(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の代表的な実施形態について、
図1〜
図27を参照して説明する。
図1に示すように、作業工具の一例として、石膏ボードなどの被加工材に対して所定の作業を行うスクリュードライバ100が構成される。スクリュードライバ100は、本体部101、ハンドル107を主体として構成されている。本体部101の先端領域に、工具ビット119が取り外し可能に装着される。なお、説明の便宜上、工具ビット119の長軸方向(
図1の左右方向)に関して、工具ビット119側(
図1の右側)をスクリュードライバ100の前側と規定し、ハンドル107側(
図1の左側)をスクリュードライバ100の後側と規定する。また、
図1の上下方向に関して、
図1の上側をスクリュードライバ100の上側と規定し、
図1の下側をスクリュードライバ100の下側と規定する。
【0018】
図1および
図2に示すように、本体部101は、メインハウジング103、フロントハウジング104、およびロケータ105を主体として構成されている。メインハウジング103は、主としてモータ110を収容している。フロントハウジング104は、メインハウジング103の前側に取り付けられており、スピンドル160を回転駆動する駆動機構120を収容している。この本体部101が、本発明における「工具本体」に対応する実施構成例である。
【0019】
図2に示すように、メインハウジング103の前端には、フロントハウジング104の内部とメインハウジング103の内部を区画するための区画壁103aが上下方向に延在するように設けられている。モータ110の出力軸111は、区画壁103aに保持されたベアリング111aと、メインハウジング103の後方部分に保持されたベアリング(図示省略)によって回転可能に支持されている。この出力軸111は、工具ビット119(スピンドル160)の長軸方向に平行に配置されている。ロケータ105は、フロントハウジング104の先端領域において、フロントハウジング104を覆うように取り付けられている。工具ビット119は、本体部101の先端領域において、ロケータ105から工具ビット119の先端が前方に突出するように、スピンドル160に対して取り外し可能に装着される。ロケータ105は、フロントハウジング104に対して、工具ビット119の長軸方向に相対移動可能であり、当該長軸方向において選択された所定の位置に固定される。これにより、ロケータ105から工具ビット119が突出する突出量が適宜設定される。これにより、ねじ締め深さが設定される。
【0020】
図1に示すように、ハンドル107は、本体部101(メインハウジング103)の後方に連接されている。このハンドル107には、トリガ107aおよび切替スイッチ107bが設けられている。トリガ107aが操作されることで、電源ケーブル109を介して外部から電流が供給されて、モータ110が駆動される。また、切替スイッチ107bが操作されることで、モータ110の出力軸111の回転方向が切り替えられる。すなわち、出力軸111は、正回転および逆回転のうちのどちらかの回転方向が選択されて駆動される。このモータ110が、本発明における「モータ」に対応する実施構成例である。
【0021】
[駆動機構]
図2および
図3に示すように、駆動機構120は、駆動ギア125、リテーナ130、ローラ140、ロックスリーブ145、バネ受け部材150、コイルバネ155等を主体として構成されている。なお、
図3においては、駆動ギア125の図示を省略している。この駆動機構120が、本発明における「回転駆動機構」に対応する実施構成例である。
【0022】
[駆動ギア]
図2に示すように、駆動ギア125は、工具ビット119を保持するスピンドル160と同軸状に配置されている。この駆動ギア125は、底壁126と側壁127を有し、前方に向かって開放された略カップ状の部材である。底壁126の中心部には、スピンドル160の後側軸部162が貫通する貫通孔が設けられている。側壁127の内側は、円筒状に形成された内部空間が形成されている。駆動ギア125の内部空間に、ベアリング123、リテーナ130、ローラ140、ロックスリーブ145およびコイルバネ155等が収容されている。ベアリング123は、スピンドル160を回転可能に保持する。ベアリング123は、ベアリング123の外輪に取り付けられたスペーサ124を備える。すなわち、スペーサ124は、駆動ギア125と一体に回転するように設けられている。側壁127の外周部には、モータ110の出力軸111に形成されたギア歯112と係合するギア歯128が設けられている。この駆動ギア125は、底壁126の後方に設けられたニードルベアリング121によって本体部101(区画壁103a)に対して回転可能に支持されている。この駆動ギア125が、本発明における「駆動部材」に対応する実施構成例である。また、ベアリング123が、本発明における「ベアリング」に対応する実施構成例である。
【0023】
[リテーナ]
図2〜
図5に示すように、リテーナ130は、略カップ状の部材であり、駆動ギア125と同軸状に配置されている。このリテーナ130は、駆動ギア125の底壁126に対向する基部131と、駆動ギア125の側壁127に対向する第1側壁132および第2側壁133を有している。基部131には、リテーナ130の後面から後方に突出する当接部131Aが形成されている。この当接部131Aは、ベアリング123の外輪に取り付けられたスペーサ124に当接するように構成されている。
【0024】
図2、
図4および
図5に示すように、基部131には、スピンドル160の後側軸部162が貫通する貫通孔が設けられている。また、
図4および
図5に示すように、基部131の貫通孔には、スピンドル160の周方向に所定の長さを有する係合孔131a,131bが設けられている。係合孔131aには、円筒状の係合ピン138が保持される。この係合ピン138は、スピンドル160の長軸方向と平行に保持される。係合孔131bには、係合ボール139がスピンドル160とともに当該スピンドル160の長軸方向に移動可能に保持されている。
