特許第6422124号(P6422124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422124
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】矢印板表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/00 20160101AFI20181105BHJP
【FI】
   E01F9/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-227429(P2015-227429)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-95919(P2017-95919A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】508337204
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング新潟
(73)【特許権者】
【識別番号】509132657
【氏名又は名称】株式会社 パインテック
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】富田 正則
(72)【発明者】
【氏名】吉井 敏
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−067057(JP,A)
【文献】 特開2015−001919(JP,A)
【文献】 特開2015−040749(JP,A)
【文献】 特開平10−311009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0030739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、
前記複数の矢印板はそれぞれ、電磁シールド体の表側に前記発光点灯制御手段の無線アンテナを設けるとともに、前記電磁シールド体の裏側に前記点灯タイミング属性転送手段の無線アンテナを設けたことを特徴とする矢印板表示制御装置。
【請求項2】
矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、
さらに一の矢印板の前記発光点灯制御手段と他の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段との間で行なう無線通信の受信電界強度に基づいて、前記複数の矢印板の位置関係を認識する位置関係認識手段を備えたことを特徴とする矢印板表示制御装置。
【請求項3】
矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、
前記複数の矢印板は、操作手段から無線送信された前記信号の受信により前記発光点灯制御手段が起動したときに、末端の矢印板であるか否かの認識動作を行ない、次に末端であると認識した矢印板から、順次点灯タイミング属性を付与する点灯タイミング属性の転送連鎖を行なう構成としたことを特徴とする矢印板表示制御装置。
【請求項4】
一の矢印板は、操作手段から無線送信された前記信号の受信により前記発光点灯制御手段が起動したときに、他の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段と無線通信を行ない、この無線通信の受信電界強度に基づいて、末端の矢印板であるか否かを認識し、
末端であると認識した矢印板は、前記発光点灯制御手段で決定した点灯タイミング属性を前記点灯タイミング属性転送手段に通知し、当該点灯タイミング属性転送手段が点灯タイミング属性を無線通信することにより、他の矢印板全体への点灯タイミング属性の転送を開始する構成としたことを特徴とする請求項記載の矢印板表示制御装置。
【請求項5】
一の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段が、他の矢印板の前記発光点灯制御手段と無線通信するときに、この無線通信の受信電界強度に基づいて、隣接する矢印板の前記発光点灯制御手段を選択して送信し、前記複数の矢印板の並べられた順に点灯タイミング属性の転送連鎖を行なう構成としたことを特徴とする請求項記載の矢印板表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に設置した複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路で工事を行なう場合などにおいて車線規制を行なう必要がある場合には、道路に複数設置して一般車両を誘導する矢印板が用いられており、矢印表示発光部を有する複数の矢印板が連動して点灯動作するものが知られている(特許文献1を参照)。一般に、この種のものは点灯の順番が予め設定された複数の矢印板を、その順番通りに並べて設置している。しかしながら、矢印板を決められた順番通りに並べて設置することは大きな労力が必要であった。そこで、複数の矢印板に対する順位を起動の順番に従って順次付与する連動矢印表示装置が提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3165448号公報
