【実施例】
【0039】
<実施例1>
化合物A1−A26の製造
<実施例1−1>(3aS,4R,5aR,8aS,8bS)-2,2,7,7-tetramethylhexahydro[1,3]dioxolo[4,5-e][1,3]benzodioxol-4-ol(化合物B1)の合成
【化6】
1.50g(9.15mmol)の(+)−プロト−クエルシトールをN、N−ジメチルホルムアミド(45mL)に溶解させ、これに2、2−ジメトキシプロパン(11mL、91mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(435mg、2.29mmol)を加えた。室温で20時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウムを用いて中和した。不溶物をろ過後、ろ液を減圧濃縮し、残渣に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を濃縮し、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)によって精製し、2.00gの化合物B1を得た(90%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):1.34(s,3H),1.38(s,2×3H),1.46(s,3H),1.86(ddd,J=4.8,11.7,12.8Hz,1H),2.07(dddd,J=1.0,3.6,4.8,12.8Hz,1H),3.50(dd,J=8.4,10.0Hz,1H),3.74(ddd,J=4.8,10.0,11.7Hz,1H),4.19−4.27(m,3H)、HR−ESI−MS:267.1202(C
12H
20O
5Na
+,[M+Na]
+,計算値:267.1203)
【0040】
<実施例1−2>
(3aR,4R,5aR,8aS,8bR)-2,2,7,7-tetramethylhexahydro[1,3]dioxolo[4,5-e][1,3]benzodioxol-4-yl methanesulfonate(化合物B2)の合成
【化7】
(+)−プロト−クエルシトールから調製した化合物B1(597mg,2.44mmol)とトリエチルアミン(1.35mL,9.76mmol)を6mLのジクロロメタンに溶解させ、氷浴中で冷却しながら塩化メシル(0.233mL,3.06mmol)/6mLジクロロメタン溶液を加えた。室温に戻しながら2時間攪拌した後、メタノール20mLを加えて反応を停止させた。溶媒を減圧留去し、残渣に水を加え、酢酸エチルで3回抽出した後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1→4/1)で精製し、762mgの化合物B2を得た(97%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):1.36(s,3H),1.40(s,2×3H),1.50(s,3H),2.13−2.22(m,1H),2.25−2.32(m,1H),3.14(s,3H),3.65(ddd,J=2.4,8.0,10.1Hz,1H),3.77(dddd,J=2.4,6.2,10.4,10.4Hz,1H),4.34−4.38(m,1H),4.43(ddd,J=2.4,6.2,6.2,1H)5.04−5.09(m,1H)、HR−ESI−MS:345.0971(C
13H
22O
7NaS
+,[M+Na]
+,計算値:345.0978)
【0041】
<実施例1−3>(3aR,5aS,8aS,8bS)-2,2,7,7-tetramethyl-3a,5a,8a,8b-tetrahydro[1,3]dioxolo[4,5-e][1,3]benzodioxole(化合物B3)の合成
【化8】
化合物B2を500mg(1.55mmol)取り、7mLのトルエン及び1.18mLのジアザビシクロウンデセン(7.75mmol)を加えた。8時間加熱還流し、室温まで冷却した後、溶媒を減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=95/5)によって精製し、267mgの化合物B3を得た(76%)。
1H−NMR(400MHz/CDCl
3)δ(ppm):1.35(s,3H),1.42(s,3H),1.43(s,3H),1.49(s,3H),3.51(dd,J=9.0,9.0Hz),4.03(br d,J=8.9Hz,1H),4.36(dd,J=7.7,9.2Hz,1H),4.79(br d,J=7.6Hz,1H),5.78(ddd,J=2.6,2.6,9.9Hz,1H),6.16(ddd,J=1.5,1.5,9.9,1H)、HR−ESI−MS:249.1095(C
12H
18O
4Na
+,[M+Na]
+,計算値:249.1097)
【0042】
<実施例1−4>(3aR,4S,5R,7aS)-2,2-dimethyl-3a,4,5,7a-tetrahydro-1,3-benzodioxole-4,5-diol(化合物B4)の合成
【化9】
化合物B3を561mg(2.48mmol)取り、25mLのメタノールに溶解し、氷浴中で冷却しながらピリジニウム−パラ−トルエンスルホナート(62mg,0.25mmol)を加えた。4℃で15時間放置した後、トリエチルアミンで中和し、溶液を減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/2)によって精製し、421mgの化合物B4を得た(91%)。
C
9H
14O
4 MW:186.1(計算値)、
