特許第6422180号(P6422180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422180
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】エアゾール容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20181105BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   B65D83/14 200
   B05B9/04
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-226000(P2014-226000)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-88578(P2016-88578A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】高津 衣世
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−273533(JP,A)
【文献】 特開2000−238867(JP,A)
【文献】 特開2008−168193(JP,A)
【文献】 実開昭63−035459(JP,U)
【文献】 実開昭54−051605(JP,U)
【文献】 特開2004−161339(JP,A)
【文献】 米国特許第04219135(US,A)
【文献】 米国特許第03284007(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容され、上部にステムが設けられたエアゾール容器本体と、前記ステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、前記噴射ボタンの上部を開放して囲うように前記エアゾール容器本体の上部に装着されたカバーキャップとを備えるエアゾール容器であって、
前記カバーキャップは、前記エアゾール容器本体の上部に装着される外筒部と、前記外筒部の内側に前記噴射ボタンを囲うように、かつ前記噴射ボタンが上下動できるように設けられた内筒部とを備え、前記外筒部及び前記内筒部の前面に噴射用開口部が形成され、
前記噴射ボタンの前面の上部には、内側に向かって凹状に窪んだ噴射ガイドが形成され、
前記噴射ガイドの底部から外方に突出するように、前記噴射用開口部に向かって延びる噴射ノズルが形成され、
前記噴射ノズルの内部には、前記噴射用開口部に向かって延び、先端が開口した噴射用流路が形成され、
前記噴射用流路は、後端から一定の直径で延びる第1流路部と、前記第1流路部から先端に向かって拡径された第2流路部を備え
前記第2流路部は、直径が一定の第1ストレート部と、前記第1ストレート部よりも直径が大きく、かつ直径が一定の第2ストレート部とを有し、
前記第2流路部の長さが4.0〜8.0mm、前記第1ストレート部の直径が0.8〜1.5mm、前記第2ストレート部の直径が2.0〜4.0mm、前記第2ストレート部の長さが1.0〜3.0mmである、エアゾール容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアゾール容器は、エアゾール容器本体の上部に設けられたステムに噴射ボタンが取り付けられており、該噴射ボタンを押し下げることでエアゾール容器本体内の内容物を噴射するものである。例えば、未使用時にはエアゾール容器本体の上部に噴射ボタンを覆い隠すようにキャップを被せ、使用時には該キャップを取って噴射ボタンを押すオーバーキャップタイプのエアゾール容器が知られている。しかし、該エアゾール容器は、キャップを取り外さなければ使用できないため操作が煩雑である。
【0003】
また、噴射ボタンの上部を開放して囲うようにエアゾール容器本体の上部に装着され、前面に噴射用開口部が形成されたカバーキャップを備えるワンタッチタイプのエアゾール容器も知られている(例えば、特許文献1)。該エアゾール容器は、キャップを取り外すことなくそのまま噴射ボタンを押して使用でき利便性に優れるうえ、デザイン性にも優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−269638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ワンタッチタイプのエアゾール容器では、噴射音が大きく、またカバーキャップ内で噴射音が反響してこもる問題がある。
