(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1に、本発明の実施形態による照明制御システム1のブロック図を示す。照明制御システム1は撮像装置2及び制御装置3を備え、制御装置3は照明器具4−1〜4−zを点灯制御する。撮像装置2及び照明器具4−1〜4−zは、照明空間Sの天井Ce付近において床面Fに対向して配置される。制御装置3は、例えば、照明空間Sとは別室の管理室等に配置されていてもよいし、照明空間S内の一部に配置されていてもよい。照明器具4−1〜4−zの各々は、電力線(不図示)から給電される点灯装置(不図示)及び点灯装置から所定の電流が供給される光源(不図示)を含む。照明空間Sは、例えばオフィス、体育館等であればよく、照明器具4−1〜4−zの各光源はLED、蛍光灯、高圧放電灯、水銀灯等であればよい。なお、以降の説明において、照明器具4−1〜4−zについて、これらを総称して又はこれらの一部を代表して照明器具4又は照明器具4−iというものとする。
【0017】
図2は、照明空間Sがオフィスである場合の、その概略上面図である。
図2に示すように、照明空間Sにおいて、被照射面となる床面Fは、複数の被照射区画5−1〜5−m(
図2においては、m=3)に区分される(各区画に机、椅子、棚、パーティション等が配置される)。以降の説明において、被照射区画5−1〜5−mについて、これらを総称して又はこれらの一部を代表して被照射区画5又は被照射区画5−jというものとする。なお、本明細書において、床面Fは、必ずしも建物の構造における床でなくてもよく、机、什器、敷物等の設置物の上面であってもよい。言い換えると、以降の実施形態において、被照射面と床面Fとは実質的に同義である。
【0018】
図1に戻り、照明器具4−1〜4−zは、n個(n=m)の照明器具グループ6にグループ分けされる。照明器具グループ6−1〜6−n(n=m)の各々は、被照射区画5−1〜5−mの各々に対応するものとする。ここで、1つも照明器具を含まない照明器具グループが存在しないように被照射区画5−1〜5−mが概ね妥当な範囲で設定されているものとする(そもそも、照明器具が設置されてない領域は照明制御の対象領域として予定されない)。なお、以降の説明において、照明器具グループ6−1〜6−nについて、これらを総称して又はこれらの一部を代表して照明器具グループ6又は照明器具グループ6−kというものとする。
【0019】
撮像装置2は、例えばカメラであり、撮像素子20及び通信部21を有する。撮像装置2は、被照射区画5−1〜5−mを含む被照射面(すなわち床面F、以下同じ)の全体を撮像して被照射面画像を取得する。撮像素子20は天井Ceの中心付近において床面Fに向けて、かつ被照射領域の全域(又は床面Fの全域)が撮像範囲となるように設置される。なお、撮像素子20は、床面Fを撮影することができれば、各照明器具4の光源面よりも天井Ce側に配置されていてもよいし、各照明器具4の光源面よりも床面F側に配置されていてもよい。撮像素子20によって撮影された床面Fの画像(被照射面画像)は通信部21によって制御装置3の受信部33に送信される。通信部21と受信部33との通信は有線であっても無線であってもよい。なお、被照射面画像は、実写画像であってもよいし、輝度の高低を濃淡で表すだけの画像であってもよい。したがって、本明細書において、輝度とは、特に断りのない限り撮像素子20からみた被照射面の明るさをいうものとする。
【0020】
制御装置3は、CPU30、記憶部31、ユーザインターフェイス部(ユーザI/F)32、受信部33及び送信部34を有し、これらは相互にデータ又は信号のやりとりが可能な態様で接続される。制御装置3は専用のコンピュータであってもよいし、後述するプログラムがインストールされたパソコンであってもよい。記憶部31は、各種プログラム及びデータを記憶するメモリである。
【0021】
ユーザI/F32は、ユーザからの入力を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネル等の入力部320、及び撮像装置2で撮像された画像、CPU30による処理の結果等を表示するための出力部としての表示画面325を有する。上記の入力部がタッチパネルである場合には表示画面325は入力部320の一部を構成する。
【0022】
