特許第6421708号(P6421708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6421708半導体光素子を作製する方法及び半導体光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6421708
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】半導体光素子を作製する方法及び半導体光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20181105BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   H01L31/10 A
   G02B6/12 301
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-130094(P2015-130094)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-17102(P2017-17102A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100108257
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 伊知良
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌博
(72)【発明者】
【氏名】増山 竜二
(72)【発明者】
【氏名】八木 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 尚子
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−183484(JP,A)
【文献】 特開2014−63842(JP,A)
【文献】 特開2014−53483(JP,A)
【文献】 米国特許第5391869(US,A)
【文献】 特開2012−199373(JP,A)
【文献】 特開平9−64399(JP,A)
【文献】 特開平11−224970(JP,A)
【文献】 米国特許第8014639(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10
G02B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光素子を作製する方法であって、
第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板を準備する工程と、
第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層、及び光吸収層のための第3半導体層を含む半導体領域を前記主面上に成長する工程と、
前記半導体領域を成長した後に、前記第1エリア、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第1半導体積層部、第2半導体積層部、第3半導体積層部、及び第4半導体積層部を備える半導体積層を形成する工程と、
前記第1半導体積層部、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部上にマスクを形成する工程と、
前記マスクを用いたエッチングにより、前記第1半導体積層部から複数のフォトダイオードメサを形成すると共に、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部から導波路メサを形成する工程と、
を備え、
前記第1半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第3半導体層、及び前記第2半導体層を含み、
前記第2半導体積層部は、前記第1半導体層、コアのための第4半導体層、及び上部クラッド部のための第5半導体層を含み、
前記第3半導体積層部は、改質半導体層、前記第4半導体層及び前記第5半導体層を含み、
前記第4半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第4半導体層、及び前記第5半導体層を含み、
前記第2半導体積層部は、前記第1半導体積層部に突き当て接合を成し、
前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記半導体積層を形成する工程は、
前記第2半導体層及び前記第3半導体層のエッチングにより前記第1半導体積層部を前記第1エリア上に形成し、
前記第3エリア上の前記第1半導体層に、第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかを行って、前記第1半導体層から前記改質半導体層を前記第3エリアにおいて形成し、
前記第1半導体積層部及び前記改質半導体層を形成した後に、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上に前記第4半導体層及び前記第5半導体層を成長する、半導体光素子を作製する方法。
【請求項2】
前記導波路メサは、多モード干渉器のための導波路構造を含む、請求項1に記載の半導体光素子を作製する方法。
【請求項3】
前記改質半導体層は、第2導電型ドーパントの添加により形成され、前記改質半導体層は、前記第2エリア上の前記第1半導体層と第1のpn接合を成し、前記改質半導体層は、前記第4エリア上の前記第1半導体層と第2のpn接合を成す、請求項1又は請求項2に記載の半導体光素子を作製する方法。
【請求項4】
前記改質半導体層は、水素の添加によって形成され、前記改質半導体層の水素濃度は、前記第2エリア上の前記第1半導体層の水素濃度より多く、前記第4エリア上の前記第1半導体層の水素濃度より多い、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の半導体光素子を作製する方法。
【請求項5】
半導体光素子であって、
導波路軸の方向に沿って順に配列された第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板と、
前記第1エリア上に設けられ、第1半導体積層を含む複数のフォトダイオードメサと、
前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第2半導体積層、第3半導体積層、及び第4半導体積層を有する導波路メサと、
を備え、
前記第1半導体積層は、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層及び光吸収層を含む第3半導体層を有し、
前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、
