【実施例】
【0094】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらは単なる例示であって、本発明を何ら限定するものではない。下記の実験は特に限定のない限り室温、すなわち25℃にて行った。
<1. 実験1>
方法
プラスミド及び試薬
N末端にFLAG (配列番号2)をタグ付けしたEGFP (配列番号1)をコードする発現プラスミド(pFLAG-EGFP-C1)と、C末端に3×FLAG (配列番号3)をタグ付けしたEGFPをコードする発現プラスミド(p3×FLAG-EGFP-N3)を、それぞれ、pEGFP-C1ベクター及びpEGFP-N3ベクター(Clontech Laboratories, Inc)を用いて構築した。
【0095】
マウスMAP4、ヒトタウアイソフォーム3及び4、マウスKIF1A、ヒトPlectin-1及びXenopus laevis Talin1をコードするESTクローンをOpenBiosystemsから購入した。
【0096】
ヒトFAKをコードするcDNAをDNASU Plasmid Repositoryから購入した。
【0097】
各配列のGenBank/EMBL/DDBJアクセション番号は以下の通りである:
BC055332 (MAP4), BC114948 (タウアイソフォーム3), BC101936 (タウアイソフォーム4), BC062891 (KIF1A), BM559026 (Plectin-1), CF282569 (Talin1) 及びBC035404 (FAK)。
【0098】
ヒトEB1、ラットCLIP-170、ヒトCLASP2γ及びヒトAPCをコードするcDNAをYuko Mimori-Kiyosue博士(理化学研究所)からご提供頂いた。
【0099】
ヒトPaxillin、ニワトリSrc及びヒトVinculinをコードするプラスミドは文献31〜33に記載されたものを用いた。
【0100】
それぞれのcDNAを、PCRを利用してpFLAG-EGFP-C1ベクターまたはp3×FLAG-EGFP-N3ベクターに挿入した。下記表1において、GFPの融合位置がN末端となっているプローブは、pFLAG-EGFP-C1ベクターを用いた。下記表1において、GFPの融合位置がC末端となっているプローブは、p3×FLAG-EGFP-N3ベクターを用いた。
【0101】
N末端にFLAG-EGFPがタグ付けされたPIPKIγ-90断片(第641-668番アミノ酸残基)をコードする発現プラスミドは、PTDERSWVYSPLHYSAQAPPASDGESDT(配列番号18)をコードする合成cDNAをpFLAG-EGFP-C1ベクターに挿入することにより構築した。
【0102】
N末端にAtto 488 蛍光体が連結されたLifeactペプチド(MGVADLIKKFESISKEE(配列番号19))を、Sigma-Aldrichから購入した。
【0103】
EGFPのアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0104】
FLAGのアミノ酸配列を配列番号2に示す。
【0105】
3×FLAGのアミノ酸配列を配列番号3に示す。
【0106】
マウスMAP4のアミノ酸配列を配列番号4に示す。
【0107】
ヒトタウアイソフォーム3のアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【0108】
ヒトタウアイソフォーム4のアミノ酸配列を配列番号6に示す。
【0109】
マウスKIF1Aのアミノ酸配列を配列番号7に示す。
【0110】
ヒトPlectin-1のアミノ酸配列を配列番号8に示す。
【0111】
Xenopus laevis Talin1(第1-2353アミノ酸残基)のアミノ酸配列を配列番号9に示す。
【0112】
ヒトFAKのアミノ酸配列を配列番号10に示す。
【0113】
ヒトEB1のアミノ酸配列を配列番号11に示す。
【0114】
ラットCLIP-170のアミノ酸配列を配列番号12に示す。
【0115】
ヒトCLASP2γのアミノ酸配列を配列番号13に示す。
【0116】
ヒトAPCのアミノ酸配列を配列番号14に示す。
【0117】
ヒトPaxillinのアミノ酸配列を配列番号15に示す。
【0118】
ニワトリSrcのアミノ酸配列を配列番号16に示す。
【0119】
ヒトVinculinのアミノ酸配列を配列番号17に示す。
【0120】
ヒトPIPKIγ-90断片(第641-668番アミノ酸残基) のアミノ酸配列を配列番号18に示す。
【0121】
Lifeactペプチドのアミノ酸配列を配列番号19に示す。
交換性タンパク質プローブの製造とスクリーニング
微小管、中間径フィラメント及び接着斑の超解像用交換性プローブを見出すために、各標的構造に局在化できることが知られているタンパク質(ポリペプチド)及びタンパク質断片をプローブの候補分子として試験した。ここでプローブが「交換性」であるとは、標的構造への結合と脱離を繰り返すことができることを指す。
【0122】
表1に試験したプローブ候補を示す。表1に記載した以外にも前記「プラスミド及び試薬」の欄に言及したタンパク質又はその断片をプローブ候補として複数試験した。
【0123】
各プローブ候補について、表1記載の文献に従いEGFPと融合した分子として発現するための発現プラスミドを構築した。
【0124】
HEK(ヒト胎児由来腎臓)-293F細胞を、FLAG-EGFP又は3×FLAG-EGFPによりタグ付けされたプローブ候補タンパク質をコードするプラスミドによりトランスフェクトした。3〜4日後、前記細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ナカライテスク)を含む細胞溶解用緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 90 mM KCl, 3 mM MgCl
2, 0.2% Triton X-100, 100 μM DTT)中で溶解させた。溶解液を遠心分離し、上清液を回収した。IRIS用プローブをスクリーニングするために、パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し透過処理したXCT細胞の構造への、前記上清液中のプローブ候補の結合能を試験した。前記構造での単分子輝点(Single-molecule speckles, SiMS)の出現及び消滅を試験した。IRIS用プローブは次の基準に沿ってスクリーニングした:
(1)前記構造での標的物の分布を、SiMS画像を足し合わせた画像において確認することができる;
(2)SiMSイメージング(撮像工程)の後でプローブを洗浄除去することができる;
(3) 結合したプローブは、標的物から急速に解離することができる(半減期500ms以下);
(4)各輝点の中心位置を積算することにより標的物の像を再構築することができる。
【0125】