受信部33は、撮像装置2から撮像画像のデータを受信してそれをCPU30に入力する。送信部34は、CPU30(点灯制御部301)からの、各照明器具4を点灯、消灯又は調光するための点灯制御信号を各照明器具4に送信する。送信部34と各照明器具4との通信は有線であっても無線であってもよい。本明細書に記載される各部間の通信が有線である場合、通信プロトコルとして、例えば、TCP/IP、RS485等を用いることができる。また、本明細書に記載される各部間の通信が無線である場合、通信プロトコルとして、例えば、WiFi、ZigBee等を用いることができる。ただし、通信プロトコルはこれらに限られない。
【0023】
CPU30は、設定管理部300、点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303及びグルーピング部304を含む。CPU30は、不図示の処理部によって各部を相互に作用させることができ、コンピュータを上記の各部300〜304として機能させるためのプログラムを実行することができるものとする。
【0024】
設定管理部300は、ユーザI/F32を介したユーザ入力に基づいて、被照射面における被照射区画5の設定(以下、「区画設定」という)を決定する。この区画設定は、撮像装置2によって撮像された被照射面画像においてユーザがユーザI/F32の入力部320を介して各区画の境界線を設定することによって決定される新たな設定であってもよいし、入力部320から入力されるユーザ指示に応じて記憶部31から読み出される既存の設定であってもよい。
【0025】
点灯制御部301は、個別制御機能及びグループ制御機能を有する。個別制御機能によって、照明器具4の各々が個別に点灯及び消灯され、必要に応じて個別に調光され得る。また、グループ制御機能によって、後述する処理によって形成される照明器具グループに含まれる照明器具4が、照明器具グループごとに点灯、消灯及び調光される。
【0026】
輝度分布取得部302は、撮像装置2によって撮像された被照射面画像から被照射面の輝度分布を取得する。輝度分布取得部302は、被照射面の輝度分布において、選択された照明器具4の点灯時の輝度分布D1及び消灯時の輝度分布D0を取得する。
【0027】
輝度中心特定部303は、照明器具4の各々について、明るさの変化に対する輝度分布の差分に基づいて輝度中心位置を求める。具体的には、輝度中心特定部303は、上記の点灯時の輝度分布D1と消灯時の輝度分布D0の差分(D1−D0)を取得し、差分領域における重心位置の座標を輝度中心位置として特定する。これにより、少ない処理工程で精度よく輝度中心位置が求められる。なお、輝度中心位置として、輝度重心以外にも、輝度の差分が最も大きい点の座標が採用されてもよい。
【0028】
グルーピング部304は、輝度中心位置(本例では輝度重心)が被照射区画5−1〜5−mのうちのどの被照射区画に含まれるのかを特定し、同じ被照射区画5に含まれる輝度中心位置を有する照明器具4を同じ照明器具グループ6にグループ分けする。グルーピング部304は、輝度重心が被照射区画5−1〜5−mのうちのいずれにも含まれない照明器具4(以下、「照明器具4
out」という)についてはグルーピング処理を行わない。照明器具4
outのグルーピングを回避する処理によって、照明器具グループ6−1〜6−nと被照射区画5−1〜5−nとの相関が一層高まる。
【0029】
図3A及び
図3Bを参照して、点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303及びグルーピング部304による処理を説明する。
図3A及び
図3Bは、ユーザI/F32の表示画面325の一部であり、あるいは、実際には表示画面325に表示されないCPU30内の仮想的な画面であってもよい。なお、区画設定は設定管理部300によって既に読み出されているものとする。
【0030】
まず、点灯制御部301が照明器具4−1を点灯させた状態で、輝度分布取得部302が、撮像装置2から被照射面の輝度分布D1を取得する。また、点灯制御部301が照明器具4−1を消灯させた状態で、輝度分布取得部302が、撮像装置2から被照射面の輝度分布D0を取得する。輝度中心特定部303は、輝度分布D1から輝度分布D0を減じて差分(D1−D0)をとり、
図3Aに示すような差分画像Df−1を得る。差分画像Df−1において、輝度差に応じて濃淡が現われる。具体的には、輝度差の絶対値が大きい部分(領域A−1の部分)が淡色(例えば白色)となり、輝度差が小さい部分(領域A−1以外の部分)が濃色(例えば黒色)となる。そして、輝度中心特定部303は、
