特許第6422162号(P6422162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422162
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】タイヤの剛性感評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20181105BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   G01M17/02 B
   B60C19/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-56519(P2015-56519)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-176786(P2016-176786A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】北山 眞
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−122814(JP,A)
【文献】 特開2010−167903(JP,A)
【文献】 特開2003−205702(JP,A)
【文献】 特開2009−47648(JP,A)
【文献】 特開平10−185767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤがリムに組み込まれて空気圧が大気圧状態にされたタイヤ組立体が準備される準備工程と、
このタイヤ組立体のトレッド面を押圧面に当接させてタイヤ組立体の変位量と負荷荷重とが測定される測定工程と、
この変位量と負荷荷重との関係に基づいてタイヤの剛性が評価される評価工程と
を備えており、
この評価工程では横軸を変位量とし縦軸を負荷荷重としたときに、変位量と負荷荷重との関数のグラフの第一変曲点と第二変曲点とが求められており、
この第一変曲点が変位量が0から大きくされていったときの最初の変曲点であり、
この第二変曲点が変位量が大きくされていったときの第一変曲点の次の変曲点であり、
この第一変曲点での負荷荷重が第一指標とされており、
この第二変曲点を越えて更に変位量が大きくされた所定範囲の傾きが第二指標とされており、
この第一指標と第二指標とに基づいてタイヤの剛性が評価されるタイヤの剛性評価方法。
【請求項2】
上記測定工程の押圧面が平面であり、
この押圧面がタイヤの軸方向一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド面に当接している請求項1に記載の剛性評価方法。
【請求項3】
上記押圧面の前後方向の長さと、一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド幅とを積算した面積が25cm以上100cm以下である請求項2に記載の剛性評価方法。
【請求項4】
上記測定工程において、負荷荷重の最大値が0.45kN以上0.7kN以下にされている請求項1から3のいずれかに記載の剛性評価方法。
【請求項5】
上記所定範囲の傾きが、第二変曲点からの変位量が5mm以上25mm以下にされた範囲の傾きである請求項1から4のいずれかに記載の剛性評価方法。
【請求項6】
上記第一指標が予め定めた第一基準値以上であり、かつ第二指標が予め定めた第二基準値以上であるときに、タイヤの剛性を良好と評価する請求項1から5のいずれかに記載の剛性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの剛性感の評価方法に関する。詳細には、本発明は、人の感性に近い剛性感の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販タイヤは、性能、デザイン、ブランド、価格等の種々の観点から選定される。市販タイヤでは、購入者が実際に触れてタイヤの剛性感を評価することがある。例えば、購入者は、タイヤのトレッド部、サイドウォール部等を変形させる。この変形状態やそのときに受ける感触から、購入者は剛性感を評価する。
【0003】
この剛性感は、タイヤを選定する一つの基準となっている。この剛性感は、官能評価で得られている。この剛性感は主観的な評価である。この剛性感を定量的に表すことは容易ではない。
【0004】
