザーダイオードに流すオフセット電流と、レーザーダイオードから照射されるレーザー光の波長との関係を求める。以下、スペクトル同定工程について詳細に説明する。
【0036】
(S1−1)光検出器出力及び2次微分吸収スペクトルの測定
スペクトル同定工程では、
図2中のS1−1に示すように、先ず、
図1に示す同位体濃度測定装置1を用いて光検出器出力及び2次微分吸収スペクトルを測定する。
具体的には、気化器(図示略)等により気化した試料と窒素ガス等の不活性ガスとを混合したガス(分析対象ガス)を、ガス導入経路5から光学セル4に導入する。その際、光学セル4の温度及び圧力は所定の値を保つように調整し、それらの実測値を模擬計算に使用する。
【0037】
次に、レーザーダイオードドライバ3によりレーザーダイオード2に所定のオフセット電流I
0、変調振幅A及び変調周波数fの電流を流すことで、レーザーダイオード2から所定の強度及び波長のレーザー光を光学セル4に照射する。その際、レーザーダイオード2の温度を一定に保ち、所定の範囲内でオフセット電流I
0を掃引することで、レーザー光の波長を所望の範囲で連続的に変えることができる。
【0038】
次に、光検出器7において、光学セル4内の分析対象ガスを透過したレーザー光の強度(光検出器出力)の実測値(以下、「実測光検出器出力」と記載することがある)が測定される。光検出器7はロックインアンプ8及びデータ取得装置9と信号線で接続されており、実測光検出器出力がロックインアンプ8及びデータ取得装置9に送信される。
【0039】
次に、ロックインアンプ8に送信された実測光検出器出力は、ロックインアンプ8により2次微分されることで2次微分吸収スペクトルの実測値(以下、「実測2次微分吸収スペクトル」と記載することがある)に変換される。その後、実測2次微分吸収スペクトルはデータ取得装置9に送信される。
【0040】
以上の工程により、データ取得装置9は、光検出器7から送信される実測光検出器出力、及びロックインアンプ8から送信される実測2次微分吸収スペクトルを受信する。
図3及び
図4に、同位体濃度測定装置1により測定される実測光検出器出力及び実測2次微分吸収スペクトルの一例を示す。
【0041】
(S1−2)吸収断面積の計算
次に、
図2中のS1−2に示すように、既存の吸収線データベース及び温度と圧力の測定値を用いて、試料中の各同位体について、それぞれの同位体濃度が100%のときの吸収断面積σ
i(λ)(ここで、iは各同位体に対応する添え字である。以下同様である。)を計算する。
【0042】
(S1−3)模擬透過率の計算
次に、
図2中のS1−3に示すように、(S1−2)で計算した吸収断面積σ
i(λ)を元に、レーザー光の光路長L、分析対象ガス中の試料濃度の推定値N、試料中の各同位体濃度の推定値ρ
iにおける混合気体の模擬透過率(模擬的に算出した透過率)T(λ)を計算すると、下記式(1)で表される。
【0044】
ここで、上記式(1)中、波長λは電流Iの関数であり、模擬透過率は電流Iの関数として下記式(2)で表される。
【0046】
上記式(2)中、T(I)は模擬透過率、Iは電流、Nは分析対象ガス中の試料濃度の推定値、ρ
iは試料中の各同位体濃度の推定値、σ
i(I)は各同位体の吸収断面積、Lはレーザー光の光路長を表し、Σ
iは各同位体に対して総和をとることを表している。
ここで、σ
i(I)は電流I(λ)における吸収断面積であり、後述する(S1−7)で求めた電流と波長の関係を用いて算出する。
【0047】
(S1−4)ブランク強度の計算
次に、
図2中のS1−4に示すように、レーザーダイオード2から照射されたレーザー光が、分析対象ガスが存在しない状態でセルを透過した場合に、光検出器7が測定するレーザー光の強度(ブランク強度)を計算する。具体的には、ブランク強度P(I)を下記式(3)のように電流値Iの2次関数として表すことができる。
【0049】
上記式(3)中、Iは電流、P(I)はブランク強度、P
0、P
1、P
2はブランク強度係数を表す。
なお、P
0、P
1、P
2としては、経験的に求めた値、すなわちオフセット電流掃引時の光検出器出力から算出される2次近似式の係数を初期値として使用する。
【0050】
(S1−5)模擬光検出器出力の算出
次に、
図2中のS1−5に示すように、光検出器出力S(I)を、下記式(4)で表すように、(S1−3)、(S1−4)で計算したブランク強度P(I)及び模擬透過率T(I)の積として計算することで光検出器出力の模擬計算値(以下、「模擬光検出器出力」と記載することがある)を算出する。