【0025】
図6に示すように、係合孔131aは、リテーナ130の軸方向(
図6の上下方向)に関して、一定の幅を有する溝として構成されている。すなわち、リテーナ130の周方向に関して、係合ピン138は係合孔131a内を移動可能である。一方、係合孔131bは、リテーナ130の軸方向に関して、リテーナ130の前側(
図6の上側)と後側(
図6の下側、ベアリング124側)で幅が異なる溝として構成されている。具体的には、前側の第1領域131b1に対して、後側の第3領域131b3はリテーナ130の周方向の長さが大きくなるように、第2領域131b2に傾斜部が設定されている。第1領域131b1の幅は、係合ボール139の直径とほぼ同じ長さに設定されている。すなわち、リテーナ130の周方向に関して、第1領域131b1における係合ボール139の移動が規制されている。一方、リテーナ130の周方向に関して、係合ボール139はそれぞれ第2領域131b2および第3領域131b3内を移動可能である。
【0026】
図2および
図7に示すように、係合孔131a,131bに対応して、スピンドル160には軸方向に延在する溝部162aおよび溝部162aと対向するボール係合部162bが形成されている。
図7に示すように、溝部162aおよびボール係合部162bのスピンドル160の軸方向に直交する断面は、スピンドル160とリテーナ130を連結する円柱状の係合ピン138および係合ボール139にそれぞれ対応して、略半円状に形成されている。
【0027】
図6に示すように、係合ボール139が係合孔131bの第1領域131b1に位置する状態では、
図7に示すように、係合ボール139によってリテーナ130とスピンドル160が一体に回転するように保持される。なお、
図6は、スピンドル160が最も前方に位置した状態における係合ボール139の位置を示している。一方、係合ボール139が第2領域131b2または第3領域131b3に位置する状態では、リテーナ130の周方向に関して、係合ピン138は係合孔131a内を移動可能であり、係合ボール139はそれぞれ第2領域131b2または第3領域131b3内を移動可能であるため、係合ピン138および係合ボール139の移動範囲内において、リテーナ130とスピンドル160が相対的に回転する。
【0028】
また、
図3および
図4に示すように、第1側壁132および第2側壁133は、リテーナ130の軸方向(スクリュードライバ100の前後方向)に関して、基部131から前方に向かって突出するように形成されている。リテーナ130の中心軸を挟んで、それぞれ一対の第1側壁132と一対の第2側壁133が形成されており、換言すると、リテーナ130の周方向に関して、2つの第1側壁132の間に第2側壁133が配置されている。
図4に示すように、リテーナ130の周方向に関して、第1側壁132と第2側壁133の間には所定の空間が形成されている。この所定の空間が、ローラ140を保持するためのローラ保持部134として規定されている。これにより、リテーナ130は、第1側壁132および第2側壁133の間において4つのローラ140を保持する。このリテーナ130が、本発明における「リテーナ」に対応する実施構成例である。また、ローラ140が、本発明における「伝達部材」に対応する実施構成例である。
【0029】
また、
図3および
図4に示すように、第2側壁133の前端部には、スピンドル160の回転軸線(リテーナ130の中心軸線)に対して傾斜する傾斜面で構成される傾斜部133aが設けられている。2つの第2側壁133に形成された傾斜部133aは、リテーナ130の中心軸線に対して点対称に形成されている。換言すると、2つの傾斜部133aは、リテーナ130の周方向に沿って形成されたリード面として構成されている。この2つの傾斜部133aは、リテーナ130の軸方向に直交する断面におけるリテーナ130の外形線(外周)に対して同じ角度で傾斜するように形成されている。すなわち、2つの傾斜部133aは二重らせん状に形成されている。この傾斜部133aが、本発明における「第1係合部」および「リード面」に対応する実施構成例である。
【0030】
[ロックスリーブ]
図2、
図3および
図8に示すように、ロックスリーブ145は、略六角柱状の部材であり、内側には中空部が形成されている。このロックスリーブ145は、リテーナ130および駆動ギア125と同軸状にリテーナ130の前方に配置されている。ロックスリーブ145の前端部は、スピンドル160の前側軸部161の後端部に当接可能に配置されている。ロックスリーブ145は、六角形の6つの辺に対応して、ローラ140と係合可能な4つのローラ係合部146と、リテーナ130の第2側壁133とスピンドル160の軸方向に接離可能な2つのリテーナ係合部147を有している。このロックスリーブ145が、本発明における「被動部材」および「切替部材」に対応する実施構成例である。
【0031】
図9に示すように、ローラ係合部146は、スピンドル160の回転軸線(ロックスリーブ145の中心軸線)に対してそれぞれ平行な4つの平面によって構成されている。なお、対向する2つの面は互いに平行に形成されている。このローラ係合部146は、リテーナ130の径方向に関して、第1側壁132および第2側壁133より中心側において、ローラ140と係合可能(当接可能)に構成されている。
【0032】
図9に示すように、リテーナ係合部147は、リテーナ130の径方向(スピンドル160の径方向)に関して、ロックスリーブ145の中心軸線からリテーナ130の半径と略同一距離離れた領域に形成されている。
