(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施態様例1における柱体(11)(街路灯)が基台(13)(コンクリート硬化体)に埋設されて固定されている柱体(11)の側面と柱体(11)の埋設部分近傍の基台(13)の模式図(
図1(a))と、
図1(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(13)の側面と基台(13)の断面の模式図(
図1(b))である。
【
図2】実施態様例1において、柱体(11)の基台(13)中の埋設部分を、基台(13)を掘削して露出させた状態の模式図(
図2(a))と、
図2(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図2(b))である。
【
図3】実施態様例1において、柱体(11)の劣化部分(12)を含む部分から基台(13)中の埋設部分までの柱体(11)の側面を第1の被覆樹脂材(14−1)で被覆した状態の模式図(
図3(a))と、
図3(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図3(b))である。
【
図4】実施態様例1において、第1の被覆樹脂材(14−1)の上をさらに第2の被覆樹脂材(14−2)で巻き込んで被覆した状態の模式図(
図4(a))と、
図4(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図4(b))である。
【
図5】第1の被覆樹脂材(14−1)及び2(14−2)で被覆した状態のまま、柱体(11)の基台(13)下に埋設していた部分を、再び基台(13)中に埋設して基台(13)に固定された柱体(11)の状態の模式図(
図5(a))と、
図5(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図5(b))である。
【
図6】実施態様例2における柱体(21)(道路標識支柱)が基台(23)(コンクリート硬化体)に埋設されて固定されている柱体(21)の側面と柱体(21)の埋設部分近傍の基台(23)の模式図(
図6(a))と、
図6(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(
図6(b))である。
【
図7】実施態様例2において、柱体(21)の劣化部分(22)の上方側面に、柱体(21)の管内に硬化性組成物を充填するための硬化性組成物投入孔(21−5)を設けた状態の模式図(
図7(a))と、
図7(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(
図7(b))である。
【
図8】実施態様例2において、柱体(21)の管内に、鉄筋(25−2)を設置した状態の模式図(
図8(a))と、
図8(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(
図8(b))である。
【
図9】実施態様例2において、柱体(21)の管内に、劣化部分(22)の上方まで硬化性組成物(25−3)を充填した状態の模式図(
図9(a))と、
図9(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(
図9(b))である。である。
【
図10】実施態様例2において、柱体(21)の管内に硬化性組成物(25−3)を充填した後に、硬化性組成物投入孔(21−5)を充填材投入孔封鎖用金属キャップ(25−4)で封鎖した状態の模式図(
図10(a))と、
図10(a)の破線で囲まれた部分Sの柱体(23)の側面と基台(23)の断面の模式図(
図10(b))である。
【
図11】実施態様例2において、柱体(21)の基台(23)中の埋設部分を、基台(23)を掘削して露出させた状態の模式図(
図11(a))と、
図11(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図11(b))である。
【
図12】実施態様例2において、柱体(21)の劣化部分(22)を含む部分から基台(23)中の埋設部分までの柱体(21)の側面を第1の被覆樹脂材(24)で被覆した状態の模式図(
図12(a))と、
図12(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図12(b))である。
【
図13】実施態様例2において、第2の被覆樹脂材(24−1)の上をさらに第2の被覆樹脂材(24−2)で巻き込んで被覆した状態の模式図(
図13(a))と、
図13(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図13(b))である。
【
図14】第1の被覆樹脂材(24−1)及び2(24−2)で被覆した状態のまま、柱体(21)の基台(23)下に埋設していた部分を、再び基台(23)中に埋設して基台(23)に固定された柱体(21)の状態の模式図(