【0052】
ここで、波長変調法の測定条件に適合するように、時間tにおける電流値I(t)はオフセット電流I
0の近傍で変調振幅Aの正弦波により時間的に変調されていることを考慮する。
【0054】
上記式(6)中、S(I,t)は光検出器出力、I、I(t)は電流、tは時間を表す。なお、tはデータ取得装置9のサンプリング速度によって決まる時間である。
【0055】
(S1−6)模擬2次微分吸収スペクトルの算出
次に、
図2中のS1−6に示すように、(S1−5)で計算した模擬光検出器出力S(I)を用いて、ロックインアンプの動作原理を利用して2次微分吸収スペクトルを計算する。すなわち、各オフセット電流I
0における模擬光検出器出力S(I
0,t)に、下記式(8)で表される周波数2fの正弦波参照信号R(I)を乗じ、この結果から直流成分のみを抽出することにより、<S’’(I
0)>に比例する信号波形のみを取り出す。これにより、2次微分吸収スペクトルの模擬計算値(以下、「模擬2次微分吸収スペクトル」と記載することがある)を算出する。
【0057】
なお、上記式(7)、(8)、(9)中、S(I)は模擬光検出器出力、Iは電流、I
0はオフセット電流、Aは変調振幅、fは変調周波数、tは時間、ωは角周波数(ω=2πf)を表す。
また、上記式(7)中、<S(I
0)>、<S’(I
0)>、及び<S’’(I
0)>は各時間tにおける模擬光検出器出力S(I
0)の平均値、S(I
0)の時間微分の平均値、S(I
0)の時間に関する2次微分の平均値をそれぞれ表す。
【0058】
なお、<S(I
0)>は、実測と同じ各オフセット電流I
0において、サンプリング時間に取得された模擬光検出器出力S(I
0,t)を時間平均することにより求める。具体的には、下記式(10)により模擬光検出器出力の平均値<S(I
0)>を求める。
【0060】
上記式(10)中、<S(I
0)>は各サンプリング時間における模擬光検出器出力の平均値、I
0はオフセット電流、tは時間、S(I
0,t)は模擬光検出器出力、nはデータ取得装置9のサンプリング数を表している。また、Tはデータ取得装置9のサンプリング時間によって決まる値である。
また、上記式(9)中、関数LPFはローパスフィルタによる演算を表し、直流成分のみを抽出する。
【0061】
次に、オフセット電流I
0ごとに模擬光検出器出力の2次微分値S’’(I
0)のサンプル平均値<S’’(I
0)>を計算することで、模擬2次微分吸収スペクトルを算出する。なお、模擬2次微分吸収スペクトルの算出では、変調を考慮するため、実測と同様に最低でも数周期分のデータの平均値をとる。
図5に、模擬2次微分吸収スペクトルの一例を示す。
【0062】
(S1−7)電流・波長テーブルの算出
次に、
図2中のS1−7に示すように、算出した模擬2次微分吸収スペクトルにおいて、各吸収ピークの波長及び強度を計算する。次に、計算した各吸収ピークの波長及び強度から、同位体濃度の算出に使用する吸収ピークを選定する。
【0063】
次に、(S1−1)で測定した実測2次微分吸収スペクトルにおいて、吸収ピークのオフセット電流及び強度を得る。
【0064】
次に、模擬2次微分吸収スペクトルから得た各吸収ピークの波長と、実測2次微分吸収スペクトルから得た各吸収ピークのオフセット電流を各々対応付けることにより、オフセット電流と波長の関係(以下、「電流・波長テーブル」と記載する場合がある)を算出する。
図6に、電流・波長テーブルの一例を示す。
【0065】
電流・波長テーブルを算出することにより、オフセット電流I
0の変化に伴って波長λがどのように変化するかを対応付け、所望のサンプリング間隔の波長に対応するオフセット電流I
0を求めることができる。
【0066】
(試料濃度算出工程)
試料濃度算出工程では、模擬光検出器出力を計算し、実測光検出器出力との誤差が所定の条件に合致するまで、試料濃度の推定値N、ブランク強度係数P
0、P
1、P
2、及び振幅Aを最適化する。以下、試料濃度算出工程について詳細に説明する。
【0067】
(S2−1)模擬光検出器出力の算出
試料濃度算出工程では、
図2中のS2−1に示すように、先ず、上述のスペクトル同定工程における(S1−2)〜(S1−5)に記載のステップにより模擬透過率T(I)及びブランク強度P(I)を計算し、その後、模擬透過率T(I)とブランク強度P(I)の積を求めることにより、模擬光検出器出力S(I)を求める。
【0068】
次に、実測と同じ各オフセット電流I