表1では上記(1)を満たすとき「ローカライゼーション」が陽性(P, positive)であると示し、上記(2)を満たすとき「洗浄性」が陽性(P)であると示し、上記(3)を満たすとき「IRIS画像」が陽性(P)であると示す。
【0126】
IRIS実験に用いるプローブ以下の手順で精製した。すなわち、各プローブを、HEK-293細胞中で過剰発現させ、抗DYKDDDDK (Flag)抗体ビーズ(Wako)を用いて回収した。前記ビーズを過剰量のHepes緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 90 mM KCl, 3 mM MgCl
2, 100 μM DTT)により4回洗浄した。洗浄後ビーズに結合したタンパク質を、0.5 mg/ml DYKDDDDK(Flag)ペプチド(Wako)又は3×FLAGペプチド(Sigma-Aldrich)を含有する前記Hepes緩衝液により30分間処理し溶出させた。
【0127】
表1に結果を示す上記(1)のローカライゼーション試験は以下の手順で行った。まず、カバーガラス上で固定し透過処理したXCT細胞に、各プローブ候補を発現した細胞の溶解液の前記上清液を接触させた。下記の「IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順」の欄で詳述する蛍光顕微鏡装置の観察チャンバーに前記試料を載せたカバーガラスを設置し、前記試料に全反射照明蛍光観察のための488nmレーザー線(本体出力50mW、ただしAOTF等により減光され試料に至る)による励起光を照射しながら、1フレームの露光時間50ms又は100ms、フレームレート20Hz(1秒間に20フレーム)、又は、露光時間100ms、フレームレート10Hz(1秒間に10フレーム)で10000フレームの輝点画像を取得した。取得した10000フレームの輝点画像を積算して前記細胞中の標的物(微小管、中間径フィラメント、接着斑又はアクチンフィラメント)の分布が確認できるかどうかを確認した。標的物の分布が確認できたときローカライゼーション試験をP(陽性)とした。
【0128】
表1に結果を示す上記(2)の洗浄性試験は以下の手順で行った。前段落で説明した輝点画像撮像後、観察チャンバーに入っている1mlの各プローブ候補を含有する前記上清液をアスピレーターで吸い出して、プローブの入っていない下記のイメージング用溶液(ただし活性酸素除去用ミックスは添加していない)を1 ml加えた。このイメージング用溶液の入れ換えは観察位置がずれないようにゆっくり行った。続いてプローブの入っていない前記活性酸素除去用ミックス不含イメージング用溶液を10〜20回程、入れ換えた。入れ替え後、確認のために、観察チャンバー内のXCT細胞試料に対して、前記段落に記載のローカライゼーション試験と同様の条件で10フレーム程度の輝点画像を撮像し、輝点画像で確認される輝点数(すなわち結合しているプローブの数)が、洗浄操作前の輝点画像での輝点数と比較して十分減少(約10%以下)したら、洗浄可能と判断し、結果をP(陽性)とした。
【0129】
表1に結果を示す結合半減期測定は以下の手順で行った。前記ローカライゼーション試験において撮像した10000フレームの輝点画像を利用して、標的に結合したプローブが輝点画像に出現し、そして解離によって消失するまでの時間をImageJのプラグインであるSpeckle TrackerJを用いてセミマニュアルで計測した。例えば、露光時間50msフレームレート20Hzの撮像の場合、連続した1フレームのみで観察される輝点の、出現から消失までの時間は50msとし、連続した2フレームのみで観察される輝点の、出現から消失までの時間は100msとする。そして出現から消失までの時間に対して結合しているプローブの数を相補累積相対度数関数(1-N
dissociation)に従ってプロットした。N
dissociationは解離したプローブの累積相対度数である。そして前記の相補累積相対度数関数を指数関数でフィッティングすることで、その半減期を算出した。ただし、Atto488-Lifeactのアクチンフィラメントに対する結合半減期は
図9の図面の簡単な説明の部分で詳述する方法により測定した。
【0130】
表1に結果を示す上記(3)のIRIS画像試験は以下の手順で行った。前記ローカライゼーション試験において撮像した10000フレームの輝点画像の全てを利用し、DAOSTORMを用いて前記輝点画像の各フレーム中で標的に結合しているプローブの中心点をナノメーター精度で決定した。10000フレームの蛍光画像中の多数の中心点情報を足し合わせることで再構成画像(観察画像)を作成した。その再構成画像に標的分子の分布が観察できるかどうかで判断し、標的分子の分布が観察できる場合に結果をP(陽性)とした。
IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順
Xenopus laevis XTC細胞を、10%ウシ胎児血清を添加した70% ライボビッツ(Leibovitz’s) L15培地中で培養した。種々の交換性プローブを用い、固定XTC細胞から連続的に取得した多数の蛍光単分子輝点(SiMS)画像(1つのプローブあたり20,000〜50,000フレーム)から、多重染色超解像を作製した。血清を含まない70% ライボビッツL15培地中で0.1 mg/mlポリ-L-リジンと10 μg/mlフィブロネクチンとで被覆したカバーガラス上に前記細胞を展開し、明確なストレスファイバー及び接着斑(focal adhesions)を形成させた(文献33)。2時間経過後、前記細胞を、3.7% PFA及び0.5% Triton-X 100を含む細胞骨格用緩衝液(10 mM Mes pH6.1, 90 mM KCl, 3 mM MgCl
2, 2 mMグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA))を用いて固定及び透過処理した。4%ウシ血清アルブミンにより30分間ブロッキングした後、酸素除去用混合物(200 μg/mlグルコースオキシダーゼ、35 μg/ml カタラーゼ、4.5 mg/ml グルコース, 0.5% 2-メルカプトエタノール)(文献34)を添加した前記Hepes緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 90 mM KCl, 3 mM MgCl
2, 100 μM DTT)からなるイメージング用溶液中で、前記細胞に、精製IRISプローブを接触させた。IRISプローブの濃度は1〜100nMとした。前記酸素除去用混合物を用いない場合は、SiMS画像を数万回取得した後のレーザー照射によるダメージが顕著であった。
【0131】
アクチンフィラメントのin vitroでのイメージングのために、アクチン単量体を文献33,35,36記載の方法によりウサギ骨格筋から調製した。ファロイジンにより安定化したF-アクチンを、前記イメージング用溶液中、1 mg/mlポリ-L-リジンにより被覆したカバーガラス上で観察した。