前記第2半導体積層は、前記第1半導体層、コア層、及び上部クラッド層を含み、
前記第3半導体積層は、改質半導体層、前記コア層及び前記上部クラッド層を含み、
前記第4半導体積層は、前記第1半導体層、前記コア層、及び前記上部クラッド層を含み、
前記第2半導体積層は、前記第1半導体積層に突き当て接合を成し、
前記第3エリア上の前記改質半導体層は、前記第2エリア上の前記第1半導体層と前記第4エリア上の前記第1半導体層との間に電気的な障壁を提供する、半導体光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子を作製する方法及び半導体光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、コヒーレント半導体光素子を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S. Farwell et al., “InP Coherent ReceiverChip with High Performance and Manufacturability for CFP2 Modules”, Optical Fiber Communication Conference 2014, USA, OSA TechnicalDigest, W1I.6, March 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コヒーレント半導体光素子は、90度光ハイブリッドを有する多モード干渉器(MMI)と、当該MMIからの光信号を電気信号に変換する複数のフォトダイオードとを備える。MMIは、光導波路を介して複数のフォトダイオードに接続され、モノリシックなコヒーレント半導体光素子の一形態では、基板上の導電性半導体層が、MMI、複数のフォトダイオード及び光導波路によって共有される。複数のフォトダイオード間の導電性半導体層は素子分離メサの形態で除かれる。しかし、光導波路内の導電性半導体層が除去されないので、結果的に当該複数のフォトダイオードは、光導波路内の導電性半導体層を介して相互に電気的に接続される。
【0005】
本発明の一側面は、複数のフォトダイオード間の絶縁性を高めることを可能にする半導体光素子を作製する方法を提供することを目的とする。本発明の別の側面は、相互の絶縁性を高めた複数のフォトダイオードを有する半導体光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る半導体光素子を作製する方法は、第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板を準備する工程と、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層、及び光吸収層のための第3半導体層を含む半導体領域を前記主面上に成長する工程と、前記半導体領域を成長した後に、前記第1エリア、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第1半導体積層部、第2半導体積層部、第3半導体積層部、及び第4半導体積層部を備える半導体積層を形成する工程と、前記第1半導体積層部、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部上にマスクを形成する工程と、前記マスクを用いたエッチングにより、前記第1半導体積層部から複数のフォトダイオードメサを形成すると共に、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部から導波路メサを形成する工程と、を備え、前記第1半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第3半導体層、及び前記第2半導体層を含み、前記第2半導体積層部は、前記第1半導体層、コアのための第4半導体層、及び上部クラッド部のための第5半導体層を含み、前記第3半導体積層部は、改質半導体層、前記第4半導体層及び前記第5半導体層を含み、前記第4半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第4半導体層、及び前記第5半導体層を含み、前記第2半導体積層部は、前記第1半導体積層部に突き当て接合を成し、前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記半導体積層を形成する工程は、前記第2半導体層及び前記第3半導体層のエッチングにより前記第1半導体積層部を前記第1エリア上に形成し、前記第3エリア上の前記第1半導体層に、第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかを行って、前記第1半導体層から前記改質半導体層を前記第3エリアにおいて形成し、前記第1半導体積層部及び前記改質半導体層を形成した後に、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上に前記第4半導体層及び前記第5半導体層を成長する。
【0007】
本発明の別の側面に係る半導体光素子は、導波路軸の方向に沿って順に配列された第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板と、前記第1エリア上に設けられ、第1半導体積層を含む複数のフォトダイオードメサと、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第2半導体積層、第3半導体積層、及び第4半導体積層を有する導波路メサと、を備え、前記第1半導体積層は、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層及び光吸収層を含む第3半導体層を有し、前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記第2半導体積層は、前記第1半導体層、コア層、及び上部クラッド層を含み、前記第3半導体積層は、改質半導体層、前記コア層及び前記上部クラッド層を含み、前記第4半導体積層は、前記第1半導体層、前記コア層、及び前記上部クラッド層を含み、前記第2半導体積層は、前記第1半導体積層に突き当て接合を成し、前記第3エリア上の前記改質半導体層は、前記第2エリア上の前記第1半導体層と前記第4エリア上の前記第1半導体層との間に電気的な障壁を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面は、複数のフォトダイオード間の絶縁性を高めることを可能にする半導体光素子を作製する方法を提供することができる。本発明の別の側面は、相互の絶縁性を高めた複数のフォトダイオードを有する半導体光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体光素子を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示されるII−II線に沿ってとられた断面図である。