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):1.36(s,3H),1.46(s,3H),3.39(dd,J=9.2,9.2Hz,1H),3.92−3.95(m,1H),4.02(dd,J=6.4,9.2Hz,1H),4.63−4.66(m,1H),5.79−5.80(m,2H)、HR−ESI−MS:209.0786(C
9H
14O
4Na
+,[M+Na]
+,計算値:209.0784)
【0043】
<実施例1−5>(3aS,5aS,6aS,6bS)-2,2-dimethyl-3a,5a,6a,6b-tetrahydrooxireno[e][1,3]benzodioxole(化合物B5)の合成
【化10】
マーティン−スルフランを用いる方法:化合物B4を669mg(3.59mmol)取り、これを36mLのジクロロメタンに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、2.90gのマーティン−スルフラン(4.31mmol)を18mLのジクロロメタンに溶解させた溶液を加えた。室温で30分間攪拌した後、反応溶液を20%水酸化カリウム水溶液で洗浄した。有機相を取り、洗浄後の水酸化カリウム水溶液をさらに50mLのクロロホルムで抽出した有機相と合わせた。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)によって精製し、418mgの化合物B5を得た(69%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):1.34(s,3H),1.36(s,3H),3.31−3.33(1H),3.49(dd,J=1.8,3.8Hz,1H),4.39(ddd,J=2.0,2.0,6.8Hz,1H),4.76(ddd,J=1.6,1.6,6.8Hz,1H),5.74(br d,J=10.4,1H)6.05(ddd,J=1.6,4.0,10.4Hz,1H)、HR−ESI−MS:191.0676(C
9H
12O
3Na
+,[M+Na]
+,計算値:191.0679)
【0044】
光延試薬を用いる方法:化合物B4を895mg(4.81mmol)取り、これを24mLのTHFに溶解し、氷浴中で冷却しながら光延反応試薬アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.89mL,9.62mmol)及びトリフェニルホスフィン(2.52g,9.62mmol)を加えた。室温に戻しながら24時間攪拌した後、再び氷浴中で冷却しながらアゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.95mL,4.81mmol)を加えた。溶液を100mLの酢酸エチルで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄した。有機相を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)によって精製し、477mgの化合物B5を得た(59%)。
【0045】
<実施例1−6>
化合物A1−A23の合成
【化11】
化合物B5に所望のアミンを求核付加させB6を製造し、その後塩酸によって処理すると、化合物A1−A23が製造できる。以下に具体例として、化合物A1,A10,A16の製造を例示する。
【0046】
・化合物A1の合成
【化12】
化合物B5(211mg,1.26mmol)、n−オクチルアミン(624μL,3.77mmol)、アセトニトリル12mLをガラス製のアンプルに入れ、封管した。60℃に加温しながら2日間静置した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=99/1→98/2)によって精製し、目的物が含まれる画分を減圧濃縮した。得られた残渣に1モル塩酸水溶液(10mL)/テトラヒドロフラン(10mL)の混合溶媒を加え、室温で2時間攪拌した。エタノールで共沸させながら溶媒を減圧留去し、374mgの化合物A1を得た(2工程、〜100%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):0.89(t,J=7.0Hz,3H),1.29−1.41(m,10H),1.68−1.76(m,2H),3.06−3.14(m,2H),3.60(dd,J=4.0,9.2Hz,1H),3.69(d,J=7.6Hz,1H),3.96(dd,J=7.6,9.4Hz,1H),4.25(dd,J=4.4,4.4Hz,1H),5.83(dd,J=2.2,10.2Hz,1H),6.11(ddd,J=2.2,4.8,10.2Hz,1H)、HR−ESI−MS:258.2060(C
14H
28O
3N
+,[M−Cl]
+,計
算値:258.2064)
【0047】
・化合物A10の合成
【化13】
化合物B5(30mg,0.18mmol)、2−エチルブチルアミン(70μL,0.54mmol)、アセトニトリル1.8mLをガラス製のアンプルに入れ、封管した。60℃に加温しながら3日間静置した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=99/1→97/3)によって精製し、目的物が含まれる画分を減圧濃縮した。得られた残渣に1モル塩酸水溶液(1.5mL)/テトラヒドロフラン(1.5mL)の混合溶媒を加え、室温で2時間静置した。エタノールで共沸させながら溶媒を減圧留去し、55mgの化合物A10を得た(2工程、〜100%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):0.94(t,J=7.2Hz,6H),1.40−1.50(m,4H),1.67(tt,J=6.4,6.4,1H),3.02(d,J=7.2Hz,2H),3.62(dd,J=4.0,9.2Hz,1H),3.74(d,J=7.6Hz,1H),4.00(dd,J=7.6,9.2Hz,1H),4.26(dd,J=4.4,4.4Hz,1H),5.82(dd,J=2.4,10.0Hz,1H),6.13(ddd,J=2.4,4.4,10.1Hz,1H)、HR−ESI−MS:230.1747(C
