特許第6422178号(P6422178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422178
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/08 20060101AFI20181105BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20181105BHJP
   A01C 7/06 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   A01C7/08 A
   A01C15/00 D
   A01C7/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-203268(P2014-203268)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-67333(P2016-67333A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 茂樹
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭32−005935(JP,Y1)
【文献】 特開平09−103128(JP,A)
【文献】 特開2001−251909(JP,A)
【文献】 実公平05−031849(JP,Y2)
【文献】 実開昭62−060109(JP,U)
【文献】 実開昭61−204426(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0282141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00−7/20
A01C 15/00−15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥播種作業および播種作業を行うことが可能な農作業機であって、
肥料落下口および種子落下口が形成された底板部を有するタンク本体と、
このタンク本体内を仕切って、前記肥料落下口側に肥料収納部を形成するとともに前記種子落下口側に前記肥料収納部と連通開口を介して連通する種子収納部を形成する仕切部材とを備え、
施肥播種作業を行う場合には、前記連通開口を覆うように位置して前記肥料収納部と前記種子収納部とを非連通状態にする第1仕切体が用いられ、
播種作業を行う場合には、前記肥料落下口を覆うように位置して前記肥料収納部を前記種子収納部の一部として使用することを可能にする第2仕切体が用いられるものであり、
前記第1仕切体は、肥料を前記肥料落下口に向けて案内する傾斜状の肥料案内面および種子を前記種子落下口に向けて案内する傾斜状の種子案内面を有し、
前記第2仕切体は、種子を前記種子落下口に向けて案内する傾斜状の種子案内面を有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
タンク本体の底板部は、肥料落下口および種子落下口に向かって下り傾斜する傾斜底板にて構成されている
ことを特徴とする請求項記載の農作業機。
【請求項3】
タンク本体は、仕切体取付部を有し、
施肥播種作業を行う場合には第1仕切体が前記仕切体取付部に脱着可能に取り付けられ、播種作業を行う場合には第2仕切体が前記仕切体取付部に脱着可能に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
肥料収納部の容量が、種子収納部の容量よりも大きい
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥播種作業および播種作業を行うことが可能な農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、例えば肥料落下口および種子落下口が形成された底板部を有するタンク本体と、このタンク本体内を仕切って肥料落下口側(前側)に肥料収納部を形成するとともに種子落下口側(後側)に種子収納部を形成する仕切部材とを備えている。
【0004】
そして、施肥播種作業を行う場合には、肥料が肥料収納部に収納されかつ種子が種子収納部に収納され、これら肥料および種子が各繰出手段によってタンク本体内から繰り出されて圃場に播かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−26410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば種子のみを播く播種作業の際には、肥料収納部を空にして、種子収納部のみに種子を収納して播種作業を行う。このため、例えば種子収納部への種子の補給頻度が多く、作業者にとって大きな負担となる場合がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者の負担を軽減できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
