【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0036】
(1)微粘着−剥離力測定用フィルムの実機試作
微粘着用の粘着剤組成物の実機での塗工性の確認、および、乾燥時間を制御することで架橋状態を制御できるかを確認する目的で以下の実験を行った。
【0037】
参考例A−1
(1−1)粘着剤組成物の調合
以下の原料を調合し、粘着剤組成物を製造した。
・主剤 綜研化学製 SK−1496(アクリル系共重合体、不揮発分37〜39質量%) 100質量部
・硬化剤 綜研化学製 D−90 (イソシアネート系硬化剤、有効成分80〜90質量%) 2質量部
・触媒 マツモトファインケミカル製 ZC−700(有効成分20質量%) 0.3質量部
・遅延剤 アセチルアセトン 3質量部
・希釈溶剤 酢酸エチル 90質量部
【0038】
(1−2)粘着テープの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、乾燥後の塗工量が10μmになるように、上記で得られた粘着剤組成物を塗工した。上記粘着剤組成物は、実機で十分塗工可能であった。また、次に5Z、20mからなる乾燥機に60℃〜120℃の温度勾配を持たせ、この中を線速10、15、25m/minで通過させ、粘着剤組成物を乾燥させ、粘着層とした。PET上に粘着層が形成されたフィルムを未処理PETと貼り合せたのち、ゴムニップロールで圧着して、評価用粘着テープを得た。この粘着テープについて、下記の評価方法で評価を行った。
【0039】
(1−3)剥離力の測定
JIS Z0237(2000年版)に従って試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
(1−4)イソシアネートピーク面積率の測定
FT−IR測定装置[(株)島津製作所製、赤外顕微鏡システム AIM−8800]を用いて、所定の乾燥条件で乾燥後の粘着剤組成物について、2275cm
−1のイソシアネート基の逆対称伸縮ピーク(イソシアネートピーク)を測定した。また、触媒と遅延剤を含まず、上記主剤100質量部と上記硬化剤2質量部と酢酸エチル90質量部とを調合した基準アクリル系粘着剤組成物について、空気中110℃、2分の乾燥条件で乾燥した後、イソシアネートピークを測定した。イソシアネートピーク面積率は、何れの乾燥速度の粘着剤においても、55%以下であった。
【0041】
(1−5)架橋状態の評価
微粘着のアクリル塗料では、乾燥後の架橋状態が不十分な場合に、指で触れたときに糸を引く性質がある。この場合には、養生が必要である。そこで、糸を引くものを×、完全に糸を引かないものを○、僅かに糸を引くものを○△とした。結果を表1に示す。
【0042】
参考例A−2
PET上に粘着層が形成されたフィルムを、未処理PETの代わりにシリコンアクリレートハードコート層を形成したPETと貼り合せた以外は
参考例A−1と同様にして、評価用粘着テープを得た。この粘着テープについて、
参考例A−1と同様に剥離力とイソシアネートピーク面積率と架橋状態の評価を行った。剥離力と架橋状態の評価結果を表1に示す。イソシアネートピーク面積率は、何れの乾燥速度の粘着剤においても、55%以下であった。
【0043】
参考例A−3
PET上に粘着層が形成されたフィルムを、未処理PETの代わりにフッ素含有シリコンアクリレートハードコート層を形成したPETと貼り合せた以外は
参考例A−1と同様にして、評価用粘着テープを得た。この粘着テープについて、
参考例A−1と同様に剥離力とイソシアネートピーク面積率と架橋状態の評価を行った。剥離力と架橋状態の評価結果を表1に示す。イソシアネートピーク面積率は、何れの乾燥速度の粘着剤においても、55%以下であった。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、加工速度が10m/min(乾燥時間2.0分)、15m/min(乾燥時間1.3分)、25m/min(乾燥時間0.8分)の何れの粘着剤組成物においても、イソシアネートピーク面積率が55%以下であり、架橋状態も指で触れた場合に糸を引かず、養生不要であった。
【0046】