12H
24O
3N
+,[M−Cl]
+,計算値:230.1751)
【0048】
・化合物A16の合成
【化14】
化合物B5(30mg,0.18mmol)、アミノメチルシクロヘキサン(70μL,0.54mmol)、アセトニトリル1.8mLをガラス製のアンプルに入れ、封管した。60℃に加温しながら2日間静置した後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=99/1→96/4)によって精製し、目的物が含まれる画分を減圧濃縮した。得られた残渣に1モル塩酸水溶液(1.5mL)/テトラヒドロフラン(1.5mL)の混合溶媒を加え、室温で1時間攪拌した。エタノールで共沸させながら溶媒を減圧留去し、44mgの化合物A16を得た(2工程、88%)。
1H−NMR(400MHz/CD
3OD)δ(ppm):1.00−1.09(m,2H),1.18−1.38(m,3H),1.69−1.86(m,6H),2.95(d,J=7.2Hz,1H),3.61(dd,J=4.0,9.2Hz,1H),3.
71(brd,J=7.6Hz,1H),3.97(dd,J=7.6,9.2Hz,1H),4.26(dd,J=4.4,4.4Hz,1H),5.81(dd,J=2.4,10.0z,1H),6.12(ddd,J=2.0,4.8,10.3Hz,1H)、HR−ESI−MS:242.1748(C
13H
24O
3N
+,[M−Cl]
+,計算値:242.1751)
【0049】
<実施例2>
正常ヒトβ−ガラクトシダーゼに対するコンデュラミンF−4誘導体A1−A23の阻害活性
試験管内において、正常ヒトβ−ガラクトシダーゼに対する被検物質の阻害活性を測定した。具体的には、10%牛胎児血清(FBS)を含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM、和光純薬製)で培養した正常ヒト線維芽細胞を、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、0.1%Triton X−100を含む滅菌水0.1mL中に掻き取った。この溶液を遠心分離(6,000rpm、15分、4度)した後、不溶性画分を除いた上清を酵素源として使用した。緩衝液として0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)を用い、蛍光基質(4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド、シグマ社製)及び上記の酵素源を混和した溶液を被検物質(コンデュラミンF−4誘導体A1−A23及び対照物質として構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩)の存在下又は非存在下で37℃、30分間反応させ、その酵素活性を測定した。阻害活性の評価は、被検物質無添加時の酵素活性を100%とし、被検物質添加によって生じる変化を相対的に算出した。
本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体A1−A23及び上記構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩の正常ヒトβ−ガラクトシダーゼに対する酵素阻害活性測定結果を
図3に示す。
図3の阻害曲線より、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体A1−A23及び構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩の50%阻害濃度(IC
50値)を算出した(表1)。
表1より、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体の50%阻害濃度は、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩の50%阻害濃度よりも高く、すなわち阻害活性が低減していることが示されている。従って、正常ヒトβ−ガラクトシダーゼに対する本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体A1−A23の阻害活性は、構造式(2)で表される化合物よりも低減されていることが判明した。また、特に好ましい構造である化合物A16の50%阻害濃度から、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩に対しA16の阻害活性は35倍低減していることが読み取れる。
【0050】
【表1】
【0051】
<実施例3>
変異ヒトβ−ガラクトシダーゼを有する細胞に対するコンデュラミンF−4誘導体A1−A23のβ−ガラクトシダーゼ活性賦活化効果
<実施例3−1>
