(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
カラー映像を投射するプロジェクターには、高速に回転するカラーホイールを用いて光源から出力された白色光を赤、緑、青の三原色の色光に順次分離し、分離された各色光を映像信号にしたがって順次光変調することでカラー映像を形成するフィールドシーケンシャル方式(単板方式とも呼ばれる)の構成が知られている。光変調に用いる映像形成素子には、液晶パネルやDMD(Digital Micro-mirror Device:登録商標)等が利用される。
【0003】
上述したカラーホイールを用いるプロジェクターでは、従来、高輝度な放電ランプ等を光源として用いる構成が主流であった。しかしながら、近年は光源の長寿命化や低消費電力化等を実現するため、レーザダイオードやLED(Light Emitting Diode)等の半導体素子を光源に用いたプロジェクターが開発されている。
例えば、特許文献1(特開2014−139689号公報)には紫外光及び青色光を発光するLEDやレーザダイオードを光源に用いたプロジェクターが記載されている。また、特許文献2(特開2012−212129号公報)には青色光を発光するレーザダイオードを光源に用いたプロジェクターが記載されている。
【0004】
光源としてLEDやレーザダイオードを用いる場合、該LEDやレーザダイオードは、通常、単一波長光しか出力できない。そのため、特許文献1や2に記載されたプロジェクターでは、赤、緑、青の三原色の各色光を得るために、光源から出力された光を励起光として蛍光体に照射し、該光源から直接得られない色光をそれぞれ蛍光体で発光させている。例えば、青色のレーザ光を発光するレーザダイオードを光源に用いる場合は、蛍光体で赤色光や緑色光を発光させる。蛍光体は、発光する色光によって(蛍光体の種類によって)発光効率が異なるため、特許文献1では、波長が異なる2種類以上の光源を備え、蛍光体に応じて励起光として用いる光源を切り換えることを提案している。
【0005】
なお、蛍光体の発光効率の差異による影響は蛍光体の種類を減らすことでも軽減できる。例えば、青色のレーザ光を励起光に用いて赤色光及び緑色光を発光させる場合、赤色光と緑色光とを個別の蛍光体で発光させるのはなく、赤色と緑色の成分を含む黄色光を発光する蛍光体を用いることが考えられる。その場合、カラーホイールを用いて該黄色光から赤色光及び緑色光を色分離すればよい。以下では、光源や蛍光体等を備えた、映像形成素子にカラー映像を形成するための各色光を出力する装置を光源装置と称す。
【0006】
このように、青色のレーザ光を発光するレーザダイオードを光源装置に備えるプロジェクターでは、放電ランプ等を光源装置に備えるプロジェクターよりも色純度や彩度が高い青色光を得ることができる。
しかしながら、放電ランプ等を備える光源装置と同程度の輝度の各色光をレーザダイオードを備える光源装置から出力させる場合、青色光は、赤色光や緑色光と同一輝度であっても、赤色光や緑色光よりも明るく見えてしまう。これはレーザ光で得られる青色光の彩度が高いことが原因であり、ヘルムホルツ・コールラウシュ効果(H−K効果)として知られている。
したがって、青色のレーザ光を光源に用いると、青色光と、赤色光及び緑色光との彩度の差が大きくなり、放電ランプ等を光源とするプロジェクターよりも投射映像にカラーブレーキングがより顕著に表れてしまう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は投射映像のカラーブレーキングを低減できるプロジェクター及び画像光投射方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため本発明のプロジェクターは、フィールドシーケンシャル方式のプロジェクターであって、
原色の波長域にピーク波長を有する原色光を出力する、前記原色の波長域における前記ピーク波長が異なる複数の光源と、
前記複数の光源から出力された原色光を空間的に変調して画像光を形成する映像形成素子を含む、前記映像形成素子まで前記複数の光源から出力された原色光を導く照明光学系と、
前記映像形成素子で形成された画像光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記複数の光源から出力される原色光のうち、ピーク波長が最長の原色光の輝度と、ピーク波長が最短の原色光の輝度とが同じである。
または、フィールドシーケンシャル方式のプロジェクターであって、
原色の波長域にピーク波長を有する原色光を出力する、前記原色の波長域における前記ピーク波長が異なる複数の光源と、