【特許文献2】特開2014−20033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記装置は点滅動作のタイミングを司るタイミングタイマーを用いたバケツリレー方式であり、複数の矢印板に対する順位は、起動の順番で付与されるため、表示制御動作は前記起動の順番に制約されるというという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、矢印板の設置位置に応じた点灯属性を自動的に設定することを可能にして、複数の矢印板を無作為に設置しても、これらの矢印板が連動して点灯動作するようにした矢印板表示制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、前記複数の矢印板はそれぞれ、電磁シールド体の表側に前記発光点灯制御手段の無線アンテナを設けるとともに、前記電磁シールド体の裏側に前記点灯タイミング属性転送手段の無線アンテナを設けたものである。
【0007】
請求項2の発明は、矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、さらに一の矢印板の前記発光点灯制御手段と他の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段との間で行なう無線通信の受信電界強度に基づいて、前記複数の矢印板の位置関係を認識する位置関係認識手段を備えたものである。
【0008】
請求項3の発明は、矢印表示発光部を有する矢印板を道路に複数設置し、前記複数の矢印板を連動して表示させる矢印板表示制御装置において、前記矢印板には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段と、前記発光点灯制御手段から通知される点灯タイミング属性を、他の矢印板の発光点灯制御手段に無線転送する点灯タイミング属性転送手段とを備え、前記複数の矢印板は、操作手段から無線送信された前記信号の受信により前記発光点灯制御手段が起動したときに、末端の矢印板であるか否かの認識動作を行ない、次に末端であると認識した矢印板から、順次点灯タイミング属性を付与する点灯タイミング属性の転送連鎖を行なう構成としている。
【0009】
請求項の発明では、一の矢印板は、操作手段から無線送信された前記信号の受信により前記発光点灯制御手段が起動したときに、他の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段と無線通信を行ない、この無線通信の受信電界強度に基づいて、末端の矢印板であるか否かを認識し、末端であると認識した矢印板は、前記発光点灯制御手段で決定した点灯タイミング属性を前記点灯タイミング属性転送手段に通知し、当該点灯タイミング属性転送手段が点灯タイミング属性を無線通信することにより、他の矢印板全体への点灯タイミング属性の転送を開始する構成としている。
【0010】
請求項の発明は、一の矢印板の前記点灯タイミング属性転送手段が、他の矢印板の前記発光点灯制御手段と無線通信するときに、この無線通信の受信電界強度に基づいて、隣接する矢印板の前記発光点灯制御手段を選択して送信し、前記複数の矢印板の並べられた順に点灯タイミング属性の転送連鎖を行なう構成としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明では、矢印板の設置位置に応じた点灯属性を自動的に設定することを可能にして、矢印板を無作為に設置しても矢印板が連動して点灯動作する矢印板表示制御装置を提供できる。
【0012】
請求項1の発明では、電磁シールド体の表側と裏側とで望ましいアンテナ特性をもたせることができる。
【0013】
請求項2の発明では、無線通信の受信電界強度に基づいて、複数の矢印板の末端や隣接状態を正確に認識できる。
【0014】
請求項の発明では、操作手段からの無線送信を受けて起動した複数の矢印板の中から末端の矢印板が認識され、その認識結果に基いて、残りの矢印板の点灯タイミング属性を順次付与することができる。
【0015】
請求項の発明では、操作手段からの無線送信により各矢印板を起動させたとき、末端となる矢印板を認識し、それから複数の矢印板への点灯タイミング属性信号の転送を自動的に開始することができる。
【0016】
請求項の発明では、複数の矢印板の端から順に点灯タイミング属性の転送が正しく連鎖する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における矢印板の電気的構成を示すブロック図である。
図2】末端矢印板の認識を示す概略説明図である。
図3】矢印板点灯制御装置の全体構成と、点灯タイミング属性の転送連鎖を示す概略説明図である。
図4】起動から点灯制御までの一連の流れを示すフロー図である。
図5】一の矢印板と他の矢印板との間の通信状態遷移を示すフロー図である。
図6】発光点灯制御手段の動作手順を示すフロー図である。
