(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の携帯用切断機は、ベースの下面から露出するのこ刃の出量を調整することで切り込み深さを変更できるようになっており、切り込み深さが深いほど切断可能な部材厚を厚くすることができる。このため、最大切り込み深さの大きさが製品の性能を判断する上で重要な指標となっている。
【0003】
最大切り込み深さを大きくするには、単純にのこ刃の径を大きくする方法が考えられる。しかしながら、のこ刃の径を大きくした場合には製品が大型化してしまうため、携帯性や取り回し易さなどを犠牲にしなければならない。
【0004】
このため、のこ刃の径をできるだけ小さく保ったままで最大切り込み深さを大きくすることが望ましい。のこ刃の径を大きくすることなく最大切り込み深さを大きくするためには、のこ刃軸を可能な限りベースに近付けて、できるだけベースの下面からのこ刃を露出させればよい。このようにのこ刃の回転軸を可能な限りベースに近付けるには、のこ刃軸の周囲に配置される軸受やギア等を小型化する必要がある。
【0005】
これに関し、特許文献1には、モータの回転を多段式の減速機構を介してのこ刃に伝達する構造であって、減速機構の減速比を小分けにした構造が開示されている。このように減速機構の減速比を小分けにすれば各段階でのギア比が小さくても十分な減速を得られるため、のこ刃軸のギアの径をそれほど大きくしなくても十分な減速を得ることができる。すなわち、のこ刃軸のギアの径をできるだけ小さくできるので、のこ刃の回転軸を可能な限りベースに近付けることができ、切り込み深さを深くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特許文献1記載の構造では、減速比を小分けにするために部品点数が増加するという問題がある。また、のこ刃軸のギアの径を小さくした場合、減速させるためには動力伝達経路における上流側のギアの歯数をのこ刃軸のギアの歯数よりも小さくする必要があるので、のこ刃軸のギア径を小さくしようとしても限界がある。また、ギアのモジュールを変更してギアを小型化することも可能であるが、その場合はギアが強度不足となる可能性がある。ギアの幅を大きくすることで強度不足を補うことはできるが、その場合には機械が大型化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、のこ刃の径を大きくすることなく最大切り込み深さを大きくすることができ、しかも、部品数の増加や強度不足、機械の大型化といった問題を生じない携帯用切断機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明は、のこ刃軸を中心に回転するのこ刃と、前記のこ刃を回転させるためのモータと、前記モータの出力軸に接続され、前記モータから出力された動力の回転速度を減速させる減速機構と、前記減速機構から出力された動力を前記のこ刃軸側に伝達する伝動機構と、を備え、前記伝動機構は、前記減速機構から出力された動力の回転速度を、等速のままで、又は増速して、前記のこ刃軸側に伝達する
ものであり、前記減速機構の出力軸は、前記モータの出力軸と同軸上に配置されるとともに、前記モータの出力軸と同一方向に回転するように構成されており、前記のこ刃軸は、前記モータの出力軸および前記減速機構の出力軸と逆方向に回転するように構成されており、前記モータの出力軸と前記減速機構の出力軸と前記のこ刃軸とは、中心軸が同一平面上にあることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、前記減速機構として遊星歯車機構を使用したことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、前記伝動機構は、前記減速機構の出力軸に設けられた接続プーリと、前記のこ刃軸に設けられたファイナルプーリと、前記接続プーリと前記ファイナルプーリとに巻き掛けられたベルトと、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、前記伝動機構は、前記減速機構の出力軸に設けられた接続ギアと、前記のこ刃軸に設けられたファイナルギアと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、伝動機構は、減速機構から出力された動力の回転速度を、等速のままで、又は増速して、のこ刃軸側に伝達する。すなわち、従来の携帯用切断機においては、モータの回転力をのこ刃に伝達する際にモータの回転速度を減速してトルクアップしているが、本発明は、減速するだけではなく、減速後に等速又は増速でのこ刃軸側に動力を伝達するようにしている。
【0015】