前記複数の光源から出力された原色光を空間的に変調して画像光を形成する映像形成素子を含む、前記映像形成素子まで前記複数の光源から出力された原色光を導く照明光学系と、
前記映像形成素子で形成された画像光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記複数の光源に流れる電流値が同じである。
【0010】
一方、本発明の画像光投射方法は、フィールドシーケンシャル方式のプロジェクターにおける画像光投射方法であって、
原色の波長域にピーク波長を有する、前記原色の波長域における前記ピーク波長が異なる原色光を複数の光源から出力し、
前記複数の光源から出力された原色光を、該原色光を空間的に変調して画像光を形成する映像形成素子まで照明光学系により導き、
前記映像形成素子で形成された画像光を投射光学系により投射し、
前記複数の光源から出力される原色光のうち、ピーク波長が最長の原色光の輝度と、ピーク波長が最短の原色光の輝度とが同じである方法である。
または、フィールドシーケンシャル方式のプロジェクターにおける画像光投射方法であって、
原色の波長域にピーク波長を有する、前記原色の波長域における前記ピーク波長が異なる原色光を複数の光源から出力し、
前記複数の光源から出力された原色光を、該原色光を空間的に変調して画像光を形成する映像形成素子まで照明光学系により導き、
前記映像形成素子で形成された画像光を投射光学系により投射し、
前記複数の光源に流れる電流値が同じである方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明について図面を参照して説明する。
上述したように、H−K効果は、彩度が高い青色のレーザ光が実際よりも明るく見えることで起こる。したがって、カラーブレーキングは青色光の「彩度」または「輝度」を下げれば低減すると考えられる。
しかしながら、青色光の輝度を変動させると、赤、緑、青の各色光を合成することで白色光を生成する投射映像(カラー映像)の色味が変わってしまうために好ましくない。例えば、青色光の輝度を下げると、投射映像全体が黄色寄りの映像となってしまう。
そこで、本発明では、青色光の「彩度」を下げることでカラーブレーキングを低減させる。具体的には、ピーク波長が異なる青色光を出力する複数種類のレーザダイオードを光源として用意し、それらを同時に発光させて青色光の波長領域幅を広げることで青色光の彩度を低下させる。
【0013】
図1は、本発明のプロジェクターが備える光源装置の一構成例を示す模式図である。
図1に示すように、光源装置1は、光源1a、コリメータレンズ1b、レンズ1c〜1e、1i、1k及び1m、ミラー1f、拡散板1g、ダイクロイックミラー1h、1/4波長板1j、蛍光体ユニット1l、並びにカラーフィルタユニット1nを備える。
光源1aには、青色の波長域にピーク波長を有する青色光を出力する、半導体素子である複数の青色レーザダイオード(LD)が用いられる。各青色LDからは、例えばS偏光の青色レーザ光が出力される。
コリメータレンズ1bは、青色LD毎に設けられ、各青色LDから出力された青色光を平行光束に変換する。
レンズ1c〜1eは、光源1aからコリメータレンズ1bを介して入射される各青色光(入射光束)を、光束径を縮小した平行光束に変換する。出射光束の径を入射光束よりも小さくすることで、レンズ1c〜1e以降に配置される部材のサイズを小さくできる。ここでは3つのレンズ1c〜1eを用いる例を示しているが、レンズの数は3つに限定されるものではなく、必要に応じて増減してもよい。
【0014】
レンズ1c〜1eから出射したレーザ光(青色光)は、ミラー1fにより光路が変更されて拡散板1gに入射され、該拡散板1gにて拡散された後、ダイクロイックミラー1hに入射される。
レーザ光は、コヒーレントな光であり、拡散せずに伝播するため、光源1aの出力光がそのまま蛍光体ユニット1lまで到達すると、後述する蛍光体ホイール上に青色LD毎の各出力光がそれぞれ集光した状態で照射される。その場合、蛍光体ホイール上における各集光部位の温度が上昇して蛍光体ホイールの破損を招くおそれがある。拡散板1gは、青色LD毎の各出力光が均一な強度分布で蛍光体ホイール上に照射されるように、青色LD毎の各出力光を拡散させる。
【0015】
ダイクロイックミラー1hは、S偏光(第1の直線偏光)で入射する光に対して、光源1aの波長よりも長い第1の波長以上の光を透過し、第1の波長未満の光を反射する特性を有する。また、ダイクロイックミラー1hは、P偏光(第2の直線偏光)で入射する光に対して、光源1aの波長よりも短い第2の波長以上の光を透過し、第2の波長未満の光を反射する特性を有する。このような特性を有するダイクロイックミラー1hは、誘電体多層膜によって実現できる。