コンデュラミンF−4誘導体A1−A23存在下での変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R201C)導入線維芽細胞における、β−ガラクトシダーゼ活性の賦活化
変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R201C)酵素活性の測定は、β−ガラクトシダーゼ欠損マウス由来不死化線維芽細胞株(Glycoconj J 14(6):729-736.) に、それぞれヒ
ト正常β−ガラクトシダーゼ(GP8)遺伝子及びヒト変異(R201C)β−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したモデル細胞株を用い行った。被検物質(コンデュラミンF−4誘導体A1−A23及び対照物質として構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩)を含有又は含有しない培養液(10%FBS DMEM)中でモデル細胞株を4日間培養後、細胞を回収し、細胞抽出液中のβ−ガラクトシダーゼ活性を実施例2記載の方法と同様に測定した。
結果を
図4に示す。
図4より、被検物質無添加の場合の変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R201C)導入細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性と、被検物質添加時の酵素活性を比較し、被検物質の添加による酵素活性の増強度を算出した(表2)。表2より、多くのコンデュラミンF−4誘導体(被検物質A1,A3,A5,A7,A8,A10,A16,
A17,A20,A23)が変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R201C)導入細胞のβ
−ガラクトシダーゼ活性を賦活化することが明らかである。
また、
図4より構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩の変異酵素活性賦活化効果は、2μM添加時に極大となり、より高濃度の20μM添加時には賦活化効果が低下していることが読み取れる。これは濃度が高くなると賦活化効果と共に酵素活性の阻
害効果が大きくなり、見かけ上の賦活化効果が低下してしまうことによると考えられる。
一方、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体ではこのような現象は観察されず、濃度依存的に変異酵素活性の賦活化効果は増大した。中でも、コンデュラミンF−4誘導体A1、A3、A7、A8の賦活化効果の極大(20μM添加時)は、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩の賦活化効果の極大(2μM添加時)と同等程度、また、A10、A16の賦活化効果の極大(20μM添加時)は、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体の賦活化効果の極大(2μM添加時)を上回ることが示されている。特に、コンデュラミンF−4誘導体A16は0.2μM添加時、2μM添加時において、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸と同等程度の賦活化効果を示し、20μM添加時の賦活化効果は、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩(20μM添加時)よりも3.8倍上昇している。
【0052】
以上より、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体は、変異ヒトβ−ガラクトシダーゼを有する細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性を賦活化する効果を示すことから、β−ガラクトシダーゼ遺伝子の変異に起因する糖脂質代謝異常症の処置剤として有用であることが示されている。また、コンデュラミンF−4誘導体A16は、構造式(2)で表されるカルバ糖アミン誘導体塩酸塩と比較して酵素阻害活性が低減され、かつ、より高い変異酵素活性賦活化効果を示したことから、β−ガラクトシダーゼ遺伝子の変異に起因する糖脂質代謝異常症処置剤の有効成分として特に好ましい。
【0053】
【表2】
【0054】
<実施例3−2>
コンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)存在下での、変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R457Q)導入線維芽細胞における、変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ活性の賦活
化
上記の実施例で用いた変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R201C)は、201番目のアミノ酸が正常型のアルギニンからシステインに変異したものであり、若年型G
M1ガングリオシドーシスを引き起こすことが知られている(特許文献1参照)。この他のアミノ酸が変異した変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R457Q)に対する、コンデュラミンF−4誘導体(被検物質としてA16)の賦活化効果を測定した。なお、R457Qの変異は成人型G
M1ガングリオシドーシスの病因となる(特許文献1参照)。