求項記載の農作業機は、施肥播種作業および播種作業を行うことが可能な農作業機であって、肥料落下口および種子落下口が形成された底板部を有するタンク本体と、このタンク本体内を仕切って、前記肥料落下口側に肥料収納部を形成するとともに前記種子落下口側に前記肥料収納部と連通開口を介して連通する種子収納部を形成する仕切部材とを備え、施肥播種作業を行う場合には、前記連通開口を覆うように位置して前記肥料収納部と前記種子収納部とを非連通状態にする第1仕切体が用いられ、播種作業を行う場合には、前記肥料落下口を覆うように位置して前記肥料収納部を前記種子収納部の一部として使用することを可能にする第2仕切体が用いられるものであり、前記第1仕切体は、肥料を前記肥料落下口に向けて案内する傾斜状の肥料案内面および種子を前記種子落下口に向けて案内する傾斜状の種子案内面を有し、前記第2仕切体は、種子を前記種子落下口に向けて案内する傾斜状の種子案内面を有するものである。
【0009】
請求項記載の農作業機は、請求項記載の農作業機において、タンク本体の底板部は、肥料落下口および種子落下口に向かって下り傾斜する傾斜底板にて構成されているものである。
【0010】
請求項記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、タンク本体は、仕切体取付部を有し、施肥播種作業を行う場合には第1仕切体が前記仕切体取付部に脱着可能に取り付けられ、播種作業を行う場合には第2仕切体が前記仕切体取付部に脱着可能に取り付けられるものである。
【0011】
請求項記載の農作業機は、請求項1ないしのいずれか一記載の農作業機において、肥料収納部の容量が、種子収納部の容量よりも大きいものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、播種作業を行う場合に肥料収納部を種子収納部の一部として使用できるため、作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機の平面図である。
図3】同上農作業機のタンク部の側面視断面図である。
図4】同上タンク部の一部切欠き斜視図である。
図5】仕切体を取り付ける前の状態の要部斜視図である。
図6】第1仕切体を取り付けた状態(施肥播種作業時)の要部斜視図である。
図7】第2仕切体を取り付けた状態(播種作業時)の要部斜視図である。
図8】肥料および種子の繰出手段の説明図である。
図9】蓋体を示す側面図で、(a)が蓋体の閉状態の図で、(b)が蓋体の開状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態について図1ないし図9を参照して説明する。
【0015】
図1および図2において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの前進走行により圃場を前方(進行方向)に移動しながら農作業(施肥播種作業や播種作業)をする多条式の不耕起播種機である。
【0016】
つまり、農作業機1は、肥料および種子の両方を圃場に播く施肥播種作業および種子のみを圃場に播く播種作業を選択的に行うことが可能なものである。換言すると、農作業機1は、肥料および種子を同時に播く施肥播種作業をしたり、肥料を播かずに種子を播く播種作業をしたりするものである。
【0017】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降部)に脱着可能に連結される機体2を備えている。機体2の前部における左右方向中央の軸支持部3には、前後方向の入力軸4が回転可能に設けられている。なお、入力軸4は、トラクタの後部のPTO軸に伝動用のジョイントを介して接続される。
【0018】
機体2の前部における左右方向に間隔をおいた複数箇所には、圃場に進行方向に沿った直線状の播き溝を形成する溝形成手段6が設けられている。
【0019】
各溝形成手段6は、上下方向に回動可能な伝動ケースであるチェーンケース7を有し、このチェーンケース7の下端部には、入力軸4側からの動力で所定方向に回転しながら圃場に播き溝を形成する円板状の作溝ディスク8が回転可能に設けられている。
【0020】
