【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて開示の技術をより具体的に説明するが、開示の技術は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0040】
以下の実施例、比較例において、表面に、第1の膜と、更に必要に応じて第2の膜とが形成されたガラス基板を、カバー部材と称することがある。
【0041】
以下の実施例、比較例においては、ガラス基板として、Corning社製の強化ガラスGorilla2(平均厚み0.55mm)を用いた。
【0042】
(比較例1)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(A)(NSC−5000、日本精化株式会社製)をスピンコート法により塗布し、140℃で30分間加熱し、平均厚み1.5μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0043】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
評価する膜のビッカース硬度を、マイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ社製)により測定した。結果を表1に示した。
【0044】
<<落球試験>>
落球試験により、ガラスの割れにくさを評価した。この落球試験は、電子機器の表示面に物が衝突した場合を想定している。
試験の概略図を
図1に示す。
SUS製定盤1の上に、試験対象であるカバー部材2を置いた。カバー部材2は、ガラス基板上に形成された膜がSUS製定盤1に接するように置いた。カバー部材2に所定の高さから鋼球3を落下させた。鋼球3には、直径40mm、重さ286gのベアリング球を用いた。ガイド用のアクリルパイプ4(内径45mm)の長さを落球高さhとした。アクリルパイプ4の長さを変えて、試験を行った。鋼球3は、アクリルパイプ4の上面に鋼球3が半分入った状態から落下させた。
試験は、落球高さh=10cmから始めた。同一の高さで5回試験を行い、その高さでガラス基板が一度も割れなければ、5cm高さを上げた。そして、ガラスが一度でも割れた最初の落球高さhを、「割れた高さ」とした。以下の評価基準で評価した。「割れた高さ」及び評価結果を表1に示した。
〔評価基準〕
◎:割れた高さが、40cm超
○:割れた高さが、20cm超40cm以下
△:割れた高さが、10cm超20cm以下
×:割れた高さが、10cm
【0045】
なお、落球試験において、SUS製定盤1の上に、試験対象であるカバー部材2を置く際、SUS製定盤1に接するガラス基板の面を第1面(内側面)、その反対側の面を第2面(外側面)と称する。
【0046】
(比較例2)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(A)(NSC−5000、日本精化株式会社製)をスピンコート法により塗布し、140℃で30分間加熱し、平均厚み1.5μmの膜を得た。更に、反対側の面に、コーティング剤(A)(NSC−5000、日本精化株式会社製)をスピンコート法により塗布し、140℃で30分間加熱し、平均厚み1.5μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0047】
<評価>
作製したカバー部材について、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0048】
(比較例3)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(E)(リオデュラスLCH、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を600mJ/cm
2照射し、平均厚み3.0μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0049】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0050】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0051】
(実施例1)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(B)(リオデュラスEFC、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を400mJ/cm
2照射し、平均厚み10μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0052】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0053】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0054】
(比較例4)
<評価>
<<落球試験>>
実施例1で作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
(実施例2)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(B)(リオデュラスEFC、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を400mJ/cm
2照射し、平均厚み5.0μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0056】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0057】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0058】
(実施例3)
<カバー部材の作製>
前記ガラス基板上に、コーティング剤(B)(リオデュラスEFC、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を400mJ/cm
2照射し、平均厚み10μmの膜を得た。更に、反対側の面に、コーティング剤(B)(リオデュラスEFC、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を400mJ/cm