図3Aにおいて、輝度の差分が生じている領域A1の重心を輝度重心G−1として特定する。差分画像における輝度重心は、差分画像を構成する各グリッドの座標及び淡色レベルに基づいて演算される。
図3Aに示すように、輝度重心G−1は被照射区画5−2に含まれる。したがって、グルーピング部304は、照明器具4−1を、被照射区画5−2に対応付けられた照明器具グループ6−2にグルーピングする。
【0031】
続いて、点灯制御部301は、照明器具4−1の場合と同様に、照明器具4−2を選択して点灯及び消灯させる。この点滅によって得られた輝度分布に基づいて
図3Bに示す差分画像Df−2が得られたとする。輝度中心特定部303は、輝度の差分が生じている領域A−2の重心を輝度重心G−2として特定する。
図3Bに示すように、輝度中心特定部303によって特定された輝度重心G−2は被照射区画5−1〜5−3のいずれにも含まれない。このような場合は、グルーピング部304は、照明器具4−2をいずれの照明器具グループにもグルーピングしない。これにより、被照射区画5−1〜5−3とこれに対応する照明器具グループ6−1〜6−3の相関が一層高まる。
【0032】
なお、点灯及び消灯の対象となる照明器具4以外の残余の照明器具は、この点灯及び消灯の実行期間中に一定の明るさとなっていればどのような点灯制御状態であってもよい。また、点灯制御部301は、選択された照明器具4を点灯及び消灯する代わりに、調光により明るさを第1の明るさから第2の明るさに変化させるようにしてもよい。すなわち、制御対象となる照明器具4において、輝度分布D1の取得時の調光率が輝度分布D0の取得時の調光率と異なっていればよい。
【0033】
点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303及びグルーピング部304は、選択された区画設定において、上記の処理を全ての照明器具4−1〜4−zについて実行する。その結果、各区画設定について被照射区画5−1〜5−mに対応する照明器具グループ6−1〜6−nが形成され、照明器具グループ6の各々と照明器具4との対応関係が記憶部31に記憶される。また、照明器具4−1〜4−zの輝度重心G−1〜G−zの座標も記憶部31に記憶されるようにしてもよい。
【0034】
これにより、照明器具グループ6−1〜6−nは、点灯制御部301のグループ制御機能によって照明器具グループごとに点灯、消灯及び調光可能となる。なお、グルーピングされなかった照明器具4
outは、点灯制御部301の個別制御機能によって点灯、消灯及び調光可能である。
【0035】
図4に、本実施形態における照明制御方法のグルーピング処理に関するフローチャートを示す。
ステップS5において、ユーザI/F32を介したユーザ入力に基づいて、設定管理部300によって区画設定が決定される。
ステップS9において、照明器具4−iについて、i=1に設定される。
【0036】
ステップS10において、点灯制御部301が照明器具4−iを点灯する。
ステップS11において、輝度分布取得部302が、被照射区画5−1〜5−mの被照射面全体の輝度分布D1を撮像装置2から取得する。
【0037】
ステップS15において、点灯制御部301が照明器具4−iを消灯する。
ステップS16において、輝度分布取得部302が、被照射区画5−1〜5−mの被照射面全体の輝度分布D0を撮像装置2から取得する。
なお、照明器具4−i以外の照明器具4が全て消灯された状態で照明器具4−iが点灯/消灯される制御方法の場合には、ステップS15及びS16の代わりに、点灯制御部301が全ての照明器具4を消灯するステップS7及び輝度分布取得部302が輝度分布D0を取得するステップS8を、ステップS5とステップS9の間に設けてもよい。
【0038】
ステップS20において、輝度中心特定部303が、輝度分布D1と輝度分布D0の差分(D1−D0)に基づいて照明器具4−iによる輝度重心G−iを求める。
【0039】
ステップS25において、グルーピング部304が、輝度重心G−iが被照射区画5−1〜5−mのうちのどの被照射区画に含まれるのかを特定する。
ステップS26において、グルーピング部304が、照明器具4−iの輝度重心G−iが含まれる被照射区画5に対応する照明器具グループ6に、照明器具4−iをグループ分けする。ここで、グルーピング部304は、輝度重心G−iが被照射区画5−1〜5−mのいずれにも含まれない照明器具4
outをいずれの照明器具グループにもグループ分けしない。
【0040】
