(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6421902
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】半導体基板に撥アルコール性を付与する表面処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20181105BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
H01L21/304 647B
C09K3/00 R
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-535073(P2018-535073)
(86)(22)【出願日】2018年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2018010375
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2017-104411(P2017-104411)
(32)【優先日】2017年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】プトラ プリアンガ プルダナ
【審査官】
鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−16699(JP,A)
【文献】
特開2005−333015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)〜(6)で表される界面活性剤またはその塩から選択される2種以上をそれぞれ0.01〜15質量%と水を含むことを特徴とする液体組成物と半導体基板とを接触させ、半導体基板に撥アルコール性を付与する半導体基板の表面処理方法。
【化1】
(式(1)〜(6)中、
R
Fは、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基及び炭素数2〜10のアルキルエーテル基の水素をフッ素に置き換えた置換基からなる群より選択される。
R
1は、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン、炭素数1〜6のアルケニレン、炭素数1〜6のアルキニレン、アリーレン、炭素数1〜6のアルキレンエーテル、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
R
HPは、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される。
R
2、R
3及びR
4は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、NR
5R
6、N
+O
−R
5R
6、若しくはN
+R
5R
6R
7X
−に置換した置換基からなる群より選択される。
R
5、R
6及びR
7は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
X
−は、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン及びトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される。
aは3以上20以下の整数を示す。)
【請求項2】
前記界面活性剤が炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含有しない請求項1に記載の半導体基板の表面処理方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が親水基に窒素を含む化合物を含有する請求項1又は2に記載の半導体基板の表面処理方法。
【請求項4】
前記撥アルコール性が撥イソプロピルアルコール性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体基板の表面処理方法。
【請求項5】
前記半導体基板がシリコン、アルミニウム、アルミニウム銅合金、タンタル、ニッケル、タングステン、コバルト、モリブデン、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、白金、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、並びにこれらの酸化物、窒化物及び炭化物からなる群より選ばれる1種以上を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体基板の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に撥アルコール性を付与する半導体基板の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程では、ドライエッチング処理により発生した残渣物を剥離液および洗浄液を用いて完全に除去する工程があり、当該剥離液および洗浄液を表面から取り除くために、溶媒を用いたリンスが行われる。この際、リンスに用いられた溶媒の毛細管力によりパターンが倒壊する問題があった。
