(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御計画に関する、前記自車両と周辺物体との間隔を評価する安全性および前記軌道への追従性を含む要素を評価する計画性に基づいて、車線変更ターゲット位置を決定するターゲット位置決定部を、更に備える、
請求項5記載の車両制御装置。
前記制御計画のうち、前記自車両が車線変更するための前記軌道と周辺の物体との間隔が広い制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定するターゲット位置決定部を、更に備える、
請求項5または6記載の車両制御装置。
前記制御計画のうち、前記車線変更の際に必要な前記自車両の加減速が小さい制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定するターゲット位置決定部を、更に備える、
請求項5から7のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
前記生成部は、前記期間導出部により導出された車線変更可能期間内に前記車線変更ターゲット位置に車線変更するための速度の制約を導出し、前記導出した速度の制約下で前記制御計画を生成する、
請求項9記載の車両制御装置。
前記監視対象となる周辺車両は、前記検出部により検出された周辺車両のうち前記自車両の直前を走行する周辺車両と、前記車線変更ターゲット位置の直前と直後を走行する周辺車両とを含む、
請求項11記載の車両制御装置。
前記期間導出部は、前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、前記車線変更ターゲット位置の直前を走行する周辺車両に追いつくまでの期間を、前記車線変更可能期間として導出する、
請求項13記載の車両制御装置。
前記期間導出部は、前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、前記自車両の直前を走行する周辺車両に追いつくまでの期間を、前記車線変更可能期間として導出する、
請求項13または14記載の車両制御装置。
前記期間導出部は、前記自車両が前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両を追い抜く必要がある場合、前記追い抜いた後の期間を、前記車線変更可能期間として導出する、
請求項13から15のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
前記期間導出部は、前記自車両が前記車線変更ターゲット位置の直前を走行する周辺車両に追い抜かれる必要がある場合、前記追い抜かれた後の期間を、前記車線変更可能期間として導出する、
請求項13から16のうちいずれか1項記載の車両制御装置。
前記判定部は、自車線に隣接する隣接車線を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、他の周辺車両に追いつくと判定した場合、追いつく点を終点とした前記自車両の変位の軌跡を生成し、前記生成した軌跡が少なくとも速度に関する制約を満たす場合に、車線変更が可能であると判定する、
請求項18記載の車両制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、車線変更の可否を判断するのに留まっており、車線変更可能な期間についての考慮がなされていない。このため、スムーズな車線変更制御を行うことができない場合があった。
【0005】
本発明に係る態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、車線変更可能な期間を導出することで種々の処理に役立てることができる車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出する期間導出部と、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記期間導出部により導出された車線変更可能期間のうち、車線変更可能期間が長いものから順に所定数の車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込む絞り込み部と、を備える。
【0007】
(2)本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出する期間導出部と、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記期間導出部により導出された車線変更可能期間のうち、最も車線変更可能期間の長い車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込む絞り込み部とを備える。
【0008】
(3)
本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として
前記隣接車線において設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、
前記自車両と前記周辺車両との位置関係を類型化した位置関係パターンと、前記位置関係パターンにおける前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化
を類型化した位置変化パターンに基づいて導出する期間導出部を更に備える。
【0009】
(4)
本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両
であって、前記自車両が走行する自車線において前記自車両の前方を走行する前走車両と、前記自車線に隣接する隣接車線を走行する第1車両と、前記隣接車線において前記第1車両の後方を走行する第2車両とを含む周辺車両を検出する検出部と、
前記自車両および前記検出部により検出された周辺車両の位置関係に基づく前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、
前記第1車両と前記第2車両との間に設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出する期間導出部とを備える。
【0010】
(5)上記
(1)または(2)の態様において、前記絞り込み部により絞り込まれた車線変更ターゲット位置に対応する車線変更可能期間内に車線変更するための軌道を含む制御計画を生成する生成部と、前記生成部により生成された前記制御計画に基づいて、前記自車両の走行制御を行う走行制御部と、を更に備えてもよい。
【0011】
(6)上記(5)の態様において、前記制御計画に関する、前記自車両と周辺物体との間隔を評価する安全性および前記軌道への追従性を含む要素を評価する計画性に基づいて、車線変更ターゲット位置を決定するターゲット位置決定部を更に備えてもよい。
【0012】
(7)上記(5)または(6)の態様において、前記制御計画のうち、前記自車両が車線変更するための前記軌道と周辺の物体との間隔が広い制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定するターゲット位置決定部を、更に備えてもよい。
【0013】
(8)上記(5)から(7)のうちいずれか1つの態様において、前記制御計画のうち、前記車線変更の際に必要な前記自車両の加減速が小さい制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定するターゲット位置決定部を更に備えてもよい。
【0014】
(9)上記(1)
から(4)のうちいずれか1つの態様において、前記期間導出部により導出された車線変更可能期間内に車線変更するための軌道を含む制御計画を生成する生成部と、前記生成部により生成された前記制御計画に基づいて、前記自車両の走行制御を行う走行制御部と、を更に備えてもよい。
【0015】
(10)上記(9)の態様において、前記生成部は、前記期間導出部により導出された車線変更可能期間内に前記車線変更ターゲット位置に車線変更するための速度の制約を導出し、前記導出した速度の制約下で前記制御計画を生成してもよい。
【0016】
(11)
本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出する期間導出部と、を備え、前記期間導出部は、前記自車両と、前記検出部により検出された周辺車両のうち監視対象となる周辺車両との位置分布に応じて、異なる手法で前記車線変更可能期間を導出
する。
【0017】
(12)上記(11)の態様において、前記監視対象となる周辺車両は、前記検出部により検出された周辺車両のうち前記自車両の直前を走行する周辺車両と、前記車線変更ターゲット位置の直前と直後を走行する周辺車両とを含んでもよい。
【0018】
(13)