ダイクロイックミラー1hは、拡散板1gを介して入射されたレーザ光(青色光)を蛍光体ユニット1lへ導く。ダイクロイックミラー1hと蛍光体ユニット1lとの間の光路上には、1/4波長板1j、並びにレンズ1i及び1kが配置されている。
【0016】
蛍光体ユニット1lは、レーザ光(青色光)を励起光として発光する蛍光体が設けられた蛍光体領域及びレーザ光(青色光)を反射する反射領域が配置された蛍光体ホイール10と、該蛍光体ホイール10を回転させるモータを含む駆動部とを有する。
図2に蛍光体ホイール10の一例を示す。
図2に示すように、蛍光体ホイール10は、黄色光を発光する蛍光体が設けられた黄色蛍光体領域10Yと、レーザ光(青色光)を反射する反射膜(鏡)が設けられた反射領域10Bとを備えている。黄色蛍光体領域10Y及び反射領域10Bは、蛍光体ホイール10の円周に沿って並ぶように配置されている。黄色蛍光体領域10Y及び反射領域10Bの円周方向における面積の割合(円周方向の分割比)は、光源装置1の出力光に含む黄色光、赤色光、緑色光及び青色光の光強度のバランスに応じて適宜設定される。
【0017】
1/4波長板1jは、一方の面から入射された直線偏光(ここではS偏光)を円偏光に変換し、他方の面から入射された円偏光を、上記一方の面から入射される直線偏光とは異なる偏光面(90°異なる)の直線偏光(P偏光)に変換する。そのため、ダイクロイックミラー1hからの青色光(S偏光)は、1/4波長板1jを通過することで円偏光となる。レンズ1i及び1kは、1/4波長板1jを通過した青色光(円偏光)を蛍光体ユニット1lの蛍光体ホイール10上に集光する。このとき、蛍光体ホイール10を回転させることで、レンズ1kを通過した青色光(円偏光)が黄色蛍光体領域10Y及び反射領域10Bに順次照射される。黄色蛍光体領域10Yでは青色光(円偏光)により励起された蛍光体が黄色蛍光(非偏光)を発する。反射領域10Bはレンズ1i及び1kを通過した青色光(円偏光)を該レンズ1k方向へ反射する。
【0018】
黄色蛍光体領域10Yからの黄色蛍光と反射領域10Bからの青色光(円偏光)とは、レンズ1k及び1i、並びに1/4波長板1jを順次通過してダイクロイックミラー1hに入射される。レンズ1k及び1iは、蛍光体ホイール10からの光が平行光となるレンズ構成であればよく、必要に応じて増減してもよい。
ここで、反射領域10Bからの青色光(円偏光)は、1/4波長板1jを再び通過することで、光源1aの偏光(S偏光)から1/2波長位相が異なる直線偏光(P偏光)に変換されてダイクロイックミラー1hに入射される。黄色蛍光体領域10Yからの黄色蛍光は、振動方向がランダムな偏光(非偏光)であるため、1/4波長板1jを透過しても光の特性は変化しない。また、ダイクロイックミラー1hは、青色光よりも波長が十分に長い黄色光を透過させるため、1/4波長板1jを通過した黄色蛍光(非偏光)及び青色光(P偏光)はダイクロイックミラー1hを透過し、レンズ1mによって集光されてカラーフィルタユニット1nに照射される。
【0019】
カラーフィルタユニット1nは、照射光を色分離するカラーホイール11と該カラーホイール11を回転させるモータを含む駆動部とを有する。
図3にカラーホイール11の一例を示す。
図3に示すように、カラーホイール11は、黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板(拡散領域)11Bを有する。
図3は、カラーホイール11に黄色透過フィルター11Yを備える構成例を示しているが、黄色透過フィルター11Yは無くてもよい。
黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bは、カラーホイール11の円周に沿って並ぶように配置されている。
黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R及び緑色透過フィルター11Gの領域は、
図2に示した蛍光体ホイール10の黄色蛍光体領域10Yに対応し、拡散板11Bの領域は
図2に示した蛍光体ホイール10の反射領域10Bに対応する。黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bの円周方向における面積の割合(円周方向の分割比)は、
図2に示した蛍光体ホイール10のそれぞれに対応する領域の割合と同じである。
【0020】