このパターン倒壊問題を解決する方法として、水よりも表面張力の小さいアルコールをリンス溶媒として用いる手法や、更にパターン表面を疎水化や疎油化し、パターンとリンスに用いる溶媒の接触角を90度に近づけることによりリンス時のパターン倒壊を防止する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3では、半導体基板表面にシラン系化合物を用いて撥水性保護膜を形成してから純水を用いて半導体基板をリンスし、乾燥させる工程を有する半導体素子の表面処理方法が記載されている。しかし、開示された撥水性保護膜では半導体基板上に形成された各種材料とアルコール類の接触角を十分に大きくすることができず、アルコール類には使用できない。
特許文献4には、フッ化炭素基を有するシラン系化合物、酸触媒、液状または固形状媒体を有する表面処理剤が記載されている。しかし、開示された撥水性保護膜では半導体基板上に形成された各種材料とアルコール類の接触角を十分に大きくすることができず、アルコール類には使用できない。
特許文献5には、撥イソプロピルアルコール(以下、IPA)性能を有する表面処理剤として炭素数が6の直鎖状のパーフルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルと炭素数が6の直鎖状のパーフルオロアルキル基を有するメタクリル酸エステルとの共重合体が記載されている。しかし、表面処理剤を乾燥させることなくIPAを用いてリンス処理される場合は、半導体基板上の該表面処理剤が硬化することなく、流出してしまうため撥油性を持つ膜を形成できないという問題があり、一方、表面処理剤を乾燥させると半導体基板上に厚い膜が形成されるため半導体としての本来の機能が発揮されない。
特許文献6には、フッ素原子を含む繰り返し単位を有するフッ素系ポリマーを含有する処理液で前処理をした後に有機溶媒を含むリンス液でリンスする方法が記載されている。しかし、フッ素系ポリマーを含有する処理液は成分がポリマーであるためサイズが大きく、微小構造が要求される現在の半導体技術に適応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−114414号公報
【特許文献2】特開2014−197638号公報
【特許文献3】特開2014−197571号公報
【特許文献4】特開平9−31449号公報
【特許文献5】国際公開第2010/113646号
【特許文献6】国際公開第2017/010321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、半導体製造工程のリンス時におけるパターン倒壊を抑制するために、撥アルコール性を半導体基板に与える表面処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定組成の液体組成物を用いて半導体基板を処理することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1] 下記式(1)から(6)で表される界面活性剤またはその塩から選択される2種以上をそれぞれ0.01〜15質量%と水を含むことを特徴とする液体組成物と半導体基板とを接触させ、半導体基板に撥アルコール性を付与する半導体基板の表面処理方法。
【化1】
(式(1)〜(6)中、
R
Fは、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基及び炭素数2〜10のアルキルエーテル基の水素をフッ素に置き換えた置換基からなる群より選択される。
R
1は、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン、炭素数1〜6のアルケニレン、炭素数1〜6のアルキニレン、アリーレン、炭素数1〜6のアルキレンエーテル、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
R
HPは、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される。
R
2、R
3及びR
4は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、NR
5R
6、N
+O
−R
5R
6、若しくはN
+R
5R
6R
7X
−に置換した置換基からなる群より選択される。
R
5、R
6及びR
7は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
X
−は、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン及びトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される。
aは3以上20以下の整数を示す。)
【0008】
[2] 前記界面活性剤が炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含有しない[1]に記載の半導体基板の表面処理方法。
【0009】
[3] 前記界面活性剤が親水基に窒素を含む化合物を含有する[1]又は[2]に記載の半導体基板の表面処理方法。
【0010】
[4] 前記撥アルコール性が撥イソプロピルアルコール性である、[1]〜[3]のいずれかに記載の半導体基板の表面処理方法。
【0011】