また、エアゾール容器では、内容物が噴射される範囲が狭くなりすぎると、比較的広い範囲に噴射された場合に比べて内容物が付着した時の温度が低くなって使用感が悪くなることがある。そのため、内容物の噴射が極狭い範囲に限定されないようにすることも重要である。
【0006】
本発明は、噴射音が小さく、こもりにくく、かつ内容物が噴射される範囲が充分に広いエアゾール容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエアゾール容器は、内容物が収容され、上部にステムが設けられたエアゾール容器本体と、前記ステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、前記噴射ボタンの上部を開放して囲うように前記エアゾール容器本体の上部に装着されたカバーキャップとを備えるエアゾール容器であって、前記カバーキャップは、前面に噴射用開口部が形成され、前記噴射ボタンには、前記噴射用開口部に向かって延び、先端が開口した噴射用流路が形成され、前記噴射用流路は、後端から一定の直径で延びる第1流路部と、前記第1流路部から先端に向かって拡径された第2流路部を備える。
【0008】
本発明のエアゾール容器では、前記第2流路部が段階的に拡径する部分を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール容器は、噴射音が小さく、こもりにくく、かつ内容物が噴射される範囲が充分に広い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のエアゾール容器の一例を示す縦断面図である。
図2図1のエアゾール容器の噴射ボタンを示すものであって、(a)は斜視図であり、(b)は平面図であり、(c)はステムに取り付けた状態の正面図である。
図3図1のエアゾール容器の噴射ボタンの底面図である。
図4図3の噴射ボタンのA−A’断面図である。
図5図4の噴射ボタンの噴射用流路近傍を拡大した断面図である。
図6図1のエアゾール容器のカバーキャップの底面図である。
図7図6のカバーキャップのB−B’断面図である。
図8】カバーキャップの前後を入れ替えてエアゾール容器本体に再装着した様子を示した断面図である。
図9】本発明のエアゾール容器における噴射用流路の他の例を示した断面図である。
図10】本発明のエアゾール容器における噴射用流路の他の例を示した断面図である。
図11】本発明のエアゾール容器における噴射用流路の他の例を示した断面図である。
図12】本発明のエアゾール容器における噴射用流路の他の例を示した断面図である。
図13】本発明のエアゾール容器の他の例を示した断面図である。
図14】比較例1の噴射ボタンを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のエアゾール容器の一例について図1〜7に基づいて説明する。
本実施形態のエアゾール容器1は、図1に示すように、内容物が収容され、上部にステム2bが設けられたエアゾール容器本体2と、ステム2bの先端部に取り付けられ、エアゾール容器本体2に収容された内容物を噴射させるための噴射ボタン3と、噴射ボタン3の上部を開放して囲うようにエアゾール容器本体2の上部に装着されるカバーキャップ4と、を備えている。
【0012】
(エアゾール容器本体)
エアゾール容器本体2としては、例えば、スチールやアルミニウム等からなる金属製の耐圧容器が挙げられる。この例のエアゾール容器本体2は、上部に設けられたマウンティングカップ2aと、マウンティングカップ2aの内側中央部から突出するステム2bと、ステム2bを下方に押し下げることにより開放されるバルブ機構(図示せず。)と、を備えている。マウンティングカップ2aの外周部は、図2(c)に示すように、耐圧容器の上端部に巻き締めされることによって巻締め部2cを形成している。
【0013】
(噴射ボタン)
噴射ボタン3は、図1〜4に示すように、ステム2bの先端部に取り付けられたボタン本体5と、ボタン本体5の前面から外方に突出した噴射ノズル6とを備えている。噴射ノズル6は、後述のカバーキャップ4の前面に形成された噴射用開口部21a,21bに向かって延びている。また、この例の噴射ノズル6の先端は、カバーキャップ4の噴射用開口部21bまで達していない。
【0014】