2照射し、平均厚み10μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0059】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0060】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0061】
(実施例4)
前記ガラス基板上に、コーティング剤(C)(アラポール、荒川化学工業株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃で30分間加熱し、平均厚み0.8μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0062】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0063】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0064】
(実施例5)
前記ガラス基板上に、コーティング剤(C)(アラポール、荒川化学工業株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃で30分間加熱し、平均厚み0.8μmの膜を得た。更に、反対側の面に、コーティング剤(C)(アラポール、荒川化学工業株式会社製)をスピンコート法により塗布し、120℃で30分間加熱し、平均厚み0.8μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0065】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0066】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0067】
(実施例6)
前記ガラス基板上に、コーティング剤(D)(自己治癒クリヤー、ナトコ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で50分間加熱し、平均厚み20μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0068】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0069】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0070】
(比較例5)
<評価>
<<落球試験>>
実施例6で作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0071】
(実施例7)
前記ガラス基板上に、コーティング剤(D)(自己治癒クリヤー、ナトコ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で50分間加熱し、平均厚み20μmの膜を得た。更に、反対側の面に、コーティング剤(D)(自己治癒クリヤー、ナトコ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で50分間加熱し、平均厚み20μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0072】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0073】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0074】
(実施例8)
前記ガラス基板上に、コーティング剤(D)(自己治癒クリヤー、ナトコ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で50分間加熱し、平均厚み20μmの膜を得た。更に、反対側の面に、コーティング剤(B)(リオデュラスEFC、東洋インキ株式会社製)をスピンコート法により塗布し、80℃で1分間加熱し、高圧水銀灯により365nmの紫外線を400mJ/cm
2照射し、平均厚み5.0μmの膜を得た。
以上により、カバー部材を作製した。
【0075】
<評価>
<<ビッカース硬度>>
比較例1と同様にしてビッカース硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0076】
<<落球試験>>
作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0077】
(実施例9)
<評価>
<<落球試験>>
実施例8で作製したカバー部材について、表1に記載の膜の配置になるようにして、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0078】
(比較例6)
<<落球試験>>
前記ガラス基板自体について、比較例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
ガラス基板の表面に膜を配しない場合には、落球試験10cmで割れが生じた(比較例6)。
比較例1、及び3では、ガラス基板の第1面側に膜を配しても、ガラス基板の割れを防止する効果は見られなかった。これは、前記膜のビッカース硬度が高い(100を超えている)ためである。
比較例2では、ガラス基板の両面に膜を配しても、ガラス基板の割れを防止する効果は見られなかった。これは、前記膜のビッカース硬度が高い(100を超えている)ためである。
【0081】
ガラス基板の第1面側にビッカース硬度が70の膜を配した場合、ガラス基板の割れを防止する効果が確認できた(実施例1)。
実施例1と同じビッカース硬度が70の膜を、ガラス基板の第2面側に配したが、ガラス基板の割れを防止する効果は見られなかった(比較例4)。
【0082】
ガラス基板の第1面側にビッカース硬度が90の膜を配した場合、ガラス基板の割れを防止する効果が確認できた(実施例2)。
なお、実施例1及び2において、ビッカース硬度は、膜の厚みにより調整した。平均厚み5.0μm〜10μm程度では、ガラスの割れを防ぐ効果は、膜の厚みよりもビッカース硬度自体が影響していると考えられる。
【0083】
ガラス基板の両面にビッカース硬度が70の膜を配した場合(実施例3)、ガラス基板の第1面側にビッカース硬度が70の膜を配した場合(実施例1)よりも、ガラス基板の割れを防止する効果は向上した。
【0084】
ガラス基板の第1面に配する膜の平均厚みが1.0μm未満であると、ガラス基板の割れを防止する効果は見られるものの、小さかった(実施例4及び5)。