そして、作溝ディスク8の上方には作溝ディスクカバー9が配設され、また作溝ディスク8の側方には溝深さ設定用の接地輪10が配設されている。なお、接地輪10は、圃場に接地した状態で圃場側から受ける力で所定方向に回転する。
【0021】
また、農作業機1は、溝形成手段6にて圃場に形成された播き溝内に被播き物を播く播き手段11と、この播き手段11にて播かれた被播き物を覆う覆土を鎮圧する鎮圧輪12と、この鎮圧輪12の外周面に付着した土を掻き取って除去し、この除去した土を被播き物用の覆土として用いるために鎮圧輪12の前方近傍に落下させる土除去手段13とを備えている。なお、播き手段(施肥・播種機)11にて播かれる被播き物は、施肥播種作業時においては肥料および種子であり、播種作業時においては種子である。
【0022】
各鎮圧輪12は、正面視でV字状(略V字状を含む)となるように位置する円板状の左右1対の鎮圧輪部材16を有し、これら両鎮圧輪部材16は、左右独立して圃場側から受ける力で所定方向に回転しながら、鎮圧輪12の外周面から除去された細かい土からなる覆土を鎮圧して押し固める。
【0023】
両鎮圧輪部材16は、例えば板状部材のみからなるもので、少なくとも上部側が互いに離間対向した状態で正面視V字状に配設され、それらの下部間に若干の隙間が存在する。各鎮圧輪部材16は、鎮圧輪取付アーム17の下端部に、左右方向に対して傾斜した軸18を介して回転可能に取り付けられている。
【0024】
そして、各鎮圧輪部材16は、傾斜状の軸(傾斜軸)18を中心として回転する円板状の円板部19と、この円板部19の外周端部に一体に連設され外側方に向かって徐々に拡径する截頭円錐状の截頭円錐板部20とにて構成されている。
【0025】
円板部19には、軽量化等のために4つの扇状の貫通孔21が形成されている。截頭円錐板部20の外端側には、鎮圧輪部材16の周方向に互いに間隔(例えば等間隔)をおいて並ぶ3角状の複数のスリップ防止用の切欠22が形成されている。各切欠22は、例えば截頭円錐板部20の外端から内端側へ向けて3角状に切欠形成され、この3角状の切欠22の頂点は截頭円錐板部20の幅方向中央よりも外端側に位置している。そして、截頭円錐板部20の外周面にて、被播き物用の覆土が鎮圧されて断面山型状に押し固められる。
【0026】
なお、鎮圧輪12の前方には、互いに離間対向する両円板部19間に土が進入するのを防止する板状の土進入防止体(ガード)23が配設されている。また、鎮圧輪取付アーム17は、回動支点部24を中心に上下方向に回動可能であり、調整手段25によって鎮圧輪12の上下位置を調整することが可能となっている。
【0027】
一方、各土除去手段13は、互いに離間対向して位置する矩形板状の左右1対の土除去体であるスクレーパ26を有し、これら両スクレーパ26にて鎮圧輪12の截頭円錐板部20の外周面から掻き取られて除去された土が、鎮圧輪12の左右方向中央部の前方に落下する。
【0028】
すなわち、左右対をなすスクレーパ26で掻き取られて細かくなった土は、圃場の播き溝に向かうように互いに接近する方向(平面視で前後方向に対して播き溝側へ傾斜した方向)に向かって飛んで落下し、その結果、その播き溝が埋まるとともに、被播き物(種子、肥料)を覆う所望量の覆土となって盛り上がる。そして、この盛り上がった覆土(鎮圧輪12に付着していた土)は、鎮圧輪12にて鎮圧されて断面山型状に押し固められる。
【0029】
また、各スクレーパ26は、スクレーパ取付板27の左右方向両端部に脱着可能に取り付けられている。このスクレーパ取付板27は、鎮圧輪取付アーム17の長手方向中間部の下面に固着されている。
【0030】
さらに、各スクレーパ26は、例えば中間の1箇所で折り曲げられた金属製の板からなるもので、スクレーパ取付板27に取り付けられた取付板部28と、この取付板部28の後端部に一体に連設された前下り傾斜状の土除去板部29とにて構成されている。そして、この土除去板部29の後端部である自由端部が、鎮圧輪部材16の截頭円錐板部20の外周面における上部前側の部分に線状に接触(摺接)する接触部30となっている。
【0031】
ここで、播き手段11は、被播き物が収納されるタンク部(タンク装置)31と、このタンク部31からの被播き物を圃場の播き溝内に落下させる播種ディスク32とを有している。
【0032】
タンク部31は、図3ないし図9にも示されるように、機体2のタンク取付フレーム40に取り付けられた左右方向長手状で上面開口状をなす箱状のタンク本体33と、このタンク本体33の上面開口部35を開閉する蓋体34とを備えている。なお、タンク本体33は、農作業機1の左右方向一端から他端にわたって位置する左右方向長手状のもので、タンク本体33の左右方向長さ寸法が農作業機1の略機幅となっている(図2参照)。
【0033】