図8に示すように、スクリュードライバ100の前後方向に関して、リテーナ係合部147の後端部には、スピンドル160の回転軸線(ロックスリーブ145の中心軸線)に対して傾斜する傾斜面で構成される傾斜部147aが設けられている。この傾斜部147aは、2つの第2側壁133の傾斜部133aにそれぞれ対応して形成されている。すなわち、傾斜部147aは、傾斜部133aと係合可能(当接可能)である。したがって、傾斜部133aと同様に、2つの傾斜部147aは、ロックスリーブ145の中心軸線に対して点対称に形成されている。換言すると、2つの傾斜部147aは、ロックスリーブ145の軸方向周りの周方向に沿って形成されたリード面として構成されている。この2つの傾斜部147aは、ロックスリーブ145の軸方向に直交する断面におけるリテーナ係合部147の外形線(外周)に対して同じ角度で傾斜するように形成されている。すなわち、2つの傾斜部147aは二重らせん状に形成されている。この傾斜部147aが、本発明における「第2係合部」および「リード面」に対応する実施構成例である。
【0033】
[バネ受け部材]
図2および
図10に示すように、バネ受け部材150は、断面が略六角形状の部材である。このバネ受け部材150は、リテーナ130の内部に収容されている。バネ受け部材150は、スクリュードライバ100の前後方向に関して、リテーナ130の基部131とロックスリーブ145の間に配置される。バネ受け部材150には、スピンドル160が貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔には、略半円状の係合孔150aが形成されている。これにより、スピンドル160の後側軸部162の溝部162aに配置された係合ピン138が、バネ受け部材150の係合孔150aに係合する。したがって、バネ受け部材150は、スピンドル160と常時一体に回転するようにスピンドル160に連結される。このバネ受け部材150の外周部には、六角形の6つの辺のうち4つの辺に対応した4つのローラ係合部151が形成されている。このローラ係合部151はそれぞれ、スピンドル160の回転軸線に平行な平面として形成されている。このバネ受け部材150が、本発明における「被動部材」に対応する実施構成例である。
【0034】
[コイルバネ]
図2および
図3に示すように、コイルバネ155は、スピンドル160と同軸状にスピンドル160が貫通するように配置されている。このコイルバネ155の前側領域は、ロックスリーブ145の中空部に収容され、コイルバネ155の前端部がロックスリーブ145に当接している。また、コイルバネ155の後端部は、バネ受け部材150の前面に当接している。これにより、コイルバネ155は、ロックスリーブ145およびスピンドル160を前方に向かって付勢する。また、コイルバネ155は、バネ受け部材150、リテーナ130、および駆動ギア125を後方に向かって付勢する。このコイルバネ155が、本発明における「付勢部材」に対応する実施構成例である。
【0035】
[スピンドル]
図2、
図3および
図11に示すように、スピンドル160は、金属製の略円柱状の長尺状部材である。このスピンドル160は、スクリュードライバ100の前後方向(スピンドル160の長軸方向)に移動可能に設けられている。このスピンドル160は、前側軸部161および前側軸部161と一体に連結された後側軸部162を主体として構成されている。前側軸部161には、工具ビット119が取り外し可能に装着される。前側軸部161には、ボールおよびリーフスプリングが設けられている。これにより、リーフスプリングに付勢されたボールが工具ビット119に係合し、工具ビット119が前側軸部161に保持される。この前側軸部161は、フロントハウジング104に保持された前側ベアリング122によって回転可能に支持されている。また、
図2に示すように、前側軸部161を支持する前側ベアリング122の前方には、フロントハウジング104と前側軸部161の間に介在するオイルシール181が設けられている。
【0036】
後側軸部162は、前側軸部161と同軸状に前側軸部161に連結されている。この後側軸部162の後端部は、メインハウジング103の区画壁103aに設けられたシリンダ状の後端ベアリング165に対して前後方向に摺動可能かつ、回転可能に支持されている。この後端ベアリング165は、オイルレスベアリングとして構成されている。これにより、スピンドル160は、前側ベアリング122、および後端ベアリング165によって支持されている。
【0037】
この後側軸部162は、駆動ギア125、リテーナ130およびロックスリーブ145を貫通しており、後側軸部162の後端部は、駆動ギア125から後方に向かって突出している。溝部162aの後端部が係合ピン138に当接することで、スピンドル160の軸方向における前方への移動が規制される。一方、係合ピン138は、コイルバネ155の後端部に当接してスピンドル160の軸方向における前方への移動が規制される。
【0038】
図2に示すように、後側軸部162の内部には、後側軸部162の後端面に開口し、スピンドル160の内部を長軸方向に延在する中空部163が形成されている。すなわち、中空部163は、後端ベアリング165内に連通されている。また、後側軸部162には、当該後側軸部162を径方向に貫通し、中空部163とフロントハウジング104内部を連通する連通孔164が形成されている。これにより、中空部163を介してフロントハウジング104の内部と後端ベアリング165の内部が連通する。したがって、スピンドル160が後方に移動した際に、後端ベアリング165の内側の空気の圧縮を規制する。換言すると、連通孔164が設けられていることで後端ベアリング165の内部の空気が圧縮されず、スピンドル160の後方への移動が阻害されない。
【0039】
また、
図2に示すように、前側軸部161の後端領域には、ストッパ170と係合可能な係合部166と、ストッパ170と係合不能な非係合部167が形成されている。
図11に示すように、係合部166は、矩形断面の角柱状に形成され、非係合部167は、円形断面の円筒状に形成されている。係合部166の正方形断面の互いに対向する辺の距離は、非係合部167の円形断面の直径とほぼ同じ長さに設定されている。したがって、係合部166の正方形断面の対角線の長さは、非係合部167の円形断面の直径より長い。この係合部166の外表面が、本発明における「外表面」に対応する実施構成例である。