0において、サンプリング時間に取得された模擬光検出器出力S(I
0,t)を時間平均することにより、模擬光検出器出力の平均値<S(I
0)>を求める。具体的には、上記式(10)により模擬光検出器出力の平均値<S(I
0)>を求める。
【0069】
(S2−2)光検出器出力のフィッティング
次に、
図2中のS2−2に示すように、各オフセット電流I
0(すなわち、電流掃引を行った全てのオフセット電流)での光検出器出力について、上述の(S1−1)で得られた実測光検出器出力と上述の(S2−1)で得られた模擬光検出器出力の平均値との残差の2乗和が最小となるように、試料濃度の推定値N、ブランク強度係数P
0、P
1、P
2、及び振幅Aを最適化する。
【0070】
(同位体濃度算出工程)
同位体濃度算出工程では、模擬2次微分吸収スペクトルを計算し、実測2次微分吸収スペクトルとの誤差が所定の条件に合致するまで、各同位体の濃度の推定値ρ
i及びスペクトル全体の強度を調整する因子(スケール因子)を最適化する。以下、同位体濃度算出工程について詳細に説明する。
【0071】
(S3−1)模擬2次微分吸収スペクトルの算出
同位体濃度算出工程では、
図2中のS3−1に示すように、先ず、上述のスペクトル同定工程における(S1−6)に記載の方法により模擬2次微分吸収スペクトルを計算する。その後、(S1−7)に記載の方法により吸収ピークの模擬ピーク強度を計算する。
【0072】
(S3−2)2次微分吸収スペクトルのフィッティング
次に、
図2中のS3−2に示すように、2次微分吸収スペクトルのピーク強度について、上述の(S1−1)で得られた実測2次微分吸収スペクトルと上述の(S3−1)で得られた模擬2次微分吸収スペクトルとの残差の2乗和が最小となるように、各同位体の濃度の推定値ρ
i及びスケール因子を最適化する。
【0073】
(最適化工程)
最適化工程では、
図2に示すように、上述した試料濃度算出工程と同位体濃度算出工程を数回繰り返すことにより、試料濃度の推定値N、ブランク強度係数P
0、P
1、P
2、及び振幅Aの最適化と各同位体濃度の推定値ρ
i及びスケール因子の最適化を繰り返す。各値について安定した値が得られるまで繰り返し、安定した際の値を最終結果とする。
以上の工程により、試料中の各同位体の濃度を算出する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の同位体濃度算出方法によれば、
光検出器出力を測定し、実測光検出器出力を得るステップと、
分析対象ガス中に含まれる試料の濃度の推定値に基づいて、試料中に含まれる各同位体についての既知の吸収スペクトルから当該試料の模擬透過率を算出するステップと、
模擬透過率に基づいて、模擬光検出器出力を算出するステップと、
光検出器出力の実測値と模擬計算値とを用いた演算によって、試料の濃度の推定値を最適化するステップと、を有する試料濃度算出工程と、
各オフセット電流における実測光検出器出力を微分することにより、実測2次微分吸収スペクトルを測定するステップと、
試料中の各同位体の濃度の推定値に基づいて模擬透過率を算出し、当該模擬透過率に基づいて、各オフセット電流における模擬光検出器出力を算出し、当該模擬光検出器出力を微分することにより模擬2次微分吸収スペクトルを算出するステップと、
2次微分吸収スペクトルの実測値と模擬計算値とを用いた演算によって、各同位体の濃度の推定値を最適化するステップと、を有する同位体濃度算出工程と、を含み、
第1の工程及び第2の工程は、各同位体の濃度の推定値が収束するまで必要に応じて繰り返し実行されるため、簡便な測定方法に基づいて正確に同位体濃度を算出することができる。
【0075】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した同位体濃度算出方法では、試料濃度算出工程の後に同位体濃度算出工程を行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、スペクトル同定工程の後に同位体濃度算出工程を行い、その後に試料濃度算出工程を行ってもよい。
【0076】
また、上述した同位体濃度算出方法では、スペクトル同定工程及び最適化工程を含む例について説明したが、これに限定されない。例えば、スペクトル同定工程又は最適化工程のどちらか一方を省略してもよいし、両方の工程を省略してもよい。
【0077】
また、上述した同位体濃度算出方法では、光検出器出力を2次微分した2次微分吸収スペクトルに基づいて同位体濃度の推定値ρ