特開2014−122814公報には、タイヤの剛性感の評価方法が開示されている。この方法では、タイヤに荷重が負荷されている。荷重Faが負荷された状態から荷重Fbが負荷された状態までのタイヤの変形量δが求められている。この荷重Faと荷重Fbとの荷重の変化量dFと、変形量δとから、タイヤのバネ定数が計算されている。この方法は、タイヤの剛性感を定量的に評価しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−122814公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2014−122814公報の剛性感の評価方法によれば、官能評価に近い評価結果が得られうる。この評価方法では、低圧の空気が充填された状態で剛性感が評価されている。一般に、市販タイヤの剛性感は、空気が充填されていないタイヤで評価される。この評価方法による評価結果は、必ずしも、市販タイヤの官能評価の結果と一致しない。
【0007】
本発明の目的は、官能評価により近い評価結果が得られるタイヤの剛性感の評価方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤの剛性感評価方法は、タイヤがリムに組み込まれて空気圧が大気圧状態にされたタイヤ組立体が準備される準備工程と、このタイヤ組立体のトレッド面を押圧面に当接させてタイヤ組立体の変位量と負荷荷重とが測定される測定工程と、この変位量と負荷荷重との関係に基づいてタイヤの剛性が評価される評価工程とを備えている。この評価工程では横軸を変位量とし縦軸を負荷荷重としたときに、変位量と負荷荷重との関数のグラフの第一変曲点と第二変曲点とが求められている。この第一変曲点は変位量が0から大きくされていったときの最初の変曲点である。この第二変曲点は変位量が大きくされていったときの第一変曲点の次の変曲点である。この第一変曲点での負荷荷重は第一指標とされている。この第二変曲点を越えて更に変位量が大きくされた所定範囲における傾きが第二指標とされている。この第一指標と第二指標とに基づいてタイヤの剛性が評価されている。
【0009】
好ましくは、上記測定工程の押圧面が平面である。この押圧面は、タイヤの軸方向一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド面に当接している。好ましくは、上記押圧面の前後方向の長さと、一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド幅とを積算した面積は、25cm以上100cm以下である。
【0010】
好ましくは、上記測定工程において、負荷荷重の最大値は、0.45kN以上0.7kN以下にされている。
【0011】
好ましくは、評価工程の上記所定範囲の傾きは、第二変曲点からの変位量が5mm以上25mm以下にされた範囲の傾きである。
【0012】
好ましくは、上記第一指標が予め定めた第一基準値以上であり、かつ第二指標が予め定めた第二基準値以上であるときに、タイヤの剛性を良好と評価している。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタイヤの剛性感の評価方法では、第一変曲点と第二変曲点とが求められている。この第一変曲点での負荷荷重と、第二変曲点を越えて更に変位量が大きくされた所定範囲における傾きとが、評価の指標とされている。この剛性感の評価は、従来の剛性感の評価方法に比べて、人の官能評価により近い評価結果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの剛性感の評価方法の様子の側面が示された説明図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るタイヤの剛性感の評価方法の様子の正面が示された説明図である。
図3図3は、図1のタイヤの剛性感の評価方法による、変位量と負荷荷重との関数が示されたグラフである。
図4図4は、図1のタイヤの剛性感の評価方法による、第一指標と第二指標とが示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1及び図2には、タイヤ組立体2と、剛性感を評価する試験機4とが示されている。このタイヤ組立体2は、試験機4に取り付けられている。以下の説明において、特に言及しない限り、図1の左右方向がタイヤ組立体2の軸方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ組立体2の周方向であり、試験機4の前後方向である。この説明において、上下方向は、図1の上下方向として説明がされる。図2に示される様に、このタイヤ組立体2は、タイヤ6及びリム8からなる。このリム8は、タイヤ6の正規リムである。
【0017】
試験機4は、架台10、支持体12及び押圧具14を備えている。架台10の上部10aに支持体12が取り付けられている。架台10は、支柱10aと試験台10bとを備えている。支柱10aの下端は、試験台10bに固定されている。支柱10aは、試験台10bから上方に延びている。
【0018】
支持体12は、支柱10aに支持されている。支持体12は、支柱10aに対して上下方向に移動可能にされている。
【0019】