このように等速又は増速でのこ刃軸側に動力を伝達するようにすれば、のこ刃軸のギア又はプーリの径を直前のギア又はプーリの径と同じか又は小さくすることができる。すなわち、のこ刃軸のギア又はプーリを小型化することができるので、のこ刃軸を可能な限りベースに近付けることができ、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0016】
しかも、減速比を小分けにするために部品点数が増加するという問題もなく、減速機構側に固定された駆動用のギア又はプーリを小さくする必要もないので、強度不足や機械の大型化といった問題も生じない。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記減速機構として遊星歯車機構を使用したので、減速機構の入力軸と出力軸とを同軸上とすることができ、機械をコンパクトにすることができる。また、大きな減速比が得られるので、伝動機構によって回転速度が等速又は増速で回転力が伝達されたとしても、全体として十分に回転速度を減速させてのこ刃に伝達することができる。また、遊星歯車機構を使用すれば、回転軸の位置や回転方向を変えることなく大きな減速比を得ることができる。
【0018】
【0019】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜3を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態に係る携帯用切断機10は、のこ刃軸14を中心に回転する円形ののこ刃14bを回転させて木材や鋼材等を切断するものであり、
図1に示すように、のこ刃14bを回転可能に支持する切断機本体11を備えている。切断機本体11は、モータ13を内蔵したモータハウジング12を備え、このモータ13を作動させることでのこ刃14bが回転駆動され、被切断材を切断できるようになっている。
【0024】
モータ13には、モータ13を冷却するためのファン13bが取り付けられている。このファン13bの周りを囲むモータハウジング12には多数の吸気孔が設けられており、ファン13bが回転したときにこの吸気孔から外気が取り込まれるようになっている。吸気孔から取り込まれた外気は、ソーカバー14cの方向へと流れ、のこ刃14bの先端付近に設けられた吹き出し口(図示せず)から排出される。この吹き出し口から空気を排出することにより、切断により発生した切粉などを吹き飛ばすことができる。
【0025】
なお、このモータ13は、切断機本体11後部に設けられたバッテリ装着部17に着脱可能に取り付けられたバッテリ18を駆動源として作動する。バッテリ18は、公知の手段により、バッテリ装着部17の後方から差し込んで装着してロックできるようになっている。また、ロックを解除した後に引き抜いてバッテリ装着部17から外すことができるようになっている。
【0026】
切断機本体11の上部には、のこ刃14bの切断方向と略平行にグリップ15が設けられ、このグリップ15の内側に設けられたトリガ16を引くことでモータ13が回転するようになっている。グリップ15の前端部は、モータハウジング12付近において切断機本体11に一体的に接続され、グリップ15の後端部は、切断機本体11の後面に一体的に接続されている。グリップ15は、後方に行くに従って低くなるように傾斜しつつ屈曲した形状となっている。
【0027】
この切断機本体11の下部には、ベース19が取り付けられている。ベース19は、被切断材に当接する金属製の板状部材であり、貫通形成された刃口19aからのこ刃14bの下部を露出させることで、ベース19の下方において被切断材を切断できるように形成されている。
【0028】
なお、このベース19の前端部は、切断機本体11の前部に設けられた回動軸40により回動自在に支持されている。この回動軸40を中心にベース19を回動させることによって、ベース19の下面からののこ刃14bの出量を変えることができる。このように、のこ刃14bの出量を調整することによって被切断材の切り込み深さを調整することができる。この切込み深さ調整機構は公知のものを採用すればよいため、詳述しない。
【0029】
また、のこ刃14bのベース19より上方のほぼ半周部分は、安全確保用のソーカバー14cに覆われている。ベース19の刃口19aから露出したこ刃14bの下部は、円弧状のロアガード14dに覆われている。このロアガード14dは、のこ刃14bの回転軸14を中心に回動可能に装着されている。
次に、
図2及び
図3を参照しつつ、携帯用切断機10の内部構造について説明する。
【0030】
本実施形態に係る携帯用切断機10は、前記したモータ13の出力軸13aに接続され、モータ13から出力された動力の回転速度を減速させる減速機構と、この減速機構から出力された動力をのこ刃軸14側に伝達する伝動機構と、を備えている。
【0031】
本実施形態に係る減速機構は、
図2及び