タンク本体33は、前側の複数箇所(例えば8箇所)に肥料取出口である肥料落下口41が形成されかつ後側の複数箇所(例えば8箇所)に種子取出口である種子落下口42が形成された底板部43を有している。底板部43の前端部には前板部44が立設され、底板部43の後端部には後板部45が立設され、底板部43の左右端部には側板部46が立設されている。
【0034】
底板部43は、肥料落下口41および種子落下口42に向かって下り傾斜する複数の傾斜底板48にて構成されている。つまり、底板部43は、左右方向に並ぶ複数対(例えば8対)の傾斜底板48にて構成され、これら左右対をなす両傾斜底板48が正面視V字状に配設され、その下端側の前後に肥料落下口41および種子落下口42がそれぞれ開口形成されている。
【0035】
また、両傾斜底板48の中央部間には、側面視で逆V字状をなす左右方向長手状の仕切体取付部50が架設されている。各仕切体取付部50は、前下り傾斜状の第1取付板51と、後下り傾斜状の第2取付板52とを有し、これら両取付板51,52の上端部同士が繋がっている。各取付板51,52の下面にはナット53が溶接等によって固着され、また各取付板51,52のうちナット53に対応する位置にボルト用孔54が形成されている。なお、仕切体取付部50は、タンク本体33内の底部付近における前後方向中央位置(略中央位置を含む)に配設されている。
【0036】
また、タンク部31は、タンク本体33内(タンク本体33の内部空間)を仕切って、肥料落下口41側である前側に肥料収納部(肥料収納空間)56を形成するとともに、種子落下口42側である後側に肥料収納部56と連通開口58を介して連通する種子収納部(種子収納空間)57を形成する上下方向に沿った板状の仕切部材である仕切壁60を備えている。
【0037】
仕切壁60は、タンク本体33内の前後方向中央位置よりも少し後方に位置するように、タンク本体33に取り付けられている。このため、前側の肥料収納部56の容量は、後側の種子収納部57の容量よりも大きく、例えば種子収納部57の容量の2倍以上(例えば略2倍)である。
【0038】
仕切壁60の下端部は、ジグザグ状に形成されており、この仕切壁60の下端部とタンク本体33の底板部43との間に、肥料収納部56と種子収納部57とを連通する正面視菱形状の連通開口58が存在している。つまり、タンク本体33内が中仕切り板である仕切壁60によって仕切られることによって、連通開口58を介して互いに連通する肥料収納部56および種子収納部57が形成されている。
【0039】
そして、図6に示すように、肥料および種子の両方を圃場に播く施肥播種作業を行う場合には、連通開口58を覆うようにタンク本体33内の底部に位置して肥料収納部56と種子収納部57とを非連通状態にする板状の仕切体である第1仕切体61が用いられる。
【0040】
つまり、施肥播種作業を行う場合には、複数枚(例えば8枚)の第1仕切体61が、ボルト55とナット53との螺合によって、仕切体取付部50の第1取付板51に脱着可能に取り付けられる。
【0041】
第1仕切体61は、仕切壁60の前面に当接して上下方向に沿って位置する矩形状の鉛直板部62と、この鉛直板部62の上下方向中間部から前斜め下方に向かって突出する略三角状の前傾斜板部63と、鉛直板部62の下端部から後斜め下方に向かって突出する略三角状の後傾斜板部64とにて構成されている。
【0042】
そして、前傾斜板部63の上面が、肥料収納部56の肥料を底板部43の肥料落下口41に向けて案内する緩勾配の前下り傾斜状の肥料案内面66となっている。また、後傾斜板部64の上面が、種子収納部57の種子を底板部43の種子落下口42に向けて案内する急勾配の後下り傾斜状の種子案内面67となっている。
【0043】
また、図7に示すように、種子のみを圃場に播く播種作業を行う場合には、肥料落下口41を覆うようにタンク本体33内の底部に位置して肥料収納部56を種子収納部57の一部(拡張部)として使用することを可能にする板状の仕切体である第2仕切体71が用いられる。
【0044】
つまり、播種作業を行う場合には、複数枚(例えば8枚)の第2仕切体71が、ボルト55とナット53との螺合によって、仕切体取付部50の第2取付板52に脱着可能に取り付けられる。すなわち、播種作業の際には、第1仕切体61の代わりに、この第1仕切体61とは異なる第2仕切体71が仕切体取付部50に取り付けられる。
【0045】
第2仕切体71は、上端部が前板部44に当接して肥料落下口41の上方に後下り傾斜状に位置する略三角状の傾斜板部72のみで構成されている。そして、傾斜板部72の上面が、肥料収納部56に入れられた種子を種子収納部57側の種子落下口42に向けて案内する緩勾配の後下り傾斜状の種子案内面73となっている。