iを算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、n次微分(nは整数)したn次微分吸収スペクトルに基づいて同位体濃度の推定値ρ
iを算出してもよい。
図7に、天然水を試料とした場合の、模擬4次微分吸収スペクトルの一例を示す。
【0078】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
<実施例1>
天然水の酸素同位体濃度の算出を行った。具体的には下記の4工程により行った。
【0080】
(スペクトル同定工程)
(S1−1)光検出器出力及び2次微分吸収スペクトルの測定
先ず、
図1に示す同位体濃度測定装置1を用いて光検出器出力を測定した。具体的には、天然水を気化器(図示略)(温度:70℃、圧力:300kPaA)に10μL導入することで天然水を気化し、100sccm(sccm:standard cc/min、25℃、1気圧での値、以下同じ)の窒素ガスと混合して分析対象ガスを生成し、ガス導入経路5を介して分析対象ガスをヘリオットセル(光学セル4)に導入した。なお、ヘリオットセルのセル温度は50℃であり、セル内の圧力は10kPaAであった。
【0081】
次に、レーザーダイオードドライバ3を用いて、変調周波数が1.003kHz、変調振幅が1mA、オフセット電流掃引範囲が15mA〜150mAの条件で、レーザーダイオード2に電流を流した。これにより、レーザーダイオード2から、ヘリオットセルに向けてレーザー光を照射した。なお、レーザーダイオード2の温度は14℃であった。また、上記条件でオフセット電流を掃引したことにより、波長1415.7nm〜1416.4nmの範囲の吸収スペクトルを測定することができた。なお、オフセット電流の掃引は150mAから、149.8mA、149.6mA、・・・、15mAのように−0.2mA間隔で順次変えることにより掃引した。
【0082】
次に、ヘリオットセル内の分析対象ガスを透過したレーザー光の強度(光検出器強度)を、光検出器7で測定した。その後、データ取得装置9により、実測光検出器出力及び実測2次微分吸収スペクトルを得た。
【0083】
(S1−2)吸収断面積の計算
水の同位体H
216O、H
217O、H
218Oについて、それぞれの同位体濃度が100%のときの吸収断面積σ
i(λ)を、HITRANデータベースを用いて計算した。
【0084】
(S1−3)模擬透過率の計算
次に、計算した吸収断面積σ
i(λ)を元に、上記式(1),(2)により分析対象ガスの模擬透過率T(I)を計算した。なお、光路長Lを76mとし、分析対象ガス中の試料(天然水)濃度の初期推定値Nを8000ppmとした。また、各同位体濃度の推定値ρ
iは、天然存在比、すなわち、Hを99.985atom%、Dを0.015atom%、
16Oを99.757atom%、
17Oを0.038atom%、
18Oを0.205atom%とした。また、σ
i(I)は、あらかじめ測定した電流・波長テーブルに基づき値を決めた。また、模擬透過率T(I)の計算では、波長のサンプリング間隔を0.0001nmとした。
【0085】
(S1−4)ブランク強度の計算
次に、上記式(3)からブランク強度P(I)を計算した。なお、P
0、P
1、P
2としては、経験的に求めた値、すなわちオフセット電流掃引時の光検出器出力から算出される2次近似式の係数を初期値として使用した。具体的には、P
0=−1.31×10
−3、P
1=1.42×10
−3、P
2=−1.60×10
−6とした。また、波長のサンプリング間隔を0.0001nmとした。
【0086】
(S1−5)模擬光検出器出力の算出
次に、上記(S1−3)、(S1−4)で計算した模擬透過率T(I)、ブランク強度P(I)を元に、上記式(4)により模擬光検出器出力S(I)を算出した。
【0087】
(S1−6)模擬2次微分吸収スペクトルの算出
次に、算出した模擬光検出器出力S(I)を元に、上記式(7)、(8)、(9)によりロックインアンプの動作原理に基づいて2次微分した。なお、オフセット電流I
0を15〜150mA、変調周波数fを1003Hz、時間tを0,0.00005,0.00010,・・・,0.00995sとした。Aは後述するフィッティングにより算出した。
次に、各オフセット電流I
0におけるロックインアンプ出力S’’(I
0)のサンプル平均を求め、模擬2次微分吸収スペクトルを得た。なお、模擬2次微分吸収スペクトルの算出では、変調を考慮するため、実測と同様に最低でも数周期分のデータの平均値をとった。