図3に示すような遊星歯車機構20を使用して構成されている。具体的には、モータ13の出力軸13aに太陽歯車21が固定され、この太陽歯車21が遊星歯車22に噛合している。遊星歯車22は、内歯を備えた外輪歯車23に噛合している。外輪歯車23はハウジングに固定されており、遊星歯車22が自転したときに、遊星歯車22がモータ13の出力軸13a周りを公転するようになっている。また、遊星歯車22の回転軸は、遊星歯車機構20の出力軸20aと一体的に結合している。このような構成により、モータ13が回転すると、その回転力が太陽歯車21、遊星歯車22の順に伝達され、最終的に遊星歯車機構20の出力軸20aへと伝達される。この遊星歯車機構20を経由することで、モータ13の回転速度が減速され、トルクアップした動力が伝達される。
【0032】
本実施形態に係る伝動機構は、
図2及び
図3に示すような増速歯車機構25であり、遊星歯車機構20の出力軸20aに設けられた接続ギア26と、のこ刃軸14に設けられたファイナルギア27と、を備えている。この接続ギア26とファイナルギア27とは互いに噛合しているため、遊星歯車機構20から伝達された回転力は、接続ギア26からファイナルギア27へと伝達される。ファイナルギア27が回転すると、ファイナルギア27と一体的にのこ刃軸14が回転し、のこ刃14bが回転する。
【0033】
このように、接続ギア26が遊星歯車機構20側に固定されて駆動用のギアを構成し、ファイナルギア27がのこ刃軸14に固定されて従動用のギアを構成しているが、この駆動用のギアから従動用のギアへは、回転速度が増速して回転力が伝達されるように構成されている。言い換えると、接続ギア26の径よりもファイナルギア27の径の方が小さくなっている。また、のこ刃軸14を回転可能に支持する軸受14aも径が小さいものが使用されており、のこ刃軸14の周りに配置された部材のサイズダウンが図られている。なお、軸受14aの径を小さくしたことによる強度不足は、複数の軸受14aを使用することで対処している。
【0034】
このように、のこ刃軸14周りを小型化することで、のこ刃軸14を可能な限りベース19に近付けることができるので、のこ刃14bの最大出量を大きく設定することができ、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0035】
なお、上記構成によれば、最終段階で回転速度が増速するが、遊星歯車機構20によって十分に減速することで、最終段階で多少の増速があってもトルク不足になることはないように構成されている。
【0036】
上記構成においては、接続ギア26の径よりもファイナルギア27の径を小さくし、駆動用のギアから従動用のギアへ回転速度が増速して回転力が伝達されるようにしたが、これに代えて、接続ギア26の径とファイナルギア27の径とを略等しく形成し、駆動用のギアから従動用のギアへ回転速度が等速で回転力が伝達されるようにしてもよい。この場合でも、ファイナルギア27の径を従来よりも小さくすることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0037】
(第1の実施形態の変形例)
上記した第1の実施形態においては、伝動機構として
図2及び
図3に示すような増速歯車機構25を使用したが、これに限らず、伝動機構として
図4に示すようなベルトプーリ機構35を使用してもよい。
【0038】
このベルトプーリ機構35は、遊星歯車機構20の出力軸20aに設けられた接続プーリ36と、のこ刃軸14に設けられたファイナルプーリ37と、接続プーリ36とファイナルプーリ37とに巻き掛けられたベルト38と、ベルト38の張りを調整するためのアイドルプーリ39と、を備えている。このような構成によれば、遊星歯車機構20から伝達された回転力は、接続プーリ36からファイナルプーリ37へと伝達される。ファイナルプーリ37が回転すると、ファイナルプーリ37と一体的にのこ刃軸14が回転し、のこ刃14bが回転する。
【0039】
このように、接続プーリ36が遊星歯車機構20側に固定されて駆動用のプーリを構成し、ファイナルプーリ37がのこ刃軸14に固定されて従動用のプーリを構成しているが、この駆動用のプーリから従動用のプーリへは、回転速度が増速して回転力が伝達されるように構成されている。言い換えると、接続プーリ36の径よりもファイナルプーリ37の径の方が小さくなっている。よって、のこ刃軸14周りが小型化されており、のこ刃軸14を可能な限りベース19に近付けることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0040】
上記構成においては、接続プーリ36の径よりもファイナルプーリ37の径を小さくし、駆動用のプーリから従動用のプーリへ回転速度が増速して回転力が伝達されるようにしたが、これに代えて、接続プーリ36の径とファイナルプーリ37の径とを略等しく形成し、駆動用のプーリから従動用のプーリへ回転速度が等速で回転力が伝達されるようにしてもよい。この場合でも、ファイナルプーリ37の径を従来よりも小さくすることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0042】