ステップS30において、全ての照明器具4−zについてグループ分けが完了したか否かが判定される。全てのグループ分けが完了したと判定される場合(ステップS30、Yes)、処理は終了し、それ以外の場合(ステップS30、No)、ステップS31においてiが増分され、処理はステップS10に戻る。
【0041】
上記の各ステップで得られた情報(輝度重心G−i、グルーピングの結果等)は、各ステップにおいて記憶部31に適宜記憶されるものとする。照明器具4−1〜4−zの輝度重心G−1〜G−zが記憶部31に記憶されていれば、新たな区画設定が決定又は選択された場合であっても、その新たな区画設定に対するグルーピング処理において、上記のステップS6〜S20が省略可能となる。
【0042】
また、上記の各ステップの処理結果の一部又は全部は、逐次的に又は総括してユーザI/F32の表示画面325に出力される。この表示は、被照射区画5、輝度重心位置等の情報が被照射面画像上に上書きされたようなグラフィック表示であってもよいし、上記情報が表又は数値によって表されたテキスト表示であってもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態の照明制御システム1は、複数の被照射区画5−1〜5−mを含む被照射面の全体を撮像して被照射面画像を取得する撮像装置2と、撮像装置2に通信接続されるCPU30を備える。CPU30は、複数の照明器具4−1〜4−zの各々の明るさを変化させる点灯制御部301、被照射面画像を取得して被照射面の輝度分布を取得する輝度分布取得部302、照明器具4−1〜4−zの各々について、明るさの変化に対する輝度分布の差分に基づいて輝度中心位置を求める輝度中心特定部303、及び輝度中心位置が被照射区画5−1〜5−mのうちのどの被照射区画に含まれるのかを特定し、同じ被照射区画5に含まれる輝度中心位置を有する照明器具4を同じ照明器具グループ6にグループ分けするグルーピング部304を含む。これにより、複数の照明器具4と、複数の被照射区画5の被照射面(床面F)の輝度との対応関係を正確かつ効率的に取得することが可能となり、照明制御システム1の導入容易性が高まる。また、このようにして取得されたグループ分けの情報があれば、ユーザは照明空間S内の各被照射区画5において的確に点灯操作を行うことができる。
【0044】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態においては、各被照射区画5に対応する各照明器具グループ6を形成する構成を示したが、本実施形態ではさらに、各照明器具グループ6から各被照射区域5への被照射面輝度における相互の影響を把握及び利用するための構成を示す。
【0045】
図5に、本実施形態による照明制御システム1のブロック図を示す。第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態では、CPU30は、設定管理部300、点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303及びグルーピング部304に加えて、寄与率演算部305及び調光率決定部306を含む。
【0046】
寄与率演算部305は、被照射区画5の各々が受ける照明器具グループ6の各々からの被照射面輝度の寄与率を特定する。具体的には、まず、点灯制御部301のグループ制御機能によって照明器具グループ6−kが点灯されるとともに残余の照明器具グループ6が消灯された状態において、寄与率演算部305は、輝度分布上で被照射区画5−1〜5−mの各々における輝度値V
(k,1)〜V
(k,m)を計算する。そして、寄与率演算部305は、照明器具グループ6−kから被照射区画5−jへの被照射面輝度の寄与率C
(k,j)を、
【数5】
として演算する。
【0047】
一具体例として、被照射区画5−1〜5−3及びこれに対応する照明器具グループ6−1〜6−3が照明空間Sに存在する場合を想定する。まず、点灯制御部301が、照明器具グループ6−1を点灯させるとともに照明器具グループ6−2及び6−3を消灯させる。この状態で、寄与率演算部305が、輝度分布に基づいて被照射区画5−1〜5−3の各々における輝度値V
(1,1)〜V
(1,3)を計算する。この輝度値は、被照射区画5−1〜5−3の各々に含まれる淡色レベルの積分値を各被照射区画の面積で除算することによって算出される。その結果、
被照射区画5−1の輝度値V
(1,1)=51(cd/m
2)
被照射区画5−2の輝度値V
(1,2)=17(cd/m
2)
被照射区画5−3の輝度値V