【0040】
[ストッパ]
図12に示すように、ストッパ170は、略円筒状の部材として形成されている。ストッパ170の内側には、スピンドル160の前側軸部161が貫通する貫通孔170Aが形成されている。この貫通孔170Aは、対向する2つの平面領域171と平面領域171を繋ぐ曲面領域172を備える。2つの平面領域171は、互いに平行であり、かつスピンドル160の軸方向に平行な面として構成されている。また、2つの曲面領域172もスピンドル160の軸方向に平行な面として構成されている。このストッパ170が、本発明における「回転規制部」に対応する実施構成例である。また、貫通孔170Aを構成する平面領域171が、本発明における「内表面」に対応する実施構成例である。
【0041】
ストッパ170の外周部には、凹部173が形成されている。
図13および
図14に示すように、凹部173が、フロントハウジング104に形成された凸部104aに係合して、スピンドル160の軸周りに関するストッパ170の回転が規制される。すなわち、ストッパ170は、回転が規制された状態でフロントハウジング104に取り付けられている。
【0042】
図13に示すように、貫通孔170Aの曲面領域172は、スピンドル160の軸方向に直交する断面において、係合部166の正方形断面における対角線の長さより長い直径の円の一部である円弧状に形成されている。したがって、ストッパ170の貫通孔170Aにスピンドル160の係合部166が位置した状態で、
図13に示す位置から
図14に示す位置にスピンドル160が回転されると、スピンドル160の係合部166は、ストッパ170の平面領域171に係合(当接)してスピンドル160の回転が規制される。なお、スピンドル160の係合部166は、ストッパ170の曲面領域172には係合(当接)しない。すなわち、スピンドル160が最も前方に位置した状態において、スピンドル160は、ストッパ170に当接して回転が規制される。なお、スピンドル160の被係合部167は、ストッパ170の貫通孔170Aには係合しない。したがって、スピンドル160が後方に移動されて、非係合部167がストッパ170の貫通孔170Aに配置されると、スピンドル160の回転は阻害されず、スピンドル160はいずれの方向にも回転可能となる。
【0043】
[スクリュードライバの動作]
以上の通り構成されたスクリュードライバ100は、トリガ107aが操作されると、モータ110が駆動される。モータ110の出力軸111の回転によって、駆動ギア125が回転駆動される。そして、駆動ギア125の回転がスピンドル160に伝達されることで、スピンドル160に保持された工具ビット119が回転され、所定の作業(ねじ締め作業またはねじ外し作業)が行われる。すなわち、工具ビット119(スピンドル160)が所定の方向(以下、正方向と称する)に回転駆動されてねじ締め作業が行われる。一方、工具ビット119(スピンドル160)が所定の方向とは反対の方向(以下、逆方向と称する)に回転駆動されてねじ外し作業が行われる。スピンドル160の回転駆動は、スクリュードライバ100の前後方向に関するスピンドル160の位置に応じて切り替えられる。このスピンドル160の回転駆動方向に関する正方向および逆方向がそれぞれ、本発明における「正方向」および「逆方向」に対応する実施構成例である。
【0044】
(スピンドルが前方位置に位置する場合)
具体的には、
図2〜
図14には、スクリュードライバ100の前後方向に関して、スピンドル160が最も前方に位置した状態が示されている。このスピンドル160の位置は、前方位置とも称する。この前方位置が、本発明における「
最前方位置」に対応する実施構成例である。スピンドル160が前方位置に位置する状態においては、
図3に示すように、ロックスリーブ145のリテーナ係合部147の傾斜部147aは、リテーナ130の傾斜部133aに当接しない。したがって、
図9に示すように、スピンドル160の周方向に関して、ローラ140はローラ係合部146の略中央領域に維持される。このローラ係合部146の略中央領域においては、ローラ140は、ロックスリーブ145と駆動ギア125の側壁127には挟持されないように設定されている。ローラ係合部146の略中央領域は、ローラ係合部146におけるローラ非挟持位置、または回転伝達不能位置とも称する。この回転伝達不能位置が、本発明における「挟持不能位置」に対応する実施構成例である。
【0045】
また、スピンドル160が前方位置に位置する状態においては、
図6および
図7に示すように、係合ボール139がリテーナ130およびスピンドル160に係合して、リテーナ130およびスピンドル160が一体となる。また、
図10に示すように、係合ピン138によってスピンドル160とバネ受け部材150は一体となる。そのため、スピンドル160の周方向に関して、リテーナ130に保持されたローラ140とバネ受け部材150の相対的な位置は変化しない。このとき、ローラ140は、ローラ係合部151の略中央領域に維持される。このローラ係合部151の略中央領域においては、ローラ140は、バネ受け部材150と駆動ギア125の側壁127には挟持されないように設定されている。ローラ係合部151の略中央領域は、ローラ係合部151におけるローラ非挟持位置、または回転伝達不能位置とも称する。この回転伝達不能位置が、本発明における「挟持不能位置」に対応する実施構成例である。
【0046】
以上の通り、ローラ140は、ローラ係合部146およびローラ係合部151におけるローラ非挟持位置に維持される。そのため、スピンドル160が前方位置に位置する状態においては、駆動ギア125の回転は、ローラ140を介してスピンドル160には伝達されることはない。
【0047】