[5] 前記半導体基板がシリコン、アルミニウム、アルミニウム銅合金、タンタル、ニッケル、タングステン、コバルト、モリブデン、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、白金、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、並びにこれらの酸化物、窒化物及び炭化物からなる群より選ばれる1種以上を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の半導体基板の表面処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面処理方法を使用することにより、半導体素子の製造工程において、微細化された各種材料パターンの倒壊を防止することが可能となり、高精度、高品質の半導体素子を歩留まりよく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表面処理方法に用いられる液体組成物は特定の界面活性剤及び水を含有する。以下これらについて詳細に説明する。
【0014】
[界面活性剤]
本発明で使用される界面活性剤は、下記式(1)〜(6)で表される化合物及びその塩からなる群より選ばれる2以上の化合物を含む。
【化2】
(式(1)〜(6)中、
R
Fは、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、アリール基及び炭素数2〜10のアルキルエーテル基の水素をフッ素に置き換えた置換基からなる群より選択される。
R
1は、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン、炭素数1〜6のアルケニレン、炭素数1〜6のアルキニレン、アリーレン、炭素数1〜6のアルキレンエーテル、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
R
HPは、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される。
R
2、R
3及びR
4は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1、及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基、NR
5R
6、N
+O
−R
5R
6、若しくはN
+R
5R
6R
7X
−に置換した置換基からなる群より選択される。
R
5、R
6及びR
7は、水素または炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜6のアルキルエーテル基、R
FR
1及びこれらの基の水素をヒドロキシル基、カルボキシル基若しくはアミノ基に置換した置換基からなる群より選択される。
X
−は、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、メタン硫酸イオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、フルオロホウ酸イオン及びトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される。
aは3以上20以下の整数を示す。)
【0015】
本発明に使用される界面活性剤の具体例としては、
C
9F
21OH、C
8F
19OH、C
7F
17OH、C
6F
15OH、C
5F
13OH、C
4F
11OH、C
3F
9OH、C
2F
7OH、C
9F
21SO
3H、C
8F
19SO
3H、C
7F
17SO
3H、C
6F
15SO
3H、C
5F
13SO
3H、C
4F
11SO
3H、C
3F
9SO
3H、C
2F
7SO
3H、 C
9F
21COOH、C
8F
19COOH、C
7F
17COOH、C
6F
15COOH、C
5F
13COOH、C
4F
11COOH、C
3F
9COOH、C
2F
7COOH、C
9F
21CH
2OH、C
8F
19CH
2OH、C
7F
17CH
2OH、C
6F
15CH
2OH、C
5F
13CH
2OH、C
4F
11CH
2OH、C
3F
9CH
2OH、C
2F
7CH
2OH、C
9F
21OPO(OH)
2、C
8F
19OPO(OH)
2、C
7F
17OPO(OH)
2、C
6F
15OPO(OH)
2、C
5F
13OPO(OH)
2、C
4F
11OPO(OH)
2、C
3F
9OPO(OH)
2、C
2F
7OPO(OH)
2、 C
9F
21NH
2、C
8F
19NH
2、C
7F
17NH
2、C
6F
15NH
2、C
5F
13NH
2、C
4F
11NH
2、C
3F
9NH
2、C
2F
7NH
2、C
9F
21CH
2NH
2、C
8F
19CH
2NH
2、C
7F
17CH
2NH
2、C
6F
15CH
2NH
2、C
5F
13CH
2NH
2、C
4F
11CH
2NH
2、C
3F
9CH
2NH
2、C
2F
7CH
2NH
2、[C
6F
15(CH
2)
2OCH
2CH(OH)CH
2O]
2PO(OH)、(C
6F
15CH
2CH(OH)CH
2)
2N(CH
2)
3N
+(CH
3)(CH
2CH
3)
2F
−、(C
6F
15CH
2CH(OH)CH
2)
2N(CH
2)
3N
+(CH
3)(CH
2CH
3)
2Cl
−、(C
6F
15CH