図7】点灯タイミング属性転送手段の動作手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の矢印板表示制御装置およびその方法に係る好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明は、矢印表示発光部11を有する矢印板12を道路に複数設置し、前記複数の矢印板12を連動して表示させる矢印板点灯制御装置100であり、図1は各矢印板12の電気的構成を示している。同図において、前記矢印板12には無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段Aと、前記発光点灯制御手段Aから通知される点灯タイミング属性を他の矢印板12の発光点灯制御手段Aに無線転送する点灯タイミング属性転送手段Bと、外部からの操作指示に関する信号を受信する操作指示受信手段13とを備えている。また、前記発光点灯制御手段Aには、受信電界強度検出部14と電界強度判定部15と点灯タイミング属性記憶部16と点灯タイミング属性通知部17とが備えられている。発光点灯制御手段Aや点灯タイミング属性転送手段Bは、例えばCPUなどの演算処理手段を備えたマイクロコンピュータなどで構成され、図示しない記録媒体に記録するプログラムをマイクロコンピュータが読み取ることで、一連の手順を実行する機能構成となっている。さらに、図中18は発光点灯制御手段Aのアンテナ、19は点灯タイミング属性転送手段Bのアンテナ、20は操作指示受信手段13のアンテナである。また、前記受信電界強度検出部14と電界強度判定部15とにより、複数の矢印板12の中で末端に位置する矢印板12を認識し、点灯タイミング属性転送手段Bにより、隣接する矢印板12を認識する位置関係認識手段を構成している。
【0020】
図2は、複数の矢印板12の相互関係を示している。同図において、矢印板12は、電磁シールド体となる金属板21の表側に、無線信号を送受信するアンテナ18を備えた発光点灯制御手段Aが設けられ、金属板21の裏側に、別な無線信号を送受信するアンテナ19を備えた点灯タイミング属性転送手段Bが設けられており、これらのアンテナ18,19は金属板21より低くなっている。なお、実用新案登録第3165448号公報などで周知である電池などの一般的な構成の説明は省略する。
【0021】
図3は、矢印板点灯制御装置100の全体的な構成を示している。同図において、ここでは道路に設置される4台の矢印板12と、各矢印板12に操作指示の信号を送信する操作手段22とにより、矢印板点灯制御装置100が構成される。なお、矢印板12の設置台数は特に限定されない。
【0022】
次に、上記構成の矢印板点灯制御装置100について、その作用を説明する。図4は、矢印板点灯制御装置100の一連の動作を示し、ここではまず道路に複数の矢印板12を無作為に設置し、操作手段22から各矢印板12に対して起動を操作指示するための信号を無線で送出する。この信号を操作指示受信手段13のアンテナ20で受信すると、矢印板12は発光点灯制御手段Aや点灯タイミング属性転送手段Bが起動する。
【0023】
起動した各矢印板12は、まずステップS1の手順で、各々が末端の矢印板12であるか否かの認識動作が行われ、次にステップS2の手順で、末端であると認識した矢印板12から順次点灯タイミング属性を付与する点灯タイミング属性の転送連鎖が行われ、次にステップS3の手順で、各矢印板12に付与された点灯タイミング属性を用いて、矢印表示発光部11への点灯制御が行われる。これによって、矢印板12の設置位置に応じた点灯タイミング属性を自動的に設定することを可能にして、矢印板12を無作為に設置しても、矢印板12が点灯タイミング属性に従って連動して点灯動作するものである。この場合、ステップS3においては、各矢印板12に付与された点灯タイミング属性を用いて、図3に示すように手元の操作手段22によるブロードキャスト無線送信により、複数の矢印板12を一瞬に任意の表示パターンに変えることができ、プログラムを変更することにより点灯・点滅などの多種の表示パターン変更が可能となる。
【0024】
図5は、上述した矢印板点灯制御装置100の一連の動作に関連して、複数の矢印板12の中で、任意に選択した一の矢印板12aと他の矢印板12bとの間の通信状態の遷移を示すフロー図である。図中、発光点灯制御手段Aと点灯タイミング属性転送手段Bの無線通信は、異なる一の矢印板12aと他の矢印板12bとの間で行われる。
【0025】
道路に設置した各矢印板12が起動すると、前記ステップS1の手順に対応して、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは、「フェーズ1」の無線通信で無線での問合せ信号を送出する。この問合せ信号を他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bが受信した場合には、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aに向けて無線での応答信号を送出する。
【0026】
一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは、「フェーズ1」で問合せ信号を送出した後、自身が複数の矢印板12からなる矢印板群の末端に位置しているか否かを判定する。これは、発光点灯制御手段Aで受信した他の矢印板12bからの応答信号の電界強度を受信電界強度検出部14で検出し、その検出した電界強度が所定値に達しているか否かを、電界強度判定部15で判定することで行われる。電界強度判定部15は、受信電界強度検出部14で検出した応答信号の電界強度が所定値に達していれば、自身の位置が端でないと判定する一方、応答信号の電界強度が所定値に達していなければ、自身の位置が端であると判定する。この端判定結果は、自矢印板すなわち同じ一の矢印板12aの点灯タイミング属性転送手段Bに通知される。
【0027】