一方で、駆動ギア125の正方向の回転は、ベアリング123の外輪に取り付けられたスペーサ124と、スペーサ124に当接するリテーナ130の当接部131Aの間の摩擦力、および係合ピン138、係合ボール139を介してスピンドル160に伝達される。また、駆動ギア125の逆方向の回転は、スペーサ124と当接部131Aの間の摩擦力、および係合ボール139を介してスピンドル160に伝達される。このとき、
図14に示すように、スピンドル160の係合部166がストッパ170に係合して、スピンドル160の回転が規制されている。すなわち、スペーサ124と当接部131Aの間の摩擦力に抗して、ストッパ170がスピンドル160の回転を規制する。なお、
図14においては、スピンドル160の正方向の回転が規制されているが、スピンドル160の逆方向の回転も係合部166とストッパ170の係合により規制される。以上の通り、スピンドル160が前方位置に位置する場合には、スピンドル160の正方向の回転駆動および逆方向の回転駆動が規制される。すなわち、スピンドル160が前方位置に位置する場合には、ねじ締め作業およびねじ外し作業は行われない。
【0048】
(スピンドルが後方第1位置に位置する場合)
図15〜
図17には、工具ビット119の先端のねじ(図示省略)がさらに被加工材に対して押圧されて、スクリュードライバ100の前後方向に関して、スピンドル160が前方位置から後方に移動した状態が示される。このスピンドル160の位置は、後方第1位置とも称する。
図15および
図16に示すように、スピンドル160が前方位置から後方第1位置に移動されると、係合ボール139も後方に移動される。このスピンドル160の後方第1位置においても、スピンドル160の前方位置と同様に、ロックスリーブ145のリテーナ係合部147の傾斜部147aは、リテーナ130の傾斜部133aに当接しない。したがって、スピンドル160が前方位置に位置する場合と同様に、ローラ140は、ローラ係合部146におけるローラ非挟持位置に維持される(
図9参照)。
【0049】
このとき、係合ボール139は後方に移動されるが、依然として係合孔131bの第1領域131b1に位置する。第1領域131b1においては、係合ボール139がリテーナ130およびスピンドル160に係合して、リテーナ130およびスピンドル160が一体となる。そのため、スピンドル160の周方向に関して、リテーナ130に保持されたローラ140とバネ受け部材150の相対的な位置は変化しない。したがって、スピンドル160が前方位置に位置する場合と同様に、ローラ140は、ローラ係合部151におけるローラ非挟持位置に維持される(
図10参照)。
【0050】
以上の通り、ローラ140は、ローラ係合部146およびローラ係合部151におけるローラ非挟持位置に維持される。そのため、スピンドル160が後方第1位置に位置する状態においては、駆動ギア125の回転は、ローラ140を介してスピンドル160には伝達されることはない。
【0051】
一方で、
図17に示すように、スピンドル160の後方第1位置において、スピンドル160の非係合部167がストッパ170の貫通孔170Aには、スピンドル160の非係合部167が配置される。すなわち、ストッパ170によるスピンドル160の回転規制が解除される。このとき、駆動ギア125の回転は、ベアリング123の外輪に取り付けられたスペーサ124と、スペーサ124に当接するリテーナ130の当接部131Aの間の摩擦力、および係合ボール139を介してスピンドル160に伝達される。
【0052】
したがって、スピンドル160が後方第1位置に位置する場合には、スペーサ124と当接部131Aの間の摩擦力の作用によって、スピンドル160が正方向または逆方向に回転される。しかしながら、工具ビット119に対してねじ締め作業または、ねじ外し作業を行わせるようにスピンドル160にトルクを作用させるような摩擦力がスペーサ124と当接部131Aの間に生じることがないように設定されている。換言すると、スピンドル160は、摩擦力によって駆動ギア125と共回りするだけであり、工具ビット119がねじ締め作業または、ねじ外し作業を遂行可能なトルクは作用しない。すなわち、スピンドル160が後方第1位置に位置する場合には、工具ビット119(スピンドル160)は正方向または逆方向に共回りされるものの、工具ビット119がねじ締め作業およびねじ外し作業を行うために必要なトルクは作用せず、ねじ締め作業およびねじ外し作業は行われない。したがって、後方第1位置は、ニュートラル位置とも称する。
【0053】
(スピンドルが後方第2位置に位置する場合)
図18〜
図22には、工具ビット119の先端のねじ(図示省略)がさらに被加工材に対して押圧されて、スクリュードライバ100の前後方向に関して、スピンドル160が後方第1位置から後方に移動した状態が示される。このスピンドル160の位置は、後方第2位置とも称する。この後方第2位置が、本発明における「第1位置」に対応する実施構成例である。
図18〜
図20に示すように、スピンドル160が後方第1位置から後方第2位置に移動されると、係合ボール139も後方に移動される。このスピンドル160の後方第2位置においても、スピンドル160の前方位置および後方第1位置と同様に、ロックスリーブ145のリテーナ係合部147の傾斜部147aは、リテーナ130の傾斜部133aに当接しない。したがって、スピンドル160が前方位置および後方第1位置に位置する場合と同様に、ローラ140は、ローラ係合部146におけるローラ非挟持位置に維持される(
図9参照)。
【0054】
このとき、係合ボール139は後方に移動されて、係合孔131bの第2領域131b2に位置する。係合ボール139が第2領域131b2に位置した状態で、
図19に示すように、駆動ギア125によってスペーサ124を介してリテーナ130が矢印Aで示される正方向(以下、A方向とも称する)に回転された場合には、係合ピン138および係合ボール139は、係合孔131a,131b内を移動しない。すなわち、リテーナ130とスピンドル160は、周方向に相対移動しない。すなわち、スピンドル160が前方位置および後方第1位置に位置する場合と同様に、ローラ140は、ローラ係合部151におけるローラ非挟持位置に維持される(