(2)微粘着−乾燥条件の最適化の卓上実験
養生不要とできる乾燥条件を特定する目的で下記の実験を行った。
【0047】
実施例A−4
(2−1)粘着剤組成物の調合
以下の原料を調合し、粘着剤組成物を製造した。
・主剤 綜研化学製 SK−1496(不揮発分37〜39質量%) 100質量部
・硬化剤 綜研化学製 D−90 (有効成分80〜90質量%) 2質量部
・触媒 マツモトファインケミカル製 ZC−700(有効成分20質量%)0.3質量部
・遅延剤 アセチルアセトン 2.5質量部
・希釈溶剤 酢酸エチル 90質量部
【0048】
(2−2)粘着層の作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、乾燥後の塗工量が10μmになるように粘着剤組成物を塗工した。次に110℃の乾燥機で、0.5〜32分の種々の乾燥時間で粘着剤組成物を乾燥させ、それぞれ粘着層を得た。
【0049】
(2−3)イソシアネートピーク面積率の測定
上記で得られた各粘着層について、
参考例A−1と同様に、イソシアネートピーク面積率を求めた。結果を
図1に示す。
【0050】
図1に示すように、110℃、0.5分の乾燥条件においても、イソシアネートピークの面積率は55%以下であった。110℃、5分の乾燥条件では、イソシアネートピークの面積率は10%以下であった。
【0051】
(2−4)架橋状態の評価
上記で得られた各粘着層について、
参考例A−1と同様に、指で触れたときに糸を引くかどうかの架橋状態の評価を行った。この結果、全ての粘着層において完全に糸を引かず、養生が不要であった。
【0052】
(3)微粘着−触媒量と遅延剤量の最適化の卓上実験
養生不要とできる触媒量の下限ならびに遅延剤倍率の上限を特定し、また、十分なポットライフを保持できる遅延剤倍率の下限を特定する目的で下記の実験を行った。
【0053】
参考例B−1
(3−1)粘着剤組成物の調合
以下の原料を調合し、粘着剤組成物を製造した。
・主剤 綜研化学製 SK−1496(不揮発分37〜39質量%) 100質量部
・硬化剤 綜研化学製 D−90(有効成分80〜90質量%) 2質量部
・触媒 マツモトファインケミカル製 ZC−700(有効成分20質量%)0.05質量部
・遅延剤 アセチルアセトン 3質量部
・希釈溶剤 酢酸エチル 90質量部
【0054】
(3−2)保護フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、乾燥後の塗工量が10μmになるように粘着剤組成物を塗工した。次に110℃の乾燥機で、2分乾燥させ、粘着剤組成物を乾燥させ、粘着層を得た。PET上に粘着層が形成されたフィルムを未処理PETと貼り合せたのち、ゴムニップロールで圧着して、評価用粘着テープを得た。この粘着テープについて、下記の評価方法で評価を行った。
【0055】
(3−3)架橋状態の評価
参考例A−1と同様に架橋状態の評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(3−4)イソシアネートピーク面積率の測定
上記で得られた各粘着層について、
参考例A−1と同様に、イソシアネートピーク面積率を求めた。イソシアネートピーク面積率は55%以下であった。
【0057】
参考例B−2〜B−4、ならびに比較例B−1〜B−5
触媒ならびに遅延剤の添加量を表2に示すように変更した以外は
参考例B−1と同様にして、評価用フィルムを得た。このフィルムについて、
参考例B−1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。イソシアネートピーク面積率はいずれも55%以下であった。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、主剤100質量部(アクリル樹脂37〜39質量部)に対し、0.05質量部のZS−700(触媒量0.01質量部)を添加した場合に、炉内で乾燥後に良好な架橋状態が得られた。また、遅延剤を、触媒に対して質量比で300倍量添加しても、炉内で乾燥後に良好な架橋状態が得られた。そして、イソシアネートピーク面積率を55%以下にできた。
【0060】
参考例C−1〜