押圧具14は、試験台10bに固定されている。この押圧具14は上向きに面する押圧面14aを備えている。この押圧面14aは平面からなっている。この押圧面14aは、上下方向に垂直に交差する。この押圧面14aの軸方向の幅は、一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド幅より大きい。支持体12が上向きに移動することで、支持体12は押圧具14から離れる。支持体12が下向きに移動することで、支持体12は押圧具14に近付く。
【0020】
支持体12は、図示されないが、リム8を固定可能にされている。これにより、この支持体12は、タイヤ組立体2を支持可能にされている。この支持体12は、タイヤ組立体2を、押圧具14に近付く向きと押圧具14から離れる向きとに移動可能にしている。
【0021】
図示されないが、この試験機4は、制御装置及び情報処理装置を備えている。制御装置は、支持体12の上下移動を制御する。制御装置は、位置センサー及び荷重センサーを備えている。この荷重センサーは、タイヤ組立体2の負荷荷重を計測しうる。この位置センサーは、タイヤ組立体2の上下方向の位置を検出しうる。この制御装置は、この位置センサーにより、支持体12の上下方向の変位量を計測しうる。
【0022】
情報処理装置は、入力部、記憶部、演算部及び出力部を備えている。この情報処理装置として、例えばコンピュータが例示される。情報処理装置では、入力部が制御装置からデータを受信する。演算部は、データを用いて解析をする。演算部は、解析結果に基づいて評価結果を決定する。記憶部は、データ及び評価結果を記憶する。出力部はこの評価結果を出力する。例えば、この入力部はインターフェースボードであり、記憶部はハードディスクであり、演算部はCPUであり、出力部はディスプレイである。この出力部として、ディスプレイと共に、又はディスプレイに代えてプリンターが用いられてもよい。
【0023】
以下、図1及び図22を主に参照しつつ、本発明の一実施形態に係るタイヤの剛性感評価方法が説明される。この剛性感評価方法は、準備工程と、計測工程と、評価工程とを備えている。
【0024】
この準備工程では、タイヤ6及びリム8が準備されている。このタイヤ6がリム8に
組み込まれて、タイヤ組立体2が得られる。このタイヤ組立体2に空気が充填される。その後に減圧されて、タイヤ組立体2の空気圧は大気圧にされる。例えば、このタイヤ組立体2は、正規内圧にされた後に、大気圧にされる。正規内圧にされることで、このタイヤ6は、リム8に対して正規の位置関係で組み込まれる。タイヤ組立体2に充填されるときの空気圧は、必ずしも正規圧でなくてもよく、タイヤ6とリム8とが正規の位置関係にされる空気圧であればよい。
【0025】
この計測工程では、試験機4の支持体12に、リム8が固定される。大気圧にされたタイヤ組立体2が、試験機4に取り付けられる。タイヤ組立体2は、軸方向を水平方向にし、半径方向を上下方向にして取り付けられる。タイヤ組立体2は、支持体12により、上下方向に移動可能に支持されている。
【0026】
制御装置は、支持体12に制御信号を送信する。制御装置は、支持体12を下向きに移動させる。支持体12はタイヤ組立体2を下向きに移動させる。支持体12が移動を開始すると、位置センサーはタイヤ組立体2の位置を検出する。この位置センサーは、タイヤ組立体2の位置として、支持体12の位置を検出してもよい。荷重センサーはタイヤ組立体2の負荷荷重を計測する。荷重センサーはタイヤ組立体2の負荷荷重として、支持体12が受ける荷重を計測してもよい。
【0027】
支持体12が押圧具14に徐々に近付いていく。タイヤ6のトレッド面6aが押圧具14の当接面14aに当接する。この発明では、トレッド面6aと当接面14aとが当接する位置は、タイヤ組立体2の接地位置と称される。
【0028】
この接地位置から、更に、支持体12はタイヤ組立体2を下向きに移動させる。支持体12がタイヤ6を押圧具14に押しつける。トレッド面6aが当接面14aに押しつけられる。これにより、タイヤ6が変形する。荷重センサーは、タイヤ組立体2の負荷荷重を計測する。位置センサーは、タイヤ組立体2の位置を検出する。
【0029】
タイヤ組立体2の負荷荷重が予め設定された最大値に達したとき、制御装置は支持体12の下向きの移動を停止する。荷重センサーは、計測を終了する。位置センサーは位置検出を終了する。この発明では、支持体12が下向きの移動を停止する位置は、終了位置と称される。
【0030】
この終了位置は、負荷荷重の最大値に代えて、予め支持体12の下降端に基づいて設定されてもよい。支持体12が下降端に達したときに、制御装置は支持体12の下向きの移動を停止してもよい。このときに、荷重センサーは計測を終了し、位置センサーは位置検出を終了してもよい。
【0031】