ボタン本体5は、略筒状で、かつ平面視で前後方向に長い円形状の外側壁部7と、外側壁部7の内側中央部に設けられた円筒状の内側壁部8と、外側壁部7及び内側壁部8の上面を閉塞する上壁部9と、を備えている。また、ボタン本体5の後部において、外側壁部7と内側壁部8とが補強用のリブ壁10で接続されている。また、噴射ボタン3を上方から押圧しやすくするために、上壁部9の上面は凹状とされている。
【0015】
外側壁部7の両方の外側面には、図2(a)〜(c)に示すように、外方に向かって突出した一対のガイド突起11が設けられている。一対のガイド突起11は、外側壁部7のそれぞれの外側面において、前後方向の中央部よりも前面側で互いに対称となるように配置されている。また、外側壁部7の両方の外側面における、前後方向の中央部よりも背面側で、かつ一対のガイド突起11よりも下方には、外方に向かって突出した一対の抜止め突起12が設けられている。
【0016】
外側壁部7の下端には、外側に張り出した裾筒部13が設けられている。裾筒部13は円筒状であり、噴射ボタン3をステム2bに取り付けたときにマウンティングカップ2aの巻締め部2cの内側に位置するようになっている。これにより、後述の残留内容物の排出においてカバーキャップ4を取り外す際に、カバーキャップ4と接触して噴射ボタン3が倒れ込んでも、裾筒部13が巻締め部2cの内面に当接することで噴射ボタン3のそれ以上の倒れ込みが防止される。そのため、ステム2bが破損したり、噴射ボタン3が外れ飛んだりすることが抑制される。
噴射ボタン3をステム2bの先端部に取り付けた状態において、裾筒部13の上面は巻締め部2cの上端と同じ高さ又はそれよりも上方に位置するようになっている。
【0017】
裾筒部13の両方の外側面には、図3に示すように、一対のスリット13aが設けられている。これら一対のスリット13aは、一対のガイド突起11の延長線上に位置し、裾筒部13の下端から外側壁部7の下端まで切り欠くように形成されている。スリット13aの幅は、ガイド突起11の幅と同じか、又はそれ以上となっている。
【0018】
内側壁部8は、上壁部9の下面から垂下され、底面が開放されている。内側壁部8の内側の底部には、図4に示すように、ステム2bの上端部に嵌合される、ステム2bの外径と同等の内径の嵌合部8aが形成されている。内側壁部8の内側における嵌合部8aよりも上方には、嵌合部8aの内径よりも小さい内径の充填室8bが形成されている。内側壁部8の内側では、内径の違いから嵌合部8aと充填室8bの境界部分に段差8cが形成されている。ステム2bを内側壁部8の嵌合部8aに挿入したときには、段差8cがステム2bの上端面に当接するようになっている。また、嵌合部8aの下端部には、ステム2bを挿入しやすくするために、下方に向かって徐々に拡径したテーパー面8dが形成されている。
【0019】
ボタン本体5の前面の上部には、外側壁部7が内側壁部8に向かって凹状に窪んだ噴射ガイド7aが形成されている。噴射ガイド7aの正面視での形状は、円形状になっている。凹状に窪んだ噴射ガイド7aの底部は内側壁部8と一体とされており、該底部から外方に突出するように噴射ノズル6が形成されている。噴射ガイド7aは、噴射ノズル6から噴射された内容物を放射状に放出させるためのガイドとなる。
ボタン本体5の上壁部9における前面側の上面には、上方に突出する凸部25aが設けられている。凸部25aは、噴射ボタン3を上方から見たときに噴射ノズル6が設けられている側がどちらであるかを判断するための目印となる。
【0020】
噴射ノズル6の内部には、図1及び図4に示すように、噴射用流路14が形成されている。すなわち、噴射ノズル6には、カバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bに向かって延びる噴射用流路14が形成されている。噴射用流路14は、内側壁部8の充填室8bに通じている。これにより、エアゾール容器1では、噴射ボタン3を上方から押圧してステム2bを押し下げたときに、ステム2bから上方に噴き出された内容物が充填室8b及び噴射用流路14を通って前方に噴射される。
【0021】
噴射用流路14は、図5に示すように、後端14aから延びる直径が一定の第1流路部15と、第1流路部15から先端14bに向かって拡径された第2流路部16とを備える。噴射用流路14が第1流路部15と第2流路部16を備えることで、噴射用流路14から噴射される範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しつつ、噴射音を小さくすることができる。