本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出する期間導出部と、を備え、前記期間導出部は、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出されるタイミングであって、前記検出部により検出された周辺車両のうち監視対象となる周辺車両が他の周辺車両に追いつくタイミングを基準として、前記車線変更可能期間を導出
する。
【0019】
(14)上記(13)の態様において、前記期間導出部は、前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、前記車線変更ターゲット位置の直前を走行する周辺車両に追いつくまでの期間を、前記車線変更可能期間として導出してもよい。
【0020】
(15)上記(13)または(14)の態様において、前記期間導出部は、前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、前記自車両の直前を走行する周辺車両に追いつくまでの期間を、前記車線変更可能期間として導出してもよい。
【0021】
(16)上記(13)から(15)のうちいずれか1つの態様において、前記期間導出部は、前記自車両が前記車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両を追い抜く必要がある場合、前記追い抜いた後の期間を、前記車線変更可能期間として導出してもよい。
【0022】
(17)上記(13)から(16)のうちいずれか1つの態様において、前記期間導出部は、前記自車両が前記車線変更ターゲット位置の直前を走行する周辺車両に追い抜かれる必要がある場合、前記追い抜かれた後の期間を、前記車線変更可能期間として導出してもよい。
【0023】
(18)本発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定する推定部と、前記検出部により検出された周辺車両のうち、自車線に隣接する隣接車線を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、他の周辺車両に追いつくか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて、車線変更の可否を判定する判定部と、を備える。
【0024】
(19)上記(18)の態様において、前記判定部は、自車線に隣接する隣接車線を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、他の周辺車両に追いつくと判定した場合、追いつく点を終点とした前記自車両の変位の軌跡を生成し、前記生成した軌跡が少なくとも速度に関する制約を満たす場合に、車線変更が可能であると判定してもよい。
【0025】
(20)本発明の一態様に係る車両制御方法は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出することと、前記検出された前記周辺車両の位置変化を推定することと、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定された周辺車両の位置変化に基づいて導出することと、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記導出された車線変更可能期間のうち、車線変更可能期間が長いものから順に所定数の車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込むことと、を含む。
【0026】
(21)本発明の一態様に係る車両制御プログラムは、本発明の一態様に係る車両制御プログラムは、車載コンピュータに、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出させることと、前記検出された前記周辺車両の位置変化を推定させることと、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定された周辺車両の位置変化に基づいて導出させることと、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記導出された車線変更可能期間のうち、車線変更可能期間が長いものから順に所定数の車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込ませることと、を含む。
(22)本発明の一態様に係る車両制御方法は、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出することと、前記検出された前記周辺車両の位置変化を推定することと、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定された周辺車両の位置変化に基づいて導出することと、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記導出された車線変更可能期間のうち、最も車線変更可能期間の長い車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込むことと、を含む。
(23)本発明の一態様に係る車両制御プログラムは、車載コンピュータに、自車両の周辺を走行する周辺車両を検出させることと、前記検出された前記周辺車両の位置変化を推定させることと、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定された周辺車両の位置変化に基づいて導出させることと、
既に設定された車線変更ターゲット位置を、前記導出された車線変更可能期間のうち、最も車線変更可能期間の長い車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置に絞り込ませることと、を含む。
【発明の効果】
【0027】
上記(1)
〜(4)(20)
〜(23)の態様によれば、周辺車両の位置を検出し、前記検出部により検出された前記周辺車両の位置変化を推定し、自車線に隣接する隣接車線を走行する前記周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置に車線変更可能な車線変更可能期間を、前記推定部により推定された前記周辺車両の位置変化に基づいて導出することにより、種々の処理に役立てることができる。
【0028】
更に、上記
(1)(2)
(5)の態様によれば、絞り込み部が、既に設定された車線変更ターゲット位置を、期間導出部により導出された車線変更可能期間が、予め設定された期間より長い車線変更ターゲット位置に絞り込むことにより、車線変更ターゲット位置の決定を、より簡易に行うことができる。
【0029】
上記(6)の態様によれば、ターゲット位置決定部が、生成部により生成された車線変更するための制御計画に関する、自車両と周辺物体との間隔を評価する安全性および軌道への追従性を含む要素を評価する計画性に基づいて、車線変更ターゲット位置を決定することにより、安全性と計画性とが高い車線変更ターゲット位置を決定することができる。
【0030】
上記(7)の態様によれば、ターゲット位置決定部が、生成部により生成された車線変更するための制御計画のうち、自車両が車線変更するための軌道と周辺の物体との間隔が広い制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定することにより、より安全性の高い車線変更ターゲット位置を決定することができる。
【0031】
上記(8)の態様によれば、ターゲット位置決定部が、生成部により生成された車線変更するための制御計画のうち、車線変更の際に必要な自車両の加減速が小さい制御計画に対応する位置を、車線変更ターゲット位置として決定することにより、より安全性の高い車線変更ターゲット位置を決定することができる。
【0032】
上記(9)の態様によれば、車線変更可能期間内に車線変更するための制御計画を生成する生成部と、生成部により生成された制御計画に基づいて、自車両の走行制御を行う走行制御部と、を更に備えることにより、導出された車線変更可能期間を自車両の走行制御に役立てることができる。
【0033】
上記(10)の態様によれば、期間導出部により導出された車線変更可能期間内に車線変更ターゲット位置に車線変更するための速度の制約を導出し、導出した速度の制約下で制御計画を生成することにより、実現不可能な制御計画が立てられるような事態が生じるのを抑制することができる。
【0034】
上記(11)から(17)の態様によれば、自車両と、検出部により検出された周辺車両のうち監視対象となる周辺車両との位置分布に応じて異なる手法で、車線変更可能期間を導出することにより、自車両と周辺車両との位置分布に応じた適切な手法で車線変更可能期間を導出することができる。
【0035】