蛍光体ホイール10及びカラーホイール11は、互いに同期して回転するように対応する駆動部により制御される。黄色蛍光体領域10Yが発する黄色蛍光には、赤色成分及び緑色成分、並びにそれらを混色した黄色成分の光を含む。そのため、黄色成分の光が黄色透過フィルター11Yを透過し、赤色成分の光が赤色透過フィルター11Rを透過し、緑色成分の光が緑色透過フィルター11Gを透過する。反射領域10Bからの青色光は、拡散板11Bにより拡散されつつ出力される。拡散板11Bによる青色光の拡散角は、例えば10度程度であればよいが、必要に応じて適宜変更できる。
【0021】
このような構成において、上述したように、本実施形態では光源1aとしてピーク波長が異なる複数種類の青色LD(励起光源)を用いて青色光の波長領域幅を広げることで、青色光の彩度を低下させて、カラーブレーキングを低減する。
【0022】
青色LDには、例えば、出力光のピーク波長が450nm付近の青色LDと、出力光のピーク波長が460nm付近の青色LDとを用いる。光源1aに用いる青色LDは2種類に限定されるものではなく、より多くの種類を備えていてもよい。以下では、光源1aに用いる一方の青色LDを第1青色LD12と称し、光源1aに用いる他方の青色LDを第2青色LD13と称す。
第1青色LD12及び第2青色LD13は、例えば
図4に示すように格子状に配列され、行方向及び列方向で隣接する青色LDが互いに異なるように交互に配置される。第1青色LD12及び第2青色LD13は、格子状に配列される必要はなく、千鳥状に配列されていてもよい。
図4は、第1青色LD12及び第2青色LD13を、6行4列の格子状に配列する例を示している。青色LDの数は、6×4=24個に限定されるものではなく、必要に応じて増減してもよい。
【0023】
上述したように、光源1aが備える第1青色LD及び第2青色LDの出力光は拡散板1gによって拡散される。また、カラーホイール11通過後の光は、後述するようにライトトンネル2aによって輝度分布が均一化される。但し、本実施形態の光源装置1では、光源1aとしてピーク波長が異なる複数種類の青色LDを用いるため、例えば第1青色LD12や第2青色LD13が偏って配置されると、蛍光体ホイール10やカラーホイール11に照射される光に輝度ムラや色ムラが生じてしまう。したがって、第1青色LD12及び第2青色LD13は、
図4に示したように、行方向及び列方向で隣接する青色LDが互いに異なるように、交互に配置することが好ましい。光源1aとして、より多くの種類の青色LDを用いる場合も、同一種類の青色LDが偏って配置されないようにすればよい。
【0024】
また、光源1aが備える第1青色LD12及び第2青色LD13の輝度が異なっていると、輝度が高い青色光がより明るく見えることで青色光の彩度が高くなってしまう。そのため、光源1aが備える第1青色LD12及び第2青色LD13の輝度は同じ(または同程度)にする。その場合、第1青色LD12から出力される青色光と第2青色LD13から出力される青色光の混色光の彩度を最も低減できる。光源1aとして、より多くの種類の青色LDを用いる場合も、ピーク波長が最長の青色光の輝度とピーク波長が最短の青色光の輝度とを同じ(または同程度)にすればよい。
第1青色LD12の輝度と第2青色LD13の輝度とを同じにするには、例えば第1青色LD12と第2青色LD13とが同様の特性(順電流−相対光度特性)の場合、第1青色LD12と第2青色LD13とに流す電流値を同じにすればよい。その場合、例えば
図5A及びBに示すように配線基材14を用いて複数の第1青色LD12及び第2青色LD13を交互に直列に接続すれば、該直列に接続された第1青色LD12及び第2青色LD13に流れる電流値をそれぞれ同じにできる。光源1aとして、より多くの種類の青色LDを用いる場合も、各青色LDを直列に接続してそれらに流れる電流値をそれぞれ同じにすればよい。
なお、
図5Aでは第1青色LD12及び第2青色LD13が3つのブロックに分割され、
図5Bでは第1青色LD12及び第2青色LD13が2つのブロックに分割されて、ブロック毎に第1青色LD12及び第2青色LD13が直列に接続される構成例を示している。すなわち、
図5A及びBは、それぞれが2以上の光源を有する複数のブロックに分割された例を示している。これらのブロックは、直列に接続されて共通の電源装置から電流が供給されてもよく、ブロック毎に個別の電源装置から同じ電源電流が供給されてもよい。
【0025】