なお、本発明において、「第1流路部から先端に向かって拡径された第2流路部」とは、第1流路部から先端に向かって徐々に拡径されたもの、第1流路部から先端に向かって段階的に拡径されたもの、及びそれらの組み合わせたものを意味する。
【0022】
この例の第2流路部16は、第1流路部15からテーパー状に暫時拡径する拡径部16aと、拡径部16aの先端から延びる直径が一定の第1ストレート部16bと、第1ストレート部16bの先端から延び、第1ストレート部16bよりも直径が大きく、かつ直径が一定の第2ストレート部16cとからなる。このように、第2流路部16は、段階的に拡径する部分を有している。第2流路部16が段階的に拡径する部分を有することで、噴射用流路14から噴射された内容物がカバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bの周りに付着することを抑制しやすくなる。
【0023】
第1流路部15の長さL1は、0.1〜2.0mmが好ましく、0.5〜1.0mmがより好ましい。第1流路部15の長さL1が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第1流路部15の長さL1が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
【0024】
第1流路部15の直径d1は、0.3〜0.7mmが好ましく、0.4〜0.5mmがより好ましい。第1流路部15の直径d1が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第1流路部15の直径d1が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
【0025】
第2流路部16の長さL2は、2.0〜15mmが好ましく、4.0〜8.0mmがより好ましい。第2流路部16の長さL2が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第2流路部16の長さL2が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
【0026】
第1ストレート部16bの直径d2は、0.5〜2.0mmが好ましく、0.8〜1.5mmがより好ましい。第1ストレート部16bの直径d2が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第1ストレート部16bの直径d2が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
【0027】
第2ストレート部16cの長さL3は、0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmがより好ましい。第2ストレート部16cの長さL3が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第2ストレート部16cの長さL3が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
第2ストレート部16cの直径d3は、1.0〜5.0mmが好ましく、2.0〜4.0mmがより好ましい。第2ストレート部16cの直径d3が下限値以上であれば、噴射音を小さくしやすい。第2ストレート部16cの直径d3が上限値以下であれば、内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しやすい。
【0028】
噴射用流路14としては、第1流路部15の長さL1が0.5〜1.0mmであり、第1流路部15の直径d1が0.4〜0.5mmであり、第2流路部16の長さL2が4.0〜8.0mmであり、第1ストレート部16bの直径d2が0.8〜1.5mmであり、第2ストレート部16cの長さL3が1.0〜3.0mmであり、かつ第2ストレート部16cの直径d3が2.0〜4.0mmであるものが好ましい。これにより、噴射用流路14からの内容物の噴射範囲が極狭い範囲に限定されることを抑制しつつ、噴射音を小さくする効果が高くなる。また、噴射用流路14から噴射された内容物がカバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bの周りに付着することを抑制しやすくなる。
【0029】
噴射ボタン3を形成する材料としては、特に限定されず、エアゾール容器の噴射ボタンに通常使用されるプラスチック材料を使用できる。
噴射ボタン3の製造方法は、公知の製造方法を採用できる。