上記(18)(19)の態様によれば、周辺車両の位置を検出し、検出された周辺車両の位置変化を推定し、検出された周辺車両のうち、自車線に隣接する隣接車線を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置の直後を走行する周辺車両が、他の周辺車両に追いつくか否かを判定し、判定の結果に基づいて、車線変更の可否を判定することにより、より適切に車線変更の可否を判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
【0038】
<第1の実施形態>
[車両構成]
図1は、第1の実施形態に係る車両制御装置100が搭載された車両(以下、自車両Mと称する)の有する構成要素を示す図である。車両制御装置100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。また、上述した電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動する。
【0039】
図1に示すように、車両には、ファインダ20−1から20−7、レーダ30−1から30−6、およびカメラ40等のセンサと、ナビゲーション装置50と、上述した車両制御装置100とが搭載される。ファインダ20−1から20−7は、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。例えば、ファインダ20−1は、フロントグリル等に取り付けられ、ファインダ20−2および20−3は、車体の側面やドアミラー、前照灯内部、側方灯付近等に取り付けられる。ファインダ20−4は、トランクリッド等に取り付けられ、ファインダ20−5および20−6は、車体の側面や尾灯内部等に取り付けられる。上述したファインダ20−1から20−6は、例えば、水平方向に関して150度程度の検出範囲を有している。また、ファインダ20−7は、ルーフ等に取り付けられる。ファインダ20−7は、例えば、水平方向に関して360度の検出範囲を有している。
【0040】
上述したレーダ30−1および30−4は、例えば、奥行き方向の検出範囲が他のレーダよりも広い長距離ミリ波レーダである。また、レーダ30−2、30−3、30−5、30−6は、レーダ30−1および30−4よりも奥行き方向の検出範囲が狭い中距離ミリ波レーダである。以下、ファインダ20−1から20−7を特段区別しない場合は、単に「ファインダ20」と記載し、レーダ30−1から30−6を特段区別しない場合は、単に「レーダ30」と記載する。レーダ30は、例えば、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体を検出する。
【0041】
カメラ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ40は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ40は、例えば周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像する。
【0042】
なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0043】
図2は、第1の実施形態に係る車両制御装置100を中心とした自車両Mの機能構成図である。自車両Mには、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40の他、ナビゲーション装置50と、車両センサ60と、操作デバイス70と、操作検出センサ72と、切替スイッチ80と、走行駆動力出力装置90、ステアリング装置92、およびブレーキ装置94と、車両制御装置100とが搭載される。
【0044】
ナビゲーション装置50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置50は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置50により導出された経路は、経路情報134として記憶部130に格納される。自車両Mの位置は、車両センサ60の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、車両制御装置100が手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、自車両Mの位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置50とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の一機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御装置100との間で無線または通信によって情報の送受信が行われる。
【0045】
車両センサ60は、自車両Mの速度(車速)を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0046】
操作デバイス70は、例えば、アクセルペダルやステアリングホイール、ブレーキペダル、シフトレバー等を含む。操作デバイス70には、運転者による操作の有無や量を検出する操作検出センサ72が取り付けられている。操作検出センサ72は、例えば、アクセル開度センサ、ステアリングトルクセンサ、ブレーキセンサ、シフト位置センサ等を含む。操作検出センサ72は、検出結果としてのアクセル開度、ステアリングトルク、ブレーキ踏量、シフト位置等を走行制御部120に出力する。なお、これに代えて、操作検出センサ72の検出結果が、直接的に走行駆動力出力装置90、ステアリング装置92、またはブレーキ装置94に出力されてもよい。
【0047】
切替スイッチ80は、運転者等によって操作されるスイッチである。切替スイッチ80は、機械式のスイッチであってもよいし、ナビゲーション装置50のタッチパネル式表示装置に設けられるGUI(Graphical User Interface)スイッチであってもよい。切替スイッチ80は、運転者が手動で運転する手動運転モードと、運転者が操作を行わない(或いは手動運転モードに比して操作量が小さい、または操作頻度が低い)状態で走行する自動運転モードとの切替指示を受け付け、走行制御部120による制御モードを自動運転モードまたは手動運転モードのいずれか一方に指定する制御モード指定信号を生成する。
【0048】
走行駆動力出力装置90は、例えば、エンジンと走行用モータのうち一方または双方を含む。走行駆動力出力装置90がエンジンのみを有する場合、走行駆動力出力装置90は更にエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を含む。エンジンECUは、例えば、走行制御部120から入力される情報に従い、スロットル開度やシフト段等を調整することで、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を制御する。走行駆動力出力装置90が走行用モータのみを有する場合、走行駆動力出力装置90は、走行用モータを駆動するモータECUを含む。モータECUは、例えば、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整することで、車両が走行するための走行駆動力を制御する。走行駆動力出力装置90がエンジンと走行用モータの双方を含む場合は、エンジンECUとモータECUの双方が協調して走行駆動力を制御する。
【0049】
ステアリング装置92は、例えば、ラックアンドピニオン機能等に力を作用させて転舵輪の向きを変更可能な電動モータ、ステアリング操舵角(または実舵角)を検出する操舵角センサ等を備える。ステアリング装置92は、走行制御部120から入力される情報に従い、電動モータを駆動する。
【0050】
ブレーキ装置94は、ブレーキペダルになされたブレーキ操作が油圧として伝達されるマスターシリンダー、ブレーキ液を蓄えるリザーバータンク、各車輪に出力される制動力を調節するブレーキアクチュエータ等を備える。ブレーキ装置94は、走行制御部120から入力される情報に従い、所望の大きさのブレーキトルクが各車輪に出力されるように、ブレーキアクチュエータ等を制御する。なお、ブレーキ装置94は、上記説明した油圧により作動する電子制御式ブレーキ装置に限らず、電動アクチュエーターにより作動する電子制御式ブレーキ装置であってもよい。
【0051】
[車両制御装置]