また、上述したように光源1aの出力光は、拡散板1gによって拡散されることで、第1青色LD12から出力される青色光と第2青色LD13から出力される青色光とが混色した色光が蛍光体ホイール10に照射される。したがって、光源1aに用いる青色LDは、混色光の状態で所望の青色光が得られる波長領域内にピーク波長があればよい。例えば、従来、光源として用いていた放電ランプ等で得られる青色光の波長は400nm〜480nmであるため、光源1aに用いる青色LDも400nm〜480nmの範囲にピーク波長があればよい。
但し、光源1aに用いる青色LDのピーク波長は、光源装置1が備えるダイクロイックミラー1hの特性も考慮して選択することが望ましい。
【0026】
図6は、ダイクロイックミラーの分光透過率特性及び光源の発光スペクトルの一例を示すグラフである。
図6は、S偏光(Ts)の青色光の及びP偏光(Tp)の青色光の分光透過率特性の一例をそれぞれ示している。
上述したように、
図1に示した光源装置1が備えるダイクロイックミラー1hは、S偏光のカットオフ波長(第1の波長)からP偏光のカットオフ波長(第2の波長)までの波長域において、S偏光とP偏光とを分離できる。
図6に示す特性を有するダイクロイックミラーは、S偏光の青色光のカットオフ波長が480nm付近にあり、P偏光の青色光のカットオフ波長が430nm付近にある。なお、
図6では、出力光のピーク波長が450nm付近の青色LDの発光スペクトルと出力光のピーク波長が460nm付近の青色LDの発光スペクトルとを同時に示している。
したがって、S偏光のカットオフ波長(第1の波長)よりも長い波長域、並びにP偏光のカットオフ波長(第2の波長)よりも短い波長域では、ダイクロイックミラー1hによるS偏光とP偏光の分離が不可能になる。そのため、光源1aに用いる青色LDは、上記第1の波長から第2の波長までの範囲内にピーク波長があるものを選択すればよい。通常、ダイクロイックミラー1hの上記第1の波長から第2の波長までは、およそ50nm程度である。そのため、光源1aには、ピーク波長の差の範囲が50nm以内となるような複数種類の青色LDを用いればよい。
【0027】
次に
図1に示した光源装置1を備えるプロジェクターの一例について図面を用いて説明する。
図7は、本発明のプロジェクターの一構成例を示す模式図である。
図7に示すように、プロジェクターは、光源装置1、照明光学系2及び投射光学系3を有する。
光源装置1には、
図1に示した光源装置1を用いればよい。
照明光学系2は、ライトトンネル2a、レンズ2b、2c及び2e、ミラー2d、並びに映像形成素子2fを備える。投射光学系3は投射レンズから構成される。
【0028】
光源装置1が備えるカラーフィルタユニット1nを通過した黄色光、赤色光、緑色光及び青色光は照明光学系2のライトトンネル2aに入射される。
ライトトンネル2aは、入射された光を繰り返し全反射させることで輝度分布が均一となるようにして出力する。ライトトンネル2aから出力された光は、レンズ2b及び2c、ミラー2d、並びにレンズ2eを介して映像形成素子2fに照射される。
【0029】
映像形成素子2fは、赤、緑、黄及び青の光束をそれぞれ空間的に変調し、色光毎の画像光を形成する。映像形成素子2fには、上述したDMDを用いればよい。映像形成素子2fで形成された画像光は、投射光学系3が備える投射レンズにより拡大されて不図示のスクリーン等に投射される。
【0030】
本発明によれば、光源装置1としてピーク波長が異なる青色光を出力する複数種類の青色LDを備えることで、光源装置1から出力される青色光の彩度が低下する。
そのため、投射映像のカラーブレーキングを低減できるプロジェクターが得られる。
【0031】
なお、
図7は、蛍光体ホイール10で反射した青色光を映像形成素子(DMD)2fまで導く光源装置1及び照明光学系2を備えた構成例を示しているが、プロジェクターの光学系は
図7に示した構成に限定されるものではない。例えば、蛍光体ホイールを透過した青色光を映像形成素子(DMD)まで導く光学系を備えたプロジェクターもある。
図8はそのようなプロジェクターの構成例を示している。
【0032】
図8は、本発明のプロジェクターの他の構成例を示す模式図である。
図8に示すプロジェクターは、励起光学系100、リレー光学系200、色合成系300、照明光学系400及び投射光学系500を有する。
図8に示すプロジェクターでは、励起光学系100、リレー光学系200及び色合成系300が、
図1に示した光源装置1に相当する。
【0033】
励起光学系100は、光源100a、コリメータレンズ100b、レンズ100c〜100e、100g及び100h、蛍光体ユニット100i、並びに拡散板1fを備える。リレー光学系200は、レンズ200a、200b、200d及び200f、並びにミラー200c、200e及び200gを備える。色合成系300は、ダイクロイックミラー300a、レンズ300b及びライトトンネル300cを備える。照明光学系400は、レンズ400a、400b及び400d、ミラー400c、並びに映像形成素子(DMD)400eを備える。投射光学系500は投射レンズから構成される。