図14(a))と、
図14(a)の破線で囲まれた部分Sの断面の模式図(
図14(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本発明1〕
本発明1は、柱体(11、21)の末端が基台(13、23)に埋設して前記柱体(11、21)が前記基台(13、23)に固定されている柱体(11、21)の補強工法である。
【0011】
(柱体)
本発明1が対象とする柱体(11、21)(以下、柱体(11、21)ともいう)は、柱体(11、21)の末端が基台(13、23)に埋設して固定されているものである(
図1及び5の街路灯(12)と道路標識支柱の例を示す)。 以下では、柱体(11、21)の基台(13、23)に埋設された末端を固定末端(11−3、21−3)、柱体(11、21)の基台(13、23)に埋設されていない方の末端を支持末端、柱体(11、21)の外部に露出した部分で、埋設部分の近傍の部分を根元という。
【0012】
柱体(11、21)としては、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の支柱で、支柱の支持末端側に変圧器、道路標識のような重量物や、電灯のような機能部品が設置され、その用途目的からΓ字型である場合も多く、根元に大きな負荷がかかっている柱体(11、21)が挙げられ、Γ字型である柱体(11、21)を対象とすることが好ましい。
【0013】
柱体(11、21)の材質は金属、プラスチック、セラミックス、コンクリート等が挙げられるが、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きく生じる金属を対象とすることが好ましく、金属としては鉄、ステンレス、貴金属、鉛当が挙げられるが、産業・生活基盤用に広く使用され、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きい鉄を対象とすることが好ましい。
【0014】
柱体(11、21)は、内部が中空になっていない場合も内部が中空になっている管体である場合もあるが、柱体(11、21)側面の劣化の影響がより大きい管体を対象とすることが好ましく、金属管、プラスチック管、セラミックス管、コンクリート管等を対象とすることがより好ましく、金属管を対象とすることが更に好ましく、鉄管であることが更に好ましい。
【0015】
(劣化部分)
本発明1の対象となる柱体(11、21)は側面に劣化部分(12、22)を有する。 劣化部分(12、22)は、柱体(11、21)の表面の材質が、大気中の塩;硫黄ガス;炭酸ガス等の有害ガス;硫酸等の酸;これらを含む黄砂や雨が接触することによって化学的に損傷が進行する場合や、人、自転車、車等の接触・衝突による物理的な損傷を受けた場合が挙げられる。
【0016】
柱体(11、21)の根元の側面の劣化部分(12、22)は、人、自転車、車等の接触・衝突による物理的な損傷だけでなく、柱体(11、21)の表面の材質が人、犬、猫等の排泄物が接触して進行する場合も考えられる。
【0017】
柱体(11、21)が管体の場合、劣化部分は、根元近傍に柱体(11、21)の周囲を半周する程度又はそれ以上の長さにわたり腐食され、金属外管部分(11−1.21−1)が喪失して、管内が外部と連通してしまう程度になる場合もある。
【0018】
根元に負荷のかかる柱体(11、21)の場合、柱体(11、21)の倒壊又は折損により繋がり易いとの観点から、柱体(11、21)の根元の側面の劣化部分(12、22)を対象とすることが好ましく、柱体(11、21)の側面の基台(13、23)から50cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることがより好ましく、30cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、10cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、5cm以下の高さにある劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましく、これらの高さから根元に至るまである劣化部分(12、22)を対象とすることが更に好ましい。
【0019】
(基台)
本発明1が対象とする基台(13、23)は、柱体(11、21)の固定末端(11−3、21−3)側が埋設され、柱体(11、21)を固定する。 基台(13、23)は、土で構成される大地そのもの、又は一定の型枠に充填された土で形成されたものでよく、この場合は、柱体(11、21)の固定末端(11−3、21−3)側は土に直接埋め込まれていることになる。 基台(13、23)は、硬化性樹脂組成物の硬化体又は水硬性組成物の硬化体又はその硬化体状に化粧レンガ等の歩道用敷石が敷き詰められていてよく、産業・生活基盤用の支柱では、コンクリート等の水硬性組成物の硬化体である場合が多い。