【0132】
Olympus PlanApo NA 1.45 ×100対物レンズと、×2 中間レンズと、EM-CCDカメラ(Evolve 512, Roper)とを備え、MetaMorphソフトウェア(Molecular Device)により制御された倒立顕微鏡(Olympus IX83-ZDC)を用いてSiMS画像を取得した。長時間の撮像の間、Zドリフト補正システムにより、焦点を細胞の底部に自動的に保持した。落射蛍光観察のための473nmレーザー線(50 mW)と、TIRF観察のための488nmレーザー線(50 mW)とを下記手順の通り交互に用いてIRISプローブを励起した。落射蛍光モードでは、473nmレーザー線の入射角を傾斜させて、焦点外の結合していないプローブからのバックグラウンド蛍光を低減させた。落射蛍光画像と、TIRF画像とを用いて、対象物のZ位置を推定した(下記)。具体的には以下の手順を繰り返すことで撮像を行った:
(a) 明視野での撮像;
(b) 落射蛍光によるSiMS画像(輝点画像)の撮像(1フレームの露光時間: 50ms, フレームレート: 20Hz(1秒間に20フレーム), 連続撮像フレーム数: 250フレーム);
(c) TIRFによるSiMS画像(輝点画像)の撮像(1フレームの露光時間: 50ms, フレームレート: 20Hz(1秒間に20フレーム), 連続撮像フレーム数: 250フレーム)。
【0133】
明視野で得られた画像を用いて、顕微鏡ステージの横方向のドリフトを補正した(下記)。接着斑の観察の際は、落射蛍光観察は行わず、TIRF観察を行った(フレームレート: 20Hz, 500フレーム)。前記手順の1セットを行うには27秒間を要し、該セットを160〜240回(プローブ/標的物=CLIP-170断片(配列番号12の第3-309番アミノ酸残基)/微小管)、40回(プローブ/標的物= PIPKIγ断片(641-668)(配列番18), Paxillin(配列番号15の全長) 及び Src断片(配列番号16の第3-251番アミノ酸残基)/接着斑)、800回(プローブ/標的物= Lifeact(配列番号19)/アクチンフィラメント)、及び400〜480回(プローブ/標的物= Plectin-1断片(配列番号8の第4022-4364番アミノ酸残基)/中間径フィラメント)反復した。前記イメージング用溶液の酸素除去能を維持するために、CLIP-170断片、PIPKIγ断片 Paxillin及びSrc断片を用いる場合は40セット毎に、Lifeact及びPlectin-1を用いる場合は80セット毎に、各プローブを含むイメージング用溶液を新鮮な溶液に置換した。3種の細胞骨格及び接着斑の多重染色イメージングのためには、SiMS画像の撮像を、CLIP-170断片、PIPKIγ断片(或いはSrc断片又はPaxillin)、Lifeact、Plectin-1断片の順に実施した。各プローブによるSiMS画像の取得後、毎回、前記Hepes緩衝液により10回洗浄した。酸素除去用混合物を添加した前記Hepes緩衝液中でプローブの残留蛍光を完全に消光させ、次のプローブを作用させた。
【0134】
本実施例では、特に言及のない限り、上記の条件において観察画像を取得する撮像工程を行った。
IRISでの画像再構築の手順
個々の蛍光輝点の中心位置をブランク画像上にサブピクセル精度でプロットし、超解像を再構築した。プロットした点の数は典型的には10
6〜10
8個であった。この顕微鏡の点拡がり関数(a point-spread function, PSF)の、DAOSTORM(文献14)と呼ばれるコンピュータプログラムを用いたフィッティングにより、サブピクセル精度で中心位置を推定した。顕微鏡ステージのドリフトを補正するために、上記撮像手順の各セットで得られる明視野像の自動補正関数A
N(x
drift, y
drift)によりドリフト距離を算出した:
【0135】
【数1】
【0136】
(式中、x
drift及びy
driftはそれぞれx軸方向及びy軸方向でのドリフト距離である。I
0(x,y)及びI
N(x+x
drift,y+y
drift)はそれぞれ、第1セット及び第Nセットで得られた明視野像でのピクセル位置(x,y)及び(x+x
drift,y+y
drift)での強度である。)
明視野像における所定の領域内で、I
0(x,y)とI
N(x+x
drift,y+y
drift)との積を積算する。変数x
drift及びy
driftの関数であるA
N(x
drift, y
drift)は、前記二つの明視野像が一致する場合に、最大となる。ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)におけるカスタマイズされたプラグインを用いて、A
N(x
drift, y
drift)が最大となるx
drift及びy
driftを算出した。はじめに、第Nセットの明視野像のドリフトを、算出された前記x
drift及びy
driftを用いてピクセル精度で補正した。更にドリフト距離をサブピクセル精度で決定するために、第1セット及び第Nセットでの明視野像及び補正された明視野像を、バイキュービック法を用い拡大した。拡大された画像のA
N(x
drift, y
drift)を用いて、ドリフト距離をサブピクセルの精度で決定した。第NセットでのSiMS画像中の輝点の中心位置を、前記ドリフト距離を用いて補正した。補正後の中心位置をプロットすることにより、超解像を生成した。Lifeactによる再構築画像(観察画像)又はPlectin-1による再構築画像(観察画像)を生成する際には、10フレーム以上または20フレーム以上連続して観察された輝点の位置は用いなかった。これら二つのプローブは、強い励起レーザー出力を用いたときに標的物に結合する場合があった。
観察対象物のz位置をマッピングするための画像処理
TIRF励起光の強度はカバーガラスから遠ざかると指数関数的に低減することから、TIRF画像と、落射蛍光画像との比率から観察対象物の高さを推定した。カバーガラス表面からのz位置を、文献18に記載の、低融点アガロースゲル中でのカバーガラスに対し傾斜した蛍光微小管を用いた方法により測定した。HiLight488標識チューブリンをCytoskeleton, Inc.から購入した。前記標識微小管は文献18に記載の方法に従い調製した。一方の端がカバーガラスに接触した傾斜した微小管をTIRF及び落射蛍光により撮像した。落射蛍光画像はz-スタック画像(0.2μmステップサイズ)として取得した(
図14a)。落射蛍光画像の微小管に沿った強度線プロファイルにおいて、最も高強度のx-y位置を用いて、傾斜した微小管と焦平面との交点(
図14a矢印)を決定した。zスタック画像間で前記交点をつなぐことにより、傾斜した微小管に沿った各点のz方向距離を求めた。各点のz方向距離を、TIRF画像での微小管の強度と底位置の落射蛍光画像での微小管の強度との比に関連付けることにより、TIRF法での励起光強度のzプロファイルを決定した(
