(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422204
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】ステータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/08 20060101AFI20181105BHJP
【FI】
H02K5/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-129374(P2013-129374)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-6052(P2015-6052A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴雄
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−147748(JP,A)
【文献】
特開2001−320867(JP,A)
【文献】
特開2003−124020(JP,A)
【文献】
特開2001−037149(JP,A)
【文献】
特開昭63−116408(JP,A)
【文献】
実公昭55−006097(JP,Y1)
【文献】
実公昭49−020939(JP,Y1)
【文献】
特開昭63−158844(JP,A)
【文献】
特開昭63−241915(JP,A)
【文献】
実開平03−026274(JP,U)
【文献】
特開2004−072990(JP,A)
【文献】
特開平11−074748(JP,A)
【文献】
実開昭51−004948(JP,U)
【文献】
特開平05−176491(JP,A)
【文献】
実開昭59−159043(JP,U)
【文献】
実開平01−143263(JP,U)
【文献】
特開2001−037158(JP,A)
【文献】
米国特許第06700253(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0056544(US,A1)
【文献】
特開平09−096136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンに巻回されたコイルを有し、その内周面に中空部を有するステータと、
前記ステータを収容する樹脂製カップと、
前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂とより形成され、
電動弁や電磁弁に装備されるステータユニットであって、
前記樹脂製カップは、
前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記コイルの軸線方向の一方の端部及び前記コイルの外周部を覆うカップ形状の第1のカップ部材と、
前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記第1のカップ部材の上面に嵌合されて前記コイルの軸線方向の他方の端部を覆う蓋状の第2のカップ部材とを備えると共に、
前記第1のカップ部材が前記第2のカップ部材に嵌合された状態において、前記コイルの軸線に直交する方向に突出して開口する開口部が形成され、
前記開口部より、前記コイルに接続されたリード線が引き出され、
前記開口部より前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂は、前記第1及び第2のカップ部材の孔部と、前記ステータの中空部との間で同一径の筒状孔となるように、前記第1及び第2のカップ部材の内部でモールドされ、
前記樹脂製カップの内側と前記コイルの外側に形成される前記コイルの軸線に直交する平面上の前記モールド樹脂の流路面積は、凸部を形成することによって左右で非対称となるように形成されることを特徴とするステータユニット。
【請求項2】
ボビンに巻回されたコイルを有し、その内周面に中空部を有するステータと、
前記ステータを収容する樹脂製カップと、
前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂とより形成され、
電動弁や電磁弁に装備されるステータユニットであって、
前記樹脂製カップは、
前記ステータの中空部と同一径の孔部を備える2つの割り形状の1対のカップ部材によって構成されると共に、
前記1対のカップ部材が互いに嵌合された状態において、前記コイルの軸線に直交する方向に突出して開口する開口部が形成され、
前記開口部より、前記コイルに接続されたリード線が引き出され、
前記開口部より前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂は、前記1対のカップ部材の孔部と、前記ステータの中空部との間で同一径の筒状孔となるように、前記1対のカップ部材の内部でモールドされ、
前記樹脂製カップの内側と前記コイルの外側に形成される前記コイルの軸線に直交する平面上の前記モールド樹脂の流路面積は、凸部を形成することによって左右で非対称となるように形成されることを特徴とするステータユニット。
【請求項3】
前記1対のカップ部材は同一部材を向かい合わせに合体させてなることを特徴とする請求項2に記載のステータユニット。
【請求項4】
ボビンに巻回されたコイルを有し、その内周面に中空部を有するステータと、
前記ステータを収容する樹脂製カップと、
前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂とより形成され、
電動弁や電磁弁に装備されるステータユニットであって、
前記樹脂製カップは、
前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記コイルの軸線方向の一方の端部及び前記コイルの外周部を覆うカップ形状の第1のカップ部材と、
前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記第1のカップ部材の上面に嵌合されて前記コイルの軸線方向の他方の端部を覆う蓋状の第2のカップ部材とを備えると共に、