制御装置は、タイヤ組立体2の負荷荷重データ及び位置データを情報処理装置に送信する。情報処理装置は、接地位置から終了位置までの位置データと、この位置データに対応する負荷荷重データを記憶する。
【0032】
情報処理装置は、記憶した位置データから、それぞれの位置における接地位置からタイヤ組立体2の変位量Dを計算する。この変位量Dは、接地位置を原点の0とする位置を表している。この変位量Dは、タイヤ組立体2の変形量を表している。この負荷荷重は、タイヤ組立体2が受ける荷重Fである。情報処理装置は、横軸を変位量Dとし縦軸を荷重Fとしたときの、変位量Dと荷重Fとの関数を計算する。
【0033】
図3の太実線S1は、タイヤ組立体2の変位量Dと荷重Fとの関数のグラフである。このグラフS1は、接地位置の原点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが増加している。更に、変位量Dが増加するとグラフS1は第一変曲点に至る。この第一変曲点における変位量はD1であり、荷重はF1である。この第一変曲点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが減少している。変位量D1から変位量Dが増加するとグラフS1は第二変曲点に至る。この第二変曲点における変位量はD2であり、荷重はF2である。第二変曲点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが増加している。
【0034】
情報処理装置は、変位量Dと荷重Fとの関数から、第一変曲点と第二変曲点を求める。例えば、情報処理装置は、この変位量Dと荷重Fとの関数を微分して、第一変曲点と第二変曲点とを求める。この第一変曲点は、変位量Dが0から大きくされていったときの最初の変曲点である。第二変曲点が、変位量Dが大きくされていったときの第一変曲点の次の変曲点である。
【0035】
情報処理装置は、剛性を評価するための第一指標A1と第二指標A2とを求める。情報処理装置は、第一変曲点における荷重F1を第一指標A1に決定する。
【0036】
情情報処理装置は、第二変曲点を越えて更に変位量が大きくされた所定範囲を決定する。図3の点線M2で囲まれた領域は、変位量が所定範囲にある領域を例示している。この関数の所定範囲の傾きF/Dが求められる。この所定範囲の傾きF/Dが第二指標A2に決定される。
【0037】
例えば、この所定範囲は、変位量D3以上D4以下の範囲にされる。このとき、変位量D3及びD4は、変位量D2より大きく、変位量D4は変位量D3より大きくされている。情報処理装置は、変位量がD3の位置の荷重F3を求める。変位量がD4の位置の荷重F4を求める。情報処理装置は、傾きF/Dを以下の式(1)で求める。
F/D = (F4−F3)/(D4−D3) (1)
【0038】
ここでは、第二指標A2を表す傾きF/Dを式(1)で求める例を示したが、この傾きF/Dの求め方は式(1)に限られない。例えば、変位量D3から変位量D4までの所定の範囲において、図3に示されるグラフS1が直線に近似され、この近似直線から傾きF/Dが求められてもよい。
【0039】
情報処理装置は、この第一指標A1の基準値Fsと、第二指標A2の基準値(F/D)sとを記憶している。タイヤ組立体2の第一指標A1の値F1が基準値Fs以上か否かが判定される。タイヤ組立体2の第二指標A2の値F/Dが基準値(F/D)s以上か否かが判定される。タイヤ組立体2の第一指標A1が基準値Fs以上であり、かつ第二指標A2が基準値(F/D)s以上であるとき、情報処理装置は、タイヤ組立体2の剛性感を良好と判断する。
【0040】
この第一指標A1の基準値Fsと、第二指標A2の基準値(F/D)sとは、基準タイヤから求められてもよい。基準タイヤが正規リムに組み込まれて、基準タイヤ組立体が準備される。基準タイヤ組立体の第一変曲点における荷重が基準値Fsにされる。基準タイヤ組立体の変位量D3以上D4以下の範囲の傾きF/Dが基準値(F/D)sにされる。この基準タイヤから得られた基準値Fsと基準値(F/D)sとを基準して、タイヤ組立体2の剛性感が評価されてもよい。
【0041】
図3には、タイヤ組立体2と同様に、タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20のグラフが示されている。図3の実線S2は、タイヤ組立体16の変位量Dと荷重Fとの関数のグラフである。二点鎖線S3は、タイヤ組立体18の変位量Dと荷重Fとの関数のグラフである。点線S4は、タイヤ組立体20の変位量Dと荷重Fとの関数のグラフである。
【0042】