C−2、実施例C−3〜C−4
触媒ならびに遅延剤の添加量を表3に示すように変更した以外は
参考例B−1と同様にして、粘着剤組成物ならびに粘着層を得た。これらの粘着剤組成物について、以下の評価を行った。
【0061】
(3−5)架橋状態の評価
参考例A−1と同様に架橋状態の評価を行った。結果を表3に示す。
【0062】
(3−6)イソシアネートピーク面積率の測定
上記で得られた各粘着層について、
参考例A−1と同様に、イソシアネートピーク面積率を求めた。イソシアネートピーク面積率は55%以下であった。
【0063】
(3−7)ポットライフの測定
参考例C−1〜
C−2、実施例C−3〜C−4で製造した粘着剤組成物を、室温環境下(25℃前後)に蓋をして保管し、1時間ごとに粘度測定を行った。4時間以上ゲル化しないものを使用可能とした。望ましくは6時間以上ゲル化しないものが良い。結果を表4に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
表3に示すように、遅延剤を、触媒に対して質量比で40倍量添加した場合に、炉内で乾燥後に良好な架橋状態が得られた。そして、イソシアネートピーク面積率を55%以下にできた。また、表4に示すように、いずれの粘着剤組成物もポットライフは4時間以上であった。
【0067】
(4)強粘着−応用の可能性の確認とポットライフ延長の為の試作
強粘着塗料で養生不要とできるか、また、強粘着塗料で十分なポットライフが得られるか確認する目的で下記の実験を行った。
【0068】
参考例D−1
(4−1)粘着剤組成物(塗料)の調合
以下の原料を調合し、粘着剤組成物を製造した。
・主剤 大同化成工業製 ダイカラック5250(不揮発分39〜41質量%)100質量部
・硬化剤 日本ポリウレタン工業製 コロネートHX(不揮発分100%) 0.2質量部
・触媒 マツモトファインケミカル製 ZC−700(有効成分20質量%) 0.3質量部
・遅延剤 アセチルアセトン 3質量部
・希釈溶剤 酢酸エチル 30質量部
なお、ここでは触媒の有効成分質量に対する遅延剤の質量を50倍とした。
【0069】
(4−2)粘着テープの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に、乾燥後の塗工量が10μmになるように上記で得られた粘着剤組成物を塗工した。次に110℃の乾燥機で2分乾燥させ、PETフィルム上に粘着層が形成された粘着テープを得た。
【0070】
(4−3)イソシアネートピーク面積率の測定
FT−IR測定装置[(株)島津製作所製、赤外顕微鏡システム AIM−8800]を用いて、乾燥後の粘着剤組成物(粘着層)について、2275cm
−1のイソシアネート基の逆対称伸縮ピーク(イソシアネートピーク)を測定した。また、触媒と遅延剤を含まず、上記主剤100質量部と上記硬化剤0.2質量部と酢酸エチル33質量部とを調合した基準アクリル系粘着剤組成物について、空気中110℃、2分の乾燥条件で乾燥した後、イソシアネートピークを測定し、イソシアネートピーク面積率を求めた。結果を表5に示す。
【0071】
参考例D−2〜D−6、ならびに比較例D−1
触媒、遅延剤、ならびに酢酸エチルの添加量を表5に示すように変更した以外は
参考例D−1と同様にして、評価用フィルムを得た。このフィルムについて、
参考例D−1と同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
参考例D−8〜D−10
触媒、遅延剤、ならびに酢酸エチルの添加量を表6に示すように変更した以外は
参考例D−1と同様にして、評価用フィルムを得た。このフィルムについて、以下の方法でポットライフの評価を行った。結果を表6に示す。
【0074】
(4−4)ポットライフの測定
調液後、室温環境下(25℃前後)に蓋をして保管し、1時間ごとに粘度測定を行った。4時間後の粘度が2倍以下を使用可能とした。望ましくは6時間後でも2倍以下が良い。
【0075】
【表6】
【0076】
表5に示すように、強粘着塗料でも、イソシアネートピーク面積率は55%以下であり、養生が不要であった。また、表6に示すように、強粘着塗料でも実用可能なポットライフが得られた。