【0030】
(カバーキャップ)
カバーキャップ4は、図1図6及び図7に示すように、エアゾール容器本体2の上部に着脱自在に装着される円筒状の外筒部17と、外筒部17の内側に噴射ボタン3を囲うように、かつ噴射ボタン3が上下動できるように設けられた内筒部18と、外筒部17と内筒部18との間の上面を閉塞する上壁部19とを備えている。
【0031】
エアゾール容器本体2の上部に噴射ボタン3とカバーキャップ4を装着した状態においては、噴射ボタン3の上部は開放されており、カバーキャップ4を取り外さずにそのまま噴射ボタン3を上方から押圧できるようになっている。
外筒部17及び上壁部19には、噴射ボタン3を上方から押圧しやすくするために、前面部よりも背面部の高さが低くされた操作用凹部20が形成されている。
【0032】
この例の外筒部17の外径は、エアゾール容器本体2の外径とほぼ同等である。外筒部17の下部の内周面には、周方向に凸部17aが設けられている。カバーキャップ4は、外筒部17の凸部17aを巻締め部2cの下側に係合させることによって、エアゾール容器本体2の上部に着脱自在に装着することできる。
【0033】
内筒部18の平面視での形状は、噴射ボタン3の形状に対応する前後方向に長い長円形状(いわゆるレーストラック形状)となっている。内筒部18の内径は、内側で噴射ボタン3が上下動できるように、ボタン本体5の外径よりも僅かに大きくなっている。
内筒部18は、外筒部17の内側中央部に配置され、その上端には開口部18aが形成され、下端にも開口部18bが形成されている。エアゾール容器本体2の上部に噴射ボタン3とカバーキャップ4を装着した状態では、内筒部18の開口部18aから噴射ボタン3の上部が露出するようになっている。
【0034】
内筒部18の下端の上下方向の位置は、噴射ボタン3及びカバーキャップ4をエアゾール容器本体2に装着した状態で、ボタン本体5の噴射ガイド7aの下端と噴射ノズル6の間になっている。また、内筒部18の下端は、後述する外筒部17の噴射用開口部21aの上端と下端との中間に位置している。このように、内筒部18の上下方向の長さが短くなっていることで、後述のように使用済みの状態から残留内容物を排出する場合に、噴射ボタン3に内筒部18を引っ掛かけずにカバーキャップ4を取り外すことが容易になる。
内筒部18の下端部には、内側に噴射ボタン3を挿入しやすくするためのテーパー面18cが形成されている。
【0035】
外筒部17の前面には、正面視で円形状の噴射用開口部21aが形成されている。また、内筒部18の前面には、正面視で半円状の噴射用開口部21bが形成されている。内筒部18の半円状の噴射用開口部21bの半径は、噴射ガイド7aの平面視での半径とほぼ同等になっている。また、外筒部17の円形状の噴射用開口部21aの半径は、内筒部18の噴射用開口部21bの半径よりも大きくなっている。
エアゾール容器1を正面視したときには、カバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bの位置に噴射ノズル6が位置するようになっている。噴射ボタン3を上方から押圧したときには、噴射ノズル6から噴射された内容物がカバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bを通って前方に拡散される。
【0036】
内筒部18の両方の側面部には、内筒部18の下端から上方に切欠かれた一対のガイドスリット22が形成されている。一対のガイドスリット22は、噴射ボタン3の一対のガイド突起11のそれぞれに対応する位置に形成されている。これにより、噴射ボタン3とカバーキャップ4がエアゾール容器本体2に装着された状態において、各々のガイド突起11がそれぞれのガイドスリット22に嵌まり、ガイド突起11がガイドスリット22により案内されつつ上下動するようになっている。ガイドスリット22の幅は、噴射ボタン3のガイド突起11が案内するのに充分な幅になっている。
【0037】
内筒部18の背面側の下端部には、排出用開口部23が設けられている。後述のように残留内容物を排出する際にカバーキャップ4の前後を入れ替えて装着したときに、噴射ノズル6の位置が排出用開口部23と一致するようになっている。
【0038】
また、内筒部18の両方の内側面における前後方向の中央部よりも背面側には、内側に突出する一対の抜止め部24が設けられている。