図3図3は、図1に示されるIII−III線に沿ってとられた断面図である。
図4図4は、図1に示されるIV−IV線に沿ってとられた断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る半導体光素子を作製する方法を示す流れ図である。
図6図6は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図7図7は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図8図8は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図9図9は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図10図10は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図11図11は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図12図12は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図13図13は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図14図14は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図15図15は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図16図16は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図17図17は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。
図18図18は、第1実施形態に係る半導体光素子における半導体層の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面に係る半導体光素子を作製する方法は、第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板を準備する工程と、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層、及び光吸収層のための第3半導体層を含む半導体領域を前記主面上に成長する工程と、前記半導体領域を成長した後に、前記第1エリア、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第1半導体積層部、第2半導体積層部、第3半導体積層部、及び第4半導体積層部を備える半導体積層を形成する工程と、前記第1半導体積層部、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部上にマスクを形成する工程と、前記マスクを用いたエッチングにより、前記第1半導体積層部から複数のフォトダイオードメサを形成すると共に、前記第2半導体積層部、前記第3半導体積層部、及び前記第4半導体積層部から導波路メサを形成する工程と、を備え、前記第1半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第3半導体層、及び前記第2半導体層を含み、前記第2半導体積層部は、前記第1半導体層、コアのための第4半導体層、及び上部クラッド部のための第5半導体層を含み、前記第3半導体積層部は、改質半導体層、前記第4半導体層及び前記第5半導体層を含み、前記第4半導体積層部は、前記第1半導体層、前記第4半導体層、及び前記第5半導体層を含み、前記第2半導体積層部は、前記第1半導体積層部に突き当て接合を成し、前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記半導体積層を形成する工程は、前記第2半導体層及び前記第3半導体層のエッチングにより前記第1半導体積層部を前記第1エリア上に形成し、前記第3エリア上の前記第1半導体層に、第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかを行って、前記第1半導体層から前記改質半導体層を前記第3エリアにおいて形成し、前記第1半導体積層部及び前記改質半導体層を形成した後に、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上に前記第4半導体層及び前記第5半導体層を成長する。
【0011】
この半導体光素子を作製する方法によれば、改質半導体層が、第3エリアにおいて第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかによって形成される。これによって、第3半導体積層部内の第1半導体層を除去することなく第1半導体層から改質半導体層が形成されることができる。この改質半導体層は、第2エリア上の第1半導体層と第4エリア上の第1半導体層との間に電気的な障壁を提供する。このため、第1エリア上の第1半導体積層内の第1半導体層が、第4エリア上の半導体積層内の第1半導体層から高い絶縁性で電気的に分離されて、第1エリアの複数のフォトダイオードが、光導波路を介して電気的に接続されることなく、相互に絶縁される。
【0012】
上記の半導体光素子を作製する方法では、前記導波路メサは、多モード干渉器のための導波路構造を含んでもよい。この半導体光素子を作製する方法によれば、フォトダイオードメサは、多モード干渉器からの復調光を受けて、その復調光から電気信号を生成する。
【0013】
上記の半導体光素子を作製する方法では、前記改質半導体層は、第2導電型ドーパントの添加により形成され、前記改質半導体層は、前記第2エリア上の前記第1半導体層と第1のpn接合を成し、前記改質半導体層は、前記第4エリア上の前記第1半導体層と第2のpn接合を成すことができる。この半導体光素子を作製する方法によれば、第1導電型と異なる第2導電型のドーパントを第1半導体層に添加することによって改質半導体層が形成され、この改質半導体層は第1半導体層と逆の導電性を有する。このため、改質半導体層は、第2エリア上の第1半導体層と第1のpn接合を成し、また、第4エリア上の第1半導体層と第2のpn接合を成す。第3エリアは、第2エリアと第4エリアとの間に位置するので、第2エリア上の第1半導体層、第3エリア上の改質半導体層及び第4エリア上の第1半導体層の配列は、n−p−n構造又はp−n−p構造を構成する。第3エリア上の改質半導体層が、第2エリア上の第1半導体層と第4エリア上の第1半導体層との間の電流経路を遮断するように働く。