【0046】
さらに、タンク部31は、肥料落下口41の下方に位置して肥料を繰り出す肥料繰出手段76と、種子落下口42の下方に位置して種子を繰り出す種子繰出手段77とを備えている。
【0047】
肥料繰出手段76は、肥料繰出用溝81が形成された肥料繰出ロール82を有し、この肥料繰出ロール82が回転軸83に取り付けられ、この回転軸83の端部に駆動源である駆動モータ(図示せず)が接続されている。
【0048】
そして、回転軸83のねじ部84に螺合された溝幅調整ダイヤル85の回転操作に基づいて、スライド部材86が肥料繰出用溝81に沿ってスライドすることによって、肥料案内筒87の肥料出口88から排出される肥料の量が調整される(図8参照)。なお、肥料案内筒87には、肥料を播種ディスク32側に向けて案内する可撓性の肥料案内ホース89の上端部が取り付けられている(図1参照)。
【0049】
また同様に、種子繰出手段77は、種子繰出用溝91が形成された種子繰出ロール92を有し、この種子繰出ロール92が回転軸93に取り付けられ、この回転軸93の端部に駆動源である駆動モータ(図示せず)が接続されている。
【0050】
そして、回転軸93のねじ部94に螺合された溝幅調整ダイヤル95の回転操作に基づいて、スライド部材96が種子繰出用溝91に沿ってスライドすることによって、種子案内筒97の種子出口98から排出される種子の量(肥料の量よりも少ない量)が調整される(図8参照)。なお、種子案内筒97には、種子を播種ディスク32側に向けて案内する可撓性の種子案内ホース99の上端部が取り付けられている(図1参照)。
【0051】
一方、蓋体34は、図9(a)および(b)に示すように、タンク本体33の上面開口部35の前側、つまり肥料収納部56の水平状の上面を開閉する肥料収納部蓋101と、タンク本体33の上面開口部35の後側、つまり種子収納部57の傾斜状の上面を開閉する種子収納部蓋102とにて構成されている。
【0052】
肥料収納部蓋101は、タンク本体33に左右方向の軸部103を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。種子収納部蓋102は、タンク本体33に左右方向の軸部104を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0053】
そして、図9(a)が蓋体34の閉状態であり、図9(b)が蓋体34の開状態であるが、図9(a)に示す蓋体34の閉状態時において、蓋体34とタンク本体33との間には隙間があり、密閉性が低くなっている。このため、雨水の浸入を防止するとともに、肥料や種子の水分を隙間から逃がすことでタンク本体33内の結露により肥料や種子が固まってしまうのを防止することが可能である。
【0054】
なお、機体2は、図1および図2等に示されるように、メインフレーム106、サイドフレーム107、センターフレーム108、播種ディスクフレーム109、鎮圧輪フレーム110およびステップ111等を有している。
【0055】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0056】
肥料および種子を圃場に播く施肥播種作業を行う場合には、まず、作業者は、仕切壁60とは異なる第1仕切体61をタンク本体33の仕切体取付部50の第1取付板51に取り付けて、タンク本体33内の一部を仕切る。
【0057】
すると、第1仕切体61によって連通開口58が覆われ、その連通開口58が第1仕切体61にて閉鎖された状態となり、その結果、互いに連通していた肥料収納部56と種子収納部57とが非連通状態となる。つまり、肥料収納部56と種子収納部57とが、互いに独立分離した2つの部屋(収納空間)となる。
【0058】
次いで、作業者は、一方の部屋である肥料収納部56に肥料を収納し、かつ、一方の部屋よりも小さな他方の部屋である種子収納部57に種子を収納する。
【0059】
そして、トラクタの前進走行により農作業機1を進行方向に移動させると、溝形成手段6の作溝ディスク8によって圃場の表面部(未耕土)に播き溝が形成される。
【0060】
この形成された播き溝内には、肥料繰出ロール82および種子繰出ロール92の回転によりタンク本体33内から繰り出される肥料および種子が播かれる。
【0061】
その後、圃場の播き溝内の肥料および種子は覆土によって覆われ、その覆土が鎮圧輪12によって鎮圧されて押し固められる。なお、タンク本体33内に肥料および種子を補給する際には、肥料収納部蓋101および種子収納部蓋102を開状態にしてタンク本体33の上面開口部35を開口させる。
【0062】
ここで、例えば種子の種類や圃場条件等によっては、上述のような肥料および種子を同時に播く施肥播種作業ではなく、種子のみを播く播種作業を行う場合がある。