【0088】
(S1−7)電流・波長テーブルの算出
次に、模擬2次微分吸収スペクトルのピーク波長及びピーク強度を計算し、同位体濃度算出に使用する吸収ピークを選定した。なお、スペクトル線の同定を、H
216Oに対しては1415.803nm、1416.014nm、1416.047nm、1416.078nm、1416.195nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
217Oに対しては1416.268nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
218Oに対しては1416.369nmを中心波長とする吸収線を選択することにより行った。
なお、H
216Oに対して必ずしも5本の吸収線すべてを用いる必要はなく、任意の1つまたは複数の吸収線を選択しても良い。
【0089】
次に、(S1−1)で測定した実測2次微分吸収スペクトルのピーク電流及びピーク強度を得た。
次に、実測2次微分吸収スペクトルからHITRANデータベースの波長及び吸収強度に基づいてスペクトル線の同定を行い、オフセット電流I
0の変化に伴い波長λがどのように変化するかを対応付け、スプライン補間によりサンプリング間隔0.0001nmの波長に対応する電流値を求めた。以上により、電流・波長テーブルを算出した。
【0090】
(試料濃度算出工程)
(S2−1)模擬光検出器出力の算出
次に、上述した(S1−2)〜(S1−5)と同様の手順により模擬光検出器出力を算出した。
次に、各オフセット電流I
0において、サンプリング時間に取得された光検出器出力を上記式(10)により時間平均することにより模擬光検出器出力の平均値<S(I
0)>を算出した。なお、T=0.00995sとし、0.01sごとにサンプリングした。つまり、t=0,0.00005,・・・,0.00995sとし、サンプリング数nを200とした。
【0091】
(S2−2)光検出器出力のフィッティング
次に、各オフセット電流I
0での光検出器出力の平均値<S(I
0)>において、実測値と模擬計算値の残差の2乗和、つまり、{(実測光検出器出力)−(模擬光検出器出力)}
2を算出し、その和が最小となるように、P
0、P
1、P
2、N、Aをフィッティングした。フィッティングの結果、P
0=−2.43×10
−4、P
1=1.43×10
−3、P
2=−1.70×10
−6、試料(水)濃度の推定値N=5.0×10
21個/cm
3、A=0.700であった。
【0092】
(同位体濃度算出工程)
(S3−1)模擬2次微分吸収スペクトルの算出
次に、上述した(S1−6)と同様の手順により模擬2次微分吸収スペクトルを算出した。なお、模擬2次微分吸収スペクトルについて波長0.0001nm間隔となるようにスプライン補間を行った。その後、(S1−7)に記載の方法により吸収ピークのピーク強度を計算した。
【0093】
(S3−2)2次微分吸収スペクトルのフィッティング
次に、上述の(S1−1)で得られた実測2次微分吸収スペクトルのピーク強度(実測ピーク強度)と上述の(S3−1)で得られた模擬2次微分吸収スペクトルのピーク強度(模擬ピーク強度)について、残差の2乗和つまり、{(実測ピーク強度)−(模擬ピーク強度)}
2が最小となるように、各同位体濃度の推定値ρ
i及びスケール因子をフィッティングした。フィッティングの結果、酸素同位体の濃度は、
16Oが99.763atom%、
18Oが0.200atom%、
17Oが0.035atom%であり、スケール因子は8.7であった。
【0094】
<実施例2>
18Oを高濃度に含む水の酸素同位体濃度の算出を行った。具体的には下記の4工程により行った。
【0095】
(スペクトル同定工程)
先ず、
図1に示す同位体濃度測定装置1を用いて光検出器出力を測定した。具体的には、
18Oを約10atom%まで濃縮した水を気化器(図示略)(温度:70℃、圧力:300kPaA)に10μL導入することで水を気化し、100sccmの窒素ガスと混合して分析対象ガスを生成し、ガス導入経路5を介して分析対象ガスをヘリオットセル(光学セル4)に導入した。なお、ヘリオットセルのセル温度は50℃であり、セル内の圧力は10kPaAであった。
【0096】
また、分析対象ガス中に含まれる試料(水)濃度は8000ppmと推定した。また、水中に含まれる各同位体の濃度は、
16Oが88.18atom%、
17Oが0.47atom%、
18Oが11.35atom%、Hが99.985atom%、Dが0.015atom%と推定した。