【0014】
上記の半導体光素子を作製する方法では、前記改質半導体層は、水素の添加によって形成され、前記改質半導体層の水素濃度は、前記第2エリア上の前記第1半導体層の水素濃度より多く、前記第4エリア上の前記第1半導体層の水素濃度より多くてもよい。この半導体光素子を作製する方法によれば、第3エリア上の第1半導体層への水素のイオン注入は、当該第1半導体層の結晶に格子欠陥を生じさせることによって第1半導体層を改質して、改質半導体層を生成する。水素のイオン注入によって形成された改質半導体層は、第1半導体層に比べて多くの結晶欠陥を内包するので、改質半導体層の電気抵抗率は、第2エリア及び第4エリア上の第1半導体層の電気抵抗率に比べて高くなる。この改質半導体層の高い電気抵抗率によって第2エリア上の第1半導体層と第4エリア上の第1半導体層との間に電気的な障壁が生じて、第1エリアの複数のフォトダイオード間に高い絶縁性が提供される。
【0015】
本発明の別の側面に係る半導体光素子は、導波路軸の方向に沿って順に配列された第1エリア、第2エリア、第3エリア及び第4エリアを含む主面を有する基板と、前記第1エリア上に設けられ、第1半導体積層を含む複数のフォトダイオードメサと、前記第2エリア、前記第3エリア及び前記第4エリア上にそれぞれ設けられた第2半導体積層、第3半導体積層、及び第4半導体積層を有する導波路メサと、を備え、前記第1半導体積層は、第1導電型の第1半導体層、第2導電型の第2半導体層及び光吸収層を含む第3半導体層を有し、前記第3半導体層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記第2半導体積層は、前記第1半導体層、コア層、及び上部クラッド層を含み、前記第3半導体積層は、改質半導体層、前記コア層及び前記上部クラッド層を含み、前記第4半導体積層は、前記第1半導体層、前記コア層、及び前記上部クラッド層を含み、前記第2半導体積層は、前記第1半導体積層に突き当て接合を成し、前記第3エリア上の前記改質半導体層は、前記第2エリア上の前記第1半導体層と前記第4エリア上の前記第1半導体層との間に電気的な障壁を提供する。
【0016】
この半導体光素子によれば、第2エリア及び第4エリア上の導波路メサ内に第1半導体層が設けられる一方で、第3エリア上の第3半導体積層の改質半導体層によって、第2エリア上の第1半導体層と第4エリア上の第1半導体層との間に電気的な障壁が提供される。改質半導体層が、第2エリア上の第1半導体層及び第4エリア上の第1半導体層内の一方から他方への電流の流れを妨げるような障壁となる。その結果、この半導体光素子の複数のフォトダイオードが、相互に高い絶縁性で電気的に分離される。
【0017】
いくつかの実施形態に係る半導体光素子を作製する方法及び半導体光素子を図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体光素子を模式的に示す平面図である。図2は、図1に示されるII−II線に沿ってとられた断面図である。図3は、図1に示されるIII−III線に沿ってとられた断面図である。図には直交座標系Sが描かれており、この直交座標系SのX軸が、導波路軸Ax1の方向に向く。
【0019】
図1を参照すると、半導体光素子1は、基板10、フォトダイオード20、及び導波路メサ30を備える。基板10は、主面10Aを有し、主面10Aは、第1エリアA1、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5を含む。第5エリアA5、第1エリアA1、第2エリアA2、第3エリアA3及び第4エリアA4は、導波路軸Ax1の方向に沿って順に配列されている。基板10は、例えば、Feドープの半絶縁性InP基板であることができる。
【0020】
図1及び図2に示されるように、第1エリアA1上には、複数のフォトダイオード20が設けられ、フォトダイオード20として、図1には、例えば、4つの導波路型のフォトダイオード素子20a、20b、20c、20dが示される。フォトダイオード20の各々は、フォトダイオードメサ20Mを有し、このフォトダイオードメサ20Mは、第1半導体積層40Aを含む。第1半導体積層40Aは、第1導電型の第1半導体層41、第2導電型の第2半導体層42及び第3半導体層43を含む。第1半導体層41、第3半導体層43及び第2半導体層42が、基板10の主面10A上にこの順で配列される。
【0021】
導波路メサ30は、第2半導体積層40B、第3半導体積層40C及び第4半導体積層40Dを有し、第2半導体積層40B、第3半導体積層40C及び第4半導体積層40Dは、それぞれ第2エリアA2、第3エリアA3及び第4エリアA4上に設けられる。第2半導体積層40Bは、第1半導体層41、コア層44、及び上部クラッド層45を含む。コア層44は、第1半導体層41上に設けられ、コア層44上に上部クラッド層45が設けられる。第2半導体積層40Bは、第1エリアA1上の第1半導体積層40Aに突き当て接合を成す。第3半導体積層40Cは、改質半導体層50、コア層44及び上部クラッド層45を含む。コア層44は、改質半導体層50上に設けられ、上部クラッド層45は、コア層44上に設けられる。第4半導体積層40Dは、第1半導体層41、コア層44、及び上部クラッド層45を含む。コア層44は、第1半導体層41上に設けられ、上部クラッド層45は、コア層44上に設けられる。第4半導体積層40Dは、多モード干渉器のための導波路構造を含む。第5エリアA5上には、第5半導体積層40Eが設けられ、この第5半導体積層40Eは、第1半導体層41、コア層44、及び上部クラッド層45を含む。コア層44は、第1半導体層41上に設けられ、上部クラッド層45は、コア層44上に設けられる。
【0022】
図1に示されるように、半導体光素子1は、電気的な障壁を第3エリアA3上に提供するように第1半導体層41と異なる電気特性を有する改質半導体層50を含む。第3エリアA3上の導波路メサ30内の電気的な障壁によって、複数のフォトダイオード20が、互いに導波路メサ30を介して電気的に接続されることを妨げる。改質半導体層50に加えて、複数のフォトダイオード20の各々を互いに電気的に絶縁するために素子分離メサが設けられて、第1半導体層41がフォトダイオード20毎に分離される。改質半導体層50及び素子分離メサによって、複数のフォトダイオード20の第1半導体層41は、第4エリアA4上の第1半導体層41から絶縁される。改質半導体層50は、第3エリアA3上の第1半導体層41内に、例えば、第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかを行って形成される。
【0023】
(第2導電型のドーパントの添加による改質半導体層)