図10参照)。
【0055】
一方、係合ボール139が第2領域131b2に位置した状態で、
図20に示すように、駆動ギア125によってスペーサ124を介してリテーナ130が矢印Bで示される逆方向(以下、B方向とも称する)に回転された場合には、係合ピン138および係合ボール139は、係合孔131a,131b内を移動する。すなわち、リテーナ130とスピンドル160は、周方向に相対移動する。具体的には、
図21および
図22に示すように、スピンドル160に対してリテーナ130がB方向に相対的に回転される。したがって、リテーナ130に保持されたローラ140が、スピンドル160と一体に保持されたバネ受け部材150に対して周方向に移動され、ローラ140は、ローラ係合部151と駆動ギア125の側壁127の間に挟持される。このとき、ローラ140がくさびとして作用し、ローラ140を介して駆動ギア125とバネ受け部材150およびスピンドル160が一体化される。その結果、駆動ギア125の回転がスピンドル160に伝達され、工具ビット119が逆方向に回転駆動される。これにより、工具ビット119によってねじ外し作業が行われる。なお、ローラ140が駆動ギア125とバネ受け部材150(ローラ係合部151)に挟持されてくさび効果を生じさせる位置(
図22に示される位置)を、ローラ係合部151におけるローラ挟持位置、または回転伝達位置とも称する。この回転伝達位置が、本発明における「挟持位置」に対応する実施構成例である。
【0056】
以上の通り、スピンドル160が後方第2位置に位置する場合には、工具ビット119によってねじ外し作業が行われるが、ねじ締め作業は行われない。すなわち、スピンドル160が後方第2位置に位置する場合には、駆動機構120は、工具ビット119に対してねじ外し作業を遂行可能なトルクを伝達するものの、ねじ締め作業を遂行可能なトルクは伝達しない。
【0057】
(スピンドルが後方第3位置に位置する場合)
図23〜
図27には、工具ビット119の先端のねじ(図示省略)がさらに被加工材に対して押圧されて、スクリュードライバ100の前後方向に関して、スピンドル160が後方第2位置から後方に移動した状態が示される。このスピンドル160の位置は、スピンドル160の最も後方の位置であり、後方第3位置とも称する。この後方第3位置が、本発明における「第2位置」に対応する実施構成例である。
【0058】
図23〜
図25に示すように、スピンドル160が後方第2位置から後方第3位置に移動されると、係合ボール139も後方に移動される。この後方第3位置においては、ロックスリーブ145のリテーナ係合部147の傾斜部147aが、リテーナ130の傾斜部133aに当接する。この傾斜部133aと傾斜部147aの当接によって、
図26および
図27に示すように、ロックスリーブ145がリテーナ130に対して周方向に回転されて、駆動ギア125の側壁127とロックスリーブ145の間にローラ140が挟持される。このとき、ローラ140がくさびとして作用し、ローラ140を介して駆動ギア125とロックスリーブ145が一体化される。
【0059】
さらに、ローラ140を保持するリテーナ130を介して、バネ受け部材150およびスピンドル160が駆動ギア125およびロックスリーブ145と一体となる。その結果、駆動ギア125の正方向回転がスピンドル160に伝達され、工具ビット119が正方向に回転駆動される。なお、ローラ140が駆動ギア125とロックスリーブ145(ローラ係合部146)に挟持されてくさび効果を生じさせる位置(
図27に示される位置)を、ローラ係合部146におけるローラ挟持位置、または回転伝達位置とも称する。この回転伝達位置が、本発明における「挟持位置」に対応する実施構成例である。この場合、ローラ140は、スピンドル160が後方に移動されて、ロックスリーブ145がリテーナ130に対して周方向に相対的に移動することでローラ挟持位置に配置される。
【0060】
具体的には、駆動ギア125(リテーナ130)が正方向(A方向)に回転される場合には、
図24に示すように、係合ピン138および係合ボール139は、係合孔131a,131bの回転方向における後方側の壁面に当接する。これにより、リテーナ130とスピンドル160が、係合ピン138および係合ボール139を介して一体化される。その結果、傾斜部133a,147aの係合によってローラ140が駆動ギア125とロックスリーブ145に挟持されて、駆動ギア125とロックスリーブ145が一体となるとともに、係合ピン138および係合ボール139によってリテーナ130およびスピンドル160が一体となる。これにより、駆動ギア125の正方向の回転がスピンドル160に伝達され、スピンドル160(駆動ギア125)の正方向の回転に基づいて、工具ビット119によってねじ締め作業が行われる。
【0061】
一方、駆動ギア125(リテーナ130)が逆方向(B方向)に回転される場合には、前述の通り、後方第2位置において、係合ボール139が第2領域131b2に位置した状態で、スピンドル160に対してリテーナ130がB方向に相対的に回転され、ローラ140がローラ係合部151と駆動ギア125の側壁127の間に挟持される。この状態で、スピンドル160が後方第2位置から後方第3位置に移動されると、
図25に示すように、係合ボール139は後方に移動するが、スピンドル160が後方第2位置に位置する場合と同様に、ローラ140が駆動ギア125とバネ受け部材150に挟持される。これにより、駆動ギア125とバネ受け部材150が一体となる。換言すると、スピンドル160が後方第3位置に位置して駆動ギア125(リテーナ130)が逆方向に回転される場合には、スピンドル160が後方第2位置に位置する場合と同様に、ローラ140は、駆動ギア125とバネ受け部材150によって挟持される。これにより、駆動ギア125の逆方向の回転がバネ受け部材150を介してスピンドル160に伝達され、スピンドル160(駆動ギア125)の逆方向の回転に基づいて、工具ビット119によってねじ外し作業が行われる。