【0034】
光源100aには、
図1に示した光源装置1と同様に、ピーク波長が異なる青色光を出力する複数種類の青色レーザダイオード(LD)が用いられる。
コリメータレンズ100bは、青色LD毎に設けられ、青色LDから出力された青色光を平行光束に変換する。
レンズ100c〜100eは、光源100aからコリメータレンズ100bを介して入射される各青色光(入射光束)を、光束径を縮小した平行光束に変換する。ここでは3つのレンズ100c〜100eを用いているが、レンズの数は3つに限定されるものではなく、必要に応じて増減してもよい。
レンズ100c〜100eから出射した青色光は、拡散板100fに入射され、該拡散板100fにて拡散された後、ダイクロイックミラー300aに入射される。
【0035】
図8に示すダイクロイックミラー300aは、波長が比較的短い青色光を透過させ、波長が比較的長いその他の色光(黄色光、緑色光、赤色光等)を反射する特性を備えている。すなわち、
図1に示した光学装置1が備えるダイクロイックミラー1hのように、偏光(S偏光及びP偏光)によって青色光の透過/反射を切り換える構成ではない。そのため、
図8に示すプロジェクター(光学装置)では、ダイクロイックミラー300aの特性を考慮して、光源100aに用いる青色LDのピーク波長を選択する必要がない。その場合、光源100aに用いる青色LDは、400nm〜480nmの範囲にピーク波長があるものを用いることができる。
【0036】
蛍光体ユニット100iは、レーザ光(青色光)を励起光として発光する蛍光体が設けられた蛍光体領域及びレーザ光(青色光)を透過させる透過領域が配置された蛍光体ホイールと、該蛍光体ホイールを回転させるモータを含む駆動部とを有する。蛍光体ホイールには、例えば赤色光を発光する蛍光体が設けられた赤色蛍光体領域、緑色光を発光する蛍光体が設けられた緑色蛍光体領域、青色光を透過させる透過領域が設けられている。蛍光体ホイールには、黄色光を発光する蛍光体が設けられた黄色蛍光体領域が設けられていてもよい。
ダイクロイックミラー300aを透過した青色光はレンズ100g及び100hにより蛍光体ユニット100iが備える蛍光体ホイール上に集光する。このとき、蛍光体ホイールを回転させることで、レンズ100hを通過した青色光(円偏光)が、赤色蛍光体領域、緑色蛍光体領域及び透過領域に順次照射される。その結果、蛍光体ホイールは、赤色光及び緑色光を順次発光し、それに続いて青色光を透過させる。なお、赤色光の発光、緑色光の発光及び青色光の透過の順番は、映像形成素子により形成する画像光の色の順に一致していればよく、赤、緑、青の順である必要はない。
【0037】
蛍光体ホイールを透過した青色光は、リレー光学系200によってダイクロイックミラー300aまで導かれ、ダイクロイックミラー300aを透過した後、レンズ300aにより集光されてライトトンネル300cへ入射される。
【0038】
一方、青色光を励起光にして発光した蛍光体ホイールからの赤色蛍光及び緑色蛍光は、レンズ100g及び100hを通過してダイクロイックミラー300aへ入射される。ダイクロイックミラー300aは、蛍光体ホイールからの赤色蛍光及び緑色蛍光を反射して光路を変更し、ライトトンネル300cへ導く。
【0039】
ライトトンネル300cから出力された光は、
図1に示したプロジェクターと同様に、レンズ400a及び400b、ミラー400c、並びにレンズ400dを介して映像形成素子(DMD)400eに照射される。映像形成素子400eで形成された画像光は、投射光学系500が備える投射レンズ500aにより拡大されて不図示のスクリーン等に投射される。
【0040】
図8に示した構成においても、投射映像のカラーブレーキングを低減できるプロジェクターが得られる。
さらに、
図8に示した光源装置(励起光学系100、リレー光学系200及び色合成系300)では、ダイクロイックミラー300aの特性を考慮して、光源100aに用いる青色LDのピーク波長を選択する必要がない。そのため、
図1に示した光源装置1と比べて光源100aに用いる青色LDの選択自由度が向上する。
【0041】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細は本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更が可能である。