【0020】
(補修方法1)
本発明1は、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から基台(13、23)中の埋設部分までの柱体(11、21)の側面を、 被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)で被覆して、基台(13、23)に埋設して基台(13、23)に固定する柱体(11、21)の補強工法である。
【0021】
被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)は、強度及び耐蝕性の観点から、
繊維ネット、樹脂フィルム、繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics))シート等であることが好ましく、樹脂フィルム及び/又は繊維強化樹脂シートであることがより好ましく、繊維強化樹脂シートであることが更に好ましい。
【0022】
繊維ネットとしては、 ナイロン等の従来から使用される汎用樹脂製繊維; 帝人テクノプロダクツ社「テクノーラ」「トワロン」(以上、登録商標)、東レ・デュポン社「ケブラー」(登録商標)等のパラ系アラミド繊維; 東洋紡社「ダイニーマ」(登録商標)等の超高分子量ポリエチレン繊維; クラレ社「ベクトラン」(登録商標)等のポリアリレート繊維;及び
東洋紡社「ザイロン」(登録商標)等のPBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサザール)繊維;
東レ社「トレカ」(登録商標)、東邦テナックス社「テナックス」(登録商標)、三菱レイヨン社「パイロフィル」(登録商標)等の炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の繊維で構成されるネットが好ましい。
【0023】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ポリイミド等のエンジニアプラスチックを、所望の強度に応じで厚みと延伸条件等の製造条件を調整してフィルム化したものが使用できる。市販品としては、東レ社「ルミラー」(登録商標)等の二軸延伸ポリエステルフィルム、帝人デュポンフィルム社「テイジンテトロンフィルム」「メリネックス」「マイラー」「テフレックス」(以上、登録商標)等のPETフィルム;帝人デュポンフィルム社「テオネックス」(登録商標)等のPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムが挙げられる。
【0024】
繊維強化樹脂シートとしては、繊維ネット及び樹脂フィルムで挙げられた好適樹脂の繊維又はガラス繊維を練り込んでフィルム化する、又はこれらの樹脂をネット化したシートを骨格基材として、ネット化したシートに、例えば光又は熱で硬化する、例えばアクリレート系、エポキシ系等の硬化性樹脂を含浸・硬化して形成されたものが好ましい。
【0025】
被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)の厚みは、所望の強度を達成するように調整されるが、被覆された柱体(11、21)部分の外観、基台(13、23)に埋設されたときの固定性等の観点から、過剰に大きくならないようにすることが好ましく、0.1〜20mmが好ましく、1〜15mmがより好ましく、2〜10mmが更に好ましい。
【0026】
本発明1では、被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)で、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から基台(13、23)中の埋設部分までの柱体(11、21)の側面を被覆する。
【0027】
被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)の被覆高さは、少なくとも基台(13、23)表面から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)が全て被覆される高さであることが好ましく、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端よりも少なくとも5cm高い部分まで被覆される高さであることがより好ましく、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端よりも少なくとも10cm高い部分まで被覆される高さであることが更に好ましい。
【0028】
柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分については、被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)が、基台(13、23)表面(23−1)上に露出する柱体(11、21)とほぼ同じ断面径の部分の側面を被覆していることが好ましく、固定末端(11−3、21−3)までの側面を被覆していることがより好ましい。
【0029】
柱体(11、21)が安定して固定される観点から、柱体(11、21)が基台(13、23)に埋設された柱体(11、21)の固定末端側に、柱体(11、21)の軸方向から基台(13、23)中に末広がりに軸対称に例えば2本、4本、6本、8本のアンカー用リブが張り出して設けてあることが好ましく、アンカー用リブが柱体(11、21)の固定末端と共に軸方向に垂直な底板に固定されていることがより好ましい。
【0030】
この場合、アンカー用リブ以外の部分を、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分から固定末端までお柱体(11、21)の側面を第1の被覆樹脂材(14−1、24−1)で被覆し、アンカー用リブよりも上方の側面を、第1の被覆樹脂材(14−1、24−1)の上に重ねて第2の被覆樹脂材(14−2、24−2)を被覆するとよい。第2の被覆樹脂材(14−2、24−2)を軸の周囲を横巻にして被覆してもよい。
【0031】
このように第1の被覆樹脂材(14−1、24−1)と第2の被覆樹脂材(14−2、24−2)とを被覆すると、第1の被覆樹脂材(14−1、24−1)が再度基台(13、23)中に埋設されて基材(13、23)中で固定されるため、第2の被覆樹脂材(14−2、24−2)が軸方向へのズレを抑制できる。
【0032】
本発明1では、柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分は、基台(13、23)の構成部材を柱体(11、21)に沿って掘り出して、柱体(11、21)の基台(13、23)中の埋設部分を露出させ、その露出部分を被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)で被覆し、その後、掘り出した基台(13、23)の構成部材を埋め戻すか、基台(13、23)の構成部材を破壊・粉砕して柱体(11、21)に沿って掘り出した場合は、掘り出された基台(13、23)の構成部材に代えて、コンクリート等の硬化性組成物を露出部分の周りに流し込んで硬化させて新たに基台(13、23)の構成部材とする。
【0033】
本発明1では、劣化部分の腐食を抑制するために、劣化部分の錆や汚れを除去した後を、劣化部分に上述したような硬化性樹脂を含浸して硬化させることが好ましく、さらにその上からパッチ部材(15−2、25−2)を貼着することが好ましい。
【0034】
パッチ部材(15−2、25−2)(15−2、25−2)は、補修対象箇所を被覆できるだけの面積を有すればよく、四辺形に形成してもよく、円形や三角形、その他の多角形であっても良い。
【0035】
パッチ部材(15−2、25−2)は、柱体(11、21)の表面に沿って劣化部分を被覆できるように屈曲性又は弾力性を有することが好ましい。屈曲性又は弾力性を有するパッチ部材(15−2、25−2)を構成するには、パッチ部材(15−2、25−2)がガラス、合成樹脂あるいは金属で作られた板状の部材であることが好ましい。
【0036】
パッチ部材(15−2、25−2)がガラス又は金属で構成されている場合、パッチ部材(15−2、25−2)はガラスクロスや金属繊維で構成された布帛状であってよい。パッチ部材(15−2、25−2)が合成樹脂又は金属で構成されている場合は、屈曲性又は弾力性を有する薄いシート状であってもよいし、硬めのシート状である場合であっても屈曲性を付与できる観点から、所定方向に延びる可変部が形成されていることが好ましく、この可変部は、例えば溝を形成して肉薄とし、容易に屈曲可能にした部分であってよい。
【0037】
パッチ部材(15−2、25−2)が合成樹脂で構成されている場合、合成樹脂としては、強度、屈曲性、弾力性及び防水性の観点から、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ポリブテン、ポリエステル、ビニルエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ポリイミド等のエンジニアプラスチック又はゴム類が好ましく、液体が水の場合はポリエステル、ビニルエステル又はエポキシ樹脂が好ましく、液体が溶剤であっても溶剤耐性に優れるビニルエステルがより好ましい。
【0038】
パッチ部材(15−2、25−2)は、さらに、強度、屈曲性、弾力性及び防水性の観点から、合成樹脂と繊維で構成されるFRP(Fiber Reinforced Plastics)が好ましい。
FRPの場合、合成樹脂はポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルであり、繊維はガラス繊維であることがより好ましい。