図14b)。このzプロファイルを単一指数関数的減衰関数にフィットさせた(
図14b)。z位置を、イマージョンオイルと前記イメージング用溶液との間の屈折率の違いを勘案して0.82の係数で再度スケール調整した(文献18)。前記指数関数の逆関数を用いて、観察対象物のz位置を次式により決定した:
【0137】
【数2】
【0138】
(式中、α
zはTIRF発光の強度が1/eとなるz位置である。βは、TIRF観察時と落射蛍光観察時のレーザー出力の違いを校正するためのパラメータである。F
TIRF及びF
Epiはそれぞれ、TIRF画像及び落射蛍光画像での、観察対象物の蛍光強度である。)
三種の細胞骨格のz位置マップは、TIRFによるIRIS画像(観察画像)の、落射蛍光によるIRIS画像(観察画像)に対する比の画像から変換した。この目的のために、蛍光輝点のピーク強度を、DAOSTORMを用いてフィッティングした。輝点の中心位置にピーク強度をプロットすることによりIRIS画像を再構築した。得られたz位置マップは、TIRFによるIRIS画像と落射蛍光によるIRIS画像とを足し合わせた画像での蛍光強度を、閾値によりマスクし、細胞骨格のない領域でのノイズを除去した。アクチンストレスファイバー等の層状構造では、算出されたz位置は、該構造のz軸方向での重心の高さ位置を示す。
【0139】
EB1-EGFPの生細胞イメージングにより追跡された微小管プラス端のz位置は、TIRF画像での微小管プラス端の直径0.4μmの領域の平均強度の、落射蛍光画像での同領域の平均強度に対する比から変換して得た。
微小管プラス端の動きの生細胞イメージング
EGFP融合EB1の発現プラスミドによりXTC細胞をトランスフェクトした。3〜4日後、該細胞に対し、EB1-EGFPのライブセルイメージングを1秒間インターバルで行った。各インターバル期間に、落射蛍光観察のための励起光による蛍光の露光時間100msでの撮像と、全反射蛍光観察のための励起光による蛍光の露光時間100msでの撮像とを行った。このとき、各励起光は、生細胞を傷めないようにレーザーパワーをIRIS超解像撮像の際の20%程度に低減させて照射した点を除いて、IRIS超解像について上記した条件で照射した。各撮像時点で、交互に全反射照明及び落射照明を用いて2つの蛍光画像を100ミリ秒の露光時間で取得した。ImageJプラグインである Speckle TrackerJ (文献33、37) を用いてEB1で標識された微小管プラス端を追跡した。追跡された微小管プラス端のz位置を上述の方法で算出した。微小管プラス端の部位の速度を、5つの連続した撮像時点でのそのx-y位置の線形近似により算出した。
結果
プローブ候補のスクリーニング試験の結果は以下の通りであった。
【0140】
【表1】
【0141】
表中Pは陽性(Positive)を示し、NAは測定していない(Not accessed)ことを示す。
【0142】
*配列表において配列番号18はPIPKIγ90の断片641-668のアミノ酸配列を示す。
【0143】
なお、ローカライゼーション試験及び洗浄試験のどちらか一方で不合格となったプローブ候補はIRIS画像の試験及び半減期測定を行っていないため、上記表1には示していない。不合格のプローブ候補は標的物との結合半減期が非常に長い、或いは非常に短い、或いは標的物と結合しないと推定される。
【0144】
アクチンフィラメントに対してAtto488-Lifeactがプローブとして有効であり、その半減期が23nmであることは、
図9及びその説明において詳述した実験において別途確認されているため、参考結果として上記表に記載した。
IRISによる高標識密度でのアクチンフィラメントの超解像
本発明者らは、一般的なアクチンマーカーであるLifeactを用いてIRIS法により超解像を生成できるかを確認した。Lifeactは生細胞及び固定細胞におけるアクチンフィラメントを染色する短いペプチドである(文献10)。Lifeactはアクチンフィラメント上で0.4秒以内に交換される性質を有する(文献10)。本発明者らは単分子輝点(SiMS)顕微鏡法によりLifeactの高速交換性を確認している(文献11-13)。Atto488標識Lifeactの滞留時間は、半減期23ミリ秒の単一指数関数的減衰を示した(
図9a)。本発明者らはイメージング用溶液中でのAtto488標識Lifeact濃度を2.4 nMとし、488nmの全反射照明を用いた露光時間50ms/フレーム、フレームレート20Hzでの連続撮像でin vitroでのアクチンフィラメント上でのLifeactのSiMS画像を2×10
5枚取得した。各蛍光輝点の中心位置をDAOSTORM(文献14)と呼ばれるコンピュータプログラムを用いて決定した(
図9b)。前記2×10
5フレームの輝点画像における数多くのLifeact輝点からの位置情報を積算してアクチンフィラメントの画像を再構築した(
図5b及び
図9c)。単一のアクチンフィラメントの平均幅は、高いローカライゼーションの精度を担保するために高輝度の輝点(上位約12%)のみを用いて再構築した画像での半値全幅(FWHM)として23nmであった(
図5c及び
図9d)。
【0145】
従来の超解像顕微鏡法の大きな問題の一つに、抗体と光活性化蛍光タンパク質とを用いた場合では、観察しようとする構造を十分な密度で標識することが難しいという問題がある。アクチンサブユニットおよび抗体はそれぞれ幅6nm及び12nmであるため、1μmあたり360サブユニットからなる単一のアクチンフィラメントは、抗体標識では、最大でも1μmあたり180の密度までしか標識することができない。この標識密度は、本発明者らのIRIS法において2×10
3フレームの輝点画像から再構築した観察画像での標識密度に相当する。
図5d左及び
図5eに示す通り、IRIS法において2×10
3の輝点画像から再構築した観察画像では、アクチンフィラメントは長さ方向に不連続なパターンを示す。標識密度を6.5倍にした場合でもアクチンフィラメントの連続した染色には十分ではなかった(
図5d)が、2×10
5フレームの輝点画像から再構築した観察画像では1.2×10
4の標識密度を達成することができ、アクチンフィラメントの連続的な超解像を得ることができた(
図5d右及び
図5e)。このように本発明のIRIS法では、互いに近接して共存している2種又は3種の標的物を分解するうえで従来支障となっていた標識密度の問題を解消できることが明らかとなった。
【0146】
固定及び透過処理した細胞において、アクチンフィラメントのLifeactプローブを用いたIRIS法により生成した観察画像では、50nm離れた2本の平行なアクチンバンドル(
図5d-f)を分解することができた。これに対して、SiMS画像(輝点画像)を足し合わせた画像(従来の免疫蛍光法で得られる画像に匹敵する)ではこれら2本のアクチンバンドルは分解することができなかった(