【0062】
ねじ締め作業においては、ねじが被加工材にねじ込まれると、ねじの移動に伴ってスクリュードライバ100全体が前方に移動し、ロケータ105の前面が被加工材に当接する。ロケータ105が被加工材に当接した後、さらにねじが被加工材にねじ込まれると、工具ビット119を保持したスピンドル160がロケータ105(フロントハウジング104)に対してスクリュードライバ100の前方に向かって移動する。すなわち、スピンドル160は、
図23に示す後方第3位置から
図2に示す前方位置に向かう移動が許容される。換言すると、ロケータ105が被加工材に当接する前は、スピンドル160が押圧されているため、スピンドル160の軸線方向に関して、スピンドル160とロケータ105の相対移動が規制されている。
【0063】
スピンドル160には、ロックスリーブ145を介してコイルバネ155の付勢力が前方に向かって作用している。また、ロックスリーブ145がリテーナ130を押圧して、リテーナ130をスピンドル160の回転軸周りに移動(回転)させることで、ロックスリーブ145はリテーナ130から反力を受ける。具体的には、ロックスリーブ145とリテーナ130は、スピンドル160の回転軸線に対して傾斜する傾斜部147aおよび傾斜部133aが当接しているため、ロックスリーブ145はスピンドル160の回転軸線方向の反力と回転軸線周りの反力を受ける。
【0064】
したがって、ねじ締め作業中において、ロケータ105が被加工材に当接した後にスピンドル160が後方位置から前方位置への移動が許容されると、コイルバネ155の付勢力とリテーナ130からの反力の合力(スピンドル160の回転軸線方向の力)によって、ロックスリーブ145が
図23に示す後方第3位置から前方に移動される。すなわち、上記合力が、ローラ140とロックスリーブ145の間の摩擦力を上回る。換言すると、コイルバネ155の付勢力だけでは、ローラ140とロックスリーブ145の間の摩擦力は上回らず、コイルバネ155の付勢力とリテーナ130からの反力の合力がローラ140とロックスリーブ145の間の摩擦力を上回る。すなわち、コイルバネ155の付勢力だけでは、ロックスリーブ145が前方に移動されず、コイルバネ155の付勢力とリテーナ130からの反力の合力によって、ロックスリーブ145が前方に移動される。これにより、スピンドル160の回転軸線方向に関して、ロックスリーブ145とリテーナ130が離間し、リテーナ130とロックスリーブ145の間に隙間が形成される。その結果、駆動ギア125とロックスリーブ145の間のローラ140の挟持が解除される。すなわち、ローラ140のくさび作用が解除される。これにより、駆動ギア125からスピンドル160への回転伝達が遮断されて、ねじ締め作業が完了する。
【0065】
以上の通り、駆動機構120およびストッパ170によって、スクリュードライバ100の前後方向におけるスピンドル160の位置に応じた工具ビット119の駆動が制御される。すなわち、(1)スピンドル160が前方位置に位置する場合には、工具ビット119の回転が規制される。さらに、(2)スピンドル160が後方第1位置に位置する場合には、工具ビット119の回転が許容される。さらに、(3)スピンドル160が後方第2位置に位置する場合には、モータ110の回転方向に応じて、工具ビット119が逆方向に回転駆動されるが、正方向には回転駆動されない。さらに、(4)スピンドル160が後方第3位置に位置する場合には、モータ110の回転方向に応じて、工具ビット119が正方向または逆方向に回転駆動される。換言すると、駆動機構120は、スピンドル160の押し込み量に関して、所定の第1押し込み量において工具ビット119を逆方向に回転駆動してねじ外し作業を行い、第1押し込み量より多い第2押し込み量において工具ビット119を正方向に回転駆動してねじ締め作業を行う。
【0066】
以上の本実施形態によれば、ねじ締め作業を行う際に、スピンドル160を押圧して後方位置に移動させることで、ロックスリーブ145の傾斜部147aとリテーナ130の傾斜部133aの係合によってローラ140をロックスリーブ145に対してリテーナ130の周方向に移動させる。すなわち、リテーナ130の周方向に関して、ローラ140を回転伝達不能位置から回転伝達位置に移動させる。したがって、スピンドル160の軸方向のスピンドル160の移動をリテーナ130(スピンドル160)の周方向のローラ140の移動に変換することで、ねじ締め作業に基づいて、ローラ140の位置が合理的に切り替えられる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ローラ140を用いることによって、駆動ギア125とロックスリーブ145、または駆動ギア125とバネ受け部材150に挟持されたローラ140のくさび効果によって、モータ110の出力軸111の回転がスピンドル160に確実に伝達される。また、駆動ギア125の回転がスピンドル160に伝達される際に、ローラ140が回転しないため、ローラ140の摩耗が抑制される。
【0068】
また、本実施形態によれば、ねじ締め作業時に、ねじ(スピンドル160)の移動に伴って、駆動ギア125とロックスリーブ145によるローラ140の挟持が解除される。具体的には、スピンドル160の軸方向に関するコイルバネ155の付勢力と、ロックスリーブ145がリテーナ130を回転させる際にロックスリーブ145がリテーナ130から受けるスピンドル160の軸方向の反力の合力によって、ローラ140の挟持が解除される。すなわち、コイルバネ155の付勢力のみによってローラ140の挟持を解除する場合には、コイルバネ155の大きな付勢力が必要となるが、ロックスリーブ145がリテーナ130から受ける反力も利用することで、ローラ140の挟持が確実に解除され、駆動機構120による回転伝達が遮断される。また、ロックスリーブ145がリテーナ130から受ける反力も利用することで、コイルバネ155にばね定数の小さいバネを適用することもできる。