改質半導体層50が第2導電型ドーパントの添加により形成される構造では、第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41が、第1導電型(例えば、n型)の半導体層であるときに、第3エリアA3上の改質半導体層50は、第1半導体層41と反対の導電性を有する。改質半導体層50は、逆導電型(具体的にはp型)のドーパントの添加によって形成されることができる。この結果、第2導電型ドーパントの濃度が、第1導電型ドーパントの濃度よりも多くなるので、この改質半導体層50は、第2エリアA2上の第1半導体層41と第1のpn接合50Eを成し、また、第4エリアA4上の第1半導体層41と第2のpn接合50Fを成す。第3エリアA3は、第2エリアA2と第4エリアA4との間に位置するので、第2エリアA2上の第1半導体層41、第3エリアA3上の改質半導体層50及び第4エリアA4上の第1導半導体層は、n−p−n構造を形成する。第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41が、例えば、p型の半導体層であるときには、改質半導体層50は、第1半導体層41と反対の導電性を有するように、n型ドーパントの添加によって改質されることができる。第2エリアA2上の第1半導体層41、第3エリアA3上の改質半導体層50及び第4エリアA4上の第1導半導体層は、p−n−p構造を構成する。このn−p−n構造又はp−n−p構造が形成される結果、第3エリアA3上の改質半導体層50が、第2エリアA2上の第1半導体層41から第4エリアA4上の第1半導体層41に至る電気的経路を遮断して、この遮断と素子分離メサの構造との組み合わせにより、フォトダイオード間に高い絶縁を実現する。
【0024】
本実施例では、第1半導体層41の改質のために、例えば、Siドープn型InP層にp型ドーパントのZnを拡散することができる。改質半導体層50(Zn拡散後のSiドープInP層)内のZn濃度は、例えば、1×1017cm−3〜2×1018cm−3であり、Si濃度よりも多くなっている。Zn拡散のためのドーパントガスは、例えば、ジメチル亜鉛であり、熱処理温度は、例えば、550℃〜650℃である。第1半導体層41内のSi濃度は、例えば、5×1016cm−3〜1.5×1018cm−3である。
【0025】
(水素の添加による改質半導体層)
改質半導体層50が第1半導体層41への水素の添加によって形成される構造では、第3エリアA3上の第1半導体層41内への水素のイオン注入によって第1半導体層41内の結晶に欠陥が生じて、第1半導体層41から改質半導体層50が形成される。結晶欠陥の増大は、水素濃度の増大と関連している。イオン注入によって形成された改質半導体層50では、格子間に水素が残留しており、改質半導体層50の水素濃度は、第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41の水素濃度より多い。改質半導体層50は、格子間水素及びイオン注入の損傷により、第1半導体層41に比べて多くの結晶欠陥を有する。これにより、改質半導体層50の電気抵抗率は、第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41(イオン注入されていない第1半導体層41)の電気抵抗率に比べて高い。改質半導体層50は、その高い電気抵抗率の半導体層に起因して、第2エリアA2上の第1半導体層41と第4エリアA4上の第1半導体層41との間に電気的な障壁を形成して、この障壁と素子分離メサの構造との組み合わせにより、フォトダイオード20間に高い絶縁を実現する。
【0026】
本実施例では、第1半導体層41の改質のために、例えば、Siドープn型InP層に水素をイオン注入する。このイオン注入によりn型InP層から形成された改質InP層内の水素濃度は、例えば、1×1018cm−3〜1×1019cm−3である。水素のイオン注入のドーズ量は、例えば、5×1014cm−2〜5×1015cm−2であり、加速エネルギーは、例えば、50keV〜400keVである。イオン注入前のn型InP層内の水素濃度は、例えば、1×1017cm−3〜1×1018cm−3である。1eVは、1.6×10−19Jである。
【0027】
図3を参照しながら、図1に示されるIII−III線に沿った導波路メサ30の構造を説明する。この導波路メサ30は、第3エリアA3上において、改質半導体層50と、この改質半導体層50上に設けられたコア層44及び上部クラッド層45とを有する。改質半導体層50の一部は、導波路メサ30内だけでなく、素子分離メサ50Mにも設けられる。導波路メサ30上には、絶縁膜22が設けられ、この絶縁膜22は、導波路メサ30の上面30A及び側面30Bと、素子分離メサ50M内の改質半導体層50の側面50Bとを覆っている。絶縁膜22は、例えば、SiN、SiON又はSiOなどのシリコン系無機化合物を含む。素子分離メサ50Mの側面には、絶縁膜22が接触を成している。
【0028】
第3エリアA3上では、改質半導体層50は、素子分離メサ50Mの第1幅50Dの方向に関して全体にわたって設けられる。また、基板10の主面の法線方向に関して、改質半導体層50は、その上面50Aから半絶縁性の基板10に達する厚さを有して、この結果、素子分離メサ50Mの断面(光導波路の延在方向に交差する方向の断面)には改質前の第1半導体層41が残っていない。第3エリアA3上の改質半導体層50は、その幅及び厚さの点で、第2エリアA2上の第1半導体層41を第4エリアA4上の第1半導体層41から絶縁できる。
【0029】
第2エリアA2、第3エリアA3及び第4エリアA4上では、改質半導体層50及び第1半導体層41の上に、i型のコア層44(例えば、アンドープInGaAsP層)が設けられている。このコア層44は、第2エリアA2、第4エリアA4では、第1半導体層41に接すると共に第3エリアA3上では、改質半導体層50の上面50Aに接触するので、コア層44のi型半導体層は、第2エリアA2上の第1半導体層41及び第4エリアA4上の第1半導体層41の一方からコア層44を介して他方に至る経路上に電気的な障壁を提供している。これ故に、改質半導体層50を迂回するような電気的経路は形成されず、第2エリアA2上の第1半導体層41と第4エリアA4上の第1半導体層41との間に高い絶縁性が提供される。
【0030】
第3エリアA3上の素子分離メサ50Mの第1幅50D及び導波路メサ30の第2幅30Dの一例は、以下の通りである。
第1幅50D:2.5μm〜5μm。
第2幅30D:1.5μm〜3μm。
素子分離メサ50Mの第1幅50Dは、導波路メサ30の第2幅30Dに比べて、光導波路の延在方向に交差する方向に、1μm程度多く延出している。改質半導体層50とフォトダイオード20のフォトダイオードメサ20Mの側面20Eとの距離W1(図1を参照)は、例えば、10μmであることができる。改質半導体層50の長さL1(図1を参照)は、例えば、100μmである。
【0031】