本実施形態の特徴は、第1の実施形態とは異なる減速機構を採用した点にある。なお、本実施形態の基本的構成は第1の実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0043】
本実施形態に係る減速機構は、
図5及び
図6に示すような減速歯車機構30を使用して構成されている。具体的には、モータ13の出力軸13aにピ二オンギア31が固定され、このピ二オンギア31にファーストギア32が噛合している。ファーストギア32は、減速歯車機構30の出力軸30aと一体的に結合している。このような構成により、モータ13が回転すると、その回転力がピ二オンギア31、ファーストギア32の順に伝達され、最終的に減速歯車機構30の出力軸30aへと伝達される。この減速歯車機構30を経由することで、モータ13の回転速度が減速され、トルクアップした動力が伝達される。
【0044】
本実施形態に係る伝動機構は、
図5及び
図6に示すような増速歯車機構25であり、減速歯車機構30の出力軸30aに設けられた接続ギア26と、のこ刃軸14に設けられたファイナルギア27と、を備えている。この接続ギア26とファイナルギア27とは互いに噛合しているため、減速歯車機構30から伝達された回転力は、接続ギア26からファイナルギア27へと伝達される。ファイナルギア27が回転すると、ファイナルギア27と一体的にのこ刃軸14が回転し、のこ刃14bが回転する。
【0045】
このように、接続ギア26が減速歯車機構30側に固定されて駆動用のギアを構成し、ファイナルギア27がのこ刃軸14に固定されて従動用のギアを構成しているが、この駆動用のギアから従動用のギアへは、回転速度が増速して回転力が伝達されるように構成されている。言い換えると、接続ギア26の径よりもファイナルギア27の径の方が小さくなっている。また、のこ刃軸14を回転可能に支持する軸受14aも径が小さいものが使用されており、のこ刃軸14の周りに配置された部材のサイズダウンが図られている。なお、軸受14aの径を小さくしたことによる強度不足は、複数の軸受14aを使用することで対処している。
【0046】
のこ刃軸14周りを小型化することで、のこ刃軸14を可能な限りベース19に近付けることができるので、切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0047】
上記構成においては、接続ギア26の径よりもファイナルギア27の径を小さくし、駆動用のギアから従動用のギアへ回転速度が増速して回転力が伝達されるようにしたが、これに代えて、接続ギア26の径とファイナルギア27の径とを略等しく形成し、駆動用のギアから従動用のギアへ回転速度が等速で回転力が伝達されるようにしてもよい。この場合でも、ファイナルギア27の径を従来よりも小さくすることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0048】
(第2の実施形態の変形例)
上記した第2の実施形態においては、伝動機構として
図5及び
図6に示すような増速歯車機構25を使用したが、これに限らず、伝動機構として
図7に示すようなベルトプーリ機構35を使用してもよい。
【0049】
このベルトプーリ機構35は、減速歯車機構30の出力軸30aに設けられた接続プーリ36と、のこ刃軸14に設けられたファイナルプーリ37と、接続プーリ36とファイナルプーリ37とに巻き掛けられたベルト38と、ベルト38の張りを調整するためのアイドルプーリ39と、を備えている。このような構成によれば、減速歯車機構30から伝達された回転力は、接続プーリ36からファイナルプーリ37へと伝達される。ファイナルプーリ37が回転すると、ファイナルプーリ37と一体的にのこ刃軸14が回転し、のこ刃14bが回転する。
【0050】
このように、接続プーリ36が減速歯車機構30側に固定されて駆動用のプーリを構成し、ファイナルプーリ37がのこ刃軸14に固定されて従動用のプーリを構成しているが、この駆動用のプーリから従動用のプーリへは、回転速度が増速して回転力が伝達されるように構成されている。言い換えると、接続プーリ36の径よりもファイナルプーリ37の径の方が小さくなっている。よって、のこ刃軸14周りが小型化されており、のこ刃軸14を可能な限りベース19に近付けることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0051】
上記構成においては、接続プーリ36の径よりもファイナルプーリ37の径を小さくし、駆動用のプーリから従動用のプーリへ回転速度が増速して回転力が伝達されるようにしたが、これに代えて、接続プーリ36の径とファイナルプーリ37の径とを略等しく形成し、駆動用のプーリから従動用のプーリへ回転速度が等速で回転力が伝達されるようにしてもよい。この場合でも、ファイナルプーリ37の径を従来よりも小さくすることができるので、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0052】