また、こうした一の矢印板12aにおける末端矢印板認識動作は、他の矢印板12bでも同様に行われる。したがって、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bは、自矢印板すなわち同じ他の矢印板12bの発光点灯制御手段Aから、電界強度判定部15による端判定結果を受けることになる。
【0028】
こうして、複数の矢印板12のそれぞれが末端に位置するか否かを認識すると、各矢印板12は前述のステップS2やステップS3の手順を実行する。具体的には、一の矢印板12aで電界強度判定部15が「端」であると判定した場合、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは、自身の点灯タイミング属性が端(1番目)であるとして、矢印表示発光部11への発光点灯制御を開始する。一方、一の矢印板12aで電界強度判定部15が「端でない」と判定した場合は、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bから、「フェーズ2」による無線通信で点灯タイミング属性が通知されるのを待つ。こうした発光点灯制御手段Aの動作は、他の矢印板12bでも同様に行われる。
【0029】
また、前述の電界強度判定部15が「端」であると判定した末端の矢印板12は、他の矢印板12bとして、その点灯タイミング属性転送手段Bが隣接する矢印板12の発光点灯制御手段Aを探索するために、「フェーズ2」の無線通信で無線での問合せ信号を送出する。この問合せ信号を、電界強度判定部15が「端でない」と判定した一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aで受信した場合には、その発光点灯制御手段Aから他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bに向けて無線での応答信号を送出する。
【0030】
他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bは、「フェーズ2」で問合せ信号を送出した後、隣接する矢印板12の発光点灯制御手段Aを特定する。これは、点灯タイミング属性転送手段Bが受信した「端でない」一の矢印板12aを含む複数の矢印板12からの各応答信号の中で、最大の受信電界強度を示す矢印板12からの応答信号を選択することで行われる。他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bは、複数の矢印板12の中で例えば「端でない」一の矢印板12aからの応答信号が最大の電界強度を示したならば、その一の矢印板12aが隣接する矢印板12であると特定して、一の矢印板12aに向けて自身の1番目となる点灯タイミング属性を伝言通知する。
【0031】
これを受けて、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは、1番目の点灯タイミング属性を有する他の矢印板12bから、自身が隣の矢印板12であると特定されたことを認識して、自身が2番目の点灯タイミング属性であると判断して、これを点灯タイミング属性記憶部16に記憶保存すると共に、その点灯タイミング属性に基づいた矢印表示発光部11への発光点灯制御を開始する。また、ここで決定された隣接する矢印板の点灯タイミング属性は、点灯タイミング属性通知部17によって、一の矢印板12a自身の点灯タイミング属性転送手段Bに通知転送される。
【0032】
こうして、「端でない」一の矢印板12aに点灯タイミング属性が付与されると、後は残りの矢印板12でも同様に、点灯タイミング属性を順次付与する点灯タイミング属性の転送連鎖が行われる。これは、電界強度判定部15が「端でない」と判定された他の矢印板12bについて、発光点灯制御手段Aから点灯タイミング属性転送手段Bに、n(nは1から始まる自然数)番目となる点灯タイミング属性が通知転送されると、前述した「フェーズ2」の無線通信の手順に従って、隣接する矢印板であると特定した例えば一の矢印板12aに向けて、自身のn番目となる点灯タイミング属性を伝言通知する。これを受けて、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは、自身がn+1番目の点灯タイミング属性であると判断して、これを点灯タイミング属性記憶部16に記憶保存すると共に、その点灯タイミング属性に基づいた矢印表示発光部11への発光点灯制御を開始する。また、ここで決定されたn+1の点灯タイミング属性は、点灯タイミング属性通知部17によって、一の矢印板12a自身の点灯タイミング属性転送手段Bに通知転送され、この動作を繰り返すことで、道路に設置した全ての矢板板12の点灯タイミング属性が付与決定される。
【0033】