2CH(OH)CH
2)
2N(CH
2)
3N
+(CH
3)(CH
2CH
3)
2Br
−、(C
6F
15CH
2CH(OH)CH
2)
2N(CH
2)
3N
+(CH
3)(CH
2CH
3)
2I
−、C
6F
15CH
2CH(OH)CH
2NH(CH
2)
3N
+(CH
2CH
3)
2O
−、及びC
6F
15C=C(CF
3)(OCH
2CH
2)
aOCH
3が挙げられる。
これらの中で炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を含有しない化合物、及び親水基に窒素を含む化合物が好ましい。
これらの化合物は基板の表面を好適に修飾し、高い撥IPA性能を発揮させることができる。
【0016】
また、式(1)で表される化合物の中でも、CF
3(CF
2)
6CH
2OH、(CF
3)
2CH
2OH、CF
3(CF
2)
7SO
3H、及びCF
3(CF
2)
5COOHが好ましく、式(2)で表される化合物の中でも、[CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2OCH
2CH(OH)CH
2O]
2PO(OH)が好ましく、式(3)で表される化合物の中でも、CF
3(CF
2)
4CH
2NH
2及び(CF
3(CF
2)
5CH
2CH(OH)CH
2)
2N(CH
2)
3N
+(CH
3)(CH
2CH
3)
2I
−が好ましく、式(4)で表される化合物の中でも、CF
3(CF
2)
5CH
2CH(OH)CH
2NH(CH
2)
3N
+(CH
2CH
3)
2O
−が好ましく、式(5)で表される化合物の中でも、CF
3(CF
2)
5CH
2CH(OH)CH
2N
+H(CH
2COO
−)(CH
2)
3N(CH
2CH
3)
2が好ましく、式(6)で表される化合物の中でも、((CF
3)
2CF)
2C=C(CF
3)(OCH
2CH
2)
aOCH
3が好ましい。
【0017】
液体組成物中に含まれる1種類あたりの界面活性剤の含有量は、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。この範囲にあることで高い撥IPA性能を保持しつつ、溶液の均一性を確保することができる。本発明では、液体組成物中に式(1)〜(6)で表される界面活性剤またはその塩から選択される2種以上を含むため、2種の界面活性剤を含む場合には、界面活性剤の合計含有量は0.02〜30質量%となり、3種の界面活性剤を含む場合には、界面活性剤の合計含有量は0.03〜45質量%となる。
【0018】
[水]
本発明で使用される水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水および超純水が好ましい。
液体組成物中の水の含有量は5〜99.98質量%の範囲であり、8〜99.95質量%が好ましく、特に10〜99.9質量%が好ましい。
【0019】
[その他の成分]
本発明における液体組成物には、この他、相分離や白濁を防ぐために、有機溶剤を加えても良い。また、本発明の効果を損なわない範囲で従来から半導体用液体組成物に使用されている添加剤を配合してもよい。例えば、酸、アルカリ、キレート剤及び消泡剤等を添加することができる。
【0020】
[液体組成物の調製方法]
本発明における液体組成物は、上記界面活性剤、水、及び必要に応じてその他の成分を均一に混合することにより調製することができる。混合方法は限定されず一般的な混合方法を任意に用いることができる。
【0021】
[半導体基板の表面処理方法]
本発明における液体組成物を用いて、半導体基板に撥アルコール性膜を形成することができる。撥アルコール性の対象となるアルコールに制限はないが、メタノール、エタノール、1−ブタノール、1−プロパノール及びIPAが挙げられる。表面張力が小さく、また半導体洗浄に用いることができる清浄な製品が入手しやすいため、この中でIPAが好ましい。
【0022】
本発明が対象とする半導体基板に制限はないが、シリコン、アルミニウム、アルミニウム銅合金、タンタル、ニッケル、タングステン、コバルト、モリブデン、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、白金、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、及びこれらの酸化物、窒化物、及び炭化物が具体例として挙げられる。これらの2種以上を含有する基板であってもよい。
【0023】
本発明における液体組成物を半導体基板と接触させる方法は特に制限されない。例えば、半導体基板を液体組成物に浸漬させる方法や、滴下やスプレーなどにより液体組成物と接触させる方法を採用することができる。
【0024】
本発明における液体組成物を使用する温度は、通常20〜80℃であり、好ましくは25〜70℃の範囲であり、使用される半導体基板により適宜選択される。
本発明における液体組成物と接触させる時間は、通常0.3〜20分であり、好ましくは0.5〜10分の範囲であり、使用される半導体基板により適宜選択される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の効果を奏する限りにおいて実施形態を適宜変更することができる。
【0026】
<接触角測定機器>
接触角の測定は、協和界面科学株式会社製、接触角測定装置 DM701型を用いた。