図5g左下)。IRIS法によれば、アクチンフィラメント又は微小管(下記)の連続的な観察画像を得ることができる。このことは、従来の超解像顕微鏡法と比較して顕著な進歩である(
図10)。
IRISプローブのスクリーニング法の確立
Lifeactプローブを用いたデータにより決定された必要な分子的特徴を踏まえて、本発明者らは、他の細胞構造に対するIRISプローブを速やかに決定する効率的な方法を確立した。標的物に結合することが知られているタンパク質断片とEGFPとを融合してプローブ候補を生成した。生細胞蛍光単分子スペックル(SiMS)顕微鏡法(文献11,12)もプローブ候補を試験するために有用である。しかし本発明者らは、EGFP融合プローブ候補を発現する細胞の粗溶解液を固定細胞と接触させることにより、プローブ候補の結合特異性と解離動態を容易に明らかにできることを見出した。本発明者らは、以下の4工程によりIRISプローブを選択した:
(i)50ms又は100msのインターバルで10,000フレームのSiMS画像(輝点画像)を撮像し、積算したSiMS画像中で標的に局在できなかったプローブ候補は除外した;
(ii) 洗浄により容易に除去できないプローブ候補は除外した;
(iii) 解離速度の高いプローブ候補(半減期が10〜500ms、
図11参照)を選択した;
(iv) プローブ候補が標的に局在できることを再構築IRIS画像(観察画像)において確認した。
【0147】
表1に示すように、プローブ候補のうち18種を上記スクリーニング法により選択した。微小管及び接着斑に対する複数のプローブにより、これらの構造体の異なる部位を可視化できた(
図12,13)。また別途、アクチンフィラメントに対してAtto488-Lifeactがプローブとして有効でありアクチンフィラメントの可視化に有効であることが確認されている(
図9等)。このことから、IRISは、一つの構造体におけるプローブ認識部位の分布をマッピングするのに有用であることが示唆される。
IRISによる複数の標的物の超解像
アクチン、微小管、中間径フィラメント、及び接着斑の観察のためのIRISプローブとしては、Lifeact、CLIP-170断片(残基3-309)、Plecin-1断片(残基4022-4364)、及びフォスファチジルイノシトール-(4)-フォスフェート5-キナーゼタイプIγ-90 (PIPKIγ)断片(残基641-668)がそれぞれ好適であることを見出した(
図6)(文献15-17)。IRISプローブの交換性を利用して、異なる4種の細胞骨格構造に前記IRISプローブが結合した画像を順次連続して取得した。
【0148】
更に本発明者らはアクチンフィラメント、微小管及び中間径フィラメントの三次元(3D)ネットワークを調べた。各IRISプローブによる画像を、全反射照明と落射照明とを交互に用いて取得し、それらを用いて細胞の底部での超解像及び細胞辺縁領域全体での超解像をそれぞれ再構築した。これらの画像は、細胞の輪郭に平行に延びるアクチンアークは中央に近づくにつれて、底に局在する放射状のアクチンバンドル(
図6a矢印)の上に乗り上げるように隆起していることを示している。ラメリポディウム(葉状仮足)の根元から後方では、微小管及び中間径フィラメントは、数か所で、細胞の底から排除されていることが確認された(
図6b, 6cの矢印)。
【0149】
前記方法で述べた傾斜した蛍光微小管の画像を用いた測定に基づいて、TIRFのIRIS画像と、落射蛍光のIRIS画像とのシグナル比を用いて、各観察対象物のz位置を推定した(
図14及び上記方法)(文献18)。
図15に示すような3D画像により、標的物の構造を明らかにした。ラメリポジウム(LP)、ストレスファイバー(SF)及びアクチンアーク(Arc)は、それぞれ、z軸方向での重心の高さ位置(平均±S.D.)が、42±43nm、34±30nm 及び217±132nmであるように分布していた(
図15a矢印、
図15d)。微小管は細胞の縁近傍において、z軸位置が150-200nmから50-100nmへと沈み込んでいた(
図15b矢頭;
図15e)。中間径フィラメントは細胞体の全体にわたってメッシュ状の構造を形成しており、フィラメントの一部は、ラメリポディウムの後方で約200nmの高さに位置していた(
図15c楕円箇所)。
【0150】
IRIS画像により、単一の細胞内での複数の細胞骨格構造間の空間的な関係を、回折限界を超えた分解能で観察することが可能となる。ラメラ領域では、中間径フィラメントは多くの場合ストレスファイバーと絡み合っているが、微小管とは絡み合っていない(
図7a-7c)。絡まりあったアクチンと中間径フィラメントとは互いに連結しているようである。それらの断面プロフィールでは、アクチンストレスファイバーは中間径フィラメントと重なっている(
図7e矢印)。辺縁領域では、中間径フィラメントはアクチンストレスファイバーとは絡み合わず(
図7g, 7i)、その一方で、中間径フィラメントの一部は微小管と並行している(
図7h矢印)。断面プロファイルによれば、中間径フィラメントは微小管と重なるが、アクチンとは重ならないことが分かる(
図3i, 3j矢印)。このように、IRISでは、4種の細胞骨格成分間の領域特異的な近接を明らかにすることができる。
生細胞での微小管プラス端の挙動と、細胞骨格ネットワークの超解像との対比
本発明者らは、接着斑とストレスファイバーの近傍では、微小管の高さが局部的に変化することを見出した。微小管が、接着斑及びストレスファイバーと交差するとき、ガラス表面から100nmの位置から200nmの位置へと持ち上がっていた(
図8a矢頭, 8b, 16)。接着斑の成分はガラス表面から30-から80nmの高さに位置する(文献19)。従って、持ち上がった微小管は接着斑と接触せずアクチンストレスファイバー上に乗り上げていると考えられる。
【0151】
本発明者らは更に、微小管プラス端と、その部分における細胞骨格ネットワークとの関係を、生細胞でEB1-EGFPの挙動を観察し、次いで、固定後に3D細胞骨格ネットワークの超解像を再構築することにより、調べた。本発明者らのイメージング系によれば、全反射照明と落射照明とを高速で切り替えるための音響光学的可変フィルターにより生細胞3Dイメージングが可能である。EB1標識された微小管の先端の軌道を、超解像での接着斑及びストレスファイバーと対比した(
図8cアスタリスク)。成長する微小管の先端がストレスファイバーに接触すると、該先端は下に存在する接着斑から遠ざかるように上向きに動いた(
図8d)。EB1標識された微小管の先端はストレスファイバーと接触すると成長が低下し、進行方向が変化した(
図8d矢印)。これらのデータから、微小管の成長の速度と方向は、アクチンストレスファイバーとの衝突及び衝突後の相互作用により大きく影響されることが示唆される。このように、IRISと生細胞イメージングとの組み合わせにより、動的に相互作用する複数の細胞骨格構造の形成プロセスを解明することが可能となる。