一対の抜止め部24は、前後方向において噴射ボタン3の一対の抜止め突起12のそれぞれに対応する位置で、噴射ボタン3とカバーキャップ4がエアゾール容器本体2に装着された状態において、一対の抜止め突起12の下方に位置するように設けられている。噴射ボタン3が上方に抜けようとした場合、一対の抜止め突起12がカバーキャップ4の一対の抜止め部24に係合する。これにより、輸送中の振動や落下によって噴射ボタン3が脱落することが抑制される。
【0039】
カバーキャップ4の上壁部19における背面側の上面には、上方に突出する凸部25bが設けられている。凸部25bは、カバーキャップ4を上方から見たときにいずれが背面側であるかを判断するための目印となる。
【0040】
カバーキャップ4を形成する材料としては、特に限定されず、エアゾール容器のカバーキャップに通常使用されるプラスチック材料を使用できる。
カバーキャップ4の製造方法は、公知の製造方法を採用できる。
【0041】
(内容物)
エアゾール容器1に収容する内容物としては、特に限定されず、例えば、各種目的に応じた有効成分、及び必要に応じて含まれる溶剤、補助剤等を含む原液と、液体ガスや圧縮ガス等の噴射剤との混合物が挙げられる。
前記有効成分の具体例としては、例えば、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤、芳香剤、室内消臭剤、整髪剤、ヘアケア剤、育毛トニック剤、シェービングフォーム、制汗消臭剤、ガラスクリーナー、エアコン洗浄剤、防水剤、塗料等が挙げられる。
【0042】
(使用方法)
以下、エアゾール容器1の使用方法について説明する。
エアゾール容器1では、図1に示すように、ステム2bが噴射ボタン3の内側壁部8の嵌合部8aに挿入され、ステム2bの先端に内側壁部8の段差8cが当接されるようにして、内容物が収容されたエアゾール容器本体2の上部に噴射ボタン3が取り付けられる。また、カバーキャップ4の内筒部18の内側に噴射ボタン3が挿入されるように、カバーキャップ4がエアゾール容器本体2の上部に装着される。この状態では、カバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bの位置が噴射ボタン3の噴射ノズル6の位置と揃えられ、噴射ボタン3の一対のガイド突起11がカバーキャップ4の一対のガイドスリット22内に嵌まっている。また、噴射ボタン3の上部はカバーキャップ4から露出している。
【0043】
エアゾール容器1を使用する場合は、カバーキャップ4を取り外すことなく噴射ボタン3を上方から押圧する。噴射ボタン3はガイドスリット22によるガイド突起11の案内によって真っ直ぐに押し下げられ、それに伴ってエアゾール容器本体2のステム2bが押し下げられる。これにより、ステム2bを通じて内容物がボタン本体5の充填室8bに噴き出され、次いで噴射ノズル6の噴射用流路14を通じて噴射される。噴射ノズル6から噴射された内容物は、カバーキャップ4の噴射用開口部21a,21bを通じて前方に放射状に拡散される。
噴射ボタン3の押圧を解除すると、押し下げられたステム2bが再び元の位置に戻り、内容物の噴射が停止する。
【0044】
使用済みとなったエアゾール容器1においては、残留内容物を以下のようにして排出する。
まず、エアゾール容器本体2からカバーキャップ4を取り外す。次いで、図8に示すように、噴射ボタン3の上面に設けられた凸部25aとカバーキャップ4の上面に設けられた凸部25bとが同じ方向になるように、前後を入れ替えてカバーキャップ4をエアゾール容器本体2の上部に再装着する。この状態では、カバーキャップ4の内筒部18の下端部におけるガイドスリット22よりも背面側の部分18dが噴射ボタン3の一対のガイド突起11を押し下げることで、噴射ボタン3が強制的に押し下げられる。これにより、ステム2bが連続的に押し下げられた状態となり、エアゾール容器本体2内に残留した内容物が外筒部17と内筒部18との間の空間S1に排出される。噴射された内容物は、裾筒部13のスリット13aを通じて、噴射ボタン3の外側壁部7内の空間S2にも流入する。このように、エアゾール容器1では、残留内容物が周囲に飛散させずに排出することができる。
【0045】
(作用効果)
以上説明した本発明のエアゾール容器では、噴射用流路が、後端から延びる直径が一定の第1流路部と、直径が先端に向かって拡径した第2流路部とを備えているため、噴射音が小さく、こもりにくくなるうえ、内容物が充分に広い範囲に噴射される。
また、エアゾール容器1のように噴射用流路の第2流路部が段階的に拡径する部分を有していれば、内容物の噴射範囲を充分に広く保ちつつ噴射音を小さくする効果がさらに高くなる。また、噴射用流路から噴射された内容物がカバーキャップの噴射用開口部の周りに付着することも抑制しやすくなる。