以下、車両制御装置100について説明する。車両制御装置100は、例えば、外界認識部102と、自車位置認識部104と、行動計画生成部106と、車線変更制御部110と、走行制御部120と、制御切替部122と、記憶部130とを備える。外界認識部102、自車位置認識部104、行動計画生成部106、車線変更制御部110、走行制御部120、および制御切替部122のうち一部または全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。また、記憶部130は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プログラムは、予め記憶部130に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部130にインストールされてもよい。
【0052】
外界認識部102は、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等の出力に基づいて、周辺車両の位置、および速度等の状態を認識する。本実施形態における周辺車両とは、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、他車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、他車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいはしようとしているか否か)を含んでもよい。外界認識部102は、周辺車両の位置の履歴や方向指示器の作動状態等に基づいて、車線変更をしているか否か(あるいはしようとしているか否か)を認識する。また、外界認識部102は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者その他の物体の位置を認識してもよい。以下、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40と、外界認識部102とを合わせたものを、周辺車両を検出する「検出部DT」と称する。検出部DTは、更に、周辺車両との通信によって周辺車両の位置や速度等の状態を認識してもよい。
【0053】
自車位置認識部104は、記憶部130に格納された地図情報132と、ファインダ20、レーダ30、カメラ40、ナビゲーション装置50、または車両センサ60から入力される情報とに基づいて、自車両Mが走行している車線(自車線)、および、走行車線に対する自車両Mの相対位置を認識する。地図情報132は、例えば、ナビゲーション装置50が有するナビ地図よりも高精度な地図情報であり、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。
図3は、自車位置認識部104により走行車線に対する自車両Mの相対位置が認識される様子を示す図である。自車位置認識部104は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部104は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0054】
行動計画生成部106は、所定の区間における行動計画を生成する。所定の区間とは、例えば、ナビゲーション装置50により導出された経路のうち、高速道路等の有料道路を通る区間である。なお、これに限らず、行動計画生成部106は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
【0055】
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両Mを減速させる減速イベントや、自車両Mを加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、自車両Mに前方車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させたりする分岐イベント、車線合流ポイントにおいて自車両Mを加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント等が含まれる。例えば、有料道路(例えば高速道路等)においてジャンクション(分岐点)が存在する場合、車両制御装置100は、自動運転モードにおいて、自車両Mを目的地の方向に進行するように車線を変更したり、車線を維持したりする必要がある。従って、行動計画生成部106は、地図情報132を参照して経路上にジャンクションが存在していると判明した場合、現在の自車両Mの位置(座標)から当該ジャンクションの位置(座標)までの間に、目的地の方向に進行することができる所望の車線に車線変更するための車線変更イベントを設定する。
【0056】
図4は、ある区間について生成された行動計画の一例を示す図である。図示するように、行動計画生成部106は、目的地までの経路に従って走行した場合に生じる場面を分類し、個々の場面に即したイベントが実行されるように行動計画を生成する。なお、行動計画生成部106は、自車両Mの状況変化に応じて動的に行動計画を変更してもよい。
【0057】
[車線変更イベント]
車線変更制御部110は、行動計画生成部106により行動計画に含まれる車線変更イベントが実施される際の制御を行う。車線変更制御部110は、例えば、ターゲット位置候補設定部111と、他車位置変化推定部112と、車線変更可能期間導出部113と、制御計画生成部114と、ターゲット位置決定部115とを備える。
【0058】
(ターゲット位置候補の設定)
ターゲット位置候補設定部111は、検出部DTにより検出された周辺車両の位置を参照し、まず車線変更の対象となる大枠の対象領域を設定し、対象領域内において、自車両Mが走行している走行車線(自車線)に隣接する隣接車線を走行する周辺車両に対する相対位置として、車線変更ターゲット位置候補を設定する。
【0059】
図5は、ターゲット位置候補設定部111が車線変更ターゲット位置候補を設定する様子を示す図である。図中、m1からm7は周辺車両であり、dは各車両の走行方向であり、L1は自車線であり、L2は隣接車線である。また、Arは対象領域であり、T1からT3は車線変更ターゲット位置候補である。いずれの車線変更ターゲット位置候補であるかを区別しないときは、単に車線変更ターゲット位置候補Tと表記する。以下の説明では、行動計画によって自車線L1の右側に延在する隣接車線L2に車線変更することが指示されているものとする。
【0060】
まず、ターゲット位置候補設定部111は、隣接車線L2を走行する周辺車両のうち、自車線L1において自車両Mの直前を走行する周辺車両m1(前走車両)よりも前で走行し、且つ自車両Mに最も近い周辺車両m4(前方基準車両)よりも後ろの領域であって、隣接車線L2を走行する周辺車両のうち、自車線L1において自車両Mの直後を走行する周辺車両m2(後続車両)よりも後ろで走行し、且つ自車両Mに最も近い周辺車両m7(後方基準車両)よりも前の領域を、対象領域Arとして設定する。
【0061】
ここで、「前走車両よりも前で走行する周辺車両」とは、前端部が前走車両の前端部よりも前にある周辺車両を意味してもよいし、後端部が前走車両の後端部よりも前にある周辺車両を意味してもよい。また、重心等の基準点が前走車両の基準点、前端部、または後端部よりも前にある周辺車両を意味してもよい。
【0062】
一方、「後続車両よりも後ろで走行する周辺車両」とは、前端部が後続車両の前端部よりも後ろにある周辺車両を意味してもよいし、後端部が後続車両の後端部よりも後ろにあるに周辺車両を意味してもよい。また、重心等の基準点が後続車両の基準点、前端部、または後端部よりも後ろにある周辺車両を意味してもよい。
【0063】
これによって、ターゲット位置候補設定部111は、前走車両よりも前で走行する周辺車両の前、あるいは後続車両よりも後ろで走行する周辺車両の後といった、車線変更が困難と考えられる位置で車線変更ターゲット位置候補Tが設定されることを防止することができる。これらの位置では、前走車両または後続車両の挙動によって、車線変更のための自車両Mの挙動が大きく制限されるからである。この結果、ターゲット位置候補設定部111は、車線変更の際に、自車両Mに無理な挙動を強いることを予防することができる。
【0064】
そして、ターゲット位置候補設定部111は、対象領域Ar内を走行する周辺車両m4からm7のうち、直前直後の関係で(間に周辺車両が存在しない関係で)走行する二つの周辺車両(m4とm5、m5とm6、およびm6とm7)の間に、それぞれ車線変更ターゲット位置候補T1、T2、およびT3を設定する。従って、車線変更ターゲット位置候補Tの数は、隣接車線L2における対象領域Ar内を走行する周辺車両の数に応じて変動することになる。対象領域Ar内を走行する周辺車両の数がn台である場合、n−1個の車線変更ターゲット位置候補Tが設定される。
【0065】
これによって、ターゲット位置候補設定部111は、周辺車両の分布によっては車線変更する先の候補を複数設定することになり、車線変更制御の自由度を高めることができる。この結果、後に最適な車線変更ターゲット位置T#を設定することができる。
【0066】