【0069】
また、本実施形態によれば、工具ビット119が非加工材に押圧されていない状態(アイドリング状態)において、ストッパ170がスピンドル160の正方向(ねじ締め方向)およびの逆方向(ねじ外し方向)の回転を規制する。これにより、例えば、フロントハウジング104内で固化した潤滑剤等によって意図せずスピンドル160が回転してしまうこと(共回り)を確実に防止する。
【0070】
また、ねじ締め作業においては、工具ビット119(スピンドル160)を被加工材(ねじ)に押圧することで、工具ビット119がねじ締め方向(正方向)に駆動される。一方、ねじ外し作業を行う場合には、ねじ締め作業において工具ビット119を押圧する力は必要ではない。すなわち、ねじ外し作業を行う場合には、工具ビット119とねじの係合を維持するためのわずかな押圧力は必要であるももの、ねじ締め作業を行う際の押圧力は必要ではない。この点を鑑みて、本実施形態によれば、スピンドル160が先端領域に近接した後方第2位置に位置するときにスピンドル160および工具ビット119がねじ外し方向(逆方向)に回転駆動される。換言すると、ねじ締め作業を行う際の押圧力よりも小さい押圧力でねじ外し作業が行われる。これにより、作業態様に応じたスクリュードライバ100の合理的な駆動を実現することができる。
【0071】
また、以上の本実施形態においては、傾斜部133a,147aの機械的な当接によって、駆動ギア125とロックスリーブ145によるローラ140の挟持を解除するために、コイルバネ155の付勢力と協働して、ロックスリーブ145を前方に移動させていたが、これには限られない。すなわち、傾斜部133a,147aの傾斜面の角度を適宜設定して、傾斜部133a,147aの当接のみによって、ロックスリーブ145を前方に移動させてもよい。また、例えば、傾斜部133a,147aとは別に、ねじ締め作業時にロケータ105が被加工材に当接したことを検知して、ロックスリーブ145を前方に移動させることで、駆動ギア125とロックスリーブ145によるローラ140の挟持を解除する解除手段が設けられていてもよい。また、傾斜部133aと傾斜部147aのいずれか一方の傾斜部のみが設けられていてもよい。
【0072】
また、以上の本実施形態においては、駆動部材である駆動ギア125の内側が円柱状であり、被動部材であるロックスリーブ145の外側が角柱状に形成されていたが、これには限られない。すなわち、駆動部材の内側が角柱状であり、被動部材の外側が円柱状に形成されていてもよい。
【0073】
また、以上の本実施形態においては、作業工具として、スクリュードライバを用いて説明したが、これには限られない。先端工具が回転駆動される工具であれば、例えば、電動ドリルに本発明を適用してもよい。
【0074】
上記発明の趣旨に鑑み、本発明に係る作業工具に関しては、下記の態様が構成可能である。なお、各態様は、単独で、あるいは互いに組み合わされて用いられるだけでなく、請求項に記載された発明と組み合わされて用いられる。
(態様1)
被動部材は、第1被動部材と第2被動部材によって構成されており、
先端工具保持部が第1位置に位置する場合には、挟持位置において、伝達部材が駆動部材と第1被動部材に挟持されて駆動部材の回転を第1被動部材に伝達し、
先端工具保持部が第2位置に位置する場合には、挟持位置において、伝達部材が駆動部材と第2被動部材に挟持されて駆動部材の回転を第2被動部材に伝達する。
(態様2)
被動部材に対する伝達部材の所定の第1位置が第1挟持位置として設定されており、
被動部材に対する伝達部材の第1位置とは異なる所定の第2位置が第2挟持位置として設定されており、
伝達部材が第1挟持位置において駆動部材と被動部材に挟持されて、駆動部材の回転を被動部材に出達して、先端工具保持部が逆方向に回転駆動され、
伝達部材が第2挟持位置において駆動部材と被動部材に挟持されて、駆動部材の回転を被動部材に出達して、先端工具保持部が正方向に回転駆動される。
(態様3)
被動部材は、先端工具保持部の長軸方向に直交する断面が矩形である。
【0075】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通り示す。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
スクリュードライバ100が、本発明の「作業工具」に対応する構成の一例である。
本体部101が、本発明の「工具本体」に対応する構成の一例である。
モータ110が、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
駆動機構120が、本発明の「回転駆動機構」に対応する構成の一例である。
駆動ギア125が、本発明の「駆動部材」に対応する構成の一例である。
リテーナ130が、本発明の「リテーナ」に対応する構成の一例である。
傾斜部133aが、本発明の「第1係合部」に対応する構成の一例である。
ローラ140が、本発明の「伝達部材」に対応する構成の一例である。
ロックスリーブ145が、本発明の「被動部材」に対応する構成の一例である。
ロックスリーブ145が、本発明の「切替部材」に対応する構成の一例である。
傾斜部147aが、本発明の「第2係合部」に対応する構成の一例である。
バネ受け部材150が、本発明の「被動部材」に対応する構成の一例である。
コイルバネ155が、本発明の「付勢部材」に対応する構成の一例である。
スピンドル160が、本発明の「先端工具駆動軸」に対応する構成の一例である。
ストッパ170が、本発明の「回動規制部」に対応する構成の一例である。
前方位置が、本発明の「第3位置」に対応する構成の一例である。
後方第2位置が、本発明の「第1位置」に対応する構成の一例である。
後方第3位置が、本発明の「第2位置」に対応する構成の一例である。