(1,3)= 5(cd/m
2)
であるとする。同様に、点灯制御部301が照明器具グループ6−2を点灯させるとともに照明器具グループ6−1及び6−3を消灯させ、寄与率演算部305が輝度分布に基づいて被照射区画5−1〜5−3の各々における輝度値V
(2,1)〜V
(2,3)を計算する。その結果、
被照射区画5−1の輝度値V
(2,1)=34(cd/m
2)
被照射区画5−2の輝度値V
(2,2)=69(cd/m
2)
被照射区画5−3の輝度値V
(2,3)=28(cd/m
2)
であるとする。同様に、点灯制御部301が照明器具グループ6−3を点灯させるとともに照明器具グループ6−1及び6−2を消灯させ、寄与率演算部305が輝度分布に基づいて被照射区画5−1〜5−3の各々における輝度値V
(3,1)〜V
(3,3)を計算する。その結果、
被照射区画5−1の輝度値V
(3,1)= 6(cd/m
2)
被照射区画5−2の輝度値V
(3,2)=23(cd/m
2)
被照射区画5−3の輝度値V
(3,3)=56(cd/m
2)
であるとする。
【0048】
上記の結果から、寄与率演算部305は、寄与率C
(1,1)〜C
(3,3)を、
寄与率C
(1,1)=V
(1,1)/(V
(1,1)+V
(2,1)+V
(3,1))
=51/(51+34+6)=56(%)(以下、同様にして)
寄与率C
(2,1)=34/(51+34+6)=38(%)
寄与率C
(3,1)=6/(51+34+6)=7(%)
寄与率C
(1,2)=17/(17+69+23)=16(%)
寄与率C
(2,2)=69/(17+69+23)=63(%)
寄与率C
(3,2)=23/(17+69+23)=21(%)
寄与率C
(1,3)=5/(5+28+56)=5(%)
寄与率C
(2,3)=28/(5+28+56)=31(%)
寄与率C
(3,3)=56/(5+28+56)=64(%)
として演算する。これにより、以下の表1のようなデータが得られる。
【表1】
【0049】
上記のようなデータがユーザI/F32の表示部に出力されることによって、ユーザは、各照明器具グループ6から各被照射区域5への輝度の影響度を正確かつ一目瞭然に把握することができる。例えば、被照射区画5−1の明るさの制御においては、対応する照明器具グループ6−1のみならず照明器具グループ6−2も制御した方が効果的であること、逆に照明器具グループ6−3の制御はほとんど有用でないこと等が容易に把握される。
【0050】
上記の寄与率演算の例を一般化すると、照明器具グループ6−1〜6−nから被照射区画5−1〜5−mへの被照射面輝度のそれぞれの寄与率C
(1,1)〜C
(n,m)は、
【数6】
の行列(以下、「寄与率行列C」という)で表される。
【0051】
したがって、被照射区画5の各々の輝度設定値L
1〜L
m(%)が、
【数7】
の行列(以下、「輝度設定行列L」という)で表され、照明器具グループ6の各々の調光率R
1〜R
n(%)が、
【数8】
の行列(以下、「調光率行列R」という)で表される場合、
【数9】
が成り立つ。
【0052】
したがって、調光率決定部306は、所与の輝度設定行列Lに対して、調光率行列Rを
R=C
−1L
によって決定することができる。そして、点灯制御部301は、照明器具グループ6−1〜6−nの各々を、決定された調光率R
1〜R
nで点灯させることによって、所望の輝度設定L
1〜L
mが実現されることになる。
【0053】
ここで、調光率決定部306は、調光率行列Rに負値(0%未満の値)の要素がある場合にはその要素を0%に置換し、調光率行列Rに100%を超える要素がある場合にはその要素を100%に置換するように構成される。したがって、調光率行列Rの全要素は、0〜100%以内の値となる。これにより、現実には実行できない輝度設定(例えば、隣接する被照射区画の明暗の差が大きい輝度設定)が与えられた場合であっても、その輝度設定値に概ね近い輝度設定値での調光制御が可能となる。
【0054】
また、調光率決定部306は、上記置換処理が行われたことをユーザI/F32の出力手段(表示画面325、別途のスピーカ等)によってユーザに通知するようにしてもよい。これにより、ユーザは、当初の輝度設定が完全には実現されないことを認識することができる。あるいは、演算された調光率に0%又は100%が含まれていることに基づいて、ユーザは、(通知がなくても)上記置換処理が行われたことを推認することができる。なお、寄与率行列Cの逆行列C
−1が存在しない確率は非常に小さいが、逆行列C