ここで、前方基準車両、後方基準車両、前走車両、および後続車両のいずれかが検出部DTにより検出されない場合も想定される。以下、これについて説明する。
図6は、前方基準車両が検出されない場合にターゲット位置候補設定部111が実行する処理を説明するための図である。図示するように、前方基準車両が検出されない場合(前走車両よりも前にある周辺車両が存在しない場合)、ターゲット位置候補設定部111は、例えば自車両Mの前端部から前方に向けて所定距離X1の地点を、対象領域Arの前方側境界Arfとして決定する。所定距離X1は、例えば、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等によって自車両Mの前方における周辺車両を検知可能な距離に設定される。この場合、ターゲット位置候補設定部111は、直前直後の関係で走行する二つの周辺車両の間だけでなく、対象領域Arの前方側境界Arfと、対象領域Ar内で最も前を走行する周辺車両m5との間にも、車線変更ターゲット位置候補T1を設定してもよい。
【0067】
図7は、後方基準車両が検出されない場合にターゲット位置候補設定部111が実行する処理を説明するための図である。図示するように、後方基準車両が検出されない場合(後続車両よりも後ろにある周辺車両が存在しない場合)、ターゲット位置候補設定部111は、例えば自車両Mの後端部から後方に向けて所定距離X2の地点を、対象領域Arの後方側境界Arrとして決定する。所定距離X2は、例えば、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等によって自車両Mの後方における周辺車両を検知可能な距離に設定される。この場合、ターゲット位置候補設定部111は、直前直後の関係で走行する二つの周辺車両の間だけでなく、対象領域Arの後方側境界Arrと、対象領域Ar内で最も後ろを走行する周辺車両m6との間にも、車線変更ターゲット位置候補T3を設定してもよい。
【0068】
図8は、前走車両が検出されない場合にターゲット位置候補設定部111が実行する処理を説明するための図である。図示するように、前走車両が検出されない場合(自車両Mの前方における検出部DTの検出範囲内に周辺車両が存在しない場合)、ターゲット位置候補設定部111は、例えば自車両Mの前端部から前方に向けて所定距離X1の地点を、対象領域Arの前方側境界Arfとして決定する。
【0069】
図9は、後続車両が検出されない場合にターゲット位置候補設定部111が実行する処理を説明するための図である。図示するように、後続車両が検出されない場合(自車両Mの後方における検出部DTの検出範囲内に周辺車両が存在しない場合)、ターゲット位置候補設定部111は、例えば自車両Mの後端部から後方に向けて所定距離X2の地点を、対象領域Arの後方側境界Arrとして決定する。
【0070】
なお、上記の説明では、便宜上、前方基準車両および後方基準車両は対象領域Arに含まれるものと定義して説明したが、これらが対象領域Arに含まれないものと定義して処理を行ってもよい。この場合、ターゲット位置候補設定部111は、直前直後の関係で(間に周辺車両が存在しない関係で)走行する二つの周辺車両の間だけでなく、対象領域Arの前方側境界Arfと、その直後の周辺車両の間、および、対象領域Arの後方側境界Arrと、その直前の周辺車両の間にも車線変更ターゲット位置候補Tを設定してよい。
図10は、前方基準車両および後方基準車両が対象領域Arに含まれないと定義した場合に、ターゲット位置候補設定部111が実行する処理を説明するための図である。なお、
図5に示す場合とは、車線変更ターゲット位置候補Tを設定するに至る処理の過程が異なるが、結果としては同じであり、これらの処理は等価の関係にある。
【0071】
他車位置変化推定部112は、検出部DTにより検出された周辺車両のうち、車線変更に干渉する可能性が高い周辺車両(以下の例では3台の周辺車両)を選択し、選択した車両について将来の位置変化を推定する。以下、車線変更に干渉する可能性が高い周辺車両を、監視対象車両mA、mB、mCと称する。
【0072】
図11は、監視対象車両と自車両および車線変更ターゲット位置候補Tとの位置関係を示す図である。監視対象車両mAは、自車両Mの前走車両である。また、監視対象車両mBは、車線変更ターゲット位置候補Tの直前を走行する周辺車両であり、監視対象車両mCは、車線変更ターゲット位置候補Tの直後を走行する周辺車両である。
【0073】
車線変更可能期間導出部113は、他車位置変化推定部112により推定された監視対象車両mA、mB、およびmCの位置変化に基づいて、車線変更ターゲット位置候補Tに対する車線変更可能期間Pを導出する。車線変更可能期間導出部113による処理の詳細については後述する。
【0074】
制御計画生成部114は、ターゲット位置候補設定部111により設定された車線変更ターゲット位置候補Tごとに、他車位置変化推定部112により推定された監視対象車両mA、mB、およびmCの位置変化に基づいて、車線変更のための制御計画を生成する。
【0075】
ターゲット位置決定部115は、ターゲット位置候補設定部111により設定された車線変更ターゲット位置候補Tごとに制御計画生成部114により生成された制御計画に基づいて、車線変更ターゲット位置T#を決定する。
【0076】
以下、車線変更ターゲット位置を決定するための処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
図12は、車線変更ターゲット位置を決定するための処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0077】
まず、ターゲット位置候補設定部111が、車線変更ターゲット位置候補Tを一つ選択する(ステップS200)。次に、他車位置変化推定部112が、車線変更ターゲット位置候補Tに対応した監視対象車両mA、mB、およびmCを特定する(ステップS202;
図11参照)。
【0078】
次に、他車位置変化推定部112が、監視対象車両mA、mB、およびmCの将来の位置変化を推定する(ステップS204)。
【0079】
将来の位置変化は、例えば、現在の速度を保ったまま走行すると仮定した定速度モデル、現在の加速度を保ったまま走行すると仮定した定加速度モデル、その他、種々のモデルに基づいて推定することができる。また、他車位置変化推定部112は、監視対象車両の操舵角について考慮してもよいし、操舵角を考慮せず、現在の走行車線を維持したまま走行すると仮定して位置変化を推定してもよい。以下の説明では、監視対象車両は、現在の速度を保ったまま、走行車線を維持して走行すると仮定して位置変化を推定するものとする。
【0080】
次に、車線変更可能期間導出部113が、車線変更可能期間Pを導出する(ステップS206)。これらの処理の詳細については、後に別のフローチャートに即して説明し、先に車線変更可能期間導出部113により実行される処理の元となる原理について説明する。
【0081】
まず、自車両Mと監視対象車両mA、mB、およびmCとの関係(位置分布)は、例えば、以下に示すように6通りのパターンに類型化される。以下において、左側に記載される車両ほど、前を走行していることを表す。パターン(a)および(b)は、周辺車両との相対位置を変えずに車線変更する場合の例を示し、パターン(c)は、周辺車両との相対位置を下げて(相対的に減速して)車線変更する場合の例を示し、パターン(d)、(e)、および(f)は、周辺車両との相対位置を上げて(相対的に加速して)車線変更する場合の例を示している。
パターン(a):mA−mB−M−mC
パターン(b):mB−mA−M−mC
パターン(c):mA−M−mB−mC
パターン(d):mA−mB−mC−M
パターン(e):mB−mA−mC−M
パターン(f):mB−mC−mA−M
【0082】
図13は、自車両と監視対象車両の位置関係を類型化した各パターンを示す図である。
なお、パターン(f)については、第1の実施形態におけるターゲット位置候補設定部111によっては設定されない車線変更ターゲット位置候補Tに基づいているため、ここでは参考例とする。
【0083】
それぞれのパターン(a)〜(f)について、監視対象車両mA、mB、およびmCの位置変化は、更に監視対象車両の速度に基づいて類型化される。
図14から
図19は、パターン(a)〜(f)のそれぞれについて監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。
図14から
図19における縦軸は、自車両Mを基準とした進行方向に関する変位を、横軸は経過時間を表している。また、
図14から
図19における車線変更後存在可能領域とは、車線変更を行った後、監視対象車両が同じ傾向で走行を続けた場合に、自車両Mが存在できる変位の領域を示している。例えば、