前記第1のカップ部材が前記第2のカップ部材に嵌合された状態において、前記コイルの軸線に直交する方向に突出して開口する開口部が形成され、
前記開口部より、前記コイルに接続されたリード線が引き出され、
前記開口部より前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂は、前記第1及び第2のカップ部材の孔部と、前記ステータの中空部との間で同一径の筒状孔となるように、前記第1及び第2のカップ部材の内部でモールドされ、
前記リード線は、前記第1のカップ部材に当接して前記軸線に沿う方向から前記開口部外に向かう方向に向きを変えて前記開口部外に引き出されることを特徴とするステータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁などに装備されるステータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ボビンにコイルを巻回し、それを樹脂でモールドしてステータユニット(コイルモールド装置)としたものが下記の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−65994号公報
【特許文献2】特開平10−132126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のステータユニットは、樹脂製のカップ部材内にコイルユニットを配置して、樹脂を注入してモールド成型される。注入する樹脂は、エポキシやウレタン等のように耐湿性に優れるが高粘性の樹脂が使用される。
そのため、樹脂注入の作業性に問題があり、モールド樹脂の硬化後のバリ取りなどを必要としていた。
本発明の目的は、上述した不具合を解消するステータユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のステータユニットは、ボビンに巻回されたコイルを有し、その内周面に中空部を有するステータと、前記ステータを収容する樹脂製カップと、前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂とより形成され、電動弁や電磁弁に装備されるステータユニットである。前記樹脂製カップは、前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記コイルの軸線方向の一方の端部及び前記コイルの外周部を覆うカップ形状の第1のカップ部材と、前記ステータの中空部と同一径の孔部を備えると共に、前記第1のカップ部材の上面に嵌合されて前記コイルの軸線方向の他方の端部を覆う蓋状の第2のカップ部材とを備えると共に、前記第1のカップ部材が前記第2のカップ部材に嵌合された状態において、前記コイルの軸線に直交する方向に突出して開口する開口部が形成される。また、前記開口部より、前記コイルに接続されたリード線が引き出されている。さらに、前記開口部より前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂は、前記第1及び第2のカップ部材の孔部と、前記ステータの中空部との間で同一径の筒状孔となるように、前記第1及び第2のカップ部材の内部でモールドされた構成を備える。また、前記樹脂製カップの内側と前記コイルの外側に形成される前記コイルの軸線に直交する平面上の前記モールド樹脂の流路面積は、
凸部を形成することによって左右で非対称となるように形成される。
【0006】
代替的に、本発明のステータユニットにおいて、前記樹脂製カップは、前記ステータの中空部と同一径の孔部を備える2つの割り形状の1対のカップ部材によって構成されると共に、前記1対のカップ部材が互いに嵌合された状態において、前記コイルの軸線に直交する方向に突出して開口する開口部が形成されていてもよい。この場合、前記開口部より前記樹脂製カップ内に注入されたモールド樹脂は、前記1対のカップ部材の孔部と、前記ステータの中空部との間で同一径の筒状孔となるように、前記1対のカップ部材の内部でモールドされた構成を備える。なお、前記1対のカップ部材は同一部材を向かい合わせに合体させてもよい。
【0007】
代替的に、あるいは、付加的に、本発明のステータユニットにおいて、リード線は、第1のカップ部材に当接して
コイルの軸線に沿う方向から開口部外に向かう方向に向きを変えて開口部外に引き出されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のステータユニットは上記のように、モールド樹脂を注入するカップ容器を2つの部材で構成し、この2つの部材を密閉度高く接合することで、樹脂の漏出を防止する。そして、樹脂の注入口を狭くし、かつ、その液面を制御することでカップ内の機器と完全に一体化したモールド製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るステータユニットの断面図である。
【
図2】本発明の同上ステータユニットの上面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るステータユニットのカップ部材の内部を示す断面図である。
【
図4】本発明のステータユニットの第3実施形態における注型方向を示す説明図である。
【
図5】本発明のステータユニットの第4実施形態を示し、(a)は中央縦断面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図6】同上ステータユニットに使用される第1のカップ部材を示し、(a)は中央縦断面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図8】本発明のステータユニットの第5実施形態を示し、(a)は中央縦断面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図9】同上第5実施形態のステータユニットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2は本発明の第1形態に係るステータユニットを示し、ステータユニット1は樹脂製カップ100の内部にボビン10に巻回されたコイル20を有するステータ30を収容し、溶融した樹脂Pを注入してステータ30、リード線40を一体にモールドして製作する。注入する樹脂Pは、エポキシやウレタン等の耐湿性に優れるが高粘性の樹脂が使用される。