図3に示される様に、このグラフS2、S3及びS4は、グラフS1と同様に、接地位置の原点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが増加している。更に、変位量Dが増加すると第一変曲点に至る。この第一変曲点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが減少している。更に変位量Dが増加すると第二変曲点に至る。第二変曲点から変位量Dの増加に伴って荷重Fが増加している。この様に、大気圧状態にされたタイヤ組立体では、変位量Dと荷重Fとの関数のグラフは、第一変曲点及び第二変曲点を有している。
【0043】
この評価工程では、変位量Dと負荷荷重Fとの関数のグラフの第一変曲点と第二変曲点とが求められている。この評価方法では、第一指標A1に基づいて剛性感が評価されている。これにより、第一変曲点に至るまでの初期の剛性感が評価されている。更に、第二指標A2に基づいて剛性感が評価されている。第二変曲点を越えた所定範囲の剛性感が評価されている。これにより、初期の剛性感と変位量が第二変曲点を越えた後の剛性感とが評価されている。この方法は、大気圧状態にされたタイヤ組立体の剛性感が適切に評価される。
【0044】
この方法では、大気圧状態にされたタイヤ組立体の剛性感が評価されている。このタイヤ組立体の剛性感から、タイヤの剛性感が評価されている。通常、市販タイヤの購入者は、空気が充填されていない状態で、剛性感を確認している。この方法は、大気圧状態にされているので、市販タイヤの剛性感に近い評価を得られうる。
【0045】
この測定工程では、この平面14aは、タイヤ6の軸方向に一方のトレッド端から他方のトレッド端までのトレッド面6aに当接している。この測定工程では、タイヤ6の局部の剛性感が評価されることが抑制されている。この測定工程では、タイヤ6のトレッド及びサイドウォールの全体の剛性感が評価されている。
【0046】
タイヤ6の全体の剛性感を評価する観点から、押圧面14aの平面の面積は広い方が好ましい。この評価方法において、押圧面14aの面積は、タイヤ6の軸方向一方のトレド端から他方のトレッド端までのトレッド幅と、押圧面14aの前後方向の長さとが積算されて求められる、押圧面14aの面積は、好ましくは25cm以上である。この評価方法で、トレッド面6aに接地しうる、押圧面14aの前後方向の長さには上限がある。トレッド幅において、押圧面14aの平面の面積は、好ましくは100cm以下である。
【0047】
この発明では、外観上明瞭にトレッド面6aのエッジによって識別しうるときには、このエッジがトレッド端とされる。外観上識別が困難な場合には、タイヤ6が正規リムに組み込まれて正規内圧にされた状態で、タイヤ6が正規荷重で平面に当接されたときの最も軸方向外側で平面に接地する接地端が、トレッド端とされる。このとき、キャンバー角0゜で平面に当接させる。この様にして定まる一方のトレッド端から他方のトレッド端までが、タイヤ6のトレッド幅とされている。
【0048】
この測定工程では、タイヤ組立体2の負荷荷重の最大値が人がタイヤ6を変形させるときの負荷荷重の最大値と同程度にされることが好ましい。これにより、官能評価に近い評価結果が得られうる。この観点から、この負荷荷重の最大値は、好ましくは0.70kN以下であり、更に好ましくは0.65kN以下である。一方で、第一指標A1と第二指標A2を得る観点から、この負荷荷重の最大値は、好ましくは0.45kN以上であり、更に好ましくは0.50kN以上であり、特に好ましくは0.55kN以上である。例えば、この負荷荷重の最大値が0.6kNとされる。
【0049】
この第二指標S2は、第二変曲点を越えて更に変形量を大きくされた所定範囲の傾きが用いられている。この第二変曲点の近傍では、傾きが変化している。この第二変曲点から十分に離れた変位量の範囲に所定範囲が設けるされることが好ましい。この観点から、この所定範囲の下限値では、第二変曲点からの変位量が好ましくは5mm以上であり、更に好ましくは10mm以上である。一方で、第二変曲点から大きく離れると、傾きの誤差が大きくなり易い。この傾きの誤差を小さくする観点から、この所定範囲の上限値では、変曲点からの変位量は好ましくは25mm以下であり、更に好ましくは20mm以下である。
【0050】
この評価工程では、第一指標A1が基準値Fs以上であり、且つ第二指標S2が基準値(F/D)s以上であるときに、タイヤ6の剛性が良好と評価されている。第一指標A1が基準値Fs以上であるか否かが評価されている。第二指標A2が基準値(F/D)s以上であるか否かが評価されている。この評価方法は、客観的に定量的評価が可能にされている。この評価は、主観的なバラツキが排除されている。
【0051】
図4の黒丸印は、タイヤ組立体2の第一指標A1である荷重Fと第二指標A2である傾きF/Dとの関係を示している。黒三角印は、タイヤ組立体16の第一指標A1である荷重Fと第二指標A2である傾きF/Dとの関係を示している。同様に、黒四角印は、タイヤ組立体18の第一指標A1である荷重Fと第二指標A2である傾きF/Dとの関係を示している。黒菱形印は、タイヤ組立体20の第一指標A1である荷重Fと第二指標A2である傾きF/Dとの関係を示している。