−1が存在しない場合にはエラー表示がユーザI/F32に出力されて、ユーザに輝度設定値の再設定が促されるようにすればよい。
【0055】
またさらに、調光率決定部306は、調光率行列Rに上記置換処理を適用した近似調光率行列R´を生成し、近似輝度設定行列L´をL´=CR´により計算するようにしてもよい。この計算結果による近似輝度設定行列L´の各要素は、輝度設定行列Lの各要素に上書きされて記憶部31に記憶されるようにしてもよいし、ユーザI/F32を介してユーザに通知されるようにしてもよい。
【0056】
図6に、本実施形態における照明制御方法の調光制御に関するフローチャートを示す。
ステップS105において、区画設定に対する輝度設定行列Lが決定される。区画設定の各々に対応する輝度設定行列Lが予め記憶部31に記憶されていてもよいし、選択された区画設定に対する輝度設定行列Lがユーザによってマニュアル入力されるようにしてもよい。
ステップS106において、照明器具グループ6−kについて、k=1に設定される。
【0057】
ステップS110において、点灯制御部301が、照明器具グループ6−kを点灯するとともに残余の照明器具グループ6を消灯する。
ステップS111において、輝度分布取得部302が、被照射区画5−1〜5−mの照射面全体の輝度分布を取得する。
【0058】
ステップS115において、寄与率演算部305が、被照射区画5の各々について輝度値V
(k,1)〜V
(k,m)を計算する。
ステップS116において、寄与率演算部305が、輝度値V
(k,1)〜V
(k,m)に基づいて、照明器具グループ6−kから被照射区画5−1〜5−mへの被照射面輝度の寄与率C
(k,1)〜C
(k,m)を演算する(上記[数式5]参照)。
【0059】
ステップS120において、全ての照明器具グループ6−nについて輝度取得が完了したかが判定される。全ての輝度取得が完了していると判定される場合(ステップS120、Yes)、処理はステップS125に進み、それ以外の場合(ステップS120、No)、ステップS121においてkが増分され、処理はステップS110に戻る。
【0060】
ステップS125において、寄与率演算部305が、寄与率行列Cを生成する。
ステップS130において、調光率決定部306が、照明器具グループ6−1〜6−nの調光率行列Rについて、R=C
−1Lを演算する。
【0061】
ステップS135において、調光率決定部306は、調光率行列Rに負値の要素があるか否かを判定する。負値の要素がある場合(ステップS135、Yes)、ステップS136において、調光率決定部306が負値の要素を0%に置換する。負値の要素がない場合(ステップS135、No)、処理はステップS137に進む。
ステップS137において、調光率決定部306は、調光率行列Rに100%を超える要素があるか否かを判定する。100%超の要素がある場合(ステップS137、Yes)、ステップS138において、調光率決定部306が100%超の要素を100%に置換する。100%超の要素がない場合(ステップS137、No)、処理はステップS140に進む。
【0062】
ステップS140において、点灯制御部301が、決定された調光率R
1〜R
nに従って照明器具グループ6−1〜6−nを調光制御する。
【0063】
上記の各ステップで得られた情報(寄与率行列C、調光率行列R等)は、各ステップにおいて記憶部31に適宜記憶されるものとする。また、上記の各ステップの処理結果の一部又は全部は、逐次的に又は総括してユーザI/F32の表示画面325に出力される。この表示は、被照射区画5、輝度重心位置、算出された輝度値、演算された寄与率、決定された調光率等の情報が被照射面画像上に上書きされたグラフィック表示であってもよいし、上記情報が表又は数値によって表されたテキスト表示であってもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の照明制御システム1では、CPU30が寄与率演算部305を備え、寄与率演算部305は、照明器具グループ6−kが点灯されるとともに残余の照明器具グループが消灯された状態における被照射区画5−1〜5−mにおける輝度値V
(k,1)〜V
(k,m)を計算し、照明器具グループ6−kから被照射区画5−jが受ける被照射面輝度の寄与率C
(k,j)を、C
(k,j)=V
(k,j)/(V
(1,j)+V
(2,j)+・・・+V
(n,j))として演算する。これにより、ユーザは、各照明器具グループ6から各被照射区域5への輝度の影響度を正確に把握することができる。