【0011】
樹脂製カップ100は溶融した樹脂Pを注入するための樹脂注入口150を有し、ステータ30に接続されるリード線40はこの樹脂注入口150から外部に取り出される。すなわち、リード線40はこの樹脂注入口150から外部へ径方向に引き出される。
ステータ30の内周面はロータユニットなどが挿入される円筒状の中空部50を有する。
樹脂製カップ100は第1のカップ部材110と第2のカップ部材120の2つの部材で構成される。
【0012】
本実施例にあっては、樹脂製カップ100は、カップ形状の第1のカップ部材110と、第1のカップ部材110の上面に嵌合される蓋状の第2のカップ部材120で構成される。
【0013】
第1のカップ部材110と第2のカップ部材120の接合部F
1は、第1のカップ部材110の内周壁114に対して第2のカップ部材120の外縁部の内側に設けた脚部124を圧入させて形成される。
この構造により注入された樹脂P
1が漏出することはない。
【0014】
樹脂製カップ100は、ステータ30の軸線が水平方向になるように、樹脂注入口150の反対側が鉛直方向G
1で下方に位置する姿勢で中空部50に中子を挿入した状態で樹脂Pが注型される。
樹脂製カップ100の樹脂注入口150の上端面の高さ位置は、ステータ30の収容位置より高い位置に設けてある。
【0015】
そして、注入される樹脂の液面は、ステータ端子部の上面の高さ位置H
1を十分に覆い得る高い位置に設定される。
この構成により、ステータユニット樹脂製カップ100内に注入された樹脂P
1はステータ30の周囲を隙間なく覆い、樹脂により確実にモールドされる。
【0016】
第2実施形態の樹脂製カップ100aの第1のカップ部材210の内部形状を示す
図3にそって説明する。
第1のカップ部材210の内部壁211は、樹脂注入口250の中心と中空部50の中心を通る線の左右で異なる形状にしてある。
すなわち、符号Rで示す側の内壁211は、注型樹脂の流動が円滑に進行するように、均一な円弧で形成される。これに対して符号Lで示す側の内壁211には、注型樹脂の流動の抵抗となる突部211a、211bが設けてある。
【0017】
したがって、内部にステータ30を収容した状態で樹脂注入口250から樹脂Pを注入すると、R側では大きな矢印Paで示すように樹脂浸入が速くかつ多量に進み、そのため、小さな矢印Abで示すように空気の抜けは小さくなる。
【0018】
逆にL側ではPbで示すように突部211a、211bの影響を受けて流動抵抗が大であるため、樹脂の浸入は遅くなり、そのため矢印Aaで示すように空気の抜けは大きくなる。
この作用によって、モールド樹脂P
1はカップ100aの底部に空気残りを生ずることなく全体に確実に行き渡り、そのためモールド樹脂P
1は樹脂製カップ100aの内部に確実に充填される。
【0019】
図4は、樹脂製カップ100bの樹脂注入口150の反対側の底部102を平坦面とした第3実施形態を示す。
この実施形態では、底部102は平坦面に形成されているため、樹脂製カップ100bを平坦な治具L
1に置いて自立させることができ、この状態で樹脂注入口150から樹脂液Pを注入する。底部102は平坦面に形成してあるので、樹脂製カップ100bは治具L
1上に安定し、樹脂液Pの注入が容易となる。
なお、第1及び第2の実施形態の場合は、図示しない治具(保持手段)を使用して樹脂製カップを起立させておく必要がある。
【0020】
次に、本発明の第3実施形態について
図5を参照して説明すると、樹脂製カップ100cは、第1のカップ部材310と第2のカップ部材320とで構成され、樹脂注入口350を上面に有し、底面302は平坦面に形成される。
第1のカップ部材310は、中空穴312と、第2のカップ部材320を対向する端面に、
図6(a)、(b)に示す複数の突起と複数の穴部315を備えており、外面(背面)に
図6(a)、(c)に示される3本の柱状部340を有する。この第1のカップ部材310と対をなす第2のカップ部材320は、柱状部340を有さない点を除いて第1のカップ部材310と同一の構成を備える。
【0021】
そのため、第1のカップ部材310と第2のカップ部材320とを
図5(a)のように向かい合わせにしたときに、第1のカップ部材310の突起313が第2のカップ部材320の穴部(図示せず。)に嵌合し、第1のカップ部材の穴部315に第2のカップ部材320の突起(図示せず。)が嵌合して位置合わせがなされる。
このように第1のカップ部材310と第2のカップ部材320とを向かい合わせに接合した状態で、その内部空間にステータユニット30を挿置し、樹脂注入口350よりモールド樹脂P
1を注型し、
図5の樹脂モールドされたステータユニットが完成する。
この実施形態でもリード線40は樹脂注入口350より外部へ引き出される。
【0022】
図5(a)、(c)に示される回り止め部材500は金属製の部材であって、第1のカップ部材310の外面に設けた柱状部340に回り止め部材500の穴を差し込み、樹脂製の柱状部340を溶融させて回り止め部材500を固定する。
【0023】
次に本発明の第4実施形態について、
図8にそって説明する。
第4実施形態のステータユニットの樹脂製カップ100dの1対のカップ部材410は向かい合わせに全く同一の構成を備える。それ故にカップ部材410の一方の柱状部440(
図8(a)の左側の柱状部)は無駄に存在することになるが、カップ部材410用の金型が一つだけで済み、低コスト化に有効である。
【0024】
本発明のステータユニットは以上のようにステータの周囲を樹脂により確実にモールドすることができ、また、注型作業も容易に達成される。
【符号の説明】
【0025】
1 ステータユニット
10 ボビン
30 ステータ
40 リード線
50 中空部
100 樹脂製カップ
110 第1のカップ部材
120 第2のカップ部材
150 樹脂注入口(開口部)