【0027】
<実験操作>
実施例、比較例に共通する実験操作を以下に示す。
Si基板上に各種素材(5000Åの酸化シリコン、3000Åの窒化シリコン、1000Åの酸化アルミニウム、1000Åのアルミニウム銅合金、1000Åのタンタル、5460Åのニッケル、1000Åの窒化タンタル、3000Åの酸化タングステン、2200Åのタングステン、1000Åのコバルト、1000Åのモリブデン、または2000Åの窒化チタン)を製膜したAdvantec社製ウェハを、所定の液体組成物を用いて、所定の浸漬温度及び浸漬時間で処理した。その後、IPAに浸漬することにより、余分な液体組成物をリンスした。表面に残ったIPAは乾燥窒素ガスを吹き付けることにより除いた。このように表面処理を行った後の基板材料とIPAの接触角を測定し、30度以上を合格とした。
【0028】
[実施例1〜38]
表2の液体組成物に表3の条件で基板材料の処理を行った。全てIPAとの接触角が30度以上であり、撥アルコール性を有していた。
【0029】
[比較例1〜10]
表5の5A〜5Jの液体組成物に表6の条件で基板材料の処理を行った。全てIPAとの接触角が30度未満であった。このことから、界面活性剤を1種類しか含まない液体組成物に浸漬した後の基板材料は、撥アルコール性を示さないことが分かった。
【0030】
[比較例11〜13]
表5の5K〜5Mの液体組成物に表6の条件で基板材料の処理を行った。全てIPAとの接触角が30度未満であった。このことから、界面活性剤の1種類がパーフルオロアルキル基を含まない(式(1)〜(6)のいずれも満たさない)液体組成物に浸漬した後の基板材料は、撥アルコール性を示さないことが分かった。
【0031】
[比較例14〜28]
表7の7A、7B、7C、及び7Dの液体組成物に表8の条件で基板材料の処理を行った。全てIPAとの接触角が30度未満であった。液体組成物に浸漬していない基板材料と水との接触角は4度であった。当該液体組成物に浸漬後の基板材料と水との接触角は30度以上であることから液体組成物による表面処理には成功していると判断できる。このことから、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載のアルキル基を有するシラン系化合物(式(1)〜(6)のいずれも満たさない)に浸漬した後の基板材料は、撥アルコール性を示さないことが分かった。
【0032】
[比較例29〜36]
特許文献4に記載の、含フッ素アルキル基を有するシラン系化合物と本発明との効果の比較のため実験を行った。特許文献4に記載の発明は、含フッ素アルキル基を有するシラン系化合物と酸触媒のどちらか一方または両方のマイクロカプセル化を行い混合した後、マイクロカプセルを破壊しながら基材表面に塗布した。この操作により、配合から塗布までの期間のシラン系化合物の分解を防ぐことができる。そのため、マイクロカプセル化を行わずとも、シラン系化合物と酸触媒を混合し、速やかに基板材料を処理することで、特許文献4に記載の発明の効果を再現できると考えた。表7の7Eの液体組成物(式(1)〜(6)で表される化合物を2種以上含まない)で表面処理した後の基板材料はIPAとの接触角が30度未満であり、処理後の基板材料は全て撥アルコール性を有していなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
[比較例37〜40]
密閉容器に、CH
2=CH−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
6−Fを9.5質量%、CH
2=C(CH
3)−COO−(CH
2)
2−(CF
2)
6−Fを40質量%、CH
2=CH−COO−C
2H
4O−CO−C
2H
4−COOHを0.5質量%、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを0.17質量%、m−キシレンヘキサフルオリドを49.83質量%仕込み、70℃で18時間反応を行い、重合体9Aを得た。重合体9Aを15質量%及びm−キシレンヘキサフルオリド85質量%を混合して液体組成物9B(式(1)〜(6)で表される化合物を2種以上含まない)とした。表9に示す条件で液体組成物9Bで表面処理した後の基板材料はIPAとの接触角が30度未満であった。このことから、特許文献5に記載の表面処理剤は、撥アルコール性を示さないことが分かった。
【0042】
【表9】
【要約】
本発明によれば、下記式(1)から(6)で表される界面活性剤またはその塩の2種以上をそれぞれ0.01〜15質量%と水を含むことを特徴とする液体組成物と半導体基板とを接触させ、半導体基板に撥アルコール性を付与する半導体基板の表面処理方法を提供することができる。
【化1】
(式(1)〜(6)中、R
Fは、炭素数2〜10のアルキル基などの水素をフッ素に置き換えた化合物からなる群より選択される。R
1は、共有結合、炭素数1〜6のアルキレンなどからなる群より選択される。R
HPは、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される。R
2、R
3及びR
4は、水素または炭素数1〜6のアルキル基などからなる群より選択される。R
5、R
6及びR
7は、水素または炭素数1〜6のアルキル基などからなる群より選択される。X
−は、水酸化物イオンなどからなる群より選択される。aは3以上20以下の整数を示す。)