再び図1を参照すると、第4エリアA4上には、多モード干渉器60のための導波路構造が設けられ、この多モード干渉器60は、一又は複数の入力ポートと、複数の出力ポートとを有する。多モード干渉器60は、例えば、2×4多モード干渉器60a及び2×2多モード干渉器60bを含むことができる。多モード干渉器60は、出力ポートに接続された光導波路61a、61b、61c、61dにコヒーレント復調された復調光を出力する。これらの光導波路は、多モード干渉器60をそれぞれのフォトダイオード20に光学的に結合する。フォトダイオード20は、多モード干渉器60からの復調光を受けて、その復調光から電気信号を生成する。
【0032】
以下に、図2に示される半導体光素子1の素子構造の一例を示す。
基板10:Feドープの半絶縁性InP基板。
(第1エリアA1上の第1半導体積層40Aの構成の一例)
第1半導体層41(カソード):Siドープn型InP層。
第3半導体層43(アノード):アンドープGaInAs層又はGaInNAs層。
第2半導体層42:Znドープp型InP層。
(第2エリアA2上の第2半導体積層40Bの構成の一例)
第1半導体層41:Siドープn型InP層。
コア層44:バンドギャップ波長1.05μmのアンドープInGaAsP層。
上部クラッド層45:アンドープInP層。
(第3エリアA3上の第3半導体積層40Cの構成の一例)
改質半導体層50:Zn拡散及び/又は水素のイオン注入によるInP層。
コア層44:バンドギャップ波長1.05μmのアンドープInGaAsP層。
上部クラッド層45:アンドープInP層。
改質半導体層50は、例えば、第2導電型ドーパントの添加(Znなどの拡散)及び/又は水素添加の少なくともいずれかによっても形成されることができる。
(第4エリアA4上の第4半導体積層40Dの構成の一例)
第1半導体層41:Siドープn型InP層。
コア層44:バンドギャップ波長1.05μmのアンドープInGaAsP層。
上部クラッド層45:アンドープInP層。
【0033】
フォトダイオード20のための第1半導体積層40Aでは、必要に応じて、第2半導体層42上に第2導電型のコンタクト層46が設けられる。コンタクト層46は、例えば、p型のInGaAs層であることができる。コンタクト層46のp型ドーパントは、例えばZnを含む。また、必要に応じて、第1半導体積層40Aでは、第1半導体層41と第3半導体層43との間、第3半導体層43と第2半導体層42との間、及び/又は第2半導体層42とコンタクト層46との間に、例えば、ヘテロ障壁緩和層が設けられる。これらのヘテロ障壁緩和層は、例えば、InGaAsP層を含む。
【0034】
フォトダイオード20は、フォトダイオードメサ20Mの側面20Bを覆う埋込層21を有する。埋込層21は、例えば、半絶縁性のFeドープInP層を含む。埋込層21上には絶縁膜22が設けられ、この絶縁膜22は、例えば、SiN、SiON又はSiOなどのシリコン系無機化合物を含む。絶縁膜22は、フォトダイオードメサ20Mの上面20Aを覆う一方で、その上面20A上に電極のための開口23を有する。この開口23を介して、アノード電極51pが、コンタクト層46に接触を成す。アノード電極51pは、例えば、AuZn又はPt合金を含む。アノード電極51pは、絶縁膜22上を延在して、パッド電極52pに接続される。パッド電極52pは、例えば金(Au)を備える。
【0035】
図4は、図1に示されるIV−IV線に沿ってとられた断面図である。第1エリアA1上では、第1半導体層41がフォトダイオード20の間において設けられず、これによって、複数のフォトダイオード20が素子分離されている。フォトダイオード20の間において基板10の主面10Aが、第1半導体層41で覆われることなく、この主面10Aは、絶縁膜22によって覆われている。フォトダイオード20は、第1半導体層41の上面41Aに接触を成すカソード電極51nを有する。また、フォトダイオード20は、カソード電極51nに接続されるパッド電極52nを有する。カソード電極51nは、例えば、AuGe又はAuGeNi合金を含む。パッド電極52nは、例えば金(Au)を備える。
【0036】
図5は、第1実施形態に係る半導体光素子を作製する方法を示す流れ図である。図6図17は、図5に示される工程流れ図の一工程において形成される生産物を概略的に示す図である。図6の(a)部〜図17の(a)部は、図1に示されるII−II線に対応する断面図である。図6の(b)部〜図17の(b)部は、図6の(a)部に示されるVI(b)−VI(b)線〜図17の(a)部に示されるXVII(b)−XVII(b)線に沿った断面図である。
【0037】
(基板の準備及び半導体領域の成長)
工程S1では、基板10が準備され、この基板10の主面は、第1エリアA1、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5を含む。工程S2では、図6の(a)部及び(b)部に示されるように、基板10の主面上に半導体領域2が成長される。具体的には、第1半導体層41、第3半導体層43、及び第2半導体層42をこの順で基板10上に成長して、半導体領域2を形成する。第1半導体層41は、第1導電型の半導体層であり、第2半導体層42は、第2導電型の半導体層である。第3半導体層43は、光吸収層43aを含む。半導体領域2の成長は、例えば、有機金属気相エピタキシャル(OMVPE)法又は分子線エピタキシー(MBE)法により行われる。
【0038】
半導体領域2の成長では、第2半導体層42上に第2導電型のコンタクト層46を成長することができる。コンタクト層46は、例えば、Znドープのp型InGaAs層であることができる。また、必要に応じて、第1半導体層41の上、第3半導体層43の上、及び第2半導体層42の上に、例えば、ヘテロ障壁緩和層としてのInGaAsP層を成長することができる。
【0039】
第1半導体層41、第3半導体層43、及び第2半導体層42の厚さの一例は、以下の通りである。
半導体層の名称、 厚さ。
第1半導体層41:1.5μm〜3μm。
第3半導体層43:0.2μm〜0.5μm。
第2半導体層42:1.5μm〜3μm。
【0040】
(半導体積層の形成)
工程S3では、半導体領域2の成長の後に、図7の(a)部及び(b)部に示されるように、半導体積層3を形成する。半導体積層3の形成では、第1エリアA1、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上にそれぞれ形成されるべき第1半導体積層部40P、第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、第4半導体積層部40S及び第5半導体積層部40Tのために、半導体層の形成と、第1半導体層41の改質とを行う。この改質は、例えば、第3エリアA3上の第1半導体層41への第2導電型のドーパントの添加及び水素の添加の少なくともいずれかの方法によって行われる。このいずれの方法を用いるかによって、半導体積層3を形成する手順が異なる。