図14における「速度:mB>mA>mC」の図において、車線変更可能領域が監視対象車両mAの変位よりも下側にある、すなわち車線変更を行う前には自車両Mが監視対象車両mAよりも前に出ないように制約されるが、車線変更を行った後は、監視対象車両mAよりも前に出ても問題無いことを示している。この車線変更後存在可能領域は、制御計画生成部114の処理に用いられる。
【0084】
図14は、パターン(a)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。また、
図15は、パターン(b)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。パターン(a)、(b)における車線変更可能期間Pは、以下のように定義される(以下、「監視対象車両」を省略する)。
開始時点:いつでも。
終了時点:mCがmAに追いつく時点、またはmCがmBに追いつく時点のいずれか早い方。
【0085】
図16は、パターン(c)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。パターン(c)における車線変更可能期間Pは、以下のように定義される。
開始時点:mBが自車両Mを追い抜く時点。
終了時点:mCがmAに追いつく時点、またはmCがmBに追いつく時点のいずれか早い方。
【0086】
図17は、パターン(d)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。また、
図18は、パターン(e)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。パターン(d)、(e)における車線変更可能期間Pは、以下のように定義される(以下、「監視対象車両」を省略する)。
開始時点:自車両MがmCを追い抜く時点。
終了時点:mCがmAに追いつく時点、またはmCがmBに追いつく時点のいずれか早い方。
【0087】
図19は、パターン(f)における監視対象車両の位置変化を類型化した各パターンを示す図である。パターン(f)における車線変更可能期間Pは、以下のように定義される。
開始時点:mAがmCを追い抜く時点。
終了時点:mCがmBに追いつく時点(mCがmAに追いつくことは、開始時点の制約から考慮しない)。
なお、パターン(f)において、速度がmC>mB>mAの場合、mB>mC>mAの場合、およびmC>mA>mBの場合、車線変更は不可である。
【0088】
図20は、車線変更可能期間導出部113により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図12のステップS206の処理に相当する。
【0089】
まず、車線変更可能期間導出部113は、自車両Mと、監視対象車両mA、mB、およびmCとの位置分布を類型化する(ステップS300)。次に、車線変更可能期間導出部113は、他車位置変化推定部112により推定された監視対象車両mA、mB、およびmCの位置変化に基づいて、車線変更可能期間の開始時点を決定する(ステップS302)。
【0090】
ここで、前述したように車線変更の開始時点を決定するためには、「監視対象車両mBが自車両Mを追い抜く時点」、「自車両Mが監視対象車両mCを追い抜く時点」といった要素が存在し、これを解くためには自車両Mの加減速に関する仮定が必要となる。この点、車線変更可能期間導出部113は、例えば、減速するのであれば、現在の自車両Mの速度から所定程度(例えば2割程度)減速するものとし、急減速にならない範囲内で速度変化曲線を導出し、監視対象車両mBの位置変化と合わせて「監視対象車両mBが自車両Mを追い抜く時点」を決定する。また、車線変更可能期間導出部113は、加速するのであれば、現在の自車両Mの速度から急加速とならない範囲内で、法定速度を上限として速度変化曲線を導出し、監視対象車両mCの位置変化と合わせて「自車両Mが監視対象車両mCを追い抜く時点」を決定する。
【0091】
次に、車線変更可能期間導出部113は、他車位置変化推定部112により推定された監視対象車両mA、mB、およびmCの位置変化に基づいて、車線変更可能期間の終了時点を決定する(ステップS304)。そして、車線変更可能期間導出部113は、ステップS302で決定した開始時点とステップS304で決定した終了時点に基づいて、車線変更可能期間を導出する(ステップS306)。
【0092】
図12に戻り、フローチャートの処理について説明する。制御計画生成部114は、車線変更可能期間Pが導出された車線変更ターゲット位置候補Tについて、制御計画を生成する(ステップS208)。そして、車線変更制御部110は、全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS200からS208の処理を行ったか否かを判定する(ステップS210)。全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS200からS208の処理を行っていない場合、ステップS200に戻り、次の車線変更ターゲット位置候補Tを選択して以降の処理を行う。
【0093】
図21は、制御計画生成部114により生成される車線変更のための制御計画の一例を示す図である。制御計画は、例えば、自車両Mの進行方向に関する変位の軌道で表現される。制御計画生成部114は、まず、車線変更可能領域に進入可能な自車両Mの速度の制約を求める。自車両Mの速度の制約は、車線変更可能期間P内に車線変更可能領域に進入できることを含む。また、自車両Mの速度の制約は、車線変更後において、前走車両となる監視対象車両mBに追従走行することを含んでもよい。この場合、追従走行を開始した時点では、自車両Mが車線変更可能領域から逸脱し、車線変更後存在可能領域に進入してもよい。
【0094】
更に、制御計画生成部114は、自車両Mが監視対象車両mCを追い抜いてから車線変更する必要がある場合には、自車両Mの変位が監視対象車両mCの変位よりも十分に大きくなったポイント(図中、CP)で車線変更を開始するように、制御計画を生成する。
【0095】
このような制御によって、車線変更制御部110は、円滑な車線変更制御を実現することができる。
【0096】
全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS200からS208の処理を行った場合、ターゲット位置決定部115が、対応する制御計画を評価することにより、車線変更ターゲット位置T#を決定する(ステップS212)。
【0097】
ターゲット位置決定部115は、例えば、安全性や効率性の観点から車線変更ターゲット位置T#を決定する。ターゲット位置決定部115は、車線変更ターゲット位置候補Tのそれぞれに対応する制御計画を参照し、車線変更の際の前後車両との間隔が広いもの、速度が法定速度に近いもの、或いは車線変更の際に必要な加減速が小さいものを、優先的に車線変更ターゲット位置T#として選択する。こうして一つの車線変更ターゲット位置T#、および制御計画が決定される。
【0098】
[走行制御]
走行制御部120は、制御切替部122による制御によって、制御モードを自動運転モードあるいは手動運転モードに設定し、設定した制御モードに従って制御対象を制御する。走行制御部120は、自動運転モード時において、行動計画生成部106によって生成された行動計画情報136を読み込み、読み込んだ行動計画情報136に含まれるイベントに基づいて制御対象を制御する。このイベントが車線変更イベントである場合、走行制御部120は、制御計画生成部114により生成された制御計画に従い、ステアリング装置92における電動モータの制御量(例えば回転数)と、走行駆動力出力装置90におけるECUの制御量(例えばエンジンのスロットル開度やシフト段等)とを決定する。走行制御部120は、イベントごとに決定した制御量を示す情報を、対応する制御対象に出力する。これによって、制御対象の各装置(90、92、94)は、走行制御部120から入力された制御量を示す情報に従って、自装置を制御することができる。また、走行制御部120は、車両センサ60の検出結果に基づいて、決定した制御量を適宜調整する。
【0099】
また、走行制御部120は、手動運転モード時において、操作検出センサ72により出力される操作検出信号に基づいて制御対象を制御する。例えば、走行制御部120は、操作検出センサ72により出力された操作検出信号を、制御対象の各装置にそのまま出力する。
【0100】
制御切替部122は、行動計画生成部106によって生成された行動計画情報136に基づいて、走行制御部120による自車両Mの制御モードを自動運転モードから手動運転モードに、または手動運転モードから自動運転モードに切り換える。また、制御切替部122は、切替スイッチ80から入力される制御モード指定信号に基づいて、走行制御部120による自車両Mの制御モードを自動運転モードから手動運転モードに、または手動運転モードから自動運転モードに切り換える。すなわち、走行制御部120の制御モードは、運転者等の操作によって走行中や停車中に任意に変更することができる。