【0065】
さらに、このような輝度の寄与率のデータを利用する構成として、CPU30は調光率決定部306を備える。調光率決定部306が、輝度の寄与率行列C、各照明器具グループ6の調光率行列R、及び各被照射区画5の所与の輝度設定行列Lについて、R=C
−1Lを演算することによって調光率行列Rを決定し、点灯制御部301がこの調光率行列Rに従って各照明器具グループ6を調光制御する。これにより、複数の照明器具グループ6から複数の被照射区画5に与えられる輝度の複雑な相関性においても適切な調光制御が実現される。
【0066】
<第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、制御装置3が撮像装置2と別置される構成を示したが、本実施形態では、CPU30等、制御装置の大部分の構成要素が撮像装置2と一体化される構成を示す。
【0067】
図7に、本実施形態の照明制御システム1のブロック図を示す。本実施形態において、第1の実施形態と実質的に同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図8に示すように、制御装置3は、天井Ce側の制御装置3A及び操作側の制御装置3Bを有し、それぞれCPU30A(主CPU)及びCPU30B(副CPU)を含む。本実施形態と第1及び第2の実施形態とは通信構成が異なるが、CPU30A及び30Bにおいて実行される処理は上記CPU30において実行される処理と実質的に同じである。
【0068】
本実施形態では、CPU30Aは上記CPU30の設定管理部300、点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303及びグルーピング部304(必要に応じて寄与率演算部305及び調光率決定部306)を含むものとして説明する。ただし、CPU30AとCPU30Bの機能分担はこれに限られない。例えば、CPU30Aが点灯制御部301〜調光率決定部306の一部を含み、CPU30Bが残余の部分を含んでいてもよい。そして、CPU30A及び30Bとも、プログラム及びデータ処理用の一般的な処理部を備えているものとする。
【0069】
制御装置3AはCPU30A、記憶部31、送信部34及び通信部35を含み、撮像装置2と一体化される。撮像装置2(撮像素子20)と制御装置3A(CPU30A)との信号のやりとりは適宜のインターフェイスを介して行われるものとする。
【0070】
制御装置3BはユーザI/F部32、通信部36、CPU30B及び記憶部37を含み、照明空間Sとは別室の管理室、照明空間S内外の床面上等、ユーザが操作可能な場所に位置するものとする。記憶部37は、プログラム及びデータを記憶するメモリであり、記憶部31の複製であってもよい。
【0071】
制御装置3Aの送信部34は、第1の実施形態と同様に、CPU30A(点灯制御部301)からの点灯制御信号を各照明器具4に送信する。制御装置3Aの通信部35は、制御装置3Bの通信部36と無線接続される。通信部35から通信部36へは、撮像装置2による撮像画像、CPU30Aによる制御結果等が送信される。CPU30Aによる制御結果には、上述した照明器具グループ6のグループ分けの結果、被照射面輝度の寄与率演算の結果、各照明器具グループ6について決定された調光率等が含まれる。通信部36から通信部35へは、ユーザI/F32を介したユーザ入力が送信される。ユーザ入力には、区画設定のための入力、記憶部31に記憶された区画設定を選択するための入力、区画設定に対する輝度設定を選択するための入力、照明器具4又は照明器具グループ6のマニュアル点灯、消灯又は調光するための指令等が含まれる。
【0072】
以上のように、本実施形態の照明制御システム1においては、上記第1又は第2の実施形態のCPU30の各部の全部又は一部を含むCPU30Aが撮像装置2に一体化される。これにより、管理室等の地上側に設置すべき装置が小型化され、スペースの有効利用が可能となる。また、制御装置3Bは、大きな処理量及び記憶量を必要としないので、比較的メモリ容量の小さいパソコン、携帯通信端末等でも構成可能となる。さらに、制御装置3A及び撮像装置2と、制御装置3Bとの間に有線通信構成が不要であるので、制御装置3Bをタブレット、スマートフォン等の可搬型のコンピュータとすることができる。
【0073】