考察
考察1:PAINTとの比較
文献20(非特許文献4)では、PAINT(point accumulation for imaging in nanoscale topography)と呼ばれる手法が報告されている。この文献では、PAINTによって、水溶液と脂質二重層との間を素早く行き来する蛍光色素Nile-redを用いて脂質二重層の形態を超解像観察したことが開示されている。しかし、Nile-redは、特定の脂質分子種に結合解離するプローブではない。このため脂質膜を構成する特定の脂質分子種の位置を高い精度で決定できない。一方、IRISのプローブは、細胞内に存在する多種のタンパク質の中の特定の標的タンパク質に結合解離し、その分子の位置を高い精度で決定できる。加えてIRISのプローブ交換によって複数の標的物の分布を得るという概念は、このPAINTの概念に含まれてない。IRISによる多種の標的物の高分解能画像化は、このPAINTの概念では実現できない。またこの文献ではPAINTにおいて観察回数を増やすことによって解像度を高めることは開示していない。その理由は、観測回数を増やしても、標的物である脂質膜が固定されていないことから、その形状変化によって解像度が高まらないためであると考えられる。加えて標識密度の問題は、その数年後にようやく未解決の問題として当業者に広く認識されたためであると考えられる(文献4-7)。
【0152】
標識密度の問題は、2008年に提起されたが(文献6)、超解像顕微鏡観察において長らく未解決であった(文献4,5,7)。2013年の総説(文献5)では、標的密度を高める方法として、抗体や蛍光タンパク質より小さな有機化合物である蛍光色素や、安定に結合するNanobody等の単ドメイン抗体を標的物に安定的に結合させる試みが紹介されている。このことは、PAINTは標的密度を高める方法として認識されていなかったことを示している。また前記の総説で紹介された方法でも本発明で実現したほどの標識密度までは得られず、標識密度の問題は未解決のままであった。これらのことから本発明以前では、標識密度の問題に解決に結合解離プローブを用いるというアイディアは存在しなかったということができる。
図10ではIRISと従来公知の超解像顕微鏡法であるSTORM及びExchange-PAINT(文献21-23)との微小管の観察画像を比較した。微小管の長さ方向に沿った標識強度のラインプロファイルによれば、IRISによる観察画像は、STORM及びExchange-PAINTによる観察画像よりも連続的なパターンを示す(
図10b)。さらに、IRISによるアクチンフィラメントの標識密度が、アクチンフィラメントに結合する抗体の最大密度の60倍に至ることは容易である。これらの結果から、本発明のIRISによれば、従来の超解像顕微鏡法の信頼性を低める原因となっていた標識密度の問題を解消することができることは明らかである。
【0153】
標識密度の問題を克服できることに加えて、本発明のIRISによれば、タンパク質系の交換性プローブにより複数の標的物を可視化することが容易であり、標的物の数には制限がない。従来から利用可能な公知の超解像顕微鏡法では、観察可能な標的物の数は2つまでに限られる(文献21,22,24,25)。最近、複数の標的物の超解像観察を可能にするExchange-PAINTが発表された(文献23(非特許文献5))。Exchange-PAINTは、短い蛍光標識DNAを、抗体分子とコンジュゲートを形成した相補的DNAにハイブリダイズさせるという特徴的な標識化手段を用いる。種々のオリゴヌクレオチドのペアを順にハイブリダイズさせることにより、複数の標的物を1つずつ可視化するという点ではIRISと共通する。しかしExchange-PAINTでは不均一な標識化及び/又は抗体同士の干渉が原因で、標識物の分布の分析が不正確となる場合がある(
図10b)。これに対して、IRISプローブは洗い流してから次のIRISプローブを試料に接触させることから、複数の標的物のそれぞれに対する複数のプローブが相互に干渉することがない。本発明者らのデータは、3種の細胞骨格構造及び接着斑の領域特異的な近接を、回折限界を超える精度で示している。狭い領域内で癒着しているような場合であっても、原理的には、IRISにより観察できる標的物の数には制限がない。この効果は、既存の超解像顕微鏡法と比較して顕著に有利な効果である。
考察2:プローブ
上記表に示す通り、本発明者らは、19のプローブが実際にIRIS法に有効であることを確認した。上記プローブは、標的物物質に会合することが知られている結合パートナーを用いたプローブであったが、これには限定されない。ファージディスプレイ、酵母ツーハイブリッド系等のタンパク質の相互作用を確認するアッセイを用いることで、有用なIRISプローブをスクリーニングすることができる。
【0154】
微小管及び接着斑に対する複数のIRISプローブは、これらの構造体の異なる部位を可視化した。MAP4断片及びタウタンパク質は、EB1存在下では微小管プラス端を弱く可視化した(
図12e)。CLIP-170断片はEB1の存在下で微小管先端を強く標識し、EB1の不存在下では微小管全体を連続的に標識した(
図12c, 12e)。この結果はin vitroデータと合致する(文献26)。更に、PaxillinとSrc断片は接着斑の異なる部分を可視化した(
図13)。このことからIRISは複数のタンパク質断片が結合する部位のマッピング分析にも応用することができる。特定の状態の分子に結合するIRISプローブを開発すれば、前記特定の状態にある前記分子を超解像マッピングすることも可能となる。
<2.実験2>
2.1.ポリクローナル抗体からのFabプローブの作製方法
抗p40抗体を含む抗血清は、当研究室で作製した抗原 (Xenopus laevis由来p40) を使ってウサギで作製された。抗原を充填したアフィニティーカラムにウサギ抗血清を入れ、ポリクローナル抗体をカラムに吸着させた。カラム内のpHを段階的に低下させ(pH 5 〜pH 2)、吸着させた抗体を溶出させた。高いpH(pH 4 〜 pH 3.5)で溶出された画分2 mlをProtein A ビーズ(Protein A Sepharose CL-4B, GE)の50%スラリー溶液1.4 mlに加え、4 ℃で一晩かけて抗体をビーズに吸着させた。吸着されなかった抗体をPBSで洗浄して取り除いたのち、ビーズを1 mlのPBSに懸濁した。このビーズの懸濁液にDMSOに溶かした1 μg/μl DyLight 488 NHS Ester (ThermoScientific)を50 μl加え、室温で1時間かけて抗体を蛍光標識した。未反応のDyLight 488 NHS EsterはPBSで洗浄して除去し、遠心してビーズのみを回収した。ビーズに吸着した抗体からFabフラグメントを作製するため、Digestion Buffer (50 mM Tris-HCl pH8.0, 10 mM Cysteine-HCl, 2 mM EDTA)に溶かした7 μg/ml パパインを1 ml加え、37℃で1時間反応させた。遠心後、Fabフラグメントの含まれる上清を回収し、1 mg/mlロイペプチンを1 μl加え、パパインの活性を阻害した。得られたFabフラグメントを、抗原を充填したアフィニティーカラムに入れ、前記Fabフラグメントを吸着させた。カラム内のpHを段階的に低下させ、高いpH(pH 5 〜 pH 4)で溶出された画分のFabフラグメントを得た。このようにポリクローナル抗体からのFabフラグメントの作製は、カラム精製を2回行った。1回目のアフィニティーカラムによって抗原結合力の弱い抗体を精製した。その抗体からさらに抗原結合力の弱いFabフラグメントを作製した。2回目のアフィニティーカラムによって、まだ抗原結合力が残っているFabフラグメントを精製した。この方法で調製されたFabフラグメントはIgGに由来するものである。