本実施例に係る変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ賦活化効果の測定は、β−ガラクトシダーゼ欠損マウス由来不死化線維芽細胞株に、それぞれヒト正常β−ガラクトシダーゼ(GP8)遺伝子及び変異(R457Q)β−ガラクトシダーゼ遺伝子を導入したモデル細胞株を用い行った。実施例3−1と同様、モデル細胞株をそれぞれ被検物質であるコンデュラミンF−4誘導体A16の存在下又は非存在下で4日間培養後、細胞を回収し、細胞抽出液中の酵素活性を測定した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3より、コンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)の添加によって変異ヒトβ−ガラクトシダーゼ(R457Q)の酵素活性は4.9倍上昇され、有意な賦活化効果を示した。このように、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体は、前述のR201C以外の変異ヒトβ−ガラクトシダーゼを有する細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性も賦活化する効果を有する。
【0057】
<実施例4>
コンデュラミンF−4誘導体による正常ヒトβ−ガラクトシダーゼの熱安定化効果
試験管内において、コンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)による正常ヒトβ−ガラクトシダーゼの熱安定化の評価を行った。具体的には、実施例2記載の方法と同様に、正常ヒト線維芽細胞由来細胞抽出液を酵素源とし、0.1Mクエン酸緩衝液(pH7)中、被検物質の存在下又は非存在下で48℃に加温し、その後、蛍光基質を加え37℃、30分間の酵素活性を測定した。酵素活性の評価は非加温時の酵素活性を100%として算出した。結果を
図5−1、
図5−2に示す。まず、
図5−1に示したように、試験管内で48℃加温すると、正常ヒトβ−ガラクトシダーゼ活性は、20分間の加温で非加温時の約20%まで低下した。一方、0.2又は2μMのコンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)の存在下、無添加時と同様の条件で20分間加温した後、酵素活性を測定した結果、0.2μM添加時では、無添加時の1.5倍に酵素活性が上昇し、2μM添加時では、無添加時の2.6倍に酵素活性が上昇しており、有意な熱安定化作用を認めた。したがって、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体は、ヒトβ−ガラクトシダーゼを安定化させる効果を有することが明らかとなった。
【0058】
<実施例5>
コンデュラミンF−4誘導体の細胞毒性
高い酵素活性増強効果を示したコンデュラミンF−4誘導体のうち、例として被検物質A1,A3,A5,A7,A8,A10,A16,A20の細胞毒性を評価した。具体的には、実施例3−1に示した、β−ガラクトシダーゼ欠損マウス由来不死化線維芽細胞株
にヒト正常(GP8)β−ガラクトシダーゼを導入したモデル細胞を被検物質の存在下又は非存在下で1日間培養後、細胞毒性測定キット(LDH−細胞毒性テストワコー、和光純薬製)を用い、培養上清中の乳酸脱水素酵素の活性を測定した。細胞死の割合は、0.1% Triton X−100で処理した細胞の乳酸脱水素酵素活性を死細胞100%とし、割合を算出した。結果を
図6に示す。酵素活性増強効果試験で用いた投与量(20μM)において、被検物質に顕著な細胞毒性は認められなかった。また、その10培量(200μM)投与時においても、被検物質A1が若干の毒性を示した以外、その他の被検物質については顕著な毒性は見られなかった。
【0059】
<実施例6>
正常ヒトα−ガラクトシダーゼ、正常ヒトβ−グルコシダーゼ、正常ヒトヘキソサミニダーゼに対するコンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)の阻害活性
試験管内において、ヒトβ−ガラクトシダーゼ以外のヒト糖加水分解酵素、すなわち正常ヒトα−ガラクトシダーゼ、正常ヒトβ−グルコシダーゼ、正常ヒトヘキソサミニダーゼに対するコンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)の阻害活性を測定した。具体的には、実施例2記載の方法と同様に調製した培養正常ヒト線維芽細胞由来細胞抽出液を酵素源に用い、蛍光基質として、α-ガラクトシダーゼ測定に対しては4−メチルウンベ
リフェリル−α−D−ガラクトピラノシド(シグマ社製)、β−グルコシダーゼ測定に対しては4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルコピラノシド(シグマ社製)、ヘキソサミニダーゼ測定に対しては4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド(シグマ社製)を使用し、被検物質A16の存在下又は非存在下、37℃、30分間の酵素活性を測定した。阻害活性の評価は、被検物質無添加時の酵素活性を100%とし、被検物質添加によって生じる変化を相対的に評価した。
結果を
図7に示す。コンデュラミンF−4誘導体(被検物質A16)は、正常ヒトα−ガラクトシダーゼ、正常ヒトβ−グルコシダーゼ、正常ヒトヘキソサミニダーゼのいずれにも顕著な阻害活性を示さなかった。したがって、本発明中に示されるコンデュラミンF−4誘導体はヒトβ−ガラクトシダーゼに選択的に作用し、その他のヒト糖加水分解酵素には作用しないことが示された。