また、CPU30Aを有する制御装置3Aが撮像装置2に一体化されることによって、送信部34と各照明器具4との間の点灯制御信号のための通信配線が天井Ce側のみに配置され、地上(管理室等)と天井側との間の通信配線が不要となる。これにより、照明制御システム1の施工容易性が高まる。また、送信部34と各照明器具4とが無線接続される場合、通信が障害物によって遮られる可能性が減少し、通信環境が向上する。
【0074】
<プログラム等>
なお、上述した各実施形態における照明制御システム1(CPU30、30A、30B)を実現する各構成要素、及び処理の各ステップは、記憶部31又は37のRAM又はROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0075】
また、本発明は、上記各実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(
図4又は
図6に示すフローチャートに対応したプログラム)が、照明制御システム1(CPU30、30A、30B)に直接に、又は遠隔から供給される場合も含む。したがって、本発明の機能処理を実現するために、照明制御システム1(CPU30、30A、30B)にインストールされるプログラムコード自体も本発明に含まれる。すなわち、本発明には、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラムも含まれる。そのプログラムは、コンピュータを、上記の設定管理部300、点灯制御部301、輝度分布取得部302、輝度中心特定部303、グルーピング部304、寄与率演算部305及び調光率決定部306の全部又は一部として機能させることができる。このように、本発明は、上記実施形態に示したような作用効果をソフトウェアの導入によって実現できるので、照明制御システム1の導入容易性を向上することができる。
【0076】
上記プログラムがインターネットからダウンロードされるようにしてもよい。この場合、ブラウザ機能によってインターネットのホームページに接続された照明制御システム1に、そのホームページから上記コンピュータプログラム又は圧縮され自動インストール機能を含むファイルがハードディスク等にダウンロードされる。
【0077】
上記プログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体も本発明に含まれる。プログラムが記憶媒体によって供給される場合は、その記憶媒体は、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク等であればよく、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM、DVD−R)等であってもよい。
【0078】
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、例えば以下に示すように種々の態様に変形可能である。
【0079】
例えば、上記各実施形態においては、撮像装置2及び照明器具4の設置面が天井Ceであり、被照射面が天井Ce下方の床面Fである構成を示したが、撮像装置2及び照明器具4の設置面と被照射面とは対向する関係にあれば他の配置であってもよい。例えば、被照射面が撮像装置2及び照明器具4の設置面に対して傾いていてもよいし、ライトアップの状況等のように被照射面が撮像装置2及び照明器具4の設置面の上方にあってもよい。本発明の照明制御システム1は、照明器具の配光特性等を計算要素として必要としないので、このような変則的な状況においても有用である。
【0080】
また、上記各実施形態においては、寄与率行列C及び輝度設定行列Lの各要素が割合(単位:%)である構成を示した。一方、寄与率演算部305が、第2の実施形態に関して上述した輝度値V
(1,1)〜V
(n,m)(cd/m
2)を、
【数10】
の行列として生成し、輝度設定行列Lの各要素を輝度値(cd/m
2)として、調光率決定部306が、所与の輝度設定行列Lに対して、調光率行列Rを、R=V
−1Lによって決定する構成も可能である。
【0081】
また、上記各実施形態では、調光率行列Rに100%を超える要素が含まれる場合にはその要素が100%に置換される構成を示した。一方、照明器具4の光源及び点灯装置における電流値がそれぞれの定格値以下となる範囲で、調光率行列Rの100%以上100+α%以下の要素の調光はそのまま実行されるようにして、調光率行列Rに100+α%を超える要素が含まれる場合にはその要素が100+α%に置換される構成としてもよい。ただし、光源の寿命等に充分留意する必要がある。