【0101】
また、制御切替部122は、操作検出センサ72から入力される操作検出信号に基づいて、走行制御部120による車両Mの制御モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。例えば、制御切替部122は、操作検出信号に含まれる操作量が閾値を超える場合、すなわち、操作デバイス70が閾値を超えた操作量で操作を受けた場合、走行制御部120の制御モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。例えば、自動運転モードに設定された走行制御部120によって自車両Mが自動走行している場合において、運転者によってステアリングホール、アクセルペダル、またはブレーキペダルが閾値を超える操作量で操作された場合、制御切替部122は、走行制御部120の制御モードを自動運転モードから手動運転モードに切り換える。これによって、車両制御装置100は、人間等の物体が車道に飛び出して来たり、前方車両が急停止したりした際に運転者により咄嗟になされた操作によって、切替スイッチ80の操作を介さずに直ぐさま手動運転モードに切り替えることができる。この結果、車両制御装置100は、運転者による緊急時の操作に対応することができ、走行時の安全性を高めることができる。
【0102】
以上説明した本実施形態の車両制御装置100によれば、ターゲット位置候補設定部111が、前走車両よりも前で走行する周辺車両の前、あるいは後続車両よりも後ろで走行する周辺車両の後といった、車線変更が困難と考えられる位置で車線変更ターゲット位置候補Tが設定されることを防止することができる。この結果、ターゲット位置候補設定部111は、車線変更の際に、自車両Mに無理な挙動を強いることを予防することができる。
【0103】
また、本実施形態の車両制御装置100によれば、ターゲット位置候補設定部111が、周辺車両の分布によっては車線変更する先の候補を複数設定することになり、車線変更制御の自由度を高めることができる。この結果、後に最適な車線変更ターゲット位置T#を設定することができる。
【0104】
また、本実施形態の車両制御装置100によれば、車線変更可能期間導出部113が、自車線L1に隣接する隣接車線L2を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置候補Tに車線変更可能な車線変更可能期間Pを、周辺車両(監視対象車両)の位置変化に基づいて導出することにより、車線変更のための制御計画の生成といった種々の処理に役立てることができる。
【0105】
また、本実施形態の車両制御装置100によれば、制御計画生成部114が、車線変更可能期間導出部113により導出された車線変更可能期間P内に車線変更ターゲット位置T#に車線変更するための速度の制約を導出し、導出した速度の制約下で制御計画を生成することにより、実現不可能な制御計画が立てられるような事態が生じるのを抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態の車両制御装置100によれば、車線変更可能期間導出部113が、自車両Mと、監視対象車両との位置分布に応じた異なる手法で車線変更可能期間Pを導出することにより、自車両Mと監視対象車両との位置分布に応じた適切な手法で車線変更可能期間Pを導出することができる。
【0107】
<第1の実施形態の変形例>
以下、第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態の変形例の車両制御装置100は、導出した車線変更可能期間に基づいて、車線変更ターゲット位置候補を車線変更ターゲット位置の対象とするか否かを決定し、車線変更ターゲット位置の対象として決定された車線変更ターゲット位置候補のうちから車線変更ターゲット位置を決定する点で、第1の実施形態と相違する。以下、係る相違点を中心に説明する。
【0108】
図22は、第1の実施形態の変形例に係る車両制御装置100を中心とした自車両Mの機能構成図である。第1の実施形態の変形例の車両制御装置100は、第1の実施形態の車両制御装置100の機能構成に加え、更に絞り込み部117を備える。絞り込み部117は、車線変更可能期間導出部113により導出された車線変更可能期間に基づいて、車線変更ターゲット位置候補を車線変更ターゲット位置として決定される対象とするか否かを決定する。第1の実施形態の変形例の絞り込み部117の処理の詳細については、後述する。
【0109】
図23は、第1の実施形態の変形例の車両制御装置100により実行される処理の流れを示すフローチャートである。まず、ターゲット位置候補設定部111が、車線変更ターゲット位置候補Tを一つ選択する(ステップS250)。次に、他車位置変化推定部112が、車線変更ターゲット位置候補Tに対応した監視対象車両mA、mB、およびmCを特定する(ステップS252;
図11参照)。
【0110】
次に、他車位置変化推定部112が、監視対象車両mA、mB、およびmCの将来の位置変化を推定する(ステップS254)。次に、車線変更可能期間導出部113が、車線変更可能期間Pを導出する(ステップS256)。
【0111】
次に、絞り込み部117が、ステップS256で導出された車線変更可能期間Pが、予め設定された所定の期間より長い期間であるか否かを判定する(ステップS258)。車線変更可能期間Pが、予め設定された所定の期間より長い期間である場合、絞り込み部117は、ステップS250で選択した車線変更ターゲット位置候補を、車線変更ターゲット位置の対象と決定する(ステップS260)。このように絞り込み部117は、既に設定された車線変更ターゲット位置候補を絞り込む。車線変更可能期間Pが、予め設定された所定の期間以下の期間である場合、絞り込み部117は、ステップS250で選択した車線変更ターゲット位置候補を、車線変更ターゲット位置の対象から除外すると決定する(ステップS262)。
【0112】
次に、絞り込み部117は、全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS250からS262の処理を行ったか否かを判定する(ステップS264)。全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS250からS262の処理を行っていない場合、ステップS250に戻り、次の車線変更ターゲット位置候補Tを選択して以降の処理を行う。
【0113】
全ての車線変更ターゲット位置候補TについてステップS250からS262の処理を行った場合、制御計画生成部114は、ステップS260で車線変更ターゲット位置の対象と決定した車線変更ターゲット位置候補Tについて、制御計画を生成する(ステップS266)。
【0114】
次に、ターゲット位置決定部115が、対応する制御計画を安全性と効率性に基づいて、評価する(ステップS268)。例えば、ターゲット位置決定部115は、制御計画について評価値を導出し、導出した評価値に基づいて車線変更ターゲット位置T#を決定する。評価値は、例えば、安全性や計画性の観点から導出される。
【0115】
例えば、ターゲット位置決定部115は、下記式(1)に示す評価関数fに基づいて、最適な制御計画を選択する。w
1(=(w+1)
−1)およびw
2は、重み係数であり、e
1は安全性指数であり、e
2は計画性指数である。安全性指数とは、例えば、車線変更ターゲット位置候補に車線変更した場合の自車両Mと前後車両との距離や、車線変更する場合に走行する軌道(自車両が走行すると想定される軌道)を形成する各軌道点と自車両Mの周辺車両(物体)との間隔等に基づいて、決定される評価値である。また、安全性指数は、車線変更する場合に走行する軌道の各軌道点における加減速度や操舵角、想定されるヨーレート等に基づいて決定される評価値であってもよい。例えば自車両Mと前後車両(または周辺車両)との距離が遠いほど、加減速度や操舵角の変化量等が小さいほど、安全性指数が高いものと評価される。また、安全性指数は、車線変更する場合の自車両Mの速度が法定速度に近いほど、安全性指数が高いものと評価してもよい。
【0116】
計画性指数とは、行動計画生成部106により生成された計画に対する追従性、および/または軌道の短さに基づく評価値である。行動計画生成部106が、「中央車線を走行し、右に車線変更し、数十メートル先の交差点で右折する。」と決定した場合、自車両Mの前方に位置する車線変更ターゲット位置候補に向けて自車両Mを加速させ、車線変更するような軌道は、計画性指数が低いと、ターゲット位置決定部115により判定される。
このような軌道を選択すると、自車両Mは交差点の手前で急減速して右折しにくくなるためである。計画性指数は、行動計画生成部106により生成された計画の実現の可能性が低くなる程低く評価される。