【0046】
なお、本発明のエアゾール容器は、前記したエアゾール容器1には限定されない。
例えば、噴射ボタン3の代わりに、図9に例示した噴射用流路14Aを有する噴射ボタン3Aを備えるエアゾール容器であってもよい。図9における図5と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
噴射用流路14Aは、第2流路部16の代わりに、テーパー状に暫時拡径する拡径部16aを有さず、第1流路部15よりも直径が大きい第1ストレート部16bと、第1ストレート部16bよりも直径が大きい第2ストレート部16cとからなる第2流路部16Aを有する以外は、噴射用流路14と同じである。第2流路部16Aも段階的に拡径する部分を有しているため、内容物の噴射範囲を充分に広く保ちつつ噴射音を小さくする効果がより高くなる。また、噴射用流路から噴射された内容物がカバーキャップの噴射用開口部の周りに付着することも抑制しやすくなる。
【0047】
また、本発明のエアゾール容器は、図10に例示した噴射用流路14Bを有する噴射ボタン3Bを備えるエアゾール容器であってもよい。図10における図5と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
噴射用流路14Bは、第2流路部16の代わりに、流路軸方向の切断断面における流路壁面形状が、先端14bに向かって拡径の度合いが小さくなるような円弧状となっている第2流路部16Bを有する以外は、噴射用流路14と同じである。
【0048】
また、本発明のエアゾール容器は、図11に例示した噴射用流路14Cを有する噴射ボタン3Cを備えるエアゾール容器であってもよい。図11における図5と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
噴射用流路14Cは、第2流路部16の代わりに第2流路部16Cを有する以外は、噴射用流路14と同じである。第2流路部16Cは、第2ストレート部16cの代わりに、流路軸方向の切断断面における流路壁面形状が、先端14bに向かって拡径の度合いが小さくなるような円弧状となっている拡径部16dを有する以外は、第2流路部16と同じである。
【0049】
また、本発明のエアゾール容器は、図12に例示した噴射用流路14Dを有する噴射ボタン3Dを備えるエアゾール容器であってもよい。図12における図5と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
噴射用流路14Dは、第2流路部16の代わりに第2流路部16Dを有する以外は、噴射用流路14と同じである。第2流路部16Dは、第2ストレート部16cの代わりに、流路軸方向の切断断面における流路壁面形状が、先端14bに向かって拡径の度合いが大きくなるような円弧状となっている拡径部16eを有する以外は、第2流路部16と同じである。
【0050】
また、本発明のエアゾール容器は、図13に例示した噴射ボタン3Eを備えるエアゾール容器1Aであってもよい。図13における図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
噴射ボタン3Eは、噴射ノズル6の代わりに、カバーキャップ4の内筒部18の噴射用開口部21bまで延びる噴射ノズル6Aを有する以外は、噴射ボタン3と同じである。噴射ボタン3Eの噴射用流路14Eは、噴射ボタン3の噴射用流路14に比べて長く、先端が外筒部17の噴射用開口部21aに近い。そのため、エアゾール容器1Aはエアゾール容器1に比べてより噴射音が小さく、また噴射音が反響しにくくこもりにくくなる。一方、エアゾール容器1Aは噴射された内容物の付着温度が低くなりやすい傾向がある。噴射された内容物の付着温度をより高くしやすい点では、噴射ボタン3Eを備えるエアゾール容器1Aよりも噴射ボタン3を備えるエアゾール容器1の方が好ましく、噴射用流路の寸法を上記範囲となるように調節することがより好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[評価方法]
各例のエアゾール容器について、以下の方法で評価した。
(噴射音)
Audio Technica AT9440を用いて、各例のエアゾール容器から内容物を噴射したときの音量を測定した。
【0052】
(噴射範囲)