【0039】
パッチ部材(15−2、25−2)の厚みは、工程2で金属管を防水性に囲って覆う包囲カバーの大きさが不必要に大きくならないようにする観点から、薄いことが好ましく、0.1〜10mmが好ましく、0.2〜5mmがより好ましく、0.3〜3mmが更に好ましく、0.4〜2mmが更に好ましく、0.4〜1mmが更に好ましい。
【0040】
(補修方法2)
柱体(11、21)が管体である場合、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の近傍の強度を確保してから、劣化部分の補修をすることが好ましく、向上する観点から、柱体(11、21)の管内に、 基台(13、23)中の埋設部分から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を含む部分の高さまで硬化性組成物を充填して硬化させることが好ましい。
【0041】
硬化性組成物としては、加熱、光照射、二剤の混合発熱等により硬化する硬化性樹脂組成物又はコンクリート等の水硬性組成物が挙げられるが、強度の向上効果の簡単から、コンクリート等の水硬性組成物であることが好ましい。
【0042】
柱体(11、21)の管内に、硬化性組成物を充填して硬化する場合は、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の近傍の強度を向上する観点から、
硬化性組成物の充填高さは、少なくとも基台(13、23)表面から柱体(11、21)の劣化部分(12、22)の最高端の高さであることが好ましく、最高端よりも少なくとも10cm高いことがより好ましく、最高端よりも少なくとも20cm高いことが更に好ましい。
【0043】
劣化部分が、柱体(11、21)の根元近傍の低位置にある場合であっても、基台表面(1−1、23−1)から、基台(13、23)中に埋設された部分の充填深さの好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは40〜60%程度の高さまで硬化性組成物を充填することが好ましい。
【0044】
柱体(11、21)の管内に、硬化性組成物を充填して硬化する場合は、被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)の被覆高さは、
少なくとも硬化性組成物の充填高さと同じであることが好ましく、
柱体(11、21)の靭性・弾性が硬化性組成物の充填高さよりも高い部分と低い部分とで異なることによる硬化性組成物の充填高さ近傍柱体(11、21)に加わる負荷に対する補強の観点から、硬化性組成物の充填高さよりも少なくとも10cm高いことがより好ましく、少なくとも20cm高いことが更に好ましく、劣化部分が、柱体(11、21)の根元近傍の低位置にある場合であっても、基台表面(1−1、23−1)上の硬化性組成物の充填高さの、好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは40〜60%程度の高さまであることである。
【0045】
(本発明1の効果)
本発明1によれば、柱体(11、21)の劣化部分(12、22)を、柱体(11、21)の倒壊又は折損を抑止するために十分な補強を、簡易に行うことができる。
【0046】
本発明1は、さらに柱体(11、21)の根元の近傍に劣化部分(12、22)があり、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の支柱で、支柱の支持末端側に変圧器、道路標識のような重量物や、電灯のような機能部品が設置されるΓ字型で、根元に大きな負荷がかかっている場合にも有効に補強できる。
【0047】
本発明1は以上の効果を奏し、劣化部分(12、22)が問題となる柱体(11、21)を補強することで、柱体(11、21)の交換をすることなくそのまま使用できることから、経済的効果が大きいだけでなく、例えば、デザイナーによって設計された意匠性の高い街路灯(12)を長期間にわたり使用できるようになり、都市景観の保全にも有用である。
【0048】
〔本発明2〕
本発明2は、本発明1で製造されうる、本発明1における基台(13、23)に埋設して固定される被覆樹脂材(14−1及び2、24−1及び2)で被覆された柱体(11、21)である。
【0049】
本発明2によれば、例えば、電柱、道路標識支柱(22)、街路灯(12)、カーブミラー、歩道橋の支柱等の外部に設置される産業・生活基盤用の安全性が高く、経済的コストの増大を抑制せずに使用することができ、例えば、デザイナーによって設計された意匠性を維持できるため都市景観の保全にも有用である。
【0051】