f=w
1e
1(w
2e
2+1)・・・(1)
【0117】
図24は、安全性指数および計画性指数に基づく、軌道判定の基準の一例を示す図である。縦軸は計画性を示し、横軸は安全性指数を示している。評価関数fは、図中、矢印ar方向に評価が上昇する勾配を有する。評価関数fは、例えばf*=w
1e
1+w
2e
2のように単純に加重和として求める場合に比して、安全性指数が極めて低い軌道の評価を下げ、これを除外することができる。
【0118】
次に、ターゲット位置決定部115は、ステップS268の評価結果に基づいて、ステップS260で決定した車線変更ターゲット位置の対象とした車線変更ターゲット位置候補のうちから、車線変更ターゲット位置T#を決定する(ステップS270)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
【0119】
このようにターゲット位置決定部115は、車線変更のための制御計画に含まれる軌道の安全性および計画性に基づいて、車線変更ターゲット位置を決定する。この結果、ターゲット位置決定部115は、安全性を十分に考慮した上で、計画性を加味した車線変更ターゲット位置を選択することができる。
【0120】
なお、ターゲット位置決定部115は、車線変更ターゲット位置の対象となる車線変更ターゲット位置候補が存在しない場合、車線変更は不可であると判定する。また、ターゲット位置決定部115は、ステップS268での車線変更ターゲット位置候補の評価結果が閾値未満である場合、車線変更は不可であると判定してもよい。この場合、ターゲット位置決定部115は、待機状態やターゲット位置を再設定する処理等を行ってもよい。
【0121】
なお、絞り込み部117は、車線変更可能期間導出部113により導出された車線変更可能期間Pのうち、車線変更可能期間が長いものから順に所定数(例えば3つ)の車線変更可能期間に対応する車線変更ターゲット位置候補を、車線変更ターゲット位置の対象として決定してもよい。
【0122】
上述した所定数またはステップS258の予め設定された所定の期間は、任意に設定されてもよい。例えば、車線変更制御部110を含むプロセッサの単位時間あたりの処理能力により設定される。例えば、車両制御装置100は、車線変更制御部110を含むプロセッサの単位時間あたりの処理能力が低い場合は、上述した所定数を少なくし、ステップS258の予め設定された所定の期間を長く設定することにより、所定時間内に実行する処理を軽減することができる。一方、車両制御装置100は、車線変更制御部110を含むプロセッサの単位時間あたりの処理能力が高い場合は、上述した所定数を多くし、ステップS258の予め設定された所定の期間を短く設定することにより、より多くのターゲット位置候補について、所定時間内に処理を実行することできる。この場合、車両制御装置100は、より多くの車線変更ターゲット位置候補について、評価値を導出し、導出したスコアに基づいて車線変更ターゲット位置T#を決定することができ、より最適な車線変更ターゲット位置の選択をすることができる。
【0123】
また、絞り込み部117は、車線変更可能期間導出部113により導出された車線変更可能期間Pのうち、最も期間の長い車線変更可能期間Pに対応する車線変更ターゲット位置を、車線変更ターゲット位置の対象として決定してもよい。この場合、上述したフローチャートの処理において、ステップS258からステップS262の処理は省略され、ステップS264の処理の後に、絞り込み部117が、全ての車線変更可能期間のうちから、最も長い車線変更可能期間を導出する。
【0124】
以上説明した本実施形態の車両制御装置100の変形例によれば、第1の実施形態の機能に加え、更に導出された車線変更可能期間が、予め設定された期間より長いか否かを判定し、車線変更可能期間が予め設定された期間より長い場合、予め設定された期間より長い車線変更可能期間に対する車線変更ターゲット位置を、車線変更ターゲット位置の対象として決定することにより、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、処理の対象から除外するため、処理負荷を軽減することができる。
【0125】
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について説明する。
図25は、第2の実施形態に係る車両制御装置100Aを中心とした自車両Mの機能構成図である。第2の実施形態に係る車両制御装置100Aは、車線変更制御部110が車線変更可否判定部116を備える点で、第1の実施形態と相違する。以下、係る相違点を中心に説明する。
【0126】
図26は、第2の実施形態に係る車線変更可否判定部116により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmBに追いつくか否かを判定する(ステップS400)。
【0127】
監視対象車両mCがmBに追いつく場合、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmBに追いつく点を終点とした自車両Mの変位の軌跡を生成する(ステップS402)。次に、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmBに追いつく前に、監視対象車両mCがmAに追いつくか否かを判定する(ステップS404)。
【0128】
監視対象車両mCがmBに追いつく前に、監視対象車両mCがmAに追いつく場合(
図14の右上図など参照)、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmAに追いついた時点で自車両Mが監視対象車両mCよりも前にいるか否かを判定する(ステップS406)。
【0129】
監視対象車両mCがmAに追いついた時点で自車両Mが監視対象車両mCよりも前にいる場合、車線変更可否判定部116は、自車両Mの軌跡が速度および加速度の制約を満たすか否かを判定する(ステップS408)。速度および加速度の制約とは、例えば、法定速度を上限、法定速度の60%程度を下限とした速度の範囲内で、且つ加減速度がそれぞれに設けられた閾値未満であることと定義される。
【0130】
自車両Mの軌跡が速度および加速度の制約を満たす場合、車線変更可否判定部116は、車線変更が可能であると判定する(ステップS410)。一方、自車両Mの軌跡が速度および加速度の制約を満たさない場合、車線変更可否判定部116は、車線変更が不可であると判定する(ステップS412)。
【0131】
ステップS400において否定的な判定を得た場合、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmAに追いつくか否かを判定する(ステップS414)。監視対象車両mCがmAに追いつく場合(
図14の中下図など参照)、車線変更可否判定部116は、監視対象車両mCがmAに追いつく点を終点とした自車両Mの軌跡を生成し(ステップS416)、ステップS408に処理を進める。
【0132】
一方、監視対象車両mCがmAに追いつかない場合(
図14の左上図など参照)、車線変更可否判定部116は、車線変更可能であると判定する(ステップS410)。
【0133】
以上説明した本実施形態の車両制御装置100Aによれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、自車線L1に隣接する隣接車線L2を走行する周辺車両に対する相対位置として設定される車線変更ターゲット位置T#の直後を走行する周辺車両が、他の周辺車両に追いつくか否かを判定し、判定の結果に基づいて、車線変更の可否を判定することにより、より適切に車線変更の可否を判定することができる。
【0134】
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について説明する。
図27は、第3の実施形態に係る車両制御装置100Bを中心とした自車両Mの機能構成図である。第3の実施形態に係る車両制御装置100Bは、ナビゲーション装置50との連携で行動計画を生成する構成を備えておらず、任意の車線変更トリガが入力されたときに車線変更制御を行い、それ以外の場合に手動運転モードで制御を行う。なお、自車位置認識部104は、GNSS受信機や地図情報等(ナビゲーション装置に属するものとは限らない)を参照して自車位置を認識する。
【0135】
車線変更トリガは、例えば、運転者によって車線変更のためのスイッチ操作等がなされたときに生成される。また、車線変更トリガは、車両の状態に応じて自動的に生成されてもよい。
【0136】
また、本実施形態において、車線変更ターゲット位置候補Tを複数設定せず、一つの車線変更ターゲット位置T#が自動的に設定されてもよい。
【0137】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。