2.2.アクチンのIRIS超解像イメージング
Arp2/3複合体観察用細胞試料の調製
実験1の「IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順」で詳述した手順により、Xenopus laevis XTC細胞を固定及び透過処理した。4%ウシ血清アルブミンにより30分間ブロッキングした後、酸素除去用混合物(200 μg/mlグルコースオキシダーゼ、35 μg/ml カタラーゼ、4.5 mg/ml グルコース, 0.5% 2-メルカプトエタノール)を添加したHepes緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 90 mM KCl, 3 mM MgCl
2, 100 μM DTT, 0.1% Triton X-100)からなるイメージング用溶液中で、前記細胞に、上記のFabプローブを接触させた。前記イメージング用溶液中でのFabプローブ濃度は、100 nMとした。
【0155】
撮像と画像再構築
実験1の「IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順」と同様に、Olympus PlanApo NA 1.45 ×100対物レンズと、×2 中間レンズと、EM-CCDカメラ(Evolve 512, Roper)とを備え、MetaMorphソフトウェア(Molecular Device)により制御された倒立顕微鏡(Olympus IX83-ZDC)を用いてSiMS画像(輝点画像)を取得した。TIRF観察のために、488 nmレーザー線(50mW)を照射して蛍光標識された前記Fabプローブを励起した。1フレームの露光時間は100ミリ秒、フレームレート(撮像速度)は10Hz (1秒間に10フレーム)で250フレームずつ連続撮像し、合計33,750フレームのSiMS画像(輝点画像)を撮像した。
【0156】
上記の33,750フレームのSiMS画像からの画像再構築の手順は実験1の「IRISでの画像再構築の手順」において詳述した通りである。
【0157】
精製されたFabプローブの標的抗原と形成する結合体の半減期は実験1と同様の方法で求めた。すなわち上記で撮像したSiMS画像を利用して、標的に結合したFabプローブが輝点画像に出現し、そして解離によって消失するまでの時間をImageJのプラグインであるSpeckle TrackerJを用いてセミマニュアルで計測した。そして出現から消失までの時間に対して結合しているFabプローブの数を相補累積相対度数関数(1-N
dissociation)に従ってプロットした。そして前記の相補累積相対度数関数を指数関数でフィッティングすることで、その半減期を算出した。その結果、前記Fabプローブの標的抗原と形成する結合体の半減期は216ミリ秒であった。
2.3.結果
図17にアクチン重合促進因子であるArp2/3複合体のp40サブユニットに対するウサギ由来のポリクローナル抗体から作成された前記Fabプローブによる再構築画像を示す。細胞の辺縁領域にp40が多く分布することが知られており、その通りの分布がFabプローブで可視化された。
<3.実験3>
3.1.Fabプローブのスクリーニング
ハイブリドーマのライブラリー(1200サンプル)は、抗原としてFLAGペプチド(配列番号2)を用いて作製された。マウスを抗原で免疫したのち、腸骨リンパ節よりリンパ球を回収、マウスミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマを作成する。ハイブリドーマは希釈培養によってライブラリーとした。ハイブリドーマライブラリーから培養上清をサンプル毎に回収し、Protein Gを固相化した96 ウェルガラスボトムプレートに反応させることで、培養上清中の抗体を底面ガラスの表面に固定した。
【0158】
ここで、Protein Gを固相化した96 ウェルガラスボトムプレートの作製及び抗体の固定化は以下の手順で行った。(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをメタノールと酢酸の混合液(混合比100:5)に溶かして、3% 溶液を作製した。この溶液を、各ウェルの底面がガラスからなる96ウェルマルチウェルプレートに入れ、室温で30分インキュベートし、ウェル底のガラス表面をコーティングした。未反応の(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをメタノールで複数回洗浄することで取り除き、その後にプレートを風乾させ、ガラス表面に(3-アミノプロピル)トリエトキシシランを定着させた。次に、0.1% グルタルアルデヒド溶液を各ウェルに加え、室温で30分間反応させ、グルタルアルデヒドをガラス表面に結合させた。50 ng/μl Protein G(Thermo Scientific)溶液を各ウェルに加え、グルタルアルデヒドの結合したガラス表面に4℃で一晩接触させた。Protein Gは、グルタルアルデヒドを介して(3-アミノプロピル)トリエトキシシランと共有結合し、ガラス表面に固相化される。Protein Gが固相化されたガラス表面を3% BSA溶液で一晩4℃でブロッキングした。その後、抗体を含むハイブリドーマ培養上清を各ウェルに加え、4℃で一晩静置した。培養上清に含まれる抗体は、そのFcドメインを介してProtein Gと特異的かつ強固に結合し、ガラス表面に固定される。ハイブリドーマ培養上清を除去したのち、ガラス表面を細胞溶解用緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 3 mM MgCl
2, 0.2% Triton X-100, 100 μM DTT)で洗浄し、後述する観察工程に供した。 抗原となるFLAGペプチドとEGFPの融合タンパクを得るため、HEK-293F細胞をFLAG-EGFPをコードするプラスミドによりトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を3-4日培養したのち、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ナカライテスク)を含む細胞溶解用緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 3 mM MgCl