(柱体)(1)Γ字型の街路灯(12):高さ約10m、アーム長約3m、肉厚約1cmの鉄管で、基台(13)に埋設された部分が約50cm、柱体(11)の固定末端近傍に、三角版状のアンカー用リブ(11−2)が軸周りに互いに45°の角度をなして8枚張り出していて、固定末端と共に底板の固定されている(図面には4枚だけ示した)。底板はさらにボルト(図示していない)で基台(13)に螺嵌され固定されている。(2)基台(13):コンクリート硬化体
【0052】
(劣化部分) 基台(13)の根元から表面から5cmの高さまで、根元周りに半周の範囲に腐食が広がっている。
【0053】
(被覆樹脂材の原材料)(1)繊維ネット:アラミド繊維ネット(引張強度約3000MPa、繊維直径約12μm)(2)硬化性樹脂:熱硬化性ビニルエステル樹脂(液状のビニルエステル、硬化剤及び硬化促進剤を含む液状混合物)
(3)パッチ部材(15−2、25−2):メス型上に離型剤を塗布し、その上に、硬化性樹脂を塗布し、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布してパッチ部材(15−2、25−2)シートを形成させる。硬化性樹脂が硬化した後、パッチ部材(15−2、25−2)シートをメス型から剥離させ、長さ約15cm、幅約10cm、厚み約2.5mmに切断してパッチ部材(15−2、25−2)とした。
【0054】
(補強方法)(1)柱体(11)の基台(13)に埋設された部分の周囲の基台(13)部位を、ドリルで掘削して、柱体(11)の基台(13)に埋設された部分を露出させて、高圧水で露出部分の汚れを除去した(
図2)。(2)劣化部分の錆及び汚れを除去して光沢表面にした後、劣化部分充填樹脂(15−1)として硬化性樹脂を劣化部分と劣化部分近傍の柱体(11)の側面に充填して、その上からパッチ部材(15−2、25−2)を貼着した(
図3)。(3)劣化部分(12)の最高端の上方約20cmから柱体(11)の固定末端までの、アンカー用リブを除く柱体(11)の側面に、硬化性樹脂(15−1)を塗布して、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布して、硬化性樹脂を硬化させて第1の被覆樹脂材(14−1)を形成させる(
図3)。(4)アンカー用リブの上端より上方を、第1の被覆樹脂材(14−1)の上端から約20cm上方まで、第1の被覆樹脂材の表面と露出している柱体(11)の側面に、第1の被覆樹脂材(14−1)と同様にして第2の被覆樹脂材(14−2)を形成させる(
図4)。(3)柱体(11)の露出部分の周辺に未硬化コンクリートを充填して基台(13)の構成部位を修復した(
図5)。(4)充填した未硬化コンクリートを養生して硬化させた(
図5)。
【0056】
(柱体)(1)Γ字型の街路灯(22):高さ約10m、アーム長約5m、肉厚約1cmの鉄管で、基台(23)に埋設された部分が約50cm、柱体(21)の固定末端近傍に、三角版状のアンカー用リブ(21−2)が軸周りに互いに45°の角度をなして8枚張り出していて、固定末端と共に底板の固定されている(図面には4枚だけ図示した)。底板はさらにボルト(図示していない)で基台(23)に螺嵌され固定されている。(2)基台(23):コンクリート
【0057】
(劣化部分) 基台(23)の根元から表面から5cmの高さまで、根元周りに半周の範囲に腐食が広がっている。
【0058】
(被覆樹脂材の原材料)
実施態様例1と同じ原材料を使用した。
【0059】
(補強方法)(1)柱体(21)の劣化部分(22)の最高端の上方約50cmに管内に連通するようにサンダー等で硬化性組成物投入孔(21−4)を切抜き、硬化性組成物投入孔(21−4)から硬化性組成物(未硬化コンクリート)を劣化部分(22)の最高端の上方30cmまで充填した(
図7〜9)。(2)充填した未硬化コンクリートを養生して硬化させた。(3)硬化性組成物投入孔(21−4)を、硬化性組成物投入孔封鎖用金属キャップ(25−3)を嵌め込んで溶接して封鎖した(
図10)。(3)充填した未硬化コンクリートが硬化した後、柱体(21)の基台(13、23)に埋設された部分の周囲の基台(23)部位を掘削して、柱体(21)の基台(23)に埋設された部分を露出させて、高圧水で露出部分の汚れを除去した(
図11)。(4)硬化性組成物投入孔封鎖用金属キャップ(25−3)の最高端の上方約10cmから柱体(21)の固定末端までの、アンカー用リブを除く柱体(21)の側面に、硬化性樹脂(25−1)を塗布して、その上に重ねて繊維ネットを配置し、さらに重ねて硬化性樹脂を塗布して、硬化性樹脂を硬化させて第1の被覆樹脂材(24−1)を形成させる(
図12)。(4)アンカー用リブの上端より上方を、第1の被覆樹脂材(24−1)の上端から約20cm上方まで、第1の被覆樹脂材の表面と露出している柱体(21)の側面に、第1の被覆樹脂材(24−1)と同様にして第2の被覆樹脂材(24−2)を形成させる(
図13)。(5)柱体(21)の露出部分の周辺に未硬化コンクリートを充填して基台(23)の構成部位を修復した。