【0063】
このような場合、作業者は、第1仕切体61を仕切体取付部50の第1取付板51から取り外し、その代わりに、仕切壁60とは異なる第2仕切体71を仕切体取付部50の第2取付板52に取り付けて、タンク本体33内の一部を仕切る。
【0064】
すると、第2仕切体71によって肥料落下口41の上方部が覆われ、その肥料落下口41が第2仕切体71にて閉鎖された状態となる一方、第1仕切体61が取り外されることで連通開口58が開口して肥料収納部56と種子収納部57とが互いに連通した連通状態となる。つまり、肥料収納部56の大部分を種子収納部57の拡張部、つまり拡張種子収納部として使用することが可能となる。
【0065】
このため、作業者は、タンク本体33内の前後の肥料収納部56および種子収納部57の両方に種子を収納する。
【0066】
そして、トラクタの前進走行により農作業機1を進行方向に移動させると、溝形成手段6の作溝ディスク8によって圃場の表面部(未耕土)に播き溝が形成される。
【0067】
この形成された播き溝内には、種子繰出ロール92の回転によりタンク本体33内から繰り出される種子が播かれ、その後、播き溝内の種子は覆土で覆われ、その覆土が鎮圧輪12によって鎮圧されて押し固められる。なお、タンク本体33内に種子を補給する際には、肥料収納部蓋101および種子収納部蓋102を開状態にしてタンク本体33の上面開口部35を開口させる。
【0068】
そして、このような農作業機1によれば、種子のみを播く播種作業を行う場合に肥料収納部56を種子収納部57の一部(拡張部)として使用することができるため、タンク本体33の容量を無駄なく有効利用することが可能であり、例えば種子収納部57のみに種子を収納して播種作業をする場合に比べて、種子の補給頻度を少なくでき、作業者の負担を軽減できる。
【0069】
また、第1仕切体61は肥料収納部56の肥料を肥料落下口41に向けて案内する下り傾斜状の肥料案内面66および種子収納部57の種子を種子落下口42に向けて案内する下り傾斜状の種子案内面67を有するとともに、第2仕切体71は肥料収納部56の種子を種子落下口42に向けて案内する下り傾斜状の種子案内面73を有し、かつ、タンク本体33の底板部43は肥料落下口41および種子落下口42に向かって下り傾斜する傾斜底板48にて構成されているため、タンク底面に水平面がなく、肥料や種子が落下口41,42に向かって滑り落ちることから、肥料や種子の播き残しを防止でき、よって、補給頻度をより減少でき、作業者の負担をより一層軽減できる。
【0070】
さらに、タンク本体33は、第1仕切体61および第2仕切体71に対して共用の仕切体取付部50を有するため、例えば各仕切体61,71に対してそれぞれ個別の仕切体取付部を有する場合等に比べて、構成の簡素化を図ることができる。
【0071】
なお、施肥播種作業時に用いる第1仕切体61は、案内面66,67を有するものが好ましいが、例えば連通開口58を覆う鉛直板部のみからなるもの等でもよい。
【0072】
また、播種作業時に用いる第2仕切体71は、種子案内面73を有するものが好ましいが、例えば肥料落下口41を覆う水平板部のみからなるもの等でもよい。
【0073】
さらに、仕切体61,71は、各仕切体取付部50にそれぞれ個別に取り付けるものには限定されず、例えばタンク本体33に対応する左右方向長手状に形成して、1つの仕切体取付部に脱着可能に取り付けるようにしてもよい。
【0074】
また、仕切体61,71が仕切体取付部50に取付具(ボルト55およびナット53)にて取り付けられる構成には限定されず、例えば取付具を用いずに仕切体が仕切体取付部に嵌合或いは係合等にて取り付けられる構成等でもよい。
【0075】
さらに、互いに形状が異なる仕切体61,71を用いる構成には限定されず、例えば両作業(施肥播種作業および播種作業)に共用可能な板状の仕切体によって、施肥播種作業を行う場合には肥料収納部56と種子収納部57とが非連通状態となり、播種作業を行う場合には肥料収納部56が種子収納部57の一部として使用可能となる構成でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 農作業機
33 タンク本体
41 肥料落下口
42 種子落下口
43 底板部
48 傾斜底板
50 仕切体取付部
56 肥料収納部
57 種子収納部
58 連通開口
60 仕切部材である仕切壁
61 仕切体である第1仕切体
66 肥料案内面
67 種子案内面
71 仕切体である第2仕切体
73 種子案内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9