【0097】
次に、レーザーダイオードドライバ3を用いて、変調周波数が1.003kHz、変調振幅が1mA、オフセット電流掃引範囲が15mA〜150mAの条件で、レーザーダイオード2に電流を流した。これにより、レーザーダイオード2から、ヘリオットセルに向けてレーザー光を照射した。なお、レーザーダイオード2の温度は14℃であった。
【0098】
次に、実施例1の(S1−2)〜(S1−6)と同様の方法により模擬2次微分吸収スペクトルを算出した。
次に、実施例1の(S1−7)と同様の方法により、電流・波長テーブルを算出した。なお、実施例2では、スペクトル線の同定を、H
216Oに対しては1415.803nm、1416.078nm、1416.195nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
217Oに対しては1415.855nm、1416.236nm、1416.268nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
218Oに対しては1415.915nm、1416.031nm、1416.369nmを中心波長とする吸収線を選択することにより行った。
なお、水同位体に対して必ずしも上記の吸収線すべてを用いる必要はなく、任意の1つまたは複数の吸収線を選択しても良い。
【0099】
(試料濃度算出工程)
次に、実施例1の(S2−1)、(S2−2)と同様の方法により、P
0、P
1、P
2、Nをフィッティングした。フィッティングの結果、P
0=−1.23×10
−4、P
1=1.46×10
−3、P
2=−1.79×10
−6、試料(水)濃度の推定値N=5.6×10
21個/cm
3であった。
【0100】
(同位体濃度算出工程)
次に、実施例1の(S3−1)、(S3−2)と同様の方法により、各同位体濃度の推定値ρ
i及びスケール因子をフィッティングした。フィッティングの結果、酸素同位体の濃度は、
16Oが88.921atom%、
17Oが0.392atom%、
18Oが10.688atom%であり、スケール因子は8.15であった。
【0101】
<実施例3>
天然水の酸素及び水素の同位体濃度の算出を行った。具体的には下記の4工程により行った。
【0102】
(スペクトル同定工程)
先ず、
図1に示す同位体濃度測定装置1を用いて光検出器出力を測定した。具体的には、酸素及び水素同位体濃度がほぼ天然存在比と考えられる天然水を気化器(図示略)(温度:70℃、圧力:300kPaA)に10μL導入することで水を気化し、100sccmの窒素ガスと混合して分析対象ガスを生成し、ガス導入経路5を介して分析対象ガスをヘリオットセル(光学セル4)に導入した。なお、ヘリオットセルのセル温度は50℃であり、セル内の圧力は10kPaAであった。
【0103】
また、分析対象ガス中に含まれる試料(水)濃度は8000ppmと推定した。また、水中に含まれる各同位体の濃度は、
16Oが99.757atom%、
17Oが0.038atom%、
18Oが0.205atom%、Hが99.985atom%、Dが0.015atom%と推定した。
【0104】
次に、レーザーダイオード2として、DFBレーザーを1390nm付近で発振可能な素子に交換したものを用意した。レーザーダイオードドライバ3を用いて、変調周波数が1.003kHz、変調振幅が1mA、オフセット電流掃引範囲が30mA〜80mAの条件で、レーザーダイオード2に電流を流した。これにより、レーザーダイオード2から、ヘリオットセルに向けてレーザー光を照射した。なお、レーザーダイオード2の温度は14℃であった。また、上記条件でオフセット電流を掃引したことにより、波長1390.2nm〜1390.7nmの範囲の吸収スペクトルを測定することができた。なお、オフセット電流の掃引は80mAから、79.9mA、79.8mA、・・・、30mAのように−0.1mA間隔で順次変えることにより掃引した。
【0105】
次に、実施例1の(S1−2)〜(S1−6)と同様の方法により模擬2次微分吸収スペクトルを算出した。
次に、実施例1の(S1−7)と同様の方法により、電流・波長テーブルを算出した。なお、実施例3では、スペクトル線の同定を、H
216Oに対しては1390.354nm、1390.433nm、1390.521nm、1390.598nm、1390.671nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