(まとめ)
上記で説明したように、本実施形態によれば、伝動機構25,35は、減速機構20,30側に固定された駆動用のギア26又はプーリ36と、のこ刃軸14に固定された従動用のギア27又はプーリ37と、を備え、前記駆動用のギア26又はプーリ36から前記従動用のギア27又はプーリ37へは、回転速度が等速のまま又は増速して、回転力が伝達される。すなわち、従来の携帯用切断機においては、モータの回転力をのこ刃14bに伝達する際にモータの回転速度を減速してトルクアップしているが、本発明は、減速するだけではなく、減速後に等速又は増速でのこ刃軸14のギア27又はプーリ37に動力を伝達するようにしている。
【0053】
このように等速又は増速でのこ刃軸14のギア27又はプーリ37に動力を伝達するようにすれば、のこ刃軸14のギア27又はプーリ37の径を直前のギア27又はプーリ37の径と同じ又は小さくすることができる。すなわち、のこ刃軸14のギア27又はプーリ37を小型化することができるので、のこ刃軸14を可能な限りベース19に近付けることができ、最大切り込み深さを従来よりも大きくすることができる。
【0054】
具体的には、
図2に示すように、切り込みの最大深さDは、のこ刃14bの半径Rと、のこ刃14bの中心からベース19の底面までの最小幅Wと、に依存しており、切り込みの最大深さDを大きくするためには、のこ刃14bの半径Rを大きくするか、のこ刃14bの中心からベース19の底面までの最小幅Wを小さくするか、のいずれかの対応が必要となる。本実施形態によれば、のこ刃軸14のギア27又はプーリ37を小型化することで、のこ刃14bの中心からベース19の底面までの最小幅Wを小さくすることができるので、のこ刃14bの半径Rを大きくしなくても(機械を大型化しなくても)切り込みの最大深さDを大きくすることができる。
【0055】
しかも、減速比を小分けにするために部品点数が増加するという問題もなく、減速機構20,30側に固定された駆動用のギア26又はプーリ36を小さくする必要もないので、減速機構や伝達機構を小型化することによる強度不足といった問題も生じない。
【0056】
また、減速機構として遊星歯車機構20を使用すれば、減速機構の入力軸(すなわちモータ13の出力軸13a)と出力軸20aとを同軸上とすることができ、機械をコンパクトにすることができる。また、大きな減速比が得られるので、伝動機構によって回転速度が等速又は増速で回転力が伝達されたとしても、全体として十分に回転速度を減速させてのこ刃14bに伝達することができる。また、遊星歯車機構20を使用すれば、回転軸の位置や回転方向を変えることなく大きな減速比を得ることができる。
【0057】
また、伝動機構においてベルト38によって動力を伝達するようにすれば、作動音を低減させることができ、また、振動を低減させることによって切削感を向上させることができる。また、ベルト38の長さを調節することでのこ刃軸14に対するモータ13の位置を比較的自由に設定できるので、機械の重量バランス等を考慮して内部構造を適切な配置とすることができる。
【0058】
なお、伝動機構としてベルト機構を使用した場合、モータ13の回転が減速機構によって逆回転に変換されたときに、その逆回転の回転力をそのままのこ刃軸14に伝達することができる。このようにモータ13とのこ刃14bとが逆回転するように構成すれば、モータ13の起動時に生じる反動を互いに打ち消し合って抑制することができる。
また、伝動機構はベルト機構に限らず、ギアによって構成してもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、切り込み深さを最大とした状態において、
図2等に示すように、モータ13の出力軸13aとのこ刃軸14とが鉛直方向に見たときに重なり合う位置に配置されている。このように、モータ13の出力軸13aとのこ刃軸14とを前後に近接した位置とすることで、機械の重量バランスを良好に設定することができる。
【0060】
また、上記実施形態においては携帯用切断機10として携帯用丸のこを例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば卓上切断機に本発明を応用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態においてはのこ刃軸14にファイナルギア27又はファイナルプーリ37を組み付けたもの(軸体とギアやプーリとが別体)について説明したが、これに限らず、のこ刃軸14自体にファイナルギア27又はファイナルプーリ37を形成する(軸体にギアやプーリを一体化する)ようにしてもよい。