【0041】
以下、「第2導電型ドーパントの添加を用いる形成工程」及び「水素の添加を用いる形成工程」を、それぞれ工程3−1及び工程3−2として説明する。
【0042】
(第2導電型ドーパントの添加を用いる形成工程)
第2導電型ドーパントの添加により改質半導体層50を形成する工程3−1を説明する。本実施例では、改質半導体層50を形成した後に、半導体積層の形成を行う。具体的には、図8の(a)部及び(b)部に示されるように、半導体領域2の上面2A上にマスク71を形成する。マスク71は、無機絶縁膜の材料、例えば窒化シリコンを備える。このマスク71は、改質半導体層50を形成するための開口72を第3エリアA3上に有する。図9の(a)部及び(b)部に示されるように、マスク71を用いてp型ドーパントの熱拡散を行う。開口72を通して、第3エリアA3上の第1半導体層41、第3半導体層43、及び第2半導体層42内に、例えばp型ドーパント(具体的には、例えばZn)を熱拡散し、このZn拡散D1によって、第1半導体層41から改質半導体層50を形成する。Zn拡散の深さは、第1半導体層41を貫通して第3エリアA3の基板10に達する。Zn拡散後に、マスク71を除去する。マスク71が例えば窒化シリコン製であるときには、マスク71の除去にバッファードフッ酸を用いる。
【0043】
マスク71を除去した後に、図10の(a)部及び(b)部に示されるように、バットジョイントメサ4を第1エリアA1上に形成する。本実施例では、例えば、バットジョイントメサ4を作製するためのマスク47を形成する。マスク47を用いたウェットエッチング法によって、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上の半導体領域2内の第2半導体層42、第3半導体層43及びコンタクト層46を除去して、バットジョイントメサ4を形成する。バットジョイントメサ4は、第1半導体層41上に設けられた第2半導体層42、第3半導体層43及びコンタクト層46を含む。バットジョイントメサ4では、コンタクト層46上に形成されたマスク47は、引き続き行われる再成長のために除去されない。ウェットエッチング法に用いられるエッチャントは、例えば、少なくとも塩酸と酢酸とを含む塩酸系のエッチャントや、少なくとも硫酸と過酸化水素水とを含む硫酸系のエッチャントなどであることができる。マスク47は、例えば窒化シリコンを備える。
【0044】
上記のように、第1半導体層41の第1導電型に対して逆導電型の第2導電型ドーパントの添加によって、改質半導体層50は、第1半導体層41と逆の導電性を有するように形成される。この結果、改質半導体層50と第2エリアA2上の第1半導体層41とによる第1のpn接合50Eが形成され、また、改質半導体層50と第4エリアA4上の第1半導体層41とによる第2のpn接合50Fが形成される。この第1のpn接合50E及び第2のpn接合50Fの形成によって、第2エリアA2上の第1半導体層41から第4エリアA4上の第1半導体層41への電気的経路が形成されない。
【0045】
(水素の添加を用いる形成工程)
水素の添加により改質半導体層50を形成する工程3−2を説明する。図11の(a)部及び(b)部に示されるように、第1エリアA1上にバットジョイントメサ4が形成される。具体的に、例えば、バットジョイントメサ4を作製するためのマスク47を形成し、このマスク47を用いたウェットエッチングによって、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上において、半導体領域2内の第2半導体層42、第3半導体層43及びコンタクト層46を除去する。バットジョイントメサ4では、コンタクト層46上のマスク47は、引き続き行われる再成長のために除去されない。
【0046】
バットジョイントメサ4を形成した後に、図12の(a)部及び(b)部に示されるように、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上の半導体領域2の第1半導体層41、及び第1エリアA1上のバットジョイントメサ4を覆うように水素イオン注入のためのマスク73を形成する。このマスク73は、例えばレジストを含み、第3エリアA3上の改質半導体層50を形成するための領域上に開口74を有する。開口74は、例えば、長方形や正方形の形状を有し、図13の(a)部及び(b)部に示されるように、開口74を通して水素のイオン注入IPを行って、第1半導体層41から改質半導体層50を形成する。注入されたイオンの一部は基板10に達するので、第3エリアA3上の第1半導体層41は、その全域において改質される。イオン注入の具体的条件の一例は、以下の通りでる。
イオン種:プロトン。
注入エネルギー:80keV〜200keV。
温度:350℃〜400℃。
注入量:1×1015cm−2〜3×1015cm−2
【0047】
上記の説明のように、第3エリアA3上の改質半導体層50は水素のイオン注入によって第1半導体層41から改質されるので、改質半導体層50の水素濃度が、第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41又は改質前の第1半導体層41の水素濃度より多くなり、また、改質半導体層50の格子欠陥の密度が、第1半導体層41の格子欠陥の密度に比べて多くなる。この水素導入に関連する結晶の乱れにより、改質半導体層50の電気抵抗率は、第2エリアA2及び第4エリアA4上の第1半導体層41の電気抵抗率に比べて高くなる。高い電気抵抗率の改質半導体層50は、第2エリアA2上の第1半導体層41と第4エリアA4の第1半導体層41との間に電気的な障壁を形成する。第1半導体層41の導電型(p型又はn型)に関係なく、その第1半導体層41内の結晶欠陥が、水素のイオン注入によって形成されることができる。
【0048】
以上、工程3−1の「第2導電型ドーパントの添加を用いる形成工程」、及び/又は工程3−2の「水素の添加を用いる形成工程」によって、改質半導体層50とバットジョイントメサ4とが形成される。
【0049】