2, 0.2% Triton X-100, 100 μM DTT)中で溶解させた。溶解液を遠心分離し、上清液を回収した。上清液に含まれるFLAG-EGFP濃度をEGFPの発光強度から見積もり、細胞溶解液用緩衝液で希釈することで50 nM FLAG-EGFP溶液を用意した。
【0159】
抗体を固定した各ウェルに50 nM FLAG-EGFP溶液を加えた。TIRF顕微鏡を用いて、1フレームの露光時間50 ms、フレームレート20 Hz(1秒間に20フレーム)で、500フレームのSiMS画像(輝点画像)を撮像した。1200 ウェルを観察した結果、顕微鏡視野内(41 μm × 41 μm)に10〜300個(0.006〜0.178個/μm
2)の輝点が観察された。各輝点は単分子のEGFPに対応する。輝点画像の例として、
図18Aに約250個の輝点が観察された画像、
図18Bに約20個の輝点が観察された画像を示す。抗体を固相化していないウェルに50 nM FLAG-EGFP溶液を加えた場合では、視野内の輝点の数は、10〜20個(0.006〜0.012個/μm
2)であった。そこで、視野内で輝点の数が40個(0.023個/μm
2)以上観察された 26 ウェルを陽性例として、抗体とFLAG-EGFPの結合の半減期を計測した。それらの半減期はウェルごとに異なっていた。
図18Aに示したウェルでの半減期は、55 msであった。
【0160】
顕微鏡視野内に40個以上の輝点が観察された陽性例の26 ウェルから、結合体の半減期が10ミリ秒以上3秒以下である抗体を選別した。それらの抗体を産生するハイブリドーマをモノクローン化し、その培養上清2〜10 ml回収した。その培養上清にProtein A ビーズ(Protein A Sepharose CL-4B, GE)の50%スラリー溶液を40 μl加え、4 ℃で一晩かけて抗体をビーズに吸着させた。吸着しなかった抗体をPBSで洗浄して取り除いたのち、ビーズを100 μlのPBSに懸濁した。このビーズの懸濁液にDMSOに溶かした0.5 μg/μl DyLight 488 NHS Ester (ThermoScientific)を16 μl加え、室温で1時間かけて抗体を蛍光標識した。未反応のDyLight 488 NHS EsterはPBSで洗浄して除去し、遠心してビーズのみ回収した。ビーズに結合した抗体からFabフラグメントを作製するため、Digestion Buffer (50 mM Tris-HCl pH8.0, 10 mM Cysteine-HCl, 2 mM EDTA)に溶かした0.01 mg/ml パパインを20 μl加え、37℃で1時間反応させた。遠心後、Fabフラグメントの含まれる上清を回収し、0.01 mg/mlロイペプチンを2 μl加え、パパインの活性を阻害した。
2.2.アクチンのIRIS超解像イメージング
FLAGタグ融合アクチン発現XTC細胞試料の調製
配列番号20に示す塩基配列によりコードされるFLAGタグ融合アクチンをXTC細胞で発現させた。
【0161】
pEGFP-アクチンをコードする発現ベクター(CLONETECH)を制限酵素Age-I, Bgl-II (NEB)で切断して、EGFPをベクターから除いた。FLAGペプチド(DYKDDDDK)をコードする合成cDNAを前記ベクターに挿入し、N末端にFLAGがタグ付けされたアクチンをコードする発現プラスミドを構築した。
上記発現プラスミドによりXenopus laevis XTC細胞を次の手順によりトランスフェクトした。1 μg/μlのFLAG融合アクチンの発現プラスミド 3μlを無血清培地(70%希釈Leibovitz's L-15 medium) 200 μlに溶かし、1 mg/mlのPolyethylenimine, linear, M.W. 25,000 (Polysciences)を8 μl加え、ボルテックスした。30分室温で静置した後に1mlの血清入り培地(70%希釈Leibovitz's L-15 medium、10%FCS添加)を加えた。このプラスミドの含まれた溶液と6ウェルにまいたXTC細胞の培地を交換し、一晩かけて細胞にプラスミドを取り込ませた。
トランスフェクトの3〜4日後に、実験1の「IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順」で詳述した手順により、前記細胞を固定及び透過処理した。4%ウシ血清アルブミンにより30分間ブロッキングした後、酸素除去用混合物(200 μg/mlグルコースオキシダーゼ、35 μg/ml カタラーゼ、4.5 mg/ml グルコース, 0.5% 2-メルカプトエタノール)を添加したHepes緩衝液(10 mM Hepes pH 7.2, 3 mM MgCl
2, 100 μM DTT, 1μg/ml ロイペプチン)からなるイメージング用溶液中で、前記細胞に、上記のFabプローブをそれぞれ接触させた。前記イメージング用溶液中でのFabプローブ濃度は3 nMとした。
【0162】
撮像と画像再構築
実験1の「IRISによる多重染色超解像のイメージングの手順」と同様に、Olympus PlanApo NA 1.45 ×100対物レンズと、×2 中間レンズと、EM-CCDカメラ(Evolve 512, Roper)とを備え、MetaMorphソフトウェア(Molecular Device)により制御された倒立顕微鏡(Olympus IX83-ZDC)を用いてSiMS画像(輝点画像)を取得した。TIRF観察のために、488 nmレーザー線(50 mW)を照射して蛍光標識された前記Fabプローブを励起した。1フレームの露光時間は50ミリ秒、フレームレート(撮像速度)は20Hz (1秒間に20フレーム)で500フレームずつ連続撮像し、合計120,000フレームのSiMS画像(輝点画像)を撮像した。
【0163】
上記の120,000フレームのSiMS画像からの画像再構築の手順は実験1の「IRISでの画像再構築の手順」において詳述した通りである。
2.4.結果
図19に上記のスクリーニング方法で選別された抗FLAGモノクローナル抗体由来のFabプローブによるFLAG融合アクチンのIRIS超解像画像を示す。このIRIS超解像画像の作製に用いたFabプローブとFLAG融合アクチンの結合体の半減期は、203ミリ秒であった。
【0164】
本スクリーニング方法によって、IRIS超解像イメージングに適したFabプローブを選別することができた。
<4. 文献>
以下に本明細書で参照した文献を記載する。
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