217Oに対しては1390.218nm、1390.632nmを中心波長とする吸収線を選択し、H
218Oに対しては1390.273nm、1390.300nm、1390.559nmを中心波長とする吸収線を選択し、HD
16Oに対しては1390.620nmを中心波長とする吸収線を選択することにより行った。
【0106】
(試料濃度算出工程)
次に、実施例1の(S2−1)、(S2−2)と同様の方法により、P
0、P
1、P
2、N、Aをフィッティングした。フィッティングの結果、P
0=−2.43×10
−4、P
1=1.43×10
−3、P
2=−1.70×10
−6、試料(水)濃度の推定値N=4.8×10
21個/cm
3、変調振幅A=0.700であった。
【0107】
(同位体濃度算出工程)
次に、実施例1の(S3−1)、(S3−2)と同様の方法により、各同位体濃度の推定値ρ
i及びスケール因子をフィッティングした。フィッティングの結果、酸素同位体の濃度は、
16Oが99.765atom%、
17Oが0.036atom%、
18Oが0.199atom%、水素同位体濃度は、Hが99.985atom%、Dが0.015atom%であり、スケール因子は8.1であった。
【0108】
<実施例4>
二酸化炭素の炭素及び酸素の同位体濃度の算出を行った。具体的には下記の4工程により行った。
【0109】
(スペクトル同定工程)
先ず、
図1に示す同位体濃度測定装置1を用いて光検出器出力を測定した。具体的には、乾燥空気を分析対象ガスとして、100sccmの一定流量でガス導入経路5を介して分析対象ガスをヘリオットセル(光学セル4)に導入した。なお、ヘリオットセルのセル温度は50℃であり、セル内の圧力は10kPaAであった。
【0110】
また、分析対象ガス(乾燥空気)中に含まれる試料(二酸化炭素)濃度は400ppmと推定した。また、二酸化炭素中に含まれる各同位体の濃度は、
16Oが99.757atom%、
17Oが0.038atom%、
18Oが0.205atom%、
12Cが98.93atom%、
13Cが1.07atom%と推定した。
【0111】
次に、レーザーダイオード2として、DFBレーザーを4343nm付近で発振可能な素子に交換したものを用意した。レーザーダイオードドライバ3を用いて、変調周波数が1.003kHz、変調振幅が1mA、オフセット電流掃引範囲が30mA〜130mAの条件で、レーザーダイオード2に電流を流した。これにより、レーザーダイオード2から、ヘリオットセルに向けてレーザー光を照射した。なお、レーザーダイオード2の温度は20℃であった。また、上記条件でオフセット電流を掃引したことにより、波長4343nm〜4344nmの範囲の吸収スペクトルを測定することができた。なお、オフセット電流の掃引は130mAから、129.9mA、129.8mA、・・・、30mAのように−0.1mA間隔で順次変えることにより掃引した。
【0112】
次に、実施例1の(S1−2)〜(S1−6)と同様の方法により模擬2次微分吸収スペクトルを算出した。
次に、実施例1の(S1−7)と同様の方法により、電流・波長テーブルを算出した。なお、実施例4では、スペクトル線の同定を、
12C
16O
2に対しては4343.305nmを中心波長とする吸収線を選択し、
13C
16O
2に対しては4343.467nmを中心波長とする吸収線を選択し、
12C
16O
18Oに対しては4343.675nm、4343.731nmを中心波長とする吸収線を選択し、
12C
16O
17Oに対しては4343.849nmを中心波長とする吸収線を選択することにより行った。
【0113】
(試料濃度算出工程)
次に、実施例1の(S2−1)、(S2−2)と同様の方法により、P
0、P
1、P
2、N、Aをフィッティングした。フィッティングの結果、P
0=1.21×10
−2、P
1=7.83×10
−4、P
2=2.48×10
−6、試料(二酸化炭素)濃度の推定値N=2.5×10
20個/cm
3、変調振幅A=0.700であった。
【0114】
(同位体濃度算出工程)
次に、実施例1の(S3−1)、(S3−2)と同様の方法により、各同位体濃度の推定値ρ
i及びスケール因子をフィッティングした。フィッティングの結果、酸素同位体の濃度は、
16Oが99.738atom%、
17Oが0.039atom%、
18Oが0.223atom%、炭素同位体濃度は
12Cが98.95atom%、
13Cが1.05atom%であり、スケール因子は7.3であった。