この改質半導体層50とバットジョイントメサ4との形成後に、図14の(a)部及び(b)部に示されるように、マスク47を除去することなく再成長を行う。この再成長によって、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上に、それぞれ、第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、第4半導体積層部40S、及び第5半導体積層部40Tを形成する。本実施例では、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上に、i型の半導体層が成長される。第1半導体積層部40Pは、第1エリアA1上のバットジョイントメサ4を含む。第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、第4半導体積層部40S、及び第5半導体積層部40Tは、それぞれ、第2エリアA2、第3エリアA3、第4エリアA4及び第5エリアA5上に形成される。第2半導体積層部40Qは、第1半導体層41、コア層44のための第4半導体層44a、及び上部クラッド層45のための第5半導体層45aを含む。第3半導体積層部40Rは、改質半導体層50、第4半導体層44a及び第5半導体層45aを含み、第4半導体積層部40Sは、第1半導体層41、第4半導体層44a、及び第5半導体層45aを含む。第5半導体積層部40Tは、第1半導体層41、第4半導体層44a、及び第5半導体層45aを含む。マスク47は、第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、第4半導体積層部40S、及び第5半導体積層部40Tのための再成長の後に、例えばバッファードフッ酸を用いて除去される。
【0050】
第4半導体層44a及び第5半導体層45aに含まれる材料の一例は、以下の通りである。
半導体層の名称、 材料。
第4半導体層44a:バンドギャップ波長1.05μmのアンドープInGaAsP層。
第5半導体層45a:アンドープInP層。
【0051】
(フォトダイオードメサ及び導波路メサの形成)
工程S4では、図15の(a)部及び(b)部に示されるように、第1半導体積層部40P〜第5半導体積層部40T上に、フォトダイオードメサ20Mの形状、及び導波路メサ30の形状を規定するマスク75を形成する。マスク75は、例えば、SiNを備える。このマスク75を用いたエッチングにより、第1半導体積層部40P、第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、第4半導体積層部40S、及び第5半導体積層部40Tまでを加工して、フォトダイオード20及び光導波路のためのメサ構造を形成する。第1半導体積層部40Pから複数のフォトダイオードメサ20Mが形成されると共に、第2半導体積層部40Q、第3半導体積層部40R、及び第4半導体積層部40Sから導波路メサ30が形成される。このエッチングでは、第4半導体層44a、第5半導体層45a、及び第1半導体層41の一部がエッチングされる。
【0052】
(素子分離メサの形成)
工程S5では、図16の(a)部及び(b)部に示されるように、複数のフォトダイオードメサ20M及び導波路メサ30の周囲にある第1半導体層41を除去する。具体的には、エッチングのためのマスク75を除去した後に、マスク76を形成する。マスク76は、例えばSiNを備え、フォトダイオードメサ20M及び導波路メサ30を覆う。このマスク76を用いたエッチングによって、第1半導体層41及び改質半導体層50と基板10とが除去される。第1半導体層41及び改質半導体層50のエッチングによって、図4に示したように、フォトダイオード20間における基板10の主面10Aが露出されて、フォトダイオード20のための素子分離メサが形成される。
【0053】
(絶縁膜及び電極の形成、チップの作製)
工程S6では、図17の(a)部及び(b)部に示されるように、絶縁膜22と、アノード電極51p及びカソード電極51nとを形成する。絶縁膜22は、例えばSi系無機絶縁膜を備え、より具体的には、例えばSiN膜、SiO膜、及びSiON膜からなる。本実施例では、絶縁膜22にはSiN膜が用いられ、このSiN膜は、例えばプラズマCVD法によって形成される。SiN膜の厚さは、例えば200nmである。本実施例では、フォトリソグラフィー技術及び蒸着を用いたリフトオフプロセスによってアノード電極51p及びカソード電極51nの各々が形成される。アノード電極51pは、例えば、AuZn又はPt合金を含み、カソード電極51nは、例えば、AuGe又はAuGeNi合金を含む。これらの工程により、半導体光素子1のための基板生産物が作製される。基板生産物がダイシング及び/又はヘキ開によって半導体チップに分割されて、半導体光素子1の作製が完了する。
【0054】
図18は、第1実施形態に係る半導体光素子における半導体層の構成の一例を示す図であり、第1半導体層41が例えばn型の導電性を示すときの半導体層の構成を示している。この半導体層の具体的な構成例を記載すると、以下の通りである。
基板10:Feドープ半絶縁性InP基板。
第1半導体層41:Siドープn型InP層。
改質半導体層50:p型ドーパント添加及び/又は水素のイオン注入のp型InP層。
コア層44:アンドープi型InGaAsP層。
上部クラッド層45:アンドープi型InP層。
第3半導体層43:アンドープi型GaInAs層。
第2半導体層42:Znドープp型InP層。
【0055】
第1半導体層41が、例えばp型の導電性を示すとき、半導体層の構成の一例では、上記の「n型」が「p型」に読み替えられ、また、「p型」が「n型」に読み替えられる。また、第1半導体層41の「Siドープ」が「Znドープ」に読み替えられ、第2半導体層42の「Znドープ」が「Siドープ」に読み替えられる。
【0056】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置及び詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲及びその精神の範囲から来る全ての修正及び変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本実施形態によれば、複数のフォトダイオード間の絶縁性を高めることを可能にする半導体光素子を作製する方法を提供することができる。また、相互の絶縁性を高めた複数のフォトダイオードを有する半導体光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…半導体光素子、2…半導体領域、3…半導体積層、10…基板、20…フォトダイオード、30…導波路メサ、40A…第1半導体積層、40B…第2半導体積層、40C…第3半導体積層、40D…第4半導体積層、40P…第1半導体積層部、40Q…第2半導体積層部、40R…第3半導体積層部、40S…第4半導体積層部、41…第1半導体層、42…第2半導体層、43…第3半導体層、43a…光吸収層、44…コア層、44a…第4半導体層、45…上部クラッド層、45a…第5半導体層、50…改質半導体層、50E…第1のpn接合、50F…第2のpn接合、60…多モード干渉器、75…マスク、A1…第1エリア、A2…第2エリア、A3…第3エリア、A4…第4エリア、Ax1…導波路軸。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
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図16
図17
図18