エアゾールスプレーの実使用距離である、カバーキャップの前面から15cm離れたところに各例のエアゾール容器から内容物を噴射し、噴射範囲における噴射時にカバーキャップの軸方向と一致する縦方向と、該方向に直交する横方向の径を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を噴射範囲とした。
【0053】
(付着温度)
NEC THERMO TRACERにより、カバーキャップの前面から15cm離れたところに各例のエアゾール容器から内容物を噴射し、噴射された内容物の付着温度を測定した。測定は3回行い、それらの平均値を付着温度とした。
【0054】
(液だれ)
各例のエアゾール容器から内容物を3秒間噴射した後、カバーキャップの噴射用開口部の周りを目視にて確認し、以下の基準で液だれを評価した。
<評価基準>
○:液だれなし。
△:液だれがあるものの、ごく僅かである。
×:液だれが激しい。
【0055】
[実施例1]
図5に示す形状の噴射用流路14を有する噴射ボタン3を作製し、図1に示すように、エアゾール容器本体2にカバーキャップ4と共に装着してエアゾール容器1とした。
噴射用流路14においては、第1流路部15の長さL1を1mm、第1流路部15の直径d1を0.5mm、第2流路部16の長さL2を4mm、拡径部16aの長さL4を0.25mm、第1ストレート部16bの直径d2を1mm、第2ストレート部16cの長さL3を2mm、第2ストレート部16cの直径d3を2.75mmとした。
【0056】
[実施例2〜9]
噴射用流路14における第1ストレート部16bの直径d2、第2ストレート部16cの長さL3、及び第2ストレート部16cの直径d3を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして噴射ボタン3を作製し、エアゾール容器を得た。
【0057】
[実施例10]
図10に示す形状の噴射用流路14Bを有する噴射ボタン3Bを作製し、実施例1と同様にエアゾール容器を得た。
噴射用流路14Bにおいては、実施例1と同様に第1流路部15の長さL1を1mm、第1流路部15の直径d1を0.5mmとし、後端14aから先端14bまでの長さを8mm、先端14bにおける直径d4を4.5mm、第2流路部16Bの曲率半径rを1.3mmとした。
【0058】
[実施例11]
図11に示す形状の噴射用流路14Cを有する噴射ボタン3Cを作製し、実施例1と同様にエアゾール容器を得た。
噴射用流路14Cにおいては、実施例1と同様に第1流路部15の長さL1を1mm、第1流路部15の直径d1を0.5mmとし、後端14aから先端14bまでの長さを8mm、拡径部16aの長さL4を0.25mm、第1ストレート部16bの直径d2を1mm、先端14bにおける直径d5を4.5mm、拡径部16dの長さを2mmとした。
【0059】
[比較例1]
図14に示すような、噴射用流路14の代わりに、直径0.5mm、長さ1mmの噴射用流路114を有する以外は、噴射ボタン3と同じ態様の噴射ボタン103を作製し、実施例1と同様にしてエアゾール容器を得た。
【0060】
[比較例2]
噴射用流路14における後端14aから先端14bまで直径を0.5mmで一定とした以外は、実施例1と同様にして噴射ボタンを作製し、エアゾール容器を得た。
各実施例及び比較例の噴射用流路の評価結果を表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示すように、本発明の噴射用流路を備える実施例1〜11のエアゾール容器は、第1流路部のみからなる流路に相当する短い噴射用流路を備える比較例1のエアゾール容器に比べて噴射音が小さかった。また、実施例1〜11のエアゾール容器は、噴射用流路の長さが同等で拡径されていない比較例2のエアゾール容器において噴射範囲の縦方向の径が2.2mmであるのに対して、噴射範囲の径がそれよりも広く、噴射範囲が極狭い範囲に限定されることが抑制されていた。
また、実施例3、7では、噴射された内容物の付着温度も比較的高く、液だれもなかった。
【符号の説明】
【0064】
1、1A エアゾール容器
2 エアゾール容器本体
2b ステム
3、3A〜3E 噴射ボタン
4 カバーキャップ
5 ボタン本体
6 噴射ノズル
14、14A〜14E 噴射用流路
15 第1流路部
16、16A〜16D 第2流路部
16a、16d、16e 拡径部
16b 第1ストレート部
16c 第2ストレート部
21a、21b 噴射用開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14