次に、図2図3および図6のフロー図に従い、発光点灯制御手段Aの動作について詳述すると、操作手段22からの無線送信により各矢印板12が起動すると(ステップS11)、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bとの間で無線通信を行ない、この無線通信による応答信号の受信電界強度を受信電界強度検出部14で検出し、その検出した電界強度が電界強度判定部15で所定値に達しているか否かを判定することで(ステップS12)、一の矢印板12a自身が末端か否かを判断する(ステップS13)。このステップS13で、端であると判断されたときには、ステップS14に移行して末端であることを認識し、かつ点灯タイミング属性を1番目すなわち「1」と決定して(ステップS15)、これを一の矢印板12aの点灯タイミング属性転送手段Bに通知する(ステップS16)。そして、この点灯タイミング属性信号を無線通信することにより、複数の矢印板12への点灯タイミング属性の転送を開始するものである(ステップS17)。ここで、前記一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aは他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bとの間で無線通信を行なうとは、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aから他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bへ無線問合せを行ない、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bから一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aへ無線応答する「フェーズ1」の無線通信に対応するものである。
【0034】
一方、前記ステップS13で、端ではないと判断されたときには、他の矢印板12bを含む別な各矢印板12からの点灯タイミング属性転送手段Bからの電界強度の問合せ応答を待機する(ステップS18)。これは、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bから一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aへ無線問合せを行ない、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aから他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bへ無線応答する「フェーズ2」の無線通信に対応するものである。
【0035】
上記ステップS11〜ステップS14の末端矢印板認識動作においては、図2に示すように各矢印板12における発光点灯制御手段Aのアンテナ18が、金属板21の遮蔽により電波伝搬方向が制限されている。末端の矢印板12以外に位置する「矢印板2」や「矢印板3」の矢印板12は、その発光点灯制御手段Aが隣接する矢印板12の点灯タイミング属性転送手段Bと直接電波伝搬状態で遮蔽を受けないため通信が確実に行われ、一の矢印板12aと他の矢印板12bとの間の距離に応じた受信電界強度が得られる。しかし、末端に位置する「矢印板1」の矢印板12では、その発光点灯制御手段Aと直接通信可能な隣接する矢印板12の点灯タイミング属性転送手段Bが無いため受信電界強度は得られない。また、仮に何らかの周囲物の反射で他の矢印板12と通信できたとしても、上述した末端以外の矢印板12が受信する電界強度よりは非常に弱いものになる。このように受信電界強度が得られないか、あるいは弱いことから、前記受信電界強度検出部14と電界強度判定部15とからなる位置関係認識手段により、末端の矢印板12であるか否かを認識することが可能となる。
【0036】
図2図3および図7のフロー図に従い、点灯タイミング属性転送手段Bの動作について詳述すると、操作手段22からの無線送信により各矢印板12が起動すると(ステップS21)、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bは、前述した「フェーズ1」の無線通信に従って、一の矢印板12aを含む別な各矢印板12の発光点灯制御手段Aからの電界強度の問合せ応答を行なう(ステップS22)。
【0037】
その後、他の矢印板12bの発光点灯制御手段Aで点灯タイミング属性を決定し、この点灯タイミング属性が点灯タイミング属性転送手段Bに通知転送されると、前述した「フェーズ2」の無線通信に従って、一の矢印板12aを含む別な各矢印板12の発光点灯制御手段Aに電界強度の問合せを行なう(ステップS23)。これを受けて、各矢印板12の発光点灯制御手段Aから応答信号を受信すると、これらの応答信号の電界強度を個々に検出し、どの応答信号が最大の電界強度で検出されたのかを判定することで(ステップS24)、他の矢印板12bに隣接する矢印板12の発光点灯制御手段Aを検索する(ステップS25)。そして、この隣接する矢印板12の発光点灯制御手段Aへ点灯タイミング属性信号を送信し(ステップS26)、この動作を繰り返すことで、複数の矢印板12の並べられた順に点灯タイミング属性の転送が連鎖するものである。
【0038】
上述した点灯タイミング属性の転送連鎖においては、各矢印板12の点灯タイミング属性転送手段Bのアンテナ19が、図2に示すように金属板21の遮蔽により電波伝搬方向が制限されている。このため、例えば「矢印板2」と記された矢印板12の点灯タイミング属性転送手段Bは、右側の「矢印板3」と記された矢印板12の発光点灯制御手段Aとは直接電波伝搬状態で遮蔽を受けないため通信が確実に行われ、矢印板12間の距離に応じた受信電界強度が得られる。しかし、左側の「矢印板1」と記された矢印板12の発光点灯制御手段Aとは直接通信できない。また、図示しないが、「矢印板2」から二つ右側の矢印板12の発光点灯制御手段Aと通信できる可能性があるが、上述した「矢印板3」と記された隣接する矢印板12からの受信電界強度よりは非常に弱いものになる。このように受信電界強度が得られないか、あるいは弱いことから、位置関係認識手段となる点灯タイミング属性転送手段Bは、その右側の最も受信電界強度の強い矢印板12を隣接する矢印板12として認識することが可能となる。