【0052】
例えば、タイヤ組立体18が基準タイヤ組立体とされてもよい。タイヤ組立体18から求められる荷重Fが基準値Fsとされ、傾きF/Dが基準値(F/D)s以上とされてもよい。この基準値基準値Fsと基準値(F/D)sとに基づいて、他のタイヤ組立体の剛性感が評価されてもよい。
【0053】
図4に示される様に、第一指標A1と第二指標A2との大小関係から、タイヤの剛性感の順位付けがされうる。この図4では、タイヤ組立体2のタイヤ6が最も剛性感が高い。次に、タイヤ組立体16のタイヤの剛性感が高い。その次に、タイヤ組立体18のタイヤの剛性感が高い。タイヤ組立体20のタイヤが最も剛性感が低い。
【0054】
この剛性感評価方法では、必ずしも剛性感の良否判定は必要とされない。図4に示される様に、複数のタイヤ組立体のタイヤの剛性感の比較、順位付けがされてもよい。複数のタイヤ組立体の第一指標A1と第二指標A2と測定されて、この第一指標A1と第二指標A2との大小関係から、タイヤの剛性感の順位付けがされてもよい。
【0055】
本発明では、正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0057】
[官能評価]
タイヤ組立体2、タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20のそれぞれのタイヤの剛性感が官能評価された。剛性感の評価結果が順位付けされた。その結果が表1に示されている。この結果は、数字が小さい方が剛性感が高い。表1のS1、S2、S3及びS4は、それぞれタイヤ組立体2、タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20を表している。
【0058】
[テスト1]
本発明に係る剛性感評価方法により、タイヤ組立体2、タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20のそれぞれのタイヤの剛性感が評価された。それぞれのタイヤの剛性感がタイヤ組立体2の剛性感を100とする指数で表されている。この指数は、例えば第一指標A1と第二指標A2との合計値に基づいて定められてもよい。この指数は、数字が大きいほど剛性感が高い。その結果が表1に示されている。
【0059】
[比較テスト1]
タイヤ組立体2に、空気が充填されて正規内圧の10%の内圧状態にされた。凸状球面形状の当接面を備える押圧具が準備された。この押圧具の当接面がタイヤ組立体2のトレッド面の軸方向中央に当接された。押圧具を押しつける荷重の変化量dFとタイヤの変形量δとが測定された。この変形量dFと変形量δとから、係数dF/δが求められた。タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20についても、タイヤ組立体2と同様にして、係数dF/δが求められた。これらの係数dF/δがタイヤ組立体2のそれを100とする指数で表されている。この指数は、数字が大きいほど剛性感が高い。その結果が表1に示されている。
【0060】
[比較テスト2]
タイヤ組立体2に、空気が充填されて正規内圧状態にされた。このタイヤ組立体2のトレッド面が平面に当接された。タイヤ組立体2が平面に押しつけられる荷重の変化量dFとタイヤの変形量δとが測定された。この変形量dFと変形量δとから、係数dF/δが求められた。タイヤ組立体16、タイヤ組立体18及びタイヤ組立体20についても、タイヤ組立体2と同様にして、係数dF/δが求められた。これらの係数dF/δがタイヤ組立体2のそれを100とする指数で表されている。この指数は、数字が大きいほど剛性感が高い。その結果が表1に示されている。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示される様に、テスト1の評価結果は、官能評価の結果と一致していた。更に、テスト1では、比較テスト1及び比較テスト2に比べて、剛性感の評価結果に大きな差が確認された。比較テスト1では、剛性感の評価結果の差は僅かであった。比較テスト2では、剛性感の評価結果の差は、比較テスト1のそれより大きいが、テスト1のそれより小さかった。このテスト1の剛性感評価方法は、官能評価により近い評価結果が得られている。テスト1の剛性感評価方法は、比較テスト1及び比較テスト2の方法に比べて、タイヤの剛性感の評価が容易にされている。
【0063】
本発明の剛性感評価方法によれば、タイヤの剛性感を定量的に評価できる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【符号の説明】
【0064】
2・・・タイヤ組立体
4・・・試験機
6・・・タイヤ
6a・・・トレッド面
8・・・リム
10・・・架台
12・・・支持体
14・・・押圧具
14a・・・押圧面
図1
図2
図3
図4