【0085】
実施例1及び2と、実施例6とを対比すると、実施例6の方が、ガラス基板の割れを防止する効果が高かった。これは、実施例6の方が、ビッカース硬度が低いためである。
【0086】
実施例6と同じビッカース硬度が8の膜を、ガラス基板の第2面側に配したが、ガラス基板の割れを防止する効果は見られなかった(比較例5)。
【0087】
ガラス基板の両面に膜を配する場合、第2面上の膜のビッカース硬度が、第1面上の膜のビッカース硬度以上であることにより、ガラス基板の割れを防止する効果はより向上した(実施例3、7及び8)。
【0088】
(実施例10)
実施例1のカバー部材を電子機器に配した実施例を図を用いて説明する。
図2Aは、電子機器としての入力装置100を示す平面図であり、
図2Bは、
図2Aに示す入力装置100のA−A矢視断面を示す図である。なお、
図2A及び
図2Bでは、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。
【0089】
入力装置100は、筐体110、カバー部材としてのトップパネル120、両面テープ130、タッチパネル140、ディスプレイパネル150、及び基板160を有する。
【0090】
入力装置100は、車両に搭載され、タッチパネル140を入力操作部とする入力インターフェースである。入力装置100は、ナビゲーション装置、オーディオコントローラ、空調コントローラ、パワーウィンドウコントローラ、ミラーコントローラ等の操作部として用いることができる。
【0091】
筐体110は、例えば、樹脂製であり、
図2Bに示すように凹部111に基板160、ディスプレイパネル150、及びタッチパネル140が配設されるとともに、両面テープ130によってトップパネル120が接着されている。
【0092】
トップパネル120は、ガラス基板と、第1の膜とを有する。第1の膜は、前記ガラス基板のタッチパネル140側の表面に形成されている。
トップパネル120の表面(Z軸正方向側の面)は、入力装置100の利用者が操作入力を行う操作面の一例である。
【0093】
トップパネル120は、平面視における四辺が両面テープ130によって筐体110に接着されている。なお、両面テープ130は、トップパネル120の四辺を筐体110に接着できればよく、
図2Bに示すように矩形環状である必要はない。
【0094】
トップパネル120のZ軸負方向側にはタッチパネル140が配設される。トップパネル120は、タッチパネル140の表面を保護するために設けられている。
【0095】
タッチパネル140は、ディスプレイパネル150の上(Z軸正方向側)で、トップパネル120の下(Z軸負方向側)に配設されている。タッチパネル140は、入力装置100の利用者がトップパネル120に触れる位置(以下、操作入力の位置と称す)を検出する座標検出部の一例である。
【0096】
タッチパネル140の下にあるディスプレイパネル150には、GUIによる様々なボタン等(以下、GUI操作部と称す)が表示される。このため、入力装置100の利用者は、通常、GUI操作部を操作するために、指先でトップパネル120に触れる。
【0097】
タッチパネル140は、利用者のトップパネル120への操作入力の位置を検出できる座標検出部であればよく、例えば、静電容量型又は抵抗膜型の座標検出部であればよい。ここでは、タッチパネル140が静電容量型の座標検出部である形態について説明する。タッチパネル140とトップパネル120との間に隙間があっても、静電容量型のタッチパネル140は、トップパネル120への操作入力を検出できる。
【0098】
ディスプレイパネル150は、例えば、液晶ディスプレイパネル又は有機EL(Electroluminescence)パネル等の画像を表示できる表示部であればよい。ディスプレイパネル150は、筐体110の凹部111の内部で、不図示のホルダ等によって基板160の上(Z軸正方向側)に設置される。
【0099】
ディスプレイパネル150は、不図示のドライバIC(Integrated Circuit)によって駆動制御が行われ、入力装置100の動作状況に応じて、GUI操作部、画像、文字、記号、図形等を表示する。
【0100】
基板160は、筐体110の凹部111の内部に配設される。基板160の上には、ディスプレイパネル150及びタッチパネル140が配設される。ディスプレイパネル150及びタッチパネル140は、不図示のホルダ等によって基板160及び筐体110に固定されている。
【0101】
基板160には、駆動制御装置の他に、入力装置100の駆動に必要な種々の回路等が実装される。
【0102】
(実施例11)
実施例10の電子機器を車両に車載した実施例を図を用いて説明する。
図3は、車両10の室内のドライバーズシート11の周りを示す図である。車両10の室内には、ドライバーズシート11、ダッシュボード12、ステアリングホイール13、センターコンソール14、ドアの内張15等が配設される。なお、車両10は、例えば、ハイブリッド自動車(HV(Hybrid Vehicle))、電気自動車(EV(Electric Vehicle))、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、燃料電池車(FCV(Fuel Cell Vehicle))、水素自動車等であればよい。
【0103】
電子機器としての入力装置100は、例えば、ダッシュボード12の中央部12A、ステアリングホイール13のスポーク部13A、センターコンソール14のシフトレバー16の周囲14A、及びドアの内張15の凹部15A等に配設することができる。
【0104】
また、
図3には示さないが、電子機器としての入力装置100は、車両10の外側に設けられてもよい。例えば、ドアハンドルの周囲に設けて、電子錠の操作部として用いてもよい。
【0105】
開示に電子機器において、ガラス基板の割れを防止できる理由について、発明者らは以下のように考察している。
ガラスは引張応力には弱いことが知られている。水平に置いたガラスに上側から力が加わると、力が加わった部分ではガラスが下側に凸の状態になる。即ち、下側ではガラスに引張応力がかかる。ガラスの下側の面に膜を施すことで、この引張応力を緩和することができ、その結果、ガラスの割れを防止できる。なお、硬い膜よりも、柔らかく弾力性がある膜が、引張応力を緩和する作用が大きいと考えられる。
更に、下側に凸になった次の瞬間には、反作用でガラスは上側に凸になる。それゆえ、上側にも膜があると上側に働いた引張応力を緩和でき、ガラスの割れの防止効果は更に高くなる。