【0039】
このように上記実施態様においては、矢印表示発光部11を有する矢印板12を道路に複数設置し、前記複数の矢印板12を連動して表示させる矢印板点灯制御装置において、前記矢印板12には、無線送信された信号の受信により起動する発光点灯制御手段Aと、前記発光点灯制御手段Aから通知される点灯タイミング属性を他の矢印板12の発光点灯制御手段Aに無線転送する点灯タイミング属性転送手段Bとを備えたことにより、矢印板12の位置に応じた点灯属性を自動的に設定することを可能にして、矢印板12を無作為に設置しても矢印板12を連動して点灯動作できる。
【0040】
また上記実施態様においては、複数の矢印板12の中で、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aと、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bとの間で行なう無線通信の受信電界強度に基づいて、矢印板12の位置関係を認識する位置関係認識手段として、受信電界強度検出部14や、電界強度判定部15や、点灯タイミング属性転送手段Bを備えるから、無線通信の受信電界強度に基づいて複数の矢印板12の末端、隣接状態を正確に認識できる。
【0041】
また上記実施態様においては、電磁シールド体となる金属板21の表側に発光点灯制御手段Aの無線アンテナ18を設けるとともに、金属板21の裏側に点灯タイミング属性転送手段Bの無線アンテナ19を設けたことにより、金属板21の表側と裏側とで望ましいアンテナ特性をもたせることができる。
【0042】
また上記実施態様においては、一の矢印板12aの金属板21の裏側に設けられた点灯タイミング属性転送手段Bの無線アンテナ19のみ、他の矢印板12bの金属板21の表側に設けられた発光点灯制御手段Aの無線アンテナ18との間で無線通信が可能となるように、無線アンテナ18,19と金属板21を配置したから、アンテナ特性を良好にできる。
【0043】
また上記実施態様において、複数の矢印板12はそれぞれ、操作手段22から無線送信された信号を受信して発光点灯制御手段Aが起動したときに、末端の矢印板12であるか否かの認識動作を行ない、次に末端であると認識した矢印板12から、それ以外の矢印板12に対して順次点灯タイミング属性を付与する点灯タイミング属性の転送連鎖を行なう構成を備えている。そのため、操作手段22からの無線送信を受けて起動した複数の矢印板12の中から末端の矢印板12が認識され、その認識結果に基いて、残りの矢印板12の点灯タイミング属性を順次付与することができる。
【0044】
つまりここの矢印板点灯制御装置100は、一の矢印板12aの発光点灯制御手段Aが、操作手段22から無線送信された信号を受けて起動したとき、他の矢印板12bの点灯タイミング属性転送手段Bとの間で「フェーズ1」の無線通信を行ない、この無線通信の受信電界強度に基づいて、自身が末端の矢印板12であるか否かを認識する。そして、末端であると認識した矢印板12は、自身の点灯タイミング属性を発光点灯制御手段Aで例えば「1」に決定して、点灯タイミング属性転送手段Bに通知し、当該点灯タイミング属性転送手段Bが末端ではないと認識した各矢印板12の発光点灯制御手段Aに点灯タイミング属性信号を無線通信することで、これらの矢印板12への点灯タイミング属性の転送を開始する構成となっている。そのため、操作手段22からの無線送信により道路に設置した各矢印板12を起動させたときに、末端となる矢印板12を認識し、それから複数の矢印板12への点灯タイミング属性信号の転送を自動的に開始できる。
【0045】
また上記実施態様においては、一の矢印板12aの点灯タイミング属性転送手段Bが、他の矢印板12bの発光点灯制御手段Aとの間で「フェーズ2」の無線通信を行なうときに、その受信電界強度に基づいて、隣接する矢印板12の発光点灯制御手段Aを選択して送信し、複数の矢印板12の並べられた順に点灯タイミング属性の転送が連鎖するように、矢印板点灯制御装置100を構成している。そのため、各矢印板12の点灯タイミング属性転送手段Bは、他の矢印板12の発光点灯制御手段Aとの間の無線通信に伴う受信電界強度に基づいて、隣接する矢印板12を正確に特定でき、複数の矢印板12の末端から順に点灯タイミング属性の転送が正しく連鎖する。
【0046】
このように上記実施態様においては、複数の矢印板12を決められた順番通りに並べて設置する必要がないから、大きな労力を省略できる。また、複数の矢印板12に対して付与される点灯タイミング属性の順位は、起動の順番で付与されるものではないため、矢印表示発光部11に対する表示制御動作が、起動の順番に制約されるという問題も解消できる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
A 発光点灯制御手段
B 点灯タイミング属性転送手段(位置関係認識手段)
11 矢印表示発光部
12 矢印板
14 受信電界強度検出部(位置関係認識手段)
15 電界強度判定部(位置関係認識手段)
18,19 無線アンテナ
21 金属板(電磁シールド体)
22 操作手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7